説明

末端アミンの少ないビグアニド組成物

13C NMRによる測定で18モル%未満の末端アミン基を含む高分子ビグアニド組成物。該高分子ビグアニド組成物は、末端グアニジン基又は末端シアノグアニジノ基のモル濃度の相対的増加によっても特徴付けられる。本発明はまた、該高分子ビグアニド組成物を含む眼科用組成物にも向けられる。該高分子ビグアニド組成物は、眼科用レンズケア溶液中の抗菌成分として、又は医薬組成物もしくはその他のヘルスケア製品中の保存剤として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子ビグアニド組成物、及び抗菌成分としての高分子ビグアニド組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子ビグアニドを含むクラストしてのビグアニド類は抗菌活性を有することが知られている。PHMB又はPAPBとしても知られるポリ(ヘキサメチレンビグアニド)は、局所消毒剤を含む多数の用途における抗菌成分として及びヘルスケア製品の保存剤として使用されている。PHMBは一般的に下記式によって表されるが、グアニジンを含む様々な末端基を有する高分子ビグアニドの複合混合物として存在することも知られている(図示せず)。
【0003】
【化1】

【0004】
nの値はビグアニドポリマーの反復単位数を表す。英国特許第1434040号にPHMB及び幾つかその他のビグアニド構造の使用及びそれらの抗菌成分としての有効性が記載されている。
【0005】
PHMBは、眼科用組成物、例えばコンタクトレンズケア溶液に使用されている。PHMBを含有する眼科用レンズケア溶液は、大部分のその他の抗菌成分と比べて、患者の快適性及び抗菌効果に著明な改良を示す。しかしながら、あらゆる抗菌成分と同様、溶液中の抗菌成分の濃度と患者が経験する快適性との間には二律背反が残されている。そのことが広く商業的に受け入れられているため、PHMBの化学修飾によって抗菌効果又は患者の快適性のレベルを改良するための幅広い努力がなされている。例えば、アルキレン基の長さの変更、アルキレン反復単位上への置換基の配置、ポリマーの長さ(すなわち分子量又はn)の変更、又は末端基の修飾を行った多数のPHMBの誘導体が報告されている。
【0006】
欧州特許第701821号には、リン酸及びリン酸塩を用いて製剤化された、1〜500個のポリマー反復単位を有するビグアニド誘導体が記載されている。欧州特許第788797号には、泌尿生殖器疾患及び腹腔寄生虫の治療のための、5000Da未満、例えば3000Da〜4000Daの分子量を有するPHMBの使用が記載されている。
【0007】
米国特許第6,121,327号には、アミノ末端基がアミド基、RC(O)NH−に置換されたPHMB誘導体が記載されている。R基は、アルキル、シクロアルキル、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドを含みうる。ポリ(エチル)プロピレンオキシドの場合、添加された界面活性剤特性が良好な効果及び低毒性を提供すると言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】英国特許第1434040号
【特許文献2】欧州特許第701821号
【特許文献3】欧州特許第788797号
【特許文献4】米国特許第6,121,327号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
抗菌効果を犠牲にせずに患者により大きい快適性のレベルを提供する改良された抗菌ビグアニド組成物に対する関心及びニーズは依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、13C NMRによる測定で18モル%未満の末端アミン基を含む高分子ビグアニド組成物に向けられる。該高分子ビグアニド組成物は、末端グアニジン基又は末端シアノグアニジノ基のモル濃度の相対的増加によっても特徴付けられる。例えば、一態様において、ビグアニド組成物は、18モル%未満の末端アミン基、及び55モル%以上の末端グアニジン基を含む。別の態様において、ビグアニド組成物は、18モル%未満の末端アミン基、及び40モル%以上の末端シアノグアニジノ基を含む。
【0011】
本発明はまた、高分子ビグアニド組成物を含む眼科用組成物にも向けられる。例えば、該高分子ビグアニド組成物は、眼科用レンズケア溶液中の抗菌成分として、又は医薬組成物中の保存剤として使用できる。
【0012】
本発明はまた、高分子ビグアニド組成物の製造法、及び該方法から得られた高分子ビグアニドにも向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の高分子ビグアニド組成物の13C NMRスペクトルを示す。
【図2】図2は、市販サンプルのPHMBの13C NMRスペクトルの割り当てられたピーク帰属を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
PHMBは、例えばアミン、シアノグアニジノ、及びグアニジンの末端基の異なる組合せを含みうる様々なビグアニドポリマーの混合物である。これら3種類の末端基を基にするだけでも少なくとも6種類の可能なビグアニドポリマーが存在しうる。2個の末端アミン基を有する一つのビグアニドポリマー(これをPHMB−AAと呼ぶ)、2個の末端シアノグアニジノ基を有する一つのビグアニドポリマー(これをPHMB−CGCGと呼ぶ)、及び2個の末端グアニジン基を有する一つのビグアニドポリマー(これをPHMB−GGと呼ぶ)が存在しうる(以下参照)。2種類の異なる末端基の組合せを有する3種類の可能なビグアニドポリマーもある。再び上記末端基を基にすると、それらは、アミン−シアノグアニジノ(PHMB−ACG)、アミン−グアニジノ(PHMB−AG)及びグアニジン−シアノグアニジノ(GCG)を含む。従って、市販サンプルのPHMBは、おそらく3種類の上記末端基を有する高分子ビグアニドの混合物を含むであろうが、これらの末端基が各ポリマー上にどのように配置されているか、及び各種類の末端基の混合物中におけるモル濃度がどれだけであるかによって、比較的複雑な高分子ビグアニド組成物の像が提供される。さらに、一部の組成物は、鎖内高分子グアニドを含みうる(図示せず)。下付文字“n”は反復基の平均数を表し、ポリマー長の分布は以下に示すポリマーのそれぞれに存在する。
【0015】
【化2】

【0016】
13C NMRを用いて、我々は市販PHMB(Cosmocil(登録商標)型PHMB)中の末端アミン基のモル濃度を20%〜30%の範囲と推定した。同様に、我々は末端グアニジン基及び末端シアノグアニジノ基のモル濃度をそれぞれ38%〜49%及び30%〜32%と推定した(表8参照)。これに対し、本発明の高分子ビグアニド組成物は、市販サンプルのPHMB、すなわちCosmocil(登録商標)型PHMBよりも比較的少ない末端アミン基のモル濃度を特徴とする。また、該高分子ビグアニド組成物は、市販サンプルのPHMBよりも比較的高い末端グアニジン基又は末端シアノグアニジノ基のモル濃度を特徴とする。
【0017】
本発明の一態様は、13C NMRによる測定で、18モル%未満の末端アミン基及び55モル%以上の末端グアニジン基を含む高分子ビグアニド組成物に向けられる。
【0018】
13C NMRによる測定”とは、以下の実施例の項に記載されたパルス技術を用いて、高分子ビグアニド組成物の各種末端基又は鎖内ビグアニド/グアニドに付随する特定の炭素ピークを相対的に定量することを意味する。
【0019】
例示的態様において、高分子ビグアニド組成物は15モル%未満、又は10モル%未満の末端アミン基、及び60モル%以上、又は65モル%以上の末端グアニジン基を含む。
【0020】
あるいは、高分子ビグアニド組成物は、55モル%〜90モル%の末端グアニジノ基、5モル%〜35モル%の末端シアノグアニジノ基及び18モル%未満の末端アミン基を含む。別の態様において、高分子ビグアニド組成物は、60モル%〜90モル%の末端グアニジノ基、8モル%〜25モル%の末端シアノグアニジノ基及び12モル%未満の末端アミン基を含む。
【0021】
一態様において、高分子ビグアニド組成物は、式(1)、式(2)、式(3)及び所望により式(4)の高分子ビグアニドを含み、
[式(1)のモル%+式(2)のモル%]:[式(3)のモル%+式(4)のモル%]のモル比70:30以上を有する。
【0022】
【化3】

【0023】
式中、CGは、
【0024】
【化4】

【0025】
であり、Gは、
【0026】
【化5】

【0027】
である。そして各TGは同じ又は異なっており、CG又はGから選ばれる。R、R及びRは、C〜C12アルキレン、C〜C12オキシアルキレン及びC〜C12チオアルキレンからなる群から独立して選ばれる脂肪族炭化水素の二価のラジカルである。一態様において、R、R及びRは、C〜Cアルキレンから独立して選ばれる。Rは、C〜C12アルキレン、C〜C12オキシアルキレン及びC〜C12チオアルキレンからなる群から選ばれ、好ましくはC〜C12アルキレンである。値nは1〜20の反復単位の平均数を表し、値mは、式(2)、(3)及び(4)ごとに独立して選ばれ、1〜20の反復単位の平均数を表す。
【0028】
末端グアニジン基の増加は、一部は、高分子ビグアニド組成物の製造中、時間とともに鎖内ビグアニドが切断された結果であると考えられる。これは、同じ温度で製造加熱時間を1時間から4時間に増加させると観察される鎖内ビグアニド含有量の減少によって一部は裏付けられる。
【0029】
通常であれば、ビグアニド切断の結果、数平均分子量(M)の減少が観察されるはずである。しかしながら、Mにわずかな増加が観察される。Mは製造加熱時間にも依存する(加熱時間が長くなるほどMは高くなる)。この観察は、製造が、一つのポリマーの末端アミン基と別のポリマーの末端シアノグアニジノ基の反応によって鎖内ビグアニドの形成にも関与しうる結果、わずかに高いMの組成物が得られることを示唆している。組み合わせると、これらの二つのプロセスは末端アミン基のモル%を下げ、末端グアニジン基のモル%を上げる傾向にある。
【0030】
さらに、上記二つのプロセスの結果、平均して式(1)のポリマーは低いMを有する傾向にあり、その結果、式(1)のnの平均値は、式(2)又は式(3)のmの平均値より小さくなるはずと予想される。
【0031】
別の態様において、高分子ビグアニド組成物は、式(1)及び式(2)の高分子ビグアニドを含む。
【0032】
【化6】

【0033】
式(1)及び式(2)の高分子ビグアニドは、組成物中の高分子ビグアニドの総モル数の少なくとも80モル%又は少なくとも90モル%を占める。
上記式中、CGは、
【0034】
【化7】

【0035】
であり、Gは、
【0036】
【化8】

【0037】
である。そして各TGは同じ又は異なっており、CG又はGから選ばれ;
、R及びRは、C〜C12アルキレン、C〜C12オキシアルキレン及びC〜C12チオアルキレンからなる群から独立して選ばれる脂肪族炭化水素の二価の基であり;
は、C〜C12アルキレン、C〜C12オキシアルキレン及びC〜C12チオアルキレンからなる群から選ばれ、好ましくはC〜C12アルキレンであり;そして
n及びmは1〜20の反復単位の平均数を表す。重ねて、上記と同じ理由で、式(1)のnの平均値は、式(2)のmの平均値より小さいはずであると予想できる。
【0038】
本発明は、13C NMRによる測定で、18モル%未満の末端アミン基及び40モル%以上の末端シアノグアニジノ基を含む高分子ビグアニド組成物にも向けられる。該高分子ビグアニド組成物は、末端グアニジン基のモル濃度の相対的減少によっても特徴付けられる。このビグアニド組成物は、従来のPHMBと類似の合成経路を用いて製造される。例えばCosmocil(登録商標)型PHMBの製造法であるが、15〜40重量%のシアノグアニジノ剤、例えばヘキサメチレンビス(シアノグアニジノ)(HMBDA)を反応混合物に添加することだけが異なる。
【0039】
例示的態様において、高分子ビグアニド組成物は、15モル%未満の末端アミン基及び50モル%以上の末端シアノグアニジノ基を含む。また、該ビグアニド組成物は、10モル%〜30モル%の末端グアニジン基を含む。
【0040】
一態様において、高分子ビグアニド組成物は、45モル%〜70モル%の末端シアノグアニジノ基、10モル%〜30モル%の末端グアニジン基及び7モル%〜15モル%の末端アミン基を含む。
【0041】
相対的に高い末端シアノグアニジノ基を有する高分子ビグアニド組成物は、典型的には90モル%以上、又は92モル%以上の鎖内ビグアニド濃度を特徴とし、市販のPHMBに見られる濃度(89モル%〜92モル%)と類似、及び典型的には大きい。一つの特別な製造では約95モル%の鎖内ビグアニド濃度が提供された。
【0042】
最初に記載したビグアニド組成物と同様、高い末端シアノグアニジノ基を有する高分子ビグアニド組成物は、式(1)及び式(2)の高分子ビグアニドを含みうる。
【0043】
【化9】

【0044】
式(1)及び式(2)の高分子ビグアニドは、組成物中の高分子ビグアニドの総モル数の少なくとも80モル%を占める。
上記式中、CGは、
【0045】
【化10】

【0046】
であり、Gは、
【0047】
【化11】

【0048】
である。そして各TGは同じ又は異なっており、CG又はGから選ばれ;
、R及びRは、C〜C12アルキレン、C〜C12オキシアルキレン及びC〜C12チオアルキレンからなる群から独立して選ばれる脂肪族炭化水素の二価の基であり;
は、C〜C12アルキレン、C〜C12オキシアルキレン及びC〜C12チオアルキレンからなる群から選ばれ、好ましくはC〜C12アルキレンであり;そして
n及びmは1〜20の反復単位の平均数を表す。
【0049】
本発明のビグアニドポリマー組成物のMは、700Da〜12,000Da、1000Da〜8,000Da、又は1000Da〜4000Daの範囲である。従って、m、n及びpの平均値、並びにR、R及びRは、この範囲内の数平均分子量のビグアニドポリマーが得られるように選択される。
【0050】
上記高分子ビグアニド組成物のどの一つも眼科用組成物の抗菌成分として使用できる。例えば、該高分子ビグアニド組成物は、コンタクトレンズ溶液中の成分としてレンズを洗浄、殺菌又は包装するために使用できる。あるいは、該高分子ビグアニド組成物は、眼科用組成物を保存するため又は薬剤を包含する医薬組成物中の保存剤として使用できる。
【0051】
本明細書において、“眼科用組成物”とは、眼に適用することを意図した、又は眼に接触して配置される器具、例えばコンタクトレンズを処理することを意図した組成物と定義される。眼科用組成物は、眼に直接入れるための組成物、例えばドライアイを治療するためなどの点眼液、及びコンタクトレンズ処理溶液を含みうる。眼科用組成物は、コンタクトレンズの洗浄及び殺菌用又はコンタクトレンズ包装用の多目的溶液として製剤されるような組成物も含む。
【0052】
“保存剤”又は“保存する”という用語は、特定の製品、例えば点眼剤中の微生物の増殖を阻害する目的のために組成物を使用することを意味する。
高分子ビグアニド組成物の製造
高分子ビグアニドは、市販の高分子ビグアニド組成物から製造できる。例えば、例えば、PHMBを出発物質として使用し、それにシアノグアニジノ剤、グアニジン剤又はそれらの混合物を鉱酸又は有機酸の存在下で加えればよい。得られた生成物は、アミノ末端基を犠牲にした、グアニジン又はシアノグアニジノ末端基の濃度の増加によって特徴付けられる。添加されるシアノグアニジノ剤又はグアニジン剤の量は、所望のシアノグアニジノ(グアニジン)/アミン交換の程度に依存する。理論的には、市販サンプルのPHMB中のアミン末端基の全部ではないにしても大部分を交換するには、PHMB各モルあたり約4モル当量の末端アミン基が存在するので、各モル当量のPHMBに対して約4モル当量のシアノグアニジノ剤、グアニジン剤又はそれらの混合物を加えることになろう。
【0053】
一態様において、反応混合物は、市販サンプルのPHMB及びビス−シアノグアニジノアルカンの微粒子を一緒に粉砕することによって製造される。粉砕混合物を少量の酸、例えば鉱酸又は有機酸と共に反応フラスコに加え、交換反応を促進する。該反応フラスコを120℃以上、例えば140℃又は150℃を超える温度に約1〜約4時間加熱する。当業者であれば、一般的に反応温度が低ければ長い反応時間を必要とすることはわかるであろう。反応混合物を冷却し、得られた固体を第一の溶媒に溶解し、次いで第二の溶媒の添加によって沈殿させる。例えば、第一の溶媒は水、第二の溶媒はアセトンでありうる。
【0054】
あるいは、シアノグアニジノ剤としてナトリウムジシアナミド又は亜鉛ジシアナミドのようなジシアナミドを使用してもよい。重ねて、全部のアミノ末端基を理論的に交換するには、市販PHMBの各モル当量に対して約4モル当量のジシアナミドを加えることになろう。PHMBとジシアナミドを反応容器に加えて加熱する。約150℃で約1〜約4時間加熱後、反応を窒素下で一晩室温に冷却する。得られた固体を水に溶解し、アセトンで再沈殿させる。
【0055】
反応不純物及び望まざる低分子量生成物及び反応物を得られた反応固体から除去するための代替アプローチとして透析を使用することができる。この場合、反応固体を水に溶解し、その溶液を一晩透析(100 MWCOチューブ)に付する。次に得られた生成物を凍結乾燥させる。
【0056】
別の態様において、高分子ビグアニド組成物は、市販PHMBの変形合成法を用いて製造できる。この場合、およそ10モル%〜50モル%、又は20モル%〜40モル%(ジアミンのモル数に基づき)のシアノグアニジノ剤、グアニジン剤又はそれらの混合物を反応混合物に加える。PHMBの製造法が米国特許第3,428,576号(実施例1〜3)に報告されている。
高分子ビグアニド組成物及び抗菌剤におけるその使用
本発明の高分子ビグアニドは、皮膚用洗剤、皮膚消毒剤、抗菌石鹸、化粧水、シャンプー、ヘアコンディショナー、局所用ゲル、局所用軟膏、有効薬剤を含有する又は含有しない局所用薬物、歯磨き剤、洗口液、経口摂取される又は口内状態の治療を意図した薬剤、鼻腔用スプレー、眼科用薬剤、生殖器用クリーム、膣用クリーム、膣用軟膏、殺精子剤、薬物、点眼剤、眼スプレー、眼科用溶液又はゲル、又は眼軟膏に使用できる。
【0057】
該高分子ビグアニドは、コンタクトレンズの洗浄、殺菌又は包装に使用できる眼科用レンズケア溶液の抗菌成分として製剤化できる。この場合、高分子ビグアニドは、そのような溶液に必要な追加の性質を提供するいくつかのその他の溶液成分と共に製剤化されることになる。
【0058】
該高分子ビグアニドは、他のカチオン性抗菌成分と共に製剤化できる。適切な抗菌成分は、眼科用に使用される第四級アンモニウム塩、例えばポリ[ジメチルイミノ−2−ブテン−1,4−ジイル]クロリド、α−[4−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド−2−ブテニル]ポリ[1−ジメチルアンモニウムクロリド−2−ブテニル]−ω−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド(CAS#68518−54−7,Stepan CorporationよりPolyquaternium−1(登録商標)として入手できる)、ミリスタミドプロピルジメチルアミン(Aldox(登録商標))、ハロゲン化ベンザルコニウム、及びビグアニド類、例えばアレキシジンの塩、遊離のアレキシジン塩基、クロルヘキシジンの塩、抗菌性ポリペプチド及びそれらの混合物などであるが、これらに限定されない。
【0059】
抗菌成分に言及する際の“カチオン性”という用語は、正電荷と対アニオンを有する抗菌成分の中性pHにおける優勢型のことを言う。カチオン性殺菌用抗菌成分の例示的リストは、ポリ[ジメチルイミノ−2−ブテン−1,4−ジイル]クロリド、α−[4−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド−2−ブテニル]ポリ[1−ジメチルアンモニウムクロリド−2−ブテニル]−ω−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド、ミリスタミドプロピルジメチルアミン、及びそれらのいずれかの混合物などである。
【0060】
カチオン性抗菌成分は、0.01ppm〜100ppm、0.1ppm〜50ppm又は0.1ppm〜10ppmの量で存在する。しかしながら、使用される抗菌成分の量は、組成物と接触するコンタクトレンズを殺菌するのに有効であると同時に、レンズ使用患者の快適性及び受容性を促進するのが好ましい。典型的には、抗菌成分の量は、コンタクトレンズ上の微生物の負荷量を4時間で、対数で1のオーダー分削減するために使用される。あるいは、抗菌成分の有効量は、微生物の負荷量を1時間で、対数で1のオーダー分削減する。この削減は、同様に製造されたカチオン性抗菌成分不在のレンズ溶液を基にしている。
【0061】
一態様において、レンズケア溶液中に存在する主抗菌成分は、高分子ビグアニド組成物の一つで、0.01ppm〜3ppm存在する。別の態様において、レンズケア溶液中に存在する主抗菌成分は、α−[4−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド−2−ブテニル]ポリ[1−ジメチルアンモニウムクロリド−2−ブテニル]−ω−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリドで、1ppm〜100ppm存在し、本発明の高分子ビグアニドは第二の抗菌成分として使用される。
【0062】
さらに、2種類のカチオン性抗菌成分のいずれか一つの混合物がレンズケア溶液中に存在してもよい。例えば、特定のレンズケア溶液は、0.3ppm〜0.8ppmの高分子ビグアニド及び10ppm〜60ppmのα−[4−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド−2−ブテニル]ポリ[1−ジメチルアンモニウムクロリド−2−ブテニル]−ω−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリドを含むことができる。
【0063】
眼科用レンズケア溶液は、一つの高分子ビグアニド組成物とともに脂肪酸モノエステルを含むこともできる。脂肪酸モノエステルは、10個の炭素原子を有する脂肪族脂肪酸部分及び脂肪族ヒドロキシル部分を含む。ある場合、及び特別タイプのコンタクトレンズによっては、脂肪酸モノエステルの存在が、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)又はフサリウム・ソラニ(Fusarium solani)に対する効果を増強できる。
【0064】
レンズケア溶液は、ホスホン酸、又はその生理学的適合塩を含むこともできる。これは次式によって表される。
【0065】
【化12】

【0066】
式中、Zは、接続している基で、nは1〜4の整数、又は1、2もしくは3であり、好ましくは1〜12個の炭素原子、さらに好ましくは3〜10個の炭素原子を含有する。Z基は、置換又は非置換飽和炭化水素基又はアミン含有基を含み、アミン含有基は、炭素原子の間に、第二級又は第三級アミンを形成する少なくとも1個の窒素原子、例えば1、2又は3個の窒素原子が割り込んでいる飽和炭化水素基である。
【0067】
従って、適切なZ基は、置換又は非置換アルキリデン、置換又は非置換アルキレン、少なくともn+1個の炭素原子を有するアミノトリ(アルキレン)、少なくともn+1個の炭素原子を有するアミノジ(アルキレン)、アルキレンジアミンテトラ(アルキレン)又はジアルキレントリアミンペンタ(アルキレン)基などである。各場合において、カッコ内のアルキレン基はホスホン酸基に接続している。好ましくは全てのアルキレン基は独立して1〜4個の炭素原子を有する。
【0068】
Z基がアミノトリ(アルキレン)基である化合物の例は、アミノトリ(エチリデンホスホン酸)、アミノトリ(イソプロピリデンホスホン酸)、アミノジ(メチレンホスホン酸)モノ(イソプロピリデンホスホン酸)、及びアミノモノ(メチレンホスホン酸)ジ(エチリデンホスホン酸)などである。Z基が置換又は非置換アルキリデン基である化合物の例は、メチレンジホスホン酸、エチリデンジホスホン酸、1−ヒドロキシプロピリデンジホスホン酸などである。Z基がアルキレンジアミンテトラ(アルキレン)又はジアルキレントリアミンペンタ(アルキレン)基である化合物の例は、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)及びジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)などである。
【0069】
一態様において、ホスホン酸、又はその生理学的適合塩は次式によって表される。
【0070】
【化13】

【0071】
式中、a、b、c、及びdのそれぞれは独立して0〜4の整数、好ましくは0又は1から選ばれ;Xはホスホン酸基(すなわちP(OH)O)、ヒドロキシ、アミン又は水素であり;X及びXは、ハロゲン、ヒドロキシ、アミン、カルボキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、又は置換もしくは非置換フェニル、及びメチルからなる群から独立して選ばれる。フェニル上の置換基の例は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミン、カルボキシ及び/又はアルキル基である。特に好適な種は、a、b、c、及びdが0のもので、具体的には1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸のテトラナトリウム塩である。これはエチドロン酸四ナトリウムとも呼ばれ、Monsanto CompanyよりDeQuest(登録商標)2016ジホスホン酸ナトリウム塩又はホスホネートとして市販されている。
【0072】
レンズケア溶液はデクスパンテノールを含むこともできる。これはパントテン酸のアルコールで、プロビタミンB5、D−パントテニルアルコール又はD−パンテノールとも呼ばれている。レンズケア組成物の一部の製剤では、デクスパンテノールが良好な洗浄作用を示すことができ、コンタクトレンズを眼に装用した場合に眼の表面の涙膜を安定化させることができる。デクスパンテノールは、好ましくはコンタクトレンズケア組成物中に0.2%〜10%(w/v)、0.5%〜5%(w/v)、又は1%〜3%(w/v)の量で存在する。
【0073】
レンズケア溶液はソルビトールを含むこともできる。これは六価糖アルコールである。典型的には、デクスパンテノールはソルビトールと組み合わせて使用される。特定の製剤では、デクスパンテノールとソルビトールの組合せによって、増強された洗浄作用が提供でき、コンタクトレンズを眼に装用後、涙膜を安定化させることもできる。これらの製剤は、コンタクトレンズを装用した際の患者の快適性を実質的に改良できる。ソルビトールはレンズケア組成物中に0.4%〜10%(w/v)、0.8%〜6%(w/v)又は1%〜3%(w/v)の量で存在する。
【0074】
レンズケア溶液は、一つ又は複数の中性又は塩基性アミノ酸を含むこともできる。中性アミノ酸は、アルキル基含有アミノ酸、例えばアラニン、イソロイシン、バリン、ロイシン及びプロリン;ヒドロキシル基含有アミノ酸、例えばセリン、トレオニン及び4−ヒドロキシプロリン;チオ基含有アミノ酸、例えばシステイン、メチオニン及びアスパラギンを含む。塩基性アミノ酸の例は、リシン、ヒスチジン及びアルギニンを含む。一つ又は複数の中性又は塩基性アミノ酸は組成物中に総濃度0.1%〜5%(w/v)で存在する。
【0075】
レンズケア溶液は、グリコール酸、アスパラギン酸又は二つの何らかの混合物を総濃度0.001%〜4%(w/v)又は0.01%〜2.0%(w/v)で含むこともできる。
【0076】
さらに、一つ又は複数のアミノ酸とグリコール酸及び/又はアスパラギン酸を組み合わせて使用すると、レンズを眼に装用した後の膨潤又は収縮によるコンタクトレンズのサイズの変化を削減することができる。上記組合せは、二つの成分の一つが組成物中にない場合と比べて、コンタクトレンズとの高度の適合性を提供する。一つ又は複数のアミノ酸がレンズの膨潤を起こし、グリコール酸及び/又はアスパラギン酸がレンズの収縮を起こすことができると考えられている。しかしながら、組み合わせて使用すると、二つの観察された作用の相互中和作用が存在すると考えられる。
【0077】
レンズケア溶液は、グリコール酸、アスパラギン酸又は二つの何らかの混合物を2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール又はその塩と組み合わせて含むこともできる。ある場合には、三つのうちの二つ又は全三つの化合物の混合物を含有する溶液は、コンタクトレンズを眼に装用後のレンズサイズの変化を最小限にする。2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD)又はその塩は、グリコール酸、アスパラギン酸又はその二つの何らかの混合物及びAMPDの予め決められたモル比を満たすような量で溶液に添加される。二つの成分グリコール酸及び/又はアスパラギン酸対AMPDのモル比は1:20〜1.3:1である。グリコール酸、アスパラギン酸又はその二つの何らかの混合物は、組成物中に0.01%〜5%(w/v)の濃度又は0.05%〜1%(w/v)の濃度で存在する。
【0078】
成分のグリコール酸及び/又はアスパラギン酸、及びAMPDが組成物中に他方の不在下で存在すると、レンズの収縮又は膨潤を起こしがちであることが観察されうる。しかしながら、これら二つの成分が一緒に組み合わされ、予定のモル比で使用されると、レンズのサイズの変化はあったとしてもごくわずかしか観察されない。
【0079】
溶液中に存在するAMPDの量は、組成物中のグリコール酸及び/又はアスパラギン酸の量に応じて決定できる。前述のように、AMPDは、グリコール酸及び/又はアスパラギン酸対AMPDのモル比が1:20〜1.3:1、1:15〜1.2:1又は1:14〜1:1になるような量で存在する。AMPDの量がグリコール酸及び/又はアスパラギン酸1モルあたり20モルを超えると、カチオン性抗菌成分のコンタクトレンズ上への吸着が発生する。AMPDの量がグリコール酸及び/又はアスパラギン酸1.3モルあたり1モル未満になると、組成物の抗菌効果の減退が観察される。
【0080】
コンタクトレンズケア溶液は大抵、緩衝系を含むことになる。“緩衝”又は“緩衝系”という用語は、通常少なくとも一つのその他の化合物との組合せで、緩衝能、すなわち限度内で酸又は塩基(アルカリ)のいずれかを元のpHの比較的わずかな変化で又は変化なしに中和する能力を示す溶液において緩衝系を提供する化合物を意味する。一般的に、緩衝成分は0.05%〜2.5%(w/v)又は0.1%〜1.5%(w/v)存在する。
【0081】
“緩衝能”という用語は、1リットル(標準単位)の緩衝溶液に(強酸又は塩基を)加えた場合に、pHを1単位変化させるのに要する強酸又は塩基(又はそれぞれ水素イオン又は水酸化物イオン)のミリモル数(mM)を意味する。緩衝能は緩衝成分の種類及び濃度に依存する。緩衝能は出発pH6から8、好ましくは7.4から8.4で測定される。
【0082】
ホウ酸塩緩衝液は、例えばホウ酸及びその塩、例えばホウ酸ナトリウム又はホウ酸カリウムを含む。ホウ酸塩緩衝液は、溶液中でホウ酸又はその塩を生成するテトラホウ酸カリウム又はメタホウ酸カリウムのような化合物も含む。ホウ酸塩緩衝液はある種の高分子ビグアニドの効果を増強することが知られている。例えば、Ogunbiyiらによる米国特許第4,758,595号には、ポリアミノプロピルビグアニド(PAPB)(PHMBとしても知られる)を含有するコンタクトレンズ溶液は、ホウ酸塩緩衝液と組み合わせると増強効果を示せることが記載されている。
【0083】
リン酸塩緩衝系は、好ましくは一つ又は複数の一塩基性リン酸塩、二塩基性リン酸塩などを含む。特に有用なリン酸塩緩衝液は、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属のリン酸塩から選ばれるものである。適切なリン酸塩緩衝液の例は、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)及びリン酸二水素カリウム(KHPO)の一つ又は複数を含む。リン酸塩緩衝液成分はしばしば0.01%〜0.5%(w/v)の量で使用される(リン酸イオンとして計算)。
【0084】
その他の公知緩衝化合物も所望によりレンズケア組成物に加えてもよい。例えばクエン酸塩、クエン酸、炭酸水素ナトリウム、トリスなどである。溶液中のその他の成分は、その他の機能を有する一方で緩衝能にも影響を与えうる。例えば、EDTAは錯化剤として使用されることが多いが、溶液の緩衝能に顕著な影響を及ぼしうる。
【0085】
好適な緩衝系は、ホウ酸/ホウ酸塩、一及び/又は二塩基性リン酸塩/リン酸、又はホウ酸/リン酸塩の組合せ緩衝系に基づく。例えば、ホウ酸/リン酸塩の組合せ緩衝系は、ホウ酸ナトリウムとリン酸の混合物、又はホウ酸ナトリウムと一塩基性リン酸塩の組合せから製造できる。
【0086】
ホウ酸/リン酸塩の組合せ緩衝系で、溶液は約0.05〜2.5%(w/v)のリン酸又はその塩及び0.1〜5.0%(w/v)のホウ酸又はその塩を含む。リン酸塩緩衝液は、(合計)0.004〜0.2M(モル)、好ましくは0.04〜0.1Mの濃度で使用される。ホウ酸塩緩衝液は、(合計)0.02〜0.8M、好ましくは0.07〜0.2Mの濃度で使用される。
【0087】
レンズケア溶液は、水溶性のホウ酸塩−ポリオール複合体を含むこともできる。これは、ホウ酸塩源と選択したポリオールを水溶液中で混合することによって形成できる。これらの複合体は上記カチオン性抗菌成分と組み合わせて使用でき、防腐効果及び消毒基準を満たすのに役立ちうる。そのような組成物におけるホウ酸塩対ポリオールのモル比は、一般的に1:0.1〜1:10、又は1:0.25〜1:2.5である。レンズケア溶液中に存在する場合、ホウ酸塩−ポリオール複合体は通常0.5%〜5%(w/v)、1.0%〜2.5%(w/v)存在する。ホウ酸塩−ポリオール複合体は、米国特許第6,143,799号に非常に詳細に記載されている。
【0088】
レンズケア溶液は大抵、有効量の一つ又は複数の公知レンズケア製剤用成分、例えば洗剤又は界面活性剤成分、粘度誘導又は増粘成分、キレート化又は封鎖成分、又は等張化成分を含む。追加の成分(一つ又は複数)は、コンタクトレンズケア溶液に有用であることが知られている材料から選ぶことができ、所望の効果又は利益を得るのに有効な量で包含される。
【0089】
適切な界面活性剤は、両性、カチオン性、アニオン性、又はノニオン性のいずれかであってよく、典型的には(個別に又は組み合わせて)15%まで、又は5%(w/v)までの量で存在する。一つの好適な界面活性剤のクラスは両性又はノニオン性界面活性剤である。界面活性剤はレンズケア溶液に可溶性であり、そして眼組織に対して非刺激性であるべきである。多くのノニオン性界面活性剤は、オキシアルキレン(--O--R--)反復単位(式中Rは2〜6個の炭素原子を有する)を有する一つ又は複数の鎖又はポリマー成分を含む。好適なノニオン性界面活性剤は、二つ以上の異なる種類のオキシアルキレン反復単位のブロックポリマーを含む。この異なる反復単位の比率は界面活性剤のHLBを決定する。満足できるノニオン性界面活性剤は、脂肪酸、例えばココナツのポリエチレングリコールエステル、ポリソルベート、高級アルカン(C12〜C18)のポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンエーテルなどである。このクラスの例は、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20の商品名で入手可能)、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(Brij(登録商標)35)、ポリオキシエチレン(40)ステアレート(Myrj(登録商標)52)、ポリオキシエチレン(25)プロピレングリコールステアレート(Atlas(登録商標)G2612)などである。さらにその他の好適な界面活性剤は、チロキサポール、ベタイン型界面活性剤、ポリスルフェート、ポリエチレングリコール、アルキルエステル及びそれらのいずれかの混合物などである。
【0090】
エチレンジアミンのポリ(オキシプロピレン)−ポリ(オキシエチレン)付加物からなり、約7,500〜約27,000の分子量を有し、前記付加物の少なくとも40重量パーセントがポリ(オキシエチレン)である特別のノニオン性界面活性剤は、約0.01〜約15重量パーセントの量で使用される場合、ソフト及びハードコンタクトレンズ両方のクリーニング及びコンディショニングに使用するのに特に好都合であることが分かっている。このグループの界面活性剤にCTFA Cosmetic Ingredient Dictionary(化粧品成分表示名称事典)が採用した名称はポロキサミンである。そのような界面活性剤は、BASF Wyandotte Corp.,(ミシガン州ワイアンドット)からTetronic(登録商標)の商品名で入手できる。
【0091】
レンズケア組成物に使用するための類似の界面活性剤系列は、ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)ブロックポリマーであるポロキサマー系列で、Pluronic(登録商標)の商品名で入手できる(BASFより市販されている)。レンズケア組成物の一態様に従って、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマーは、2500〜13,000ドルトン又は6000〜約12,000ドルトンの分子量を有する。満足できる界面活性剤の具体例は、ポロキサマー108、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー238、ポロキサマー288及びポロキサマー407などである。特に良好な結果はポロキサマー237で得られる。
【0092】
本発明に適切な各種その他のイオン性並びに両性及びアニオン性界面活性剤は、上記の説明を考慮すれば、McCutcheonの Detergents and Emulsifiers(北米版、McCutcheon Division,MC Publishing Co.,Glen Rock,N.J.07452)及びCTFA International Cosmetic Ingredient Handbook(Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Association出版、Washington,D.C.)から容易に確認できる。
【0093】
本発明による組成物に使用するのに適切な両性界面活性剤は、“Miranol”の商品名で市販されている種類の物質などである。別の有用なクラスの両性界面活性剤は、例えばココアミドプロピルベタインで、様々な供給元から市販されている。
【0094】
前述の界面活性剤は、一般的に0.01%〜5%(w/v)、0.1%〜5%(w/v)、又は0.1%〜1.5%(w/v)の総量で存在する。界面活性剤の量は0.005%又は0.01%から0.1%又は0.5%又は0.8%(w/v)であることが多い。
【0095】
レンズケア溶液は粘度増強成分も含みうる。粘度誘導成分は、その他の成分との適合性があるべきで、好ましくはノニオン性である。そのような粘度誘導成分は、界面活性剤成分の洗浄活性及び湿潤活性を増強及び/又は延長し、及び/又はレンズ表面をより親水性(低親油性)にコンディショニングし、及び/又は眼の上で粘滑剤として作用するのに有効である。溶液の粘度が上昇するとレンズの上に膜が提供されるので、コンタクトレンズの快適な装用を促進できる。粘度誘導成分は、レンズ装用中眼表面に対する衝撃を和らげる機能も果たすことができ、また眼刺激を緩和する役割も果たす。
【0096】
適切な粘度誘導成分は、水溶性天然ゴム、セルロース由来ポリマーなどであるが、これらに限定されない。有用な天然ゴムは、グアガム、トラガカントガムなどである。有用なセルロース由来粘度誘導成分は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース由来ポリマーなどである。非常に有用な粘度誘導成分はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。別の有用な粘度誘導成分は、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)のモノマー単位を含むポリマーで、NOF CorporationからLipidure(登録商標)の商品名で入手できる。
【0097】
粘度誘導成分は、溶液の粘度を上げる、好ましくはUSP試験法No.911(USP 23,1995)による測定で、約1.5〜約30の範囲、又はさらには約750もの高さ(cps、25℃)の粘度にするのに有効な量で使用される。
【0098】
キレート剤又は封鎖剤は、カチオン性抗菌成分の有効性を増強する及び/又は金属イオンと錯体(複合体)を形成してコンタクトレンズのより効果的な洗浄を提供するのに有効な量で包含させることができる。広範囲の有機酸、アミン、又は酸基及びアミン官能基を含む化合物がキレート成分として作用可能である。例えば、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルエチレン−ジアミン三酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ヒドロキシエチルアミノ二酢酸、エチレンジアミン−四酢酸及びその塩、ポリホスフェート、クエン酸及びその塩、酒石酸及びその塩など及びそれらの混合物がキレート成分として有用である。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びそのアルカリ金属塩が好適であり、EDTAの二ナトリウム塩(エデト酸二ナトリウムとしても知られる)が好適なキレート成分の一つである。
【0099】
レンズケア溶液は、典型的には、少なくとも約200mオスモルモル/kg、例えば約300又は約350〜約400mオスモルモル/kgの範囲のオスモル濃度を有する。レンズケア溶液は、実質的に等張性又は高張性(例えばわずかに高張性)で、眼科的に受容可能なものである。
【0100】
レンズケア溶液は、典型的には有効量の張性調整成分を含む。使用できる適切な張性調整成分は、コンタクトレンズケア製品に従来使用されているもの、例えば各種無機塩などである。塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムなどは非常に有用な張性成分である。張性調整成分の量は、溶液に所望の張性を提供するのに有効な量である。
【0101】
従って、高分子ビグアニド組成物は、殺菌/洗浄用コンタクトレンズ溶液における第一又は第二の抗菌成分として使用できる。一般に、そのような方法は、レンズを該溶液に一定時間、典型的には最低1〜4時間接触又は浸漬することを含む。そのような接触はレンズを該眼科用組成物中に単に浸漬するだけで達成できるが、より有効な保存、殺菌及び/又は洗浄は、まず数滴の溶液をレンズの各面に落とし、レンズを一定時間、例えば約20秒間こすり洗いすれば、おそらく達成できる。その後、レンズを数ミリリットルの溶液中に浸漬すればよい。好ましくはレンズは溶液中に少なくとも4時間浸漬される。さらにレンズは、いずれかのこすり洗いステップ後及び溶液中に浸漬後再度、新鮮な組成物で濯ぐのが好適である。レンズを溶液から取り出し、同じ又は異なる溶液、例えば保存等張生理食塩水で濯ぎ、眼に再装着する。
【0102】
高分子ビグアニドを含有する製剤化されたコンタクトレンズ溶液は、多くの異なる種類のコンタクトレンズ、例えば(1)アクリルエステルの重合によって製造された材料、例えばポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)から形成されたハードレンズ、(2)シリコーンアクリレート及びフルオロシリコーンメタクリレートから形成された硬質ガス透過性(RGP)レンズ、(3)ソフトヒドロゲルレンズ、及び(4)非ヒドロゲルエラストマーレンズと共に使用できる。
【0103】
一例として、ソフトヒドロゲルコンタクトレンズはヒドロゲル高分子材料から製造される。ヒドロゲルは平衡状態で水を含有する架橋ポリマー系と定義される。一般に、ヒドロゲルは優れた生体適合性、すなわち生体組織で有毒、有害又は免疫反応を起こさないことによって生物学的又は生化学的に適合可能な性質を示す。代表的な従来のヒドロゲルコンタクトレンズ材料は、少なくとも一つの親水性モノマー、例えば(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、グリセリルメタクリレート、N,N−ジメタクリルアミド、及びN−ビニルピロリドン(NVP)を含むモノマー混合物を重合することによって製造される。シリコーンヒドロゲルの場合、コポリマー製造の元になるモノマー混合物は、親水性モノマーに加えてさらにシリコーン含有モノマーを含む。一般的に、モノマー混合物は、架橋モノマー、例えばエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、及びメタクリルオキシエチルビニルカルボネートも含む。あるいは、シリコーン含有モノマー又は親水性モノマーのいずれかが架橋剤として機能してもよい。
【0104】
高分子ビグアニド組成物は、コンタクトレンズの保存溶液又は包装用溶液として使用するために製剤化することもできる。当業者であれば、これらの各用途それぞれのための製剤の調整法は分かるであろう。容器又はボトル及びパッケージング(特定の用法に従って使用するための説明書含む)と組み合わせたレンズケア組成物は、コンタクトレンズのケアのための改良されたキット、パッケージ、又はシステムを提供する。
【0105】
一つの例示的眼科用組成物は、表1に掲載された成分及びそれぞれの量を用いて製造されたコンタクトレンズ殺菌溶液として製剤化される。
【0106】
【表1】

【0107】
本発明による別の殺菌溶液は、表2Aに掲載された下記成分を含む。
【0108】
【表2A】

【0109】
本発明による別の殺菌溶液は、表2Bに掲載された下記成分を含む。
【0110】
【表2B】

【0111】
本発明による別の殺菌溶液は、表3に掲載された下記成分を含む。
【0112】
【表3】

【0113】
本発明による別の殺菌溶液は、表4に掲載された下記成分を含む。
【0114】
【表4】

【0115】
高分子ビグアニドは、コンタクトレンズ再湿潤用点眼溶液として製剤化することもできる。例えば、再湿潤用点眼液は、上記表1〜4の上記製剤のいずれか一つに従って製剤化すればよい。あるいは、界面活性剤の量を増加することによって;抗菌剤の量を保存剤用の量に減らすことによって;及び/又は保湿剤及び/又は粘滑剤を加えることによって、該製剤を変更してもよい。
【0116】
高分子ビグアニド組成物は、ドライアイ患者の治療用として製剤化された眼科用組成物の保存剤としても使用できる。そのような方法では、眼科用組成物は患者の眼、眼瞼又は患者の眼周囲の皮膚に投与される。該組成物は、患者がコンタクトレンズを装用しているかどうかに関係なく眼に投与できる。例えば、多くの人々は、涙液系統の機能不全により、埃、花粉などのような刺激性の環境汚染物を除去するのに必要な適切な涙液量又は涙膜安定性を得られない一時的又は慢性的な眼の状態に悩まされている。
【0117】
高分子ビグアニドは、鼻腔スプレー、点耳及び点眼薬、坐剤、及び処方製剤又は市販製剤(医薬有効成分を含有し、長期間使用又は投与されるクリーム、軟膏、ゲル又は溶液など)などの医薬組成物における保存剤として使用することもできる。
【0118】
例えば、高分子ビグアニドは、眼疾患又は眼症状を治療するための眼科用組成物の保存剤として使用できる。多くの場合、眼科用組成物は一つ又は複数の有効薬剤を含む。一般的に、有効薬剤は眼科用薬剤の一つ又は複数のクラスに属する。例えば、抗炎症薬、抗生物質、免疫抑制剤、抗ウィルス薬、抗真菌薬、麻酔薬及び鎮痛剤、抗がん剤、抗緑内障薬、ペプチド及びタンパク質、抗アレルギー剤などであるが、これらに限定されない。
【0119】
一態様において、有効薬剤は、糖質コルチコステロイドのような抗炎症薬、例えば、これらに限定されないが、アルクロメタゾン(alclometasone)、アルゲストン(algestone)、アムシノニド(amcinonide)、ベクロメタゾン(beclomethasone)、フルクロロニド(flucloronide)、ヒドロコルチゾン、エタボン酸ロテプレドノール(loteprednol etabonate)、ジフルプレドナート(difluprednate)、コルチゾン及びそれらの組合せ、又は非ステロイド系抗炎症薬、例えば、これらに限定されないが、エンフェナム酸(enfenamic acid)、アセクロフェナク(aceclofenac)、ブマディゾン(bumadizon)、クリダナク(clidanac)、アルミノプロフェン(alminoprofen)、ピラゾロン類(pyrazolones)、サリチル酸、フェプラジノール(fepradinol)、アンピロキシカム(ampiroxicam)、及びそれらの組合せである。
【0120】
別の態様において、有効薬剤は抗生物質、例えば、ドキソルビシン(doxorubicin)、アプラマイシン(apramycin)、ビアペネム(biapenem)、セファクロール(cefaclor)、セフテゾール(ceftezole)、アムジノシリン(amdinocillin)、クリンダマイシン(clindamycin)、カルボマイシン(carbomycin)、クロモサイクリン(clomocycline)、シノキサシン(cinoxacin)、シプロフロキサシン(ciprofloxacin)、スルファジアジン(sulfadiazine)、及びそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0121】
さらに別の態様において、有効薬剤は免疫抑制剤、例えば、シクロスポリンA、グスペリムス(gusperimus)、フルオシノロン(fluocinolone)、トリアミノロン(triaminolone)、カルモフール(carmofur)、アザチオプリン(azathioprine)及びそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0122】
さらに別の態様において、有効薬剤は抗ウィルス薬、例えば、三ナトリウムホスホモノホルメート(trisodium phosphomonoformate)、トリフルオロチミジン(trifluoro-thymidine)、アシクロビル(acyclovir)、ガンシクロビル(ganciclovir)、及びそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0123】
さらに別の態様において、有効薬剤は抗真菌薬、例えば、アンホテリシン(amphotericin)、ネオマイシン(neomycin)、ビフォナゾール(bifonazole)、ラノコナゾール(lanoconazole)、クロルフェネシン(chlorphenesin)、プロピオン酸亜鉛及びシッカニン(siccanin)などであるが、これらに限定されない。
【0124】
さらに別の態様において、有効薬剤は抗緑内障薬、例えばチモロール(timolol)、ベタキソロール(betaxolol)、アテナロール(atenalol)、塩化アセチルコリン、カルバコール(carbachol)、塩酸ピロカルピン(pilocarpine hydrochloride)、及びそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0125】
さらに別の態様において、有効薬剤は抗アレルギー剤、例えば塩酸フェニレフリン(phenylephrine hydrochloride)、塩酸ナファゾリン(naphazoline hydrochloride)、塩酸テトラヒドロゾリン(tetrahydrozoline hydrochloride)、塩酸オキシメタゾリン(oxymetazoline hydrochloride)、クロモグリク酸ナトリウム(sodium cromoglycate)及びエピネフリンなどであるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0126】
ヘキサメチレンビス(シアノグアニジン)(HMBDA)を米国特許第5,965,088号(実施例1)に記載の方法に従って製造する。
比較例1
PHMBのアミン誘導体(PHMB−A)を市販のPHMB及びヘキサメチレンジアミンから製造する。PHMB(Cosmocil CG(登録商標)、6.0g、3.3mモル)、及びヘキサメチレンジアミン(0.42g、3.6mモル)及び濃塩酸(360μL)を反応フラスコに加え、ほとんどの液体がフラスコから消散するまで100℃に加熱する。次に反応混合物の温度を155℃にして4時間加熱する。該反応を窒素流の上で一晩室温に放冷する。得られた固体を50mLの蒸留水に溶解し、溶液を透析(100 MWCOチューブ)によって一晩精製する。精製生成物を凍結乾燥する。4.81g。
実施例1:多目的溶液の製剤
表5に掲載された成分及び量を用いて3種類の多目的溶液を製剤化した。製剤はそれぞれ、製剤1、製剤2及び製剤3と標識した。
【0127】
【表5】

【0128】
実施例2:リン酸塩緩衝生理食塩水PHMB溶液
3種類のPHMB、すなわちPHMB Cosmocil(登録商標)、PHMB−A及び実施例5を含有する三つの溶液を表6に示すように等張リン酸塩緩衝生理食塩水中に製造した。製剤は製剤はそれぞれ、製剤4、製剤5及び製剤6と標識した。
【0129】
【表6】

【0130】
実施例3:有機土壌を用いた殺菌効力
製剤1〜6の殺微生物効力を米国食品医薬品局の眼科用デバイス部(U.S.Food and Drug Administration, Division of Ophthalmic Devices)が概要をまとめた“殺菌用製品のためのスタンドアローン法(Stand-Alone Procedure for Disinfecting Products)”と呼ばれる性能要件に基づいて評価した。この方法で試される微生物は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(ATCC 9027)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC 6538)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)(ATCC 13880)、カンジダ・アルビカンス(ATCC 10231)及びフサリウム・ソラニ(ATCC 36031)などである。各製剤についてこの試験で決定された微生物の対数減少を表7に示す。製剤1〜6の殺菌抗力には統計的に有意な差は観察されなかった。
実施例4:快適性関連試験
24人の被験者が、製剤1及び製剤3のコンタクトレンズケア多目的溶液を比較する2時間の非分配評価を終えた。この実験にはPureVisonコンタクトレンズが使用された。
【0131】
レンズケースの各ウェルを製剤1又は製剤3で前処理した(1回、最低4時間浸漬)。各ケースについて、製剤3で処理するウェルを無作為に決定し、もう片方のウェルを製剤1処理用とした。Bausch & LombのPureVisonレンズ全部を、レンズケースのウェルに使用したのと同じ無作為化の後、最低4時間、前処理されたレンズケース中で製剤1又は製剤3のいずれかを用いて浸漬した。
【0132】
レンズ装着前に各被験者の快適性、角膜染色及び結膜染色を評価した。各被験者は前処理されたレンズ対を装着した。レンズは眼に2時間入れておいた。
【0133】
製剤について平均のアナログ快適性に統計的に有意な差があった(ANOVA,p<0.03)。製剤3の試験溶液のレンズの方が製剤1より良好な快適性の評価を受けた。製剤3の平均快適性評価は92.9;製剤1の平均は90.9、最大は100であった。値が高いほど良好な快適性の評価を表す。
【0134】
【表7】

【0135】
二つの製剤について平均のアナログ刺痛(チクチク)/灼熱痛(ヒリヒリ)にわずかに統計的に有意な差があった(ANOVA,p=0.06)。製剤3で処理されたレンズの方が製剤1で処理されたレンズより良好な刺痛/灼熱痛評価を受けた。製剤3の平均刺痛灼熱痛評価は95.3;製剤1は93.0の評価であった。値が高いほど刺痛/灼熱痛は少ないことを表す。
【0136】
また、2時間時点における製剤1と製剤3の間の平均正規化角膜染色範囲にも統計的に有意な差があった(ウィルコクソンのマッチドペア検定(Wilcoxon Matched Pairs Test),p<0.01)。2時間時点における平均正規化角膜染色重症度には統計的に有意な差はなかった(ウィルコクソンのマッチドペア検定,p>0.11)。製剤3で処理された眼は、製剤1で処理された眼より2時間時点における正規化角膜染色範囲が少なかった。製剤3は平均染色範囲値1.5を有し;製剤3は平均染色範囲値2.9を有していた。
【0137】
2時間時点における製剤1と製剤3の間の平均正規化結膜染色重症度には統計的に有意な差はなかった(ウィルコクソンのマッチドペア検定,p>0.78)。2時間時点における平均正規化結膜染色範囲にも統計的に有意な差はなかった(ウィルコクソンのマッチドペア検定,p>0.11)。
【0138】
製剤3に浸けたレンズは、2時間時点において製剤1に浸けたレンズより統計的に有意な良好な快適性スコアと少ない正規化角膜染色範囲を引き出した。その上、製剤3に浸けたレンズは、製剤1に浸けたレンズより良好な刺痛/灼熱痛スコアも引き出した。
実施例5
PHMB(Cosmocil CG(登録商標)、6.0g、3.3mモル)、ヘキサメチレンビス(シアノグアニド)(HMBDA)(0.9g、3.6mモル)及び濃塩酸(360μL)を反応フラスコに加え、ほとんどの液体がフラスコから消散するまで100℃に加熱する。次に反応混合物の温度を155℃にして4時間加熱する。該反応を窒素流の上で一晩室温に放冷する。得られた固体を50mLの蒸留水に溶解し、溶液を透析(100 MWCOチューブ)によって一晩精製する。精製生成物を凍結乾燥する。4.81g。
実施例6
PHMB(Cosmocil(登録商標)CQ、6.0g、3.3mモル)、ヘキサメチレンビス(シアノグアニド)(HMBDA)(1.8g、7.2mモル)及び濃塩酸(720μL)を反応フラスコに加え、ほとんどの液体がフラスコから消散するまで100℃に加熱する。次に反応混合物の温度を155℃にして4時間加熱する。該反応を窒素流の上で一晩室温に放冷する。得られた固体を60mLの蒸留水に溶解し、溶液を透析(100 MWCOチューブ)によって一晩精製する。精製生成物を凍結乾燥する。5.3g。
【0139】
生成物を13C NMR(以下参照)によって分析し、末端基のモル濃度を決定した。実施例5及び6の13C NMRデータを市販サンプルのPHMBとともに表8にまとめた。
【0140】
【表8】

【0141】
実施例7A〜7C
それぞれの製造について、PHMB(Cosmocil(登録商標)100、6.0g、3.3mモル)(Cosmocil(登録商標)100は固形のPHMB)、ヘキサメチレンビス(シアノグアニド)(HMBDA)(1.8g、7.2mモル)及び濃塩酸(720μL)を反応フラスコに加え、ほとんどの液体がフラスコから消散するまで100℃に加熱する。次に反応混合物の温度を155℃にして4時間加熱する。該反応を窒素流の上で一晩室温に放冷する。得られた固体を60mLの蒸留水に溶解し、溶液を透析(100 MWCOチューブ)によって一晩精製する。次に精製生成物を一晩凍結乾燥する。
【0142】
実施例7A〜7Cの13C NMRデータを表9にまとめた。
【0143】
【表9】

【0144】
実施例8A〜8D
それぞれの製造について、PHMB(Cosmocil(登録商標)100、6.0g、3.3mモル)(Cosmocil(登録商標)100は固形のPHMB)、ヘキサメチレンビス(シアノグアニド)(HMBDA)(1.8g、7.2mモル)及び濃塩酸(720μL)を反応フラスコに加え、ほとんどの液体がフラスコから消散するまで100℃に加熱する。次に反応混合物の温度を155℃にして1時間(実施例8A)、2時間(実施例8B)、3時間(実施例8C)及び4時間(実施例8D)加熱する。該反応を窒素流の上で一晩室温に放冷する。得られた固体を60mLの蒸留水に溶解し、溶液を透析(100 MWCOチューブ)によって一晩精製する。次に精製生成物を一晩凍結乾燥する。実施例8A〜8Dの13C NMRデータを表10にまとめた。
【0145】
【表10】

【0146】
実施例9
ナトリウムジシアニミド(8.9g)、ヘキサメチレン(11.6g)、HMBDA(8.9g)、36%塩酸(19g)及び水(7.3g)を含有する水溶液をpH6.5〜7.5で製造する。該溶液を120℃に加熱してすべての水を除去する。次に反応容器を150℃に加熱し、この温度に4時間維持する。該反応を窒素下で一晩冷却する。得られた固体を60mLの蒸留水に溶解し、溶液を透析(100 MWCOチューブ)によって一晩精製する。次に精製生成物を一晩凍結乾燥する。13C NMRによる測定で18モル%未満の末端アミン基及び40モル%以上の末端シアノグアニジノ基を含むビグアニド生成物が得られる。
13C NMR パルスシーケンス及び取得パラメーター
上記実施例によって提供された得られた高分子ビグアニド組成物を13C NMR(以下及び表8参照)によって分析し、各実施例における末端基のモル濃度を決定した。13Cスペクトルを取得するのに使用した特殊なパルス技術は、各末端基、すなわちグアニジン、シアノグアニジノ又はアミンの相対濃度の定量を可能にする技術である。13C NMRデータは、鎖内ビグアニド基及び鎖内グアニドの相対濃度を定量するのにも使用される。本発明の一つの高分子ビグアニドの代表的な13C NMRスペクトルを図1に示す。図に示されているように、末端アミン基に付随するアルファ−メチレン炭素はピークAで示され、末端グアニジン基に付随するグアニジン炭素はピークBで示され、末端シアノグアニジノ基に付随するグアニジン炭素はピークCで示されている。また、鎖内ビグアニドに付随する炭素はピークDで示され、鎖内グアニドに付随する炭素はピークEで示されている。
【0147】
13C NMR分析用のサンプルは、高分子ビグアニド水溶液(20wt%)2.2mlを用いて調製され、それに0.3mlのDOを加える。高分解能13C NMRを、Bruker AVANCE 300MHz分光計を用い、13C核に対し75.5MHzで運転して取得する。定量分析の場合、スペクトルは、シングルパルス励起を用い、NOE効果を抑制するための逆ゲート付きデカップリング、1024トランジエント、及びサンプル中の最長13C Tより5倍長い緩和のためのディレイ(リラグゼーションディレイ)で取得する。300MHzで、観察された最長Tは、〜157ppmの末端グアニジン炭素の9.0秒である。リラグゼーションディレイ45秒を用い、300MHzで定量スペクトルを取得する。Tは磁場依存性なので、異なる磁場強度で取得する場合、リラグゼーション実験を行う必要がある。すべてのスペクトルは10mmのBBOプローブを用い、300Kで取得する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
13C NMRによる測定で、18モル%未満の末端アミン基、及び55モル%以上の末端グアニジン基を含む高分子ビグアニド組成物。
【請求項2】
65モル%以上の末端グアニジン基を含む、請求項1に記載の高分子ビグアニド組成物。
【請求項3】
10モル%未満の末端アミン基を含む、請求項1及び2に記載の高分子ビグアニド組成物。
【請求項4】
式(1)、式(2)、式(3)及び所望により式(4)の高分子ビグアニドを含み、そして
[式(1)のモル%+式(2)のモル%]:[式(3)のモル%+式(4)のモル%]のモル比70:30以上を有し、
【化1】

式中、CGは、
【化2】

であり、Gは、
【化3】

であり、
そして各TGは同じ又は異なっており、CG又はGから選ばれ;
、R及びRは、C〜C12アルキレン、C〜C12オキシアルキレン及びC〜C12チオアルキレンからなる群から独立して選ばれる脂肪族炭化水素の二価の基であり;
は、C〜C12アルキレン、C〜C12オキシアルキレン及びC〜C12チオアルキレンからなる群から選ばれ;
nは1〜20の反復単位の平均数を表し;そして
mは、式(2)、(3)及び(4)のそれぞれに対して独立して選ばれ、1〜20の反復単位の平均数を表す、請求項1〜3に記載の高分子ビグアニド組成物。
【請求項5】
式(1)及び式(2)の高分子ビグアニドを含み、
【化4】

式(1)及び式(2)の高分子ビグアニドは、組成物中の高分子ビグアニドの総モル数の少なくとも80モル%を占め、式中、
CGは、
【化5】

であり、Gは、
【化6】

であり、
そして各TGは同じ又は異なっており、CG又はGから選ばれ;
、R及びRは、C〜C12アルキレン、C〜C12オキシアルキレン及びC〜C12チオアルキレンからなる群から独立して選ばれる脂肪族炭化水素の二価の基であり;
は、C〜C12アルキレン、C〜C12オキシアルキレン及びC〜C12チオアルキレンからなる群から選ばれ;そして
n及びmは1〜20の反復単位の平均数を表す、請求項1〜3に記載の高分子ビグアニド組成物。
【請求項6】
式(1)及び式(2)の高分子ビグアニドが、高分子ビグアニドの総モル数の少なくとも90モル%を占める、請求項5に記載の高分子ビグアニド組成物。
【請求項7】
コンタクトレンズを洗浄、殺菌又は包装するための眼科用組成物における、又は眼科用組成物を保存するための、請求項1〜6に記載の高分子ビグアニド組成物の使用。
【請求項8】
13C NMRによる測定で、18モル%未満の末端アミン基及び40モル%以上の末端シアノグアニジノ基を含む高分子ビグアニド組成物。
【請求項9】
15モル%未満の末端アミン基及び50モル%以上の末端シアノグアニジノ基を含む、請求項8に記載の高分子ビグアニド組成物。
【請求項10】
10モル%〜30モル%の末端グアニジン基をさらに含む、請求項8及び9に記載の高分子ビグアニド組成物。
【請求項11】
7〜15モル%の末端アミン基及び45モル%〜70モル%の末端シアノグアニジノ基を含む、請求項8及び9に記載の高分子ビグアニド組成物。
【請求項12】
式(1)及び式(2)の高分子ビグアニドを含み、
【化7】

式(1)及び式(2)の高分子ビグアニドは、組成物中の高分子ビグアニドの総モル数の少なくとも80モル%を占め、式中、
CGは、
【化8】

であり、Gは、
【化9】

であり、
そして各TGは同じ又は異なっており、CG又はGから選ばれ;
、R及びRは、C〜C12アルキレン、C〜C12オキシアルキレン及びC〜C12チオアルキレンからなる群から独立して選ばれる脂肪族炭化水素の二価の基であり;
は、C〜C12アルキレン、C〜C12オキシアルキレン及びC〜C12チオアルキレンからなる群から選ばれ;そして
n及びmは1〜20の反復単位の平均数を表す、請求項8及び9に記載の高分子ビグアニド組成物。
【請求項13】
コンタクトレンズを洗浄、殺菌又は包装するための眼科用組成物における、薬剤を含む医薬組成物中の保存剤としての、又はヘルスケア製品中の保存剤としての、請求項8〜12に記載の高分子ビグアニド組成物の使用。
【請求項14】
請求項1〜6に記載の高分子ビグアニド組成物及びα−[4−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド−2−ブテニル]ポリ[1−ジメチルアンモニウムクロリド−2−ブテニル]−ω−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリドを含む眼科用組成物。
【請求項15】
デクスパンテノール、ソルビトール、プロピレングリコール又はそのいずれかの組合せをさらに含む、請求項14に記載の眼科用組成物。
【請求項16】
コンタクトレンズを洗浄、殺菌又は包装するための、薬剤を含む医薬組成物中の保存剤としての、又はヘルスケア製品中の保存剤としての、請求項14に記載の眼科用組成物の使用。
【請求項17】
請求項8〜12に記載の高分子ビグアニド組成物及びα−[4−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド−2−ブテニル]ポリ[1−ジメチルアンモニウムクロリド−2−ブテニル]−ω−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリドを含む眼科用組成物。
【請求項18】
デクスパンテノール、ソルビトール、プロピレングリコール又はそのいずれかの組合せをさらに含む、請求項17に記載の眼科用組成物。
【請求項19】
コンタクトレンズを洗浄、殺菌又は包装するための、薬剤を含む医薬組成物中の保存剤としての、又はヘルスケア製品中の保存剤としての、請求項17及び18に記載の眼科用組成物の使用。
【請求項20】
高分子ビグアニド組成物の製造法であって、少なくとも20モル%の末端アミン基を含む高分子ビグアニド組成物を含む混合物を、シアノグアニジノ剤、グアニジン剤又はその混合物の存在下で110℃〜180℃の温度に加熱し、アミノ末端基をシアノグアニジノ又はグアニジン末端基に変換することを含む方法。
【請求項21】
シアノグアニジノ剤がナトリウムジシアナミド又はビス−シアノグアニジノ(アルカン)からなる群から選ばれ、グアニジン剤がビス−グアニジノ(アルカン)又はグアニジン又はその塩から選ばれる、請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2010−507721(P2010−507721A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534758(P2009−534758)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/081195
【国際公開番号】WO2008/051733
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(508154379)アーチ・ケミカルズ・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】