説明

杭を挟持する装置、および杭を挟持する方法

【課題】 振動杭打機に設けられるチャックを改良して、該チャックの固定側コラム7bの厚さ寸法Tを短縮しても該固定側コラムが損傷する虞れの無いようにする。
【解決手段】 2組のチャック6Aと同6Bとが対向離間している箇所に、「作動油を封入密閉した油圧バッグ11」を介装する。((B)図参照)チャックシリンダの伸張力(矢印P)によって、固定側コラム7bが矢印Q方向に押されても、((A)図参照)上記の力Qに対して油圧バッグ11内の作動油の静圧(矢印R)が拮抗し、該固定側コラム7bに大きい歪みを生じさせない。また、該固定側コラム7bに亀裂などの損傷を生じる虞れも無い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起振機によって杭を打設するため、該起振機に装着されたチャック機構によって杭を挟持する方法、および同装置に関するものであって、ハット形矢板を挟持するに好適であるが、ハット形矢板以外に適用することもできる。
【背景技術】
【0002】
図4は、杭の1例としてのハット形矢板を打設している状態を示し、(A)は正面図、(B)は模式的に描いた平面図である。
符号4Aを付して示したのはハット形矢板の1例である。該ハット形矢板には多数の種類が有って、それぞれJISで規格化されている。
図6(A)には上記ハット形矢板4Aが実線で描かれるとともに、これと異なる規格のハット形矢板4Bが鎖線で描かれている(詳細については後に説明する)。
【0003】
(図4(A)参照)起振機5の下端部に、1対のチャック機構(以下、チャックと略記することあり)6A,6Bが設置されている。
(図4(B)参照)ハット形矢板4Aは、その断面形状が図示のごとくハット形をなしていて、ハットの天井に当たる箇所はウェブ、ハットの鍔(つば)に当たる箇所はアーム(又はフランジ)と呼ばれており、両者を接続する斜めの部分はウィングと呼ばれている。
この図4に示したハット形矢板を打ち抜きする際は、一般に、1個の起振機5に対して2組のチャック機構(本例ではチャック6Aとチャック6B)を設置し、ハット形矢板の2箇所を対称的に挟持する。
【0004】
前掲の図4において2組設けられていたチャック機構(6A,6B)の内の1組を抽出して詳細を描くと図5のとおりである。
コラム7はチャック機構の本体部分をなし、使用状態において下向きに凹なるコの字形の部材である。
このコラム7の幅寸法が例えば30cmである場合、厚さ30cmの厚鋼板をコの字形に切断して構成される。このことから推察し得るように、コラムは頑丈な大重量部材である。
コラム7は、可動側コラム7cと固定側コラム7bとが、矢板嵌合用の凹部7dを介して対向し、コの字状を形成している。
【0005】
可動側コラム7cの中にはチャックシリンダ7eが設けられていて、そのピストン部材に取り付けられた可動爪6bが、図の左右方向に往復駆動される。
上記可動爪6bに対向設置されて矢板(図外)を挟み付ける固定爪6aは、固定側コラム7bに取り付けられている。
前記コラム7の頂面には、回転軸として機能する突起8が設けられている。この突起8を中心として複数個の取付ネジ孔7aが設けられている。
このコラム7の取付相手部材には円弧状長孔9が設けられていて、該コラム7の装着角位置を調節し得るようになっている。すなわち、図示の角θの範囲内で回動・固定できるようになっている。
【0006】
可動側コラム7cは、その中にチャックシリンダ7eを収納しているので、その厚さ寸法Tが大きくなる。これを別の視点から見ると次のようにも言うことができる。
可動側コラム7cは、その中にチャックシリンダ7eを収納し得るだけの厚さ寸法Tに形成されるので、該可動側コラム7cは充分な剛性と強度とが得られる。
ところが固定側コラム7bは、その中にチャックシリンダを収納する必要が無いので、その厚さ寸法Tは、前記可動側コラム7cの厚さ寸法Tよりも小さく設定することができる。
しかし、この固定側コラム7bは、前記チャックシリンダ7eの伸張力を受けて矢板(図外)を挟持しなければならないので、これに耐えるだけの剛性と強度とを有していなければならない。
【0007】
前述のような強度関係に基づいて設計製作した場合、
固定側コラム7bの厚さ寸法Tは、可動側コラム7cの厚さ寸法Tよりも、一般に小さくなる。
しかしながら、固定側コラム7bの厚さ寸法Tを切り詰め過ぎると、該固定側コラム7bの耐ベンディング強度が不足して大きい歪みを生じたり、根本部に亀裂10を生じたりする。
杭打抜機用チャックに関しては、特許文献1として挙げた特開2005−344361号公報「広幅鋼矢板のチャック装置」及び特開平11−336076号公報「ハット型土留鋼材の把持装置」が公知である。しかし、上記いずれの特許文献に係る発明においてもチャックの固定側コラムの強度に関しては別段の考慮が為されていない。
【特許文献1】 特開2005−344361号公報
【特許文献2】 特開平11−336076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図6(A)は、1対のチャック6A,同6Bによってハット形矢板4Aを挟持している状態を模式的に描いた平面図である。
上記2組のチャック機構(チャック6A,同6b)は、それぞれ固定側コラム7b、及び可動側コラム7cを備えている。
先に図5を参照して説明したように、固定側コラム7bの厚さ寸法Tは可動側コラム7cの厚さ寸法Tよりも小さい。
このため、(図6(A)参照)ハット形矢板に囲まれている空間の内側に固定側コラム7bが配置され、囲まれた空間の外側に可動側コラム7cが配置されている。
【0009】
本図6(A)はハット形矢板4Aを挟持する状態を実線で描いてあるが、このチャック機構によってハット形矢板4B(仮想線)を挟持しようとすると、(イ)角度調節の問題と、(ロ)チャック同士の干渉の問題とを解決しなければならない。
上記(イ)項の角度調節については、先に図5を参照して述べたように円弧長孔9を利用して調節することができる。
(ロ)項の干渉の問題について、図6(B)を参照して説明すると次のとおりである。
【0010】
ハット形矢板4Bは、前記のハット形矢板4Aに比して、相対的に深形になっている。このため、2組のチャック機構6A,6Bが互いに近づき、このため双方のチャック機構の固定側コラム7b同士が干渉する(斑点を付して示した)。
(注)この図6(B)は問題点を説明するための模式図であって、実際にこの図どおりの状態が現出する訳ではない。
この干渉を防止するためには、固定側コラム7bの厚さ寸法Tを縮小することが有効であることが、図から容易に想到し得る。
先に図5を参照して説明したように、前記の厚さ寸法Tは専ら強度との関連によって設定される寸法である。
すなわち、チャックシリンダの伸縮力(本例においては伸張力)に因って固定側コラム7bが歪まされる力(ベンディング)に対して、該固定側コラム7bが耐え得なければならない。
【0011】
いま仮に、図5に斑点を付して示した部分を削り取って、鎖線で示した仮想の縮小形状Sならしめることができたならば、前述した干渉の問題が解消され、広範囲の規格のハット形矢板に順応し得ることが、容易に推察される。
のみならず、前記の斑点部を削除し得たならば、チャック機構の重量軽減に大きく貢献することができる。
チャックの重量軽減は、製造コストを低減し、装置の取扱いを容易ならしめるのみでなく、振動による杭打抜き作業のエネルギー効率を向上させる。
【0012】
本発明は上述の事情に鑑みて為されたものであって、チャックシリンダの伸縮力によって固定側コラムが歪まされようとする力を軽減せしめ得る技術を提供しようとするものである。
この技術を応用すると、チャックシリンダの伸縮によって杭(矢板に限定されない)が歪まされようとする力を軽減することもできる。杭の歪みを防止することによって、杭の挟持状態が確実になる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の目的を達成するために創作した本発明の基本的な原理について、その1実施形態に対応する図1を参照して略述すると次のとおりである。
図1(A)は、2組のチャック機構6A,6Bを模式的に描いた平面図である。
上記の(A)図を矢印b方向に視て、チャック6Bの1部分とチャック6Aとを描くと同図(B)のようになる。
本発明は「チャック6Aを構成しているコラム7の固定側コラム7b」と「チャック6Bを構成しているコラムの固定側コラム7b′」との間に、液体を封入して密閉したバッグ(本例では油圧バッグ11)を介装する。
【0014】
上述した原理に基づく具体的な構成として請求項1に係る発明方法は、
(図1参照)相互に一体的に連設された固定側コラム(7b)と可動側コラム(7c)との間に杭(図示省略)を嵌め合わせ、
可動側コラムに設けられているチャックシリンダを伸縮させて杭を挟み付けることにより、該杭の頂部付近を挟持する方法において、
前記チャックシリンダの作動力に因って固定側コラムが歪まされる力の一部分を、密閉された液体(油圧バッグ11)の静圧、または弾性材の反撥力で支承し、固定側コラムの歪みを軽減させることを特徴とする。
【0015】
請求項2に係る発明の構成は、固定側コラムと可動側コラムとの間に杭を嵌め合わせ、可動側コラムに設けられているチャックシリンダを伸縮させて杭を挟み付けることにより該杭を挟持する方法において、
(図3(C)参照)前記チャックシリンダの作動力に因って杭(例えばコの字形矢板14)が歪まされる力の一部分を、密閉された液体(油圧バッグ18)の静圧で支承し、杭の歪みを軽減することを特徴とする。
【0016】
請求項3に係る発明装置の構成は、(図1参照)1対のチャック(6A,6B)を具備しており、
上記チャックのそれぞれが固定側コラム(7b)と可動側コラム(7c)とを備えているとともに、それぞれのチャックの固定側コラムを互いに対向せしめた状態を基本的な姿勢とし、
かつ、上記チャックのそれぞれが、垂直軸周りの角位置を調節し得るようになっている、杭を挟持する装置において、
前記1対のチャックそれぞれに設けられている計2個の固定側コラム(7b,7b′)相互の間に、液体を封入して密閉し得るバッグ(11)、または弾性材が介装されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4に係る発明装置の構成は、(図2参照)1対のチャック(6A,6B)を具備しており、
上記チャックのそれぞれが固定側コラム(図1に示した7b,7b′)と可動側コラム(図1に示した7c)とを備えているとともに、それぞれのチャックの固定側コラムを互いに対向せしめた状態を基本的な姿勢とし、
かつ、上記チャックのそれぞれが、垂直軸周りの角位置を調節し得るようになっている、杭を挟持する装置において、
前記1対のチャックの内の何れか片方のチャック(例えば6A)の、何れか他方のチャック(例えば6B)に対向している箇所に位置せしめて、該他方のチャックに向けて膨出する形状の、液体を封入して密封したバッグ(11)が装着されていることを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る発明方法の構成は(図3(C)参照)、チャックによって杭を挟持する方法において、
該杭がチャック(17)によって挟圧される区域の、杭を介してチャックに対向している空間の中へ「液体を封入した弾性材料製のバッグ(11)」を挿入し、
チャックが杭を変形させようとする力に対して、バッグに封入された液体の静圧を拮抗させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明方法を適用すると、従来においては自己部材の剛性のみに頼って歪みに耐えていた固定側コラムを、液体の静圧で支持されるので歪みにくくなる。
これにより、該固定側コラムの厚さ寸法を縮小しても「チャックシリンダに因る歪み」が軽減される。しかも静圧を利用するので液圧供給に費やされるエネルギーが非常に少なくて済む。
固定側コラムの厚さ寸法を縮小すると、各種規格の矢板に対応できるようになって汎用性が向上するとともに、製造コストが低減され、しかも取扱い操作が容易になる。
その上、チャックコラムの軽量化によって、振動式杭打抜作業のエネルギー効率が改善される。
【0020】
請求項2の発明方法を適用すると、外周部を挟圧されたとき歪みを生じ易い型式の杭であっても、液体の静圧によって歪みを防止されるので、確実に挟持することができる。
しかも静圧を利用するので液圧供給に費されるエネルギーが非常に少なくて済む。
杭を確実に挟持することにより、該杭を正しい姿勢で打設することができ、しかも、該杭に与える振動エネルギーの伝動ロスを軽減することができる。
【0021】
請求項3の発明装置を適用すると、相互に対向している固定側コラムの間に、液体を封入して密閉したバッグを介在せしめることにより、双方の固定側コラムそれぞれが「チャックシリンダの作動力に起因する力」で歪まされようとしても、該双方の固定側コラムのそれぞれを歪ませようとする力の大部分が相互に釣り合って打ち消し合い、固定側コラムの歪みが著しく軽減される。
その結果、固定側コラムの厚さ寸法を縮小せしめることが可能になる。
固定側コラムの厚さ寸法を縮小させると、挟持し得る杭の規格が広範囲になって汎用性を増し、かつ、製造コストが低減され、しかも取扱い操作が容易になる。
さらに、固定側コラムの軽量化によって、振動杭打抜作業のエネルギー効率が向上し、作業能率が増加する。
【0022】
請求項4の発明装置を適用すると、少なくとも何れか片方の固定側コラムに装着されている「液体を封入・密閉したバッグ」が、相互に対向している固定側コラムの間に介在せしめられるので、双方の固定側コラムそれぞれが「チャックシリンダの作動力に起因する力」で歪まされようとしても、該双方の固定側コラムのそれぞれを歪ませようとする力の大部分が相互に釣り合って打ち消し合い、固定側コラムの歪みが著しく軽減される。
その結果、固定側コラムの厚さ寸法を縮小せしめることが可能になる。
固定側コラムの厚さ寸法を縮小させると、挟持し得る杭の規格が広範囲になって汎用性を増し、かつ、製造コストが低減され、しかも取扱い操作が容易になる。
さらに、固定側コラムの軽量化によって、振動杭打抜作業のエネルギー効率が向上し、作業能率が増加する。
【0023】
請求項5の発明方法を適用すると、杭を変形させることなく、該杭の両側を1組のチャック機構で強固に挟みつけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明に係る杭を挟持する装置の1実施形態を示している。
図1(A)は模式的に描いた平面図であり、これを矢印b方向に視たところを(B)図に描いてある。
(A)図に示した6A,6Bは、それぞれチャック機構である。1対(すなわち2組)のチャック機構を本図のように配置してハット形矢板(図外)を挟持することは、従来技術におけると同様の基本姿勢であって、図6を参照して先に述べたとおりである。
【0025】
図1(C)は参考のために示した図であって、(A)図に描かれている2個のチャック6A,6Bの内、片方のチャック6Bを矢印c方向に見て、そのコラム7と突起8とを鎖線で描いてある。
本実施形態における固定側コラム7bは、従来例におけるよりも厚さ寸法Tを短縮してある。比喩的に言えば、図5について述べた「仮想の縮小形状S」に形成してある。
このように固定側コラムの厚さ寸法を縮小し得た理由は、以下に説明する構成により該固定側コラムを油圧的に補強して、歪みにくくしたからである。
【0026】
(図1(B)参照)2個の固定側コラム7bと同7b′とが互いに対向している箇所の中に、油圧バック11を介装する。この油圧バッグ11の断面形状は(A)図に現れている。
本例の油圧バッグ11は、自動車のタイヤに類似した成層ゴム材で密閉された空間を形成し、その中に作業油を封入してある。
本発明の変形例として、チャック機構に設けられているチャックシリンダの油圧系統から圧力油の供給を受けるように構成しても良い。本発明において「液体を封入して密閉」とは、上述のように圧力油の送給を受け得る構造であることを妨げない意である。
【0027】
(図1(B)参照)可動側コラム7cに内蔵されているチャックシリンダが矢印P方向に伸張して杭(図示省略)を固定側コラム7bに押しつけると、該固定側コラム7bは矢印Qのように歪まされようとする。
上記の「固定側コラム7bを歪ませようとする力Q」を、本図(A)について考察すると図示の矢印Qのごとくである。
固定側コラム7bが矢印Q方向に歪もうとすると、油圧バッグ11を同方向に圧迫する。すると、該油圧バッグ11の内圧が上昇して、境界面に垂直な静圧Rがこれに拮抗する。
上述のようにして固定側コラム7bが油圧によって補強され、歪みを防止されるので、その厚さ寸法を縮小しても大きい歪みを生じたり亀裂を生じたりする虞れが無い。
【0028】
図2は、前記と異なる実施形態を示し、図1(A)に対応する模式的な平面図である。
図1の実施形態においては2組のチャック機構6A,同6Bの間に1個の油圧バッグ11を介装したが、これに比して本図2の実施形態においては該2組のチャック機構6A,同6Bのそれぞれに弾性材13を装着した。本例の弾性材は円柱状の強化ゴムである。
本例においては弾性材を、チャック機構に対してアリ結合(ダブテール結合)したが、本発明を実施する際、結合手段は任意に選定することができる。
【0029】
従来技術において、例えばハット形矢板を挟持するために2組のチャック機構を設けた場合、図6(B)を参照して説明したように「双方のチャック機構の固定側コラム同士が干渉する」という問題が有って、多規格の矢板に順応することが制約されていた。
こうした不具合について、図1または図2の実施形態を勘考すると、
従来例における固定側コラムの厚さ寸法Tを、本発明の適用によって厚さ寸法Tに短縮し得るので、各種規格の矢板に順応し得るようになる。
さらに、固定側コラムの厚さ寸法短縮によって、チャック機構のコラムが軽量化され、製造コストが低減され、かつ取扱い操作が容易になる。
しかも、チャック機構の軽量化によって振動式杭打抜機のエネルギー効率が向上する。
【0030】
図3は本発明の応用例を説明するために示したものであって、請求項5に対応する。
(A),(B)両図は従来技術における問題点を描いた模式的な水平断面図、(C),(D)各図はそれぞれ応用例の模式的な水平断面図である。
図3(A)に示したコの字形矢板14は、いわゆるチャンネル型鋼製の杭である。このコの字形矢板のウェブを1組のチャック15で挟持すると、杭の中心gから離れた箇所を把持する形になるので正確な杭打作業が困難である。
上記コの字形矢板14のフランジを2組のチャック16で挟持すると、チャック機構全体の構造が複雑となり、挟持操作に高度の熟練と多大の時間,労力とを要する。
上記の中心gを1組のチャック17,17で矢印p方向に挟みつけると、図3(B)に鎖線で描いたようにフランジが撓むので、強固な把持ができない。
【0031】
そこで図3(C)に示したように、コの字形矢板14で囲まれた空間に、断面が長方形の油圧バッグ18を嵌め合わせる。符合18aは耐圧補強板である。
これにより、1組のチャック17,17で矢印p方向に挟みつけても、コの字形矢板のフランジが撓まず、強固に把持することができる。
図3(D)はH形パイル19を1組のチャック17,17で挟みつけた状態を描いた模式的な水平断面図である。
前記(C)図におけると同様に、フランジの撓みを防止して強固に把持することができる。
【0032】
図7は、前掲の図3と異なる応用例を示し、請求項5に対応する。
鋼管杭21を1組のチャック17で挟持すると図7(A)に鎖線で描いた楕円21′のように弾性変形する。
弾性変形であるから該鋼管杭を廃品ならしめる虞れは無いが、弾性変形すると挟圧力が得られず、強固に把持することができない。強固に把持しようとして無理に挟みつけると弾性の際限を越えて廃品になってしまう。
そこで図7(B)のように2組のチャック17A,同17Bで把持しているのが現在の実情である。
【0033】
そこで図7(C)に示すごとく、鋼管杭がチャック17に対向している箇所の内側空間に、円柱状の油圧バッグ22を挿入する。
本実施形態においては、チャック17を駆動している油圧系統から圧力油(150kg/cm)を導入して該油圧バッグ22を拡張させた。
図に現れていないが、円柱状の油圧バッグ22の頂面と底面とには耐圧補強板を設けてある。この耐圧補強板は、前掲の図3(C)において符合18aを付して示した部材と類似の部材である。
このようにして、鋼管杭を変形させようとする力に対して、油圧バッグの静圧を拮抗させると、該鋼管杭を変形させることなく強固に挟持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】 本発明装置の1実施形態を示し、(A)は模式的な平面図、(B)はそのb矢視図、(C)は同じくc矢視図
【図2】 前掲の図1と異なる実施形態を示し、部分的に破断して描いた模式的な平面図
【図3】 本発明の応用例を説明するために示したもので、(A)および(B)は従来例の杭挟持技術の模式的な平面図、(C)および(D)は本発明を応用した状態を模式的に描いた平面図
【図4】 ハット形矢板を2組のチャック機構で把持している状態を示し、(A)は模式的な正面図、(B)は模式的な平面図
【図5】 チャック装置の基本的な構成を描いた2面図
【図6】 従来技術における課題を説明するために示したもので、(A)は2組のチャックでハット形矢板4Aを把持する様子を描いた模式的な平面図、(B)は上記と異なる規格のハット形矢板4Bを把持する様子を描いた模式的な平面図
【図7】 前掲の図3と異なる応用例を説明するための模式的な平面図
【符号の説明】
【0035】
6A,6B…チャック機構(略称・チャック)
7…コラム
7a…取付ネジ孔
7b,7b′…固定側コラム
7c…可動側コラム
8…突起
10…亀裂
11…油圧バッグ
12…アリ溝(別名・ダブテール)
13…弾性材
14…コの字形矢板(別称・チャンネル型鋼)
15,16,17…チャック機構(略称・チャック)
18…油圧バッグ
19…H形パイル
20,22…油圧バッグ
21…鋼管杭
g…杭の中心
G…矢板嵌合部の厚さ寸法
p…チャックの挟圧方向を表す矢印
P…チャックシリンダの作動方向を表す矢印
Q…固定側チャックが歪まされる力の方向を表す矢印
R…液圧の方向を表す矢印
…可動側コラムの厚さ寸法
…従来例における固定側コラムの厚さ寸法
…本発明装置における固定側コラムの厚さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に一体的に連設された固定側コラムと可動側コラムとの間に杭を嵌め合わせ、
可動側コラムに設けられているチャックシリンダを伸縮させて杭を挟み付けることにより、該杭の頂部付近を挟持する方法において、
前記チャックシリンダの作動力に因って固定側コラムが歪まされる力の一部分を、密閉された液体の静圧、または弾性材の反撥力で支承し、固定側コラムの歪みを軽減させることを特徴とする、杭を挟持する方法。
【請求項2】
固定側コラムと可動側コラムとの間に杭を嵌め合わせ、可動側コラムに設けられているチャックシリンダを伸縮させて杭を挟み付けることにより該杭を挟持する方法において、
前記チャックシリンダの作動力に因って杭が歪まされる力の一部分を、密閉された液体の静圧で支承し、杭の歪みを軽減することを特徴とする、杭を挟持する方法。
【請求項3】
1対のチャック機構を具備しており、
上記チャック機構のそれぞれが固定側コラムと可動側コラムとを備えているとともに、それぞれのチャック機構の固定側コラムを互いに対向せしめた状態を基本的な姿勢とし、
かつ、上記チャック機構のそれぞれが、垂直軸周りの角位置を調節し得るようになっている、杭を挟持する装置において、
前記1対のチャック機構それぞれに設けられている計2個の固定側コラム相互の間に、液体を封入して密閉し得るバッグ、または弾性材が介装されていることを特徴とする、杭を挟持する装置。
【請求項4】
1対のチャック機構を具備しており、
上記チャック機構のそれぞれが固定側コラムと可動側コラムとを備えているとともに、それぞれのチャック機構の固定側コラムを互いに対向せしめた状態を基本的な姿勢とし、
かつ、上記チャック機構のそれぞれが、垂直軸周りの角位置を調節し得るようになっている、杭を挟持する装置において、
前記1対のチャック機構の内の何れか片方のチャック機構の、何れか他方のチャック機構に対向している箇所に位置せしめて、該他方のチャック機構に向けて膨出する形状の、液体を封入して密封したバッグが装着されていることを特徴とする、杭を挟持する装置。
【請求項5】
チャック機構によって杭を挟持する方法において、
該杭がチャック機構によって挟圧される区域の、杭を介してチャックに対向している空間の中へ「液体を封入した弾性材料製のバッグ」を挿入し、
チャック機構が杭を変形させようとする力に対して、バッグに封入された液体の静圧を拮抗させることを特徴とする、杭を挟持する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate