説明

材料試験機

【課題】 接合部材に対する掴み具の取り付け位置の再現性が良く、掴み具を取り外した後に再度取り付けても、上下の掴み具の軸心の一致がくずれることのない材料試験機を提供する。
【解決手段】 掴み具1に軸11を一体に形成してその根元部に雄ねじ11aを刻設してロックナット2をねじ込み、負荷部材(テーブル)3には軸11が嵌まり込む孔41が形成された接合部材4を固着し、軸11および接合部材4に形成された横孔11へね42にピン6を挿入した状態でロックナット2を締めつけることにより、ピン6と各横孔11b,42間のガタを解消して一体化する接合構造を採用するとともに、接合部材4には、その孔41内部にボール7cが臨むように1個または複数個のボールプランジャ7を固着することにより、ボールプランジャ7によって軸11を押圧して孔41ないの所定位置に位置決めして、常に接合部材4に対して一定の位置関係のもとに掴み具1を接合することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は材料試験機に関し、更に詳しくは、負荷機構に取り付けられた一対の掴み具により試験片の両端部を把持した状態で負荷を加える材料試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の引張試験等を行う材料試験機においては、一般に、相対的に接近/離隔するように変位が与えられる一対の負荷部材を備えた負荷機構を有し、その各負荷部材にそれぞれ取り付けられた掴み具により試験片Wの両端部を把持した状態で負荷機構を駆動することにより、試験片に負荷を加える。
【0003】
このような材料試験機の要部構成の例を図5に示す。この例では、テーブル71上に2本のねじ棹72a,72bを回転自在に配置し、その各ねじ棹72a,72bにクロスヘッド73の両端部をナット(図示せず)を介して支持し、各ねじ棹72a,72bを駆動装置74によって回転駆動することにより、クロスヘッド73がテーブル71に対して接近/離隔するように構成されており、テーブル71とクロスヘッド73が上記した負荷部材に相当する。そして、テーブル71およびクロスヘッド73には、それぞれ掴み具75a,75bが取り付けられており、これらの掴み具75a,75bに試験片Wの両端部を把持した状態で、クロスヘッド73を例えば上昇させることによって、試験片Wに引張荷重が加えられる(例えば特許文献1参照)。なお、上側の掴み具75bについては、クロスヘッド73に直接取り付けられるのではなく、図示のようにクロスヘッド73に固定されたロードセル76に取り付けられることが多い。
【0004】
このような材料試験機において、掴み具75a,75bとテーブル71ないしはクロスヘッド73(ロードセル76)との接続構造については、図6に下側の掴み具75aとテーブル71との接続構造を例にとって要部断面図で示すような構造とされる。すなわち、掴み具75aに軸81を形成または挿入してその根元部には雄ねじ81aを刻設するとともに、テーブル71には、軸81が嵌まり込む孔82aが形成された接続部材82を固定し、その接続部材82の孔82aに軸81を嵌め込んだ状態で、軸81および接続部材82に形成された横孔81bおよび82bに共通のピン83を挿入し、その状態で雄ねじ81aにねじ込まれたロックナット84を図中下向きに締めつけていくことにより、軸81を図中上向きに引き上げる。これにより、ピン83と横孔81b,82bとのガタを解消して掴み具75aと接続部材82とを一体化している。このような接続構造により、掴み具75aに作用する試験力をピン83が負担するようになっている。
【0005】
なお、上側の掴み具75bとロードセル76との接続構造についても、基本的には上記と同等であり、図6の構造からロックナット84による締めつけをなくした構造が採られることが多い。
【特許文献1】特開2002−250682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、材料試験機においては、上下の掴み具の軸心が揃っていることが、正確な試験を行ううえで非常に重要である。これらの軸心がずれていると、例えば引張試験中に試験片に曲げ応力が作用し、正確な引張試験結果を得ることができない。
【0007】
図6に示した従来の構造においては、接続部材82のテーブル71に対する位置を調節することによって、下側の掴み具75aの軸心を上側の掴み具75bの軸心に合わせることができるようになっている。
【0008】
しかしながら、掴み具75aを外して別の掴み具を使用し、その後、元の掴み具75aに戻すなど、掴み具75aを接合部材82から一旦取り外すと、軸81と孔82aとの間に隙間があるため、軸心の一致が再現せず、再び軸心が一致するように接合部材82の位置を調節する必要があるという問題がある。
【0009】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、接合部材に対する掴み具の取り付け位置の再現性が良く、掴み具を取り外した後に再度取り付けても、上下の掴み具の軸心の一致がくずれることのない材料試験機の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の材料試験機は、相対的に接近/離隔するように変位が与えられる一対の負荷部材を備えた負荷機構を有し、その各負荷部材にそれぞれ掴み具を取り付け、その各掴み具により試験片の両端部を把持した状態で上記負荷機構を駆動することにより試験片に負荷を与える材料試験機において、上記各負荷部材のうち少なくとも一方の負荷部材と掴み具との接続構造が、掴み具に軸が形成または挿入されその根元部に雄ねじが刻設されているとともに、負荷部材側にはその軸が嵌まり込む孔を備えた接続部材が固着され、その孔に上記軸が嵌まり込んだ状態で当該軸および接続部材にそれぞれ形成されている横孔に共通のピンが差し込まれ、そのピンと各横孔のガタが、上記雄ねじにロックナットが締めつけられることによって解消されて上記掴み具と接続部材が一体化されるとともに、上記接合部材には、上記孔内部にボールが臨むように1個または複数個のボールプランジャが固着されていることによって特徴づけられる(請求項1)。
【0011】
ここで、本発明においては、上記ボールプランジャが、上記孔の軸線に直交する同一平面上に、互いに一周を等分する位置に3個以上設けられている構成(請求項2)を好適に採用することができる。
【0012】
また、本発明においては、上記ボールプランジャが、上記孔の軸線に直交する同一平面上に、周方向に偏った位置に1個または複数個設けられている構成(請求項3)を採用することもできる。
【0013】
そして、本発明においては、請求項1,2または3に記載の材料試験機において、上記ボールプランジャが、上記孔および軸に直交する複数の平面のそれぞれに設けられている構成(請求項4)を採用することもできる。
【0014】
本発明は、掴み具の軸が挿入される孔が形成された接続部材に、孔内にボールが臨むようにボールプランジャを取り付け、孔内において軸をその中心もしくは一定の方向に押しつけることにより、孔と軸との隙間が存在していても軸を孔に対して常に径方向一定位置に位置決めすることで、課題を解決しようとするものである。
【0015】
請求項2に係る発明においては、孔の軸線に直交する同一平面内に3個以上のボールプランジャを一周を等分する位置に配置することにより、軸を孔の中心に位置決めすることができ、また、請求項3に係る発明においては、孔の軸線に直交する同一平面上に1個または複数個のボールプランジャを周方向に偏った位置に配置することにより、軸を孔の内周面の1箇所に押しつけて位置決めすることができる。このように掴み具の軸が接合部材の孔内に常に一定の位置に位置決めされることにより、掴み具を着脱しても接合部材との位置関係が常に一定となる。
【0016】
また、請求項4に係る発明は、このようなボールプランジャによる軸の径方向への位置決めを、軸方向複数箇所において行うものであって、モーメントに対して抵抗力の強い位置決めを行うことができ、孔に対する軸の倒れが生じることを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、負荷機構の負荷部材に接合部材を介して接合される掴み具を、接合部材に接合する際に、常に一定の位置関係のもとに接合されることになり、上下の掴み具の軸心を一致させるべく一旦接合部材の位置を調節した後には、同じ掴み具を取り外して再度取り付けても、上下の掴み具の軸心がずれることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明を下側の掴み具に適用した実施の形態の要部構成を示す縦断面図であり、図2はそのA−A断面図である。なお、図1は図2におけるB−B断面に相当している。
【0019】
掴み具1には、軸11が突出形成または挿入されており、この軸11の根元部に雄ねじ11aが刻設されている。また、この軸11にはその軸線に直交する方向に貫通する横孔11bが形成されているとともに、雄ねじ11aには、後述するロックナット2がねじ込まれている。
【0020】
テーブル3には、掴み具1の軸11が嵌まり込む孔41が形成された接合部材4がボルト5によって固定されている。この接合部材4にも、孔41の軸線に直交する方向に貫通する横孔42が形成されている。この接合部材4の横孔42と、軸11の横孔11bには、これらを貫通するように1本のピン6が挿入されている。
【0021】
そして、接合部材4には、孔41に直交する平面上で、孔41の一周を三等分する位置に、つまり周方向に120°間隔で、それぞれボールプランジャ7が孔の中心を向くように固定されている。ボールプランジャ7は、外周面に雄ねじが形成されたプランジャ本体7a内に、その軸方向に沿って圧縮コイルバネ7bが設けられ、この圧縮コイルバネ7bによって先端部のボール7cをプランジャ本体7aから外側に向けて押圧するように構成された公知のものであって、接合部材4に形成されている雌ねじにねじ込まれた状態でナット7dにより締結固定されており、その固定状態においてそれぞれのボール7cが孔41内に若干量だけ突出している。この各ボールプランジャ7のボール7cの孔41内への突出量は互いにほぼ等しく設定されている。
【0022】
この例においては、前記した軸11の外周面には、各ボールプランジャ7の配設位置に対応して、軸11の周囲を三等分する位置に、それぞれ断面円弧状の溝11cが形成されており、各ボールプランジャ7のボール7cはそれぞれ溝11c内に嵌まり込むようになっている。
【0023】
さて、掴み具1を接合部4に接合するには、掴み具1の軸11を接合部材4の孔41に嵌め込み、その状態で軸11の横孔11bおよび接合部材4の横孔42を通じてピン6を挿入する。その状態においてロックナット2を雄ねじ11aに下向きにねじ込んでいく。ロックナット2が接合部材4の上面に接した後には、軸11が上方に引き抜かれて横孔11bを貫通しているピン6を持ち上げる。これにより、ピン6は軸11の横孔11bの下面に押しつけられ、かつ、接合部材4の横孔42の上面に押しつけられた図1に示す状態となり、ピン6と横穴11b,42の間の型が解消され、掴み具1と接合部材4、従ってテーブル3とが一体化される。
【0024】
以上の接合動作において、軸11を接合部材4の孔41に挿入する際、孔42内に3つのボールプランジャ7のボール7cが突出しているため、軸1はこれらのボール7cをプランジャ本体7a内に押し込みながら孔41内に挿入されることになる。各ボールプランジャ7内に設けられている圧縮コイルバネ7bは、ボール7cが押し込まれた量に比例した力で軸11を押し返す。つまり、軸11は、各ボールプランジャ7により、孔41の一周を三等分する三方向から孔41の中心に向く均等な力が付与される。従って軸11は、孔41に挿入した際に、これらの間間に隙間が存在していても、常に孔41の中心に位置決めされることになる。この状態でロックナット2を締めつけることにより、掴み具1はその軸11が接合部4の孔41に対して常にセンタリングされた状態で接合部材4に対して接合されることになる。
【0025】
以上の本発明の実施の形態によると、掴み具1は常に接合部材4に対して一定の位置関係のもとに取り付けられるため、接合部材4のテーブル3に対する位置を調節して上下の掴み具の軸心を合わせた後には、下側の掴み具1を取り外して再度取り付けても、上下の掴み具の軸心がずれることがない。
【0026】
ここで、以上の実施の形態においては、軸11の外周面にボールプランジャ7のボール7cが嵌まり込む溝11cを形成したが、この溝11cはボールプランジャ7による軸11の押圧方向を正確なものとするためのものであり、必ずしも設ける必要はない。
【0027】
また、以上の実施の形態においては、孔41の軸線に直交する一つの平面上に、孔41の一周を三等分する位置にそれぞれボールプランジャ7を設けた例を示したが、図3に要部縦断面図を示すように、孔41の軸線に直交する複数の平面上に、それぞれ上記の実施の形態と同様の位置関係のもとに3個ずつボールプランジャ7を設けた構成を採用することができる。この図3の例によると、軸11はその軸方向に2箇所においてそれぞれ孔41に対してセンタリングされた状態となり、モーメントに対して抵抗力が強く、軸11が孔41に対して倒れることなくセンタリングされるという利点がある。
【0028】
また、以上の各実施の形態においては、孔41の一周を三等分する位置にそれぞれボールプランジャ7を設けて軸11を孔41に対してセンタリングする例を示したが、より多くのボールプランジャを孔41の周囲に等配して軸11をセンタリングしてもよく、更に、特に軸11を孔41に対してセンタリングしなければならないことはなく、要は軸11を常に孔41に対して一定の位置に位置決めすればよいのであって、孔41の内周面に所定位置に軸11を押しつけて位置決めしてもよい。その例を図4に横断面図で示す。この例においては、孔41に対してその周方向に互いに90°の間隔をあけて2個のボールプランジャ7を配置し、それぞれ孔41の中心を向くように固定している。このような配置によれば、軸11は2個のボールプランジャ7の間の中心線を通る向きに押圧され、その中心線上の孔41の内周面、つまり図中矢印で示す位置に押しつけられて位置決めされることになる。このような位置決めであっても、その位置決め状態において上下の掴み具の軸心を合わせておけば、先の各例と同様に、掴み具1を取り外した後に再度取り付けても、上下の掴み具の軸心がずれることがない。なお、この例においても、軸方向複数箇所においてセンタリングしてもよい。更に、孔41の一定の内周面に軸11を押しつけて位置決めする方式を採用する場合には、ボールプランジャ7は1個であってもよい。
【0029】
なお、以上の各実施の形態においては下側の掴み具に本発明を適用した例を示したが、材料試験機の形態等によっては、上側の掴み具にのみ本発明を適用し、あるいは上下方向の掴み具に本発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を下側の掴み具に適用した実施の形態の要部構成を示す縦断面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態の要部構成を示す縦断面図である。
【図4】本発明の更に他の実施の形態の要部構成示す横断面図である。
【図5】材料試験機の要部構成の例の説明図である。
【図6】従来の材料試験機における掴み具と負荷部材との接合構造の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 掴み具
11 軸
11a 雄ねじ
11b 横孔
2 ロックナット
3 テーブル
4 接合部材
41 孔
42 横孔
6 ピン
7 ボールプランジャ
7a プランジャ本体
7b 圧縮コイルバネ
7c ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に接近/離隔するように変位が与えられる一対の負荷部材を備えた負荷機構を有し、その各負荷部材にそれぞれ掴み具を取り付け、その各掴み具により試験片の両端部を把持した状態で上記負荷機構を駆動することにより試験片に負荷を与える材料試験機において、
上記各負荷部材のうち少なくとも一方の負荷部材と掴み具との接続構造が、掴み具に軸が形成または挿入されその根元部に雄ねじが刻設されているとともに、負荷部材側にはその軸が嵌まり込む孔を備えた接続部材が固着され、その孔に上記軸が嵌まり込んだ状態で当該軸および接続部材にそれぞれ形成されている横孔に共通のピンが差し込まれ、そのピンと各横孔のガタが、上記雄ねじにロックナットが締めつけられることによって解消されて上記掴み具と接続部材が一体化されるとともに、
上記接合部材には、上記孔内部にボールが臨むように1個または複数個のボールプランジャが固着されていることを特徴とする材料試験機。
【請求項2】
上記ボールプランジャが上記孔の軸線に直交する同一平面上に、互いに一周を等分する位置に3個以上設けられていることを特徴とする請求項1に記載の材料試験機。
【請求項3】
上記ボールプランジャが、上記孔の軸線に直交する同一平面上に、周方向に偏った位置に1個または複数個設けられていることを特徴とする請求項1に記載の材料試験機。
【請求項4】
請求項1,2または3に記載の材料試験機において、上記ボールプランジャが、上記孔および軸に直交する複数の平面のそれぞれに設けられていることを特徴とする材料試験機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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