説明

材料試験装置

【課題】 消耗品の保守作業を適切な時期に行えるようにする。
【解決手段】 操作・表示装置上で消耗品の限度時間を入力しておくとともに、装置の使用状態にしたがって稼動時間と残り時間を自動的に表示する。たとえば、オイルを交換した場合には限度時間を2000時間と入力しておき、その時点で右端のリセットボタンを押すことによって稼働時間と残り時間をリセットする。すなわち、その時点では稼働時間は0時間となり、残り時間は2000時間と表示される。そして、材料試験装置を使用し、累積時間が300時間となった時点では稼動時間は300時間と表示され、残り時間は1700時間と表示される。これらの時間は制御装置に内蔵されている時計と材料試験装置に電源が入れられていた時間から制御装置が自動的に計算して表示するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験体に引張や圧縮などの負荷を与えて試験体の歪量などを測定し、その結果得られるデータから材料の試験を行う材料試験装置に関する。とくにサーボ系のフィードバック制御機構を有する加振装置や疲労試験装置などのように、負荷機構として油圧ユニットを有する材料試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
材料試験装置は板状や棒状の試験片の両端をチャックによってつかみ、そのチャックを油圧ユニットを駆動源とする電気油圧制御システムにより駆動することにより試験片に引張や圧縮などの負荷を与え、負荷が加えられたときの試験体の歪量(変形量)などを計測することによって材料の試験を行う。電気油圧制御システムは、駆動源としての油圧源・サーボバルブ・油圧シリンダと、検出器としての力センサや歪センサと、それらを電気的に制御する制御装置とからなる。たとえば疲労試験においては、所定の波形に従って試験片に加えられる力が大きくなったり小さくなったりを繰り返すようにサーボバルブの開度が制御される。このときの試験体の歪量や繰り返し負荷を行うことによる状態の変化を測定して材料としての性質を計測する。
【0003】
材料試験装置を構成する部材には長い間使用することによって交換を必要をする消耗品が存在する。たとえば油圧ユニットで使用するオイルそのものやオイル内に混入する異物を取り除くためのオイルフィルタなどはある限度の時間だけ使用したら交換して新しいものと取り替える必要がある。サーボバルブなどはそれほど頻繁に交換する部品ではないものの、常に動く部品なので比較的メンテナンスの機会は多いので、ここでは消耗品の一つとして扱うことにする。材料試験装置としての機能を長い間保つためには消耗品を交換するなどのメンテナンスが必要である。
【0004】
電気油圧式材料試験装置においては、油圧ユニットのメンテナンスが不可欠である。このメンテナンスを行うために、従来から次のようなことが行われる。たとえば、油圧ユニットに電源が入っていた時間を表す積算時間計を取り付けて油圧ユニットの使用時間を記録し、所定の時間が過ぎたらメンテナンス作業を行うようにする。また、オイルフィルタのフィルタエレメントについては、オイルフィルタに目詰まり検出用のセンサをとりつけ、異常があれば警告表示するようにしていた。
【0005】
たとえば、特許文献1には材料試験機の掴み歯の交換時期を表示するための従来の構成が記載されている。
【特許文献1】特開2004−354335
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
油圧ユニットに積算時間計を取り付ける方法では、油圧ユニットの使用時間を知ることはできるが、それぞれの消耗品がどれくらいの時間で交換する必要があるのかをオペレータが知っておく必要がある。またシステムによっては油圧ユニットが試験装置本体から離れた場所に設置される場合もあり、使用時間を知るためにいちいち油圧ユニットの設置された場所まで行かなくてはならない。
【0007】
さらに、消耗品の交換作業などを行った際は、積算時間をリセットするかそれまでの積算時間を記録する必要があり、これを怠ってしまうと積算時間計の表示値が意味を持たなくなるといった管理面での問題もある。オイルフィルタのフィルタエレメントの目詰まりについては、フィルタ自身に目詰まりを検出して異常出力を行う機能を採用した場合には、異常時にしか通知できないためオペレータがあとどのくらいの時間で交換が必要なのかを前もって知ることができない。とくに材料試験機を複数のオペレータが使用する場合などはフィルタエレメントを交換してからどのくらい使用したかが把握しにくい。
【0008】
さらに、材料試験の中でも疲労・耐久試験を行う場合は、その多くが長期間にわたる試験であるため試験中にフィルタエレメントの交換を促す警告灯が点灯するようなことも起こりうる。このような場合には警告を無視して試験を継続せざるを得ないときもあるが、場合によっては試験を中断しメンテナンス作業を優先して行わなければならないこともある。すなわち、メンテナンスの警告が出たとしてもオペレータの経験に任される状況になり、最適な判断がなされるとは限らないという問題も起こる。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、メンテナンスに関する突然の警告などが発生せず安心して使用でき、常に最良の状態で使用できる材料試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するために、試験体に負荷を与えて試験体を試験する材料試験装置において、消耗品の使用できる限度の時間を設定する限度時間設定手段と、該消耗品の実際に稼動した時間を計測する稼働時間計測手段と、その設定された限度時間と実際に稼動した稼働時間の差から残り時間を計算して表示する残り時間表示手段を備えたことを特徴とする(請求項1)。
【0011】
このようにすることで、現時点から将来に向かってその消耗品を使用できる残り時間を表示できるため、現在までの稼働時間や全体の寿命時間などを確認する必要がなく、あとどれくらい使用できるかを直接的に知ることができ、その限度時間が来るまでは安心して装置を使用することができる。
【0012】
残り時間の表示は、試験装置本体を制御している制御装置または操作装置で表示することが望ましい。そのようにすれば残り時間を見るために油圧ユニットを診て稼働積算時間を確認する必要はない。また、限度時間設定や稼働時間計測は消耗品ごとに個別に行うことができるので、残り時間表示も消耗品ごとに記録されるのでオペレータが記録管理する必要がない。時間管理をオペレータの記憶ではなく制御装置で行うため複数のオペレータで装置を使用する場合においても正しく装置の保守を行うことができる。また試験の開始に先だって残り時間を知ることができるので、長時間にわたる試験を行う場合に前もって交換が必要かどうかを判断できる。
【0013】
残り時間が予め設定された所定の時間よりも小さくなったときに保守作業を促す信号を発する信号発信手段を備えることが望ましい(請求項2)。保守作業を促す信号としては、保守作業を行うべき時期が近づいていることを示すメッセージや、保守作業行うように指示するメッセージを制御装置上に表示するようにすることができる。専用に設けられたランプやブザーで保守作業の必要性をオペレータに知らせるようにしてもよい。
【0014】
保守作業の必要性をオペレータに自動的に知らせるので、オペレータが使用できる残り時間が少ないことをうっかり忘れていてもメンテナンス時期を誤ることがない。またメンテナンス時期は自動的に発信されるので、残り時間が少なくなって交換時期が近づいたときにオペレータが逐一いままでの累積使用時間を確認する必要がない。
【0015】
上述の消耗品として、油圧ユニットに関する消耗品であるサーボバルブ・作動油・フィルタエレメントなどをリストアップしておくことが望ましい(請求項3)。これらは電気油圧式材料試験装置にとって保守が必要な重要な部品である。
【発明の効果】
【0016】
消耗品を適切な時期に交換することは材料試験装置の性能を長期間適正に維持するために必要不可欠なことである。本発明によれば、交換時期が近づくと制御装置上にメッセージが表示されるため、監視や管理などの作業がオペレータの負担とならず確実な装置保守が行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の材料試験装置の構成を電気ユニットともに模式的に示す図である。
【0018】
本発明の材料試験機装置は試験機本体1と、それを電気的に制御する制御装置11および操作・表示装置12とからなる。試験機本体1は下部のテーブル内に材料に負荷を加えるための油圧シリンダ4が内蔵され、テーブル上に立設されたフレーム2によって試験空間が形成されている。フレーム2には上下動可能なクロスヘッド3があり、このクロスヘッド3にはロードセル7を介して上チャック5が取り付けられている。テーブル上に突き出たシリンダ4の軸には下チャック6が取り付けられ、それらの上下チャックの間に試験されるべき試験体Sが取り付けられる。
【0019】
油圧源10からのオイルはサーボバルブ9を介してシリンダ4に供給され、制御装置11からの信号に従ってサーボバルブ9の開度が制御されることによってシリンダ4の軸が駆動され、下チャック6を介して試験体Sに負荷が加えられる。制御装置11には動作条件の設定や測定結果などを表示するための操作・表示装置12が接続されている。この操作・表示装置12はオペレータとのインターフェースとなるキーボードやマウスなどの入力装置、および測定条件や測定結果などを表示するディスプレイなども装備されている。操作・表示装置12はパーソナルコンピュータで構成することができる。
【0020】
試験体Sに負荷される力はロードセル7によって計測され、その信号は制御装置11に入力される。一方、シリンダ4の軸の移動量はシリンダ4の端に取り付けられたストロークセンサ8によって計測され、これも制御装置11に入力される。また、図示はしていないが、試験体Sそのものに歪センサを取り付けてその信号を制御装置11に入力し、試験体Sそのものの変形量を測定することもできる。
【0021】
図1に示した材料試験装置を用いて疲労試験を行う場合には次のように行う。試験体Sを上下のチャック間に取り付けた後に、まず操作・表示装置12を用いて試験条件の設定を行う。試験条件としては、かける力の大きさ、繰り返しの波形や周波数、繰り返しの回数などがある。制御装置11はその試験条件に基づいてサーボバルブ9を制御し、シリンダ4は油圧源10からの油圧をエネルギー源として試験体Sに力を負荷する。そのとき試験体Sにかかる力はロードセル7によって計測され、制御装置11にフィードバックされる。このようにして試験体Sに所定の波形の繰り返し荷重が与えられる間にストロークセンサ8からの信号がモニタされ、疲労試験が実行される。
【0022】
材料試験装置には定期的な保守作業を必要とする様々な消耗品が存在する。たとえば、油圧ユニットではオイルそのもの、フィルタエレメント、などが代表的なものである。サーボバルブも消耗品の一つと考えてもよい。そのほかにオイルが配管から漏れ出ないようにするための各種シール部材も消耗品である。さらには、油圧ユニット以外では、試験体を掴む面であるチャックの掴み面も消耗品である。
【0023】
本発明の材料試験装置では、消耗品の適切なメンテナンスを行うために、図2に示すような表示および操作を行う機構を備えている。表の中で、限度時間は消耗品の使用できる限度の時間を表すものであり、稼働時間はその消耗品が現在までに実際に稼動した時間を表すものであり、残り時間はその二つの差、すなわち、今後その消耗品を限度までに使用することのできる残りの時間を表している。
【0024】
一例としてオイルの欄について説明する。オイルを交換した場合には限度時間をたとえば2000時間と入力しておき、その時点で右端のリセットボタンを押すことによって稼働時間と残り時間をリセットする。オイルの限度時間はそれまでの経験あるいはメーカの推奨時間などによって設定すればよい。リセットボタンを押した時点では稼働時間は0時間となり、残り時間は2000時間と表示される。そして、材料試験装置を使用し、累積時間が300時間となった時点が図2の状態である。このときオイルの稼動時間は300時間と表示され、残り時間は1700時間と表示される。これらの時間は制御装置11に内蔵されている時計と材料試験装置に電源が入れられていた時間から制御装置11が自動的に計算して表示するものである。またこのような時計機能および時間計算機能は操作・表示装置12が持つようにしてもよい。
【0025】
図2のフィルタエレメントおよびサーボバルブの欄についても同様な操作と作用を行うものである。またこの表示はこの3つの消耗品に限られるものではなく、時間管理が適当な消耗品については考えられる全ての消耗品について行うことができる。
【0026】
稼働時間がだんだん大きくなって限度時間に近づくと図3に示すような注意メッセージを操作・表示装置12に表示する。図3(a)は稼働時間が限度時間の80%を超えると表示される例であり、その消耗品の交換時期が近づいていることについてオペレータに注意を喚起するメッセージが表示される。また、図3(b)は稼働時間が限度時間の100%以上となった場合に表示される例であり、すぐに交換作業などを行うようにとの警告メッセージが表示される。これらの表示をオペレータが見ることによって適切な時期に保守作業を行うことができる。
【0027】
これらのメッセージはそれが起こったタイミングで表示が始まり交換されるまではずっと表示装置のどこかに表示されるようにしてもよい。または、制御装置や操作・表示装置が起動されたタイミングで表示されるようにしてもよい。
【0028】
オペレータに対して保守作業を促す信号としては、上述のように表示装置にメッセージを表示するのではなく、専用に設けられたランプやブザーを用いることできる。さらには例えば黄色と赤色のランプを一組設置しておき、黄色ランプは消耗品のうちのどれかの交換時期が近づいていること表し、赤色ランプはどれかの交換時期が過ぎていることを表示するようにしてもよい。操作・表示装置へのメッセージ表示と専用ランプ表示を両方併用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の材料試験装置の概略構成図である。
【図2】稼働時間、残り時間、限度時間の設定表示画面の例である。
【図3】表示されるメッセージの例である。
【符号の説明】
【0030】
1…試験機本体、2…フレーム、3…クロスヘッド、4…シリンダ、5…上チャック、6…下チャック、7…ロードセル、8…ストロークセンサ、9…サーボバルブ、10…油圧源、11…制御装置、22…操作・表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験体に負荷を与えて試験体を試験する材料試験装置において、消耗品の使用できる限度の時間を設定する限度時間設定手段と、該消耗品の実際に稼動した時間を計測する稼働時間計測手段と、その設定された限度時間と実際に稼動した稼働時間の差から残り時間を計算して表示する残り時間表示手段を備えたことを特徴とする材料試験装置。
【請求項2】
前記残り時間が予め設定された所定の時間よりも小さくなったときに保守作業を促す信号を発する信号発信手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の材料試験装置。
【請求項3】
前記消耗品は油圧ユニットに関する消耗品であり、サーボバルブ、作動油、フィルタエレメントの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または2に記載の材料試験装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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