木造枠組構造用の壁用断熱材
【課題】木造枠組構造で作られる壁枠組が異なった距離の縦枠材間内寸法を含む場合であっても、１種類の合成樹脂発泡体製の壁用断熱材を施工現場に用意し、内寸法の異なるすべての縦枠材間に確実に挿入できる木造枠組構造用の壁用断熱材を得る。
【解決手段】横幅Ｂ×奥行Ｋ（＞Ｂ）である角材を基材とし縦枠材間一般部の内寸法がＡである木造枠組構造での壁枠組２における縦枠材間に挿入される合成樹脂発泡体製の壁用断熱材１０であり、長手方向に沿う１本以上の後面側に開放したＶ字状の割溝２１〜２５を有しかつその前面側の幅寸法はａ１（＜Ａ）であり後面側の幅寸法はａ２（＞Ａ）である。さらに、Ｖ字状の割溝２１〜２５のいずれかから一部を除去することで縦枠材間一般部の内寸法Ａと異なる内寸法Ａｘ（＜Ａ）である縦枠材間非一般部に挿入可能な部分壁用断熱材５０を得る。
【解決手段】横幅Ｂ×奥行Ｋ（＞Ｂ）である角材を基材とし縦枠材間一般部の内寸法がＡである木造枠組構造での壁枠組２における縦枠材間に挿入される合成樹脂発泡体製の壁用断熱材１０であり、長手方向に沿う１本以上の後面側に開放したＶ字状の割溝２１〜２５を有しかつその前面側の幅寸法はａ１（＜Ａ）であり後面側の幅寸法はａ２（＞Ａ）である。さらに、Ｖ字状の割溝２１〜２５のいずれかから一部を除去することで縦枠材間一般部の内寸法Ａと異なる内寸法Ａｘ（＜Ａ）である縦枠材間非一般部に挿入可能な部分壁用断熱材５０を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、木造枠組構造で作られる住宅における壁部分に挿入される合成樹脂発泡体製の壁用断熱材に関する。
【背景技術】
【０００２】
ツーバイフォー構造と通称される木造枠組構造は知られており、日本においても木造枠組構造によって多くの住宅が建てられている。木造枠組構造では角材によって組まれた木造枠組そのものが構造材としての機能を果たすようになっており、日本では、一般に、３８ｍｍ×８９ｍｍの角材が枠組の基材として用いられている。また、軸組構造による住宅と同様、木造枠組構造においても、その壁部分に合成樹脂発泡体製の断熱材を挿入する断熱施工が行われている。標準的な縦枠材配置モジュール（隣接する縦枠材の中心間との距離）は４５５ｍｍであり、縦枠材間に挿入する断熱材の横幅は、一般に、４５５ｍｍ−３８ｍｍ＝４１７ｍｍのものが用いられる。
【０００３】
木造枠組構造において、縦枠材配置モジュールは一定であるが、縦枠材間の内寸法が異なっている場合がある。例えば、木造枠組構造の壁部に開口部を形成するときに、まぐさが横架されるが、横架したまぐさを受けるために、既存の縦枠材に沿って１本または２本の同じ角材からなるまぐさ受けが並置される。まぐさ受けの並置によりまぐさ受けの横幅分だけ縦枠材間の内寸法が狭くなる。そのように縦枠材間の内寸法が変化しても、標準横幅の断熱材を用いて容易に断熱施工ができるように、特許文献１には、断熱材の側縁から幅方向に縦枠材間の横幅の半分および横幅分だけ入り込んだ位置に２本のスリットを形成し、該スリットを利用して断熱材の一部を分離することで、残りの部分断熱材を縦枠材間の異なった内寸法箇所に容易に挿入できるようにした木造枠組構造用の断熱材が記載されている。
【０００４】
また、特許文献２には、長方形である合成樹脂発泡体製の断熱材の側縁に沿ってＶ字状の割溝を形成するとともに、その断熱材の前面側の幅寸法は挿入すべき構造部材間の間隔よりも狭く設定し、後面側の幅寸法は挿入すべき構造部材間の間隔よりも広く設定した建築用断熱材が記載されている。この断熱材は、その前面と後面の寸法の違いから、隣接する構造部材間への挿入は容易であり、その後、さらに押し込む過程でＶ字状の割溝が次第に狭くなっていくことで、断熱材は構造部材間にしっかりと嵌め込まれた状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開平７−２１７０１５号公報
【特許文献２】特開平１０−１１０４８３号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
特許文献１に記載される木造枠組構造用の断熱材は、スリットを利用して一部を分離した部分断熱材を施工現場で調整することで、縦枠材間の内寸法が異なっている場所に対しても容易に挿入することができる利点がある。しかし、特許文献１に記載される断熱材の横幅は挿入すべき縦枠材間の内寸法よりも少し幅の広いものとされており、挿入する作業が容易とはいえない。また、木造枠組構造において、一般に、寸法が３８ｍｍ×８９ｍｍの角材を縦枠材および横枠材として用いているために、壁の出隅部、入隅部では、縦枠材間の内寸法が、縦枠材間一般部４１７ｍｍよりも２５．５ｍｍ［＝（４１７−（８９−３８）／２）ｍｍ］だけ狭くなるが、特許文献１に記載の断熱材では、この点の配慮はなされていない。
【０００７】
一方、特許文献２に記載の断熱材は、前面側の幅寸法を挿入すべき構造部材間の間隔よりも狭く設定し、後面側の幅寸法を挿入すべき構造部材間の間隔よりも広く設定したことで、隣接する構造部材間への挿入は容易であり、その後、さらに押し込むことで、断熱材は構造部材間にしっかりと圧入された状態となる。しかし、異なった間隔の構造部材間に挿入するために、一部を除去して部分断熱材にするという技術についてはまったく示唆されていない。
【０００８】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、木造枠組構造で作られる壁枠組が異なった距離の縦枠材間内寸法を含む場合であっても、１つの種類の合成樹脂発泡体製の壁用断熱材を施工現場に用意するのみで、内寸法の異なるすべての縦枠材間に容易にかつ確実に挿入することのできる木造枠組構造用の壁用断熱材を提供することを課題とする。また、その壁用断熱材を用いた木造枠組構造における壁部の断熱構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材は、横幅Ｂ（ｍｍ）×奥行Ｋ（ｍｍ）（＞Ｂ（ｍｍ））である角材を基材とし縦枠材間一般部の内寸法がＡ（ｍｍ）である木造枠組構造での壁枠組における前記縦枠材間に挿入される合成樹脂発泡体製の壁用断熱材であって、前記壁用断熱材は長手方向に沿う１本以上の後面側に開放したＶ字状の割溝を有しかつ壁用断熱材の前面側の幅寸法はａ１（ｍｍ）（＜Ａ（ｍｍ））であり後面側の幅寸法はａ２（ｍｍ）（＞Ａ（ｍｍ））であり、前記Ｖ字状の割溝のいずれかから壁用断熱材の一部を除去することにより、縦枠材間一般部の内寸法Ａ（ｍｍ）と異なる内寸法Ａｘ（ｍｍ）（＜Ａ（ｍｍ））である縦枠材間非一般部に挿入可能な部分壁用断熱材であって、前面側の幅寸法はａｘ１（ｍｍ）（＜Ａｘ（ｍｍ））であり後面側の幅寸法はａｘ２（ｍｍ）（＞Ａｘ（ｍｍ））である部分壁用断熱材を得ることができることを特徴とする。
【００１０】
上記の木造枠組構造用の壁用断熱材は、前面側の幅寸法ａ１（ｍｍ）は縦枠材間一般部の内寸法Ａ（ｍｍ）より狭く、後面側の幅寸法ａ２（ｍｍ）は縦枠材間一般部の内寸法Ａ（ｍｍ）より広くされている。したがって、木造枠組における縦枠材間一般部への挿入は容易であり、その後、さらに押し込む過程で、Ｖ字状の割溝の溝幅が次第に狭くなっていき、最後には、両側面を対向する縦枠材の側面に密着させた姿勢で縦枠材間に挿入された状態となる。それにより、縦枠材間一般部には確実な断熱層が形成される。
【００１１】
内寸法Ａｘ（ｍｍ）が標準内寸法Ａ（ｍｍ）よりも狭い部分に挿入するときには、形成されたＶ字状の割溝のいずれかから壁用断熱材の一部を除去して部分壁用断熱材とする。得られる部分壁用断熱材においても、その前面側の幅寸法ａｘ１（ｍｍ）は前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）より狭く、後面側の幅寸法はａｘ２（ｍｍ）は前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）より広くされている。したがって、木造枠組を構成する前記縦枠材間一般部以外の縦枠材間非一般部にも部分壁用断熱材を容易に挿入することができる。その後、さらに押し込む過程で、Ｖ字状の割溝をさらに有している場合には、当該Ｖ字状の溝幅が次第に狭くなっていくことで、またＶ字状の割溝を有していない場合には、部分壁用断熱材を形成する合成樹脂発泡体自体がわずかに変形することで、最終的に、部分壁用断熱材の両側面を対向する縦枠材の側面に密着させた姿勢で、前記非一般部の縦枠材間にしっかりと挿入された状態となる。それにより、縦枠材間非一般部にも確実に断熱層が形成される。
【００１２】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材の一態様において、壁用断熱材は、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−（Ｋ−Ｂ）／２］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に挿入可能な大きさの部分壁用断熱材が得られる位置に前記Ｖ字状の割溝が第１のＶ字状の割溝として形成されていることを特徴とする。
【００１３】
この態様の壁用断熱材は、木造枠組を９０度に交差して作られる壁部の出隅部あるいは入隅部における内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−（Ｋ−Ｂ）／２］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に、その第１のＶ字状の割溝を利用して一部を除去して得られる部分壁用断熱材を容易に挿入することができ、挿入後にはそこに安定した断熱層が形成される。
【００１４】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材の別の態様において、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に挿入可能な大きさの部分壁用断熱材が得られる位置に前記Ｖ字状の割溝が第２のＶ字状の割溝として形成されていることを特徴とする。
【００１５】
この態様の壁用断熱材は、木造枠組における縦枠材間一般部を構成する一方の縦枠材に沿って同じ寸法の縦枠材を並置することで形成される、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に、その第２のＶ字状の割溝を利用して一部を除去して得られる部分壁用断熱材を容易に挿入することができ、挿入後にはそこに安定した断熱層が形成される。
【００１６】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材のさらに別の態様において、壁用断熱材は、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−２×Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に挿入可能な大きさの部分壁用断熱材が得られる位置に前記Ｖ字状の割溝が第３のＶ字状の割溝として形成されていることを特徴とする。
【００１７】
この態様の壁用断熱材は、木造枠組における縦枠材間一般部を構成する双方の縦枠材に沿って対向する位置に同じ寸法の縦枠材を並置して形成される、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−２×Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に、その第３のＶ字状の割溝を利用して一部を除去して得られる部分壁用断熱材を容易に挿入することができ、挿入後にはそこに安定した断熱層が形成される。
【００１８】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材において、前記第１のＶ字状の割溝、第２のＶ字状の割溝、第３のＶ字状の割溝のいずれか１個のみが形成されていてもよい。第１のＶ字状の割溝のみを有する壁用断熱材は前記縦枠材間一般部と出隅部または入隅部における縦枠材間非一般部との間で共用可能となる。第２のＶ字状の割溝のみを有する壁用断熱材は前記縦枠材間一般部と該縦枠材間一般部の一方の縦枠材に沿って同じ寸法の縦枠材を並置してなる縦枠材間非一般部との間で共用可能となる。第３のＶ字状の割溝のみを有する壁用断熱材は前記縦枠材間一般部と該縦枠材間一般部の双方の縦枠材に沿って同じ寸法の縦枠材を並置してなる縦枠材間非一般部との間で共用可能となる。
【００１９】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材の好ましい態様においては、前記第１のＶ字状の割溝、第２のＶ字状の割溝、第３のＶ字状の割溝のいずれか２個が１つの壁用断熱材に形成される。さらに好ましい態様では、前記第１のＶ字状の割溝、第２のＶ字状の割溝、第３のＶ字状の割溝のすべてが壁用断熱材に形成される。それにより、縦枠材間一般部と、それと異なった寸法の複数の縦枠材間非一般部を備えた木造枠組構造での壁枠組において、縦枠材間一般部と縦枠材間非一般部との間で共用可能となる。
【００２０】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材を取り付ける対象となる壁枠組の寸法および壁枠組を構成する基材としての角材の寸法に特に限定はない。現在の一般的な木造枠組構造では、木造枠組を構成する基材としての縦枠材および横枠材の寸法は、横幅Ｂ＝３８ｍｍ、奥行Ｋ＝８９ｍｍ、縦枠材間の標準内寸法Ａ＝４１７ｍｍである。本発明による壁用断熱材が上記寸法の木造枠組構造での壁枠組に挿入される合成樹脂発泡体製の壁用断熱材である場合、前記第１のＶ字状の割溝の内側側面の位置は、壁用断熱材の上面における側端縁から略２５〜３０ｍｍ程度だけ内側に入った位置となり、前記第２のＶ字状の割溝の内側側面の位置は、壁用断熱材の上面における側端縁から略３８〜４２ｍｍ程度だけ内側に入った位置となり、前記第３のＶ字状の割溝の内側側面の位置は、壁用断熱材の上面における側端縁から略７５〜８３ｍｍ程度だけ内側に入った位置となる。
【００２１】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材において、Ｖ字状の割溝の後面側の開口幅は任意であってよいが、木造枠組を構成する縦枠材は横幅Ｂ＝３８ｍｍ、奥行Ｋ＝８９ｍｍ、縦枠材間の標準内寸法Ａ＝４１７ｍｍである木造枠組である場合に、Ｖ字状の割溝の後面側の開口幅は略６〜１５ｍｍであることは、作業の容易性の観点から望ましい。
【００２２】
前記した各Ｖ字状の割溝は、壁用断熱材の一方の側縁からの距離の順に順番に配列するようにしてもよいが、壁用断熱材全体の強度とバランスを考慮すると、壁用断熱材の双方の側縁側に分散するようにして配置することが望ましい。それにより、施工現場でのＶ字状の割溝を利用しての分離作業も容易かつ確実となる。
【００２３】
本発明は、さらに、上記の木造枠組構造用の壁用断熱材を用いた木造枠組構造の壁部の断熱構造であって、前記壁部の壁枠組は、縦枠材間一般部の内寸法がＡ（ｍｍ）である標準部分と、内寸法が前記縦枠材間一般部の内寸法Ａ（ｍｍ）とは異なる内寸法Ａｘ（ｍｍ）（＜Ａ（ｍｍ））である縦枠材間非一般部とを備えた壁枠組であり、前記縦枠材間一般部には前記壁用断熱材がそのまま挿入されており、前記縦枠材間非一般部には前記いずれかのＶ字状の割溝の部分から一部を除去した後の部分壁用断熱材が挿入されている構造を少なくとも備えることを特徴とする木造枠組構造の壁部の断熱構造をも開示する。
【発明の効果】
【００２４】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材を用いることにより、木造枠組構造で作られる壁枠組が異なった距離の縦枠材間内寸法を含む場合であっても、１つの種類の合成樹脂発泡体製の壁用断熱材を施工現場に用意するのみで、内寸法の異なるすべての縦枠材間に容易にかつ確実に挿入することができるようになる。それにより、断熱施工の容易性が得られるとともに、壁用断熱材の在庫管理あるいは製品管理も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【００２５】
【図１】木造枠組構造における壁枠組とその壁断熱構造を寸法も入れて説明する第１の図であり、（ａ）は立面図、（ｂ）は断面図。
【図２】木造枠組構造における壁枠組とその壁断熱構造を寸法も入れて説明する第２の図であり、（ａ）は立面図、（ｂ）は上部断面図、（ｃ）は下部断面図。
【図３】本発明による壁用断熱材の一例を寸法も入れて説明する短手方向の断面図（ａ）とそれを縦枠材間一般部に挿入した後の状態を示す図（ｂ）。
【図４】部分壁用断熱材を縦枠材間非一般部に挿入した後の状態を示す３つの図。
【図５】部分壁用断熱材を縦枠材間非一般部に挿入した後の状態を示すさらに２つの図。
【発明を実施するための形態】
【００２６】
以下、本発明を実施の形態に基づき説明する。最初に、木造枠組構造での壁枠組について説明する。
図１は、木造枠組構造での壁枠組１の一例を立面図と断面図で示しており、標準的な壁枠組１での寸法の数値を単位ｍｍで書き入れてある。壁枠組１は、基材である同じ寸法の角材を縦枠材２および横枠材３として用い、全体が矩形状に組み付けられている。通常、角材の寸法は、横幅Ｂが３８ｍｍ、奥行Ｋが８９ｍｍである。壁枠組１での隣接する縦枠材２、２の一般部での中心間の距離（配置モジュール）Ｚは４５５ｍｍとされており、したがって、縦枠材間一般部での内寸法Ａは４１７ｍｍとなっている。
【００２７】
木造枠組構造において、出隅部のように壁枠組１同士が直交する場所においては、直交する一方の壁枠組１の横枠材３の幅方向中心と直交する他方の壁枠組１の縦枠材２の幅方向中心との距離が４５５ｍｍとなるように壁枠組１が作られており、したがって、壁枠組１の側端部での縦枠間距離Ａｘ１は縦枠材間一般部での内寸法Ａより狭く、その距離Ａｘ１は［Ａ−（Ｋ−Ｂ）／２］である。以下の説明において、このように縦枠材間一般部と内寸法が異なる部位を縦枠材間非一般部呼ぶ。そして、ここでの縦枠材間非一般部での内寸法Ａｘ１は［４１７−（８９−３８）／２］＝４１７−２５．５＝３９１．５ｍｍとなっている。
【００２８】
図１に示した壁枠組１に開口部を作ることが求められる場合がある。その一例が図２に示される。図２では左側部の縦枠材間非一般部Ａｘ１とその右隣の縦枠材間一般部Ａとにそれぞれ開口部を形成している。ここでは、上部にまぐさ５が水平に配置され、その左端を下方から支持するように縦枠材２ａの右側面に沿うようにして同じ寸法の角材によるまぐさ受け４ａが立設され、まぐさ５の中央部を下方から支持するように、縦枠材２ｂの左側面に沿うようにしてまぐさ受け４ｂが、また右側面に沿うようにしてまぐさ受け４ｃが立設され、さらに、まぐさ５の右端を下方から支持するように縦枠材２ｃの左側面に沿うようにしてまぐさ受け４ｄが立設されている。
【００２９】
図２に示される壁枠材において、まぐさ５より上の縦枠材間距離は、図２（ｂ）にも示すように、前記距離Ａｘ１および距離Ａと同じであるが、まぐさ受け４が設置されたところでは、図２（ｃ）にも示すように、図で左側の縦枠材間距離Ａｘ２は、Ａｘ１−２×Ｂ＝３９１．５−２×３８＝３１５．５ｍｍとなり、また、図で右側の縦枠材間距離Ａｘ３は、Ａ−２×Ｂ＝４１７−２×３８＝３４１ｍｍとなる。これらの寸法も縦枠材間一般部とは異なっており、本発明でいう縦枠材間非一般部の範疇となる。
【００３０】
その他、図示しないが、まぐさの取り付け場所と横幅寸法によっては、縦枠材間非一般部の距離が、距離Ａｘ１−Ｂ＝３５３．５ｍｍ（Ａｘ４）となる場合と、距離Ａ−Ｂ＝４１７−３８＝３７９ｍｍ（Ａｘ５）となる場合とがある。
【００３１】
すなわち、木造枠組構造の壁部分を合成樹脂発泡体製の壁用断熱材を用いて断熱しようとすると、前記したように、縦枠材間一般部用として、横幅がＡ（＝４１７ｍｍ）の壁用断熱材と、縦枠材間非一般部用として、横幅がＡｘ１（＝３９１．５ｍｍ）の２種類の壁用断熱材を少なくとも用意することが必要であり、壁部に開口部が形成される場合には、まぐさの取り付け場所と横幅寸法によっては、さらに、Ａｘ２（＝３１５．５ｍｍ）、Ａｘ３（＝３４１ｍｍ）、Ａｘ４（３５３．５ｍｍ）、Ａｘ５（＝３７９ｍｍ）の４種類の壁用断熱材を用意する必要がある。
【００３２】
本発明によれば、そのうちの２種類あるいは３種類以上の壁用断熱材を１つの壁用断熱材から施工現場で容易に調整できるようにした木造枠組構造用の壁用断熱材を得ることができる。図３（ａ）は、本発明による壁用断熱材１０の一例を短手方向の断面で示している。なお、壁用断熱材１０の素材としての合成樹脂発泡体は、柔軟性を有し圧縮可能であり、反発弾性を有していて縦枠材間などに圧挿した場合に、その側面に断熱材の端面部が密着する性質を有するものであるのが好ましい。具体的には、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂を、押出発泡成形あるいはビーズ発泡成形によって成形したものが好ましい。
【００３３】
壁用断熱材１０は所要長さの長尺状部材であり、図３に示すように、左右の側面１１、１２と、前面１３と後面１４とを備える。側面に沿うようにして長手方向に適数（図示のものでは５本）のＶ字状の割溝２１〜２５が形成されている。各Ｖ字状の割溝２１〜２５は後面１４側で開放しており、各割溝の底部は前面１３の近傍にまで達している。
【００３４】
また、壁用断熱材１０は、後面側の幅寸法はａ２が前面側の幅寸法はａ１よりも広く、かつ、前面側の幅寸法ａ１は前記した縦枠材間一般部の内寸法Ａよりも１０〜２０ｍｍ程度狭くされ、後面側の幅寸法ａ２は縦枠材間一般部の内寸法Ａよりも１０〜２０ｍｍ程度広くされている。したがって、左右の側面１１、１２は後面１４側から前面１３側に向けて次第に幅狭くなる方向に傾斜した面となっている。
【００３５】
前記Ｖ字状の割溝２１、Ｖ字状の割溝２２、Ｖ字状の割溝２３は、壁用断熱材１０の幅方向の中央部から右側面１２側に偏位して形成されており、Ｖ字状の割溝２４、Ｖ字状の割溝２５は、壁用断熱材１０の幅方向の中央部から左側面１１側に偏位して形成されている。また、各Ｖ字状の割溝２１〜２５の中心線の方向は、壁用断熱材１０の幅方向の中央部での垂線に対して平行ではなく、壁用断熱材１０の幅方向の中央部に向かう方向にわずかに傾斜している。したがって、壁用断熱材１０の厚みは全幅方向にほぼ同じであるが、図示されるように、割溝２１、２２、２３は、図で右下方向にわずかに傾斜した姿勢となっており、Ｖ字状の割溝２４、２５は、図で左下方向にわずかに傾斜した姿勢となっている。さらに、Ｖ字状の割溝２１〜２５のいずれかから壁用断熱材１０の一部を除去して部分壁用断熱材５０としたときに、該部分壁用断熱材５０の前面１３側の幅寸法ａｘ１は後面１４側の幅寸法はａｘ２よりも狭くなっている。
【００３６】
具体的には、Ｖ字状の割溝２１の右側面１２側の側面は右側面１２の後面側端から略２４．５ｍｍの位置にあり、その開口幅は略５ｍｍとされている。Ｖ字状の割溝２２の右側面は前記Ｖ字状の割溝２１の左側面から略４７．５ｍｍの位置にあり、その開口幅は略６ｍｍとされている。Ｖ字状の割溝２３の右側面は前記Ｖ字状の割溝２２の左側面から略２３．５ｍｍの位置にあり、その開口幅は略６ｍｍとされている。また、Ｖ字状の割溝２５の左側面１１側の側面は左側面１１の後面側端から略３６ｍｍの位置にあり、その開口幅は略６ｍｍとされている。Ｖ字状の割溝２４の左側面は前記Ｖ字状の割溝２５の右側面から略２３．５ｍｍの位置にあり、その開口幅は略６ｍｍとされている。そして、Ｖ字状の割溝２３の左側面は裏面１４に垂直な面とされており、Ｖ字状の割溝２４の右側面も裏面１４に垂直な面とされている。また、Ｖ字状の割溝２３の左側面とＶ字状の割溝２４の右側面との間の距離は略２５２ｍｍとされている。上記寸法のものを水平面に投影するとほぼ図示に示したような寸法となり、壁用断熱材１０の後面１４側の横幅寸法はａ２は略４３４．９ｍｍとなる。
【００３７】
壁用断熱材１０の前面１３側は、右側面１２の前面側端と前記Ｖ字状の割溝２１の中心線の延長部間の距離は略２３．７ｍｍ、Ｖ字状の割溝２１の中心線の延長部とＶ字状の割溝２２の中心線の延長部間の距離は略４８．３ｍｍ、Ｖ字状の割溝２２の中心線の延長部とＶ字状の割溝２３の中心線の延長部間の距離は略２３．７ｍｍであり、Ｖ字状の割溝２３の中心線の延長部とＶ字状の割溝２４の中心線の延長部間の距離は略２５２ｍｍであり、Ｖ字状の割溝２４の中心線の延長部とＶ字状の割溝２５の中心線の延長部間の距離は略２３．７ｍｍであり、Ｖ字状の割溝２５の中心線の延長部と左側面１１の前面側端との距離は略３４．８ｍｍである。上記寸法のものを水平面に投影するほぼと図示に示したような寸法となり、壁用断熱材１０の前面１４側の横幅寸法ａ１は略４０５．０ｍｍとなる。
【００３８】
この例において、前記ａ２−ａ１＝４３４．９−４０５．０＝２９．９ｍｍであり、右側面１１では後面１４側端と前面１３側端との距離が略１３ｍｍ、左側面１２では後面１４側端と前面１３側端との距離が略１６．８ｍｍとなっている。
【００３９】
前記したように、図１および図２で説明した壁枠組１において、縦枠材間一般部での縦枠材２、２間の内寸法Ａは４１７ｍｍである。したがって、上記寸法の壁用断熱材１０はその前面１３側から、縦枠材間一般部での縦枠材２、２間に容易に挿入することができ、さらに押し込む過程で、各Ｖ字状の割溝２１〜２５の開口は次第に狭くなる方向に閉じていき、最後には図３（ｂ）に示すように、各Ｖ字状の割溝２１〜２５の開口幅が略２ｍｍとなった状態で縦枠材間一般部での縦枠材２、２間に挿入される。
【００４０】
次に、図１に示すＡｘ１＝３９１．５ｍｍである縦枠材間非一般部に壁用断熱材１０を挿入する場合を説明する。この場合には、図３（ａ）に示した壁用断熱材１０から前記Ｖ字状の割溝２１を利用して、図で右側部分を除去した部分壁用断熱材５０ａを用いる。部分壁用断熱材５０ａの前面側の幅寸法ａｘ１は、略４０５−略２３．７＝略３８１．３ｍｍとなり、Ａｘ１＝３９１．５ｍｍより小さい。また、後面側の幅寸法ａｘ２は、略４３４．９−略（２４．１＋５）＝略４０５．８ｍｍとなり、Ａｘ１＝３９１．５ｍｍより大きい。そのために、上記寸法の部分壁用断熱材５０ａはその前面１３側から、縦枠材間非一般部での縦枠材２、２間に容易に挿入することができ、さらに押し込む過程で、Ｖ字状の割溝２２〜２５の開口が次第に狭くなる方向に閉じていき、最後には図４（ａ）に示すように、Ｖ字状の割溝２２〜２５の開口幅が略２〜３ｍｍとなった状態で、図１に示した図で最も左側の縦枠材間非一般部における縦枠材２、２間に挿入される。したがって、図示の壁用断熱材１０において、前記Ｖ字状の割溝２１は本発明でいう「第１のＶ字状の割溝」に相当する。
【００４１】
次に、図２にＡｘ３として示す縦枠材間非一般部、すなわち、隣接する縦枠材２ｂ、２ｃの双方の対向する側面に同じ寸法の縦枠材をまぐさ受け４ｃ、４ｄとして取り付けて形成される横幅Ａｘ３＝３４１ｍｍである縦枠材間非一般部に、壁用断熱材１０を挿入する場合を説明する。この場合には、図３（ａ）に示した壁用断熱材１０からＶ字状の割溝２２を利用して、図でそれより右側部分を除去した部分壁用断熱材５０ｂを用いる。部分壁用断熱材５０ｂの前面１３側の幅寸法ａｘ１は、略４０５−略７１．３＝略３３３．８ｍｍとなり、Ａｘ３＝３４１ｍｍより小さい。また、後面１４側の幅寸法ａｘ２は、略４３４．９−略（２４．１＋５＋４７．１＋６）＝略３５２．７ｍｍとなり、Ａｘ３＝３４１ｍｍより大きい。そのために、上記寸法の部分壁用断熱材５０ｂは、内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−２×Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部、すなわち、図２にＡｘ３＝３４１ｍｍとして示すまぐさ受け４ｃとまぐさ受け４ｄ間である縦枠材間非一般部に、前面１３側から容易に挿入することができ、さらに押し込む過程で、Ｖ字状の割溝２３〜２５の開口が次第に狭くなる方向に閉じていき、最後には図４（ｂ）に示すように、Ｖ字状の割溝２３〜２５の開口幅が略２ｍｍとなった状態で、まぐさ受け４ｃとまぐさ受け４ｄ間にしっかりと挿入される。したがって、図示の壁用断熱材１０において、前記Ｖ字状の割溝２２は本発明でいう「第３のＶ字状の割溝」に相当する。
【００４２】
図示しないが、まぐさ５の取り付け位置の大きさの関係で、縦枠材間非一般部の距離Ａｘが、Ａｘ＝Ａ−Ｂ＝４１７−３８＝３７９ｍｍとなる場合がある。すなわち、隣接する縦枠材２、２の対向する一方の側面にのみ同じ寸法の縦枠材をまぐさ受け４として取り付けて形成される縦枠材間非一般部である。この場合には、図３（ａ）に示した壁用断熱材１０からＶ字状の割溝２５を利用して、図でそれより左側部分を除去した部分壁用断熱材５０ｃを用いる。部分壁用断熱材５０ｃの前面１３側の幅寸法はａｘ１は、略４０５−略３４．５＝略３７０．５ｍｍとなり、Ａｘ＝３７９ｍｍより小さい。また、後面１４側の幅寸法はａｘ２は、略４３４．９−略（３５．７＋６）＝略３９３．２ｍｍとなり、Ａｘ＝３７９ｍｍより大きい。そのために、上記寸法の部分壁用断熱材５０ｃは、内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部、すなわち、図示しないが、隣接する縦枠材２、２の対向する一方の側面にのみ同じ寸法の縦枠材をまぐさ受け４として取り付けて形成される縦枠材間非一般部に、前面１３側から容易に挿入することができ、さらに押し込む過程で、Ｖ字状の割溝２１〜２４の開口が次第に狭くなる方向に閉じていき、Ｖ字状の割溝２１〜２４の開口幅が略２ｍｍとなった状態で、図４（ｃ）に示すように、縦枠材２とまぐさ受け４間にしっかりと挿入される。したがって、図示の壁用断熱材１０において、前記Ｖ字状の割溝２５は本発明でいう「第２のＶ字状の割溝」に相当する。
【００４３】
次に、図２にＡｘ２として示す縦枠材間非一般部、すなわち、図１に示したＡｘ１＝３９１．５ｍｍである縦枠材間非一般部を形成している縦枠材２ａ、２ｂの双方の対向する側面に同じ寸法の縦枠材をまぐさ受け４ａ、４ｂとして取り付けて形成される縦枠材間非一般部に、壁用断熱材１０を挿入する場合を説明する。この場合には、図３（ａ）に示した壁用断熱材１０からＶ字状の割溝２３を利用して、図でそれより右側部分を除去した部分壁用断熱材５０ｄを用いる。部分壁用断熱材５０ｄの前面１３側の幅寸法はａｘ１は、略４０５−略（２３．６＋７１．３）＝略３１０．１ｍｍとなり、Ａｘ２＝３１５．５ｍｍより小さい。また、後面１４側の幅寸法はａｘ２は、略４３４．９−略（６＋２３．５＋６＋４７．１＋５＋２４．１）＝略３２３．２ｍｍとなり、Ａｘ２＝３１５．５ｍｍより大きい。そのために、上記寸法の部分壁用断熱材５０ｄは、内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａｘ１−２×Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部、すなわち、図２にＡｘ２＝３１５．５ｍｍとして示すまぐさ受け４ａとまぐさ受け４ｂ間である縦枠材間非一般部に、前面１３側から容易に挿入することができ、さらに押し込む過程で、Ｖ字状の割溝２４、２５の開口が次第に狭くなる方向に閉じていき、最後には図５（ａ）に示すように、Ｖ字状の割溝２４、２５の開口幅が略２ｍｍとなった状態で、まぐさ受け４ａとまぐさ受け４ｂ間にしっかりと挿入される。
【００４４】
図示しないが、まぐさ５の取り付け位置の大きさの関係で、縦枠材間非一般部の距離Ａｘが、Ａｘ＝Ａｘ２−Ｂ＝３９１．５−３８＝３５３．５ｍｍとなる場合がある。すなわち、図１に示すＡｘ１＝３９１．５ｍｍである縦枠材間非一般部を形成している縦枠材２ａ、２ｂの対向する一方の側面にのみ同じ寸法の縦枠材をまぐさ受け４として取り付けて形成される縦枠材間非一般部である。この場合には、図３（ａ）に示した壁用断熱材１０からＶ字状の割溝２４を利用して、図でそれより左側部分を除去した部分壁用断熱材５０ｅを用いる。部分壁用断熱材５０ｅの前面１３側の幅寸法はａｘ１は、略４０５−略（３４．５＋２３．５）＝略３４７ｍｍとなり、Ａｘ＝３５３．５ｍｍより小さい。また、後面１４側の幅寸法はａｘ２は、略４３４．９−略（６＋２３．５＋６＋３５．７）＝略３６３．７ｍｍとなり、Ａｘ＝３５３．５ｍｍより大きい。そのために、上記寸法の部分壁用断熱材５０ｅは、内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａｘ１−Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部、すなわち、図示しないが、図１にＡｘ１＝３９１．５ｍｍとして示す縦枠材間非一般部の縦枠材２ａ、２ｂのいずれか一方にのみまぐさ受け４を取り付けた縦枠材間非一般部に、前面１３側から容易に挿入することができ、さらに押し込む過程で、Ｖ字状の割溝２１〜２３の開口が次第に狭くなる方向に閉じていき、最後には図５（ｂ）に示すように、すべての開口幅が略２ｍｍとなった状態で、縦枠材２とまぐさ受け４の間にしっかりと挿入される。
【００４５】
なお、上記図３（ａ）に示した壁用断熱材１０は、本発明による壁用断熱材の一つの実施の形態であって、本発明による壁用断熱材はこれに限らない。前記したＶ字状の割溝２１〜２５のすべてが壁用断熱材に設けられている必要はなく、壁断熱を施工しようとする木造枠組構造による住宅における壁枠組の構成と、当該住宅の壁構造において壁枠組に何種類の内寸法の異なる前記縦枠材間非一般部を設けることが必要とされるか、に応じて、Ｖ字状の割溝２１〜２５のいずれかを選択的に形成すればよいことは、理解されよう。すなわち、図示しないが、「第１のＶ字状の割溝」に相当するＶ字状の割溝２１のみを有していてもよく、「第２のＶ字状の割溝」に相当するＶ字状の割溝２５のみを有していてもよく、「第３のＶ字状の割溝」に相当するＶ字状の割溝２２のみを有していてもよい。それらを適宜組み合わせて形成することもできる。
【符号の説明】
【００４６】
１…木造枠組構造での壁枠組、
２（２ａ，２ｂ，２ｃ）…縦枠材、
３…横枠材、
４（４ａ〜４ｄ）…まぐさ受け、
５…まぐさ、
１０…壁用断熱材、
５０（５０ａ〜５０ｅ）…部分壁用断熱材、
Ａ…縦枠材間一般部での内寸法、
Ａｘ１〜Ａｘ３…縦枠材間非一般部での内寸法、
Ｂ…基材としての枠材と横幅、
Ｋ…基材としての枠材の奥行、
ａ１…壁用断熱材の前面側の幅寸法、
ａ２…壁用断熱材の後面側の幅寸法、
ａｘ１…部分壁用断熱材の前面側の幅寸法、
ａｘ２…部分壁用断熱材の後面側の幅寸法。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、木造枠組構造で作られる住宅における壁部分に挿入される合成樹脂発泡体製の壁用断熱材に関する。
【背景技術】
【０００２】
ツーバイフォー構造と通称される木造枠組構造は知られており、日本においても木造枠組構造によって多くの住宅が建てられている。木造枠組構造では角材によって組まれた木造枠組そのものが構造材としての機能を果たすようになっており、日本では、一般に、３８ｍｍ×８９ｍｍの角材が枠組の基材として用いられている。また、軸組構造による住宅と同様、木造枠組構造においても、その壁部分に合成樹脂発泡体製の断熱材を挿入する断熱施工が行われている。標準的な縦枠材配置モジュール（隣接する縦枠材の中心間との距離）は４５５ｍｍであり、縦枠材間に挿入する断熱材の横幅は、一般に、４５５ｍｍ−３８ｍｍ＝４１７ｍｍのものが用いられる。
【０００３】
木造枠組構造において、縦枠材配置モジュールは一定であるが、縦枠材間の内寸法が異なっている場合がある。例えば、木造枠組構造の壁部に開口部を形成するときに、まぐさが横架されるが、横架したまぐさを受けるために、既存の縦枠材に沿って１本または２本の同じ角材からなるまぐさ受けが並置される。まぐさ受けの並置によりまぐさ受けの横幅分だけ縦枠材間の内寸法が狭くなる。そのように縦枠材間の内寸法が変化しても、標準横幅の断熱材を用いて容易に断熱施工ができるように、特許文献１には、断熱材の側縁から幅方向に縦枠材間の横幅の半分および横幅分だけ入り込んだ位置に２本のスリットを形成し、該スリットを利用して断熱材の一部を分離することで、残りの部分断熱材を縦枠材間の異なった内寸法箇所に容易に挿入できるようにした木造枠組構造用の断熱材が記載されている。
【０００４】
また、特許文献２には、長方形である合成樹脂発泡体製の断熱材の側縁に沿ってＶ字状の割溝を形成するとともに、その断熱材の前面側の幅寸法は挿入すべき構造部材間の間隔よりも狭く設定し、後面側の幅寸法は挿入すべき構造部材間の間隔よりも広く設定した建築用断熱材が記載されている。この断熱材は、その前面と後面の寸法の違いから、隣接する構造部材間への挿入は容易であり、その後、さらに押し込む過程でＶ字状の割溝が次第に狭くなっていくことで、断熱材は構造部材間にしっかりと嵌め込まれた状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開平７−２１７０１５号公報
【特許文献２】特開平１０−１１０４８３号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
特許文献１に記載される木造枠組構造用の断熱材は、スリットを利用して一部を分離した部分断熱材を施工現場で調整することで、縦枠材間の内寸法が異なっている場所に対しても容易に挿入することができる利点がある。しかし、特許文献１に記載される断熱材の横幅は挿入すべき縦枠材間の内寸法よりも少し幅の広いものとされており、挿入する作業が容易とはいえない。また、木造枠組構造において、一般に、寸法が３８ｍｍ×８９ｍｍの角材を縦枠材および横枠材として用いているために、壁の出隅部、入隅部では、縦枠材間の内寸法が、縦枠材間一般部４１７ｍｍよりも２５．５ｍｍ［＝（４１７−（８９−３８）／２）ｍｍ］だけ狭くなるが、特許文献１に記載の断熱材では、この点の配慮はなされていない。
【０００７】
一方、特許文献２に記載の断熱材は、前面側の幅寸法を挿入すべき構造部材間の間隔よりも狭く設定し、後面側の幅寸法を挿入すべき構造部材間の間隔よりも広く設定したことで、隣接する構造部材間への挿入は容易であり、その後、さらに押し込むことで、断熱材は構造部材間にしっかりと圧入された状態となる。しかし、異なった間隔の構造部材間に挿入するために、一部を除去して部分断熱材にするという技術についてはまったく示唆されていない。
【０００８】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、木造枠組構造で作られる壁枠組が異なった距離の縦枠材間内寸法を含む場合であっても、１つの種類の合成樹脂発泡体製の壁用断熱材を施工現場に用意するのみで、内寸法の異なるすべての縦枠材間に容易にかつ確実に挿入することのできる木造枠組構造用の壁用断熱材を提供することを課題とする。また、その壁用断熱材を用いた木造枠組構造における壁部の断熱構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材は、横幅Ｂ（ｍｍ）×奥行Ｋ（ｍｍ）（＞Ｂ（ｍｍ））である角材を基材とし縦枠材間一般部の内寸法がＡ（ｍｍ）である木造枠組構造での壁枠組における前記縦枠材間に挿入される合成樹脂発泡体製の壁用断熱材であって、前記壁用断熱材は長手方向に沿う１本以上の後面側に開放したＶ字状の割溝を有しかつ壁用断熱材の前面側の幅寸法はａ１（ｍｍ）（＜Ａ（ｍｍ））であり後面側の幅寸法はａ２（ｍｍ）（＞Ａ（ｍｍ））であり、前記Ｖ字状の割溝のいずれかから壁用断熱材の一部を除去することにより、縦枠材間一般部の内寸法Ａ（ｍｍ）と異なる内寸法Ａｘ（ｍｍ）（＜Ａ（ｍｍ））である縦枠材間非一般部に挿入可能な部分壁用断熱材であって、前面側の幅寸法はａｘ１（ｍｍ）（＜Ａｘ（ｍｍ））であり後面側の幅寸法はａｘ２（ｍｍ）（＞Ａｘ（ｍｍ））である部分壁用断熱材を得ることができることを特徴とする。
【００１０】
上記の木造枠組構造用の壁用断熱材は、前面側の幅寸法ａ１（ｍｍ）は縦枠材間一般部の内寸法Ａ（ｍｍ）より狭く、後面側の幅寸法ａ２（ｍｍ）は縦枠材間一般部の内寸法Ａ（ｍｍ）より広くされている。したがって、木造枠組における縦枠材間一般部への挿入は容易であり、その後、さらに押し込む過程で、Ｖ字状の割溝の溝幅が次第に狭くなっていき、最後には、両側面を対向する縦枠材の側面に密着させた姿勢で縦枠材間に挿入された状態となる。それにより、縦枠材間一般部には確実な断熱層が形成される。
【００１１】
内寸法Ａｘ（ｍｍ）が標準内寸法Ａ（ｍｍ）よりも狭い部分に挿入するときには、形成されたＶ字状の割溝のいずれかから壁用断熱材の一部を除去して部分壁用断熱材とする。得られる部分壁用断熱材においても、その前面側の幅寸法ａｘ１（ｍｍ）は前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）より狭く、後面側の幅寸法はａｘ２（ｍｍ）は前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）より広くされている。したがって、木造枠組を構成する前記縦枠材間一般部以外の縦枠材間非一般部にも部分壁用断熱材を容易に挿入することができる。その後、さらに押し込む過程で、Ｖ字状の割溝をさらに有している場合には、当該Ｖ字状の溝幅が次第に狭くなっていくことで、またＶ字状の割溝を有していない場合には、部分壁用断熱材を形成する合成樹脂発泡体自体がわずかに変形することで、最終的に、部分壁用断熱材の両側面を対向する縦枠材の側面に密着させた姿勢で、前記非一般部の縦枠材間にしっかりと挿入された状態となる。それにより、縦枠材間非一般部にも確実に断熱層が形成される。
【００１２】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材の一態様において、壁用断熱材は、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−（Ｋ−Ｂ）／２］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に挿入可能な大きさの部分壁用断熱材が得られる位置に前記Ｖ字状の割溝が第１のＶ字状の割溝として形成されていることを特徴とする。
【００１３】
この態様の壁用断熱材は、木造枠組を９０度に交差して作られる壁部の出隅部あるいは入隅部における内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−（Ｋ−Ｂ）／２］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に、その第１のＶ字状の割溝を利用して一部を除去して得られる部分壁用断熱材を容易に挿入することができ、挿入後にはそこに安定した断熱層が形成される。
【００１４】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材の別の態様において、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に挿入可能な大きさの部分壁用断熱材が得られる位置に前記Ｖ字状の割溝が第２のＶ字状の割溝として形成されていることを特徴とする。
【００１５】
この態様の壁用断熱材は、木造枠組における縦枠材間一般部を構成する一方の縦枠材に沿って同じ寸法の縦枠材を並置することで形成される、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に、その第２のＶ字状の割溝を利用して一部を除去して得られる部分壁用断熱材を容易に挿入することができ、挿入後にはそこに安定した断熱層が形成される。
【００１６】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材のさらに別の態様において、壁用断熱材は、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−２×Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に挿入可能な大きさの部分壁用断熱材が得られる位置に前記Ｖ字状の割溝が第３のＶ字状の割溝として形成されていることを特徴とする。
【００１７】
この態様の壁用断熱材は、木造枠組における縦枠材間一般部を構成する双方の縦枠材に沿って対向する位置に同じ寸法の縦枠材を並置して形成される、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−２×Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に、その第３のＶ字状の割溝を利用して一部を除去して得られる部分壁用断熱材を容易に挿入することができ、挿入後にはそこに安定した断熱層が形成される。
【００１８】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材において、前記第１のＶ字状の割溝、第２のＶ字状の割溝、第３のＶ字状の割溝のいずれか１個のみが形成されていてもよい。第１のＶ字状の割溝のみを有する壁用断熱材は前記縦枠材間一般部と出隅部または入隅部における縦枠材間非一般部との間で共用可能となる。第２のＶ字状の割溝のみを有する壁用断熱材は前記縦枠材間一般部と該縦枠材間一般部の一方の縦枠材に沿って同じ寸法の縦枠材を並置してなる縦枠材間非一般部との間で共用可能となる。第３のＶ字状の割溝のみを有する壁用断熱材は前記縦枠材間一般部と該縦枠材間一般部の双方の縦枠材に沿って同じ寸法の縦枠材を並置してなる縦枠材間非一般部との間で共用可能となる。
【００１９】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材の好ましい態様においては、前記第１のＶ字状の割溝、第２のＶ字状の割溝、第３のＶ字状の割溝のいずれか２個が１つの壁用断熱材に形成される。さらに好ましい態様では、前記第１のＶ字状の割溝、第２のＶ字状の割溝、第３のＶ字状の割溝のすべてが壁用断熱材に形成される。それにより、縦枠材間一般部と、それと異なった寸法の複数の縦枠材間非一般部を備えた木造枠組構造での壁枠組において、縦枠材間一般部と縦枠材間非一般部との間で共用可能となる。
【００２０】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材を取り付ける対象となる壁枠組の寸法および壁枠組を構成する基材としての角材の寸法に特に限定はない。現在の一般的な木造枠組構造では、木造枠組を構成する基材としての縦枠材および横枠材の寸法は、横幅Ｂ＝３８ｍｍ、奥行Ｋ＝８９ｍｍ、縦枠材間の標準内寸法Ａ＝４１７ｍｍである。本発明による壁用断熱材が上記寸法の木造枠組構造での壁枠組に挿入される合成樹脂発泡体製の壁用断熱材である場合、前記第１のＶ字状の割溝の内側側面の位置は、壁用断熱材の上面における側端縁から略２５〜３０ｍｍ程度だけ内側に入った位置となり、前記第２のＶ字状の割溝の内側側面の位置は、壁用断熱材の上面における側端縁から略３８〜４２ｍｍ程度だけ内側に入った位置となり、前記第３のＶ字状の割溝の内側側面の位置は、壁用断熱材の上面における側端縁から略７５〜８３ｍｍ程度だけ内側に入った位置となる。
【００２１】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材において、Ｖ字状の割溝の後面側の開口幅は任意であってよいが、木造枠組を構成する縦枠材は横幅Ｂ＝３８ｍｍ、奥行Ｋ＝８９ｍｍ、縦枠材間の標準内寸法Ａ＝４１７ｍｍである木造枠組である場合に、Ｖ字状の割溝の後面側の開口幅は略６〜１５ｍｍであることは、作業の容易性の観点から望ましい。
【００２２】
前記した各Ｖ字状の割溝は、壁用断熱材の一方の側縁からの距離の順に順番に配列するようにしてもよいが、壁用断熱材全体の強度とバランスを考慮すると、壁用断熱材の双方の側縁側に分散するようにして配置することが望ましい。それにより、施工現場でのＶ字状の割溝を利用しての分離作業も容易かつ確実となる。
【００２３】
本発明は、さらに、上記の木造枠組構造用の壁用断熱材を用いた木造枠組構造の壁部の断熱構造であって、前記壁部の壁枠組は、縦枠材間一般部の内寸法がＡ（ｍｍ）である標準部分と、内寸法が前記縦枠材間一般部の内寸法Ａ（ｍｍ）とは異なる内寸法Ａｘ（ｍｍ）（＜Ａ（ｍｍ））である縦枠材間非一般部とを備えた壁枠組であり、前記縦枠材間一般部には前記壁用断熱材がそのまま挿入されており、前記縦枠材間非一般部には前記いずれかのＶ字状の割溝の部分から一部を除去した後の部分壁用断熱材が挿入されている構造を少なくとも備えることを特徴とする木造枠組構造の壁部の断熱構造をも開示する。
【発明の効果】
【００２４】
本発明による木造枠組構造用の壁用断熱材を用いることにより、木造枠組構造で作られる壁枠組が異なった距離の縦枠材間内寸法を含む場合であっても、１つの種類の合成樹脂発泡体製の壁用断熱材を施工現場に用意するのみで、内寸法の異なるすべての縦枠材間に容易にかつ確実に挿入することができるようになる。それにより、断熱施工の容易性が得られるとともに、壁用断熱材の在庫管理あるいは製品管理も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【００２５】
【図１】木造枠組構造における壁枠組とその壁断熱構造を寸法も入れて説明する第１の図であり、（ａ）は立面図、（ｂ）は断面図。
【図２】木造枠組構造における壁枠組とその壁断熱構造を寸法も入れて説明する第２の図であり、（ａ）は立面図、（ｂ）は上部断面図、（ｃ）は下部断面図。
【図３】本発明による壁用断熱材の一例を寸法も入れて説明する短手方向の断面図（ａ）とそれを縦枠材間一般部に挿入した後の状態を示す図（ｂ）。
【図４】部分壁用断熱材を縦枠材間非一般部に挿入した後の状態を示す３つの図。
【図５】部分壁用断熱材を縦枠材間非一般部に挿入した後の状態を示すさらに２つの図。
【発明を実施するための形態】
【００２６】
以下、本発明を実施の形態に基づき説明する。最初に、木造枠組構造での壁枠組について説明する。
図１は、木造枠組構造での壁枠組１の一例を立面図と断面図で示しており、標準的な壁枠組１での寸法の数値を単位ｍｍで書き入れてある。壁枠組１は、基材である同じ寸法の角材を縦枠材２および横枠材３として用い、全体が矩形状に組み付けられている。通常、角材の寸法は、横幅Ｂが３８ｍｍ、奥行Ｋが８９ｍｍである。壁枠組１での隣接する縦枠材２、２の一般部での中心間の距離（配置モジュール）Ｚは４５５ｍｍとされており、したがって、縦枠材間一般部での内寸法Ａは４１７ｍｍとなっている。
【００２７】
木造枠組構造において、出隅部のように壁枠組１同士が直交する場所においては、直交する一方の壁枠組１の横枠材３の幅方向中心と直交する他方の壁枠組１の縦枠材２の幅方向中心との距離が４５５ｍｍとなるように壁枠組１が作られており、したがって、壁枠組１の側端部での縦枠間距離Ａｘ１は縦枠材間一般部での内寸法Ａより狭く、その距離Ａｘ１は［Ａ−（Ｋ−Ｂ）／２］である。以下の説明において、このように縦枠材間一般部と内寸法が異なる部位を縦枠材間非一般部呼ぶ。そして、ここでの縦枠材間非一般部での内寸法Ａｘ１は［４１７−（８９−３８）／２］＝４１７−２５．５＝３９１．５ｍｍとなっている。
【００２８】
図１に示した壁枠組１に開口部を作ることが求められる場合がある。その一例が図２に示される。図２では左側部の縦枠材間非一般部Ａｘ１とその右隣の縦枠材間一般部Ａとにそれぞれ開口部を形成している。ここでは、上部にまぐさ５が水平に配置され、その左端を下方から支持するように縦枠材２ａの右側面に沿うようにして同じ寸法の角材によるまぐさ受け４ａが立設され、まぐさ５の中央部を下方から支持するように、縦枠材２ｂの左側面に沿うようにしてまぐさ受け４ｂが、また右側面に沿うようにしてまぐさ受け４ｃが立設され、さらに、まぐさ５の右端を下方から支持するように縦枠材２ｃの左側面に沿うようにしてまぐさ受け４ｄが立設されている。
【００２９】
図２に示される壁枠材において、まぐさ５より上の縦枠材間距離は、図２（ｂ）にも示すように、前記距離Ａｘ１および距離Ａと同じであるが、まぐさ受け４が設置されたところでは、図２（ｃ）にも示すように、図で左側の縦枠材間距離Ａｘ２は、Ａｘ１−２×Ｂ＝３９１．５−２×３８＝３１５．５ｍｍとなり、また、図で右側の縦枠材間距離Ａｘ３は、Ａ−２×Ｂ＝４１７−２×３８＝３４１ｍｍとなる。これらの寸法も縦枠材間一般部とは異なっており、本発明でいう縦枠材間非一般部の範疇となる。
【００３０】
その他、図示しないが、まぐさの取り付け場所と横幅寸法によっては、縦枠材間非一般部の距離が、距離Ａｘ１−Ｂ＝３５３．５ｍｍ（Ａｘ４）となる場合と、距離Ａ−Ｂ＝４１７−３８＝３７９ｍｍ（Ａｘ５）となる場合とがある。
【００３１】
すなわち、木造枠組構造の壁部分を合成樹脂発泡体製の壁用断熱材を用いて断熱しようとすると、前記したように、縦枠材間一般部用として、横幅がＡ（＝４１７ｍｍ）の壁用断熱材と、縦枠材間非一般部用として、横幅がＡｘ１（＝３９１．５ｍｍ）の２種類の壁用断熱材を少なくとも用意することが必要であり、壁部に開口部が形成される場合には、まぐさの取り付け場所と横幅寸法によっては、さらに、Ａｘ２（＝３１５．５ｍｍ）、Ａｘ３（＝３４１ｍｍ）、Ａｘ４（３５３．５ｍｍ）、Ａｘ５（＝３７９ｍｍ）の４種類の壁用断熱材を用意する必要がある。
【００３２】
本発明によれば、そのうちの２種類あるいは３種類以上の壁用断熱材を１つの壁用断熱材から施工現場で容易に調整できるようにした木造枠組構造用の壁用断熱材を得ることができる。図３（ａ）は、本発明による壁用断熱材１０の一例を短手方向の断面で示している。なお、壁用断熱材１０の素材としての合成樹脂発泡体は、柔軟性を有し圧縮可能であり、反発弾性を有していて縦枠材間などに圧挿した場合に、その側面に断熱材の端面部が密着する性質を有するものであるのが好ましい。具体的には、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂を、押出発泡成形あるいはビーズ発泡成形によって成形したものが好ましい。
【００３３】
壁用断熱材１０は所要長さの長尺状部材であり、図３に示すように、左右の側面１１、１２と、前面１３と後面１４とを備える。側面に沿うようにして長手方向に適数（図示のものでは５本）のＶ字状の割溝２１〜２５が形成されている。各Ｖ字状の割溝２１〜２５は後面１４側で開放しており、各割溝の底部は前面１３の近傍にまで達している。
【００３４】
また、壁用断熱材１０は、後面側の幅寸法はａ２が前面側の幅寸法はａ１よりも広く、かつ、前面側の幅寸法ａ１は前記した縦枠材間一般部の内寸法Ａよりも１０〜２０ｍｍ程度狭くされ、後面側の幅寸法ａ２は縦枠材間一般部の内寸法Ａよりも１０〜２０ｍｍ程度広くされている。したがって、左右の側面１１、１２は後面１４側から前面１３側に向けて次第に幅狭くなる方向に傾斜した面となっている。
【００３５】
前記Ｖ字状の割溝２１、Ｖ字状の割溝２２、Ｖ字状の割溝２３は、壁用断熱材１０の幅方向の中央部から右側面１２側に偏位して形成されており、Ｖ字状の割溝２４、Ｖ字状の割溝２５は、壁用断熱材１０の幅方向の中央部から左側面１１側に偏位して形成されている。また、各Ｖ字状の割溝２１〜２５の中心線の方向は、壁用断熱材１０の幅方向の中央部での垂線に対して平行ではなく、壁用断熱材１０の幅方向の中央部に向かう方向にわずかに傾斜している。したがって、壁用断熱材１０の厚みは全幅方向にほぼ同じであるが、図示されるように、割溝２１、２２、２３は、図で右下方向にわずかに傾斜した姿勢となっており、Ｖ字状の割溝２４、２５は、図で左下方向にわずかに傾斜した姿勢となっている。さらに、Ｖ字状の割溝２１〜２５のいずれかから壁用断熱材１０の一部を除去して部分壁用断熱材５０としたときに、該部分壁用断熱材５０の前面１３側の幅寸法ａｘ１は後面１４側の幅寸法はａｘ２よりも狭くなっている。
【００３６】
具体的には、Ｖ字状の割溝２１の右側面１２側の側面は右側面１２の後面側端から略２４．５ｍｍの位置にあり、その開口幅は略５ｍｍとされている。Ｖ字状の割溝２２の右側面は前記Ｖ字状の割溝２１の左側面から略４７．５ｍｍの位置にあり、その開口幅は略６ｍｍとされている。Ｖ字状の割溝２３の右側面は前記Ｖ字状の割溝２２の左側面から略２３．５ｍｍの位置にあり、その開口幅は略６ｍｍとされている。また、Ｖ字状の割溝２５の左側面１１側の側面は左側面１１の後面側端から略３６ｍｍの位置にあり、その開口幅は略６ｍｍとされている。Ｖ字状の割溝２４の左側面は前記Ｖ字状の割溝２５の右側面から略２３．５ｍｍの位置にあり、その開口幅は略６ｍｍとされている。そして、Ｖ字状の割溝２３の左側面は裏面１４に垂直な面とされており、Ｖ字状の割溝２４の右側面も裏面１４に垂直な面とされている。また、Ｖ字状の割溝２３の左側面とＶ字状の割溝２４の右側面との間の距離は略２５２ｍｍとされている。上記寸法のものを水平面に投影するとほぼ図示に示したような寸法となり、壁用断熱材１０の後面１４側の横幅寸法はａ２は略４３４．９ｍｍとなる。
【００３７】
壁用断熱材１０の前面１３側は、右側面１２の前面側端と前記Ｖ字状の割溝２１の中心線の延長部間の距離は略２３．７ｍｍ、Ｖ字状の割溝２１の中心線の延長部とＶ字状の割溝２２の中心線の延長部間の距離は略４８．３ｍｍ、Ｖ字状の割溝２２の中心線の延長部とＶ字状の割溝２３の中心線の延長部間の距離は略２３．７ｍｍであり、Ｖ字状の割溝２３の中心線の延長部とＶ字状の割溝２４の中心線の延長部間の距離は略２５２ｍｍであり、Ｖ字状の割溝２４の中心線の延長部とＶ字状の割溝２５の中心線の延長部間の距離は略２３．７ｍｍであり、Ｖ字状の割溝２５の中心線の延長部と左側面１１の前面側端との距離は略３４．８ｍｍである。上記寸法のものを水平面に投影するほぼと図示に示したような寸法となり、壁用断熱材１０の前面１４側の横幅寸法ａ１は略４０５．０ｍｍとなる。
【００３８】
この例において、前記ａ２−ａ１＝４３４．９−４０５．０＝２９．９ｍｍであり、右側面１１では後面１４側端と前面１３側端との距離が略１３ｍｍ、左側面１２では後面１４側端と前面１３側端との距離が略１６．８ｍｍとなっている。
【００３９】
前記したように、図１および図２で説明した壁枠組１において、縦枠材間一般部での縦枠材２、２間の内寸法Ａは４１７ｍｍである。したがって、上記寸法の壁用断熱材１０はその前面１３側から、縦枠材間一般部での縦枠材２、２間に容易に挿入することができ、さらに押し込む過程で、各Ｖ字状の割溝２１〜２５の開口は次第に狭くなる方向に閉じていき、最後には図３（ｂ）に示すように、各Ｖ字状の割溝２１〜２５の開口幅が略２ｍｍとなった状態で縦枠材間一般部での縦枠材２、２間に挿入される。
【００４０】
次に、図１に示すＡｘ１＝３９１．５ｍｍである縦枠材間非一般部に壁用断熱材１０を挿入する場合を説明する。この場合には、図３（ａ）に示した壁用断熱材１０から前記Ｖ字状の割溝２１を利用して、図で右側部分を除去した部分壁用断熱材５０ａを用いる。部分壁用断熱材５０ａの前面側の幅寸法ａｘ１は、略４０５−略２３．７＝略３８１．３ｍｍとなり、Ａｘ１＝３９１．５ｍｍより小さい。また、後面側の幅寸法ａｘ２は、略４３４．９−略（２４．１＋５）＝略４０５．８ｍｍとなり、Ａｘ１＝３９１．５ｍｍより大きい。そのために、上記寸法の部分壁用断熱材５０ａはその前面１３側から、縦枠材間非一般部での縦枠材２、２間に容易に挿入することができ、さらに押し込む過程で、Ｖ字状の割溝２２〜２５の開口が次第に狭くなる方向に閉じていき、最後には図４（ａ）に示すように、Ｖ字状の割溝２２〜２５の開口幅が略２〜３ｍｍとなった状態で、図１に示した図で最も左側の縦枠材間非一般部における縦枠材２、２間に挿入される。したがって、図示の壁用断熱材１０において、前記Ｖ字状の割溝２１は本発明でいう「第１のＶ字状の割溝」に相当する。
【００４１】
次に、図２にＡｘ３として示す縦枠材間非一般部、すなわち、隣接する縦枠材２ｂ、２ｃの双方の対向する側面に同じ寸法の縦枠材をまぐさ受け４ｃ、４ｄとして取り付けて形成される横幅Ａｘ３＝３４１ｍｍである縦枠材間非一般部に、壁用断熱材１０を挿入する場合を説明する。この場合には、図３（ａ）に示した壁用断熱材１０からＶ字状の割溝２２を利用して、図でそれより右側部分を除去した部分壁用断熱材５０ｂを用いる。部分壁用断熱材５０ｂの前面１３側の幅寸法ａｘ１は、略４０５−略７１．３＝略３３３．８ｍｍとなり、Ａｘ３＝３４１ｍｍより小さい。また、後面１４側の幅寸法ａｘ２は、略４３４．９−略（２４．１＋５＋４７．１＋６）＝略３５２．７ｍｍとなり、Ａｘ３＝３４１ｍｍより大きい。そのために、上記寸法の部分壁用断熱材５０ｂは、内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−２×Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部、すなわち、図２にＡｘ３＝３４１ｍｍとして示すまぐさ受け４ｃとまぐさ受け４ｄ間である縦枠材間非一般部に、前面１３側から容易に挿入することができ、さらに押し込む過程で、Ｖ字状の割溝２３〜２５の開口が次第に狭くなる方向に閉じていき、最後には図４（ｂ）に示すように、Ｖ字状の割溝２３〜２５の開口幅が略２ｍｍとなった状態で、まぐさ受け４ｃとまぐさ受け４ｄ間にしっかりと挿入される。したがって、図示の壁用断熱材１０において、前記Ｖ字状の割溝２２は本発明でいう「第３のＶ字状の割溝」に相当する。
【００４２】
図示しないが、まぐさ５の取り付け位置の大きさの関係で、縦枠材間非一般部の距離Ａｘが、Ａｘ＝Ａ−Ｂ＝４１７−３８＝３７９ｍｍとなる場合がある。すなわち、隣接する縦枠材２、２の対向する一方の側面にのみ同じ寸法の縦枠材をまぐさ受け４として取り付けて形成される縦枠材間非一般部である。この場合には、図３（ａ）に示した壁用断熱材１０からＶ字状の割溝２５を利用して、図でそれより左側部分を除去した部分壁用断熱材５０ｃを用いる。部分壁用断熱材５０ｃの前面１３側の幅寸法はａｘ１は、略４０５−略３４．５＝略３７０．５ｍｍとなり、Ａｘ＝３７９ｍｍより小さい。また、後面１４側の幅寸法はａｘ２は、略４３４．９−略（３５．７＋６）＝略３９３．２ｍｍとなり、Ａｘ＝３７９ｍｍより大きい。そのために、上記寸法の部分壁用断熱材５０ｃは、内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部、すなわち、図示しないが、隣接する縦枠材２、２の対向する一方の側面にのみ同じ寸法の縦枠材をまぐさ受け４として取り付けて形成される縦枠材間非一般部に、前面１３側から容易に挿入することができ、さらに押し込む過程で、Ｖ字状の割溝２１〜２４の開口が次第に狭くなる方向に閉じていき、Ｖ字状の割溝２１〜２４の開口幅が略２ｍｍとなった状態で、図４（ｃ）に示すように、縦枠材２とまぐさ受け４間にしっかりと挿入される。したがって、図示の壁用断熱材１０において、前記Ｖ字状の割溝２５は本発明でいう「第２のＶ字状の割溝」に相当する。
【００４３】
次に、図２にＡｘ２として示す縦枠材間非一般部、すなわち、図１に示したＡｘ１＝３９１．５ｍｍである縦枠材間非一般部を形成している縦枠材２ａ、２ｂの双方の対向する側面に同じ寸法の縦枠材をまぐさ受け４ａ、４ｂとして取り付けて形成される縦枠材間非一般部に、壁用断熱材１０を挿入する場合を説明する。この場合には、図３（ａ）に示した壁用断熱材１０からＶ字状の割溝２３を利用して、図でそれより右側部分を除去した部分壁用断熱材５０ｄを用いる。部分壁用断熱材５０ｄの前面１３側の幅寸法はａｘ１は、略４０５−略（２３．６＋７１．３）＝略３１０．１ｍｍとなり、Ａｘ２＝３１５．５ｍｍより小さい。また、後面１４側の幅寸法はａｘ２は、略４３４．９−略（６＋２３．５＋６＋４７．１＋５＋２４．１）＝略３２３．２ｍｍとなり、Ａｘ２＝３１５．５ｍｍより大きい。そのために、上記寸法の部分壁用断熱材５０ｄは、内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａｘ１−２×Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部、すなわち、図２にＡｘ２＝３１５．５ｍｍとして示すまぐさ受け４ａとまぐさ受け４ｂ間である縦枠材間非一般部に、前面１３側から容易に挿入することができ、さらに押し込む過程で、Ｖ字状の割溝２４、２５の開口が次第に狭くなる方向に閉じていき、最後には図５（ａ）に示すように、Ｖ字状の割溝２４、２５の開口幅が略２ｍｍとなった状態で、まぐさ受け４ａとまぐさ受け４ｂ間にしっかりと挿入される。
【００４４】
図示しないが、まぐさ５の取り付け位置の大きさの関係で、縦枠材間非一般部の距離Ａｘが、Ａｘ＝Ａｘ２−Ｂ＝３９１．５−３８＝３５３．５ｍｍとなる場合がある。すなわち、図１に示すＡｘ１＝３９１．５ｍｍである縦枠材間非一般部を形成している縦枠材２ａ、２ｂの対向する一方の側面にのみ同じ寸法の縦枠材をまぐさ受け４として取り付けて形成される縦枠材間非一般部である。この場合には、図３（ａ）に示した壁用断熱材１０からＶ字状の割溝２４を利用して、図でそれより左側部分を除去した部分壁用断熱材５０ｅを用いる。部分壁用断熱材５０ｅの前面１３側の幅寸法はａｘ１は、略４０５−略（３４．５＋２３．５）＝略３４７ｍｍとなり、Ａｘ＝３５３．５ｍｍより小さい。また、後面１４側の幅寸法はａｘ２は、略４３４．９−略（６＋２３．５＋６＋３５．７）＝略３６３．７ｍｍとなり、Ａｘ＝３５３．５ｍｍより大きい。そのために、上記寸法の部分壁用断熱材５０ｅは、内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａｘ１−Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部、すなわち、図示しないが、図１にＡｘ１＝３９１．５ｍｍとして示す縦枠材間非一般部の縦枠材２ａ、２ｂのいずれか一方にのみまぐさ受け４を取り付けた縦枠材間非一般部に、前面１３側から容易に挿入することができ、さらに押し込む過程で、Ｖ字状の割溝２１〜２３の開口が次第に狭くなる方向に閉じていき、最後には図５（ｂ）に示すように、すべての開口幅が略２ｍｍとなった状態で、縦枠材２とまぐさ受け４の間にしっかりと挿入される。
【００４５】
なお、上記図３（ａ）に示した壁用断熱材１０は、本発明による壁用断熱材の一つの実施の形態であって、本発明による壁用断熱材はこれに限らない。前記したＶ字状の割溝２１〜２５のすべてが壁用断熱材に設けられている必要はなく、壁断熱を施工しようとする木造枠組構造による住宅における壁枠組の構成と、当該住宅の壁構造において壁枠組に何種類の内寸法の異なる前記縦枠材間非一般部を設けることが必要とされるか、に応じて、Ｖ字状の割溝２１〜２５のいずれかを選択的に形成すればよいことは、理解されよう。すなわち、図示しないが、「第１のＶ字状の割溝」に相当するＶ字状の割溝２１のみを有していてもよく、「第２のＶ字状の割溝」に相当するＶ字状の割溝２５のみを有していてもよく、「第３のＶ字状の割溝」に相当するＶ字状の割溝２２のみを有していてもよい。それらを適宜組み合わせて形成することもできる。
【符号の説明】
【００４６】
１…木造枠組構造での壁枠組、
２（２ａ，２ｂ，２ｃ）…縦枠材、
３…横枠材、
４（４ａ〜４ｄ）…まぐさ受け、
５…まぐさ、
１０…壁用断熱材、
５０（５０ａ〜５０ｅ）…部分壁用断熱材、
Ａ…縦枠材間一般部での内寸法、
Ａｘ１〜Ａｘ３…縦枠材間非一般部での内寸法、
Ｂ…基材としての枠材と横幅、
Ｋ…基材としての枠材の奥行、
ａ１…壁用断熱材の前面側の幅寸法、
ａ２…壁用断熱材の後面側の幅寸法、
ａｘ１…部分壁用断熱材の前面側の幅寸法、
ａｘ２…部分壁用断熱材の後面側の幅寸法。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
横幅Ｂ（ｍｍ）×奥行Ｋ（ｍｍ）（＞Ｂ（ｍｍ））である角材を基材とし縦枠材間一般部の内寸法がＡ（ｍｍ）である木造枠組構造での壁枠組における前記縦枠材間に挿入される合成樹脂発泡体製の壁用断熱材であって、
前記壁用断熱材は長手方向に沿う１本以上の後面側に開放したＶ字状の割溝を有しかつ壁用断熱材の前面側の幅寸法はａ１（ｍｍ）（＜Ａ（ｍｍ））であり後面側の幅寸法はａ２（ｍｍ）（＞Ａ（ｍｍ））であり、
前記Ｖ字状の割溝のいずれかから壁用断熱材の一部を除去することにより、縦枠材間一般部の内寸法Ａ（ｍｍ）と異なる内寸法Ａｘ（ｍｍ）（＜Ａ（ｍｍ））である縦枠材間非一般部に挿入可能な部分壁用断熱材であって、前面側の幅寸法はａｘ１（ｍｍ）（＜Ａｘ（ｍｍ））であり後面側の幅寸法はａｘ２（ｍｍ）（＞Ａｘ（ｍｍ））である部分壁用断熱材を得ることができることを特徴とする木造枠組構造用の壁用断熱材。
【請求項２】
請求項１に記載の木造枠組構造用の壁用断熱材であって、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−（Ｋ−Ｂ）／２］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に挿入可能な大きさの部分壁用断熱材が得られる位置に前記Ｖ字状の割溝が第１のＶ字状の割溝として形成されていることを特徴とする木造枠組構造用の壁用断熱材。
【請求項３】
請求項１または２に記載の木造枠組構造用の壁用断熱材であって、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に挿入可能な大きさの部分壁用断熱材が得られる位置に前記Ｖ字状の割溝が第２のＶ字状の割溝として形成されていることを特徴とする木造枠組構造用の壁用断熱材。
【請求項４】
請求項１ないし３のいずれか一項に記載の木造枠組構造用の壁用断熱材であって、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−２×Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に挿入可能な大きさの部分壁用断熱材が得られる位置に前記Ｖ字状の割溝が第３のＶ字状の割溝として形成されていることを特徴とする木造枠組構造用の壁用断熱材。
【請求項５】
木造枠組を構成する基材としての角材が横幅Ｂ＝３８ｍｍ、奥行Ｋ＝８９ｍｍ、縦枠材間一般部の内寸法Ａ＝４１７ｍｍである壁枠組における前記縦枠材間に挿入される合成樹脂発泡体製の壁用断熱材であることを特徴とする請求項１ないし４のいずれか一項に記載の木造枠組構造用の壁用断熱材。
【請求項６】
前記各Ｖ字状の割溝の後面側の開口幅が略６〜１５ｍｍであることを特徴とする請求項５に記載の木造枠組構造用の壁用断熱材。
【請求項７】
請求項１ないし６のいずれか一項に記載の木造枠組構造用の壁用断熱材を用いた木造枠組構造での壁部の断熱構造であって、前記壁部の壁枠組は、縦枠材間一般部の内寸法がＡ（ｍｍ）である標準部分と、内寸法が前記縦枠材間一般部の内寸法Ａ（ｍｍ）とは異なる内寸法Ａｘ（ｍｍ）（＜Ａ（ｍｍ））である縦枠材間非一般部とを備えた壁枠組であり、前記縦枠材間一般部には前記壁用断熱材がそのまま挿入されており、前記縦枠材間非一般部には前記いずれかのＶ字状の割溝の部分から一部を除去した後の部分壁用断熱材が挿入されている構造を少なくとも備えることを特徴とする木造枠組構造の壁部の断熱構造。
【請求項１】
横幅Ｂ（ｍｍ）×奥行Ｋ（ｍｍ）（＞Ｂ（ｍｍ））である角材を基材とし縦枠材間一般部の内寸法がＡ（ｍｍ）である木造枠組構造での壁枠組における前記縦枠材間に挿入される合成樹脂発泡体製の壁用断熱材であって、
前記壁用断熱材は長手方向に沿う１本以上の後面側に開放したＶ字状の割溝を有しかつ壁用断熱材の前面側の幅寸法はａ１（ｍｍ）（＜Ａ（ｍｍ））であり後面側の幅寸法はａ２（ｍｍ）（＞Ａ（ｍｍ））であり、
前記Ｖ字状の割溝のいずれかから壁用断熱材の一部を除去することにより、縦枠材間一般部の内寸法Ａ（ｍｍ）と異なる内寸法Ａｘ（ｍｍ）（＜Ａ（ｍｍ））である縦枠材間非一般部に挿入可能な部分壁用断熱材であって、前面側の幅寸法はａｘ１（ｍｍ）（＜Ａｘ（ｍｍ））であり後面側の幅寸法はａｘ２（ｍｍ）（＞Ａｘ（ｍｍ））である部分壁用断熱材を得ることができることを特徴とする木造枠組構造用の壁用断熱材。
【請求項２】
請求項１に記載の木造枠組構造用の壁用断熱材であって、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−（Ｋ−Ｂ）／２］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に挿入可能な大きさの部分壁用断熱材が得られる位置に前記Ｖ字状の割溝が第１のＶ字状の割溝として形成されていることを特徴とする木造枠組構造用の壁用断熱材。
【請求項３】
請求項１または２に記載の木造枠組構造用の壁用断熱材であって、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に挿入可能な大きさの部分壁用断熱材が得られる位置に前記Ｖ字状の割溝が第２のＶ字状の割溝として形成されていることを特徴とする木造枠組構造用の壁用断熱材。
【請求項４】
請求項１ないし３のいずれか一項に記載の木造枠組構造用の壁用断熱材であって、前記内寸法Ａｘ（ｍｍ）が［Ａ−２×Ｂ］（ｍｍ）である縦枠材間非一般部に挿入可能な大きさの部分壁用断熱材が得られる位置に前記Ｖ字状の割溝が第３のＶ字状の割溝として形成されていることを特徴とする木造枠組構造用の壁用断熱材。
【請求項５】
木造枠組を構成する基材としての角材が横幅Ｂ＝３８ｍｍ、奥行Ｋ＝８９ｍｍ、縦枠材間一般部の内寸法Ａ＝４１７ｍｍである壁枠組における前記縦枠材間に挿入される合成樹脂発泡体製の壁用断熱材であることを特徴とする請求項１ないし４のいずれか一項に記載の木造枠組構造用の壁用断熱材。
【請求項６】
前記各Ｖ字状の割溝の後面側の開口幅が略６〜１５ｍｍであることを特徴とする請求項５に記載の木造枠組構造用の壁用断熱材。
【請求項７】
請求項１ないし６のいずれか一項に記載の木造枠組構造用の壁用断熱材を用いた木造枠組構造での壁部の断熱構造であって、前記壁部の壁枠組は、縦枠材間一般部の内寸法がＡ（ｍｍ）である標準部分と、内寸法が前記縦枠材間一般部の内寸法Ａ（ｍｍ）とは異なる内寸法Ａｘ（ｍｍ）（＜Ａ（ｍｍ））である縦枠材間非一般部とを備えた壁枠組であり、前記縦枠材間一般部には前記壁用断熱材がそのまま挿入されており、前記縦枠材間非一般部には前記いずれかのＶ字状の割溝の部分から一部を除去した後の部分壁用断熱材が挿入されている構造を少なくとも備えることを特徴とする木造枠組構造の壁部の断熱構造。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２０１３−７６２３４（Ｐ２０１３−７６２３４Ａ）
【公開日】平成２５年４月２５日（２０１３．４．２５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−２１５３９７（Ｐ２０１１−２１５３９７）
【出願日】平成２３年９月２９日（２０１１．９．２９）
【出願人】（０００００２４４０）積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２５年４月２５日（２０１３．４．２５）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年９月２９日（２０１１．９．２９）
【出願人】（０００００２４４０）積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Ｆターム（参考）】
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