説明

未加硫カーカスプライの試験方法

【課題】未加硫カーカスプライでプライコードの引抜き抗力や、コードとゴムの位置関係等を評価できる未加硫カーカスプライの試験方法を提供する。
【解決手段】複数本のプライコード4を並行に引き揃えたゴム引き層からなる未加硫カーカスプライのサンプルでプライコード4の引き抜き抗力を試験するに当たり、前記未加硫カーカスプライのサンプル2をコード4の延在方向と直行する方向に任意の拡張率で拡張させた後、前記サンプル2の少なくとも一面に硬質部材6を接着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫カーカスプライの試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品タイヤの骨格構造を構成するカーカスは、通常、複数本のプライコードを並行に引き揃え、そのコードをゴムで被覆したゴム引き層からなるカーカスプライの一枚以上で形成されている。
このようなタイヤを製造するための、生タイヤの成形に当っては、未加硫カーカスプライはシェーピング工程等で拡張変形されるため、その中に埋設配置されたプライコードと、未加硫ゴムとの間に隙間が生じ、プライコードの引き抜き抗力が低下するおそれがあった。
【0003】
これがため、未加硫カーカスプライのプライコードの引き抜き力を測定するために、未加硫カーカスプライのサンプルを、上記の拡張変形と相関をもたせて拡張変形させた状態での、プライコードの引き抜き力(引抜き抗力)を測定することが行われていた。
【0004】
しかるに、このような引き抜き測定方法では、引張り試験機により、未加硫カーカスプライを、コードの延在方向と直行する方向に所要の拡張率に拡張変形させた状態を維持しつつプライコードを引き抜く必要があるため、カーカスプライを拡張させる装置と、コードを引き抜くための装置との二台の装置が必要であったり、そのための専用装置の開発が必要となり、装置の複雑化や試験コストの増加率が不可避であった。
【0005】
この一方で、未加硫カーカスプライのサンプルを拡張変形することなく、そのままの未拡張サンプル状態で引抜き抗力を測定する場合には、拡張サンプルのプライコードの引き抜き抗力を測定した場合と比較して、測定結果が大きく異なることになるため、現実に即したカーカスプライの測定方法ではなかった。
【0006】
その上、従来は、未加硫カーカスプライを拡張変形させた場合の、プライコードと未加硫ゴムとの間の隙間や位置関係を正確に評価する手法がなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、未加硫カーカスプライでプライコードの引抜き抗力や、コードとゴムの位置関係等を評価できる未加硫カーカスプライの試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の実施形態は、複数本のプライコードを並行に引き揃えたゴム引き層からなる未加硫カーカスプライのサンプルでプライコードの引き抜き抗力を試験するに当たり、前記未加硫カーカスプライのサンプルをコードの延在方向と直行する方向に任意の拡張率で拡張させた後、前記サンプルの少なくとも一面に硬質部材を接着させるものである。
【0009】
ここで、「任意の拡張率」とは、カレンダーで処理後のコード間の間隔を基準にしたとき、その間隔を基準対比100〜400%の範囲で拡張させた割合をいうものとする。
【0010】
このような試験方法においてより好ましくは、前記硬質部材を未加硫カーカスプライのサンプルの両面に接着させる。
【0011】
本発明の一の実施形態は、複数本のプライコードを並行に引き揃えたゴム引き層からなる未加硫カーカスプライのサンプルで、プライコードと未加硫ゴムとの隙間を試験するに当たり、前記未加硫カーカスプライのサンプルをコードの延在方向と直行する方向に任意の拡張率で拡張させた後、ゴムとコードの間に形成される隙間を硬化材料で埋め込み、事後的に未加硫ゴムを剥ぎ取って、前記コードと硬化材料を取り出すものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一の実施形態では、未加硫カーカスプライのサンプルをプライコードの延在方向と直交する方向に所要の拡張率まで拡張させた後、そのサンプルの少なくとも一面に硬質材を接着させることで、拡張させた未加硫カーカスプライのサンプルを引張り試験機から外した後であっても、所要の拡張状態を維持することができるので、未加硫カーカスプライサンプルを拡張させた状態で、一の引抜き装置をもって引抜き抗力を、簡易にかつ低コストで測定することができる。
【0013】
本発明の他の実施形態では、未加硫カーカスプライのサンプルをコードの延在方向と直行する方向に任意の拡張率で拡張させた後、ゴムとコードの間に形成される隙間を硬化材料や石膏などの硬化材料で埋め込み、事後的に未加硫ゴムを剥ぎ取って前記コードと硬化材料を取り出すことで、未加硫カーカスプライの拡張状態で未加硫ゴムとコードの間に形成される隙間を形状化して、その断面形状等を直接観察して評価することができる。
【0014】
また本発明では、拡張時の引抜き抗力、空隙率やコードヘのゴム付き量等を開発評価項目として使用することができ、量産後の兆候管理において、製品タイヤでのカーカスプライが空隙部の中でコードが遊ぶこと等に由来するプライウェーブ、シェーピング工程等でコードがセンター側へ引き抜けること等に由来して、カーカスプライの折り返し高さが規定の高さに位置しない状態または、ビードコア直下に所定のゴム厚みにならない状態等の製品不良を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一の実施形態に係る未加硫カーカスプライの試験方法で使用する未加硫カーカスプライのサンプルを拡張装置で拡張した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一の実施形態に係る未加硫カーカスプライの試験方法で使用する未加硫カーカスプライにサンプルを接着させた硬質部材とともに示す斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る未加硫カーカスプライの試験方法で使用する未加硫カーカスプライを引っ張った後、樹脂部材を埋め込んだ状態を示す拡大側面図である。
【図4】図3に示す未加硫カーカスプライのゴムを剥ぎ取った状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明の未加硫カーカスプライのサンプルの試験方法を詳細に説明する。
図中1は未加硫カーカスプライのサンプルを拡張する拡張装置の全体を示し、この拡張装置1には、未加硫カーカスプライサンプル2を挟持する挟持手段3を図では上下に具える。
ここで、未加硫カーカスプライサンプル2は複数本のプライコード4を並行に引き揃えた未加硫ゴム5のゴム引き層からなる。
【0017】
この拡張装置1では、図では上下の挟持手段3により、未加硫カーカスプライサンプル2をコード4の延在方向と直行する方向に拡張できるような向きで未加硫カーカスプライサンプル2の両面の端部を挟持する。
【0018】
そして挟持手段3を上下方向に移動して、未加硫カーカスプライサンプル2を任意の拡張率、好ましくは生タイヤでのプライの拡張率と同等の100〜200%の範囲で拡張させる。次いで、その状態を維持したまま未加硫カーカスプライサンプル2の少なくとも一面、図では両面に硬質部材6を、例えば接着剤や糊を用いて接着して固定する。
【0019】
本発明では、拡張状態で硬質部材6を接着することで、図2に未加硫カーカスプライの斜視図で示すように、拡張装置1から未加硫カーカスプライサンプル2を取り除いた後であっても、未加硫カーカスプライサンプル2は拡張した状態を維持することができる。そのサンプルにより、シェーピング工程等の拡張変形と相関をもたせて拡張変形させた状態での、プライコードの引抜き抗力を測定することができる。
【0020】
ここで、硬質部材6の材質や形状は特に限定されることはないが、未加硫カーカスプライサンプル2を拡張して拡張装置1から取り除いた後に拡張状態を維持でき、未加硫カーカスプライサンプル2のゴム収縮力以上に耐えうる剛性を持った板であればよく、具体的には所定の形状の木板、鉄板、プラスチック板等をあげることができる。
【0021】
このような未加硫カーカスプライの試験方法においてより好ましくは、硬質部材6を未加硫カーカスプライサンプル2の両面に接着させることで、拡張状態をより確実に長期間にわたって保つことができる。
【0022】
図3は本発明の他の実施形態に係る未加硫カーカスプライの試験方法で使用する未加硫カーカスプライを引っ張った後、硬化材料を埋め込んだ状態を示す拡大側面図である。
未加硫カーカスプライサンプル2を拡張させて、好ましくは硬質部材6で固定した後に、未加硫カーカスプライサンプル2の未加硫ゴム5とコード4の間に形成される隙間に硬化材料7、例えば液体樹脂を流し込み、一定時間乾燥して、隙間を固定させることが好ましい。
【0023】
このように隙間を固定化することで、未加硫カーカスプライサンプル2の未加硫ゴム5を剥ぎ取り、図4に斜視図で示すような、硬化材料7とコード4を取り出すことで、未加硫カーカスプライサンプル2の拡張変形で未加硫ゴム5とコード4の間に形成される隙間を形状化して、その断面形状等を観察して評価することができる。
【0024】
硬化材料7は特に限定されることはないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、石膏等をあげることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 拡張装置
2 未加硫カーカスプライサンプル
3 挟持手段
4 プライコード
5 未加硫ゴム
6 硬質部材
7 硬化材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のプライコードを並行に引き揃えたゴム引き層からなる未加硫カーカスプライのサンプルでプライコードの引き抜き抗力を試験するに当たり、
前記未加硫カーカスプライのサンプルをコードの延在方向と直行する方向に任意の拡張率で拡張させた後、前記サンプルの少なくとも一面に硬質部材を接着させる未加硫カーカスプライの試験方法。
【請求項2】
前記硬質部材を未加硫カーカスプライのサンプルの両面に接着させる請求項1に記載の未加硫カーカスプライの試験方法。
【請求項3】
複数本のプライコードを並行に引き揃えたゴム引き層からなる未加硫カーカスプライのサンプルで、プライコードと未加硫ゴムとの隙間を試験するに当たり、
前記未加硫カーカスプライのサンプルをコードの延在方向と直行する方向に任意の拡張率で拡張させた後、ゴムとコードの間に形成される隙間を硬化材料で埋め込み、事後的に未加硫ゴムを剥ぎ取って、前記コードと硬化材料を取り出す未加硫カーカスプライの試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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