説明

材料試験機

【課題】 オペレータの軸心調整時の誤操作を防止するとともに、軸心調整操作を容易に行うことが可能な材料試験機を提供する。
【解決手段】 制御部64は、オペレータに対して提供する軸心調整に必要な情報をディスプレイに表示するための表示制御部65と、記憶部74とを備える。そして、表示制御部65には、複数の調整ネジによる軸心調整方向と対応する方向を座標軸とする座標図に、試験片の高さごとの軸心位置を位置マークとして表示する位置表示部71と、位置マークの座標図上の位置に基づいて選択された、オペレータが行うべき軸心調整操作を案内する案内表示部72と、案内表示部72により表示された軸心調整操作が実行されるならば位置表示部71により表示された位置マークの動く方向を、案内表示部72により表示される軸心調整操作と連動させて、位置マークに付加して表示する方向表示部73と、が備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試験片を把持するつかみ具の軸心を調整するための軸心調整装置を備える材料試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
このような材料試験機は、上つかみ具および下つかみ具によりその両端を把持した試験片に対して負荷を与えながら、ロードセルと変位検出器によりそのときの試験力と変位とを測定することにより、試験片の試験力−変位特性や、S−N線図を求める構成となっている。このような材料試験機においては、上つかみ具と下つかみ具との軸心が整合していないと、正確な材料試験を実行することができない。このため、このような材料試験機においては、上つかみ具と下つかみ具との軸心を調整するための軸心調整装置が配設されている。
【0003】
また、このような軸心調整の操作を容易化するため、例えば、試験片に取り付けた複数の歪みゲージの検出値に基づいて試験片の軸心の偏心率を演算した結果を表示手段に図形表示する材料試験機が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−31033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、オペレータが軸心調整を行う場合には、現在の軸心のずれの程度を的確に把握し、その状況に応じた調整操作を確実に実行する必要がある。特に、繰返し回数が10以下の低サイクル疲労試験と呼ばれる材料試験では、上つかみ具と下つかみ具との軸心のずれが試験データの精度や信頼性に及ぼす影響が大きくなるため、精度の高い軸心調整が要求される。このため、このような精度の高い軸心調整は、オペレータにとって精度を出すために比較的長い時間が費やされる困難な作業となっている。
【0006】
また、軸心を調整するための軸心調整装置には、複数の軸心調整用のネジが配設されている。オペレータは、モニタ等に表示された軸心調整に関する情報を見ながら、これらのネジを締めたり緩めたりすることで軸心調整を行っている。ところが、従来のこれらモニタ等に表示される内容としては、例えば、試験片の歪みゲージ取り付け高さにおける現在の軸心位置等を図形表示する程度のもので、どのネジをどのように調整すると、軸心がどの方向に動くのかなどを、オペレータに伝えることが出来るものではなかった。このため、オペレータが操作したネジが、操作すべきネジと違っていた場合や、オペレータがネジを締めるべきところを逆に緩めてしまったなどの間違った操作を行った場合に、その間違いに気づくのが遅れる傾向にあった。オペレータが、このような間違いに気づくのに遅れると、軸心のずれをより拡大させることになり、さらに軸心調整に長い時間を費やすことにもなっていた。
【0007】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、オペレータの軸心調整時の誤操作を防止するとともに、軸心調整操作を容易に行うことが可能な材料試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、複数の調整ネジを操作することにより、試験片を把持するつかみ具の軸心を調整する軸心調整装置を備えた材料試験機であって、試験片に負荷を加える負荷手段と、試験片の異なる複数の高さごとに貼設される複数の歪みゲージと、前記複数の歪みゲージからの信号を記録する計測手段と、前記計測手段からの信号に基づいて、試験片の歪み方向と歪み量を複数の高さごとに算出する演算手段と、前記演算手段により算出された複数の高さごとの歪み方向と歪み量に基づいて、前記複数の調整ネジによる軸心調整方向と対応する方向を座標軸とする座標図に、試験片の高さごとの軸心位置を位置マークとして表示する位置表示手段と、前記位置マークの座標図上の位置に基づいて選択された、オペレータが行うべき軸心調整操作を案内する案内表示手段と、前記案内表示手段により表示された軸心調整操作が実行されるならば前記位置表示手段により表示された前記位置マークの動く方向を、前記案内表示手段により表示される軸心調整操作と連動させて、前記位置マークに付加して表示する方向表示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記案内表示手段は、前記複数の調整ネジの配置を図形表示するとともに、オペレータが操作すべき調整ネジに対して「緩める」または「締める」を表す図形をさらに表示する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記案内表示手段は、前記軸心調整装置における調整ネジの操作案内メッセージを表示する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記調整ネジは、つかみ具の水平方向の位置を調整するための水平調整ネジと、つかみ具の角度を調整するための角度調整ネジであり、前記案内表示手段は、オペレータが行うべき軸心調整操作が、水平調整ネジの操作である場合には、複数の水平調整ネジの配置を図形表示し、角度調整ネジの操作である場合には、複数の角度調整ネジの配置を図形表示する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、複数の調整ネジによる軸心調整方向と対応する方向を座標軸とする座標図に、試験片の高さごとの軸心位置を位置マークとして表示する位置表示手段と、位置マークの座標図上の位置に基づいて選択された、オペレータが行うべき軸心調整操作を案内する案内表示手段と、案内表示手段により表示された軸心調整操作が実行されるならば前記位置表示手段により表示された前記位置マークの動く方向を、案内表示手段により表示される軸心調整操作と連動させて、位置マークに付加して表示する方向表示手段と、を備えることにより、オペレータは、案内表示手段に示された操作すべき調整ネジとオペレータが実際に操作している調整ネジが一致していることを認識することができ、調整ネジの誤操作を防止することができる。また、オペレータが誤った操作を行ったとしても、方向表示手段により位置マークに付加して表示された位置マークの動く方向と、オペレータの実際の操作により位置マークが動いた方向の違いを容易に把握できることから、オペレータが軸心調整操作の間違いにすぐに気づくことができる。このため、オペレータは、軸心調整操作に無駄な時間を費やすことなく、オペレータは軸心調整操作を容易に行うことができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、案内表示手段は、複数の調整ネジの配置を図形表示するとともに、オペレータが操作すべき調整ネジに対して「緩める」または「締める」を表す図形をさらに表示することから、オペレータは、操作すべき調整ネジの操作間違いに、より容易に気づくことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、案内表示手段は、軸心調整装置における調整ネジの操作案内メッセージを表示することから、オペレータは、操作案内メッセージに従って軸心調整操作の手順を確認しながら、軸心調整操作をより容易に行うことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、案内表示手段は、オペレータが行うべき軸心調整操作が、水平調整ネジの操作である場合には、複数の水平調整ネジの配置を図形表示し、角度調整ネジの操作である場合には、複数の角度調整ネジの配置を図形表示することから、オペレータが、水平調整ネジと角度調整ネジを間違って操作することを防止することがでる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係る材料試験機の概要図である。
【図2】軸心調整装置13の概要図である。
【図3】軸心調整装置13における角度調整用カラー部材134付近の平面概要図である。
【図4】軸心調整装置13における位置調整用カラー部材135付近の平面概要図である。
【図5】テスト用試験片10aの歪みを測定する様子を示す概要図である。
【図6】テスト用試験片10aにおける歪みゲージ61の貼設位置を示す説明図である。
【図7】制御部64を構成する要素のうち、本願発明を実行するための主要部を示すブロック図である。
【図8】軸心のずれとそれに対応する軸心調整装置13の調整操作を示す表示例である。
【図9】軸心のずれとそれに対応する軸心調整装置13の調整操作を示す表示例である。
【図10】位置マークM1、M2の座標図81上の位置関係とオペレータが行うべきネジ操作とを対応付けるテーブルである。
【図11】座標図81における位置マークの表示と、位置マークが動く方向を示す矢印の付加状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る材料試験機の概要図である。
【0018】
この材料試験機は、基台16と、この基台16上に立設された左右一対のねじ棹17と、左右一対のねじ棹17と螺合するナット部を備え、ねじ棹17に対して昇降するクロスヘッド23とを備える。クロスヘッド23には、上つかみ具11が、軸心調整装置13を介して付設されている。また、基台16には下つかみ具12が、ロードセル15を介して付設されている。試験片10は、その両端をこれらの上つかみ具11および下つかみ具12により把持される。
【0019】
一対のねじ棹17の下端部には、各々、同期ベルト22と係合する同期プーリー21が配設されている。また、この同期ベルト22は、モータ18の駆動により回転する同期プーリー19とも係合している。このため、一対のねじ棹17は、モータ18の駆動により同期して回転する。そして、一対のねじ棹17が同期して回転することにより、クロスヘッド23は、一対のねじ棹17の軸心方向に昇降する。
【0020】
試験片10に負荷される試験力は、ロードセル15により検出される。また、試験片10の上下の標点間の変位量は、変位計14により検出される。ロードセル15および変位計14からの信号は図示しない制御回路に入力される。この制御回路は、ロードセル15および変位計14からの信号に基づいて、モータ18の駆動制御信号を作成する。これにより、モータ18の回転が制御され、引張や圧縮等の各種材料試験が行われる。
【0021】
図2は、軸心調整装置13の概要図である。
【0022】
この軸心調整装置13は、クロスヘッド23と上つかみ具11との間に介在されるものであり、クロスヘッド23と上つかみ具11とを連結する連結軸131と、この連結軸131の中央部に固定された枠部材139と、枠部材139の内部で連結軸131の外周部に配設され、クロスヘッド23に固定された角度調整用カラー部材134と、枠部材139の内部で連結軸131の外周部に配設され、上つかみ具11に固定された位置調整用カラー部材135とを備える。
【0023】
連結軸131は、角度調整用カラー部材134、枠部材139および位置調整用カラー部材135を貫通するとともに、連結軸131の上端部は取付板132と螺合しており、連結軸131の下端部は上つかみ具11と螺合している。また、取付板132は、一組のジャッキボルト133を介してクロスヘッド23と連結されている。このため、一組のジャッキボルト133を利用して取付板132をクロスヘッド23に対して上方に移動させることにより、上つかみ具11を所定の力でクロスヘッド23に対して締結することができる。
【0024】
枠部材139は、連結軸131に螺合して固定された支持部137と、連結軸131の周囲を囲う矩形状の枠部136とから構成される。支持部137の上面には、半球状の凸部138が形成されており、角度調整用カラー部材134の下面にはこの凸部138と対応する形状を有する半球状の凹部が形成されている。また、支持部137の下面は平面状となっており、平面状の位置調整用カラー部材135の上面と当接している。
【0025】
図3は、軸心調整装置13における角度調整用カラー部材134付近の平面概要図である。
【0026】
この角度調整用カラー部材134は、平面視において矩形状の形状を有し、その外周面は、枠部材139における枠部136と螺合する4本のネジ141、142、143、144の先端部と当接している。このため、4本のネジ141、142、143、144を調整することにより、枠部材139を連結軸131とともに傾斜させて上つかみ具11の角度を調整することが可能となる。すなわち、4本のネジ141、142、143、144のうち、互いに対向する2本のネジの一方を緩め一方を締めた状態で、枠部材139の半球状の凸部138を角度調整用カラー部材134の半球状の凹部に沿って移動させることにより、枠部材139を連結軸131とともに傾斜させることが可能となる。そして、この連結軸131の傾斜に伴って、上つかみ具11が傾斜する。
【0027】
図4は、軸心調整装置13における位置調整用カラー部材135付近の平面概要図である。
【0028】
この位置調整用カラー部材135は、平面視において矩形状の形状を有し、その外周面は、枠部材139における枠部136と螺合する4本のネジ151、152、153、154の先端部と当接している。このため、4本のネジ151、152、153、154を調整することにより、枠部材139を連結軸131とともに移動させて上つかみ具11の水平方向の位置を調整することが可能となる。すなわち、4本のネジ151、152、153、154のうち、互いに対向する2本のネジの一方を緩め一方を締めた状態で、枠部材139を位置調整用カラー部材135の上面に沿って移動させることにより、枠部材139を連結軸131とともに位置調整用カラー部材135に対して相対的に移動させることが可能となる。そして、この連結軸131の相対的な移動に伴って、上つかみ具11が移動する。
【0029】
上述したように、この軸心調整装置13においては、角度調整ネジとして機能する4本のネジ141、142、143、144、および、水平調整ネジとして機能する4本のネジ151、152、153、154に相当するネジを調整することにより、連結軸131の水平方向の位置および角度の調整が可能となっている。すなわち、上つかみ具11の水平方向の位置を調整する水平調整、および、角度を調整する角度調整を行うことにより、上つかみ具11と下つかみ具12の負荷軸、すなわち軸心の調整が可能となっている。
【0030】
図5は、テスト用試験片10aの歪みを測定する様子を示す概要図である。図6は、テスト用試験片10aにおける歪みゲージ61の貼設位置を示す説明図である。
【0031】
上つかみ具11と下つかみ具12との軸心の歪み方向と歪み量は、歪みゲージ61を貼設したテスト用試験片10aを、上つかみ具11と下つかみ具12に把持させた状態と、その状態でさらに軽い負荷(例えば20N程度)をテスト用試験片10aに与えた状態とで計測される。歪みゲージ61は、図6に示すように、テスト用試験片10aの上・下の異なる高さに各4個、合計8個貼設される。
【0032】
図5に示すように、テスト用試験片10aに貼設された歪みゲージ61は、計測手段であるデータロガー62に接続される。データロガー62は、歪みゲージ61の検出値を記録し、その結果を保存する計測機器である。この実施形態では、同一高さの歪みゲージ61ごとにデータロガー62を各1台備えている。
【0033】
各データロガー62は、記憶装置であるROM,RAM等および演算装置であるCPU等を備えるコンピュータ等によって構成される制御部64に接続される。そして、制御部64には、表示手段であるディスプレイ63が接続されている。制御部64内では、各データロガー62から送信された歪みゲージ61の検出値に基づいて、テスト用試験片10aの上・下の高さごとの歪み方向と歪み量が算出され、オペレータに対して提供する軸心調整に必要な情報をディスプレイ63に表示するための表示制御が実行される。
【0034】
次に、歪み方向と歪み量の算出方法の一例を説明する。まず、データロガー62により記録され制御部64に送られた各歪みゲージ61の検出値から、各歪みゲージ61の位置ごとの歪み(G1〜G8)が計算される。図6に示すように、歪みゲージ61は同一高さにおいて等間隔に4つ貼設されていることから、その高さの負荷軸に略直交する面において、向かい合う2個の歪みゲージ61間を結ぶ対角線が直交することになる。その直交する対角線のそれぞれをX軸方向およびY軸方向と規定して、上位置のX軸方向の歪み=(G1−G3)/2および上位置のY軸方向の歪み=(G2−G4)/2から、上の高さでの負荷軸に略直交する面における歪み方向と歪み量を表す(上X,上Y)座標を求める。同様に、下位置のX軸方向の歪み=(G5−G7)/2および下位置のY軸方向の歪み=(G6−G8)/2から、下の高さでの負荷軸に略直交する面における(下X,下Y)座標を求める。なお、座標原点は、上・下の高さにおける面と負荷軸が交わる点としている。
【0035】
また、この実施形態では、角度調整のときのX軸は、上述した軸心調整装置13において互いに対向するネジ141とネジ142とを結ぶ線と略同一であり、水平調整のときのX軸は、上述した軸心調整装置13において互いに対向するネジ151とネジ152とを結ぶ線と略同一である。また、角度調整のときのY軸は、上述した軸心調整装置13において互いに対向するネジ143とネジ144とを結ぶ線略同一であり、水平調整のときのY軸は、上述した軸心調整装置13において互いに対向するネジ153とネジ154とを結ぶ線と略同一である。なお、X軸およびY軸の歪みを表す数値の単位は、マイクロストレイン(με)である。歪みは、単位長さ当たりの変形量で表されるため無次元量であるが、歪み計測に関する技術分野では、歪みを表す単位として慣習的にストレイン(ε:strain)が使用されている。このため、この実施形態においても歪みの数値の単位としてストレインを用いている。そして、上述した算出方法により求められた上の高さの座標(上X,上Y)、下の高さの座標(下X,下Y)は、上・下の高さごとの試験片の軸心位置として後述する座標図81にプロットされる。
【0036】
図7は、制御部64を構成する要素のうち、本願発明を実行するための主要部を示すブロック図である。
【0037】
この制御部64は、オペレータに対して提供する軸心調整に必要な情報をディスプレイ63に表示するための表示制御部65と、後述する座標図81上の位置マークの位置とオペレータが行うべき軸心調整のネジ操作とを対応付けるテーブルを格納する記憶部74とを備える。そして、表示制御部65には、複数の調整ネジによる軸心調整方向と対応する方向を座標軸とする座標図81に、試験片の高さごとの軸心位置を位置マークとして表示する位置表示部71と、位置マークの座標図81上の位置に基づいて選択された、オペレータが行うべき軸心調整操作を案内する案内表示部72と、案内表示部72により表示された軸心調整操作が実行されるならば位置表示部71により表示された位置マークの動く方向を、案内表示部72により表示される軸心調整操作と連動させて、位置マークに付加して表示する方向表示部73と、が備えられる。
【0038】
図8および図9は、軸心のずれとそれに対応する軸心調整装置13の調整操作を示す表示例である。図8は、オペレータが水平調整ネジを操作して水平方向の位置を調整する水平調整を行うときの表示例であり、図9は、オペレータが角度調整ネジを操作して角度を調整する角度調整を行うときの表示例である。また、図10は、記憶部74に格納されている位置マークM1、M2の座標図81上の位置関係とオペレータが行うべきネジ操作とを対応付けるテーブルである。
【0039】
図8に示す表示例では、2次元的に表した座標図81と、軸心調整装置13を模式的に表した調整ネジの正面配置図83と水平調整ネジの平面配置図84が表示されるとともに、操作メッセージ表示部73に具体的なネジの操作メッセージが表示されている。
【0040】
座標図81には、テスト用試験片10aの上・下の高さでの軸心位置を示す位置マークM1、M2がそれぞれ黒丸で表示される。この座標図81におけるX軸とY軸は、上述した歪み方向と歪み量の算出方法におけるX軸、Y軸に対応している。上述したように、X軸とY軸は、軸心調整装置13の各ネジのうち互いに対向する位置にあるネジ間を結ぶ線と略同一である。また、軸心調整における調整操作は、互いに対向する2本のネジの一方を緩め一方を締めことにより軸心調整装置13の枠部材139を移動させるネジ操作である。従って、座標図81は、対向する位置にあるネジを操作して軸心調整装置13の枠部材139を動かす方向、すなわち、軸心調整における調整方向を座標軸とした座標図である。
【0041】
座標図81への位置マークの表示は、歪み方向と歪み量の算出方法により得られた(X,Y)座標の値をもとに、図7に示す位置表示部71により行われる。オペレータは、このような2次元的表示により、座標図81の位置マークの原点からのずれ、すなわちテスト用試験片10aの上・下位置の軸心のずれを把握することができる。なお、座標図81の原点を中心に半径50マイクロストレインの円を破線で示しているが、これは、軸心調整の閾値を示している。この閾値を示す円内に位置マークM1、M2があれば、軸心はほぼ合っているものとして、材料試験を行うことが可能となっている。
【0042】
調整ネジの正面配置図83におけるA、Cの文字は、調整ネジの正面配置図83の破線の上側が角度調整を行うネジの正面配置であり、破線の下側が水平調整を行うネジの正面配置であることを示すものである。水平調整ネジの平面配置図84のCの文字も、同様に、水平調整を行うネジの平面配置であることを示すものである。
【0043】
水平調整ネジの平面配置図84のX軸とY軸は、座標図81における座標軸との対応を示している。水平調整ネジの平面配置図84の0、90、180、270は、それぞれ図4に示す、水平調整ネジであるネジ154、151、153、152に相当する。
【0044】
調整ネジの正面配置図83および水平調整ネジの平面配置図84には、操作すべき調整ネジに、操作を案内するための矢印が付加される。矢印がネジに向かっている場合は「締める」、矢印の起点がネジである場合は「緩める」を意味する。この矢印の表示は、図7に示す案内表示部72により行われる。
【0045】
操作メッセージ表示部82には、具体的なネジ操作を案内する操作メッセージが表示される。操作メッセージの内容は、軸心のずれの度合い、すなわち、座標図81上の位置マークの位置の状態と対応させた水平調整テーブルおよび角度調整テーブル(図10参照)に記録され、制御部64内の記憶部74に格納されている。操作メッセージ表示部82への操作メッセージの表示は、上述した矢印の表示と同様に、図7に示す案内表示部72により行われる。
【0046】
この表示例では、座標図81に、上の高さでの位置マークM1と下の高さでの位置マークM2を同じ黒丸で示しているが、Y軸において正側にあるのが上の高さの位置マークM1であり、負側にあるのが下の高さの位置マークM2である。このような上・下の高さの位置マークM1、M2の位置関係は、図10(a)に示す水平調整テーブルの状態「上Yが下Yより正側」に該当する。このため、このときに行うべき操作「C0を緩め、C180を締めてください。」がオペレータに案内すべき内容として選択される。
【0047】
オペレータが行うべき操作が選択されると、案内表示部72が矢印を付すべきネジと、ネジに付される矢印の方向も定まることになる。そして、案内表示部72は、調整ネジの正面配置図83と水平調整ネジの平面配置図84のC0に「緩める」を意味する矢印を付加するとともに、水平調整ネジの平面配置図84のC180に「緩める」を意味する矢印を付加する。さらに、案内表示部72は、選択された操作「C0を緩め、C180を締めてください。」を、「水平調整をします。」の文字列とともにネジ操作を案内する操作メッセージとして、操作メッセージ表示部82に表示する。
【0048】
また、座標図81に黒丸で表示された位置マークM1,M2には、案内表示部72によるネジ操作の案内表示に従った操作が実行されるならば、位置マークが軸心調整により動く方向を示す矢印が付加される。この位置マークが動く方向を示す矢印は、図7に示す方向表示部73により、案内表示部72によるネジ操作の案内表示と連動して行われる。なお、この表示例の、操作メッセージ表示部82に示された「水平調整をします。C0を緩め、C180を締めてください。」は、座標図81の上・下の高さにおける位置マークのY軸方向の互いの位置を近づけるためのネジ操作である。このため、各位置マークには、Y軸に平行な互いに向き合う矢印が付加されている。
【0049】
図9に示す表示例では、図8に示す表示例と同様に、2次元的に表した座標図81と、軸心調整装置13を模式的に表した調整ネジの正面配置図83が表示されるとともに、操作メッセージ表示部73に具体的なネジの操作メッセージが表示されている。また、図9に示す表示例は、図8に示す表示例の操作メッセージ表示部82等の表示に従った水平調整が行われた後に、角度調整を行う状態となっている。このため、図8において水平調整ネジの平面配置図84が表示されていた位置に、角度調整ネジの平面配置図85が表示され、角度調整を行うネジの平面配置図であることを示すAの文字も表示されている。この角度調整ネジの平面配置図85の0、90、180、270は、それぞれ図3に示す、角度調整ネジであるネジ144、141、143、142に相当する。
【0050】
この表示例では、軸心の水平調整が行われたことにより、座標図81に黒丸で示す上・下の高さの位置マークM1、M2は、いずれも図8の座標図81の位置マークM1と位置マークM2の中間点付近に位置している。これは図8に示す水平調整前の位置マークM1と位置マークM2の位置関係から見れば、図10(b)に示す角度調整テーブルの状態「(上X+下X)/2が正側」に該当する。このため、このときに行うべき操作「A270を緩め、A90を締めてください。」がオペレータに案内すべき内容として選択される。
【0051】
オペレータが行うべき操作が選択されると、案内表示部72が矢印を付すべきネジと、ネジに付される矢印の方向が定まることから、案内表示部72は、調整ネジの正面配置図83と水平調整ネジの平面配置図85のA270に「緩める」を意味する矢印を付加するとともに、A90に「緩める」を意味する矢印を付加する。さらに、案内表示部72は、選択された操作「A270を緩め、A90を締めてください。」を、「角度調整をします。」の文字列とともにネジ操作を案内する操作メッセージとして、操作メッセージ表示部82に表示する。
【0052】
また、座標図81に黒丸で表示された位置マークには、図7に示す方向表示部73により、位置マークが軸心調整により動く方向を示す矢印が付加される。この表示例の、操作メッセージ表示部82に示された操作「角度調整をします。A270を緩め、A90を締めてください。」は、位置マークをY軸と重なる位置、すなわちX=0に近づけるためネジ操作である。このため、各位置マークには、X軸に平行なY軸に向く矢印が付加されている。なお、図9の表示例では、角度調整を行う前の位置マークM1、M2が、いずれも閾値の円内にあることから、オペレータは、角度調整のネジ操作を省略して、材料試験を行うこともできる。
【0053】
図8および図9の表示例のように、案内表示部72によるネジ操作の案内表示に対応させて位置マークが動く方向を表示すると、オペレータが水平調整ネジの平面配置図84や操作メッセージ表示部82に表示された案内どおりのネジ操作を行わなかった場合には、位置マークは矢印で示された方向とは違う方向に動くため、オペレータは座標図81の表示を見ることで、容易に自身の操作ミスに気づくことができる。なお、図8および図9に示す表示例に、位置マークM1、M2等の(X,Y)座標の具体的な数値等を同時に表示させ、より軸心調整に必要とされる情報の表示を充実させるようにしてもよい。
【0054】
次に、軸心調整の操作と方向表示部73による位置マークへの矢印の付加動作等について、さらに詳細に説明する。図11は、座標図81における位置マークの表示と、位置マークが動く方向を示す矢印の付加状態を模式的に示す説明図であり、軸心調整の操作順序に沿って変化する座標図81の表示遷移をD101〜D105に示すものである。なお、この図11においては、上の高さの位置マークM1を白丸、下の高さの位置マークM2を黒丸、上・下の高さの位置マークが重なった状態の位置マークM3をハチング付の丸で示している。
【0055】
まず、位置表示部71により、座標図81に、先に説明した演算方法により求めた、上の高さの座標(上X,上Y)、下の高さの座標(下X,下Y)に、位置マークM1、M2が表示される(D101)。軸心調整は、上の高さの位置マークM1と下の高さの位置マークM2の両方が負荷軸と合っている状態を目指して行われるものであるため、位置マークM1と位置マークM2の両方を座標軸81の原点(0,0)に近づけることを目標としている。
【0056】
軸心調整における水平調整は、座標図81上において、位置マークM1と位置マークM2の中間座標{(上X+下X)/2,(上Y+下Y)/2}を目標点として、位置マークM1、M2を重ね合わせる調整である。これは、オペレータが図4に示すネジ151、152、153、154を操作することにより実行される。
【0057】
一方、軸心調整における角度調整は、座標図81上において、位置マークM1と位置マークM2の中間座標{(上X+下X)/2,(上Y+下Y)/2}を、さらに座標図81の原点に近づける調整である。これは、オペレータが図3に示すネジ141、142、143、145を操作することにより実行される。
【0058】
なお、座標図81のX軸とY軸は、軸心調整装置13の各ネジのうち互いに対向する位置にあるネジ間を結ぶ線と略同一であるため、対向する位置にあるネジを操作すると、位置マークはX軸と平行な方向またはY軸と平行な方向のいずれかに移動することになる。よって、水平調整および角度調整のいずれにおいても、基本的には目標となる位置に対して、X軸方向に動かす操作と、Y軸方向に動かす操作とを別個に行うことになる。
【0059】
この実施形態では、軸心調整は、各位置マークの水平調整でのY軸方向への移動操作、水平調整でのX軸方向への移動操作、角度調整でのY軸方向への移動操作、角度調整でのX軸方向への移動操作、の順で行うよう予め決められており、上の高さの位置マークM1と下の高さの位置マークM2の位置関係から、各操作の内容が図10に示す各テーブルから選びだされる。そして、案内表示部72は、この操作順序に従って具体的なネジ操作をディスプレイ63に案内表示している。なお、オペレータはディスプレイ63の表示を見ながら順次、軸心調整の操作を行うが、オペレータが軸心調整のためネジを操作している間も、歪みゲージ61からのデータはデータロガー62により計測および記録がされており、座標図81には、位置表示部72によりリアルタイム座標が表示される。
【0060】
図11のD101で表示された上の高さの位置マークM1と下の高さの位置マークM2の位置関係は、図10に示す水平調整テーブルの「上Yが下Yより正側」、「上Xが下Xより負側」の状態、および、角度調整テーブルの「(上Y+下Y)/2が正側」、「(上X+下X)/2が正側」の状態に該当する。このため、各状態に対応する操作として「C0を緩め、C180を締めてください。」(水平調整でのY軸方向への移動操作)、「C90を緩めC270を締めてください。」(水平調整でのX軸方向への移動操作)、「A0を緩め、A180を締めてください。」(角度調整でのY軸方向への移動操作)、「A270を緩め、A90を締めてください。」(角度調整でのX軸方向への移動操作)が選択され、この順に操作案内が案内表示部72により表示されることになる。
【0061】
案内表示部72により、図10(a)に示す水平調整テーブルから選び出された水平調整でのY軸方向への移動操作の案内表示がされる。これと同時に、方向表示部73は、操作「C0を緩め、C180を締めてください。」が実行されるならば、位置マークM1と位置マークM2がそれぞれ動く位置(D102に破線で示す位置)に向かう矢印を、各位置マークM1,M2に付加する。
【0062】
水平調整でのY軸方向への移動操作が実行され、各位置マークM1、M2がD102に破線丸で示した位置まで移動すると、案内表示部72は、水平調整でのX軸方向への移動操作を案内表示する。これと同時に、方向表示部73は、操作「C90を緩めC270を締めてください。」が実行されるならば、位置マークM1と位置マークM2がそれぞれ動く位置(D103に破線丸で示す位置)に向かう矢印を、各位置マークM1、M2に付加する。オペレータにより案内された操作が実行されれば、位置マークM1と位置マークM2はその中間位置(D104の位置マークM3に相当する位置)でおおよそ重なり、水平調整は終了する。
【0063】
水平調整後に、案内表示部72は、図10(b)に示す角度調整テーブルから選び出された、角度調整でのY軸方向への移動操作を案内表示する。これと同時に、方向表示部73は、操作「A0を緩め、A180を締めてください。」が実行されるならば、位置マークM3が動く位置(D104に破線丸で示す位置)に向かう矢印を、位置マークM3に付加する。
【0064】
角度調整でのY軸方向への移動操作が実行され、移動後の位置マークM3の表示が行われると、案内表示部72は、角度調整でのX軸方向への移動操作を案内表示する。これと同時に、方向表示部73は、操作「A270を緩め、A90を締めてください。」が実行されるならば、位置マークM3が動く位置(D105に破線丸で示す原点位置)に向かう矢印を、位置マークM3に付加する。案内表示部72により案内された操作をオペレータが実行すれば、位置マークM3はその座標の原点位置に移動し、角度調整は終了し、軸心調整も終了する。
【0065】
なお、図11のD104、D105では、説明の便宜上、上・下の高さの位置マークが重なった状態の位置マークM3を1つの位置マークとして表現しているが、方向表示部73が付加する矢印は、上の高さの位置マークM1と下の高さの位置マークM2のそれぞれに付加されるものである。よって、位置マークM3に付加された矢印は、位置マークM1と位置マークM2にそれぞれ付加された矢印が重なったものである。また、位置マークM1、M2のいずれもが、完全に原点と一致する必要はなく、上・下の高さの軸心のずれがいずれも閾値内となれば、ほぼ軸心調整はできたものと判断して、オペレータは軸心調整の操作を終了し、材料試験を実行することができる。
【0066】
この実施形態では、位置マークM1、M2に位置マークが動く方向を示す矢印が付加されているため、オペレータは、表示を見ながら操作を行うことで、軸心調整の方向性がオペレータにとって理解しやすいものとなっている。矢印と違う方向に位置マークが移動した場合には、操作案内で示されたネジとは違うネジを操作したか、あるいは、ネジの「締める」、「緩める」を逆に行ったか等、何らかの操作ミスにオペレータが容易に気づくことができる。
【0067】
なお、上述した実施形態では、テスト用試験片10aの上・下の高さに歪みゲージ61を貼設しているが、歪みゲージ61を貼設する高さはこれに限定されるものではない。さらに、テスト用試験片10aの形状や、テスト用試験片10aの同一高さにおける歪みゲージ61の数も、この実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
10 試験片
10a テスト用試験片
11 上つかみ具
12 下つかみ具
13 軸心調整装置
14 変位計
15 ロードセル
17 ねじ棹
18 モータ
23 クロスヘッド
61 歪みゲージ
62 データロガー
63 ディスプレイ
64 制御部
65 表示制御部
71 位置表示部
72 案内表示部
73 方向表示部
74 記憶部
81 座標図
82 操作メッセージ表示部
83 調整ネジの正面配置図
84 水平調整ネジの平面配置図
85 角度調整ネジの平面配置図
131 連結軸
132 取付板
133 ジャッキボルト
134 角度調整用カラー部材
135 位置調整用カラー部材
136 枠部
137 支持部
138 凸部
139 枠部材
141 ネジ
142 ネジ
143 ネジ
144 ネジ
151 ネジ
152 ネジ
153 ネジ
154 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の調整ネジを操作することにより、試験片を把持するつかみ具の軸心を調整する軸心調整装置を備えた材料試験機であって、
試験片に負荷を加える負荷手段と、
試験片の異なる複数の高さごとに貼設される複数の歪みゲージと、
前記複数の歪みゲージからの信号を記録する計測手段と、
前記計測手段からの信号に基づいて、試験片の歪み方向と歪み量を複数の高さごとに算出する演算手段と、
前記演算手段により算出された複数の高さごとの歪み方向と歪み量に基づいて、前記複数の調整ネジによる軸心調整方向と対応する方向を座標軸とする座標図に、試験片の高さごとの軸心位置を位置マークとして表示する位置表示手段と、
前記位置マークの座標図上の位置に基づいて選択された、オペレータが行うべき軸心調整操作を案内する案内表示手段と、
前記案内表示手段により表示された軸心調整操作が実行されるならば前記位置表示手段により表示された前記位置マークの動く方向を、前記案内表示手段により表示される軸心調整操作と連動させて、前記位置マークに付加して表示する方向表示手段と、
を備えたことを特徴とする材料試験機。
【請求項2】
請求項1に記載の材料試験機において、
前記案内表示手段は、前記複数の調整ネジの配置を図形表示するとともに、オペレータが操作すべき調整ネジに対して「緩める」または「締める」を表す図形をさらに表示する材料試験機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の材料試験機において、
前記案内表示手段は、前記軸心調整装置における調整ネジの操作案内メッセージを表示する材料試験機。
【請求項4】
請求項2に記載の材料試験機において、
前記調整ネジは、つかみ具の水平方向の位置を調整するための水平調整ネジと、つかみ具の角度を調整するための角度調整ネジであり、
前記案内表示手段は、オペレータが行うべき軸心調整操作が、水平調整ネジの操作である場合には、複数の水平調整ネジの配置を図形表示し、角度調整ネジの操作である場合には、複数の角度調整ネジの配置を図形表示する材料試験機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate