説明

本質的にα−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体を含有する、易流動性でかつ貯蔵安定性の固体の製造法

α−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体の粉末から出発し、a.α−アラニン−N,N−二酢酸の粉末をローラープレスで圧縮してスラグを取得し、b.前記のスラグを破砕し、かつc.前記の破砕されたスラグを篩分けすることによって、本質的にα−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体を含有する、易流動性でかつ貯蔵安定性の固体を製造するための方法において、ローラープレスでの圧縮を、35℃を上回る融点を有するポリエチレングリコールを添加して行うことを特徴とする方法を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本質的にα−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体を含有する、易流動性でかつ貯蔵安定性の固体の製造法、及び、前記方法により製造された固体の使用に関する。
【0002】
α−アラニン−N,N−二酢酸及びその誘導体は、皿類洗浄用の洗剤組成物におけるアルカリ土類金属及び重金属イオンのための生分解性錯化剤として、BASF AG社のTrilon(R) Mの商標で公知であり、かつ、例えばEP−A 0 781 762に記載されている。
【0003】
α−アラニン−N,N−二酢酸は、相応する反応混合物の噴霧乾燥により製造され、かつこの場合、アモルファスでかつ極端に吸湿性の高い粉末として得られ、該粉末それ自体は、その吸湿性のために、他の成分、特に酵素、ペルオキシド、ソーダ等との混合及び前記混合物の圧縮によるタブレット化による食器洗浄機用タブレットの製造への使用には、直接には好適ではない。
【0004】
従って、製造プロセスにおいて粉末形で生じるα−アラニン−N,N−二酢酸を、食器洗浄機用タブレットの製造のための上記プロセスにおける使用に好適である形に変換することのできる解決法が求められてきた。
【0005】
EP−A 0 845 456の方法によれば、α−アラニン−N,N−二酢酸粉末は、粉末と造粒液との混合、乾燥、及び篩分けによるビルドアップ造粒によって、顆粒、即ち、粒状でかつ容易に流し込みが可能である固体の形へと変換され、前記固体は、結晶形で存在し、かつBASF AG社のTrilon(R) M顆粒として公知である。しかしながらこの場合、Trilon(R) M顆粒を引き続き後加工して食器洗浄機用タブレットにする際に、プレス型上で相当のケーキングが生じることが問題である。
【0006】
関連性はまだ完全に明らかにされてはいないが、プレス型の接着は、圧縮の際に顆粒が変化し、その際顆粒が粉砕されることにより生じるものと想定される。
【0007】
例えば洗濯用洗剤の製造においても、バルク材料をローラーコンパクターで圧縮できることは公知である(Martin Holl著;Chemie, Anlagen und Verfahren, 08/2001版参照)。この場合、原料は、しばしばスクリューコンベヤを有する充填ホッパーを介して、ローラー対の2つのローラー間のローラーギャプに供給され、前記ローラーギャップにおいて加圧下に圧縮されてスラグが形成され、該スラグは粉砕装置中で粉砕されて所望のサイズの顆粒にされ、引き続き篩分けされる。
【0008】
しかしながら、α−アラニン−N,N−二酢酸粉末は、他の添加剤なしには、十分な圧縮が不可能である。
【0009】
ポリエチレングリコールはBASF AG社のPluriol(R) E商標として公知であり、かつ、例えば、清浄化剤−及び食器用洗剤タブレットにおけるコンシステンシー調節剤及びバインダーとして使用される(Pluriol(R) E商標、BASF AG社の技術情報、2005年5月)。
【0010】
本発明の課題は、上記の欠点を有しない、他の添加剤との混合による食器洗浄機用タブレットの製造に使用可能な、本質的にα−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体を含有する、易流動性でかつ貯蔵安定性の固体の製造法を提供することであった。
【0011】
それに応じて、α−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体の粉末から出発し、
a.α−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体の粉末をローラープレスで圧縮してスラグを取得し、
b.前記のスラグを破砕し、かつ
c.前記の破砕されたスラグを篩分けする
ことによって、本質的にα−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体を含有する、易流動性でかつ貯蔵安定性の固体を製造するための方法において、ローラープレスでの圧縮を、35℃を上回る融点を有するポリエチレングリコールを添加して行うことを特徴とする方法が見出された。
【0012】
前記方法は、α−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体の粉末から出発し、前記粉末はローラープレス中で、前記ローラープレスのローラーギャップにおいて加圧下に圧縮される。ローラーギャップへの進入は、通常バルク材ホッパーを介して行われ、その際、バルク材ホッパー中にはしばしばスクリューコンベヤが配置されている。
【0013】
ローラーギャップから、スラグ、即ち、多少なりともストリップ状の中間体が得られるが、ここで該中間体は、ローラー圧縮の際に出発材料のプレスにより生じ、かつ引き続き、粉砕装置において粉砕され、かつ篩分けされる。
【0014】
本発明によれば、35℃を上回る融点を有するポリエチレングリコールが、α−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体の粉末と一緒に、ローラープレスに供給される。35℃を上回る融点を有するポリエチレングリコール種への限定は、ポリエチレングリコールが圧縮プロセスにおいて液化しないことを保証するために必要である。
【0015】
40℃を上回る融点を有するポリエチレングリコールの使用が有利である。
【0016】
相応して、BASF AG社のPluriol(R)の商標で公知であるポリエチレングリコール種、Pluriol(R) E 1500、Pluriol(R) E 4000粉末又はPluriol(R) E 6000粉末が、特に有利に使用される。
【0017】
α−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体からなる粉末とポリエチレングリコール粉末との混合比は、有利に、ポリエチレングリコールの添加が、α−アラニン−N,N−二酢酸粉末及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体及びポリエチレングリコール粉末からの全質量に対して、2〜20質量%となるように選択される。更に有利に、ポリエチレングリコールの添加は、α−アラニン−N,N−二酢酸粉末及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体及びポリエチレングリコール粉末からの全質量に対して5〜15質量%となるように選択される。特に有利に、ポリエチレングリコールの添加は、α−アラニン−N,N−二酢酸粉末及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体及びポリエチレングリコール粉末からの全質量に対して7質量%である。
【0018】
ローラープレスでの圧縮は、有利に、ローラー幅及びローラー直径に対して、2〜10N/mm×mmのプレス圧下に行われる。
【0019】
他の添加剤、特に酵素、ペルオキシド及びソーダと混合し、かつ引き続きタブレット化することによって食器洗浄機用タブレットを製造するための、上記方法により製造された易流動性でかつ貯蔵安定性の固体の使用も、本発明の対象である。
【0020】
従って、食器洗浄機用タブレットを製造するための用途に応じた適用のための、前記方法特有の助剤を使用して、α−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はその1以上の誘導体からの粉末の圧縮性を改善し、かつ同時にその吸湿性を低下させる方法が見出された。
【0021】
以下に、本発明を図及び実施例をもとに詳説する。
【0022】
唯一の図である図1は、2つの逆転ローラー2と、該図に示されている例示的な実施態様ではバルク材ホッパー3を介した圧縮すべき粉末のフィードとを備えたローラープレス1の概略図を示し、これによりスラグが形成され、該スラグは、粉砕装置4中で所望のサイズに粉砕され、かつ篩分け装置5中で篩分けされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】2つの逆転ローラー2と、圧縮すべき粉末のフィードとを備えたローラープレス1を示す概略図。
【実施例】
【0024】
実施例:
Hosokawa Bepex社製Laborkompaktor(R) L200/50中で、BASF AG社のTrilon(R) MX(α−アラニン−N,N−二酢酸)を圧縮し、スラグを得た。前記スラグを粉砕し、引き続き篩分けした。
【0025】
Trilon(R) MXの他に、種々の重合度を有し、かつそれに応じて種々の融点を有するポリエチレングリコール、特に、4000の平均分子量を有するBASF AG社の商標Pluriol(R)のポリエチレングリコール種(Pluriol(R) E 4000)又は6000の平均分子量を有するBASF AG社の商標Pluriol(R)のポリエチレングリコール種(Pluriol(R) E 6000)を使用した。
【0026】
Laborkompaktor(R) L200/50は6mmの微細プロフィールを有するローラーを備えており、これを7.5rpmの回転数で運転した。ローラ上でのプレス圧は、ローラー幅及びローラー直径に対して、約8〜10N/mm×mmであった。
【0027】
得られたスラグを粉砕し、かつ篩分け装置中で、0.25mmの篩サイズを有する第一の画分と、0.355〜1.25mmの篩サイズを有する中級画分と、0.355mm未満の篩サイズを有する第三の画分の3つの篩画分に篩分けした。
【0028】
比較試験:
Trilon(R) MXを、比較のために、ポリエチレングリコールの添加なしに圧縮した:ここで生成物を取得したが、該生成物は、後続の、食器用洗剤用タブレットの製造のための圧縮によるタブレット化の処理において、プレス型の接着を招いた。
【0029】
もう1つの比較試験において、Trilon(R) MXを、BASF AG社のPluriol(R) E 4000 20質量%と一緒に圧縮した:この場合、生成物の温度は圧縮の際に強度に上昇したため、粉砕による該生成物の細砕は、冷却後になってようやく可能であった。
【0030】
もう1つの比較試験において、より高い平均分子量6000を有するポリエチレングリコール、特にBASF AG社のPluriol(R) E 6000を使用した。得られた生成物は確かに、方法技術的に、食器洗浄機用タブレットの製造のための後続の処理における使用に好適ではあるが、しかしながら高い分子量に基づき、最終的な適用においては不適当である。
【0031】
本発明による実施例において、Trilon(R) MXを、Trilon(R) MXとPluriol(R) E 4000とからの全質量に対して7質量%のBASF AG社のPluriol(R) E 4000と一緒に、上記のLaborkompaktor(R) L200/50上で圧縮した。スラグを破砕し、上記の3つの篩画分に篩分けした後、以下の篩画分を有する顆粒が得られた:1.25mmの篩サイズを有する篩画分20.81%、0.355〜1.25mmの篩サイズを有する篩画分38.81%、及び0.355mm未満の篩サイズを有する篩画分40.38%。
【0032】
得られた顆粒を、問題なく、添加物との混合後に圧縮し、食器洗浄機用タブレットにすることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体の粉末から出発し、
a.α−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体の粉末をローラープレスで圧縮してスラグを取得し、
b.前記のスラグを破砕し、かつ
c.前記の破砕されたスラグを篩分けする
ことによって、本質的にα−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体を含有する、易流動性でかつ貯蔵安定性の固体を製造するための方法において、ローラープレスでの圧縮を、35℃を上回る融点を有するポリエチレングリコールを添加して行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
ローラープレスでの圧縮を、40℃を上回る融点を有するポリエチレングリコールを添加して行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ローラープレスでの圧縮のためのポリエチレングリコールの添加が、ローラープレスでの圧縮に供給されたα−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体からなる粉末及びポリエチレングリコールの全質量に対して2〜20質量%である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ローラープレスでの圧縮のためのポリエチレングリコールの添加が、ローラープレスでの圧縮に供給されたα−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体からなる粉末及びポリエチレングリコールの全質量に対して5〜15質量%である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ローラープレスでの圧縮のためのポリエチレングリコールの添加が、ローラープレスでの圧縮に供給されたα−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体からなる粉末及びポリエチレングリコールの全質量に対して7質量%である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ローラープレスでの圧縮を、ローラー幅及びローラー直径に対して、2〜10N/mm×mmのローラ上でのプレス圧で行う、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
他の添加剤と混合し、かつ圧縮してタブレットにすることによって食器洗浄機用タブレットを製造するための、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法により製造された、本質的にα−アラニン−N,N−二酢酸及び/又はα−アラニン−N,N−二酢酸の1以上の誘導体を含有する、易流動性でかつ貯蔵安定性の固体の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−531847(P2010−531847A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513956(P2010−513956)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058377
【国際公開番号】WO2009/003979
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】