木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法
【課題】 従来技術では、金物と金物は柱と柱の間隔、基礎と横架材の間隔によりブレースの取り付け角度が変化するため形状が変化し、加えて基礎と金物を緊結するアンカーボルトの本数も増減し、その都度金物図面を作図しなければならず、煩雑で作業に手間がかかる。
【解決手段】 基礎部3と、並列した横架材5と、並列した縦構造材1、4とが接合され、四隅部を有する矩形の木造構造において、横架材5と縦構造材1、4における隅部、基礎部と縦構造材1、4における隅部を接合する筋交い9を固定する手段である金物11、柱脚金物10を筋交い9の取り付け角度にとらわれずに設置するため、金物11、柱脚金物10に1方向以上複数方向に筋交い9を取り付ける耳15を形成し、耳15に筋交い9の端部と、接合固定できる耳15の略中心部に一個の孔部18を形成し、筋交い9と接合具で接合する木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法。
【解決手段】 基礎部3と、並列した横架材5と、並列した縦構造材1、4とが接合され、四隅部を有する矩形の木造構造において、横架材5と縦構造材1、4における隅部、基礎部と縦構造材1、4における隅部を接合する筋交い9を固定する手段である金物11、柱脚金物10を筋交い9の取り付け角度にとらわれずに設置するため、金物11、柱脚金物10に1方向以上複数方向に筋交い9を取り付ける耳15を形成し、耳15に筋交い9の端部と、接合固定できる耳15の略中心部に一個の孔部18を形成し、筋交い9と接合具で接合する木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木造建築物の筋交い(ブレース)構造における柱等の縦構造材及び横架材と筋交い(ブレース)との接合方法に関するものである。木造建築物のブレース構造において、主に小中規模の建物に用いられる簡易なものとして90×90以上の木材の筋交い(ブレース)をたすき掛けにいれた軸組の壁倍率5が最大である。中規模以上の建物においてそれ以上のせん断耐力を要求される場合は、120×120以上の木材の筋交い(ブレース)やターンバックル(以下、TBという)付きブレースが採用される。本発明はこの中規模以上に採用されるブレースの接合に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、中規模以上の木造建築物において、ブレース接合部は図13に示すように、柱等の縦構造材1と木ブレース2と基礎3を金物6で、柱4と木ブレース2と横架材5を金物7で接合する方法や、並列した横架材と、並列した縦構造材とが接合してなる四隅部を有する矩形の木造構造で、筋交い固定手段を有する補強金物の下部に、前記縦構造材と略同一の断面形状を有する補強木材を接合してなる補強装置を形成し、該補強装置を、前記一隅部に配置し、前記補強金物を前記縦構造材の側面に当接すると共に、前記補強木材を横架材に当接し、前記補強装置を前記縦構造材に固定した木造建造物の補強構造で、所定長さのフランジ材の一面中央部にウエブ材の端縁を連設して一体に形成して断面T字状で、筋交い取付用の透孔を穿設した補強金物を形成する。長さ方向に凹入部を形成した補強木材を、前記凹入部にウエブ材を嵌挿して、取付けし、第一鋼板又は第二鋼板と補強木材とを固定し、前記補強金物の下端と、前記補強木材の下面とを面一に形成した補強金物のフランジ材と補強木材とを密着し、前記フランジ材の複数個の透孔から取付棒材を打ち込んで、前記補強金物と前記補強木材とを固定し、ウエブ材の上部に軸方向とに対して斜めに形成した長孔を穿設して、筋交い取付用の複数の透孔を構成した補強装置を有するもの(例えば、特許文献1を参照)が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−44323号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び図1〜図7を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図13の金物6と金物7は柱1と柱2の間隔、基礎3と横架材5の間隔によりブレースの取り付け角度が変化するため形状が変化し、加えて基礎3と金物6を緊結するアンカーボルト8の本数も増減し、その都度金物図面を作図しなければならないため、煩雑で、作業に手間がかかるという課題があった。
また、従来技術の特開2004−44323号公報に開示された技術も同様な課題があった。
この煩雑な作業を省くために、筋交い(以下、ブレースという)の取り付け角度にとらわれない接合部ができないかというのが本発明の着眼点である。まず取り合うブレースの端部が一穴型であれば任意の角度に対応できる。次に最大で四方向に取り付くブレースに対応する必要がある。さらにブレースと柱及び横架材の取り合いを工夫する必要がある。
本発明はこのような課題を解決するもので、柱等の縦構造材及び横架材とブレースとの接合を簡単に行えるようにし、さらにこの発明の効果によりブレースと軸組を分離することができ、そのことにより全ての接合部の規格化が可能になる。
例えば他の構法としては、この作業が煩雑なブレース構法を嫌い、ブレースの排除のために水平抵抗要素として面材耐力壁を採用している。(図10参照)また、ブレース自体を使用せず、柱・梁のみで構成可能なラーメン構造を採用しているものもある(図11参照)。
他のこのような流れの中、本発明はあえてブレース接合部の規格化に挑戦したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1発明は、請求項1に記載された通りの木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法であり、次のようなものである。
基礎部と、並列した縦構造材とが接合され、隅部を有する矩形の木造構造において、基礎部と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置するために、前記金物に1方向以上複数方向に筋交いを取り付ける耳を形成し、該耳に筋交いの端部と、接合固定できる耳の略中心部に一個の孔部を形成し、この孔部と筋交いを接合具で接合する構成であり、ブレースの取り付け角度にとらわれない接合が可能になるものである。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第2発明は、請求項2に記載された通りの木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法であり、次のようなものである。
基礎部と、並列した横架材と、並列した縦構造材とが接合され、四隅部を有する矩形の木造構造において、まず横架材と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置し、続いて、基礎部と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置するために、前記金物に1方向以上複数方向に筋交いを取り付ける耳を形成し、該耳に筋交いの端部と、接合固定できる耳の略中心部に一個の孔部を形成し、この孔部と筋交いを接合具で接合する構成であり、ブレースの取り付け角度にとらわれない接合が可能になるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法は、上記説明のような構成を有するので、以下に記載する効果を奏する。
この構成により、まず、図13の金物6はブレース2の取り付け角度により都度金物図面を作図していたが、図1の柱脚金物10の形式にすることにより、ブレース9の取り付け側に任意の大きさで耳を伸ばすことのみで4方向の取り付けに対応する規格化した金物を実現できる。同時に、柱等の縦構造材との接合は図2の接合具(ドリフトピン又はボルト)17で行う。さらに、図13の基礎3と金物6を緊結するアンカーボルト8も図1の柱脚金物10の形式にすることにより図2、図3に示すアンカーボルト16のようにアンカーボルトの本数と配置を規格化することが可能である。当然、壁構面の大きさやブレースサイズ、作用する力により、耳の形状、アンカーボルト16の本数、接合具本数も任意に増やすことが可能である。
また、図13の金物7のように従来一体型で、ブレース2の取り付け角度により都度図面を作図していたものが、図1の金物11の形式にすることにより、ブレースの取り付け角度にとらわれない接合部を実現できる。
また、本発明により接合部の規格化が可能になる。接合部を規格化することにより構造設計が簡単になり、かつ施工図及び金物製作図・木材加工図の単純化を図ることが可能になる。また、これらの効果により、安価に中規模以上のブレース構造を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一実施例を説明する組立て正面図である。
【図2】本発明の第一実施例を説明する縦構造材と筋交いと金物との関係を示す一部拡大側面図である。
【図3】本発明の第一実施例を説明する縦構造材と筋交いと金物との関係を示す一部拡大正面図である。
【図4】本発明の第二実施例を説明する縦構造材と筋交いと金物との関係を示す一部拡大正面図である。
【図5】本発明の第一実施例を説明する縦構造材と横架材と筋交いと金物との関係を示す(a)は一部拡大正面図、(b)はその側面図である。
【図6】本発明の第二実施例を説明する組立て正面図である。
【図7】本発明の第三実施例を説明する木製筋交いと金物とを採用した組立て正面図である。
【図8】理解用として、図2、図4に示したものの立体図である。
【図9】理解用として、図5に示したものの立体図である。
【図10】筋交いを排除した面材耐力壁を採用した概略斜視図である。
【図11】筋交い自体を使用せず、柱、梁のみで構成したラーメン構造を採用した概略斜視図である。
【図12】大きい力が作用した場合を想定した他の実施例を説明する(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【図13】従来技術のブレースの一例を示す正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
柱等の縦構造材及び横架材で囲まれる軸組に、水平抵抗要素としてブレースを用いる構造に適用するもので、基礎部と、並列した横架材と、並列した縦構造材とが接合され、四隅部を有する矩形の木造構造において、まず横架材と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置し、続いて、基礎部と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置するために、前記金物に1方向以上複数方向に筋交いを取り付ける耳を形成し、該耳に筋交いの端部と、接合固定できる耳の略中心部に一個の孔部を形成し、この孔部と筋交いを接合具で接合する木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法である。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施例について、図面に基づいて説明する。
まず、図1〜図6に示す第一実施例について説明すると、基礎3と柱等の縦構造材1とブレース9の接合を柱脚金物10で行っている。詳しくは、図2のブレース9が取り付かない柱脚金物12を基準として、図3の柱脚金物13または図4の柱脚金物14のようにブレース9が取り付く方向に耳15を伸ばすことにより4方向の取り付けを可能とする。
また、アンカーボルト16の配置もブレース9の取り付けにとらわれず全て同じとすることができ、配置の規格化が可能になる。柱脚金物10、金物11、柱脚金物12、13、14と柱等の縦構造材1、4との接合は接合具(ドリフトピン又はボルト)17で行う。理解のために図2と図4の立体図を図8に示す。
柱脚金物10、金物11、柱脚金物12、13、14は柱等の縦構造材1と横架材5の位置関係に従って耳15を縦構造材1が1本に対して、横架材5が1本であれば、略三角形の板状のものになり、横架材5が2本であれば、横架材5の2本目に合わせてその角度で耳15が取り付けられたもののように、その横架材5の本数と方向位置に合わせて耳15を追加して、それぞれの耳15と筋交いの端部とを耳15に形成した1個の孔部18で接合固定するものである。
【0011】
次に、柱等の縦構造材1とブレース9と横架材5を金物11で行っている実施例について説明する。
詳しくは、図5の金物11の形状とすることで、ブレース9の取り付け角度にとらわれない接合部を実現できる。金物11と柱等の縦構造材1及び横架材5との接合は接合具(ラグスクリュー又はボルト)17で行う。理解のために図5の立体図を図9に示す。
また、図1〜図5のTB付きブレース9は端部羽子板ボルト穴が一穴型のものを採用することにより、ブレース9の取り付け角度にとらわれない接合が可能になる。図6には、図1のブレース構面を上と横に並べた場合の実施例を示す。
【0012】
さらに、図7に示す第2実施例について説明すると、まず木ブレース19の両端に金物20を取り付け、さらに柱等の縦構造材1と横架材5とをブレース19の接合を金物11で行っている。
これは第1実施例の応用の位置付けになる。第1実施例ではブレースをTB付きブレース9を採用したが、この第2実施例では木ブレース19を採用することにより、さらに強度の高い耐力壁を実現することができる。
つまり、本発明は木ブレースにも応用が可能である。
【0013】
また、図12に示す大きい力が作用した場合を想定した実施例について説明すると、作用する力に応じて、アンカーボルトを矢印方向に任意に増やし、接合具を矢印方向に任意に増やし、また、耳の形状も取り付くブレースサイズ、ボルトのサイズにより任意の形状とすることが可能である。本発明はこのように作用する力により任意に形状を変え、様々なニーズに対応することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0014】
木造建築物のブレース構造に種々応用することができる。
【符号の説明】
【0015】
1・・・・柱等の縦構造材
2・・・・ブレース(筋交い)
3・・・・基礎
4・・・・柱等の縦構造材
5・・・・横架材
6・・・・金物
7・・・・金物
8・・・・アンカーボルト
9・・・・ブレース
10・・・・柱脚金物
11・・・・金物
12・・・・柱脚金物
13・・・・柱脚金物
14・・・・柱脚金物
15・・・・耳
16・・・・アンカーボルト
17・・・・接合具
18・・・・孔部
19・・・・木ブレース
20・・・・金物
【技術分野】
【0001】
本発明は木造建築物の筋交い(ブレース)構造における柱等の縦構造材及び横架材と筋交い(ブレース)との接合方法に関するものである。木造建築物のブレース構造において、主に小中規模の建物に用いられる簡易なものとして90×90以上の木材の筋交い(ブレース)をたすき掛けにいれた軸組の壁倍率5が最大である。中規模以上の建物においてそれ以上のせん断耐力を要求される場合は、120×120以上の木材の筋交い(ブレース)やターンバックル(以下、TBという)付きブレースが採用される。本発明はこの中規模以上に採用されるブレースの接合に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、中規模以上の木造建築物において、ブレース接合部は図13に示すように、柱等の縦構造材1と木ブレース2と基礎3を金物6で、柱4と木ブレース2と横架材5を金物7で接合する方法や、並列した横架材と、並列した縦構造材とが接合してなる四隅部を有する矩形の木造構造で、筋交い固定手段を有する補強金物の下部に、前記縦構造材と略同一の断面形状を有する補強木材を接合してなる補強装置を形成し、該補強装置を、前記一隅部に配置し、前記補強金物を前記縦構造材の側面に当接すると共に、前記補強木材を横架材に当接し、前記補強装置を前記縦構造材に固定した木造建造物の補強構造で、所定長さのフランジ材の一面中央部にウエブ材の端縁を連設して一体に形成して断面T字状で、筋交い取付用の透孔を穿設した補強金物を形成する。長さ方向に凹入部を形成した補強木材を、前記凹入部にウエブ材を嵌挿して、取付けし、第一鋼板又は第二鋼板と補強木材とを固定し、前記補強金物の下端と、前記補強木材の下面とを面一に形成した補強金物のフランジ材と補強木材とを密着し、前記フランジ材の複数個の透孔から取付棒材を打ち込んで、前記補強金物と前記補強木材とを固定し、ウエブ材の上部に軸方向とに対して斜めに形成した長孔を穿設して、筋交い取付用の複数の透孔を構成した補強装置を有するもの(例えば、特許文献1を参照)が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−44323号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び図1〜図7を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図13の金物6と金物7は柱1と柱2の間隔、基礎3と横架材5の間隔によりブレースの取り付け角度が変化するため形状が変化し、加えて基礎3と金物6を緊結するアンカーボルト8の本数も増減し、その都度金物図面を作図しなければならないため、煩雑で、作業に手間がかかるという課題があった。
また、従来技術の特開2004−44323号公報に開示された技術も同様な課題があった。
この煩雑な作業を省くために、筋交い(以下、ブレースという)の取り付け角度にとらわれない接合部ができないかというのが本発明の着眼点である。まず取り合うブレースの端部が一穴型であれば任意の角度に対応できる。次に最大で四方向に取り付くブレースに対応する必要がある。さらにブレースと柱及び横架材の取り合いを工夫する必要がある。
本発明はこのような課題を解決するもので、柱等の縦構造材及び横架材とブレースとの接合を簡単に行えるようにし、さらにこの発明の効果によりブレースと軸組を分離することができ、そのことにより全ての接合部の規格化が可能になる。
例えば他の構法としては、この作業が煩雑なブレース構法を嫌い、ブレースの排除のために水平抵抗要素として面材耐力壁を採用している。(図10参照)また、ブレース自体を使用せず、柱・梁のみで構成可能なラーメン構造を採用しているものもある(図11参照)。
他のこのような流れの中、本発明はあえてブレース接合部の規格化に挑戦したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1発明は、請求項1に記載された通りの木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法であり、次のようなものである。
基礎部と、並列した縦構造材とが接合され、隅部を有する矩形の木造構造において、基礎部と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置するために、前記金物に1方向以上複数方向に筋交いを取り付ける耳を形成し、該耳に筋交いの端部と、接合固定できる耳の略中心部に一個の孔部を形成し、この孔部と筋交いを接合具で接合する構成であり、ブレースの取り付け角度にとらわれない接合が可能になるものである。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第2発明は、請求項2に記載された通りの木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法であり、次のようなものである。
基礎部と、並列した横架材と、並列した縦構造材とが接合され、四隅部を有する矩形の木造構造において、まず横架材と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置し、続いて、基礎部と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置するために、前記金物に1方向以上複数方向に筋交いを取り付ける耳を形成し、該耳に筋交いの端部と、接合固定できる耳の略中心部に一個の孔部を形成し、この孔部と筋交いを接合具で接合する構成であり、ブレースの取り付け角度にとらわれない接合が可能になるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法は、上記説明のような構成を有するので、以下に記載する効果を奏する。
この構成により、まず、図13の金物6はブレース2の取り付け角度により都度金物図面を作図していたが、図1の柱脚金物10の形式にすることにより、ブレース9の取り付け側に任意の大きさで耳を伸ばすことのみで4方向の取り付けに対応する規格化した金物を実現できる。同時に、柱等の縦構造材との接合は図2の接合具(ドリフトピン又はボルト)17で行う。さらに、図13の基礎3と金物6を緊結するアンカーボルト8も図1の柱脚金物10の形式にすることにより図2、図3に示すアンカーボルト16のようにアンカーボルトの本数と配置を規格化することが可能である。当然、壁構面の大きさやブレースサイズ、作用する力により、耳の形状、アンカーボルト16の本数、接合具本数も任意に増やすことが可能である。
また、図13の金物7のように従来一体型で、ブレース2の取り付け角度により都度図面を作図していたものが、図1の金物11の形式にすることにより、ブレースの取り付け角度にとらわれない接合部を実現できる。
また、本発明により接合部の規格化が可能になる。接合部を規格化することにより構造設計が簡単になり、かつ施工図及び金物製作図・木材加工図の単純化を図ることが可能になる。また、これらの効果により、安価に中規模以上のブレース構造を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一実施例を説明する組立て正面図である。
【図2】本発明の第一実施例を説明する縦構造材と筋交いと金物との関係を示す一部拡大側面図である。
【図3】本発明の第一実施例を説明する縦構造材と筋交いと金物との関係を示す一部拡大正面図である。
【図4】本発明の第二実施例を説明する縦構造材と筋交いと金物との関係を示す一部拡大正面図である。
【図5】本発明の第一実施例を説明する縦構造材と横架材と筋交いと金物との関係を示す(a)は一部拡大正面図、(b)はその側面図である。
【図6】本発明の第二実施例を説明する組立て正面図である。
【図7】本発明の第三実施例を説明する木製筋交いと金物とを採用した組立て正面図である。
【図8】理解用として、図2、図4に示したものの立体図である。
【図9】理解用として、図5に示したものの立体図である。
【図10】筋交いを排除した面材耐力壁を採用した概略斜視図である。
【図11】筋交い自体を使用せず、柱、梁のみで構成したラーメン構造を採用した概略斜視図である。
【図12】大きい力が作用した場合を想定した他の実施例を説明する(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【図13】従来技術のブレースの一例を示す正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
柱等の縦構造材及び横架材で囲まれる軸組に、水平抵抗要素としてブレースを用いる構造に適用するもので、基礎部と、並列した横架材と、並列した縦構造材とが接合され、四隅部を有する矩形の木造構造において、まず横架材と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置し、続いて、基礎部と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置するために、前記金物に1方向以上複数方向に筋交いを取り付ける耳を形成し、該耳に筋交いの端部と、接合固定できる耳の略中心部に一個の孔部を形成し、この孔部と筋交いを接合具で接合する木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法である。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施例について、図面に基づいて説明する。
まず、図1〜図6に示す第一実施例について説明すると、基礎3と柱等の縦構造材1とブレース9の接合を柱脚金物10で行っている。詳しくは、図2のブレース9が取り付かない柱脚金物12を基準として、図3の柱脚金物13または図4の柱脚金物14のようにブレース9が取り付く方向に耳15を伸ばすことにより4方向の取り付けを可能とする。
また、アンカーボルト16の配置もブレース9の取り付けにとらわれず全て同じとすることができ、配置の規格化が可能になる。柱脚金物10、金物11、柱脚金物12、13、14と柱等の縦構造材1、4との接合は接合具(ドリフトピン又はボルト)17で行う。理解のために図2と図4の立体図を図8に示す。
柱脚金物10、金物11、柱脚金物12、13、14は柱等の縦構造材1と横架材5の位置関係に従って耳15を縦構造材1が1本に対して、横架材5が1本であれば、略三角形の板状のものになり、横架材5が2本であれば、横架材5の2本目に合わせてその角度で耳15が取り付けられたもののように、その横架材5の本数と方向位置に合わせて耳15を追加して、それぞれの耳15と筋交いの端部とを耳15に形成した1個の孔部18で接合固定するものである。
【0011】
次に、柱等の縦構造材1とブレース9と横架材5を金物11で行っている実施例について説明する。
詳しくは、図5の金物11の形状とすることで、ブレース9の取り付け角度にとらわれない接合部を実現できる。金物11と柱等の縦構造材1及び横架材5との接合は接合具(ラグスクリュー又はボルト)17で行う。理解のために図5の立体図を図9に示す。
また、図1〜図5のTB付きブレース9は端部羽子板ボルト穴が一穴型のものを採用することにより、ブレース9の取り付け角度にとらわれない接合が可能になる。図6には、図1のブレース構面を上と横に並べた場合の実施例を示す。
【0012】
さらに、図7に示す第2実施例について説明すると、まず木ブレース19の両端に金物20を取り付け、さらに柱等の縦構造材1と横架材5とをブレース19の接合を金物11で行っている。
これは第1実施例の応用の位置付けになる。第1実施例ではブレースをTB付きブレース9を採用したが、この第2実施例では木ブレース19を採用することにより、さらに強度の高い耐力壁を実現することができる。
つまり、本発明は木ブレースにも応用が可能である。
【0013】
また、図12に示す大きい力が作用した場合を想定した実施例について説明すると、作用する力に応じて、アンカーボルトを矢印方向に任意に増やし、接合具を矢印方向に任意に増やし、また、耳の形状も取り付くブレースサイズ、ボルトのサイズにより任意の形状とすることが可能である。本発明はこのように作用する力により任意に形状を変え、様々なニーズに対応することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0014】
木造建築物のブレース構造に種々応用することができる。
【符号の説明】
【0015】
1・・・・柱等の縦構造材
2・・・・ブレース(筋交い)
3・・・・基礎
4・・・・柱等の縦構造材
5・・・・横架材
6・・・・金物
7・・・・金物
8・・・・アンカーボルト
9・・・・ブレース
10・・・・柱脚金物
11・・・・金物
12・・・・柱脚金物
13・・・・柱脚金物
14・・・・柱脚金物
15・・・・耳
16・・・・アンカーボルト
17・・・・接合具
18・・・・孔部
19・・・・木ブレース
20・・・・金物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎部と、並列した縦構造材とが接合され、隅部を有する矩形の木造構造において、基礎部と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置するために、前記金物に1方向以上複数方向に筋交いを取り付ける耳を形成し、該耳に筋交いの端部と、接合固定できる耳の略中心部に一個の孔部を形成し、この孔部と筋交いを接合具で接合することを特徴とする木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法。
【請求項2】
基礎部と、並列した横架材と、並列した縦構造材とが接合され、四隅部を有する矩形の木造構造において、まず横架材と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置し、続いて、基礎部と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置するために、前記金物に1方向以上複数方向に筋交いを取り付ける耳を形成し、該耳に筋交いの端部と、接合固定できる耳の略中心部に一個の孔部を形成し、この孔部と筋交いを接合具で接合することを特徴とする木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法。
【請求項1】
基礎部と、並列した縦構造材とが接合され、隅部を有する矩形の木造構造において、基礎部と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置するために、前記金物に1方向以上複数方向に筋交いを取り付ける耳を形成し、該耳に筋交いの端部と、接合固定できる耳の略中心部に一個の孔部を形成し、この孔部と筋交いを接合具で接合することを特徴とする木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法。
【請求項2】
基礎部と、並列した横架材と、並列した縦構造材とが接合され、四隅部を有する矩形の木造構造において、まず横架材と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置し、続いて、基礎部と縦構造材における隅部を接合する筋交いを固定する手段である金物を筋交いの取り付け角度にとらわれずに設置するために、前記金物に1方向以上複数方向に筋交いを取り付ける耳を形成し、該耳に筋交いの端部と、接合固定できる耳の略中心部に一個の孔部を形成し、この孔部と筋交いを接合具で接合することを特徴とする木造建築物における横架材及び縦構造材と筋交いを金物で接合する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−57447(P2012−57447A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204721(P2010−204721)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(391004207)齋藤木材工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(391004207)齋藤木材工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
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