説明

末端変性可溶性多官能ビニル芳香族共重合体、その製造方法、硬化性樹脂組成物及び硬化物

【課題】耐熱性、耐熱分解性、溶剤可溶性、加工性及びアクリレート化合物との相溶性が改善された可溶性多官能ビニル芳香族共重合体を得る。
【解決手段】ジビニル芳香族化合物(a)、モノビニル芳香族化合物(b)及びチオエーテル化合物(c)を反応して得られる共重合体であって、アクリレート結合を含有する芳香族系エーテル化合物由来の末端基を有し、数平均分子量Mnが500〜10,000であり、上記芳香族系エーテル化合物由来の末端基の導入量(c1)が1.0個/1分子以上を満足し、かつ、共重合体中のジビニル芳香族化合物由来の構造単位のモル分率(A)及びモノビニル芳香族化合物由来の構造単位のモル分率(B)が0.05<(A)/{(A)+(B)}<0.95である末端変性可溶性多官能ビニル芳香族共重合体及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、相溶性及び耐熱変色性が改善されたチオ(メタ)アクリレート構造を有する末端変性可溶性多官能ビニル芳香族共重合体とその製造方法に関する。また、上記共重合体を含有する耐熱性、屈折率、吸水率の改善された硬化性樹脂組成物、及びこれから得られる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
反応活性のある不飽和結合を有する単量体の多くは、不飽和結合が開裂して、連鎖反応を起こす触媒と適切な反応条件を選択することにより多量体を生成することができる。このような不飽和結合を有する単量体を代表する汎用的な単量体としてスチレン、アルキルスチレン及びアルコキシスチレン等のビニル芳香族化合物を挙げることができる。そして、このようなビニル芳香族化合物を単独で又はこれらを共重合させることにより多種多様な樹脂が合成されている。
【0003】
しかし、このようなビニル芳香族化合物から得られる重合体の用途は主に、比較的安価な民生機器の分野に限られており、電気・電子分野におけるプリント配線基板のような高機能で高度の熱的・機械的特性が要求される先端技術への適用はほとんどない。その理由としては、耐熱性あるいは耐熱分解性といった熱的特性と溶剤可溶性あるいはフィルム成形性といった加工性を同時に満足させることができないことが挙げられる。
【0004】
この様な従来のビニル芳香族系重合体の欠点を解決する方法として、特許文献1にはジビニル芳香族化合物とモノビニル芳香族化合物を有機溶媒中、ルイス酸触媒及び特定構造の開始剤の存在下、20〜100℃の温度で重合させることによって得られる可溶性多官能ビニル芳香族共重合体が開示されている。また、特許文献2には4級アンモニウム塩の存在下で、ルイス酸触媒及び特定構造の開始剤により、ジビニル芳香族化合物を20〜100モル%含有してなる単量体成分を20〜120℃の温度でカチオン重合させることにより制御された分子量分布を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法が開示されている。これら2つの特許文献で開示されている技術によって得られる可溶性多官能ビニル芳香族共重合体は溶剤可溶性及び加工性に優れ、これを使用することによってガラス転移温度の高い耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。
【0005】
これらの技術によって得られる可溶性多官能ビニル芳香族共重合体は、それ自体が重合性の2重結合を有するため、これを硬化させることにより高いガラス転移温度を持つ硬化物を与える。そのため、この硬化物又は可溶性多官能ビニル芳香族共重合体は、耐熱性に優れた重合体又はその前駆体であると言うことができる。そして、この可溶性多官能ビニル芳香族共重合体は他のラジカル重合性モノマーと共重合して硬化物を与えるが、この硬化物も耐熱性に優れた重合体となる。
【0006】
可溶性多官能ビニル芳香族共重合体と他のラジカル重合性モノマーの共重合時の相溶性や、硬化後の耐熱変色性という観点から見ると、汎用性の高い(メタ)アクリレート化合物との間の相溶性又は溶解性が十分でなく、また、高いプロセス温度に対する耐熱分解性は十分ではない。従って、(メタ)アクリレート化合物の種類によっては不透明な組成物を与えるケースが多く、(メタ)アクリレート化合物と可溶性多官能ビニル芳香族共重合体との均一な共重合が困難となる。これは、配合処方設計の自由度が小さいという欠点を生じる他、更に280〜300℃近傍の高い熱履歴によって、フクレや変色などの不良が生ずるケースがあった。
【0007】
一方、特許文献3には、イソブチレンを含有するカチオン重合性モノマーを開始剤兼連鎖移動剤として作用する特定構造のハロゲン含有有機化合物、及び、ルイス酸の存在下で、低温でリビングカチオン重合を行うことにより、末端にイソブチリル基を有するイソブチレン系重合体を合成し、更にルイス酸存在下で、この末端にイソブチレン基を有するイソブチレン系重合体と特定構造のフェノール系化合物とのフリーデルクラフツ型反応を行うことによって、停止末端に水酸基を有するイソブチレン系重合体の製造方法が開示されている。しかしながら、当該製造方法によって合成された末端にイソブチレンを有するイソブチレン重合体は、多官能ビニル芳香族化合物を使用していないことに起因して、ペンダントビニル基を有しておらず、このため成形品のガラス転移温度が低く、電気・電子分野のような高機能で高度の熱的・機械的特性が要求される先端技術分野に適用できないという問題点があった。また、当該製造方法で導入されている末端基はフェノール系化合物由来のフェノール性水酸基である。
【0008】
更に、特許文献4にはジビニル芳香族化合物及びモノビニル芳香族化合物を共重合して得られる共重合体であって、その末端基の一部にエーテル結合又はチオエーテル結合を介した鎖状炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体が開示されている。しかしながら、このようして末端が変性された可溶性多官能ビニル芳香族共重合体であっても、相溶性又は耐熱性等が十分ではない場合があった。更に、特許文献4に開示されているエーテル結合を有する末端基は、ベンジルアルコールのようなOH基含有化合物のOH基がポリマー末端と反応するという反応機構によって導入されている。
【0009】
また、特許文献5には、重合可能な二重結合を有する単官能モノマーと少なくとも2個の重合可能な二重結合を有する多官能性モノマーと連鎖移動剤を反応させて分岐ポリマーを製造する方法が開示されており、末端基の一部にエーテル結合又はチオエーテル結合を有する可溶性共重合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−123873号公報
【特許文献2】特開2005−213443号公報
【特許文献3】特開平4−20501号公報
【特許文献4】特開2007−332273号公報
【特許文献5】特表2002−506089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、高い熱履歴に対しても優れた耐熱性と耐熱変色性とを有し、(メタ)アクリレート化合物との相溶性に優れ、なおかつ成形加工性に優れる制御された分子量分布と溶剤可溶性を兼ね備えた末端変性多官能ビニル芳香族共重合体とこの共重合体を高効率に製造する方法を提供することを目的とする。また、この共重合体を配合した硬化性組成物及び硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ジビニル芳香族化合物(a)、モノビニル芳香族化合物(b)を含む共重合体であって、その共重合体の末端に下記式(1)
【化1】

(ここで、R1は酸素原子及び硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜18の炭化水素基であり、R2は水素原子又はメチル基であり、Xは酸素原子又は硫黄原子を表す)
で表されるチオ(メタ)アクリレート末端を有し、数平均分子量Mnが500〜10,000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表される分子量分布(Mw/Mn)が50.0以下であり、上記末端基の導入量(c1)が下記式(2)
(c1)≧1.0(個/分子) (2)
を満足し、共重合体中のジビニル芳香族化合物由来の構造単位のモル分率(A)及びモノビニル芳香族化合物由来の構造単位のモル分率(B)が下記式(3)
0.05<(A)/{(A)+(B)}<0.96 (3)
を満足し、上記末端基のモル分率(C)が下記式(4)
0.01<(C)/{(A)+(B)}<2.0 (4)
を満足し、かつ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、エタノール又はイソプロパノールに可溶であることを特徴とする可溶性多官能ビニル芳香族共重合体である。
【0013】
また本発明は、下記式(5)
【化2】

(ここで、R1は酸素原子及び硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜18の炭化水素基であり、Xは酸素原子又は硫黄原子を表す)
で表されるチオール化合物由来の末端基を有する多官能ビニル芳香族共重合体と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸ハライドをエステル化反応させることを特徴する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法である。
【0014】
更に本発明は、上記の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体に、(メタ)アクリレート系化合物を配合したことを特徴とする硬化性樹脂組成物である。この硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤を含有することが望ましい。
【0015】
また本発明は、上記の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物、この硬化物からなる光学レンズ・プリズム、及びこの硬化物の層を有するフィルムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の末端が変性された可溶性多官能ビニル芳香族共重合体は、耐熱性、相溶性及び接着性が改善される。また、本発明の製造方法によれば、上記共重合体を高効率で製造することができる。本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体又はこれを含む硬化性樹脂組成物は、成形材、シート又はフィルムに加工することができ、高耐熱性等の特性を満足できる光学用材料への適用が可能であり、携帯電話用レンズ、CD、DVD用ピックアップレンズ、Fax用レンズあるいはフレネルレンズ等の材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物、モノビニル芳香族化合物及びチオール化合物を反応して得られる共重合体に(メタ)アクリル酸残基が結合された上記式(1)で表される末端基を有する。そして、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン又はクロロホルムに可溶である。本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体は、上記のように末端が変性されているので、末端変性可溶性多官能ビニル芳香族共重合体であるが、誤解を生じない場合は共重合体又は本発明の共重合体と略称する。
【0018】
本発明の共重合体は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位及びモノビニル芳香族化合物に由来する構造単位の他、上記式(1)で表される末端基を構造単位として有する。それぞれの構造単位の存在モル比を(A)、(B)、(C)とし、(A)+(B)=1.0とすれば、(C)は0.01超、2.0未満であることが必要である。好ましくは、0.1〜1.5、より好ましくは0.5〜1.0である。
【0019】
本発明の共重合体の末端に上記末端基を上記の関係を満足するように導入することによって、高い熱履歴に対しても優れた耐熱性と高接着性を有し、(メタ)アクリレート化合物との相溶性に優れ、成形加工性にも優れた樹脂組成物とすることができる。末端基のモル分率(C)/{(A)+(B)}が0.01以下であると(メタ)アクリレート化合物との相溶性と成形加工性が低下し、また、屈折率の向上寄与が小さく、2.0以上であるとポリマーとしての機械物性が維持できず、更に耐熱性が低下する。
【0020】
本発明の共重合体一分子当りの末端基の導入量(c1)は、平均として1.0個以上であり、好ましくは2〜5個である。
【0021】
更に、本発明の共重合体は、上記構造単位(A)のモル分率(A)/{(A)+(B)}は、0.05超、0.96未満であり、好ましくは0.4〜0.95、より好ましくは0.50〜0.90の範囲である。構造単位(B)のモル分率(B)/{(A)+(B)}は、構造単位(A)のモル分率から計算される。別の観点からは、構造単位(A)を全ての構造単位の合計100モル%に対して、40〜90モル%含むことが好ましい。ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(A)は、耐熱性を発現させるための架橋成分としてのビニル基を含み、一方、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(B)は、硬化反応に関与するビニル基を有しないため成形性が向上される。したがって、構造単位(A)のモル分率が0.05以下では硬化物の耐熱性が不足し、0.96以上では成形加工性が低下する。
【0022】
本発明の共重合体のMn(ここで、Mnはゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量である)は500〜10,000であり、好ましくは700〜5,000、更に好ましくは1,000〜4,000である。Mnが500未満であると共重合体の粘度が低すぎるため、厚膜の形成が困難になるなど、加工性が低下し、また、Mnが10,000を超えると、ゲルが生成しやすくなり、フィルム等に成形した場合、外観の低下を招くとともに、末端官能基の数が低下するため、相溶性や屈折率の向上が望めない。分子量分布(Mw/Mn)の値は50.0以下、好ましくは20.0以下、より好ましくは1.5〜3.0である。Mw/Mnが50.0を超えると、共重合体の加工特性の悪化、ゲルの発生といった問題点を生ずる。
【0023】
本発明の共重合体は、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン又はクロロホルムから選ばれる溶剤に可溶であるが、有利には上記溶剤のいずれにも可溶である。溶剤に可溶で、多官能な共重合体であるためには、ジビニルベンゼンのビニル基の一部は架橋せずに残存し適度な架橋度であることが必要である。
【0024】
本発明の共重合体は、上記末端基で末端が(メタ)アクリレートで変性されているため(メタ)アクリレート化合物との共重合化が可能であり、(メタ)アクリレート化合物及び樹脂に対し相溶性が非常に高い。したがって、(メタ)アクリレート化合物と共重合させて硬化させた場合、均一硬化性や透明性に優れるものとなる。
【0025】
次に、本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体を有利に製造することができる製造方法に関する発明について説明する。本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法を、本発明の共重合体の製造方法又は本発明の製造方法と略称することもある。
【0026】
本発明の共重合体の製造方法では、ジビニル芳香族化合物(a)、モノビニル芳香族化合物(b)及びチオール化合物(c)を反応させて得られ、式(5)で表されるチオール化合物由来の末端基を有する共重合体(以下、中間共重合体ともいう)を使用して、以下のいずれかの方法で製造する。ここで、上記中間共重合体は末端が相違するが、本発明の共重合体と同様に可溶性の多官能ビニル芳香族共重合体である。
【0027】
(1)中間共重合体と(メタ)アクリル酸のエステル化反応。以下、エステル化(1)という。
(2)中間共重合体と(メタ)アクリル酸ハライドのエステル化反応。以下、エステル化(2)という。
【0028】
エステル化(1)では、中間共重合体の末端にある式(5)で表されるチオール化合物由来の末端基と、(メタ)アクリル酸をエステル化反応させてエステル化する。ここで、エステル化反応は、末端基の-XHと(メタ)アクリル酸の-COOHが反応して、脱水し、-XOC-結合を生じることをいう。この反応は常法に従えば良く、中間共重合体と(メタ)アクリル酸を、有機溶媒中で、酸触媒及びラジカル重合禁止剤の存在下に攪拌・混合する方法等が挙げられる。
【0029】
中間共重合体に対する(メタ)アクリル酸の使用量は特に限定されるものではないが、エステル化反応の効率や反応生成物の精製の容易性を考慮すれば中間共重合体の末端基1モルに対して、2.1〜4モル、好ましくは2.2〜2.5モルの範囲で用いられる。
【0030】
酸触媒としては、原料として用いる(メタ)アクリル酸よりも酸性度が大きいものであれば特に制限されない。好ましいものとしては、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸等の無機酸;ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、シュウ酸及びギ酸等の有機酸又はそれらの塩;陽イオン交換樹脂等の固体酸;塩化亜鉛、塩化スズ、塩化第二鉄、塩化第二銅及び硫酸第二銅等のルイス酸;並びに活性白土等を挙げることができる。これらの中でも、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸又はp−トルエンスルホン酸ソーダが好ましい。
【0031】
酸触媒の使用量は、一般的なエステル化反応における使用量と同じで良く、中間共重合体1モルに対して、0.0001〜0.1モルが好ましく、0.001〜0.05モルがより好ましい。
【0032】
ラジカル重合禁止剤としては、ラジカルを捕捉しうる化合物であれば特に制限されない。好ましいものとして、ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、エトキシハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、t−ブチルカテコール、次亜リン酸等、従来より知られている通常のラジカル重合禁止剤が使用される。これらのラジカル重合禁止剤は単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。通常は、(メタ)アクリル酸に対して10〜10000ppmの範囲で使用することが好ましく、100〜5000ppmがより好ましい。
【0033】
有機溶媒としては、原料として使用される不飽和カルボン酸と反応するもの、例えば、アルコール類やアミン類等を除けば特に限定されるものではない。本発明においては反応の進行に伴って生成する水を反応系外に留去することによって反応が促進されることから、系内で生成した水を系外に容易に留去できる溶媒、すなわち、水に不溶であり、なおかつ水と共沸するような有機溶媒が好ましい。このようなものの例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、キュメン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等を挙げることができる。これらの中で、水と近い沸点を有し、水との共沸性が良く、しかも安価で比較的環境への負荷が少ないトルエンが特に好ましく使用される。
【0034】
有機溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、通常は(メタ)アクリル酸と中間共重合体の合計重量に対して、5重量倍以下であり、好ましくは0.8〜2重量倍以下である。
【0035】
エステル化反応の温度は、通常70〜150℃、好ましくは100〜135℃の範囲で行われる。反応は通常、常圧下で行われるが、用いる有機溶媒の沸点によっては、反応温度が前記温度範囲内になるように、加圧又は減圧下で行っても良い。本発明において反応時間は特に限定されるものではないが、通常、1〜20時間の範囲で行われる。
【0036】
エステル化(2)では、中間共重合体と(メタ)アクリル酸ハライドをエステル化反応させる。ここで、(メタ)アクリル酸ハライドとしては、(メタ)アクリル酸クロライド及び(メタ)アクリル酸ブロマイドが挙げられ、入手の容易さ及び反応物の着色がない点から、(メタ)アクリル酸クロライドが好ましい。
【0037】
中間共重合体に対する(メタ)アクリル酸ハライドの割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、中間共重合体の上記末端基1モルに対して(メタ)アクリル酸ハライドを2.1〜4モルが好ましく、より好ましくは2.1〜2.8モルである。
【0038】
反応は常法に従えばよい。好適な一例としては、攪拌装置、温度計及び滴下装置を備えた反応器に、中間共重合体、有機溶媒及び触媒をあらかじめ加えておき、冷却しながらアルカリ水溶液を追加する。ついで、反応液が冷却されたことを確認したら(メタ)アクリル酸ハライドを滴下装置で滴下し、滴下終了後、冷却を保ちながら攪拌する方法が挙げられる。
【0039】
有機溶媒としては、トルエン、シクロヘキサン及びアセトニトリル等が挙げられる。触媒としては、トリエチルアミン等の三級アミンやトリブチルアンモニウムブロマイド等の四級アンモニウム塩等が挙げられる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム水溶液等が挙げられる。
【0040】
反応温度、(メタ)アクリル酸ハライドの滴下時間、(メタ)アクリル酸ハライド滴下終了の攪拌時間は、目的に応じて適宜設定すれば良い。反応温度は、10℃以下とすることが好ましい。(メタ)アクリル酸ハライドの滴下時間は、30分〜数時間が好ましい。(メタ)アクリル酸ハライド滴下終了の攪拌時間は、1〜数時間が好ましい。
【0041】
エステル化(1)又は(2)の反応終了後、得られた反応混合物に水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を加えて反応系を中和した後に、有機層と水層とを分離し、得られた有機層から有機溶媒を減圧留去するか、あるいは得られた有機層をそのまま、又は得られた有機層を濃縮した後に、得られた(メタ)アクリレート末端基を有する共重合体に対する貧溶媒を加えて晶析する方法によって目的の共重合体を回収することができる。
【0042】
中間共重合体であるチオール化合物由来の末端基を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の製造法を以下に示す。
【0043】
ジビニル芳香族化合物(a)とモノビニル芳香族化合物(b)とチオール化合物(c)を含む反応原料を使用して重合させる。ここで、チオール化合物(c)は、式(5)で表わされる末端基を与える化合物であり、式(5)中のS-がSHとなった化合物が適する。
【0044】
ジビニル芳香族化合物(a)とモノビニル芳香族化合物(b)とチオール化合物(c)の使用量は、本発明の共重合体の組成を与えるように決められる。好ましくは、ジビニル芳香族化合物(a)とモノビニル芳香族化合物(b)の使用量は、両者の合計100モル%に対し、ジビニル芳香族化合物(a)10〜90モル%、モノビニル芳香族化合物(b)90〜10モル%、より好ましくは、ジビニル芳香族化合物(a)55〜70モル%、モノビニル芳香族化合物(b)45〜30モル%である。
【0045】
ジビニル芳香族化合物(a)は共重合体を分岐させ、多官能とさせると共に、共重合化時にビニル基の一部残留するペンダントビニル基となることで、この共重合体が熱硬化する際に耐熱性を発現させるための架橋成分として重要な役割を果たす。ジビニル芳香族化合物(a)の例としては、ジビニルベンゼン(m−及びp−両方の異性体)、ジビニルナフタレン(各異性体を含む)、ジビニルビフェニル(各異性体を含む)が好ましく使用されるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
モノビニル芳香族化合物(b)は、共重合体の溶剤可溶性及び加工性を改善する。モノビニル芳香族化合物(b)の例としては、スチレン、核アルキル置換モノビニル芳香族化合物、α−アルキル置換モノビニル芳香族化合物、β−アルキル置換スチレン、アルコキシ置換スチレン等があるが、これらに制限されるものではない。共重合体のゲル化を防ぎ、溶媒への溶解性、加工性の改善するために、特にスチレン、エチルビニルベンゼン(m−及びp−両方の異性体)、エチルビニルビフェニル(各異性体を含む)がコスト及び入手の容易さの観点から、好まれて使用される。
【0047】
また、本発明の共重合体の製造方法では、本発明の効果を損なわない範囲で、ジビニル芳香族化合物(a)、モノビニル芳香族化合物(b)の他に、トリビニル芳香族化合物、トリビニル脂肪族化合物やジビニル脂肪族化合物及びモノビニル脂肪族化合物等のその他の単量体を使用し、この単位を共重合体中に導入することができる。
【0048】
チオール化合物(c)は上記式(5)で表わされる末端基を与える化合物である。ここで、R1及びXは式(1)と同じ意味を有する。チオール化合物(c)は重合反応時に重合活性種との間で連鎖移動反応を起こし、中間共重合体の末端に、上記末端基を与え、この末端基は更にエステル化反応により、接着性等の機能付与を可能にする式(1)で表わされる末端基を導入する役割を果たす。
【0049】
チオール化合物(c)としては、反応性、入手の容易さ、硬化物の耐熱性の観点から、1−メルカプトエタノール、2−メルカプトエタノール、1,2−エタンジチオール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、1,3プロパンジチオール、4−メルカプト−1−ブタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、2−メルカプトエチルエーテルまたは6−メルカプト−1−ヘキサノール等があげられる。多官能チオールはポリマー中でその分枝の程度を増大させる有用な方法でもある。所望により、チオール化合物(c)は、これら化合物の混合物であってもよい。
【0050】
チオール化合物(c)の使用料は、本発明の共重合体の組成を与えるように決められる。好ましくは、重合性の全単量体100モルに対し、15〜500モル、より好ましくは20〜100モル、更に好ましくは25〜50モルである。15モル未満であると、上記末端基の導入量が減少し、アクリレート化合物との相溶性等の機能が低下するばかりでなく、分子量及び分子量分布が増大し、成形加工性が悪化する。また、500モルを超えて使用すると、重合速度が著しく低下し、生産性が低下する他、分子量が上がらない。チオール化合物(c)は、重合反応の際、成長ポリマー鎖の末端のビニル基由来の炭素ラジカルと反応して上記末端基を形成させて成長を停止させる。チオール化合物(c)に由来する末端基の導入量を共重合体の説明でした範囲とするようにその使用量及び反応条件を選定する。
【0051】
本発明の製造方法ではジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)を熱開始反応を利用してラジカル熱重合を行うことで重合開始剤を不要とすることができる。一方、熱開始反応による開始反応速度が小さい場合には、ラジカル重合開始剤を添加することもできる。
【0052】
この場合、ラジカル重合開始剤としては、例えばシクロヘキサノンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等の重合開始剤を挙げることができる。
【0053】
ラジカル重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、単量体成分の合計量100重量部に基いて、0.01〜25重量部であることが好ましく、0.05〜20重量部の範囲内であることがさらに望ましい。0.1〜10重量部の範囲内であることが最も好ましい。
【0054】
また、重合反応は、基本的に溶剤を使用しない塊状重合で行うことができるが、生成する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体を溶解する1種以上の有機溶媒中で行うこともできる。有機溶媒としてはラジカル重合を本質的に阻害しない化合物であって、本発明のチオール化合物、開始剤、単量体及び多官能ビニル芳香族共重合体を溶解して、均一溶液を形成するものであれば、特に制約なく使用することができる。
【0055】
有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等を挙げることができる。この中で、トルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましい。
【0056】
これらの有機溶媒は、単独又は2種以上を組み合わせて使用される。溶剤の使用量に特に制限はないが、生産性や重合操作性を考慮して決められる。
【0057】
重合温度は50〜200℃の温度範囲が適する。50℃未満で重合反応を行うと、重合速度が低くなるので、工業的実施の観点から好ましくなく、また200℃を超えると、反応の選択性が低下するため、反応の制御が難しく、架橋による不溶性のゲルの生成が起こりやすくなるので好ましくない。
【0058】
重合反応停止後、共重合体を回収する方法は特に限定されず、例えば、スチームストリッピング法、貧溶媒での析出などの通常用いられる方法を用いればよい。
【0059】
本発明の製造方法によって本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体が有利に得られる。本発明の製造方法によって得られる重合体は、ジビニル芳香族化合物(a)由来の構造単位及びモノビニル芳香族化合物(b)由来の構造単位の合計に対し、約50〜95モル%のジビニル芳香族化合物(a)由来の構造単位及び約50〜5モル%のモノビニル芳香族化合物(b)由来の構造単位を含む。好ましくは、ジビニル芳香族化合物(a)由来の構造単位を50〜95モル%を含む。
【0060】
また、本発明の製造方法によって得られる共重合体では、本発明の効果を損なわない範囲で、上記単量体成分(a)〜(b)由来の構造単位の他に、トリビニル芳香族化合物等のその他の単量体成分由来の構造単位を導入することができる。
【0061】
さらに、本発明の製造方法によって得られる共重合体は重合に関与しなかったジビニル芳香族化合物由来のビニル基を含有する構造単位が含まれていることが好ましい。このことにより熱硬化性に富み、硬化後の耐熱性及び機械的特性にさらに優れた成形品を得ることができる。本発明の製造方法によって得られる共重合体の数平均分子量Mnは、500〜10,000が好ましい。より好ましくは500〜8,000である。最も好ましくは600〜5,000である。
【0062】
また、分子量分布(Mw/Mn)の値は50.0以下であることがよい。好ましくは、40.0以下である。特に好ましくは20.0以下である。最も好ましくは10.0以下である。
【0063】
本発明の硬化性組成物は、本発明の共重合体と、メタアクリレート系化合物を含む。メタアクリレート系化合物は、硬化成分として用いられ、分子中に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートである。硬化成分として用いられる多官能アクリレートと本発明の共重合体を併用することによって相乗的に、耐熱性、耐擦傷性や接着性といった性質が同時に向上する。なお、本発明の共重合体はメタアクリレート系化合物
【0064】
本発明の硬化性組成物における本発明の共重合体の配合量は1.0〜90wt%であることがよく、好ましくは20〜90wt%である。より好ましくは、50〜80wt%である。共重合体の配合量が1.0wt%未満であると共重合体による改質効果の程度が不十分であり、90wt%を越える場合は、硬化反応性が著しく低下するので好ましくない。メタアクリレート系化合物配合量は10〜99wt%であることがよく、好ましくは10〜80wt%である。より好ましくは、20〜55wt%である。なお、本発明の共重合体はメタアクリレート系化合物としては計算しない。
【0065】
多官能アクリレートは分子中に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する1種以上の多官能アクリレートであれば特に限定されず、例えばエチレンオキサイド変性フェノールの(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノールの(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールのジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性水添ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンアリルエーテルジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等からなる群から選ばれる1種以上の単官能及び多官能(メタ)アクリレート化合物が使用される。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物は後述するように加熱や活性エネルギー線光の照射等の手段により架橋反応を起こして硬化するが、その際の反応温度を低くしたり、不飽和基の架橋反応を促進する目的でラジカル重合開始剤を含有させて使用してもよい。この目的で用いられる重合開始剤の量は硬化性組成物成分のすべての和を基準として0.01〜15wt%、好ましくは0.05〜10wt%である。重合開始剤の量が前述の範囲内であると、離型性、耐熱性及び機械的特性に優れた硬化物が得られることから好ましい。
【0067】
重合開始剤として使用することのできる化合物としては、加熱や活性エネルギー線光の照射等の手段により、ラジカルを発生させるものであれば特に限定せずに使用することができる。より具体的に例示すれば、加熱により硬化させる場合には、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等のアゾ系、過酸化物系開始剤等の通常のラジカル熱重合に使用できるものはいずれも使用することができる。
【0068】
ラジカル重合を光ラジカル重合により行う場合、ラジカル重合開始剤として、上記アゾ系開始剤や過酸化物開始剤等のラジカル熱重合開始剤の替わりに光ラジカル重合開始剤を用いることができる。例えば、ベンゾイン類、アセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキサイド類等の光開始剤が挙げられる。
【0069】
これらは、単独又は2種以上の混合物として使用でき、更には、光ラジカル重合開始剤に対しては、第3級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等の促進剤などと組み合わせて使用することができる。
【0070】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記成分以外に必要に応じて各種添加剤として、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤等を必要に応じて配合することができる。
【0071】
本発明の硬化性光学樹脂組成物は、その使用目的、用途、製品形状に応じて、熱又は紫外線により硬化させることができる。
【0072】
熱により硬化させる場合は、組成物の保存安定性、硬化物の着色抑制の観点から好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜180℃のオーブンで1分〜20時間加熱処理することが望ましい。溶剤を含んでいる場合は硬化する前に、溶剤を完全に除去することが望ましい。除去方法は特に限定されないが、好ましくは50〜100℃の熱風を15分〜2時間塗布面に当てて除去する。
【0073】
本発明の硬化性樹脂組成物は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより硬化物を得ることができる。ここで本発明の硬化性光学樹脂組成物に紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化する場合に用いられる光源の具体例としては、例えば、キセノンランプ、カーボンアーク、高圧水銀灯等を挙げることができる。
【0074】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化、成形することによりレンズ、プリズム等の光学材料を得ることができる。例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を用いたプラスチックレンズの作製法としては、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体等からなるガスケットと所望の形状の2枚のガラス鋳型によって造られた型を作り、これに本発明の硬化性光学樹脂組成物を注入した後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して本発明で得られた硬化性光学樹脂組成物を硬化し、硬化物を型より剥離する方法等がある。
【0075】
また、本発明の硬化性樹脂組成物を、例えば、プリズム、フレネルレンズ又はレンチキュラーレンズの形状を有するスタンパー上に塗布し、該樹脂組成物の層を設け、その層の上に硬質透明基板であるバックシート(例えば、ポリメタクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、或いはこれらポリマーのブレンド品等からなる基板あるいはフィルム)を接着させ、次いで該硬質透明基板側から高圧水銀灯などにより、紫外線を照射して該樹脂組成物を硬化させた後、該スタンパーから硬化物を剥離することもできる。これは、硬化物の層を有するフィルムを含むものとなる。
【実施例】
【0076】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部である。また、実施例中の軟化温度等の測定は以下に示す方法により試料調製及び測定を行った。
【0077】
1)ポリマーの分子量及び分子量分布
可溶性多官能芳香族共重合体の分子量及び分子量分布測定はGPC(東ソー製、HLC−8120GPC)を使用し、溶媒にテトラヒドロフラン、流量1.0ml/min、カラム温度38℃、単分散ポリスチレンによる検量線を用いて行った。
【0078】
2)ポリマーの構造
日本電子製JNM−LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、13C−NMR及び1H−NMR分析により決定した。溶媒としてクロロホルム−d1を使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。
3)末端基の解析
末端基の算出は、上記のGPC測定より得られる数平均分子量と1H−NMR測定と元素分析の結果より得られるモノマー総量に対する末端基を導入するために使用した誘導体量とから、末端基を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体1分子中に含まれる末端基数を算出した。
【0079】
4)硬化物のガラス転移温度(Tg)及び軟化温度測定の試料調製及び測定
乾燥後の厚さが20μmになるように、ガラス基板に可溶性多官能ビニル芳香族共重合体溶液を均一に塗布し、ホットプレートを用いて90分で30分間加熱し、乾燥させた。ガラス基板とともに得られた樹脂膜はTMA(熱機械分析装置)にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で220℃まで昇温し、更に220℃で20分間加熱処理することにより残存する溶媒を除去するとともに可溶性多官能ビニル芳香族共重合体を硬化した。ガラス基板を室温まで放冷した後、TMA測定装置中の試料に分析用プローブを接触させ、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から360℃までスキャン測定を行い、接線法で軟化温度を求めた。
【0080】
5)耐熱性評価及び耐熱変色性の測定
可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の耐熱性評価は、試料をTGA(熱天秤)測定装置にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から320℃までスキャンさせることにより測定を行い、300℃における重量減少を耐熱性として求めた。一方、耐熱変色性の測定は、可溶性多官能ビニル芳香族共重合体5.0g、2−フェノキシエチルメタクリレート5.0g、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂(株)製、パーブチルO)0.02gを混合し、窒素気流下で150℃、1時間加熱し、硬化物を得た。そして、得られた硬化物の変色量を目視にて確認し、○:熱変色なし、△:淡黄色、×:黄色に分類することにより耐熱変色性の評価を行った。
【0081】
6)相溶性の測定
可溶性多官能ビニル芳香族共重合体のアクリレート化合物との相溶性の測定は、試料2gをアクリレート類(ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA))10gに溶解させ、溶解後の試料の透明性を目視にて確認し、○:透明、△:半透明、×:不透明もしくは溶解せず、に分類することにより相溶性の評価を行った。
【0082】
合成例1
ジビニルベンゼン1.35モル(192.3mL)、エチルビニルベンゼン0.317モル(45.1mL)、スチレン0.133モル(15.3mL)、2−メルカプトエタノール1.35モル(94.7mL)、エチルベンゼン90.0mLを1.0Lの反応器内に投入し、130℃で4時間反応させた。その後、重合溶液を室温まで降温し、その後、ジエチルアミンを0.054モル(5.59mL)添加し、室温で24時間反応させた。その後、130℃で、ジエチルアミン、エチルベンゼン等を減圧溜去し、共重合体A 267.8gを得た。
【0083】
得られた共重合体AのMnは1020、Mwは2520、Mw/Mnは2.47であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、共重合体Aは2−メルカプトエタノールの末端に由来する共鳴線が観察された。共重合体Aの元素分析結果と標準ポリスチレン換算の数平均分子量から算出される可溶性多官能ビニル芳香族重合体の2−メルカプトエタノール由来の構造単位の導入量(c1)は2.1(個/分子)であった。また、ジビニルベンゼン由来の構造単位を73.5モル%及びスチレンとエチルビニルベンゼン由来の構造単位を合計26.5モル%含有していた(末端構造単位を除く)。共重合体A中に含まれるビニル基含有量は、1.7モル%であった(末端構造単位を除く)。
共重合体Aはアセトン、THF、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。
【0084】
合成例2
ジビニルベンゼン0.0437モル(6.23mL)、エチルビニルベンゼン0.0103モル(1.46mL)、スチレン1.746モル(200.1mL)、2−メルカプトエタノール0.072モル(5.05mL)、エチルベンゼン90.0mLを500mLの反応器内に投入し、130℃で4時間反応させた。その後、重合溶液を室温まで降温し、その後、ジエチルアミンを0.054モル(5.59mL)添加し、室温で24時間反応させた。その後、130℃で、ジエチルアミン、エチルベンゼン等を減圧溜去し、共重合体E 114.8gを得た。
【0085】
得られた共重合体EのMnは30200、Mwは87300、Mw/Mnは2.89であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、共重合体Eは2−メルカプトエタノールの末端に由来する共鳴線が観察された。共重合体Eの元素分析結果と標準ポリスチレン換算の数平均分子量から算出される可溶性多官能ビニル芳香族重合体の2−メルカプトエタノール由来の末端構造単位の導入量(c1)は0.64(個/分子)であった。また、ジビニルベンゼン由来の構造単位を2.1モル%及びスチレンとエチルビニルベンゼン由来の構造単位を合計97.9モル%含有していた(末端構造単位を除く)。共重合体E中に含まれるビニル基含有量は、0.1モル%であった(末端構造単位を除く)。
共重合体Eはアセトン、THF、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。
【0086】
実施例1
ディーンスターク管、冷却管、温度計及び攪拌棒を備えた1L容量3ツ口フラスコにトルエン200mL、メタンスルホン酸10g(0.104モル)、メトキシハイドロキノン3.0g、合成例1で合成された共重合体A100g、メタクリル酸172.2g(2.0モル)を仕込み、400mmHgの減圧下、攪拌しながら、110℃まで昇温し、5時間反応させた。
反応終了後、反応液を室温に冷却し、酸価の0.9倍量の20%水酸化ナトリウム水溶液で2回中和した後に、5%硫安水溶液100質量部で2回洗浄した。次いで減圧下、80℃でトルエンを留去した。
このときガスクロマトグラフィーで反応に用いたトルエン残量を調べたところ全く検出されなかった。得られた共重合体Bの重量は124gであった。
【0087】
得られた生成物は、13C‐NMR及び1H‐NMR分析による帰属の結果、式(8)のチオエーテル構造を有するメタアクリレート末端基を有する共重合体Bが得られていることが同定された。
【0088】
得られた共重合体BのMnは1250、Mwは3280、Mw/Mnは2.62であった。共重合体Bの元素分析結果と標準ポリスチレン換算の数平均分子量から算出される可溶性多官能ビニル芳香族重合体のチオエーテル構造を有するメタアクリレート末端基の導入量(c1)は2.3(個/分子)であった。
また、硬化物のTMA測定の結果、明確なTgは観察されなかった、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、300℃における重量減少は0.09wt%、耐熱変色性は○であった。一方、相溶性はPETA:○、TMPTA:○であった。
共重合体Bはアセトン、THF、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。
【0089】
実施例2
温度計、滴下ロート及び攪拌棒を取り付けた2Lフラスコに、合成例1で合成された共重合体A100g、重合防止剤であるジtertブチル−ヒドロキシトルエン(BHT)0.2g、トルエン150g、シクロヘキサン400g及びテトラブチルアンモニウムブロマイド8gを加え、氷浴で冷却しながら攪拌した。
全ての成分が均一に溶解したところで、25%水酸化カリウム水溶液300gをフラスコ内が10℃を越えないように時間をかけて滴下した。ついで、内温が0〜5℃になったところで、トルエン75gに溶解させた100gのアクリル酸クロライドを1時間かけて滴下した。滴下終了後、5℃にてさらに1時間反応させた。
反応終了後、水酸化カリウム水溶液を取り除き、反応液の1/6重量の水で洗浄した。ついで、20%硫酸水素ナトリウム水溶液60gで2回洗浄した。次いで減圧下、80℃でトルエンおよびシクロヘキサンを留去した。
このときガスクロマトグラフィーで反応に用いたトルエン残量を調べたところ全く検出されなかった。得られた共重合体Cの重量は132gであった。
【0090】
得られた生成物は、13C‐NMR及び1H‐NMR分析による帰属の結果、式(8)のチオエーテル構造を有するメタアクリレート末端基を有する共重合体Cが得られていることが同定された。
【0091】
得られた共重合体CのMnは1270、Mwは3440、Mw/Mnは2.71であった。共重合体Cの元素分析結果と標準ポリスチレン換算の数平均分子量から算出される可溶性多官能ビニル芳香族重合体のチオエーテル構造を有するメタアクリレート末端基の導入量(c1)は2.4(個/分子)であった。
また、硬化物のTMA測定の結果、明確なTgは観察されなかった、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、300℃における重量減少は0.07wt%、耐熱変色性は○であった。一方、相溶性はPETA:○、TMPTA:○であった。
共重合体Cはアセトン、THF、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。
【0092】
比較例1
ジビニルベンゼン1.152モル(164.2mL)、エチルビニルベンゼン0.048モル(6.8mL)、スチレン1.20モル(137.5mL)、2−フェノキシエチルメタクリレート1.80モル(341.83mL)、酢酸ブチル8.0mL、トルエン792mLを2.0Lの反応器内に投入し、50℃で200ミリモルの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、6.5時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体D 339.8gを得た。
【0093】
得られた共重合体DのMnは1990、Mwは8580、Mw/Mnは4.32であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、共重合体Dは2−フェノキシエチルメタクリレートの末端に由来する共鳴線が観察された。共重合体Dの元素分析結果と標準ポリスチレン換算の数平均分子量から算出される可溶性多官能ビニル芳香族重合体の2−フェノキシエチルメタクリレート由来の構造単位の導入量(c1)は3.5(個/分子)であった。また、ジビニルベンゼン由来の構造単位を58.4モル%及びスチレンとエチルベンゼン由来の構造単位を合計41.6モル%含有していた。共重合体D中に含まれるビニル基含有量は、9.9モル%であった。
また、TMA測定の結果、明確なTgは観察されなかった、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、300℃における重量減少は0.13wt%、耐熱変色性は○であった。一方、相溶性はPETA:○、TMPTA:○であった。
共重合体Dはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。
【0094】
比較例2
ディーンスターク管、冷却管、温度計及び攪拌棒を備えた1L容量3ツ口フラスコにトルエン200mL、メタンスルホン酸0.5g(0.0052モル)、メトキシハイドロキノン0.15g、合成例1で合成された共重合体E100g、メタクリル酸8.6g(0.10モル)を仕込み、400mmHgの減圧下、攪拌しながら、110℃まで昇温し、5時間反応させた。
反応終了後、反応液を室温に冷却し、酸価の0.9倍量の20%水酸化ナトリウム水溶液で2回中和した後に、5%硫安水溶液100質量部で2回洗浄した。次いで減圧下、80℃でトルエンを留去した。
このときガスクロマトグラフィーで反応に用いたトルエン残量を調べたところ全く検出されなかった。得られた共重合体Fの重量は102gであった。
【0095】
得られた生成物は、13C‐NMR及び1H‐NMR分析による帰属の結果、式(8)のチオエーテル構造を有するメタアクリレート末端基を有する共重合体Fが得られていることが同定された。
【0096】
得られた共重合体FのMnは31400、Mwは89500、Mw/Mnは2.85であった。共重合体Fの元素分析結果と標準ポリスチレン換算の数平均分子量から算出される可溶性多官能ビニル芳香族重合体のチオエーテル構造を有するメタアクリレート末端基の導入量(c1)は0.58(個/分子)であった。
また、硬化物のTMA測定の結果、104℃にTgが観察された。軟化温度は107℃であった。TGA測定の結果、300℃における重量減少は0.26wt%、耐熱変色性は○であった。一方、相溶性はPETA:×、TMPTA:×であった。
共重合体Fはアセトン、THF、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。
【0097】
実施例3〜8及び比較例3〜4
表1及び2に示す成分を配合し(数字は重量部)、本発明の硬化性樹脂組成物を得た。次にこの硬化性樹脂組成物を、レンズ金型の上に膜厚が100〜150μmになるように塗布し、その上に1.5mm厚のプライマー処理を行ったガラス基板を接着させ、さらにその上から高圧水銀ランプで600mJ/cm2の照射量の紫外線を照射して硬化させ球面レンズを得た。樹脂組成物及び得られたそれぞれのレンズ、硬化膜、成形品について、下記の評価試験を行った。それらの結果も併せて表1及び2に示す。
【0098】
(1)粘度
組成物の25℃での粘度を、E型粘度計を用いて測定した。
【0099】
(2)硬化照射量
組成物を硬化するのに用いた高圧水銀ランプからの光を、フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、UV Power Puckで測定し、UVA領域の光量を硬化照射量として求めた。
【0100】
(3)硬化性
本発明の硬化性樹脂組成物を両面に密着性向上処理を施したPETフィルム(東洋紡社製A4300、厚さ188μm)上に塗布した。次いで、概略同サイズの、無処理のPETフィルム(東レ社製ルミラーT60、厚さ250μm)を、処理面を組成物に接するように重ね合わせた。その後、450mW/cm2の高圧水銀ランプにより、照射量が500mJ/cm2となるように数秒間紫外線を照射し、混合液を硬化・賦型した後、保護フィルムを基材である易接着処理PETフィルムから剥離して、硬化性樹脂組成物層(厚さ:12〜17μm)を有するシートを得た。こうして得られた硬化塗膜を有するPETシートの表面を人差し指で触れ、タックの有無から硬化性を判断し、タックが認められないものを硬化性良(○)、タックが認められるものを硬化不良(×)とした。
【0101】
(4)リフロー耐熱性
幅50mm、長さ50mm、厚み2mmの2枚のガラス板の間を0.2mmの隙問を開けて外周をポリエステルテープで巻き固定したガラス金型に、組成物を注入し、このガラス金型の片面から前述の高圧水銀ランプにより、数秒問紫外線を照射して硬化させ、ガラス金型から脱型して。硬化した樹脂板を得た。この樹脂板をイナートオーブン中に入れ、窒素気流下、150℃で1時間、ポストキュアを行った。このポストキュア後の樹脂板をエアオーブン中に入れ、150℃×2分、200℃×2分、250℃×7分、200℃×2分、150℃×2分の熱履歴を与えた後に、樹脂板の分光透過率を測定し、400nmの波長に於ける分光透過率が80%以上のものをリフロー耐熱性良(○)、80%未満のものをリフロー耐熱性不良(×)とした。
【0102】
(5)密着性
本発明の硬化性樹脂組成物を両面に密着性向上処理を施したPETフィルム(東洋紡社製A4300、厚さ188μm)上に塗布した。次いで、概略同サイズの、無処理のPETフィルム(東レ社製ルミラーT60、厚さ250μm)を、処理面を組成物に接するように重ね合わせた。その後、450mW/cm2の高圧水銀ランプにより、照射量が500mJ/cm2となるように数秒間紫外線を照射し、混合液を硬化・賦型した後、保護フィルムを基材である易接着処理PETフィルムから剥離して、硬化性樹脂組成物層(厚さ:12〜17μm)を有するシートを得た。こうして得られた硬化塗膜を有するPETシートの塗膜面側に、カミソリで基材フィルムに達する傷を2.0mmの問隔で縦、横それぞれ11本入れ、100個のます目を作り、セロハンテープ(幅25mm、ニチバン(株)製)をプリズム面に密着させて急激に剥がした後、剥がれたプリズム層のます目の数で判定し、剥がれが0〜5/100未満のものを良(○)、剥がれが5/100以上のものを不良(×)とした。
【0103】
(6)組成物の離型性
組成物のレンズ金型からの離型作業性、および、離型に伴うプリズムシートの外観形状を判定し、離型作業し易く、離型に伴う外観形状にキズ・ワレ・ハガレなどの外観形状に不良のないものを良(○)、離型作業し難いもの、あるいは、離型に伴う外観形状に不具合を生じたものを不良(×)とした。
【0104】
(7)屈折率の測定
屈折率測定のため、幅50mm、長さ50mm、厚み2mmの2枚のガラス板の間を0.2mmの隙問を開けて外周をポリエステルテープで巻き固定したガラス金型に、組成物を注入し、このガラス金型の片面から前述の高圧水銀ランプにより、数秒問紫外線を照射して硬化させ、ガラス金型から硬化した樹脂板を脱型して、アッベ屈折率計で20℃にてナトリウムD線光源による屈折率を測定した。
【0105】
(8)鉛筆硬度
JIS K 5400に従い、鉛筆引っかき試験機を用いて、上記組成物の塗工フィルムの鉛筆硬度を測定した。即ち、本発明の硬化性樹脂組成物を両面に密着性向上処理を施したPETフィルム(東洋紡社製A4300、厚さ188μm)上に塗布した。次いで、概略同サイズの、無処理のPETフィルム(東レ社製ルミラーT60、厚さ250μm)を、処理面を組成物に接するように重ね合わせた。その後、450mW/cm2の高圧水銀ランプにより、照射量が500mJ/cm2となるように数秒間紫外線を照射し、混合液を硬化・賦型した後、保護フィルムを基材である易接着処理PETフィルムから剥離して、硬化性樹脂組成物層(厚さ:12〜17μm)を有するシートを得た。平坦な塗膜層(厚さ:12〜17μm)を有する易接着処理PETフィルム基材上に、鉛筆を45度の角度で、上から1kgの荷重を掛け5mm程度引っかき、傷の付き具合を確認した。5回測定を行い、5回中2回以上の傷発生が見られた1ランク下の鉛筆硬度を鉛筆硬度試験結果として記載した。
【0106】
(9)Haze(濁り度)及び全光線透過率
0.2mm厚のテストピースを作製し、サンプルのHaze(濁り度)と全光線透過率を、積分球式光線透過率測定装置(日本電色社製、SZ−Σ90)を用い測定した。
【0107】
(10)型再現性
硬化したUV硬化性樹脂層の表面形状と金型の表面形状を観察した。
○ ・・・・再現性良好
× ・・・・再現性が不良
【0108】
(11)吸水率
60℃で24時間真空乾燥したテストサンプルの重さをWoとし、それを±0.1mgまで測定可能な秤で秤量し、23℃の水浴中に完全に浸漬した。24時間後、テストサンプルについた水気をふき取った後、サンプルを±0.1mgまで測定可能な秤で秤量し、Wとした。下記の式で吸水率を算出した。同じテストサンプルを3つ準備し、同様に試験を行った。
Wo/W×100=吸水率
【0109】
表中の記号の説明。
ファンクリルFA−302A;日立化成工業株式会社製、FA−302A(o−フェニルフェノキシエチルアクリレート)
BZA;日立化成工業株式会社製、FA−BZA(ベンジルアクリレート)
ライトアクリレートPO−A:共栄社化学株式会社製、ライトアクリレートPO−A(フェノキシエチルアクリレート)
イルガキュア184;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)
アデカスタブAO−60:株式会社アデカ製、アデカスタブAO−60(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジビニル芳香族化合物(a)、モノビニル芳香族化合物(b)を含む共重合体であって、その共重合体の末端に下記式(1)
【化1】

(ここで、R1は酸素原子及び硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜18の炭化水素基であり、R2は水素原子又はメチル基であり、Xは酸素原子又は硫黄原子を表す)
で表されるチオ(メタ)アクリレート末端を有し、数平均分子量Mnが500〜10,000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表される分子量分布(Mw/Mn)が50.0以下であり、上記末端基の導入量(c1)が下記式(2)
(c1)≧1.0(個/分子) (2)
を満足し、共重合体中のジビニル芳香族化合物由来の構造単位のモル分率(A)及びモノビニル芳香族化合物由来の構造単位のモル分率(B)が下記式(3)
0.05<(A)/{(A)+(B)}<0.96 (3)
を満足し、上記末端基のモル分率(C)が下記式(4)
0.01<(C)/{(A)+(B)}<2.0 (4)
を満足し、かつ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、エタノール又はイソプロパノールに可溶であることを特徴とする可溶性多官能ビニル芳香族共重合体。
【請求項2】
下記式(5)
【化2】

(ここで、R1は酸素原子及び硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜18の炭化水素基であり、Xは酸素原子又は硫黄原子を表す)
で表されるチオール化合物由来の末端基を有する多官能ビニル芳香族共重合体と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸ハライドをエステル化反応させることを特徴する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体に、(メタ)アクリレート系化合物を配合したことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
ラジカル重合開始剤を含有する請求項3に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物からなる光学レンズ・プリズム。
【請求項7】
請求項5に記載の硬化物の層を有するフィルム。

【公開番号】特開2010−209279(P2010−209279A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59436(P2009−59436)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】