説明

条件的不死化膵臓細胞

4−ヒドロキシタモキシフェン(4−OHT)の存在下で不死であるが、4−OHTが存在しない場合には通常の膵臓細胞マーカーを発現する条件的不死化膵臓細胞が産生される。従って、前記細胞により、移植またはスクリーニングアッセイに有用な細胞を産生するための細胞株の作製が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床的および商業的な用途のためにスケールアップし得る条件的不死化膵臓細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界で少なくとも2億人があらゆる型の糖尿病に苦しめられており、そしてこの数は、2025年までに2倍になると考えられている。1型(インスリン依存性)糖尿病は、通常幼齢で、遺伝的素因のある個体に影響を及ぼす慢性疾患であって、膵ランゲルハンス島内のインスリン分泌β細胞が自己免疫攻撃により選択的かつ不可逆的に破壊されるものである。80年以上の間、インスリン依存性糖尿病に対する主要な治療手段は、インスリン補充による対症療法に限られてきた。最近の研究においては、その疾患の眼合併症と神経学的合併症と腎合併症とを抑制するために厳しい血糖コントロールが重要であることが強調されている(1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このインスリン依存は、1型糖尿病患者へのヒト初代ランゲルハンス島(primary islets of Langerhans)移植の著しい進歩によりほとんどなくなってきた(2)。しかし、生きているドナーからの初代ヒト膵島の利用可能性は非常に限定されていることから、この治療の実用は限られている。そして、現在必要とされていることは、大きな臨床的効果を得るために初代ヒト膵島の生理的にコンピテントな代替物をほとんど無限に供給することである。1型糖尿病は、そのβ細胞特異的な性質ゆえに、細胞補充療法による治療に特に適している。多能性幹細胞を機能的β細胞に分化させる能力は、1型糖尿病治療の新しい治療可能性をもたらす。ヒト胎児の膵島細胞またはその前駆細胞は、臨床的な移植用インスリン産生組織の代替源となり得る(3)。胎児組織移植の成功は、胎児細胞の増殖能力だけでなく移植部位での成熟能力にも依存する。
【0004】
胎児の不死化膵臓細胞があれば、初代ヒトランゲルハンス島の生理的にコンピテントな代替物を無限に供給することができる。哺乳類の膵臓におけるランゲルハンス島の発育については、調整された組織形態形成の例として鋭意研究されており、それは、このプロセスの理解により糖尿病の細胞移植治療の開発が容易になると期待されているからである(4、5)。膵臓の内分泌コンパートメントを含む膵島は、4種の細胞型を含み、その各々が別個のホルモンを産生するものであって、α細胞、β細胞および膵ポリペプチド(PP)細胞は、それぞれグルカゴン、ソマトスタチンおよびPPを分泌する。インスリン産生はβ細胞に限定される。β細胞は、成体の膵島細胞の大部分を含み、グルコース恒常性の主要な調節因子である。ヒト胎児の膵臓からの内分泌細胞前駆体の分離は、膵島細胞分化の研究にとって重要になり、ゆくゆくはインスリン依存性糖尿病の島移植にとって重要なものになるであろう。4種の膵内分泌細胞型が発現するこれらの前駆細胞は、胎児の膵導管上皮内に存在する。早期の膵芽はホメオボックス遺伝子IPF−1(別名、IDX−1、STF−1またはPDX)の均一な発現を示す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、細胞培養物内に4−ヒドロキシタモキシフェン(4−OHT)が存在する場合には不死であるが、4−OHTが存在しない場合には通常の膵臓細胞マーカーを発現する条件的不死化膵細胞の作製に基づく。c−myc/エストロゲンレセプター融合は、膵臓細胞に条件的不死化の性質を付与する要因である。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、哺乳類の膵臓細胞は、単一のポリペプチド鎖として発現された、mycファミリーの腫瘍性タンパク質およびエストロゲンレセプター、またはその機能的フラグメントを含む融合タンパク質を含む。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、条件的に膵臓細胞を不死化する方法は、以下のステップ:
(i)単一のポリペプチド鎖として発現された、mycファミリーの腫瘍性タンパク質およびエストロゲンレセプター、またはその機能的フラグメントを含む融合タンパク質を膵臓細胞内に発現させること;および
(ii)ステップ(i)で形成した膵臓細胞にエストロゲンレセプターのリガンドを接触させ、それにより条件的に膵臓細胞を不死化すること、を含む。
【0008】
本発明による膵臓細胞は、1型糖尿病、2型糖尿病の重症型の治療や薬物候補のin vitro試験に特に有用である。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、薬物としての使用における化合物の適合性をin vitroで評価する方法は、以下のステップ:
(i)単一のポリペプチド鎖として発現された、mycファミリーの腫瘍性タンパク質およびエストロゲンレセプター、またはその機能的フラグメントを含む融合タンパク質を含む膵臓細胞に薬物としての可能性を有する化合物を接触させること;
(ii)膵臓細胞の応答を測定し、それにより膵臓細胞に対する化合物の効果を決定し、そしてそれにより、薬物としての使用における化合物の適合性を評価すること、を含む。好ましくは、膵臓細胞は培養培地からリガンド(4−OHT)を除去することにより増殖が停止するものであり、そして膵臓細胞は完全に分化した表現型を発現させるものである。
【0010】
本発明のさらなる態様は、医薬としての、および糖尿病の治療用医薬の製造における本発明の膵臓細胞の使用である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、膵臓の初代培養物内のmyc/エストロゲン−レセプター融合タンパク質の発現によりそれらが条件的に不死化され、そのことにより膵細胞株が得られることを明らかにするものである。膵臓細胞がエストロゲンレセプターのリガンドの存在下で培養される場合、それらは不死である。その膵臓細胞からリガンドを除去することにより、細胞の不死性が喪失し、ゆえにそれは、膵臓のインサイチューにおける膵臓細胞から期待されるような「通常の」特性と膵細胞のマーカーを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書で用いられる「膵細胞」または「膵臓細胞」という用語は、膵臓が行う1以上の機能を実行し得る膵臓から得られ得る任意の細胞を意味する。いずれの種に由来する膵細胞も本発明の範囲内であるが、膵臓細胞は哺乳動物のものであることが好ましく、最も好ましくはヒトのものである。in vitroで前駆体細胞から分化させた膵臓細胞、例えば胚性幹細胞または多能性幹細胞から分化させた膵臓細胞が用いられ得るように、胎児または成体の膵臓を使用してよい。
【0013】
本発明に記載の膵臓細胞は、通常の膵臓に特徴的なマーカーを保持する。膵臓の内分泌コンパートメントを含む膵島は、4種の細胞型を含み、その各々が別個のホルモンを産生する。α細胞、β細胞および膵ポリペプチド(PP)細胞は、それぞれグルカゴン、ソマトスタチンおよびPPを分泌する。インスリン産生はβ細胞に限定される。ホメオドメイン転写因子の膵臓・十二指腸ホメオボックス−1(PDX1)およびインスリンを、ヒト胎児の膵臓クローンのキャラクタリゼーションにおけるマーカーとして使用した。
【0014】
当初のエドモントンプロトコル(8)によれば、充填組織容積10mL未満中にレシピエントの体重1キログラム当たり少なくとも4000膵島相当物(equivalents)が移植には必要である。同じグループは、後の研究(8)において、少なくとも9000個/キログラムの膵島移植後に、17人の患者すべてがインスリン非依存性になったと報告した。本発明による膵臓細胞は、未処理のペトリ皿を使用して培養すると、膵島相当物(本明細書において、凝集体と称される)を形成することが可能である。8mL培養培地/90mmペトリ皿の中の3百万個の膵臓細胞は、3万5千個の凝集体を産生し得る。この手法は、Shapirら(2)により記述されているものなど、本技術分野で公知の糖尿病患者のために開発された手法にしたがい、ヒト移植において使用される十分な量の凝集体を産生するためにスケールアップできる。
【0015】
本明細書で用いられる「不死」という用語は、長期の増殖を起こす能力を有する細胞を指す。本発明の膵臓細胞は、4−OHTの存在下で増殖する場合に不死である。in vitroにおける細胞の培養組織は、単細胞または細胞のコロニーから大きくなったものであって、当業者ならば周知のように「細胞株」と呼ばれる。これは、初代細胞とは対照的に、老化に達して最終的に細胞が死ぬ前に、限定された回数、一般的には10〜20回未満の分裂しかできないものである。本明細書で用いられる場合、条件的不死という用語は、ある特定の増殖条件の下で分裂する未成熟な細胞であって、他の条件の下では完全に成熟して非分裂細胞となる細胞を指す。本発明によれば、細胞の不死化の要因となる環境条件は、エストロゲンレセプターリガンドの存在である。
【0016】
継続的な膵臓細胞の不死化を可能にし、ゆえに4−OHTの存在下で不死化される膵臓細胞の特徴は、myc/エストロゲンレセプター融合タンパク質の存在である。理論に束縛されるものではないが、4−OHTがエストロゲンレセプターを活性化すると考えられる。エストロゲンレセプターの活性化によって腫瘍性タンパク質mycの二量体化および核移行が可能になり、それは核において転写因子として作用し、増殖や遺伝子安定化の発生を可能にする遺伝子の発現を開始する(例えば、Pollockら、(2006);参考文献9参照)。4−OHTなしでは、myc腫瘍性タンパク質を含む融合タンパク質は依然として発現されるが、それは細胞質内にとどまり、さらなる増殖は起こらない。ゆえに、リガンドは、添加して膵臓細胞を(不死的に)増殖させたり、回収して前記細胞が通常の非増殖性膵臓細胞のように挙動し、機能的膵島細胞に分化し得るようにできる。
【0017】
本発明の膵臓細胞は、myc/エストロゲンレセプター融合タンパク質の発現により条件的に不死である。本明細書で用いられる「融合タンパク質」という用語は、単一のポリペプチド鎖として発現された、天然には別々に発現される2つのタンパク質配列またはペプチド配列を含む組換えタンパク質を指す。
【0018】
融合タンパク質は、任意のmycタンパク質および任意のエストロゲンレセプター、または、エストロゲンレセプター4−OHTにより活性化される能力を保持し、細胞増殖につながる転写を活性化させるこれらタンパク質の任意のフラグメントも含み得る。好ましくは、mycタンパク質はc−mycである。好ましくは、エストロゲンレセプターは、4−OHTへの高親和性結合には影響を及ぼさずに17β−エストラジオールへの高親和性結合を妨げる変異を有するものである。この変異は、1または多くのアミノ酸残基の欠失、置換または付加であってよい。好ましい実施形態において、融合タンパク質は、マウスのエストロゲンレセプターに融合するヒトc−myc遺伝子からなる。より好ましくは、融合タンパク質は、配列番号2として本明細書において同定されるアミノ酸配列を含む。前述のように、配列番号2のいかなるホモログまたは機能的フラグメントも本発明の範囲内である。
【0019】
本明細書で用いられる「ホモログ」という用語は、DNAやRNAやタンパク質配列などの2個以上の生物重合体の間における類似性または同一性を指す。配列同一性の概念は、本技術分野でよく知られており、2つの配列間における同一性のレベルを意味する。類似性の概念は同程度によく知られており、2つの配列の類似点を考慮する場合、構造または機能に大きな影響を及ぼさない2つの配列間の保存的相違が含まれるものである。例えば、グルタミン酸は、タンパク質の構造または機能に大きな影響を及ぼすことのないアスパラギン酸で置換してよい;これらの残基は「類似」している。対照的に、アスパラギン酸残基はフェニルアラニン残基に対して類似性を示さない。本発明の範囲内に含まれるホモログは、本明細書で同定されるマウスのエストロゲンレセプターおよびヒトのc−myc配列に高い類似性を有する必要がある。同一性および類似性は、任意のよく知られたアルゴリズム、例えばNeedleman−Wunsch、Smith−Waterman、BLASTまたはFASTAを使用して算出され得る。相同性は、核酸またはアミノ酸のレベルで決定され得る。好ましくは、本発明の範囲内のホモログは、BLASTプログラム(Atschul et al,J.Molec.Biol.,1990;215:403−410)をデフォルト条件で使用して算出した場合、アミノ酸または核酸レベルで少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましく70%超、最も好ましくは80%超、例えば90%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を有するものである。
【0020】
本明細書で用いられる「変異体」、「ホモログ」、「誘導体」または「フラグメント」という用語には、配列から、または配列への1つ(以上)のアミノ酸の任意の置換、変異、修飾、置換、欠失または付加が包含される。変異体は、サイレント変化および機能的に等価なポリペプチドを生じる欠失変異、挿入変異または置換変異を有してよい。目的とするアミノ酸置換は、サイズや電荷や疎水性などの類似の生理化学的特性に基づいて行える。保存的置換は、例えば下表に従って行うことができる。2列目の同一のブロック、好ましくは3列目の同一の行のアミノ酸は、互いに置換することができる。
【0021】
【表1】

【0022】
本発明の膵臓細胞は、c−myc/エストロゲンレセプター融合タンパク質を発現する。融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子は、本明細書において「融合ポリヌクレオチド」と称されるものであって、任意の形態、例えば膵臓細胞の中のプラスミドとして膵臓細胞内に存在するか、もしくは宿主のゲノム内に組込まれていてもよい。
【0023】
膵臓細胞は、ゲノム内に融合ポリヌクレオチドを組込むことにより条件的に不死化されることが好ましい。宿主ゲノム内への異種のポリヌクレオチドの組込みのための方法は、本技術分野でよく知られており、任意の適切な方法も用いてよい。好ましくは、レトロウイルス感染を用いて融合ポリヌクレオチドをゲノム内に組込む。異種ゲノム内への遺伝物質の組込みのためのレトロウイルスベクターは、本技術分野でよく知られており、そしていずれを用いてもよい。好ましくは、前記ベクターは両栄養性レトロウイルスであり、最も好ましくは、前記ベクターはpLNCX(BD Biosciences Clontech)である。
【0024】
ベクターは、任意の適切なウイルス産生細胞内で融合ポリヌクレオチドと共にパッケージされる。前記ウイルスは、好ましくはTEFLYウイルス産生細胞株に由来するFly−CO42細胞により産生される。
【0025】
pLNCXベクターは、ネオマイシン耐性遺伝子を駆動するLTRプロモーターを含む。ネオマイシン(別名、ジェネテシンおよびG418)は、ネオマイシン耐性遺伝子を発現する細胞のみが生き残るように選択の間に培地内で用いられる。非感染標的細胞に対してネオマイシンの滴定を実施して非感染細胞の除去に必要な濃度を規定することができる。抗生物質耐性は不可欠なものではないが、感染細胞の選択を促進するために任意の抗生物質耐性遺伝子を用いてよい。
【0026】
融合ポリヌクレオチドの発現を促進するために任意のプロモーターを用い得る。好ましくは、これは、任意の抗生物質耐性遺伝子の発現も促進するために用いられるものとは異なるプロモーターである。好ましくは、CMVプロモーターは、融合ポリヌクレオチドの発現を駆動する。
【0027】
適切な融合ポリヌクレオチドの例としては、配列番号1として本明細書において同定されるc−mycERTAMがあり、これは、合成薬4−OHTへの高親和性結合に影響を及ぼさずに17β−エストラジオールに対する高親和性結合を除去するために変異させたマウスのエストロゲンレセプターに融合したヒトc−myc遺伝子を含む。タンパク質におけるこの機能的変化の原因となるポリヌクレオチドに対するいずれの変異も本発明の範囲内であり、その変異としては、付加、置換または欠失が挙げられる。好ましくは、前記変異は点変異である。好ましい実施形態においては、点変異を導入してアミノ酸位681の野生型グリシンをアルギニンに変更する。c−mycERTAMのホモログおよび機能的フラグメントは本発明の範囲内である。
【0028】
当業者にとっては明らかなことであるが、膵臓細胞ゲノム内にレトロウイルスベクターが組込まれるためには、膵臓細胞は増殖を必要とする。組込みを最大化するためには、膵臓細胞が高率で増殖しているときにウイルスを添加すべきである。さらに感染の成功率を上昇させるために、感染中に培地に臭化ヘキサジメトリン(別名ポリブレン)などの促進剤を添加してもよい。これは、高濃度では一部の細胞に有毒であり得るが、ヒト胎児の膵臓細胞の感染にはうまく使用されてきた(7)。
【0029】
本発明によれば、膵臓細胞の増殖シグナルとして4−OHTを使用することの利点は、この合成化学物質が通常ヒトに存在しないということであり、これにより、本発明に記載の膵臓細胞を医薬として使用することが可能になる。特に、前記膵臓細胞は、移植治療用の治療用細胞株において使用することができる。罹患または損傷した膵臓への健康な膵臓細胞の移植によって疾患により損傷を受けた細胞を置換し得る場合、膵臓細胞の移植は膵臓の疾患を治療するための1つの選択肢であると考えられる。細胞移植は、臓器移植の好ましい変形例と言える。膵臓機能を損なういずれの疾患も、本発明に記載の膵臓細胞または細胞凝集体の移植により治療され得るものであって、その疾患としては糖尿病や癌が挙げられるが、これらに限定されない。膵臓細胞を用いる獣医学的治療もまた、本発明の範囲内である。
【0030】
本発明の細胞が従来の細胞および島移植技術を用いて移植され得るということは、熟練者には極めて明らかであろう。前記細胞はいかなる適切な技法を用いて導入してもよい。標準的な移植治療において行われるように、従来の免疫抑制剤を投与してもよい。治療に用いるための適切な組成物の調製は、熟練者にとって明らかである。
【0031】
本発明の細胞、細胞株および細胞凝集体は、薬物の潜在的毒性の評価あるいは特定の治療における薬物の有効性の確認を行うためのスクリーニングアッセイに有用である。適切なスクリーニングアッセイは、熟練者にとって明らかである。前記アッセイは、薬物と接触させる場合における本発明の細胞の機能、形態または遺伝構造に対する変化を評価するために用いてよい。
典型的には、薬物として使用するための化合物の適合性を評価する方法は、以下のステップ:
(i)本発明に記載の細胞または細胞凝集体に薬物としての可能性を有する化合物を接触させること;および
(ii)細胞または細胞凝集体の応答を測定し、それにより細胞または細胞凝集体に対する化合物の効果を決定し、そして薬物として使用するための化合物の適合性を評価すること、を含む。その意図は、細胞を刺激して、グルコースに応答してインスリンを産生させる作用をする化合物を同定することでもあり得る。あるいは、その意図は、細胞を刺激して細胞移植されると成熟する化合物を同定することであり得る。あるいは、その意図は、膵島細胞を刺激してグルカゴン、ソマトスタチンおよび/または膵臓ポリペプチドを産生させる化合物を同定することであり得る。
【実施例】
【0032】
ここで、以下の非限定な実施例により本発明をさらに説明する。
特に言及されない限り、すべての化学物質はSigma社から購入した。
組織培養
すべての細胞を5%CO2インキュベーター内において37℃で増殖させた。細胞に対して、標準的な基準で1週間に3回の培地交換を行った。70〜95%コンフルエントにおいて細胞の継代を行った。
【0033】
培地
ヒト胎児の膵臓細胞およびクローンは、以下の代替物からなるヒト膵臓培地(HPM)と称する培地内で培養された:
(1)MegaCell(登録商標)ダルベッコ変性イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)混合栄養素ハムF−12(Nutrient Mixture F−12 Ham)、1.5%ウシ胎仔血清(FBS)(HyClone)および2mML−グルタミン。培地は、1Lフィルターユニット(Nalgene)で無菌濾過し、37℃で予熱した;または
(2)CMRL Connaught Medical Research Laboratories培地(CMRL Connaught Medical Research Laboratories Media);または
(3)UltraCulture(登録商標)(Cambrex);
【0034】
使用前に、以下の成長因子(GF):20ng/mLの上皮細胞成長因子(EGF)および50nMのガストリンI(Gastrin I)をHPMに添加した。感染後、膵細胞を補助剤:100nMの4−ヒドロキシタモキシフェン(4−OHT)の存在下で培養した。
【0035】
コーティング
組織培養処理されたプラスチック製器具(plasticware)またはコーティングしていないプラスチック製器具が用いられた。一部の培養物において、無菌ボトルウォーターで終濃度100μg/mLに希釈されたフィブロネクチンの溶液でコーティングを行った。プラスチック製器具は、使用前に、最後にHBSSで洗浄した。他の培養物については、細胞外マトリックス基質を使用しなかった。
【0036】
膵臓
ヒト胎児の膵臓は妊娠期間終了前に得られた。地域研究倫理委員会(Local NHS ethical committee)の承認は、研究開始前に得られた。
【0037】
解離
出荷後のヒト胎児の膵臓は、RPMI培地内の湿った氷上に移した。膵臓は、4℃の、カルシウムを含まないハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(Gibco)で洗浄した。膵臓は、メスで細かく切った。細かく切った胎児の膵臓をコラゲナーゼP(Boehringer Mannheim社)で消化し、37℃で15分間培養し、攪拌し、そして2分毎に研和(trituration)した。
【0038】
解離された膵細胞を計数し、血球計算器を使用して細胞生存率を評価した。一実施例において、細胞付着を防止した未処理のペトリ皿プラスチック製器具上のHPMおよびGF内で細胞を平板培養して、3〜5日間放置して膵島細胞クラスター(ICC)形成/凝集体形成をさせ、膵島細胞前駆体を優先的に選択した。別の一実施例においては、この選択を省略し、解離細胞標品を組織培養器具上で直接平板培養した。
【0039】
ウイルスの採集
いくつかのT−175フラスコ内の合流箇所でクローンFly−C042に由来するウイルス産生細胞を培養した。HPM内でウイルスを採収した。コンフルエントのときに、フラスコを3×PBSで洗浄し、HPMをウイルス産生細胞に8時間、18mL/T175フラスコで添加した。培地を採集し、そして0.45μmフィルタで濾過し、5mL培地/ファルコン(falcon)チューブに等分し、液体窒素内でスナップ凍結(snap frozen)して80℃で保存した。
【0040】
感染
フィブロネクチンをコーティングした、またはコーティングしていない容器に膵細胞または予め選択された膵臓細胞凝集体を移した。膵臓細胞は、ウイルス上清および4〜8μg/mLの臭化ヘキサジメトリンで感染させた。感染から8〜16時間後に新鮮なHPMを添加し、そして翌日にその感染サイクルを繰り返した。40%〜70%コンフルエントで10cmのペトリ皿内で感染を行った。感染後、4OHTを培地に添加した。感染完了から2日後に増殖および/または選択のために細胞の継代を行った。
【0041】
選択
感染した膵臓細胞を16cmのペトリ皿上に低密度で継代と平板培養を行い、そして2週間100〜300μg/mLのジェネテシンで選択を行った。選択後、ポジティブ選択した細胞は個々のクローンを形成し、これらのクローンを収集および増殖して膵臓細胞株を発生させた。
【0042】
継代
細胞をフラスコから継代または除去するたびに、フラスコを37℃のHBSSで1回洗浄した。その後、37℃の1×トリプシン−ヴェルセン混合物(Bio Whittaker社)を2〜5分間添加し、細胞をプラスチックから剥がした。等量の培地をトリプシン−ヴェルセン混合物に添加してトリプシンを中和し、そして細胞をファルコンチューブ内に500gで5分間スピンした。上清を吸引し、そして1mLの培地内で細胞を再懸濁し、そして細胞計数を血球計算器により行った。新しく新鮮なフィブロネクチンをコーティングしたか、またはコーティングしていない容器内に細胞を継代した。
【0043】
凍結/融解
細胞を凍結する際、cryo−safeバイアル(Nunc社)内の900μLの培地と100μLのcryosure−ジメチルスルホキシド(DMSO)(Quest biomedical社)の中で細胞ペレットを再懸濁した。ミスターフロスティ(Mister Frosty)凍結保存容器(Nalgene社)内に細胞を24時間、−80℃で保存し、温度は約5℃/分で低下させた。24時間後、細胞を長期保存用液体窒素に移した。解凍の際、細胞を液体窒素から除去して容器内で完全に解凍されるまで37℃の水槽に配置するか、もしくは直接に平板培養するか、もしくは37℃の培地10mLと混合して500gを5分間スピンした。上清を廃棄し、ペレットを新鮮な培地内に静かにピペットで移して再懸濁し、そして新しい容器内で平板培養した。
【0044】
免疫細胞化学
初期の細胞の評価のために、免疫細胞化学を用いた。発現量の定量化は可能でなかったが、免疫細胞化学の利益は細胞がほとんど必要でないということにあり、何個の細胞が細胞集団内で特異的マーカーを発現したのかを確認することは可能であった。一部の細胞の発現が他よりも高いかどうかを確認することも可能であった。これは、先に進めるべき細胞や細胞株、ならびにどの細胞を廃棄するのかを選択するプロセスにおいて大きな意義がある。
【0045】
使用した抗体:モルモット抗インスリン(Chemicon/Sigma社)およびウサギ抗PDX1抗体(Chemicon社)。すべての染色はマルチウェルフォーマットで行い、以下の手法が用いられた。培地を吸引し、そして細胞をPBSで1回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド入りPBS内において室温(RT)で15分間固定した。4%パラホルムアルデヒドを吸引し、細胞をPBSで3回洗浄した。0.1%トリトン×−100入りPBS内で細胞を20分間透過した。それから細胞をPBSで1回洗浄し、30分間、10%正常ヤギ血清(NGS)(ベクター社)入りPBSで遮断した。一次抗体を、室温で一晩中、1%NGS入りPBS内に添加した。ウェルをPBSで3×5分洗浄し、二次抗体を、室温で2時間、PBS内に添加した。二次抗体は、約488nmの波長で励起し、約525nmの発光(緑色発光)を得た。2時間の培養後、ウェルを3×5分間PBSおよびHoechst内で洗浄し、DNAを染色する化学物質を、室温で2分間、PBS内に1:25000で添加した。Hoechstは、約350nmで励起し、約425nmの発光(青色発光)を得た。最後にウェルを3×5分間PBS内で洗浄し、最も新しい洗浄液内に放置した。すべての分析は、蛍光顕微鏡、Leica社のDMRAと、デジタルカメラ、C4742−95(Hamamatsu社)と、コンピュータソフトウェア、Hamamatsu image PROとで行った。
【0046】
トータルRNA抽出
トータルRNA抽出のために、RNeasyミニキット(Qiagen 74104)を用いた。抽出につき、5×10個までの細胞の細胞ペレットを使用した。細胞を、10μL/mLの2−メルカプトエタノール入りの350μLのRLT緩衝液でバラバラにし、試料を、Gilsonピペットで研和(trituration)して均質化した。無水アルコール(Joseph Mills社)を70%に希釈し、そして350μLを試料に添加し、ピペッティングにより混合した。試料をRNeasyミニカラムに移し、15秒間8000gでスピンした。350μLのRW1洗浄緩衝液を添加し、15秒間8000gでスピンした。10μLのDNアーゼ1RNアーゼフリー(Qiagen 79254)入りの70μLのRDD緩衝液(Qiagen)を15分間RNeasyミニカラム膜に添加した。350μLのRW1洗浄緩衝液を添加し、15秒間8000gでスピンし、500μLのRPE緩衝液を2回添加し、試料を8000gでそれぞれ15秒間と2分間スピンした。最後に、50μLのRNアーゼフリー水をカラムに添加し、それぞれ8000gで1分間スピンした。RNAを含有する50μLの水をRnaseフリーチューブ内に採集し、そして純度および量をスペクトロフォトメータGeneQuant pro(Amersham pharmaceutical biotech AB)で確認した。試料を−80℃で保存した。
【0047】
cDNAの作製
cDNAを作製するために、抽出されたトータルRNAを氷上で解凍し、50ngを氷上のDNアーゼ/RNアーゼフリーのチューブ内の以下のものと混合した:RNasin RNアーゼ阻害剤10000u(Promega N2115)(0.25μL)、10μMランダムプライマー(Invitrogen48190−011)または10μMオリゴdT(2μL)および緩衝液RT10×(2μL)、各5mMのdNTP−混合物(2μL)、Sensiscript RT(1μL)およびRNアーゼフリーの水(すべてQuiagenキット205213から)を最終量20μLに混合した。チューブを37℃の水槽内に60分間置き、93℃の熱ブロックに5分間移し、氷上で急速に冷却した。cDNAを20℃のフリーザー内で保存した。
【0048】
RT−PCR
c−myc−ERおよびインスリンのPCRには、titanium taq PCRキット(Clontech laboratories社)を使用した。使用したプライマーについては、表2を参照されたい。PCR反応条件は、標準的なものであった。使用したPCR装置は、GeneAmp PCR system2700であった。分析には、15μLのPCR生成物を5μLの6×ローディング色素溶液(MBI R0611)と混合し、ゲルにロードした。3μgのDNAを含有する100bpのDNAラダー(MBI SM0241)(6μL)もロードした。ゲルは、TAE緩衝液(Invitrogen15558−034)、2%のアガロース、臭化エチジウム(267μg/mL)からなる2%アガロースゲルであった。ゲルをトレイHU13(Jencons)内において電気泳動電源E835(Consort)で動かし、そして最後にFluor−S multimager(Biorad)で走査し、ソフトウェアQuantity One(Biorad)で解析した。定量的PCRのために、Trizol(Invitrogen)およびRNeasy(Qiagen)スピン−カラムを使用してトータルRNAを細胞ペレットから抽出し、その後Superscript II(Invitrogen)によって逆転写して、定量的PCRの鋳型として使用し得るcDNAの第1ストランドを合成した。各遺伝子転写物を、Lightcycler480機器(Roche)を使用して検出される蛍光シグナルを各PCRサイクルの間集める配列特異的プライマー−プローブの組合せによって検出し;各遺伝子の転写を、多くのハウスキーピング遺伝子を評価することによりローディングレベルに対して正規化し、一部のキャリブレータ試料として発現させた。
【0049】
【表2】

【0050】
凝集体形成
凝集体を生成するための方法は、Gershengorn(10、11)から応用したものである。組織培養処理されたまたは処理されていないプラスチック製器具内で膵臓細胞の増殖および平板培養を、1容器当たり少なくとも8×10個の細胞で、必要に応じて以下の条件の内の1つで行った:(a)8mLのヒト膵臓培地(HPM)、さらに以下の:ガストリンI(50nM)およびEGF(20ng/mL)の内の1つ以上を含む成長因子;(b)8mLの低グルコースDMEM、さらに1.5%HSAおよび成長因子;(c)8mLのCMRL、さらにインスリン(10mg/L)、トランスフェリン(5.5mg/L)、セレニウム(6.7μg/L)、さらに1%HSA;(d)HPMにおける処理組織培養容器内で融合性単層に増殖させ、トリプシンに1〜4分間曝露させ、その後8mLのCMRL、さらにインスリン(10mg/L)、トランスフェリン(5.5mg/L)、セレニウム(6.7μg/L)、さらに1%HSAを添加する。
【0051】
凝集体形成を可能にするために、組織培養インキュベーター内で、細胞を、37℃、5%COで少なくとも24時間培養した。
【0052】
グルコースシフト
少なくとも24時間後に凝集体を採集し、そして15mLチューブに移した。5’×1500rpmで遠心分離して上清を除去し、そして10mLの低グルコース培地を用いてペレットを洗浄した。洗浄したペレットを200μLのDMEM低グルコース、さらに2mg/mLのHSAおよび10mMのヘペス内で再懸濁し、そして37℃で2時間培養した。2時間後、凝集体を遠心分離(5×1500rpm)で採集し、そして200μLのDMEM高グルコース、さらに2mg/mLのHSA、10mMのヘペスおよび10mMのテオフィリンで再懸濁し、そして37℃で2時間培養した。培養後、凝集体を遠心分離(5×1500rpm)で採集し、そして−80℃で保存した。
【0053】
ELISAによるヒトインスリン検出
ヒトインスリンELISAキット(Linco、カタログ番号EZHI−20K)において20μLの膵臓細胞溶解液および対照細胞を用いた。
【0054】
ELISAによるヒトプロインスリン検出
ヒトトータルプロインスリンELISAキット(Linco、カタログ番号EZHI−15K)において20μLの膵臓細胞溶解液および対照細胞を用いた。
【0055】
結果
解離、感染およびクローン選択
妊娠11〜19週にヒト胎児の組織に投与して解離させた。c−mycERTAMによる感染後のc−mycERTAM感染細胞個体群のクローン生存効率は、同じ組織からの非感染対照細胞よりも有意に高かった(図1参照)。2週間の選択後、個々クローンを選び、増殖させた。事前によい特性を示したクローンに対して、さらなるキャラクタリゼーションを行った。20代継代における2つのクローンの核型を決定し、正常二倍体細胞であることが示された。
【0056】
免疫細胞化学
cmyERTamコンストラクトを含有する細胞において、4−OHTを添加すると増殖は促進されるが、4−OHTを除去すると細胞の分化が促進されて成熟した表現型を示す。グルコースシフトステップを経た凝集細胞において成熟した表現型が認められた。あるクローンは、インスリンおよびPDX1に対してポジティブ染色を示し、そして明確な凝集体を形成した(図2参照)。
【0057】
c−mycERTAMのためのPCR、インスリンおよび膵臓に特異的なマーカー
c−mycERTAMのための定量的PCRおよびヌクレアーゼプロテクションアッセイ(Nuclease Protection Assay)により、テストしたすべてのクローンにコンストラクトが集積したことが確認された(図3)。c−mycERTAMは、4−OHTによるc−myc遺伝子標的(テロメラーゼ逆転写酵素)誘導によって機能的になることが示された(図4)。
【0058】
インスリンのためのプライマーを用いて実行されたPCRによって、グルコースシフトに曝露される凝集したクローンにインスリンの発現が確認された。表2に示されるさらなる膵島マーカーも陽性であることが確認された。
【0059】
ELISAにより検出されるインスリンおよびプロインスリンの発現
グルコースシフトに曝露された凝集したPIC0K04細胞の細胞溶解液で行ったプロインスリンELISA検出により、プロインスリンの発現が確認された。
【0060】
グルコースシフトに曝露された凝集したPIC0K04細胞やPIC0K23細胞やPIC0K24細胞の細胞溶解液で行ったインスリンELISA検出により、インスリンの発現が確認された。
疑いを避けるため、本明細書で参照されるすべての参考文献は本明細書に引用されたものとする。
【0061】
参考文献
(1) The Diabetes Control and Complication Trial Research Group: The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of long-term complications in insulin-dependent diabetes mellitus. N Engl J Med329:977-986, 1993
(2) Shapiro, A.M.J. et al. (2000) Islet transplantation in seven patients with Type 1 diabetes mellitus using a glucocorticoid-free immunosuppressive regime. N. Engl. J. Med. 343, 230-238
(3) Beattie GM, Otonkoski T, Lopez AD, Hayek A. 1997 Functional b-cell mass after transplantation of human fetal pancreatic cells: differentiation or proliferation Diabetes. 46:244 -248.
(4) Orci L, Unger RH 1975, Functional subdivision of islets of Langerhans and possible role of D cells. Lancet 2:1243-1244
(5)Orci L 1982, Macro- and micro-domains in the endocrine pancreas. Diabetes 31:538-565
(6) Otonkoski T, Beattie GM, Mally MI, Ricordi C, Hayek A. 1993 Nicotinamide is a potent inducer of endocrine differentiation in cultured human fetal pancreatic cells.J Clin Invest. 92:1459-1466
(7) Leibowitz G, Bettie GM, Kafri T, Cirulli V, Lopez AD, Hayek A and Levine F.1999 Gene transfer to human pancreatic endocrine cell using viral vectors. Diabetes. 48:745-753
(8) Edmond A. Ryan, Jonathan R.T. Lakey, Breay W. Paty1, Sharleen Imes, Gregory S. Korbutt, Norman M. Kneteman, David Bigam2, Ray V. Rajotte, and A.M. James Shapiro Successful Islet. 2002 Transplantation Continued Insulin Reserve Provides Long-Term Glycemic Control Diabetes 51:2148-2157.
(9) (10) Gershengorn et al, Science 306:2261-2264.
(11) Hardikar et al, PNAS (USA) 100:7117-7122.
【図面の簡単な説明】
【0062】
本発明を添付の図面を参照して説明する:
【図1】CyQuantを使用して自動的に(A)またはマニュアル計数により(B)細胞計数を行い、非感染性GSO80(15週齢)組織を使用して産生された細胞の数を、C−myCERTAMを形質導入した同じ組織との比較において示したグラフ図である。
【図2】適切なマーカーを発現する成熟膵細胞に分化する膵細胞株を示す図;(A)は直径約200μmの細胞凝集体を示し;(B)は、マーカー、膵臓c−ペプチド・インスリンに陽性の細胞が染色されていることを示し、(C)は、マーカー、PDX−1に陽性の細胞が染色されていることを示す。
【図3】膵細胞におけるc−mycERTAMの相対的発現を示すグラフである。
【図4】膵臓細胞における4−OHTによるテロメラーゼ誘導を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のポリペプチド鎖として、mycファミリーの腫瘍性タンパク質およびエストロゲンレセプター、またはその機能的フラグメントを含む融合タンパク質を含む哺乳類の膵臓細胞。
【請求項2】
腫瘍性タンパク質がc−mycである、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
培地内の、請求項1または請求項2に記載の細胞。
【請求項4】
ヒト細胞である、請求項1〜3のいずれかに記載の細胞。
【請求項5】
融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の細胞。
【請求項6】
ポリヌクレオチドがゲノム内に組み込まれている、請求項5に記載の細胞。
【請求項7】
融合タンパク質がマウスのエストロゲンレセプターとヒトのc−mycタンパク質とを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の細胞。
【請求項8】
エストロゲンレセプターが17β−エストラジオールへの高親和性結合を妨げる変異を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の細胞。
【請求項9】
配列番号1として本明細書で同定されるポリヌクレオチド配列を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の細胞。
【請求項10】
in vivoで膵臓細胞に特徴的なマーカーを発現する、請求項1〜9のいずれかに記載の細胞。
【請求項11】
マーカーが以下のIPF1、インスリン、NKX6.1、PDX、ISL1、NKX2.2、グルカゴンおよび膵臓ポリペプチドの組合せを含む、請求項10に記載の細胞。
【請求項12】
細胞がエストロゲンレセプターのリガンドを接触させると条件的に不死化されるものである、請求項1〜11のいずれかに記載の細胞。
【請求項13】
リガンドが4−ヒドロキシタモキシフェンである、請求項12に記載の細胞。
【請求項14】
細胞凝集体を形成するための、請求項1〜13のいずれかに記載の膵臓細胞の使用。
【請求項15】
コーティングされていない面に細胞凝集体が形成される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
(i)単一のポリペプチド鎖として発現された、請求項1、2、7または8のいずれかに規定される融合タンパク質を細胞内で発現させるステップ;および
(ii)ステップ(i)で形成した前記細胞にエストロゲンレセプターのリガンドを接触させ、それにより条件的に前記細胞を不死化するステップ、を含む、条件的に細胞を不死化する方法。
【請求項17】
(i)請求項1〜13のいずれかに記載の細胞、または請求項14または請求項15に記載の細胞凝集体に薬物としての可能性を有する化合物を接触させるステップ;および
(ii)前記細胞または前記細胞凝集体の応答を測定し、それにより細胞または細胞凝集体に対する前記化合物の効果を決定し、そして薬物としての使用における該化合物の適合性を評価するステップ、を含む、薬物としての使用における化合物の適合性をin vitroで評価する方法。
【請求項18】
化合物がグルコースに応答して前記細胞を刺激してインスリンを産生させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
移植の際に化合物が前記細胞を刺激して成熟させる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
化合物が膵島細胞を刺激する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
化合物が膵臓細胞に対するその毒性により評価される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
医薬として使用するための請求項1〜13のいずれかに記載の細胞。
【請求項23】
膵臓の障害を治療するための医薬の製造における請求項1〜13のいずれかに記載の細胞の使用。
【請求項24】
膵臓の障害を治療するための医薬の製造における請求項15に記載の細胞凝集体の使用。
【請求項25】
前記障害が糖尿病を包含する、請求項23または24に記載の使用。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−514517(P2009−514517A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538414(P2008−538414)
【出願日】平成18年11月3日(2006.11.3)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004103
【国際公開番号】WO2007/052036
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(504164608)リニューロン・リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】ReNeuron Limited
【Fターム(参考)】