説明

木造建築のハイブリット構造用接合金物

【課題】本発明は、木造建築物の軸組構法における、ハイブリット構造での木質柱と鋼製梁を接合する剛接合金物を提供すること。
【解決手段】木質柱と鋼製梁の接合金物において、鋼板片をZ字形状に折曲げボルト孔を設けた縦長形状のウェブ面3aと、ウェブ面上端で水平状の上部板3bと、ウェブ面下端でボルト孔を設けた水平状の下部板と、ウェブ面と下部板から垂直に突出して、ボルト孔を設けている中央板とで形成されている梁受け金具3と、鋼板片をL字形状に曲げた垂直片の縦板と水平片の水平板にボルト孔を設けて形成されているL型ピ−ス4であって、前記ウェブ面3aと前記縦板が柱面に当接し、前記上部板3bが前記柱面の所定の位置に挿入し、前記下部板と前記中央板および前記水平板が鋼製梁に当接し、該ボルト孔にボルトを挿通して木質柱と鋼製梁とを接合してなることを特徴とする木造建築のハイブリット構造用接合金物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物の軸組構法における、ハイブリット構造(木+鋼)での木質柱と鋼製梁を接合する剛接合金物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止など環境面で森林(若木の場合)でのCO2吸収効果が注目されて、森林保全によるCO2排出枠、および林業振興で地方再生も兼ねての林業活性化が叫ばれ、政府は木材利用を促進する方策として、昨年10月1日「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を施行した。法律の基本的な方向は、公共建築物における木材の利用の促進の意義を踏まえ、非木造化を指向してきた過去の考え方を抜本的に転換し、公共建築物については可能な限り木造化を図る法律となっている。公共建築物には、国や地方が建設する学校、社会福祉施設、庁舎、公務員宿舎等が含まれている。しかし、公共建築や民間の非住宅を木造での大規模な構造にしたくとも、規模が違うため蓄積がある木造住宅の技術は転用できない。すなわち、構造計画やコストの面で木造化が困難な場合もあり、大規模な木造の技術が系統立っていないのが現状である。
【0003】
従来の木造建築の軸組構法は、まず、柱と梁で軸組を構成し、それに壁や床を取り付けて行く構法である。柱には「通し柱」と「管柱」があり、柱の構造的な役割は、通し柱、管柱ともに垂直荷重を支持し、耐力壁として外周部に生じる圧縮力や引張力に抵抗することである。また、風圧力(水平力)を受ける外壁面での変形を防ぐことである。梁の役割は、床などから伝達された鉛直荷重を柱へ伝えるばかりでなく、水平荷重時の外周部に生じる圧縮力や引張力に抵抗することである。
【0004】
木材と鋼材のヤング係数(剛性)を比較すると、木材のヤング係数は鋼材の3%〜5%程度と小さいため、木造建築では、柱と柱の間隔(スパン)を長くすると、居住性や収まりの観点から木製梁の撓みが問題になることが多い。この木製梁の撓みは、梁成(梁の高さ)を大きくすることで、撓みを小さくすることができる。しかし、梁断面積の大きい木材を使用すると高コストとなる。したがって、現在、この問題を解消することが喫緊の課題となっている。今後、公共建築物等の大規模な木造建築物に適した梁材として、コスト・強度・耐火等の性能を満たしている鋼製梁が普及すると思われる。
【0005】
近年、木製の柱に、高い強度の鋼製梁を使用する場合の接合金物が提案されている。例えば、実開昭57−168603号公報(第1公知例)では、梁取付金具2の取付板5を角材製の柱1に当接させ、その取付板5の複数個のボルト貫通孔7及びこれに一致する柱材1の複数個のボルト貫通孔11に、それぞれボルト14を貫通させてナット15で緊結することにより、柱材1に止着し、また、この梁取付金具2の接合板6にI型鋼製の梁材3のウェブ9の先端部を当接させ、該先端部に設けた複数個のボルト貫通孔10及びこれに一致する接合板6の複数個のボルト貫通孔8に、それぞれボルト16を貫通させてナット17で緊締することにより、梁材3を梁取付金具2に接合する方法が開示されている。
【0006】
また、木造の柱に軽量形鋼からなる鉄骨ばり等の横架材を容易に接合できる木造軸組の接合構造および接合金物が、特開2010−95968(第2公知例)で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭57−168603号
【特許文献2】特開2010−95968号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記の第1と第2公知例に係る接合金物は、ハイブリット構造でありながら、ブレ−ス構造で考案されており、大規模な木造建築物に要求されるラ−メン構造に対する適用は、不向きな接合金物と言える。
【0009】
第1公知例の場合は、柱材と梁材のフランジ部が接合されていない。例えば、梁取付金具2を形成している接合板6の上端および下端では、梁のフランジに接合するための接合板が見当たらない。したがって、接合板6と梁材3のフランジとの接合ができず、曲げ応力を伝えることができない。また、梁取付金具2の取付板5を角材製の柱1に当接させ、その取付板5の複数個のボルト貫通孔7及びこれに一致する柱材1の複数個のボルト貫通孔11に、それぞれボルト14を貫通させてナット15で緊締すると記載されているが、柱面に当接する側の取付板5の板面は平坦で突起部がない。したがって、柱材1の接合部位に突起部が食い込むことができず、接合部位に作用するせん断の耐力は、引張り応力が働く役目のボルト14のみとなり、十分なせん断耐力を得ることはできない。
【0010】
次いで、第2公知例は、軽量H形鋼からなる鉄骨ばり2と木造の柱1を接合する接合金物3とで構成されているが、接合金物3の固定部3aは、木造の柱1の側面部1aにボルト止めされ、接合金物3の接合部3bは鉄骨ばり2のウェブ2aに接合すると説明されており、接合金物3と鉄骨ばり2のフランジとの接合は記載されていない。したがって、曲げ応力を伝えることができない。また、接合金物3の固定部3a面が平坦であり、木造の柱1の接合部位において、十分なせん断耐力を得ることはできない。
【0011】
本発明の解決すべき課題は、大規模な木造建築物、例えば、柱と柱の間隔(スパン)が長い、天井が高いといった公共建築物等の構造的特性に対応する、ラ−メン構造で最も重要な木質柱と鋼製梁の剛接合金物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を解決すべく検討した結果、ハイブリット構造(木+鋼)において、ラ−メン構造での接合金物の技術的知見を得た。その要旨とするところは以下の通りである。
【0013】
(1)木造建築物の木質柱と鋼製梁の接合金物において、鋼板片をZ字形状に折曲げて、複数のボルト貫通孔を設けた縦長形状のウェブ面と、ウェブ面の上端で木質柱方向に直角に折曲げた水平状の上部板と、ウェブ面の下端で木質柱と離反方向に直角に折曲げて、複数のボルト貫通孔を設けた水平状の下部板と、ウェブ面幅の中心で、ウェブ面と下部板から垂直に突出して、複数のボルト貫通孔を設けている中央板とで形成されている梁受け金具と、鋼板片をL字形状に曲げた鉛直片の縦板と、水平片の水平板に複数のボルト貫通孔を設けて形成されているL型ピ−スであって、前記ウェブ面と前記縦板が木質柱面に当接し、前記上部板を前記木質柱面の所定の位置に挿入し、前記下部板と前記中央板および前記水平板が鋼製梁に当接し、該ボルト貫通孔にボルトを挿通して、木質柱と鋼製梁とを接合してなることを特徴とする木造建築のハイブリット構造用接合金物。
【0014】
(2)鋼板片を折曲げ形成したL字形状の鉛直片に、複数のボルト貫通孔を設けた縦長形状の取付け板と、取付け板の上端で木質柱方向に直角に折曲げた水平状の天板と、取付け板の下部近傍で木質柱と離反方向で、取付け板に直角に突出する複数のボルト貫通孔を設けた水平状の棚板と、取付け板幅の中心で、取付け板と棚板から垂直に複数のボルト貫通孔を設けて突出している中板とで形成されている梁受け剛金具と、鋼板片をL字形状に曲げた鉛直片の縦板と、水平片の水平板に複数のボルト貫通孔を設けて形成されているL型ピ−スであって、前記取付け板と前記縦板が木質柱面に当接し、前記天板を前記木質柱面の所定の位置に挿入し、前記棚板と前記中板および前記水平板が鋼製梁に当接し、該ボルト貫通孔にボルトを挿通して、木質柱と鋼製梁とを接合してなることを特徴とする木造建築のハイブリット構造用接合金物。
【発明の効果】
【0015】
(A)本発明に係る木造建築のハイブリット構造用接合金物によれば、せん断・軸力・曲げ応力の伝達が可能な剛接合金物である。したがって、ラ−メン構造ができるため、天井を高く、また、大スパン(張間)を長くすることが可能で、公共建築物等の構造的特性に対応した、耐震性、耐久性を重要視した設計を合理的に行うことができ、粘り強い構造等の効果が得られる。
【0016】
(B)本発明に係る木造建築のハイブリット構造用接合金物によれば、木質柱に梁受け金具等がボルト等の固定金具を用いて接合され、梁受け金具に有する上部板が木質柱の接合部位に食い込んで緊密に接合されている。したがって、せん断耐力が高くなり、高い接合強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る木造建築のハイブリット構造用接合金物の木質柱と鋼製梁との接合部の第1の実施例を示す模式図である。
【図2】本発明に係る第1の実施例を示す接合金物の接合部の分解斜視図である。
【図3】本発明に係る梁受け金具等の第1の実施例を示す説明図であり、(a)は梁受け金具の模式図、(b)はL型ピ−スの模式図である。
【図4】本発明に係る木造建築のハイブリット構造用接合金物の木質柱と鋼製梁との接合部の第2の実施例を示す模式図である。
【図5】本発明に係る第2の実施例を示す接合金物の接合部の分解斜視図である。
【図6】本発明に係る梁接合金具等の第2の実施例を示す説明図であり、(a)は梁受け剛金具の模式図、(b)はL型ピ−スの模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図1〜図6に基づいて、本発明に係る木造建築のハイブリット構造用接合金物の2通りの実施形態例を説明する。
(実施例1)
図1は本発明に係る木造建築のハイブリット構造用接合金物の木質柱と鋼製梁との接合部の第1の実施例を示す模式図であり、図2は本発明に係る第1の実施例を示す接合金物の接合部の分解斜視図である。この例において、木質柱1,鋼製梁2,上部フランジ2a、下部フランジ2b、ウェブ2c、梁受け金具3,ウェブ面3a、上部板3b、下部板3c、中央板3d、L型ピ−ス4、縦板4a、水平板4b、リブ4c、ボルト貫通孔5,ボルト6,長尺ボルト7,座金8,ナット9,長尺ボルト貫通孔10およびフランジ挿入口11から構成される。以下、これに沿って説明する。
【0019】
まず、木質柱1と鋼製梁2を接合するハイブリット構造用接合金物の部品の構成について説明する。図2に示すように、梁受け金具3は、木質柱1(鉛直材)面に当接する梁受け金具3のウェブ面3aと、木質柱1のフランジ挿入口11に挿入する上部板3bと、鋼製梁2の下部フランジ2bと接合する下部板3cと、鋼製梁2のウェブ2cと接合する中央板3dで形成されている。また、L型ピ−ス4は、木質柱1に当接する垂直片の縦板4aと、鋼製梁2の上部フランジ2aに接合する水平状の水平板4bとで形成されている。
【0020】
次に、梁受け金具3について説明する。梁受け金具3は、図2に示すように、ウェブ面3aに、長尺ボルト7を挿通させるための複数のボルト貫通孔5を有し、ウェブ面3aの上端には水平状に上部板3bを設けている。この上部板3bを、木質柱1に凹形状に加工されているフランジ挿入口11に挿入し、引張りボルト(長尺ボルト7)の緊締と共に、木質柱1に緊密に接合することで、鋼製梁2で受ける固定荷重、積載荷重等の鉛直力に対抗して、高いせん断耐力が達成できるようになっている。続いて、鋼製梁2に接合できるように、ウェブ面3aの下端には、水平状の下部板3cと、ウェブ面3a幅の中心から垂直に突出した中央板3dを設けており、前記の各板には複数のボルト貫通孔5を施している。L型ピ−ス4は、鋼板片をL字形状に折曲げてリブ付け4cを行っており、鉛直片の縦板4aと水平片の水平板4bで形成されている。前記の両片には、長尺ボルト7と、ボルト6を使用し、木質柱1と鋼製梁2に接合できるように複数のボルト貫通孔5を設けている。なお、リブ4c付けを行うことにより、曲げ部分の強度が増し剛性を向上させる効果が得られる。
【0021】
続いて、ハイブリット構造用接合金物の接合形態について説明する。図1と図2に示すように、梁受け金具3は、木質柱1のフランジ挿入口11に、上部板3bが挿入され、長尺ボルト貫通孔10および座金8を挿通した長尺ボルト7がナット9で緊結されて、木質柱1に付設されている。次に、鋼製梁2のウェブ2c間で形成されている空間部(隙間)に、木質柱1に付設されている梁受け金具3の中央板3dを差し込み嵌合状態にして、中央板3dとウェブ2c、および、下部フランジ2bと下部板3cを、ボルト6、ナット9で緊結し鋼製梁2が固定されている。なお、実施例として、鋼製梁2の代表としてダブル軽ミゾ形鋼で説明しているが、本発明ではこれに限ることなく、梁材として満足すべき強度が得られることができれば形状はかまわない。例えば、H形鋼、軽量H形鋼等を挙げることができる。次いで、L型ピ−ス4の水平板4bと鋼製梁2の上部フランジ2a、および、L型ピ−ス4の縦板4aと木質柱1とを当接して、ボルト6および長尺ボルト7をナット9で緊結し、木質柱1と鋼製梁2が強固に接合されている。力の伝達は、外周に作用する引張力に対しては、木質柱1に挿通している長尺ボルト7で、圧縮力に対しては木質柱1と鋼製梁2で負担する役割で構成され、また、せん断力に対しては、主に中央板3dで、曲げに対しては、梁受け金具3とL型ピ−ス4と鋼製梁2で負担する仕組みになっている。すなわち、上述した各部品の配置によりモ−メント抵抗接合型のシステムが構築されている。
【0022】
施行方法を作業手順により説明する。建設現場内で、まず、図2に示すように、木質柱1に加工されているフランジ挿入口11に、梁受け金具3の上部板3bを挿入し、木質柱1の外側から座金8と長尺ボルト貫通孔10を挿通した長尺ボルト7に、ナットで緊結し、梁受け金具3が木質柱1に結合される。なお、木質柱1に、梁受け金具3を結合する場所は、本来なら工場での作業が品質上望ましいが、現場での立地条件や、養生、運搬費、工期等を検討した上での低コストの選択となる。
【0023】
続いて、図2に示すように、まず、建て方作業にて木質柱1を鉛直に建てて、木質柱1に付接している梁受け金具3より突起している中央板3dに、水平材である鋼製梁2のウェブ2cを当接し、中央板3dとウェブ2c、および、下部フランジ2bと下部板3cを、ボルト6、ナット9を用いて緊結し鋼製梁2が固定される。次に、鋼製梁2の上部フランジ2aの上に、L型ピ−ス4を載置して、上部フランジ2aのボルト貫通孔5と水平板4bのボルト貫通孔5との孔が一致するようにして、ボルト6を差し込むと同時に、L型ピ−ス4の縦板4aのボルト貫通孔5と木質柱1の長尺ボルト貫通孔10の孔を一致させ、長尺ボルト7を差し込み、各々のボルトをナット9で緊結し、木質柱1と鋼製梁2が接合されている。したがって、せん断・軸力・モ−メントの伝達が可能な剛接合金物で、モ−メント抵抗性能が高いラ−メン構法を得ることができる。
【0024】
(実施例2)
図4は本発明に係る木造建築のハイブリット構造用接合金物の木質柱と鋼製梁との接合部の第2の実施例を示す模式図であり、図5は本発明に係る第2の実施例を示す接合金物の接合部の分解斜視図である。この例において、木質柱1,鋼製梁2,上部フランジ2a、下部フランジ2b、ウェブ2c、梁受け剛金具12,取付け板12a、天板12b、棚板12c、中板12d、L型ピ−ス4、縦板4a、水平板4b、リブ4c、ボルト貫通孔5,ボルト6,長尺ボルト7,座金8,ナット9,長尺ボルト貫通孔10およびフランジ挿入口11から構成される。以下、これに沿って説明する。
【0025】
まず、木質柱1と鋼製梁2を接合するハイブリット構造用接合金物の部品の構成について説明する。図5に示すように、梁受け剛金具12は、木質柱1(鉛直材)面に当接する梁受け剛金具12の取付け板12aと、木質柱1のフランジ挿入口11に挿入する天板12bと、鋼製梁2の下部フランジ2bと接合する棚板12cと、鋼製梁2のウェブ2cと接合する中板12dで形成されている。また、L型ピ−ス4は、木質柱1に当接する垂直片の縦板4aと、鋼製梁2の上部フランジ2aに接合する水平状の水平板4bとで形成されている。
【0026】
次に、梁受け剛金具12について説明する。梁受け剛金具12は、図5に示すように、取付け板12aに、長尺ボルト7を挿通させるための複数のボルト貫通孔5を有し、取付け板12aの上端には水平状に天板12bを設けている。この天板12bを、木質柱1に凹形状に加工されているフランジ挿入口11に挿入し、引張りボルト(長尺ボルト7)の緊締と共に、木質柱1に緊密に接合することで、鋼製梁2で受ける固定荷重、積載荷重等の鉛直力に対抗して、高いせん断耐力が達成できるようになっている。続いて、鋼製梁2に接合できるように、取付け板12aの下部の近傍で、水平状の棚板12cと、取付け板12a幅の中心から垂直に突出した中板12dを設けており、前記の各板には複数のボルト貫通孔5を施している。L型ピ−ス4は、鋼板片をL字形状に折曲げてリブ付け4cを行っており、鉛直片の縦板4aと水平片の水平板4bで形成されている。前記の両片には、長尺ボルト7と、ボルト6を使用し、木質柱1と鋼製梁2に接合できるように複数のボルト貫通孔5を設けている。なお、リブ4c付けを行うことにより、曲げ部分の強度が増し剛性を向上させる効果が得られる。
【0027】
続いて、ハイブリット構造用接合金物の接合形態について説明する。図4と図5に示すように、梁受け剛金具12は、木質柱1のフランジ挿入口11に、天板12bが挿入され、長尺ボルト貫通孔10および座金8を挿通した長尺ボルト7がナット9で緊結されて、木質柱1に付設されている。次に、鋼製梁2のウェブ2c間で形成されている空間部(隙間)に、木質柱1に付設されている梁受け剛金具12の中板12dを差し込み嵌合状態にして、中板12dとウェブ2c、および、下部フランジ2bと棚板12cを、ボルト6、ナット9で緊結し鋼製梁2が固定されている。なお、実施例として、鋼製梁2の代表としてダブル軽ミゾ形鋼で説明しているが、本発明ではこれに限ることなく、梁材として満足すべき強度が得られることができれば形状はかまわない。例えば、H形鋼、軽量H形鋼等を挙げることができる。次いで、L型ピ−ス4の水平板4bと鋼製梁2の上部フランジ2a、および、L型ピ−ス4の縦板4aと木質柱1とを当接して、ボルト6および長尺ボルト7をナット9で緊結し、木質柱1と鋼製梁2が強固に接合されている。力の伝達は、外周に作用する引張力に対しては、木質柱1に挿通している長尺ボルト7で、圧縮力に対しては木質柱1と鋼製梁2で負担する役割で構成され、また、せん断力に対しては、主に中板12dで、曲げに対しては、梁受け剛金具12とL型ピ−ス4と鋼製梁2で負担する仕組みになっている。すなわち、上述した各部品の配置によりモ−メント抵抗接合型のシステムが構築されている。
【0028】
施行方法を作業手順により説明する。建設現場内で、まず、図4に示すように、木質柱1に加工されているフランジ挿入口11に、梁受け剛金具12の天板12bを挿入し、木質柱1の外側から座金8と長尺ボルト貫通孔10を挿通した長尺ボルト7に、ナットで緊結し、梁受け剛金具12が木質柱1に結合される。なお、木質柱1に、梁受け剛金具12を結合する場所は、本来なら工場での作業が品質上望ましいが、現場での立地条件や、養生、運搬費、工期等を検討した上での低コストの選択となる。
【0029】
続いて、図5に示すように、まず、建て方作業にて木質柱1を鉛直に建てて、木質柱1に付接している梁受け剛金具12より突起している中板12dに、水平材である鋼製梁2のウェブ2cを当接し、中板12dとウェブ2c、および、下部フランジ2bと棚板12cを、ボルト6、ナット9を用いて緊結し鋼製梁2が固定される。次に、鋼製梁2の上部フランジ2aの上に、L型ピ−ス4を載置して、上部フランジ2aのボルト貫通孔5と水平板4bのボルト貫通孔5との孔が一致するようにして、ボルト6を差し込むと同時に、L型ピ−ス4の縦板4aのボルト貫通孔5と木質柱1の長尺ボルト貫通孔10の孔を一致させ、長尺ボルト7を差し込み、各々のボルトをナット9で緊結し、木質柱1と鋼製梁2が接合されている。したがって、せん断・軸力・モ−メントの伝達が可能な剛接合金物で、モ−メント抵抗性能が高いラ−メン構法を得ることができる。
【0030】
上述した金物類の材質は、一般構造用圧延鋼材(SS400)を代表として示したが、本発明ではこれに限ることなく、機能的に満足すべき強度が得られることができれば、公知
の材質で良い。例えば、鋳物等を挙げることができる。なお、当該金物のサイズは、設計時の諸条件により決められるが、プレ−トの厚は4.5〜12.0mm程度で、梁受け金具とL型ピ−スとを合わせて、幅は150〜300mm程度、高さは300〜700mm程度、長さは450〜750mm程度である。
【0031】
以上説明したように木造建築のハイブリット構造用接合金物の本発明に係るによれば、モ−メント抵抗型の剛接合金物である。木質柱と鋼製梁の接合箇所において、せん断・軸力・曲げ応力の伝達が可能な接合システムである。すなわち、大規模な木造建築物の公共建築物等の構造的特性に対応した、ラ−メン構法等が可能な接合金物を提供することで、耐震性、耐久性を重要視した構造設計を合理的に行うことができ、粘り強い構造等の効果が得られる。したがって、大規模な木造の技術が系統立っていない現状に貢献することも可能であり、建設業界での社会に与える効用は極めて大きい。
【符号の説明】
【0032】
1 木質柱
2 鋼製梁
2a 上部フランジ
2b 下部フランジ
2c ウェブ
3 梁受け金具
3a ウェブ面
3b 上部板
3c 下部板
3d 中央板
4 L型ピ−ス
4a 縦板
4b 水平板
4d リブ
5 ボルト貫通孔
6 ボルト
7 長尺ボルト
8 座金
9 ナット
10 長尺ボルト貫通孔
11 フランジ挿入口
12 梁受け剛金具
12a 取付け板
12b 天板
12c 棚板
12d 中板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築物の木質柱と鋼製梁の接合金物において、鋼板片をZ字形状に折曲げて、複数のボルト貫通孔を設けた縦長形状のウェブ面と、ウェブ面の上端で木質柱方向に直角に折曲げた水平状の上部板と、ウェブ面の下端で木質柱と離反方向に直角に折曲げて、複数のボルト貫通孔を設けた水平状の下部板と、ウェブ面幅の中心で、ウェブ面と下部板から垂直に突出して、複数のボルト貫通孔を設けている中央板とで形成されている梁受け金具と、鋼板片をL字形状に曲げた鉛直片の縦板と、水平片の水平板に複数のボルト貫通孔を設けて形成されているL型ピ−スであって、
前記ウェブ面と前記縦板が木質柱面に当接し、前記上部板を前記木質柱面の所定の位置に挿入し、前記下部板と前記中央板および前記水平板が鋼製梁に当接し、該ボルト貫通孔にボルトを挿通して、木質柱と鋼製梁とを接合してなることを特徴とする木造建築のハイブリット構造用接合金物。
【請求項2】
鋼板片を折曲げ形成したL字形状の鉛直片に、複数のボルト貫通孔を設けた縦長形状の取付け板と、取付け板の上端で木質柱方向に直角に折曲げた水平状の天板と、取付け板の下部近傍で木質柱と離反方向で、取付け板に直角に突出する複数のボルト貫通孔を設けた水平状の棚板と、取付け板幅の中心で、取付け板と棚板から垂直に複数のボルト貫通孔を設けて突出している中板とで形成されている梁受け剛金具と、鋼板片をL字形状に曲げた鉛直片の縦板と、水平片の水平板に複数のボルト貫通孔を設けて形成されているL型ピ−スであって、
前記取付け板と前記縦板が木質柱面に当接し、前記天板を前記木質柱面の所定の位置に挿入し、前記棚板と前記中板および前記水平板が鋼製梁に当接し、該ボルト貫通孔にボルトを挿通して、木質柱と鋼製梁とを接合してなることを特徴とする木造建築のハイブリット構造用接合金物。



















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−87414(P2013−87414A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225447(P2011−225447)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(506200083)
【Fターム(参考)】