説明

杭打抜機の芯合せ方法、及び同芯合せ装置

【課題】 長尺(例えば約100メートル)の鋼管杭を地上に立てた状態で、クレーンで吊持した杭打抜機を、上記鋼管杭の頂部に装着する技術を改良して、該杭打抜機と鋼管杭頂部との位置関係を、夜間であっても容易に認識できるようにする。
【解決手段】 (A)は従来例,(B)は本発明の1例を示し、チャックを下方から見た底面図である。4個のチャック7が、鋼管杭8(仮想線)に対応させて対称に配置され、その中央部は空間Eになっている。この空間部Eを利用して、チャック7の対称中心の位置に、テレビカメラ10を設けるとともに、その側方には鋼管杭の頂部に向けて投光する杭頂照明ライト11を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭の上端に杭打抜機を装着する際、鋼管杭に対して杭打抜機を芯合せする方法、及び同装置に関するものである。
杭打ち作業および杭抜き作業には多種類の作業態様が有るが、本発明は長尺(例えば約100メートル)の杭を夜間作業で打ち込むに適している。
【背景技術】
【0002】
長尺の杭を地中に打設する際、比較的短い杭材を用いて、これを地中へ打ち込みながら順次に溶接で継ぎ足す工法と、最初から長尺の杭を地上に立てて打ち込んでゆく工法とが有り、本発明は後者の工法(最初から長尺)に属する。
図3は、平成19年末、空港拡張工事のため着工された杭打工事の模式的な計画図である。工事は公然と行なわれるので、本発明の出願は本願発明装置が稼動し始める日以前とした。本図は出願時点においては計画図である。
本例における鋼管杭8は、長さ約90メートル、直径約1.3メートルである。
鋼管の径が数十センチメートル若しくはそれ以下であれば、1個の杭チャックで鋼管杭を把持して打ち込むことができる。
また、鋼管の径が数メートル以上であれば、鋼管の頂部に複数個の杭打抜機を輪状に並べて装着されるのが通例である。
【0003】
本例(図3)の杭打抜機は、直径1.3メートルの鋼管杭を打ち込むために設計製作された新機種であって、複数個の杭用チャックを備えている。
詳しくは、1基の杭打機に4個のチャック7が対称に配設されている(詳細後述)。
鋼管杭8は地上に立てて仮保持されている。クレーン9は、杭打抜機を吊り上げて、前記鋼管杭の頂部まで搬送する。その手順は次のとおりである。
杭打抜機の構造については図4および図5を参照して後に詳しく説明する。
杭打抜機はクレーン9によって図3の符号1Aで示したように、鋼管杭8の頂上よりも高く吊り上げられ、矢印aのように鋼管杭8のほぼ真上の位置1Bまで誘導されて移動せしめられる。
【0004】
鋼管杭8に直近の位置1Cまでは、比較的速やかに吊り降ろされ(矢印b)、
鋼管杭直近の上方位置1Cにおいて水平方向に微動させ(往復矢印c,c′)て芯合わせされてから、更に徐降(矢印d)され、
4個のチャック7が鋼管杭の頂部円を四等分する箇所を把持する。
前記の芯合わせは、後述するチャックのガイド(図5)によって自動的に修正されるが、大きく狂っていると自動修正可能範囲を外れてしまうので、数センチメートル以内の誤差に留めたい、この精度は、例えば工作機械類に比べるとラフである。しかし、90メートルの上空で行なわれることを考えると、高度の熟練を以てしても容易でないことが理解されよう。
【0005】
図4は前記杭打抜機の正面図である。以下に、その構造の概要を説明する。
杭打抜機の全体に符号1を付する。
符号2を付して示したのは起振部である。本例では、4軸の偏心重錘式起振機によって構成されている。
符号3を付して示したのは駆動部である。本例では電気モータによって構成されている。
符号4を付して示したのは緩衝部であって、駆動部3で発生した振動がクレーンに伝わらないよう、吊りバネによって構成されている。符号5は吊り具である。
【0006】
前記起振部2の下方に、剛性の大きいチャックベース6が固着され、その下側に4個のチャック7が設置されている。図において符号7′を付したチャックは側面を見せており、かつ、2個のチャックが重なって、1個だけが描かれている。
これら4個のチャック7を下方から見ると図1(A)のごとくである。
なお、本発明においては、正常な使用状態を描いた図3に基づいて上,下を呼称する。
図4,図5も同様に、図における上下と呼称の上下とが一致しており、図1だけが底面図であって、図の紙面に直角な方向が上下方向である(紙面手前が下方)。
図1(A)において、仮想線で鋼管杭8の位置を示してある。4個のチャック7は、上記鋼管杭8を対称に把持するように配設されて
参考線Sは対称に配置する基準とした円であり、符号Oは対称の中心点である。
4個のチャックの間には障害物の無い中央空間部Eが形成されている。
【0007】
前記4個のチャック7は相互に同形同寸であり、その内の1個をとって2面図に描くと図5のごとくである。
チャックは一般に固定爪7aと可動爪7bとを対向せしめて構成されている。
可動爪7bは枢支軸7cで軸支されたレバー構造であって、シリンダ7dによって傾動せしめられる。
前記固定爪7aと可動爪7bとのそれぞれには、耐摩耗性の焼入鋼で作られた挟持歯7eが装着されていて、平行に対向している。
【0008】
図5において符号8を付して示したのは、チャックによる把持の対象物である鋼管杭の部分的断面である。
静止している鋼管杭8の上方からチャックが徐降してくると、該鋼管杭8はチャックに対して相対的に上昇する。
鋼管杭8の管壁(図においてハッチングを付す)が上昇して、2個の挟持歯7e,7eの間に入ることは容易でないから、固定爪7aの下端にガイド7fが取り付けられている。
図示の矢印gは、鋼管杭8がガイド7fに接触したとき、滑りながら導かれる経路を示している。
参考線X−Xは、チャックベース(図4において符号6)に対する取付面を表わしている。
2個の挟持歯7e,7eの間隔寸法と鋼管杭8の厚さ寸法との差は僅かであるが、前記のガイド7fが設けられているので、鋼管杭に対する杭打抜機の芯合わせ作業には、数センチメートル程度の誤差が許容される。
しかし、芯狂い寸法(芯合せ誤差)が大きくて、鋼管杭がガイド7fの案内斜面を外れると芯合わせ作業は失敗である。
チャックにガイドを設けることについては、例えば特開2001−317052公報に記載された技術が公知である。しかし、図3に例示したように約100メートルの上空で芯合わせすることは考慮されていなかった。さらに、夜間作業は考慮に入っていなかった。夜間作業とは、必ずしも太陽の昇降に限定されず、環境照明が明るくない状態の意である。
【特許文献1】特開2001−317052公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図3に示した鋼管杭の打設計画においては、鋼管の長さ寸法が90メートルであり、しかも、1日3交替で24時間連続工事になる。
地上から振り仰ぐ90メートルの上空は途方もなく高く感じられ、杭打抜機は小さく、鋼管杭上端は細く見える。
明視距離は30センチメートルであるから、90メートル離れると明視距離の300倍の遠方から視ている勘定である。その大きさは必然的に、明視距離における大きさの1/300に見える。
直径1.3メートルの鋼管は、直径4.6ミリメートル、鉛筆よりも細く見える。
これは文学的表現ではなく科学的な計算である。
【0010】
従来においては、図3と類似の芯合わせ操作を、作業員の熟練と、前記ガイドの作用とに頼って行なってきたのであるが、鋼管杭の長さ寸法が90メートルに及び、夜間も作業しなければならなくなって、遂に可能の限界を越えた。
従来技術の範囲内で強いて行なおうとするならば、
鋼管杭は通常列設されるものであるから、打設しつつある鋼管杭に隣接した既設杭が有ることを利用して、
既設杭の上に照明灯を取りつけて新設杭の頂上付近を照らしながら、既設杭の頂上に登った現場監督が指図して杭打抜機を誘導しなければならない。
地上から投光器で鋼管杭の頂部を照らしても、照明角度の関係から、有効な作業支援にはならない。
【0011】
本発明は上述の事情に鑑みて為されたものであって、その目的とするところは、地上に立てられた長尺の鋼管杭の上端に対して、クレーンで吊持された杭打抜機を容易に迅速に誘導し、かつ芯合わせすることのできる方法、および同装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、課題を解決するため、前掲の図3に表された作業条件を作り出して実験して、技術的困難の情況と原因とを探求し、次の知見を得た。
a.芯合わせしようとする杭打抜機までの距離が遠くて、小さくしか見えない上に、いくら照明しても、背景が夜空であるから位置感が掴めない。
b.芯合わせ対象である鋼管杭の上端部が旨く照明されないので、杭打抜機との相対的な位置関係を掴むことができない。
そこで本発明者らは、杭打抜機の位置を推定するためのテレビカメラを設けるとともに、鋼管杭の上端部を照明する手段を設けた。
【0013】
上述の原理に基づいて創作した請求項1の発明方法は、複数個のチャック(7)を備えた杭打抜機を、地上に立てて支持されている鋼管杭(8)の上端よりも高い位置(1A)に吊り上げ、
上記の杭打抜機をほぼ水平方向(矢印a)に移動させて鋼管杭のほぼ真上の位置(1B)に導き、
該杭打抜機を吊り降ろして、鋼管杭に衝突する虞れの無い近距離の位置(1C)で下降を停止させ、
更に水平方向(矢印c,c′)に微調節して、前記複数個のチャックのそれぞれを、鋼管杭の上端に正対させるように芯合わせした後、
杭打抜機を徐降させて、鋼管杭の上端の複数箇所を、それぞれ前記複数のチャックに挿入する方式の杭打抜機芯合わせ方法において、
前記の杭打抜機に対して前記複数個のチャック(7)を「杭打抜機の中心に対して同心の円」に沿わせて対称に配置するとともに、対称中心に位置せしめて、テレビカメラ(10)を真下に向けて設置しておき、
かつ、該テレビカメラの下方に向けて投光する杭頂照明用のライト(11)を設置しておいて、
前記杭打抜機を鋼管杭のほぼ真上(1B)へ誘導する際、前記杭頂照明用ライト(11)を発光させて鋼管杭の頂面を照明しつつ、前記テレビカメラで鋼管杭の頂面を撮像し、
撮像されたテレビ画面に映っている鋼管杭像を観察することにより、該鋼管杭に対するテレビカメラの位置すなわち鋼管杭に対する杭打抜機の相対的な位置関係を認識し、
上記鋼管杭像がテレビ画面の中央へ来るように、杭打抜機を鋼管杭のほぼ真上(1B)へ導き、
鋼管杭像をテレビ画面中央に位置せしめて杭打抜機を吊り降ろし(矢印b)、
テレビ画面中の鋼管杭像の拡大状態を観察して、杭打抜機のチャックと鋼管杭との間の距離を判定して、衝突する虞れの無い近距離位置(1c)で吊り降ろしを停止し、
テレビ画面上において鋼管杭像が所定の位置となるように、杭打抜機を水平方向に微調節(矢印c,c′)して芯合わせすることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明方法は、前記請求項1の発明方法の構成要件に加えて、前記複数個のチャック(7)のそれぞれに、『鋼管杭の上端がチャックに挿入されて挿入ストロークの終点に達したとき、該鋼管杭の当接を受けて作動する接触センサ(12)』を設けておき、
前記の杭打抜機を鋼管杭の上端にほぼ正対させてから徐降(矢印d)させる際、前記接触センサ(12)の出力信号によって鋼管杭の挿入完了を感知し、チャックのシリンダ(7a)を作動せしめて鋼管杭を把持することを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明装置の構成は、杭打抜機の起振部(2)に固着されたチャックベース(6)の下方に、複数個のチャック(7)が対称に配置されていて、
前記チャックベースの下側に、対称に配置されたチャックの対称中心に位置せしめて、
杭打抜機が吊持された状態における真下方向に向けられて、テレビカメラが装着されており、
かつ、前記チャックベースに、前記テレビカメラの下方に向けて投光する杭頂照明用のライト(11)が設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明装置の構成は、前記請求項3の発明装置の構成要件に加えて、前記チャック(7)の固定爪(7a)と可動爪(7b)とが対向しており、
対向している双方の爪を平行2辺とするコの字形の凹部が形成されていて、
上記コの字形凹部の平行2辺にほぼ直交する行き止まり箇所付近に位置せしめて、この凹部へ挿入された鋼管杭の当接を受け得る構造の接触センサ(12)が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明方法を適用すると、対称に配置されている複数個のチャックの中心にテレビカメラ(10)が設けられているので、テレビ画面に映し出される鋼管杭を見ることによって、該鋼管杭と「テレビカメラを装着した杭打抜機」との位置関係が分かり、杭頂の高度が100メートル程度に高くても、また夜空を背景にしていても、その位置が容易に、かつリアルタイムで認識され、容易に誘導することができる。
しかも、杭打抜機に設置された杭頂照明ライトによって鋼管杭の頂部が照明されるので、夜間であっても明確にテレビ画像を視認できる。
【0018】
請求項2の発明方法を適用すると、チャックの中へ鋼管杭が確実に挿入されたか否かを容易にかつリアルタイムで確認できるので、チャックによる鋼管杭の把持操作に失敗したことに気付かずに次の作業工程(油圧操作による鋼管杭の挟圧)へ進んでしまう虞れが無い。
【0019】
請求項3に係る発明装置を適用すると、この発明に係る芯合せ装置を備えた杭打抜機を「地上に立てて支持されている鋼管杭」の上方へ吊り上げると、テレビカメラで撮像される画面の中に前記の鋼管杭が映し出される。
これにより、該テレビカメラが装着されている杭打抜機と鋼管杭との位置関係を、リアルタイムで視認することができるので、該杭打抜機が鋼管杭の真上へ来るように誘導することが容易に可能である。
【0020】
請求項4に係る発明装置を適用すると、チャックの中へ鋼管杭が挿入されたことを確実に感知することができるので、安心して、かつ自信を持って次の工程に進むことができ、
杭打設工事の信頼性を高め、かつ作業能率を上昇させることができる。
換言すれば、請求項4の発明装置によると、請求項2の発明方法を容易に実施して、その効果を充分に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1(A)は、先に説明したように従来例に係る杭打抜機のチャック配置を模式的に描いた底面図である。
この従来例に本発明装置(請求項3)を適用して改良すると図1(B)のごとくである。
4個のチャック7は、鋼管杭8を把持するため、従来技術においても対称に配置されている。ここに言う対称は線対称ではなく、回転対称(点対称)であり、符号Sは対称円、符号Oは対称中心である。
【0022】
図1(B)の実施形態においては、前記の対称中心に位置せしめてテレビカメラ10が設置されている。
上記のテレビカメラ10は、チャックベース(図4において符号6の部材)に装着されて激しい振動を受けることになるから、耐振性に優れたものであることが望ましい。ただし、このテレビカメラは、次の段落で説明するように、チャック操作に使用される部材であって、振動杭打時には休止しておけば良いから、耐振性について格別に難くはない。
【0023】
前記(図1(B))のように構成された芯合せ装置の使用例について、
図2と図3とを併せて参照しつつ以下に説明する。
クレーン9によって、杭打抜機を図3に示した位置1Aのように鋼管杭8の頂部よりも高く吊り上げる。
この状態で、符号Tvで示した箇所に装着されているビデオカメラによるテレビ画面は図2(A)のごとくであって、鋼管杭の映像は映っていない。
テレビ画面15の中央部には、鋼管杭を描いた目標マーク15aが、静止像として表されている。
本発明を実施する場合、上記の目標マーク15aは、透明板に描画したマークであっても良く、ブラウン管又は液晶画面に映し出された電気的映像であっても良い。
【0024】
(図3参照)杭打抜機を、1Aの位置から1Bの位置(鋼管杭8のほぼ上方)まで、矢印aのように移動させると、図2(B)のように、テレビ画面15の片隅に、鋼管杭の遠景画像16が入ってくる。
遠景画像である理由は、杭打抜機の位置1Bが、鋼管杭8の頂面よりも高所に在るからである。
もし遠景画像16がテレビ画面に入ってこなければ、杭打抜機を1B位置付近で、水平方向に少し動かしてみると良い。
夜間の作業である場合は、図1(B)に示した杭頂照明ライト11によって鋼管杭8の頂部を照明しながらテレビカメラ10で撮像する。
【0025】
遠景画像16をキャッチしたら、該遠景画像が目標マーク15aの真中へ来るように、杭打抜機を誘導する。真中へ来たとき、画面は図2(C)のごとくである。
本例においてはクレーン8の運転席(図外)にテレビ画面15を置き、運転者が画像を見ながらクレーンを操作して以下の芯合わせを行なった。
この操作は、別段の熟練を必要とせず、容易に行なうことができる。
【0026】
テレビ画面の中の遠景画像15aが図2(C)のように目標マーク15aの中心付近へ来たならば、杭打抜機は図3の1B位置(鋼管杭8のほぼ真上)に在るものと判断する。
ほぼ真上の「ほぼ」とは、未だ芯合わせが完了していないことを表している。
そこで、図3に示した矢印bのように、杭打抜機を吊り降ろす。
吊り降ろすに従って、該杭打抜機に装着されているテレビカメラが鋼管杭8の頂面に近づくから、該頂面の画像が大きくなる。
図2(D)のように、鋼管杭頂面の像が大きくなって、目標マーク15aと同じ大きさの近景画像17になると、杭打抜機が図3の1C位置に達したものと判断する。
正確に言えば、予め目標マーク15の大きさを、1C位置(衝突する虞れの無い範囲内で間近の位置)の鋼管杭画像と等しいように描いておく。
このようにしておけば近景画像17が目標マーク15aと等しい大きさになったとき、杭打抜機が1C位置に来ていることになる。
(注)遠景画像と近景画像とは、説明のための便宜上の呼び名であって、両者の間に明確な境界は無い。
【0027】
図2(D)のように近景画像17が目標マーク15aと同じ大きさになって、杭打抜機が図3の1C位置まで降下したと判断されたならば、同図の矢印c,c′のように水平方向に微調節して、図2(E)のように近景画像17を目標マーク15aに対して同心に合わせる。これにより芯合わせが完了するから、図3に示した矢印dのように、徐々に吊り降ろして、チャック7の中へ鋼管杭8の頂部を挿入せしめる。
この際、チャックにはガイド7f(図5を参照して、段落0008で既述)が設けられているから、前記の芯合わせはセンチメートル単位の許容誤差を有している。このため、テレビ画面によって充分な精度の芯合わせが可能である。
【0028】
次いで、芯合わせ作業の後期工程として(図5参照)チャックのシリンダ7dを操作し、2個の挟持歯7eで鋼管杭8の管壁を挟圧する。
このとき大切なことは、鋼管杭8が完全に挟持歯7eの間に挿入されているか否かを確認することである。
もし、充分に挿入されていない状態で鋼管杭を挟持しようとすると、芯合わせ作業は失敗に終るのみでなく、そのまま起振機を作動させるとチャック等の損傷を招く虞れが有る。
【0029】
そこで本実施形態においては図5に示すように、鋼管杭の挿入を検知する接触センサ12を設ける。
接触センサにしたのは、簡単で安価、かつ耐振性に優れた接触センサで足りるからである。高価であることを承知の上で非接触センサで代替しても、本発明の応用であって本発明の技術的範囲に属する。
該接触センサ12を設ける箇所は、2個の挟持歯7eを平行2辺とするコの字形凹部の奥が良い。しかし、センサの性能や形状寸法など、何らかの理由によってコの字形凹部の奥以外の箇所にセンサを設けても、本発明の応用形態であって、その技術的範囲に属するものである。
上述のようにして鋼管杭の上端がチャックに挿入されたことを確認すると、シリンダ7dを操作して鋼管杭を挟持し、芯合わせ作業の後期工程を完了する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】 チャックを下方から見て描いた模式的な底面図であって、(A)は従来例を、(B)は本発明の実施形態を、それぞれ表している。
【図2】 本発明装置を用いて本発明方法を実施した1例におけるテレビ画面の変化を描いた工程図である。
【図3】 鋼管杭の上端部に対して杭打抜機を装着する作業の工程を説明するための正面図である。
【図4】 従来例の杭打抜機の正面図である。
【図5】 杭打抜機用のチャックを描いた2面図であって、本発明に係る接触センサ12の設置箇所を仮想線で描いてある。
【符号の説明】
【0031】
1…杭打抜機
1A…クレーンで吊り上げられた杭打抜機の位置
1B…鋼管杭のほぼ真上まで移動した杭打抜機の位置
1C…鋼管杭に直近まで吊り降ろされた杭打抜機の位置
2…杭打抜機の起振部
3…杭打抜機の駆動部
4…杭打抜機の緩衝部
5…吊り具
6…チャックベース
7…チャック
7a…固定爪
7b…可動爪
7c…枢支軸
7d…シリンダ
7e…挟持歯
7f…ガイド
8…鋼管杭
9…クレーン
10…テレビカメラ
11…杭頂照明ライト
12…接触センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のチャック(7)を備えた杭打抜機を、地上に立てて支持されている鋼管杭(8)の上端よりも高い位置(1A)に吊り上げ、
上記の杭打抜機をほぼ水平方向(矢印a)に移動させて鋼管杭のほぼ真上の位置(1B)に導き、
該杭打抜機を吊り降ろして、鋼管杭に衝突する虞れの無い近距離の位置(1C)で下降を停止させ、
更に水平方向(矢印c,c′)に微調節して、前記複数個のチャックのそれぞれを、鋼管杭の上端に正対させるように芯合わせした後、
杭打抜機を徐降させて、鋼管杭の上端の複数箇所を、それぞれ前記複数のチャックに挿入する方式の杭打抜機芯合せ方法において、
前記の杭打抜機に対して前記複数個のチャック(7)を「杭打抜機の中心に対して同心の円」に沿わせて対称に配置するとともに、対称中心に位置せしめて、テレビカメラ(10)を真下に向けて設置しておき、
かつ、該テレビカメラの下方に向けて投光する杭頂照明用のライト(11)を設置しておいて、
前記杭打抜機を鋼管杭のほぼ真上(1B)へ誘導する際、前記杭頂照明用ライト(11)を発光させて鋼管杭の頂面を照明しつつ、前記テレビカメラで鋼管杭の頂面を撮像し、
撮像されたテレビ画面に映っている鋼管杭像を観察することにより、該鋼管杭に対するテレビカメラの位置すなわち鋼管杭に対する杭打抜機の相対的な位置関係を認識し、
上記鋼管杭像がテレビ画面の中央へ来るように、杭打抜機を鋼管杭のほぼ真上(1B)へ導き、
鋼管杭像をテレビ画面中央に位置せしめて杭打抜機を吊り降ろし(矢印b)、
テレビ画面中の鋼管杭像の拡大状態を観察して、杭打抜機のチャックと鋼管杭との間の距離を判定して、衝突する虞れの無い近距離位置(1c)で吊り降ろしを停止し、
テレビ画面上において鋼管杭像が所定の位置となるように、杭打抜機を水平方向に微調節(矢印c,c′)して芯合わせすることを特徴とする、杭打抜機の芯合せ方法。
【請求項2】
前記複数個のチャック(7)のそれぞれに、『鋼管杭の上端がチャックに挿入されて挿入ストロークの終点に達したとき、該鋼管杭の当接を受けて作動する接触センサ(12)』を設けておき、
前記の杭打抜機を鋼管杭の上端にほぼ正対させてから徐降(矢印d)させる際、前記接触センサ(12)の出力信号によって鋼管杭の挿入完了を感知し、チャックのシリンダ(7a)を作動せしめて鋼管杭を把持することを特徴とする、請求項1に記載した杭打抜機の芯合せ方法。
【請求項3】
杭打抜機の起振部(2)に固着されたチャックベース(6)の下方に、複数個のチャック(7)が対称に配置されていて、
前記チャックベースの下側に、対称に配置されたチャックの対称中心に位置せしめて、
杭打抜機が吊持された状態における真下方向に向けられて、テレビカメラが装着されており、
かつ、前記チャックベースに、前記テレビカメラの下方に向けて投光する杭頂照明用のライト(11)が設けられていることを特徴とする、杭打抜機の芯合せ装置。
【請求項4】
前記チャック(7)の固定爪(7a)と可動爪(7b)とが対向しており、
対向している双方の爪を平行2辺とするコの字形の凹部が形成されていて、
上記コの字形凹部の平行2辺にほぼ直交する行き止まり箇所付近に位置せしめて、この凹部へ挿入された鋼管杭の当接を受け得る構造の接触センサ(12)が設けられていることを特徴とする、請求項3に記載した杭打抜機の芯合せ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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