説明

末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体およびその製造方法

【課題】末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】活性末端を有する前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体をポリシロキサンと反応させて、末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体を得る。上述のポリシロキサンは下記化学式(I)で表される:


(式中、R1、R2、R3およびR5は独立して、炭素原子数1〜20のアルキル基であり、R4は、炭素原子数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、または水酸基のうちの1つから選択され、mは2〜50の整数であり、nは0〜50の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年12月31日に出願された、台湾出願第99147333号の利益を主張し、その主題は本参照によって本明細書に含まれる。
【0002】
本発明は、末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体およびその製造方法に関し、特に、シリカとの高い適合性を有する末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体は、タイヤを製造するための材料として使用可能である。タイヤにとって、転がり抵抗および濡れ静止摩擦(wet traction)は、エネルギー消費を抑えかつ走行安全性を高めるための重大な因子である。現在、タイヤの強度を向上させるために、カーボンブラックが共役ジエン−ビニル芳香族共重合体に添加されている。近年、石油資源の枯渇および地球温暖化問題に起因して、タイヤ産業は、タイヤの転がり抵抗を改善することを目的として、カーボンブラックをシリカに置き換えて、これによりエネルギー損失を少なくしている。カーボンブラックと比較して、シリカは、共役ジエン−ビニル芳香族共重合体中に均一に分布するのがより困難である。このため、シリカと共役ジエン−ビニル芳香族共重合体との間の適合性をさらに向上させることが必要とされている。ある改善方法では、タイヤの製造工程中でシリカを末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体に添加する際に、調整剤を使用して混合を行う。しかしながら、混合均一性は製品の特性に大きく影響を及ぼすため、製品の品質がバッチ毎に異なることがあり、品質再現性が低い。米国特許第4,647,625号明細書に示されているような別の方法によれば、末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体が、末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体とシリカとの間の適合性を向上させるための調整剤(尿素化合物等)と反応するように、末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体を重合した後に前記調整剤が添加される。しかしながら、尿素化合物は毒性を有するため、生産従業員にとって好ましくない。末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体中に良好に分布するシリカを有する末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の調製方法および製造方法が、前記産業にとって重要な課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,647,625号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体およびその製造方法に関する。前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体はシリカと高い適合性を有し、シリカを混合した後の濡れ横滑り(wet skid)抵抗および転がり抵抗において優れた性能を有し、車両のエネルギー損失の低減を助長する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の製造方法が提供される。前記方法は以下の工程を含む:共役ジエン単量体およびビニル芳香族炭化水素単量体を含む第1の混合物に有機アルカリ金属開始剤が添加されて反応が行われ、活性末端を有する共役ジエン−ビニル芳香族共重合体が得られる。前記活性末端を有する前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体はポリシロキサンと反応して、末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体が得られる。上述のポリシロキサンは下記化学式(I)で表される:
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1、R2、R3およびR5は独立して、炭素原子数1〜20のアルキル基であり、R4は、炭素原子数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、または水酸基のうちの1つから選択され(炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、および水酸基のうちの1つから選択され)、mは2〜50の整数であり、nは0〜50の整数である。)
【0009】
本発明の第2の態様によれば、末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体が提供される。前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体は、前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の活性末端と前記ポリシロキサンとの間の反応によって共役ジエン−ビニル芳香族共重合体を修飾することにより得られる。上述のポリシロキサンは下記化学式で表される:
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R1、R2、R3およびR5は独立して、炭素原子数1〜20のアルキル基であり、R4は、炭素原子数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、または水酸基のうちの1つから選択され(炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、および水酸基のうちの1つから選択され)、mは2〜50の整数であり、nは0〜50の整数である。)
【0012】
本発明の上記態様および他の態様は、以下の好ましい非限定的な実施形態の詳細な記載からより良く理解されるだろう。添付の図面を参照して以下の記載が構成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の製造方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体から作成されるゴム組成物は、濡れ横滑りおよび転がり抵抗において優れた性能を有し、タイヤの製造に使用することができる。本発明は、製造費用の削減および製造時の省エネルギーの両方に寄与する。
【0015】
図1を参照すると、末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の製造方法のフローチャートが示されている。まず、工程S101では、高分子重合反応が第1の混合物で行われて、第2の混合物が得られる。前記第1の混合物は、有機アルカリ金属開始剤、共役ジエン単量体およびビニル芳香族炭化水素単量体を含む。例えば、本実施形態の製造方法における前記第2の混合物は、活性末端を有する共役ジエン化合物−ビニル芳香族共重合体を含む。前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体は、共役ジエン単量体およびビニル芳香族炭化水素単量体を共重合することにより作成される。前記共重合体は、共役ジエン単量体単位およびビニル芳香族炭化水素単量体単位を含む。すなわち、前記共役ジエン単量体単位および前記ビニル芳香族炭化水素単量体単位はそれぞれ、前記共役ジエン単量体および前記ビニル芳香族炭化水素単量体が共重合された後の前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体における前記共役ジエン単量体および前記ビニル芳香族炭化水素単量体の構造単位を意味する。前記ビニル芳香族炭化水素単量体は、スチレン、α−メチルスチレンまたはその組み合わせを含んでいてもよい。前記共役ジエン単量体は、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチルペンタジエン、4−メチルペンタジエン、2,4−ヘキサジエンまたはその組み合わせを含んでいてもよい。前記重合に起因して、前記共役ジエン単量体は、1,4−重合から得られる1,4−構造体と、1,2−重合から得られる1,2−構造体とを有する。前記1,4−構造および前記1,2−構造は1分子鎖中に共存していてもよい。前記1,4−構造体はさらに、シス−構造体およびトランス−構造体に分けることができる。前記1,2−構造体は、その側鎖にビニル基を有する構造体である。前記(1,2)ビニル構造体は実質的に、前記重合された共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の共役ジエン単量体単位の10%〜90%である。ある実施形態では、前記(1,2)ビニル構造体は実質的に、前記共役ジエン単量体単位no
50%〜90%である。前記共役ジエン単量体単位は実質的に、製造された前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の74質量%〜84質量%である。加えて、前記ビニル芳香族炭化水素単量体単位は実質的に、前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の16質量%〜26質量%である。
【0016】
一実施形態では、前記共役ジエン単量体は1,3−ブタジエンであり、前記ビニル芳香族炭化水素単量体はスチレンである。
【0017】
前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体は、共役ジエン単量体単位およびビニル芳香族炭化水素単量体単位を含む。前記共役ジエン単量体単位は、1,3−ブタジエン単量体単位、イソプレン単量体単位、1,3−ペンタジエン単量体単位、2−エチル−1,3−ブタジエン単量体単位、2,3−ジメチルブタジエン単量体単位、2−メチルペンタジエン単量体単位、4−メチルペンタジエン単量体単位、2,4−ヘキサジエン単量体単位、またはその組み合わせを含む。前記ビニル芳香族炭化水素単量体単位は、スチレン単量体単位、α−メチルスチレン単量体単位、またはその組み合わせを含む。一実施形態では、前記共役ジエン単量体単位は1,3−ブタジエン単量体単位であり、前記ビニル芳香族炭化水素単量体単位はスチレン単量体単位である。
【0018】
加えて、前記有機アルカリ金属開始剤は、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、またはその組み合わせを含んでいてもよい。
【0019】
ある実施形態では、前記第1の混合物は溶媒および微小構造調整剤をさらに含む。例えば、本実施形態の製造方法で使用される前記溶媒はまた、飽和炭化水素および芳香族炭化水素等を含む非極性溶媒によって実現することができるが、前記溶媒はこれらに限定されない。前記溶媒は、脂肪族炭化水素(ペンタン,ヘキサン,およびヘプタン等)、脂環式炭化水素(シクロペンタン,シクロヘキサン,メチルシクロペンタン,およびメチルシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(ベンゼン,トルエン,およびキシレン等)、またはその組み合わせ含んでいてもよい。本実施形態の重合工程において、前記ビニル芳香族炭化水素単量体化合物および前記共役ジエン単量体化合物がランダム共重合することを可能にするために、少量の極性化合物(微小構造調整剤ともいう)をビニル化剤として添加することができる。このような極性化合物はまた、エーテル(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、および2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン(DTHFP)等)、三級アミン(テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジンエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、およびキヌクリジン等)、アルカリ金属アルキルアルコラート(カリウム tert-ペントキシド、カリウム tert-ブトキシド、ナトリウム tert-ブトキシド、およびナトリウム tert-ペントキシド等)、ホスフィン化合物(トリフェニルホスフィン等)、アルキルまたはアリール硫酸化合物等によって実現することができる。しかしながら、本開示はこれらに限定されない。これらの極性化合物は個別に、または2種以上の組み合わせとして使用することができる。
【0020】
一実施形態では、微小構造調整剤の使用量は、標的とする目的および効果に基づく。通常、微小構造調整剤は、開始剤1モルに対して0.01〜100モルである。所望の(1,2)エチレン構造体の量にしたがって、前記極性化合物(ビニル化剤)は、前記ポリマーのジエン部分に対する微小構造制御剤として適切に使用されることができる。
【0021】
図1を参照すると、工程S102では、前記第2の混合物がポリシロキサンと反応することができ、これにより末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体が得られる。この工程では、前記第2の混合物において前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の前記活性末端が前記溶媒中で主にポリシロキサンと反応することにより修飾される。詳しくは、前記有機アルカリ金属開始剤によって、前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の前記共役ジエンの前記活性末端をポリシロキサンと反応できるようにして、該活性末端が修飾される。一実施形態では、ポリシロキサンは下記化学式(I)で表される:
【0022】
【化3】

【0023】
式中、R1、R2、R3およびR5は独立して、炭素原子数1〜20のアルキル基である。R4は、炭素原子数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、または水酸基のうちの1つから選択される。mは2〜50の整数である。nは0〜50の整数である。前記ポリシロキサンは、前記第2の混合物の重合工程を終了させるための停止剤として機能することができる。そのうえ、前記ポリシロキサンは、前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の前記活性末端を修飾するため、調整剤として機能することができる。ある実施形態では、前記ポリシロキサンは、酸化アルミニウム、モレキュラーシーブまたはナトリウムタブレットを含む溶媒中に浸して脱水させることができる。あるいは、前記ポリシロキサンおよび前記溶媒は、溶媒を用いた共沸蒸留によって脱水させることができる。実施形態では、前記第1の混合物を重合した後に得られた前記活性末端を含む前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体を含む前記第2の混合物に前記ポリシロキサンを添加する。後の混合工程においてポリシロキサンが添加されかつ混合される従来の製造工程と比較して、高分子重合工程において前記ポリシロキサンを直接添加しかつ該ポリシロキサンを停止剤および調整剤として使用する本発明は、前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体中にポリシロキサンをより均一に分散させることができるのに加えて、前記ポリシロキサンの使用量を減らすことができ、これにより材料費を低減することができる。
【0024】
実施形態では、ポリシロキサンの使用量は、前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の0.05〜20質量部である。換言すると、ポリシロキサンの使用量は、前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体100質量部に対して0.05〜20質量部である。ある実施形態では、ポリシロキサンは下記化学式(II)で表される構造を含む。
【0025】
【化4】

【0026】
前記ポリシロキサンの粘度は実質的に、10mm/s〜100mm/sであってもよい。一実施形態では、前記ポリシロキサンは、異なる分子量(すなわち、異なるmの値)を有する2種類のポリシロキサンの混合物によって実現可能である。mが実質的に4〜7である前記ポリシロキサンは、ポリシロキサン全体の40質量%〜50質量%であり、mが実質的に11〜13である前記ポリシロキサンは、ポリシロキサン全体の50質量%〜60質量%である。
【0027】
一実施形態では、貧溶媒(例えば、メタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコールなどのアルコール)を、修飾にて得られた前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体に添加して、ポリマーを分離させることができる。あるいは、ポリマーが分離できるように溶媒を除去するために、温水または水蒸気(溶媒より熱い)を使用することができる。一実施形態では、前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の多分散性指数(PDI)は実質的に1〜3であり、その平均分子量は実質的に20,000〜1,000,000である。前記分析は、差動曲率検出(differential curvature detection)および光散乱検出を行う機能を有するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC,Waters
Companyにより製造)を用いて行われる。
【0028】
多くの実施形態および比較例は、高分子重合における調整剤として使用される異なる化学成分の製造工程を明確に表す。これらの実施形態および比較例にしたがって製造された、修飾された前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体によって作成されたゴム組成物の間の特性の違いがさらに比較される。さらなる説明がない限り、修飾された前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の製造工程に関する記載において、特定の物質の単位であるphr(parts per hundreds of rubber:ゴム100部あたりの部)は、スチレン単量体およびブタジエン単量体全体100質量部に対して定義される。例えば、「0.3phrのn−ブチルリチウム」は、スチレン単量体およびブタジエン単量体100質量部あたり0.3質量部のn−ブチルリチウムを意味する。ゴム組成物の製造工程において、特定の物質の単位であるphrは、末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体100質量部に対して定義される。例えば、「30phrのシリカ」は、修飾スチレン−ブタジエン共重合体100質量部あたり30質量部のシリカを意味する。
<実施形態1>
【0029】
まず、溶媒として使用される800gのシクロヘキサンを反応容器に添加し、45℃の定温に維持する。次に、微小構造調整剤として使用される0.3phr(0.64g)の2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン(DTHFP)を前記反応容器に添加する。次いで、高分子重合の開始剤として使用される0.05phrのn−ブチルリチウムを前記反応容器に添加する。前記開始剤に対する前記微小構造調整剤のモル比は実質的に2:1である。その後、第1の単量体として使用される44.7gのスチレンおよび第2の単量体として使用される168.3gのブタジエンを高分子重合のために前記反応容器に添加し、供給時間を50分間とする。高分子重合を約55分間行った後、ポリマー鎖末端に対して3.5phrのブタジエン単量体を添加する。一方、試料を取り出し、前記試料の溶媒を除去する。赤外(IR)分光法または核磁気共鳴(NMR)分光法により測定されたビニル(1,2)構造体は、前記ブタジエン単量体単位のシス−構造体、トランス−構造体およびビニル構造体の63%である。前記高分子スチレン単量体単位は、ブタジエン単量体単位およびスチレン単量体単位の総量のおよそ21質量%である。約5分後、停止剤および調整剤として使用される0.3phrのポリメチル水素シリコン(シロキサン)(PMHS)を添加し、10分間混合した後、前記混合物を取り出す。分離のためにアルコール(メタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコール)を使用するか、または、前記溶媒を水蒸気によって除去する。乾燥工程の後、前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体が得られる。本発明の本実施形態で使用されるポリメチル水素シリコンはTSF484である(ジーイー東芝シリコーン株式会社により製造)。ポリメチル水素シリコンの含量において、前記化学式(II)においてmが約5.85であるポリシロキサンは、ポリシロキサン全体の47.2質量%であり、前記化学式(II)においてmが約12.2であるポリシロキサンは実質的に、ポリシロキサン全体の52.8質量%である。前記試料の粘度は25mm/sである(25℃の温度にて)。得られた末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の平均分子量は486,000であり、その平均分子数は310,000であり、その多分散性指数(PDI)はMw/Mn=1.55である。
<比較例1>
【0030】
添加する調整剤をアミノプロピルトリメトキシシランに換えた以外は、比較例1の製造方法は実施形態1の製造方法と同様であり、かつ、その類似点は繰り返されない。
<比較例2>
【0031】
添加する調整剤を1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]尿素に換えた以外は、比較例2の製造方法は実施形態1の製造方法と同様であり、かつ、その類似点は繰り返されない。
<比較例3>
【0032】
添加する調整剤をメタノールに換えた以外は、比較例3の製造方法は実施形態1の製造方法と同様であり、かつ、その類似点は繰り返されない。
<実施形態2>
【0033】
添加する調整剤であるポリメチル水素シリコンの使用量を0.05phrに換えた以外は、実施形態2の製造方法は実施形態1の製造方法と同様であり、かつ、その類似点は繰り返されない。得られた末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の平均分子量は541,000であり、その平均分子数は345,000であり、その多分散性指数(PDI)はMw/Mn=1.57である。
<実施形態3>
【0034】
添加する調整剤であるポリメチル水素シリコンの使用量を0.1phrに換えた以外は、実施形態3の製造方法は実施形態1の製造方法と同様であり、かつ、その類似点は繰り返されない。得られた末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の平均分子量は533,000であり、その平均分子数は350,000であり、その多分散性指数(PDI)はMw/Mn=1.52である。
<実施形態4>
【0035】
添加する調整剤であるポリメチル水素シリコンの使用量を0.2phrに換えた以外は、実施形態4の製造方法は実施形態1の製造方法と同様であり、かつ、その類似点は繰り返されない。得られた末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の平均分子量は547,000であり、その平均分子数は346,000であり、その多分散性指数(PDI)はMw/Mn=1.58である。
<実施形態5>
【0036】
添加する調整剤であるポリメチル水素シリコンの使用量を0.4phrに換えた以外は、実施形態5の製造方法は実施形態1の製造方法と同様であり、かつ、その類似点は繰り返されない。得られた末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の平均分子量は500,000であり、その平均分子数は332,000であり、その多分散性指数(PDI)はMw/Mn=1.5である。
<実施形態6>
【0037】
添加する調整剤であるポリメチル水素シリコンの使用量を0.5phrに換えた以外は、実施形態6の製造方法は実施形態1の製造方法と同様であり、かつ、その類似点は繰り返されない。得られた末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の平均分子量は507,000であり、その平均分子数は334,000であり、その多分散性指数(PDI)はMw/Mn=1.52である。
<実施形態7>
【0038】
添加する調整剤であるポリメチル水素シリコンの使用量を0.6phrに換えた以外は、実施形態7の製造方法は実施形態1の製造方法と同様であり、かつ、その類似点は繰り返されない。得られた末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の平均分子量は551,000であり、その平均分子数は349,000であり、その多分散性指数(PDI)はMw/Mn=1.58である。
【0039】
次に、上記実施形態および上記比較例にしたがって製造された前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体は、個別にゴム組成物を作成するために使用され、各ゴム組成物の特性が検査される。以下の成分は、ゴム組成物を作成するための実施形態1〜7および比較例1〜3の前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体に添加される:
シリカ(ULTRASIL EVONIKにより製造)
油(#3,台湾CPCコーポレーション)
抗酸化剤(Ix-1076,CIBAにより製造)
Si69(ビ−3−(トリエトキシシリル
プロピル)テトラスルフィド,Degussa AGにより製造)
酸化亜鉛(ZnO,HAにより製造)
ステアリン酸(TPSA1865)
ジフェニル グアニジン(FLEXSYSにより製造)
N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS,FLEXSYSにより製造)
硫黄(Triangle Brand)
【0040】
まず、実施形態1〜7および比較例1〜3にしたがって製造された700gの各末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体をそれぞれ1分間混合した後、30phrのシリカ、10phrの油、1phrの抗酸化剤(Ix−1076)および4.8phrのシランカップリング剤(Si69)を添加し、1.5分間混合する。その後、30phrのシリカをさらに添加し、温度が150℃に達したら前記混合物を取り出す。次いで、2phrの酸化亜鉛(ZnO)、2phrのステアリン酸および2phrのジフェニルグアニジンをそれぞれ添加し、混合する。上記手順はバンベリー(Banbury)型ミキサーによって実行される。
【0041】
次いで、2phrのn−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)および2phrの硫黄を添加し、その結果、ゴム組成物が得られる。上記手順はロール(roll)型ミキサーによって実行される。以下の開示において、実施形態1〜7および比較例1〜3にしたがって製造された末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体によって作成されたゴム組成物の特性が分析および比較される。
【0042】
各ゴム組成物の特性は粘弾性測定装置(型名DMA
Q800,TAインスツルメンツにより製造)を用いて測定される。測定モードは伸長モードであり、測定周波数は20Hzである。測定対象は、弾性(E)の動的貯蔵率(dynamic storage modulus)および損失正接(tanδ)を含む。弾性(E)の動的貯蔵率を測定する場合、温度は60℃に設定され、測定の変形度は0.5〜10%である。弾性(ΔE’)の動的貯蔵率の差は、変形度が0.5%である場合に測定された弾性の動的貯蔵率から、変形度が10%である場合に測定された弾性の動的貯蔵率を差し引くことにより得ることができる。弾性(ΔE’)の動的貯蔵率の差の値が小さいほど、前記ゴム組成物とシリカとの間の適合性が良い。加えて、温度0℃および60℃で損失正接(tanδ)を測定する場合、温度上昇率は毎秒3℃である。0℃において、高い損失正接は、前記ゴム組成物の高い濡れ静止摩擦を示唆する。60℃において、高い損失正接は、前記ゴム組成物の高い転がり抵抗を示唆する。各実施例にしたがって製造された前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体によって作成されたゴム組成物の詳細な測定データを以下の表1に要約する。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の実施形態1〜7および比較例1〜3において、ビニル(1,2)構造体は、前記ブタジエン単量体単位のシス−構造体、トランス−構造体およびビニル構造体の63%であり、高いビニル度合である。ビニル(1,2)の度合が高い実施例の測定結果において、実施形態1および5は、弾性(ΔE’)の動的貯蔵率の差が最も低い1.6である。比較例1〜3の弾性(ΔE’)の動的貯蔵率の差1.7および2.0と比較して、実施形態1および5にしたがって製造された前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体によって作成された前記ゴム組成物は、シリカとの適合性がより優れている。
【0045】
0℃において、実施形態1〜7にしたがって製造された前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体によって作成された前記ゴム組成物の測定された損失正接(tanδ)は1.249〜1.256である。ブランクの実験(比較例1および3)と比較して、実施形態1〜7にしたがって製造された前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体によって作成された前記ゴム組成物は、濡れ静止摩擦において優れた性能を有する。また、前記実験結果は、大部分の実施形態にしたがって製造された前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体によって作成された前記ゴム組成物の0℃で測定された損失正接(tanδ)がまた、他の調整剤が用いられた比較例2にしたがって製造された前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体によって作成された前記ゴム組成物の0℃で測定された損失正接より優れていることを示している。
【0046】
60℃において、実施形態1〜7にしたがって製造された前記修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体によって作成された前記ゴム組成物の測定された損失正接(tanδ)は0.051〜0.06である。ブランクの実験(比較例3)と比較して、実施形態1〜7にしたがって製造された前記修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体によって作成された前記ゴム組成物は、転がり抵抗においてより優れた性能を有する。また、前記実験結果は、大部分の実施形態にしたがって製造された前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体によって作成された前記ゴム組成物の60℃で測定された損失正接(tanδ)がまた、他の調整剤が用いられた比較例1および2にしたがって製造された前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体によって作成された前記ゴム組成物の60℃で測定された損失正接より優れていることを示している。
【0047】
前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体およびその製造方法によれば、混合技術が使用されず、直接的な反応を介して末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体が得られる。ポリシロキサンが後の混合工程にて添加されかつ混合される従来の製造工程と比較して、ポリシロキサンが高分子重合工程で直接添加されかつ停止剤および調整剤として使用される本発明によれば、前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体中にポリシロキサンをより均一に分散させることができるのに加えて、ポリシロキサンの使用量を低減させることができるため、材料費を低減させることができる。
【0048】
実施例を用いて、好ましい実施形態の観点から本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されないことは理解されるべきである。一方、様々な変更および類似するアレンジならびに手順を網羅することを意図しているため、添付の特許請求の範囲は、そのような変更ならびに類似するアレンジおよび手順をすべて包含するように最も広く解釈されると認められるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン単量体およびビニル芳香族炭化水素単量体を含む第1の混合物に有機アルカリ金属開始剤を加えて、活性末端を有する共役ジエン−ビニル芳香族共重合体を得る工程、および
前記活性末端を有する前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体をポリシロキサンと反応させて、前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体を得る工程
を含み、
前記ポリシロキサンは下記化学式(I)で表される、末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の製造方法。

(式中、R1、R2、R3およびR5は独立して、炭素原子数1〜20のアルキル基であり、R4は、炭素原子数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、または水酸基のうちの1つから選択され、mは2〜50の整数であり、nは0〜50の整数である。)
【請求項2】
前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体100質量部に対して前記ポリシロキサンを0.05〜20質量部使用し、
前記ポリシロキサンは下記化学式で表される構造を含み:

前記ポリシロキサンの粘度は実質的に10mm/s〜100mm/sであり、
mが4〜7である前記ポリシロキサンが実質的に、前記ポリシロキサン全体の40質量%〜50質量%であり、かつ、
mが11〜13である前記ポリシロキサンが実質的に、前記ポリシロキサン全体の50質量%〜60質量%である、請求項1に記載の末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体は、共役ジエン単量体単位およびビニル芳香族炭化水素単量体単位を含み、
前記共役ジエン単量体単位は、1,3−ブタジエン単量体単位、イソプレン単量体単位、1,3−ペンタジエン単量体単位、2−エチル−1,3−ブタジエン単量体単位、2,3−ジメチルブタジエン単量体単位、2−メチルペンタジエン単量体単位、4−メチルペンタジエン単量体単位、2,4−ヘキサジエン単量体単位、またはその組み合わせを含み、
前記ビニル芳香族炭化水素単量体単位は、スチレン単量体単位、α−メチルスチレン単量体単位、またはその組み合わせを含む、請求項1または2に記載の末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記共役ジエン単量体単位は、前記1,3−ブタジエン単量体単位であり、
前記ビニル芳香族炭化水素単量体単位は、前記スチレン単量体単位である、請求項3に記載の末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体は、共役ジエン単量体単位およびビニル芳香族炭化水素単量体単位を含み、
前記共役ジエン単量体単位はビニル構造体をさらに含み、
前記ビニル構造体は実質的に、前記共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の前記共役ジエン単量体単位の10%〜90%である、請求項1または2に記載の末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記ビニル構造体は実質的に、前記共役ジエン単量体単位の50%〜90%であり、
前記共役ジエン単量体単位は実質的に、前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の74質量%〜84質量%であり、
前記ビニル芳香族炭化水素単量体単位は実質的に、前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の16質量%〜26質量%である、請求項5に記載の末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記有機アルカリ金属開始剤は、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、またはその組み合わせを含む、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の多分散性指数(PDI)が実質的に1〜3であり、
前記末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の平均分子量が実質的に20,000〜1,000,000である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記第1の混合物は溶媒および微小構造調整剤をさらに含み、
前記溶媒はシクロヘキサンを含み、
前記微小構造調整剤は2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン(DTHFP)を含み、
前記有機アルカリ金属開始剤に対する前記微小構造調整剤のモル比が0.01〜100である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体の製造方法によって製造される、末端−修飾共役ジエン−ビニル芳香族共重合体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−140623(P2012−140623A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−289823(P2011−289823)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(512001902)チー メイ コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】