説明

木造建築物における建築金物の取付装置

【課題】木造建築物における柱等の角材に建築金物を強固に取付可能とする取付装置を提供する。
【解決手段】角材の中心軸線Zを通過して相互に直交するX軸とY軸に関し、X軸方向に角材を貫通する第1挿通孔(21)に挿通される第1軸部材(11a)と、Y軸方向に角材を貫通する第2挿通孔(22)に挿通される第2軸部材(11b)とから成り、前記両軸部材(11a,11b)は、両挿通孔(21,22)の交差孔部(23)に位置して相互にX軸方向及びY軸方向に移動不能に係止される結合手段(14)を備えると共に、前記中心軸線Zに沿う2方向(Z1,Z2)のうち少なくとも一方向に対向する両挿通孔(21,22)の孔壁により支持される支持手段(18)を備え、前記角材の側面に開口する両挿通孔(21,22)の開口部に臨む第1軸部材(11a)及び第2軸部材(11b)の軸端のうち、少なくとも1つの軸端に建築金物(26)を取付可能とする取付手段(17)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物における柱等の角材に建築金物を強固に取付可能とする取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物は、耐震構造の強化、その他の目的により、柱等の角材に種々の建築金物が取付けられている。多くの木造建築物において、例えば、柱に梁を連結する際、柱の側面に受け金物を固設し、該受け金物に柱の端部を固着する連結構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−240440号公報
【特許文献2】特開2007−303199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、柱に梁を連結する場合、図8に示すような受け金物が知られている。この点に関して、1本の柱1の同一高さ位置にX軸方向の第1梁2aとY軸方向の第2梁2bを連結する際、それぞれの梁2a、2bを連結するための一対の受け金物3a、3bが使用され、該受け金物3a、3bは、それぞれ柱1を貫通するボルト4a、4bにより固着される。
【0005】
そこで、柱1にX軸方向の第1挿通孔5aとY軸方向の第2挿通孔5bを形成する必要があるが、両孔5a、5bが交わっていると一対のボルト4a、4bを挿通させることができないので、両孔5a、5bは、上下方向(Z軸方向)に位置をずらせて形成される。
【0006】
前記受け金物3a、3bは、上下方向に複数の孔(図に鎖線で示す)を設けており、選択された孔にボルト4a、4bを挿通させ、該ボルトの挿出端にナットを締結することにより同一高さ位置に固設される。尚、梁2a、2bは、それぞれ公知の方法により前記受け金物3a、3bに搭載され固着される。
【0007】
ところが、梁2a、2bに対して下向き方向(図示Z2方向)の大きな荷重が作用すると、これを支持するボルト4a、4bを挿通した挿通孔5a、5bの交差部分が上下に近接しているので、該交差部分に位置して柱1の内部に亀裂が生じ易い。特に、柱1は、木目を上下方向に配向しているので、前記交差部分に生じた亀裂は、容易に柱1の長手方向に成長するという問題がある。
【0008】
更に、木造建築物においては、梁と柱の連結、あるいは柱と土台の連結のために使用されるホールダウン金物が知られている。例えば、柱を土台に連結する場合、柱の下端近傍部に設けた挿通孔にボルトが挿通され、該ボルトによりホールダウン金物を柱に固設した状態で、土台から立設されたアンカーボルトをホールダウン金物に挿通すると共にナットを締結される。従って、横揺れ等による大きな荷重が作用したとき、前記ボルトを挿通した挿通孔の内部から柱に亀裂が生じ易く、上記と同様の問題がある。
【0009】
そこで、本発明の課題は、木造建築物における柱等の角材に上述のような受け金物やホールダウン金物その他の建築金物を取付けるに際し、建築金物に大きな荷重が作用しても強固に耐え、その取付構造に起因して角材の内部に亀裂が生じることを防止した取付装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明が手段として構成したところは、角材の中心軸線Zを通過して相互に直交するX軸とY軸に関し、X軸方向に角材を貫通する第1挿通孔に挿通される第1軸部材と、Y軸方向に角材を貫通する第2挿通孔に挿通される第2軸部材とから成り、前記第1軸部材と第2軸部材は、両挿通孔の交差孔部に位置して相互にX軸方向及びY軸方向に移動不能に係止される結合手段を備えると共に、前記中心軸線Zに沿う2方向Z1及びZ2のうち少なくとも一方向に対向する両挿通孔の孔壁により支持される支持手段を備え、前記角材の側面に開口する両挿通孔の開口部に臨む第1軸部材及び第2軸部材の軸端のうち、少なくとも1つの軸端に建築金物を取付可能とする取付手段を備えて成る点にある。
【0011】
本発明の実施形態において、前記第1軸部材と第2軸部材は、長手方向の中央部に凹部を形成した結合軸部を設け、両軸部材の凹部を相互に対向させることにより、一方の結合軸部を他方の凹部に嵌合するように構成されており、前記第1挿通孔の前記Z軸方向の寸法に対する第2挿通孔の前記Z軸方向の寸法を2倍以上の寸法に形成し、両挿通孔の交差孔部の内部で両軸部材の凹部を相互に対向させ、両軸部材の相互において結合軸部を凹部に嵌合させるように構成されている。
【0012】
この際、第2軸部材と第2挿通孔の内壁との間に隙間が形成されるので、装填部材を第2挿通孔の開口部から前記隙間に装填することが好ましい。
【0013】
本発明の別の実施形態において、前記第1軸部材と第2軸部材は、X軸方向に延びる第1軸部材の中央部にY軸方向の結合孔を設け、前記結合孔に対してY軸方向に移動不能に結合される結合部を第2軸部材に設けている。
【発明の効果】
【0014】
上述のように、従来技術の場合、第1挿通孔と第2挿通孔を角材の上下方向に位置をずらせて形成するため、角材に亀裂を発生し易いのに対して、本発明によれば、第1挿通孔21及び第2挿通孔22を連通状態で交わるように形成し、両挿通孔21、22の内部に第1軸部材11a及び第2軸部材11bを保持させるように構成しているので、木造建築物に大きな荷重が作用した場合でも、角材19の亀裂発生を好適に防止することができる。
【0015】
そして、第1軸部材11a及び第2軸部材11bは、挿通孔21、22の交差孔部23の内部でX軸方向及びY軸方向に移動不能に係止され、一体結合された状態で挿通孔21、22の内部に保持されているので、X軸方向及びY軸方向の引っ張り荷重に対して強固に耐えることができ、しかも、結合された両軸部材11a、11bの支持手段18が挿通孔21、22の孔壁に支持されているので、Z軸方向の荷重に対しても強固に耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る取付装置を示し、(A)は第1軸部材と第2軸部材を分解した状態を示す斜視図、(B)は第1軸部材と第2軸部材を結合した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る取付装置の施工方法を示し、(A)(B)(C)(D)の順に工程を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る取付装置を使用することにより梁を柱に連結する方法を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る取付装置を使用することにより柱を土台に連結する方法を示し、(A)は施工状態を示す斜視図、(B)は拡大断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る取付装置を示し、(A)は第1軸部材と第2軸部材を分解した状態を示す斜視図、(B)は柱に施工した状態を示す。
【図6】本発明の第3実施形態に係る取付装置を示し、(A)は軸部材の構成部品を分解した状態を示す斜視図、(B)は構成部品を組付けた後の軸部材を示す斜視図である。
【図7】本発明の更に別の実施形態に係る取付装置を示し、(A)は第4実施形態を示す斜視図、(B)は第5実施形態を示す斜視図、(C)は第6実施形態を示す斜視図である。
【図8】従来技術を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0018】
[第1実施形態]
図1ないし図4は本発明に係る取付装置の第1実施形態を示しており、取付装置は、相互に直交するX軸とY軸に関して、X軸方向に配置可能な第1軸部材11aと、Y軸方向に配置可能な第2軸部材11bとから成る。
【0019】
図1(A)(B)に示すように、第1軸部材11aと第2軸部材11bは、相互に同一構成とされた同一部品から成り、鋼や鉄等の剛性を有する金属から成る断面矩形の盤状棒材により形成されている。前記X軸及びY軸に直交するZ軸方向(図示上下方向)に関して、図示のように、第1軸部材11aを下側に配置し、第2軸部材11bを上側に配置した状態で、両軸部材11a、11bは、それぞれの中央部に位置して相互に対向する凹部12a、12bを形成しており、該凹部の底部を構成する結合軸部13a、13bを設けている。
【0020】
図示実施形態の場合、両軸部材11a、11bの前記Z軸方向の寸法W1に対して、凹部12a、12bは、前記Z軸方向の寸法W2が1/2となるように形成され、従って、結合軸部13a、13bの前記Z軸方向の寸法W3は、W3=W1×1/2、かつ、W3=W2となるように形成されている。従って、両軸部材11a、11bの凹部12a、12bを相互に対向させた状態から、凹部12a、12bと結合軸部13a、13bを相互に嵌合させることにより、図1(B)に示すように、両軸部材11a、11bを相互にX軸方向及びY軸方向に移動不能に係止する結合手段14が構成される。
【0021】
第1軸部材11aの両軸端にはそれぞれ雌ねじ孔15a、16aが形成され、第2軸部材11bの両軸端にはそれぞれ雌ねじ孔15b、16bが形成されている。これらの雌ねじ孔は、後述するように、建築金物を取付けるためのボルトを螺着する取付手段17を構成し、従って、取付けられる建築金物に応じて個数を変更することが可能であり、第1実施形態の場合、取付手段17を第1軸部材11a及び第2軸部材11bの4個所の軸端に設けているが、用途に応じて、少なくとも1個所以上に設けられる。
【0022】
図1(B)に示すように、相互に嵌合された第1軸部材11aと第2軸部材11bは、十文字状に結合された状態で、両軸部材11a、11bの上下面に面一に広がる十文字状の平坦面を形成し、この上下面のうち少なくとも一方の面、図示実施形態の場合はZ2方向に向かう下側面により、支持手段18を形成する。
【0023】
(受け金物の取付例)
第1実施形態は、柱に梁を連結する受け金物を取付けるために使用することができ、取付装置を柱に固設する方法を図2(A)(B)(C)(D)に順を追って示しており、柱に梁を連結する施工例を図3に示している。
【0024】
図2(A)に示すように、角材19から成る柱20の中心軸線Zを通過して相互に直交するX軸とY軸に関し、柱20には、X軸方向に貫通する断面矩形の第1挿通孔21と、Y軸方向に貫通する断面矩形の第2挿通孔22が形成され、両孔21、22は、柱20の内部で交わる交差孔部23を形成する。この際、第2挿通孔22の前記Z軸方向の高さ寸法H1は、第1挿通孔21の同方向の高さ寸法H2の2倍以上となるように形成される。つまり、H1≧H2×2となるように形成されている。
【0025】
そこで、図2(B)に示すように、凹部12aを上向きとした第1軸部材11aを第1挿通孔21に挿入した後、図2(C)に示すように、凹部12bを下向きとした第2軸部材11bを第2挿通孔22に挿入することにより、交差孔部23の内部で両軸部材11a、11bの凹部12a、12bを対向させた状態で、第2軸部材11bを押し下げると、上述のように凹部12a、12bと結合軸部13a、13bとから成る結合手段14を嵌合し、両軸部材11a、11bが結合される。
【0026】
この状態で、図2(D)に示すように、第2挿通孔22は、第2軸部材11bの上方に隙間Sを形成するので、該第2挿通孔22の開口部から装填部材24を隙間Sに装填する。装填部材24は、例えば、所定の形状に切断形成された木片から成り、前記隙間Sの全長にわたり装填され、該隙間Sの開口部を閉塞する。
【0027】
前記挿通孔21、22に挿入された第1軸部材11a及び第2軸部材11bは、結合手段14により結合され、相互にX軸方向及びY軸方向に移動不能となるように係止されている。また、上述のように、両軸部材11a、11bの下面に面一の平坦面による支持手段18が形成されているので、下向き方向(Z2方向)の荷重が作用したとき、該支持手段18が前記荷重方向に対向する両挿通孔21、22の下側の平坦な孔壁に支持される。
【0028】
そして、第1軸部材11a及び第2軸部材11bは、それぞれの軸端に雌ねじ孔から成る取付手段17を設けており、各取付手段17が第1挿通孔21及び第2挿通孔22の各開口部に臨んで配置される。
【0029】
そこで、図3に示すように、受け金物25から成る建築金物26を使用することにより、柱20の同一高さ位置にX軸方向の第1梁27aとY軸方向の第2梁27bを連結することが可能となる。図例の場合、受け金物25は、ボルト28を取付手段17のねじ孔に螺着することにより固着される。梁27は、前記受け金物25に搭載され、ドリフトピン等の固定手段29により連結固定される。
【0030】
柱20及び梁27a、27bが上下方向や揺動方向の大きな荷重を受けたとき、連結金具25に引っ張り荷重や下向きの荷重が作用するが、上述のように、第1軸部材11a及び第2軸部材11bは、結合手段14を介してX軸方向及びY軸方向に移動不能に係止された一体状態で挿通孔の内部に保持されているので、引っ張り荷重に対して強固に耐える。しかも、第1軸部材11a及び第2軸部材11bは、支持手段18が挿通孔21、22の下側の孔壁に面接触しているので、下向き荷重を支持することにより強固に耐える。そして、柱20には、上述の従来技術のような亀裂発生の原因が形成されていないので、亀裂を生じることはない。
【0031】
(ホールダウン金物の取付例)
第1実施形態は、柱を土台に連結するためのホールダウン金物を取付けるために使用することができ、その実施例を図4に示している。
【0032】
図4において、柱20を貫通して第1挿通孔21及び第2挿通孔22が設けられ、それぞれの挿通孔に第1軸部材11a及び第2軸部材11bが挿入され、交差孔部の内部で結合手段14を結合している点は、上述の実施例と同様である。
【0033】
そこで、建築金物26を構成するホールダウン金物30は、土台31の上方に位置する取付手段17(図例の場合は第2軸部材11bの雌ねじ孔15b)にボルト32を螺着することにより固着され、該ホールダウン金物30に対して、土台31から立設されたアンカーボルト33が挿通され、ナット34により締結される。
【0034】
この際、図4(B)に示すように、前記ボルト32の反対側に位置して、第2挿通孔22の開口部に臨む第2軸部材11bの軸端に設けられた雌ネジ孔16bにフラットボルト35を螺着することが好ましい。従って、この実施例の場合、第1軸部材11aは、両軸端に雌ネジ孔から成る取付手段17を設けていなくても良い。
【0035】
柱20及び土台31が上下方向や揺動方向の大きな荷重を受けたとき、ホールダウン金物30に引っ張り荷重や下向きの荷重が作用するが、上述のように、第1軸部材11a及び第2軸部材11bは、X軸方向及びY軸方向に移動不能に係止された一体状態で挿通孔の内部に保持されているので、引っ張り荷重に対して強固に耐える。この際、上述のようにフラットボルト35を固着しておけば、引っ張り荷重に対する第2軸部材11bの耐力が更に向上する。また、第1軸部材11a及び第2軸部材11bの下面に形成された支持手段18が挿通孔21、22の下側の孔壁に支持されているので、アンカーボルト33から受ける下向き荷重に対して強固に耐える。そして、挿通孔21、22により柱20に亀裂が発生する原因を生成することはない。
【0036】
[第2実施形態]
図5は本発明に係る取付装置の第2実施形態を示しており、相互に直交するX軸とY軸に関して、X軸方向に配置可能な第1軸部材11aと、Y軸方向に配置可能な第2軸部材11bは、相互に同一構成とされた同一部品から成り、それぞれの中央部に位置して相互に対向する凹部12a、12bを設け、該凹部の底部を構成する結合軸部13a、13bを形成し、それぞれの軸端に雌ネジ孔から成る取付手段17を設けており、上記第1実施形態と同様に構成されている。従って、第1実施形態と同一の構成部分は同一符号で示し、異なる技術的構成を説明する。
【0037】
第2実施形態において、第1軸部材11a及び第2軸部材11bは、鋼や鉄等の剛性を有する金属から成る断面円形の丸棒材により形成されており、軸端の端面に直径方向の溝36により形成された工具係止手段37を設けている。
【0038】
そこで、両軸部材11a、11bの断面形状に適合するように、第1挿通孔21及び第2挿通孔22は、ドリル刃により削成された孔により形成されている。第1挿通孔21は、ドリル刃により削成された断面円形の孔を構成し、第2挿通孔22は、ドリル刃により削成される断面円形の孔を上下に連ねた断面長円形の孔を構成する。これにより、第1実施形態と同様の孔寸法に関するH1≧H2×2の条件が備えられている。
【0039】
上記第1実施形態と同様に、第1軸部材11aを第1挿通孔21に挿入した後、第2軸部材11bを第2挿通孔22に挿入する。この際、第1軸部材11aは、第1挿入孔21に挿入した状態で、軸端の工具係止手段37にドライバー工具等の係止工具を係止することにより軸廻り方向に回転できるので、凹部12aを上向きとするように位置決めされる。同様に、第2軸部材11bも、第2挿入孔22に挿入した状態で工具係止手段37を介して回転することにより、凹部12bを下向きとするように位置決めされる。この位置決め状態から第2軸部材11bを押下げることにより、両軸部材11a、11bは、相互に凹部12a、12bと結合軸部13a、13bを嵌合することにより十文字状に結合される。この状態で、丸棒材から成る両軸部材11a、11bは、円弧状の下面を両挿通孔21、22の円弧状の孔壁に合致し、これにより支持手段18を構成する。その後、図5(B)に示すように、第2軸部材11bの上方に形成された第2挿通孔22の隙間Sに装填部材24が装填される。
【0040】
第2実施形態の作用効果は、概ね上述の第1実施形態と同様であるが、第1挿通孔21及び第2挿通孔22をドリルにより簡単に削成できるという利点がある。
【0041】
[第3実施形態]
図6は、取付装置の第3実施形態を示しており、これによれば、製造コストが安価で量産可能とした取付装置が提供される。
【0042】
取付装置を構成する第1軸部材11a及び第2軸部材11bは、上記実施形態と同様に相互に同一構成とされた同一部品から成るので、軸部材11と総称することにより説明する。
【0043】
図6(A)に示すように、軸部材11は、板金製の支持部材38と、該支持部材38に対向して配置される板金製の保持部材39と、一対のナット40、40により構成されている。図例の場合、ナット40は、六角ナットが用いられる。
【0044】
支持部材38は、両側縁に上向きのリブ41、41を設けている。保持部材39は、前記凹部12を形成するように凹形に折曲形成された溝形部42と、該溝形部42の起立両端から延長された翼片部43、43を備え、両翼片部の両側縁に下向きのリブ44、44を設けている。
【0045】
そこで、図6(B)に示すように、両端部にナット40、40を保持した状態で、支持部材38と保持部材39を合掌させ、溝形部42を支持部材38に重ねた状態で溶接等により固着することにより、軸部材11が完成する。これにより、中央部に凹部12と結合軸部13を備え、両端に取付手段17、17を備えた軸部材11が提供される。尚、ナット40は、支持部材38の両端部と保持部材39の翼片部43により回動不能に挟持されている。従って、挟持部分を溶接等により固着しても良いが、必ずしも固着しなくても良い。
【0046】
第3実施形態によれば、支持部材38及び保持部材39は、板金プレスにより形成することができ、ナット40は、汎用のナットを使用することができるから、製造コストが安価であり、しかも、量産可能となる。
【0047】
[第4実施形態、第5実施形態、第6実施形態]
上述の第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態は、第1軸部材11a及び第2軸部材11bが凹部12a、12bと結合軸部13a、13bを相互に嵌合させる構成であるため、角材19に形成する第1挿通孔21及び第2挿通孔22に関して、上述のようなH1≧H2×2の条件を満たす必要があるため、挿通孔の形成作業が煩雑であり、しかも、第2挿通孔22の隙間Sに装填部材24を装填することも作業の煩雑化を招来する問題がある。
【0048】
そこで、図7(A)に示す第4実施形態、図7(B)に示す第5実施形態、図7(C)に示す第6実施形態によれば、上記作業を簡単容易化することが可能となる。これらの実施形態によれば、第1挿通孔21及び第2挿通孔22は、角材19に対してドリル刃により相互に同径の丸孔として簡単に削成することができ、しかも、第1挿入孔21に第1軸部材11aを挿入した状態から、第2挿通孔22に第2軸部材11bを挿入する際に、両挿通孔21、22の交差孔部23の内部で、第1軸部材11aの中央部に設けたY軸方向の結合孔14aに対して、第2軸部材11bの結合部14bを結合することにより、両軸部材11a、11bを相互にX軸方向及びY軸方向に移動不能に係止された一体結合状態とする。
【0049】
[第4実施形態]
図7(A)に示すように、第4実施形態において、X軸方向に配置可能な第1軸部材11aと、Y軸方向に配置可能な第2軸部材11bは、相互に異なる別部品により構成されている。
【0050】
第1軸部材11aは、鋼や鉄等の剛性を有する金属から成る断面円形の丸棒材により形成されており、軸端に雌ネジ孔15a、15bから成る取付手段17、17を設け、端面に直径方向の溝36により形成された工具係止手段37を設けており、中央部にY軸方向に貫通する螺孔45から成る結合孔14aを形成している。
【0051】
第2軸部材11bは、前記螺孔45に貫通状態で螺着自在とされたネジ棒46から成る結合部14bと、該ネジ棒46の両端に螺合自在な一対の分割軸47、47により構成されている。前記ネジ棒46は、両端の少なくとも一方に六角穴等の工具係合穴48を設けており、図示省略したアーレンキー(六角棒)等の工具により螺孔45に螺着される。前記分割軸47、47は、一方の軸端に前記ネジ棒46に螺合自在な雌ネジ孔49を形成し、他方の軸端に雌ネジ孔16a、16bから成る取付手段17、17を設けると共に、端面に直径方向の溝36aにより形成された工具係止手段37aを設けている。
【0052】
この第4実施形態によれば、角材に対して、ドリル刃により、X軸方向に貫設された第1挿通孔と、Y軸方向に貫設された第2挿通孔を削成した状態で、第1軸部材11aを第1挿通孔に挿入し、工具係止手段37にドライバー工具等の係止工具を係止して軸廻り方向に回転することにより、螺孔45がY軸方向に向くように位置決めした後、第2挿通孔からネジ棒46を挿入すると共に、前記工具係合穴8を介して螺孔45に螺挿する。その後、第2挿通孔の両端開口部から前記分割軸47、47を挿入し、前記工具係止手段37aを介して回転しながら雌ネジ孔49をネジ棒46に螺着する。
【0053】
これにより、第1軸部材11aと第2軸部材11bは、螺孔45から成る結合孔14aとネジ棒46から成る結合部14bにより構成された結合手段14を介して相互にX軸方向及びY軸方向に移動不能に係止した一体結合状態として第1挿通孔及び第2挿通孔の内部で保持される。そして、第1軸部材11a及び第2軸部材11bの下側の円弧面がそれぞれ第1挿通孔及び第2挿通孔の円弧状孔壁に面接触することにより、上記支持手段18を構成する。
【0054】
[第5実施形態]
図7(B)に示すように、第5実施形態は、第4実施形態の構成を部分的に変更したものであるから、同一構成部分は同一符号で示し、異なる技術的構成を説明する。
【0055】
第1軸部材11aは、中央部の両側にそれぞれ結合孔14aを構成するナット50、50を溶接等で固着している。これに対して、第2軸部材11bを構成する分割軸47、47は、前記ナット50に螺合自在な結合部14bを構成するネジ軸51を突設している。
【0056】
この第5実施形態によれば、角材に対して、ドリル刃により、X軸方向に貫設された第1挿通孔と、Y軸方向に貫設された第2挿通孔を削成した状態で、第1軸部材11aを第1挿通孔に挿入し、工具係止手段37にドライバー工具等の係止工具を係止して軸廻り方向に回転することにより、一対のナット50、50がY軸方向に向くように位置決めした後、第2挿通孔の両端開口部から前記分割軸47、47を挿入し、前記工具係止手段37aを介して回転しながらネジ軸51をナット50に螺着する。
【0057】
これにより、第1軸部材11aと第2軸部材11bは、ネジ軸51、51から成る結合孔14aとナット50、50から成る結合部14bにより構成された結合手段14を介して相互にX軸方向及びY軸方向に移動不能に係止した一体結合状態として第1挿通孔及び第2挿通孔の内部で保持される。そして、第1軸部材11a及び第2軸部材11bの下側の円弧面がそれぞれ第1挿通孔及び第2挿通孔の円弧状孔壁に面接触することにより、上記支持手段18を構成する。
【0058】
[第6実施形態]
図7(C)に示すように、第6実施形態は、第4実施形態及び第5実施形態の構成を部分的に変更したものであるから、同一構成部分は同一符号で示し、異なる技術的構成を説明する。
【0059】
第1軸部材11aは、中央部を貫通する通孔52から成る結合孔14aを形成している。これに対して、第2軸部材11bは、1本の頭付きボルト53から成る結合部14bと、該ボルト53のボルト軸に螺着自在なナット54とから構成され、好ましくは、第1軸部材11aと同径の筒状とされた一対のスペーサ部材55、55を備えている。
【0060】
この第6実施形態によれば、角材に対して、ドリル刃により、X軸方向に貫設された第1挿通孔と、Y軸方向に貫設された第2挿通孔を削成した状態で、第1軸部材11aを第1挿通孔に挿入し、工具係止手段37にドライバー工具等の係止工具を係止して軸廻り方向に回転することにより、通孔52がY軸方向に向くように位置決めした後、第2挿通孔の一方の開口部から第2軸部材11bを構成する頭付きボルト53を挿入することによりボルト軸を通孔52に挿通し、該ボルト軸の挿出端に対して、第2挿通孔の他方の開口部からナット54を螺着する。頭付きボルト18とナット54の螺着は、第2挿通孔の開口部にソケットレンチを挿入することにより可能である。
【0061】
この際、頭付きボルト53の頭部53aと第1軸部材11aの間、第1軸部材11aとナット54の間に、それぞれスペーサ部材55、55が介装され、これにより、第1軸部材11aと第2軸部材11bは、前記通孔52から成る結合孔14aと前記頭付きボルト53から成る結合部14bを相互にX軸方向及びY軸方向に移動不能に係止した一体結合状態とされ、第1挿通孔及び第2挿通孔の内部で保持される。また、第1軸部材11aの下側の円弧面とスペーサ部材55、55の下側の円弧面がそれぞれ第1挿通孔及び第2挿通孔の円弧状孔壁に面接触することにより、上記支持手段18を構成する。
【符号の説明】
【0062】
11a 第1軸部材
11b 第2軸部材
12a、12b 凹部
13a、13b 結合軸部
14 結合手段
15a、15b 雌ネジ孔
16a、16b 雌ネジ孔
17 取付手段
18 支持手段
19 角材
20 柱
21 第1挿通孔
22 第2挿通孔
23 交差孔部
24 装填部材
25 受け金物
26 建築金物
30 ホールダウン金物
31 土台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角材の中心軸線Zを通過して相互に直交するX軸とY軸に関し、X軸方向に角材を貫通する第1挿通孔(21)に挿通される第1軸部材(11a)と、Y軸方向に角材を貫通する第2挿通孔(22)に挿通される第2軸部材(11b)とから成り、
前記第1軸部材(11a)と第2軸部材(11b)は、両挿通孔(21,22)の交差孔部(23)に位置して相互にX軸方向及びY軸方向に移動不能に係止される結合手段(14)を備えると共に、前記中心軸線Zに沿う2方向(Z1,Z2)のうち少なくとも一方向に対向する両挿通孔(21,22)の孔壁により支持される支持手段(18)を備え、
前記角材の側面に開口する両挿通孔(21,22)の開口部に臨む第1軸部材(11a)及び第2軸部材(11b)の軸端のうち、少なくとも1つの軸端に建築金物(26)を取付可能とする取付手段(17)を備えて成ることを特徴とする木造建築物における建築金物の取付装置。
【請求項2】
前記第1軸部材(11a)と第2軸部材(11b)は、長手方向の中央部に凹部(12a,12b)を形成した結合軸部(13a,13b)を設け、両軸部材の凹部を相互に対向させることにより、一方の結合軸部を他方の凹部に嵌合するように構成されており、
前記第1挿通孔(21)の前記Z軸方向の寸法(H2)に対する第2挿通孔(22)の前記Z軸方向の寸法(H1)を2倍以上の寸法に形成し、両挿通孔の交差孔部(23)の内部で両軸部材の凹部を相互に対向させ、両軸部材の相互において結合軸部を凹部に嵌合させて成ることを特徴とする請求項1に記載の木造建築物における建築金物の取付装置。
【請求項3】
第2軸部材(11b)と第2挿通孔(22)の内壁との間に形成される隙間(S)に装填される装填部材(24)を設け、前記装填部材(24)を第2挿通孔(22)の開口部から前記隙間(S)に装填して成ることを特徴とする請求項2に記載の木造建築物における建築金物の取付装置。
【請求項4】
前記第1軸部材(11a)と第2軸部材(11b)は、X軸方向に延びる第1軸部材の中央部にY軸方向の結合孔(14a)を設け、前記結合孔に対してY軸方向に移動不能に結合される結合部(14b)を第2軸部材に設けて成ることを特徴とする請求項1に記載の木造建築物における建築金物の取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−104240(P2013−104240A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249444(P2011−249444)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(504232974)株式会社ダイドーハント (7)
【出願人】(311015746)
【Fターム(参考)】