説明

木質複合材料、及び、木質複合材料の製造方法

【課題】構造材として充分に使用できる強度を有するとともに、耐水性及び防虫性に優れ、更に、完全資源循環型でかつ人体に優しい木質系複合材料、及び、該木質系複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】接着剤と木質系成形材料とを含有する木質系複合材料であって、前記接着剤は、草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理することで製造されたポリフェノール類を成分とするものである木質系複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造材として充分に使用できる強度を有するとともに、耐水性及び防虫性に優れ、更に、完全資源循環型でかつ人体に優しい木質系複合材料、及び、該木質系複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材を細長い木質材料片(チップ)やファイバー状に加工したものは、木質成形材料として利用されている。例えば、チップと接着剤との混和物を積層し、加圧・加熱することによって得られる木質系構造材料が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、その他にも、例えば、パーチクルボード、インシュレーションボード、MDF(Medium Density Fiberboard)、ハードボード等の木質ボードが知られており、建材を中心に用いられている。
【0003】
これらの木質系材料は、廃木材や工場端材等を原料とすることができ、木材資源を有効利用したものであるが、接着剤は、一般にフェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、イソシアネート樹脂等の石油系樹脂であるため、完全に再生可能な資源循環型材料でなかった。また、これらの石油系樹脂からなる接着剤の多くは、有害なホルムアルデヒドを硬化剤とすることから、人体に悪影響を与える可能性があり問題視されている。更に、これらの木質系材料の廃棄についても、埋め立て等をしても石油系樹脂成分が微生物による分解を受けず土中に残存したり、焼却する際に有害なガスが発生したりする等の問題もあった。
【0004】
これらの問題を解決するために、例えば、セルロース、でんぷん、リグニン等の天然材料を接着剤として用いて木質成形材料を接着する技術が知られている(例えば、特許文献2、特許文献3等参照)。
しかしながら、このような天然材料を接着剤とする従来の木質系材料は、接着強度や耐水性、防虫性に劣るものであり、とりわけ強度が必要とされる用途には使用できないという問題があった。
【特許文献1】特公昭50−17512号公報
【特許文献2】特表平11−503476号公報
【特許文献3】特開平9−249862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、構造材として充分に使用できる強度を有するとともに、耐水性及び防虫性に優れ、更に、完全資源循環型でかつ人体に優しい木質系複合材料、及び、該木質系複合材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明1は、接着剤と木質系成形材料とを含有する木質系複合材料であって、前記接着剤は、草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理することで製造されたポリフェノール類を成分とするものである木質系複合材料である。
【0007】
本発明2は、接着剤と木質系成形材料とを含有する木質系複合材料であって、前記接着剤は、分子内にカルボキシル基と水酸基及び/又はメトキシ基を有する芳香族化合物を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理することで製造されたアルデヒド類を成分とするものである木質系複合材料である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
従来、家畜として飼われている牛、馬、ヤギ、羊等の草食動物の排泄物は、その処置方法として有益な手段がなく、野積みによる堆肥化がなされていた。しかしながら、年間8900万t(2001年推計)にもおよぶと言われる家畜排泄物は、糞尿からの悪臭による農家と普通住宅の混在の困難化や、生活廃水や家畜糞尿に起因する水質、土壌汚染等の社会問題となっていた。
これらの公害を防ぐため、家畜排泄物の適切なる処理が求められ、平成16年11月1日に「家畜排泄物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が施行された。管理基準の制定として、糞の処理・保管施設(固形状の家畜排泄物の管理施設)は、床をコンクリートその他不浸透性材料で築造し、適当な覆い及び側壁を有するものとすると述べられ、尿やスラリーの処理・保管施設(液状の家畜排泄物の管理施設)は、コンクリートその他の不浸透性材料で築造した構造の貯留槽とすることと定められている。また、家畜排泄物は、野積みにすることなく施設において管理すること、施設に破損があるときは遅滞なく修繕を行うこと、送風装置等を設置している場合には、その維持管理を適切に行うこと、年間の発生量、処理の方法及び処理の方法別の数量について記録すること等も定められている。
そのため、従来行われていた家畜排泄物の野積みによる堆肥化が不可能となった。
このような糞尿問題を解決するため、現在、糞の新たな処理法として、高温高圧の水熱反応を用いた発電エネルギー循環を宮崎県川南町や静岡大学研究グループで開発が試みられている。しかしながら、これらの装置は、巨大で移動させるのは不可能な大きさであり、民間で簡易に使用することができないものであったため、より簡易な装置及び方法で家畜排泄物の処理方法が求められている。
【0009】
また、近年、枯渇の予想される石油や石炭等の化石資源に代わり、永続的利用が可能な森林資源に対する関心が高まってきている。なかでも、主要構成成分であるセルロースやリグニンを素材として利用する技術に関心が寄せられ精力的に研究が行われている。セルロースについては、従来からのパルプ原料、食品添加剤、強化繊維としての利用だけでなく、糖化してアルコールや生分解プラスチック等の原料として多用途で有効利用されている。しかしながら、リグニンについては地球上でセルロースの次に豊富に存在する有機物質であるにもかかわらず、燃焼させてエネルギーに変換されるのが大部分であり、素材として有効に利用されていないのが現状であった。
【0010】
そこで、本発明者らは、家畜等の草食動物の糞尿には、家畜の腸内で消化しきれずに排泄される食物繊維(主にリグニン)が多量に含まれていることに着目し、鋭意検討した結果、所定の温度範囲内で亜臨界状態の水を用いて草食動物の糞を処理することで、高純度のポリフェノール類を極めて高い収率で製造することができ、そのポリフェノール類が接着強度に優れた接着剤になることを見出した。また、リグノセルロース系材料についても、同様の処理をして製造したポリフェノール類が接着強度に優れた接着剤になることを見出し、本発明1を完成するに至った。
【0011】
本発明者らは、更に鋭意検討した結果、分子内にカルボキシル基と水酸基及び/又はメトキシ基とを有する芳香族化合物を所定の温度範囲内で亜臨界状態の水で処理することで、高純度のアルデヒド類を極めて高い収率で製造するこができ、そのアルデヒド類が接着強度に優れた接着剤になることを見出し、本発明2を完成するに至った。
なお、以下の説明において、本発明1の木質系複合材料と本発明2の木質系複合材料とに共通する事項については、「本発明の木質系複合材料」と称して説明する。
【0012】
本発明の木質系複合材料は、接着剤と木質系成形材料とを含有するものであり、本発明1の木質系複合材料では、上記接着剤は、ポリフェノール類を成分とするものであり、本発明2の木質系複合材料では、上記接着剤は、アルデヒド類を成分とするものである。
【0013】
上記接着剤は、硬化すると高強度になるという性質を有しているため、該接着剤を含有する本発明の木質系複合材料は、構造材として充分に使用可能な強度を有するものとなる。
また、上記接着剤は、木質系成形材料との親和性がよく、適度な粘着性を有するものであるため、本発明の木質系複合材料は、優れた耐水性及び防虫性を有するものとなる。これは、以下に挙げる理由によると考えられる。
すなわち、木質系複合材料の原料である木質成形材料(チップ)は、その内部に微細な孔が存在しており、従来の石油系樹脂からなる接着剤を用いてなる木質系複合材料では、この木質成形材料中の微細な孔を埋めることができず、耐水性及び防虫性に劣るものであったと考えられる。一方、本発明の木質系複合材料は、上記接着剤が木質系成形材料との親和性がよく、適度な粘着性を有するものであるため、上記木質系成形材料中の微細な孔を好適に埋めることができ、耐水性及び防虫性に優れたものとなると考えられる。
【0014】
本発明1の木質系複合材料は、ポリフェノール類を成分とする接着剤(以下、本発明1に係る接着剤ともいう)を含有する。
本発明1に係る接着剤の成分であるポリフェノール類は、草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を亜臨界状態の水によって処理することで製造されたものである。特に草食動物の糞を本発明1に係る接着剤の原料とした場合、目的とするポリフェノール類を高収率で製造することができる。この理由は、以下の通りであると考えられる。
すなわち、草食動物は、その胃や腸内の微生物や細菌の酵素等の働きにより、牧草等の飼料が消化される過程でセルロース等が除かれ、原料となるリグニンが精製されるためであると考えられる。
なお、本発明1に係る接着剤において、上記ポリフェノール類の含有量の好ましい下限は10重量%である。
【0015】
上記草食動物としては、家畜として飼育されている動物であれば特に限定されず、例えば、牛、馬、ヤギ、羊等が挙げられる。なかでも、リグニンの精製が単胃動物に比べてより高度となることから、反芻動物であることが好ましく、具体的には、牛、ヤギ、羊等が好適である。
【0016】
また、本発明1に係る接着剤の原料としてリグノセルロース系材料を用いると、ポリフェノール類以外の雑多な物質(不純物)が含まれていることがある。そのため、ポリフェノール類以外の不純物が含まれていることで、接着剤としての性能が充分に発現しない場合には、リグノセルロース系材料を亜臨界状態の水で処理した後、精製して目的とするポリフェノール類の純度を上げてもよい。
【0017】
上記リグノセルロース系材料としては特に限定されず、例えば、針葉樹、広葉樹等の木本植物や、草本植物等が挙げられ、接着剤として必要とされる性能やコスト等を考慮して適宜選択すればよい。
【0018】
本発明1に係る接着剤の成分であるポリフェノール類は、上述した草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を亜臨界状態の水によって処理することで製造されたものである。このようにして製造された本発明1に係る接着剤は、処理の媒体として水を用いるため、安価であることに加え、無毒であることから環境に悪影響を与えず、回収等のコストを抑えることができる。更に、亜臨界状態の水を用いることから、草食動物の糞を用いた場合には亜臨界状態の水中では雑菌やプリオン等の異常タンパク質等の分解が進むため、得られるポリフェノール類中にこれらの雑菌や異常タンパク質が混入することを防ぐことができる。
【0019】
上記亜臨界状態とは、超臨界状態以外の状態の水であって、反応時の圧力、温度をそれぞれP、Tとしたときに、0.1<P/Pc<1.0かつ0.5<T/Tc、又は、0.1<P/Pcかつ0.5<T/Tc<1.0の状態の水を意味する。なお、Pc及びTcは、それぞれ水の臨界圧力及び臨界温度を表し、水は、647K以上かつ22MPa以上において超臨界状態になる。
従って、圧力が0.1MPaを超えて22MPa未満かつ温度が324Kを超える場合、又は、圧力が0.1MPaを超えかつ温度が324Kを超えて647K未満である場合に、水は亜臨界状態となる。
【0020】
なお、上記亜臨界状態の水で上記草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を処理する際には、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、二酸化炭素、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴン、空気等の常温常圧で気体である流体等を併用してもよい。
【0021】
上記亜臨界状態の水で上記草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を処理する際の温度の下限は100℃であり、上限は300℃である。100℃未満であると、目的物であるポリフェノール類以外の物質の生成量が増加してしまい、目的物であるポリフェノール類の生成が煩雑となる。300℃を超えると、目的物であるポリフェノール類が分解又は他の物質に転換してしまう。なお、亜臨界状態の水で処理する際の温度は、上記常温常圧で気体である流体を併用する場合は、併用する流体の種類や量に合わせて適宜変更してもよい。
【0022】
上記亜臨界状態の水で上記草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を処理する際の圧力は、水が上述した亜臨界状態を保つ範囲内であれば特に限定されないが、好ましい下限2.7MPa、好ましい上限は6.0MPaである。2.7MPa未満であると、目的物であるポリフェノール類以外の生成量が増加し、目的物であるポリフェノール類の生成が煩雑となることがあり、6.0MPaを超えると、目的物であるポリフェノール類が分解又は他の物質に転換してしまうことがある。
【0023】
上記亜臨界状態の水で上記草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を処理する際の時間としては特に限定されず、使用する草食動物の糞又はリグノセルロース系材料の種類等によって適宜最適な時間が選択されるが、例えば、牛糞を用いた場合、好ましい下限は30分/g、好ましい上限は60分/gである。30分/g未満であると、未分解状態の牛糞が多く、目的物であるポリフェノール類の生成が不充分となることがあり、60分/gを超えると目的物であるポリフェノール類の分解又は他の物質に転換してしまうことがある。上記亜臨界状態の水で上記草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を処理する時間は、60分/gであることが最も好ましい。
【0024】
上記亜臨界状態の水を用いて上記草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を処理する方法としては、例えば、図1に示すような簡単な処理装置を用いて行うことができる。図1(a)は、本発明で使用可能な処理装置の一例を模式的に示す正面図であり、(b)は、その側面図である。
なお、本発明で使用可能な処理装置は、草食動物の糞又はリグノセルロース系化合物と亜臨界状態の水とを上述した条件で処理することができるものであれば、図1に示す構造のものに限定されることはない。
【0025】
図1に示すように、本発明で使用可能な処理装置1は、主に管状の製造容器2と、製造容器2を収容し、半円柱状の下部容器3と上部容器4とが蝶着された構造の収容容器とから構成されている。
上記収容容器は、図1(b)に示すように、内部に製造容器2を収容できるよう下部容器3と上部容器4とが対峙する面に溝が、その長さ方向に平行な方向に設けられている。更に、該溝部分の周囲には、収納した製造容器2を加熱するヒーターと温度センサーとが埋め込まれており、上記ヒーターによる製造容器2の加熱温度を制御することができるようになっている。
【0026】
製造容器2は、原料である草食動物の糞又はリグノセルロース系材料と亜臨界状態の水とを反応させるための容器であり、これらを収容するための空間を有する中空構造の容器である。
【0027】
製造容器2は、亜臨界状態の水を用いる過酷な反応条件下で反応を行うため、このような条件に耐えられる材質及び肉厚の容器が使用される。具体的な材質としては、例えば、炭素鋼、Ni、Cr、V、Mo等の特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、ハステロイ、チタン又はこれらにガラス、セラミック、カーバイト等をライニング処理した鋼材、他の金属をクラッドした鋼材等が挙げられる。
【0028】
製造容器2の形状としては特に限定されず、例えば、槽型、管型、特殊形状等任意の形状が挙げられる。なかでも、耐熱、耐圧性能が必要であるので槽型又は管型が好ましい。
なお、製造容器2が管型である場合、直線状の管であってもよく、コイル状に巻いた構造の管や、U字型に折り曲げられた構造の管であってもよい。
【0029】
また、製造容器2内には金属ボールや所定形状の障害物が備えられていることが好ましい。内部に金属ボール等障害物が備えられていると、上記草食動物の糞又はリグノセルロース系材料と亜臨界状態の水との反応時に、亜臨界状態にある水に乱流が生じ攪拌効率が高められ、反応効率を上げることができる。更に、製造容器2が金属ボール等で充填されていると容器を振とうするだけで攪拌効率が高くなり好ましい。
【0030】
製造容器2が上記金属ボールで充填されている場合、その充填率の好ましい下限は20体積%、好ましい上限は80体積%である。この範囲外であると、上述した攪拌効率が悪くなることがある。
【0031】
上記金属ボールの材料としては特に限定されず、例えば、上述した製造容器2を構成する材料と同じ材料が挙げられる。また、その直径は特に限定されず、例えば、製造容器2の内部空間の大きさに合わせて上述した充填率となるよう適宜調整される。なお、直径の異なる2種以上の金属ボールを用いれば、充填率を向上させることができ、攪拌効率を上げることができるため、より好ましい。
【0032】
また、製造容器2内にはオリフィスがあいている板が備えられていることが好ましい。製造容器2内にオリフィスがあいている板が備えられていると、振とうにより乱流が発生するので攪拌効率が高められ反応効率を上げることができる。
このような板の材料としては特に限定されず、例えば、上述した製造容器2を構成する材料と同じ材料が挙げられる。また、上記板の大きさ、並びに、オリフィスの数及び大きさ等は特に限定されず、製造容器2の内部空間の大きさ等を考慮して適宜決定される。
【0033】
上記収容容器(下部容器3及び上部容器4)を構成する材料としては特に限定されず、例えば、上述した製造容器2と同様の材料や、セラミック等が挙げられる。
【0034】
図1に示した処理装置1を用いて草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を亜臨界状態の水で処理するには、まず、下部容器3と上部容器4とに設けられた溝に製造容器2を収納する。このとき、図1(a)及び(b)に示すように、製造容器2の両末端部分は、外部に突出した状態となっている。
次に、所定量の水と草食動物の糞又はリグノセルロース系材料とを製造容器2に送り込み、温度センサーで温度をモニタリングしながらヒーターで製造容器2内の水が亜臨界状態となるまで加熱する。そして、所定の時間草食動物の糞又はリグノセルロース系材料と亜臨界状態の水とを反応させた後、氷水等を用いて製造容器2を冷却し、製造容器2内を常温常圧に戻す。
【0035】
なお、本発明では、上記草食動物の糞又はリグノセルロース系材料と水とを混合し、この混合物を加熱及び加圧して混合物中の水を亜臨界状態にしてもよいし、上記草食動物の糞又はリグノセルロース系材料に亜臨界状態にした水を加えてもよい。すなわち、上述した処理装置1を用いる場合、製造容器2中に草食動物の糞又はリグノセルロース系材料と水とを供給してから加熱及び加圧して水を亜臨界状態としてもよく、製造容器2に供給した草食動物の糞又はリグノセルロース系材料に亜臨界状態の水を供給してもよく、更に、製造容器2に収容した亜臨界状態の水中に草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を供給してもよい。
【0036】
上記亜臨界状態の水によって処理することで製造されたポリフェノール類としては、使用する草食動物の糞又はリグノセルロース系材料により適宜決定され特に限定されないが、例えば、プロトカテク酸、バニリン酸、シリンガ酸、バニリン等が挙げられる。なお、上記プロトカテク酸は、抗がん剤の原料として使用され、上記バニリンは、香料として使用される物質である。
【0037】
上記バニリンは、草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を亜臨界状態の水によって150〜300℃で処理する工程により効率的に製造される。上記プロトカテク酸は、草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を亜臨界状態の水によって150〜250℃で処理する工程により効率的に製造される。上記バニリン酸は、草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を亜臨界状態の水によって100〜250℃で処理する工程により効率的に製造される。また、上記シリンガ酸は、草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を亜臨界状態の水によって100〜250℃で処理する工程により効率的に製造される。
【0038】
上記処理後の物質から、ポリフェノール類を同定する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、処理後の水溶液に高速クロマトグラフィー(カラム:Shim−pak CLC−ODS、島津製作所製)を行い、その後、質量分析(カラム:TSK−GELODS−80TM(4.6×150mm)、東ソー社製、分析装置:Waters社製)する方法等が挙げられる。
【0039】
上記方法により製造されるポリフェノール類の収率としては、原料とする草食動物の糞又はリグノセルロース系材料の種類等によるが、例えば、草食動物の糞として牛糞を用いた場合、プロトカテク酸の収率は5〜10μg/mL、バニリン酸の収率は10〜50μg/mL、シリンガ酸の収率は5〜10μg/mL、バニリンの収率は10〜50μg/mL程度となる。
【0040】
また、上記亜臨界状態の水に代えて亜臨界又は超臨界状態の二酸化炭素を用いて上記草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を処理することにより、上記ポリフェノール類を得ることができる。
上記亜臨界又は超臨界状態の二酸化炭素を用いて草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を処理する場合、その処理条件は、上述した亜臨界状態の水による処理条件と異なることとなり、例えば、処理温度は、亜臨界状態の水で処理するよりも低温での処理が可能となる。
【0041】
本発明2の木質系複合材料は、アルデヒド類を成分とする接着剤(以下、本発明2に係る接着剤ともいう)を含有する。
本発明2に係る接着剤の成分であるアルデヒド類は、分子内にカルボキシル基と水酸基及び/又はメトキシ基とを有する芳香族化合物を亜臨界状態の水によって処理することで製造されたものである。
なお、本発明2に係る接着剤において、上記アルデヒド類の含有量の好ましい下限は10重量%である。
【0042】
上記分子内にカルボキシル基と、水酸基及び/又はメキシキ基とを有する芳香族化合物としては特に限定されず、例えば、バニリン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、3−メトキシベンゼン酸、シリンガ酸等が挙げられる。
【0043】
上記分子内にカルボキシル基と、水酸基及び/又はメキシキ基とを有する芳香族化合物を亜臨界状態の水で処理すると、上記分子内にカルボキシル基と、水酸基及び/又はメキシキ基とを有する芳香族化合物の上記カルボキシル基が、上記亜臨界状態の水によりアルデヒド基に還元され、アルデヒド類が製造される。
従って、例えば、上記分子内にカルボキシル基と、水酸基及び/又はメキシキ基とを有する芳香族化合物としてバニリン酸を用いた場合、バニリンが製造され、p−ヒドロキシ安息香酸を用いた場合、ヒドロキシベンズアルデヒドが製造され、3−メトキシベンゼン酸を用いた場合、m−メトキシベンズアルデヒドが製造され、シリンガ酸を用いた場合、シリンガアルデヒドが製造される。
【0044】
上記分子内にカルボキシル基と、水酸基及び/又はメキシキ基とを有する芳香族化合物を亜臨界状態の水によって処理する条件、方法等は、上述した本発明1に係る接着剤における草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を亜臨界状態の水で処理する場合と同様の条件、方法等が挙げられる。
ここで、上記分子内にカルボキシル基と、水酸基及び/又はメキシキ基とを有する芳香族化合物は、上述した本発明1に係る接着剤の成分であるポリフェノール類であってもよい。本発明2に係る接着剤の成分であるアルデヒド類を得るための亜臨界状態の水を用いた処理の条件等と、本発明1に係る接着剤の成分であるポリフェノール類とを得るための亜臨界状態の水を用いた処理の条件等とは同様であるので、草食動物の糞等を用いて亜臨界状態の水によって処理することで、上述した本発明1に係る接着剤の成分であるポリフェノール類を製造すると、該ポリフェノール類が原料となって本発明2に係る接着剤の成分であるアルデヒド類も製造されることとなる。すなわち、上述した本発明1に係る接着剤の成分であるポリフェノール類を製造することで、併せて本発明2に係る接着剤のアルデヒド類を製造することができる。
【0045】
本発明1に係る接着剤、及び、本発明2に係る接着剤(以下、これらをまとめて本発明に係る接着剤ともいう)は、接着剤として要求される性能や用途によって必要に応じて、硬化剤や添加剤、又は、他の接着剤を併用して用いることができる。
例えば、ポリフェノール類を成分とする本発明1に係る接着剤の場合には、硬化剤としてアルデヒド系化合物、アミン系化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物等を併用して用いることができる。また、例えば、アルデヒド類を成分とする本発明2に係る接着剤の場合には、フェノール系樹脂接着剤、アミノ樹脂系接着剤、タンニン系接着剤と併用することで、高強度な接着剤とすることができる。更に、上述した本発明1に係る接着剤と本発明2に係る接着剤とを併用して用いてもよい。
【0046】
また、本発明に係る接着剤は、必要に応じて、ポリフェノール類やアルデヒド類を変性して用いてもよい。上記変性としては特に限定されないが、例えば、上記ポリフェノール類やアルデヒド類の分子中にメチロール基、エポキシ基、イソシアネート基等の導入等が挙げられ、このような変性によりポリフェノール類やアルデヒド類に熱硬化性を付与することができる。
【0047】
このように硬化剤と併用したり分子を変性したりすることで、本発明に係る接着剤は、加熱等により架橋・高分子化させることができる。すなわち、本発明に係る接着剤の凝集力を高めることができるので高強度な接着剤とすることができる。更に、このような本発明に係る接着剤は、硬化物が架橋・高分子化しているので、天然物質でありながら耐水性が良好なものとなる。
【0048】
本発明に係る接着剤において、ポリフェノール類やアルデヒド類が固体である場合、溶液化したりエマルション化したりして用いることができる。
上記ポリフェノール類やアルデヒド類が固体の場合、被着体である後述する木質系成形材料の表面への浸透性や、濡れ性が悪く充分な接着力が発現しない場合があるが、溶液化又はエマルション化することで、木質系成形材料への浸透性や濡れ性が良好となる。また、接着剤としての使い勝手がよくなり、木質系成形材料への刷毛塗りやスプレー塗布等一般的な接着剤と同様の取り扱いができるようになる。
【0049】
本発明の木質系複合材料は、木質系成形材料を含有する。
上記木質系成形材料は、植物材料を原料するものであれば特に限定されず、例えば、スギ、ヒノキ、マツ、スプルース、ファー等の針葉樹、シラカバ、アピトン、センゴンラウト、アスペン等の広葉樹、竹、コウリャン等が挙げられる。
【0050】
このような木質系成形材料は、例えば、上記植物材料の丸太、間伐材等の生材料、工場や住宅建築現場で発生する端材、部材輸送後に廃棄される廃パレット材、建築解体時に発生する解体廃材等を利用することができる。特に、解体廃材、廃パレット材、間伐材、製材時に発生する端材、燃料や製紙用原料として使用される木質材料等リサイクル材が好ましい。
【0051】
上記木質系成形材料の形態としては、例えば、ブロック、平板、ストランド、フレーク、チップ、木粉、ファイバー等が挙げられ、なかでも、チップ、木粉、ファイバーは、入手が容易であり安価であることから好ましい。更に、チップ、木粉、ファイバーのなかでは、チップが好適である。チップは、木粉、ファイバーよりもエレメントが大きく、このようなチップ状の木質系成形材料を含有する本発明の木質系複合材料は、強度、弾性率がより優れたものとなる。
【0052】
上述した植物材料を上記チップ状に加工する方法としては、例えば、ハンマーミル、表面に刃物のついたロールを回転させて木材を破砕する一軸破砕機、回転刃がかみ合った構造の二軸又は多軸破砕機等の破砕機が使用されるが、ベニア加工をしたものを割り箸状に切断してスチックにするロータリーカッター、丸太等を回転刃で切削してストランドにするフレーカー等も使用できる。特に原料の植物材料としてリサイクル材料を使用する場合、異物が混入しやすく刃の耐久性が高いという点で破砕機が好ましい。
【0053】
上記木質系成形材料がチップである場合、その大きさとしては特に限定されないが、長径の好ましい下限は20mm、好ましい上限は150mmであり、厚さの好ましい下限は1mm、好ましい上限は8mmである。
【0054】
上記の方法で得られたチップは、サイズのバラツキがあるので分級工程によって上述したサイズのチップを得ることが好ましい。上記分級方法としては、例えば、ローラースクリーン方式や振動メッシュ方式、風選方式等が挙げられ、必要に応じて使い分ければよい。
また、分級されたチップは、含水率を一定範囲に調整しておくことが好ましい。含水率を一定にすることで本発明の木質系複合材料の品質バラツキがなくなる。好ましい含水率の範囲としては0〜14%である。
【0055】
なお、上記木質系成形材料が木粉である場合、本発明の木質系複合材料は、製品形状の自由度が大きくプレス成形等によって複雑な形状に成形可能であり、表面平滑性にも優れたものとなるので建材等、意匠性の要求される用途に好適に使用できる。また、上記木質系成形材料がファイバーである場合、本発明の木質系複合材料は、強度と意匠性とのバランスに優れた製品とすることができる。
【0056】
本発明の木質系複合材料において、上記接着剤と木質系成形材料との混合比率としては、木質系成形材料の密度、形状、表面状態等にもよるが、通常、木質系成形材料100重量部に対して、接着剤の好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。1重量部未満であると、本発明の木質系複合材料の強度、耐水性及び防虫性が不充分となることがあり、20重量部を超えると、本発明の木質系複合材料の強度の低下が起こることがあり、コストも高くなってしまうので好ましくない。より好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は15重量部である。
【0057】
本発明の木質系複合材料は、上述した接着剤をバインダーとして上記木質系成形材料を結合し固めて複合化することで得ることができる。また、上記接着剤の成分であるポリフェノール類又はアルデヒド類は、元々植物材料であることから、木質系成形材料との親和性も高く、接着面の浸透性や濡れ性がよく強度に優れた界面が形成されることから、本発明の木質系複合材料は、強度、耐水性及び防虫性に優れたものとなる。
また、上記接着剤は、天然物質を出発物質としているので、本発明の木質系複合材料は、全て天然物質からなる完全資源循環型であり、資源の有効利用という観点で地球環境に大きく貢献するものとなる。更に、本発明の木質系複合材料には有害な揮発性化学物質が含有されないので人体に害のない生活環境に優しい木質系複合材料であり、住宅部材等として安心して用いることができるものとなる。
【0058】
このような本発明の木質系複合材料を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理してポリフェノール類を成分とする接着剤を調製する工程、前記接着剤と木質系成形材料とを混合する工程、及び、前記接着剤をバインダーとして前記木質系成形材料を結合する工程を有する方法により、本発明1の木質系複合材料を好適に製造することができる。このような木質系複合材料の製造方法(以下、本発明1の製造方法ともいう)もまた、本発明の1つである。
【0059】
本発明1の製造方法は、ポリフェノール類を成分とする接着剤を調製する工程を有する。
本工程で製造するポリフェノール類を成分とする接着剤は、草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理することで得られる。上記草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理する方法としては、上述した本発明1に係る接着剤において説明した方法と同様の方法が挙げられる。
【0060】
本発明1の製造方法は、上記接着剤と木質系成形材料とを混合する工程を有する。
上記木質系成形材料としては、上述したものが挙げられる。また、上記接着剤と木質系成形材料との混合手段としては、例えば、木質系成形材料がチップや木粉等形状が小さい場合、コンベア上やドラムブレンダー内等で木質系成形材料に対してスプレー等の塗布手段で上記接着剤を混合させる方法等が挙げられる。また、上記木質系成形材料が板材やブロック状の部材の場合は、刷毛塗りやローラー塗りによって上記接着剤を混合することもできる。
【0061】
本発明1の製造方法は、上記接着剤をバインダーとして上記木質系成形材料を結合する工程を有する。
上記接着剤をバインダーとして上記木質系成形材料を結合する方法としては特に限定されないが、加熱及び加圧する方法が好適である。加熱することで上記接着剤が短時間でかつ反応効率よく硬化するので生産性が向上と接着強度の向上が見込める。また、加圧することで木質系成形材料が強く密着して接着強度が向上する。加熱と加圧とは同時に行ってもよく、加熱後に加圧してもよく、加圧後に加熱してもよい。
【0062】
上記加熱温度の好ましい下限は40℃、好ましい上限は250℃である。40℃未満であると、接着剤の硬化時間が遅くなることがあり、250℃を超えると、木質系成形材料が劣化してしまうことがある。また、加圧の条件は特には限定されない。また、加熱・加圧処理時間は、接着剤が硬化する時間だけ行えばよい。
【0063】
木質系複合材料を更に強度・弾性率に優れたものとする必要がある場合には、例えば、本工程において、チップ等の木質系成形材料を一方向に配向させることが好ましい。一方向に配向させることで、配向方向の強度・弾性率が向上し、本発明1の木質系複合材料を住宅の柱等の軸材として使用することができる。
【0064】
また、例えば、分子内にカルボキシル基と水酸基及び/又はメトキシ基を有する芳香族化合物を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理してアルデヒド類を成分とする接着剤を調製する工程、前記接着剤と木質系成形材料とを混合する工程、及び、前記接着剤をバインダーとして前記木質系成形材料を結合する工程を有する方法により本発明2の木質系複合材料を好適に製造することができる。このような木質系複合材料の製造方法(以下、本発明2の製造方法ともいう)もまた、本発明の1つである。
【0065】
本発明2の製造方法は、アルデヒド類を成分とする接着剤を調製する工程を有する。
本工程で製造するアルデヒド類を成分とする接着剤は、分子内にカルボキシル基と水酸基及び/又はメトキシ基を有する芳香族化合物を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理することで得られる。上記分子内にカルボキシル基と水酸基及び/又はメトキシ基を有する芳香族化合物を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理する方法としては、上述した本発明2に係る接着剤において説明した方法と同様の方法が挙げられる。
ここで、上述のように、上記分子内にカルボキシル基と、水酸基及び/又はメキシキ基とを有する芳香族化合物は、本発明1に係る接着剤の成分であるポリフェノール類であってもよく、本発明1に係る接着剤の成分であるポリフェノール類を製造することで、併せて本発明2に係る接着剤のアルデヒド類を製造することができるので、本工程は、上述した本発明1の製造方法におけるポリフェノール類を成分とする接着剤を調製する工程と同じであってもよい。
【0066】
本発明2の製造方法は、上記接着剤と木質系成形材料とを混合する工程、及び、上記接着剤をバインダーとして上記木質系成形材料を結合する工程を有する。
これらの工程は、上述した本発明1の製造方法と同様の工程が挙げられる。
【発明の効果】
【0067】
本発明によると、構造材として充分に使用できる強度を有するとともに、耐水性及び防虫性に優れ、更に、完全資源循環型でかつ人体に優しい木質系複合材料、及び、該木質系複合材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
(1)接着剤の調製
牛糞1gと蒸留水4mLを製造容器(管型容器、SUS316製、Tube Bomb Reacter 、内容積10mL:AKICO社製)に入れ、200℃、2MPaに加熱及び加圧して亜臨界状態とした水による処理を行った。処理装置は、バッチ式を使用した。60分間反応後、氷水に容器ごとつけて冷却した。
【0070】
得られた水溶液について、高速液体クロマトグラフィーを島津製作所製のカラム「Shim−pak CLC−ODS」を用い、移動相;HO 2902.95mL、メタノール 31.5mL、プロパノール 5.55mL、酢酸 60mL、酢酸ナトリウム 8.17g、カラム温度50℃、流速1mL/分、検出波長280nmの条件で行った。
【0071】
化合物の同定には、質量分析を行い、東ソー社製のカラム「TSK−GELODS−80TM(4.6×150mm)」を用い、移動相;HO 2902.95mL、メタノール 31.5mL、プロパノール 5.55mL、酢酸 60mL、酢酸アンモニウム 2.56g、カラム温度50℃、流速1mL/分、検出波長280nmの条件で行った。
各ピークにについて質量分析装置(Waters社製)により分析したところ、バニリン33.7μgに相当する質量の物質、プロトカテク酸4.9μgに相当する質量の物質、バニリン酸13.8μgに相当する質量の物質及びシリンガ酸5.8μgに相当する質量の物質の存在を確認できた。
【0072】
得られた化合物の固形分濃度が40重量%になるように水に分散させた後、硬化剤としてのエポキシ化合物(ナガセケムテックス社製 デナコールEX−313)を固形分で10重量%配合して接着剤とした。
【0073】
(2)木質系複合材料の製造
木質系複合材料の製造に当たっては、以下の材料を用いた。
接着剤:(1)で得られた接着剤
木質系成形材料(チップ):木材廃棄物処理業者から購入したボード用チップ(一軸破砕機にて破砕)を、ローラースクリーン方式であるウエーブローラースクリーン装置(たいへい社製)を用いて、厚さ1mm〜8mmに分級したものであり、長さが20〜150mmのもの。
【0074】
含水率6%に調整したチップを100g用い、接着剤の固形分がチップに対して10重量%になるように、スプレーガン(アネスト岩田社製)を用いてチップ表面に均一塗布した。
次に、接着剤が塗布されたチップを内寸150mm×50mm×高さ60mmの金型(凹型)内に投入した。なお、金型内には中央に仕切版が設置してあり、長手方向に25mm間隔で2等分されたものを用いた。仕切版は、チップ投入後に取り除いた。仕切版の作用により、チップは金型内で長手方向に一軸配向した。
次に、凸型を設置し、プレス機にて製品の厚さが10mmになるように圧力をかけて180℃で30分間プレス成形して木質系複合材料を得た。
【0075】
(性能評価)
得られた木質系複合材料からサンプルを切り出して四点曲げ試験(建築基準法、告示1446号試験法)、吸水厚さ膨張率(JIS K 5908)、ホルムアルデヒド放散量(JIS K 5908)を測定した。その結果、四点曲げ強度18MPa、吸水厚さ膨張率12%、ホルムアルデヒド放散量0mg/Lとなった。
【0076】
(実施例2)
牛糞に代えて、スギ木粉を用いた以外は実施例1と同様にして接着剤を調製し、該接着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして木質系複合材料を得た。なお、得られた接着剤について、実施例1と同様の化合物の同定を行ったところ、バニリン、プロトカテク酸、バニリン酸及びシリンガ酸に相当する質量の各物質の存在を確認できた。
得られた木質系複合材料を用いて、実施例1と同様に四点曲げ試験、吸水厚さ膨張率、ホルムアルデヒド放散量を測定した。その結果、四点曲げ強度15MPa、吸水厚さ膨張率12%、ホルムアルデヒド放散量0mg/Lとなった。
【0077】
(比較例1)
牛糞に代えて、トラ糞を用いた以外は実施例1の接着剤の調製と同様の処理を行った。得られた水溶液について、実施例1と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーを行い、更に、実施例1と同様にして化合物の同定を行った。その結果、全くピークが観察されず、ポリフェノール類が得られなかったので、接着剤とすることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、構造材として充分に使用できる強度を有するとともに、耐水性及び防虫性に優れ、更に、完全資源循環型でかつ人体に優しい木質系複合材料、及び、該木質系複合材料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】(a)は、本発明の木質系複合材料を構成する接着剤の製造において使用可能な処理装置の一例を模式的に示す正面図であり、(b)は、(a)に示した処理装置の側面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 処理装置
2 製造容器
3 下部容器
4 上部容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤と木質系成形材料とを含有する木質系複合材料であって、
前記接着剤は、草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理することで製造されたポリフェノール類を成分とするものである
ことを特徴とする木質系複合材料。
【請求項2】
草食動物の糞又はリグノセルロース系材料を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理してポリフェノール類を成分とする接着剤を調製する工程、
前記接着剤と木質系成形材料とを混合する工程、及び、
前記接着剤をバインダーとして前記木質系成形材料を結合する工程
を有することを特徴とする木質系複合材料の製造方法。
【請求項3】
接着剤と木質系成形材料とを含有する木質系複合材料であって、
前記接着剤は、分子内にカルボキシル基と水酸基及び/又はメトキシ基を有する芳香族化合物を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理することで製造されたアルデヒド類を成分とするものである
ことを特徴とする木質系複合材料。
【請求項4】
分子内にカルボキシル基と水酸基及び/又はメトキシ基を有する芳香族化合物を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理してアルデヒド類を成分とする接着剤を調製する工程、
前記接着剤と木質系成形材料とを混合する工程、及び、
前記接着剤をバインダーとして前記木質系成形材料を結合する工程
を有することを特徴とする木質系複合材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−290340(P2008−290340A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138141(P2007−138141)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(502165942)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】