説明

木造建物のリフォーム工法

【課題】既存の木造建物に収納蔵を新築時の床面積と階数を変えずに増設できる木造建物のリフォーム工法を提供する。
【解決手段】一階の洋室Bの既存の床と二階の洋室Cの既存の床をそれぞれ撤去する。洋室Bの床下にべた基礎を施工する。べた基礎の上に土台5aを敷設し、土台5aの上に柱5bを建て付け、さらに柱5b,5b間に洋室Cおよび収納蔵Dの梁5c,5cをそれぞれ架け渡して新たな軸組5を既存の軸組4の内側に沿って新たに構築する。洋室Cの床2と収納蔵Dの床3を新たな軸組5,5に支持させてそれぞれ構築する。そして、べた基礎の上に一階の洋室Bの床1を施工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として木造二階建て住宅に収納蔵を増設する木造建物のリフォーム工法に関し、床面積および階数に関する建築基準法上の規制を受けずに実質的に広い収納蔵を増設することができる。
【背景技術】
【0002】
一般に、戸建住宅には新築当初から押入れの他に階段下や天井裏、あるいは床下、さらには屋根裏などのスペースを利用して収納庫が設けられているが、家族が増え、ライフスタイルや生活の質の向上に伴ない、日用品などの生活物資が増え、しかも多種多様にわたるため新築時の収納庫では収容しきれないのが現状である。
【0003】
また、この種の収納庫は、階段下などのいわゆるデットスペースを利用し、多くは分散して設けられているため、狭いものが多く、大きいものは収納できないという問題があった。
【0004】
そこで最近では、一階と二階の間に蔵のような広い収納庫を設けて収納スペースの不足を解消するようにした蔵付きの戸建て住宅が建設されてきている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−097932号公報
【特許文献2】特開2004−019117号公報
【特許文献3】特開2004−011336号公報
【特許文献4】特開平06−323009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の蔵付き戸建て住宅は新築時から収納蔵を備えており、後から増設するにしても、収納蔵は一般に家具類を初めとする多くの物が収容され、積載荷重が相当嵩むことが予想されるため、簡単に増設できるものではない。
【0007】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、既存の木造建物に収納蔵を新築時の床面積と階数を変えずに増設できるようにした木造建物のリフォーム工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の木造建物のリフォーム工法は、既存の木造建物に収納蔵を増設する木造建物のリフォーム工法であって、前記収納蔵を増設する部分の上層階の床とその下方に位置する下層階の床を撤去した後、新たな上層階の床と収納蔵の床を新たに設け、当該新たな上層階の床と収納蔵の床は既存の構造体とは別に設けた構造体に支持させることを特徴とするものである。
【0009】
本発明は、主として既存の木造二階建て住宅に収納蔵を床面積と階数を変えずに増設することを可能にしたリフォーム工法であり、特に収納蔵の天井高を1.4m以下、床面積を出入口階の床面積の1/2以下とすることにより、収納蔵の床面積と階数を建築基準法上の床面積と階数から除くことができるため、新築時の床面積と階数を維持しながら実質的にかなり広い床面積の収納蔵を増設することができる。
【0010】
また、収納蔵を設けることにより収納蔵の上下階の居室天井高が低くなるという問題は、一階の床下空間を利用して補うことにより解消されるため、収納蔵を設けたことで建物の高さをあえて高くする必要もない。また、必要に応じて二階の天井を撤去して屋根裏まで吹き抜けにすれば、かなり天井の高い居室を二階に設けることができる。
【0011】
収納蔵は二階と一階の間、二階の上側、さらには一階の床下に増設することができる。また、リフォームによって新たに設ける二階の床と収納蔵の床は、既存の構造体とは別にその内側に新たに設ける構造体に支持させることで、既存の構造体に手を加えずに収納蔵を増設することができ、また相当量の積載荷重にも充分耐え得る収納蔵を増設することができる。
【0012】
収納蔵を増設する位置としては、上下階の居室が同じ広さで上下に対応して配置され、しかもその柱が上下階を通して連続して配置されているような位置が望ましい。
【0013】
また、新たに設ける構造体は、柱、梁、土台などからなる在来の軸組構造体の他、規格化された枠材と構造用合板からなる枠組構造体などを用いることができ、さらに既存の構造体の内側に構造用合板を釘打ちする等して補強し、これに新たに設ける二階の床と収納蔵の床を方杖などによって支持させてもよい。
【0014】
請求項2記載の木造建物のリフォーム工法は、請求項1記載の木造建物のリフォーム工法において、前記新たな上層階の床の下方に収納蔵の床を設け、さらにその下方に新たな下層階の床を設けることを特徴とするものである。本発明は一階と二階の間に収納蔵を増設する方法であり、この場合、収納蔵には二階などから階段によって出入りするようにすることができ、階段は可動式階段とすることができる。また、一階の床は既存の床下に新たに設けたべた基礎の上に直に設けてもよい。
【0015】
請求項3記載の木造建物のリフォーム工法は、請求項1記載の木造建物のリフォーム工法において、前記収納蔵の床の下方に新たな上層階の床を設け、さらにその下方に新たな下層階の床を設けることを特徴とするものである。本発明は、二階の上に収納蔵を設ける方法であり、この場合、収納蔵には二階から階段によって出入りすることができる。
【0016】
請求項4記載の木造建物のリフォーム工法は、請求項1記載の木造建物のリフォーム工法において、前記新たな上層階の床の下方に新たな下層階の床を設け、さらにその下方に前記収納蔵の床を設けることを特徴とするものである。
【0017】
本発明は一階の床下に収納蔵を設ける方法であり、この場合、収納蔵には一階から階段によって出入りすることができる。
【0018】
請求項5記載の木造建物のリフォーム工法は、請求項1〜4のいずれかに記載の木造建物のリフォーム工法において、新たに設ける構造体は既存の構造体の内側に設けることを特徴とするものである。本発明は新たに設ける構造体を既存の構造体の内側に設けることにより、屋内工事によって収納蔵の増設を行なうことができる等の効果がある。また、既存の構造体と新たに設ける構造体とを一体化することにより耐震性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、収納蔵を設ける部分の上層階の床とその下方に位置する下層階の床を撤去した後、新たに上層階の床と収納蔵の床を新たに設け、当該新たな上層階の床と収納蔵の床は既存の構造体とは別に設けた構造体に支持させることにより、既存の木造二階建て住宅に収納蔵をリフォームによって容易に増設することができる。
【0020】
また特に、収納蔵の天井高を1.4m以下、床面積を出入口階の床面積の1/2以下とすることにより、収納蔵の床面積と階数を建築基準法上の床面積と階数から除くことができるため、新築時の床面積と階数を維持しながら実質的にかなり広い床面積の収納蔵を増設することができる。
【0021】
さらに、収納蔵の床は、既存の構造体とは別に新たに設けた構造体に支持させるので、既存の構造体に構造上問題となるような手を加える必要がなく、また相当量の積載荷重に耐え得る収納蔵を増設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1〜図3は、一階と二階の間に収納蔵をリフォームによって増設した戸建て木造住宅の一例を示し、図において、一階に玄関、玄関ホール、玄関ホールに接して洋室A、玄関ホールから奥に続く廊下、そして廊下の突当りに洋室B、廊下を挟んでその左右両側に洗面所、トイレ、浴室等の水回りと二階に通じる階段がそれぞれ配置されている。
【0023】
また、二階には階段を上がってすぐの位置にリビングが配置され、リビングを挟んでその上下両側に洋室CとDKがそれぞれ配置され、さらに一階の洋室Bと二階の洋室Cとの間に収納蔵Dが配置されている。
【0024】
また特に、一階の洋室Bの床1は、洋室Aや廊下などの他の床より低い位置に設けられ、洋室Bには廊下の先に設けられた階段Eを通って行き来するようになっている。
【0025】
また、二階の洋室Cの床2は、リビングやDKの床より高い位置に設けられ、洋室Cにはリビングと洋室Cとの間に設けられた階段Fおよび踊り場Gを通って出入りするようになっている。
【0026】
さらに、収納蔵Dの床は、リビングおよびDKの床より低い位置に設けられ、収納蔵Dには踊り場Gに接して収納蔵D内に設けられた階段Hを通って出入りするようになっている。
【0027】
また、構造的には、一階の洋室Bの床1は割石または砕石の上に捨てコンを打設し、その上にスタイロフォーム等の断熱材を敷設し、さらにその上にRCべた基礎を施工し、その上にフローリングの直張り等の仕上げを行なうことにより構成されている。なお、一階の床をべた基礎の上に直張り仕上げとすることにより防蟻処理を簡略化することができる。
【0028】
また、二階の洋室Cの床2と収納蔵Dの床3は、柱などからなる既存の軸組4の内側にこれとは別に新たに構築された軸組5,5間に梁や根太などからなる床組6を新たに構築し、この床組6の上に床下地合板を釘打ちし、その上に仕上げを行なって構成されている。また、洋室Bおよび収納蔵Dの内壁は、新たに構築された軸組5の内側に壁下地合板を釘打ちし、その上に仕上げを行なうことにより構成されている。
【0029】
なお、図示する軸組5は一階のべた基礎の上に土台5aを敷設し、その上に柱5bを建て付け、柱5b,5b間に洋室Cと収納蔵Dの梁5cをそれぞれ架け渡すことにより既存の軸組4の内側に沿って構築されている。
【0030】
また、図4は一階の洋室Bの床下に収納蔵Dを増設した例を示し、図5は二階の洋室Cの上に収納蔵Dを増設した例を示したものである。
【0031】
このような構成において、施工方法について説明すると、最初に一階の洋室Bの既存床と二階の洋室Cの既存床をそれぞれ撤去する。
【0032】
次に、洋室Bの床下にべた基礎を施工する。次に、べた基礎の上に土台5aを敷設し、土台5aの上に柱5bを建て付け、さらに柱5b,5b間に洋室Cおよび収納蔵Dの梁5c,5cをそれぞれ架け渡して新たな軸組5を既存の軸組4に沿って新たに構築する。
【0033】
次に、洋室Cの床2と収納蔵Dの床3を新たな軸組5,5に支持させてそれぞれ構築する。床2と床3は、軸組5に支持させて梁と根太とからなる床組6を構築し、その上に床合板を釘打ちし、さらにその上に床仕上げを行なって構築する。そして、これらの工事が完了したらべた基礎の上に一階の洋室Bの床1を施工する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、既存の木造住宅に収納蔵をリフォームによって床面積と建物の階数を変えずに増設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】リフオームによって収納蔵が増設された木造戸建て住宅の一例を示し、(a)は一階平面図、(b)は一階と二階との間に増設された収納蔵の平面図、(c)は二階の平面図である。
【図2】一階と二階との間にリフオームによって収納蔵が増設された木造戸建て住宅の一例を示し、(a)は図1(a)、(b)、(c)におけるイ−イ線断面図、(b)はロ−ロ線断面図である。
【図3】一階と二階との間にリフオームによって収納蔵が増設された木造戸建て住宅の構造を示し、図2(a)におけるハ−ハ線断面図である。
【図4】一階と二階との間にリフオームによって収納蔵が増設された木造戸建て住宅の構造を示し、図2(a)におけるハ−ハ線断面図である。
【図5】一階と二階との間にリフオームによって収納蔵が増設された木造戸建て住宅の構造を示し、図2(a)におけるハ−ハ線断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 一階の洋室Bの床
2 二階の洋室Cの床
3 収納蔵Dの床
4 既存の軸組(既存の構造体)
5 新たな軸組(新たな構造体)
5a 土台
5b 柱
5c 梁
6 床組

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の木造建物に収納蔵を増設する木造建物のリフォーム工法であって、前記収納蔵を増設する部分の上層階の床とその下方に位置する下層階の床を撤去した後、新たな上層階の床と収納蔵の床を新たに設け、当該新たな上層階の床と収納蔵の床は既存の構造体とは別に設けた構造体に支持させることを特徴とする木造建物のリフォーム工法。
【請求項2】
前記新たな上層階の床の下方に収納蔵の床を設け、さらにその下方に新たな下層階の床を設けることを特徴とする請求項1記載の木造建物のリフォーム工法。
【請求項3】
前記収納蔵の床の下方に新たな上層階の床を設け、さらにその下方に新たな下層階の床を設けることを特徴とする請求項1記載の木造建物のリフォーム工法。
【請求項4】
前記新たな上層階の床の下方に新たな下層階の床を設け、さらにその下方に収納蔵の床を設けることを特徴とする請求項1記載の木造建物のリフォーム工法。
【請求項5】
新たに設ける構造体は既存の構造体の内側に設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の木造建物のリフォーム工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−57791(P2009−57791A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227688(P2007−227688)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)
【Fターム(参考)】