説明

杭打機

【課題】 リーダをベースマシン上部に略水平に倒伏した輸送時に、オーガ駆動装置を移動させる誤操作をしたことをオペレータに知らせる。
【解決手段】 ベースマシン2に起伏可能に設けたリーダ3の起伏状態を判別するリーダ起伏リミットスイッチLSdと、オーガ駆動装置7の移動操作を検出する下降パイロット圧検出プレッシャースイッチ26及び上昇パイロット圧検出プレッシャースイッチ27と、リーダ5の倒伏時にオーガ駆動装置7の移動操作を行うと警報を発するブザーBとを有し、該ブザーBの作動時に、オーガ移動用油圧回路29を遮断してオーガ駆動装置7の移動を停止させる遮断弁30を作動させる電気回路40を油圧回路12に付設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダをベースマシン上部に略水平に倒伏した輸送時に、リーダに搭載したオーガ駆動装置を移動させる誤操作をしたことをオペレータに知らせる杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機では、ベースマシンに起伏可能に設けたリーダを、作業時にはベースマシン前部に立設し、該リーダに沿ってオーガ駆動装置を昇降させ、輸送時には前記オーガ駆動装置を搭載したリーダを前記ベースマシン上部に略水平に倒伏して格納するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この種の杭打機では、リーダの起伏時に、前記オーガ駆動装置がリーダの所定の位置に停止していないと、リーダのバランスが崩れるため、リーダの起伏角度検出及びオーガ駆動装置の位置検出機構が備えられており、それぞれの位置関係が不適切な場合は安全装置が働いて、リーダの起伏が停止する電気回路が備えられている。この電気回路は、図7に示されるように、リーダの起伏角度を検出するリーダ起伏リミットスイッチLSaと、リーダの左右傾斜角度を検出するリーダ傾斜リミットスイッチLSbと、オーガ駆動装置がリーダのどの位置にあるかを検出するオーガ駆動装置位置検出リミットスイッチLScと、リーダの起伏を停止するリーダ起伏停止リレーRとを備えており、前記リーダ起伏リミットスイッチLSaは、リーダが起立状態のときにオープンし、リーダを倒伏させていくとクローズし、前記オーガ駆動装置位置検出リミットスイッチLScは、オーガ駆動装置がリーダの上部に位置するときはクローズし、オーガ駆動装置がリーダの所定の位置に下降したときにオープンする。したがって、リーダを倒伏させていくときに、オーガ駆動装置がリーダの上部に位置していると、前記起伏停止リレーRが作動して、リーダの起伏を停止させるソレノイド弁SOLが励磁されてリーダ起伏回路が遮断されて、リーダの起伏が停止するとともに、ブザーBにより警報が発せられる。
【特許文献1】特開平10−121474号公報 第1〜3頁、図1,7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述の構造では、リーダの倒伏位置に関わらず、オーガ駆動装置の移動は可能となっていた。このため、リーダをベースマシン上部に略水平に倒伏した輸送状態で、オペレータが誤ってオーガ駆動装置の移動操作レバーに触れたりすると、オーガ駆動装置が移動して、ベースマシン上のキャブやハウスを壊してしまうおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、リーダをベースマシン上部に略水平に倒伏した輸送時に、リーダに搭載したオーガ駆動装置を移動させる誤操作をしたことをオペレータに知らせる杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するため、本発明は、ベースマシンに起伏可能に設けたリーダと、該リーダに沿って移動可能に搭載されたオーガ駆動装置と、該オーガ駆動装置の移動用油圧回路とを備え、輸送時に前記リーダを倒伏させて前記ベースマシン上部に略水平に格納する杭打機において、前記リーダの起伏状態を判別する起伏判別手段と、前記オーガ駆動装置の移動操作を検出する操作検出手段と、前記リーダの倒伏時に前記オーガ駆動装置の移動操作を行うと警報を発する警報手段とを有する電気回路を前記移動用油圧回路に付設したことを特徴としている。また、前記移動用油圧回路には、前記警報手段の作動時に、移動用油圧回路を遮断して前記オーガ駆動装置の移動を停止させる遮断弁が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明は、リーダを倒伏させた状態で、オーガ駆動装置の操作レバーを動かすと、警報を発してオペレーターに異常を知らせるから、杭打機の輸送時に、オペレータが誤ってオーガ駆動装置の移動操作レバーに触れても、オーガ駆動装置が移動して、ベースマシン上のキャブやハウスを壊してしまうおそれがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図面に示される実施形態例に基づいて説明する。杭打機1は、ベースマシン2を下部走行体3と上部旋回体4とで構成し、上部旋回体4の前部に起伏可能に設けたリーダ5をリーダ起伏シリンダ6にて起伏し、前記リーダ5にオーガ駆動装置7をリーダ5に沿って移動可能に設け、前記リーダ5の下部に配置したチェーンドライブモータ8とリーダ5の上部に配置したスプロケットに掛け回されたチェーン9の各端部を前記オーガ駆動装置7の上下にそれぞれ連結し、作業時には、前記チェーンドライブモータ8の駆動により、立設した前記リーダ5に沿って前記オーガ駆動装置7を昇降させる。
【0009】
前記上部旋回体4には、運転席を覆うキャブ10が設けられ、該キャブ10の後部に杭打機1を駆動する油圧装置を収納する駆動源収納部11が設けられている。この杭打機1を駆動する油圧回路12は、前記下部走行体3の走行操作弁13、前記オーガ駆動装置7の油圧モータの回転操作弁14、前記リーダ起伏シリンダ6のリーダ起伏操作弁15、スタビライザの操作弁16、前記リーダ5の左右角度を調整するチルト操作弁17、予備回路の操作弁18、前記オーガ駆動装置7の移動用操作弁19、前記上部旋回体4の旋回操作弁20等を備えている。前記リーダ起伏操作弁15と前記リーダ起伏シリンダ6との間の回路21には、前記リーダ5の起伏時に、前記オーガ駆動装置7がリーダの所定の位置に停止していない場合に、前記リーダ5の起伏を停止させるリーダ起伏停止ソレノイド弁22が設けられている。
【0010】
前記キャブ10内の運転席には、前記各操作弁13〜20をそれぞれリモートコントロール弁を介して操作する操作レバーが設けられている。このうち、前記オーガ駆動装置7の移動用操作弁19の操作レバーのリモートコントロール弁23は、操作レバーを前後に動かすと前記オーガ駆動装置7が昇降するもので、前記リモートコントロール弁23は、第1ポートと前記移動用操作弁19のパイロットaポートとの間に下降用パイロット圧回路24を、第2ポートと前記移動用操作弁19のパイロットbポートとの間に上昇用パイロット圧回路25をそれぞれ接続し、前記下降用パイロット圧回路24に下降パイロット圧検出プレッシャースイッチ26を、前記上昇用パイロット圧回路25に上昇パイロット圧検出プレッシャースイッチ27をそれぞれ設けている。
【0011】
前記移動用操作弁19は、前記チェーンドライブモータ8との間に、上昇用圧油供給回路28と下降用油圧供給回路29とをそれぞれ接続し、該下降用圧油供給回路29に、前記オーガ駆動装置7の移動停止ソレノイド弁30を設けている。
【0012】
次に、この油圧回路12に付設される電気回路の第1実施形態例を説明する。図1に示される電気回路40は、前記したリーダ起伏停止回路に、リーダの倒伏状態時のオーガ駆動装置移動停止回路を付設したものであって、該オーガ駆動装置移動停止回路は、前記リーダ5の起伏状態を判別する起伏判別手段と、前記オーガ駆動装置7の移動操作を検出する操作検出手段と、前記リーダ5の倒伏時に前記オーガ駆動装置7の移動操作を行うと警報を発する警報手段と、前記移動停止ソレノイド弁30とを備えている。
【0013】
すなわち、電気回路40は、電源に接続されるヒューズ41から3本の回線42,43,44を分岐し、回線42と回線43側にリーダ起伏停止回路を、回線43と回線44側にオーガ駆動装置移動停止回路をそれぞれ構成している。前記リーダ起伏停止回路は、回線42をリーダ起伏停止リレーR1の接点3に接続し、回線43を前記リーダ起伏判別手段としてのリーダ起伏リミットスイッチLSaに接続している。該リーダ起伏リミットスイッチLSaは、ノーマルオープンa接点リミットスイッチで、リーダ5の起立状態ではオープンし、リーダ5を所定角度倒伏させるとクローズする。このリーダ起伏リミットスイッチLSaには、ノーマルオープンa接点リミットスイッチのリーダ傾斜リミットスイッチLSbと、オーガ駆動装置がリーダのどの位置にあるかを検出するノーマルクローズb接点リミットスイッチのオーガ駆動装置位置検出リミットスイッチLScとが回線43aを介して接続され、両リミットスイッチLSb,LScからの回線43bは、前記リーダ起伏停止リレーR1の接点4に接続されている。該リーダ起伏停止リレーR1の接点2には、前記リーダ起伏停止ソレノイド弁22とブザーBとが接続されている。この構成によって、前記したように、リーダ5を倒伏させていくときに、オーガ駆動装置7がリーダ5の上部に位置していると、前記リーダ起伏停止リレーR1が作動して、リーダ5の起伏を停止させる前記リーダ起伏停止ソレノイド弁22が励磁されてリーダ起伏回路が遮断されて、リーダ5の起伏が停止するとともに、ブザーBにより警報が発せられる。
【0014】
前記オーガ駆動装置移動停止回路は、回線43から分岐した回線43cに前記リーダ起伏判別手段としてのノーマルオープンa接点リミットスイッチのリーダ起伏リミットスイッチLSdに接続し、該リーダ起伏リミットスイッチLSdからの回線43dをオーガ移動停止リレーR2の接点4に接続している。回線44は、前記オーガ駆動装置7の移動操作を検出する操作検出手段としての前記下降パイロット圧検出プレッシャースイッチ26及び前記上昇パイロット圧検出プレッシャースイッチ27に接続され、該下降パイロット圧検出プレッシャースイッチ26及び上昇パイロット圧検出プレッシャースイッチ27からの回線44aは、前記オーガ移動停止リレーR2の接点3に接続され、該オーガ移動停止リレーR2の接点1には、前記ブザーBへの回線44bと、前記移動停止ソレノイド弁30への回線44cが接続されている。この構成により、リーダ5を所定角度以上倒伏させると、前記リーダ起伏リミットスイッチLSdがクローズし、前記オーガ移動停止リレーR2が作動して、接点3に基端を接続されているリレースイッチRSは先端を接点2に接続する。この状態で、オーガ駆動装置7の操作レバーを動かすと、前記下降パイロット圧検出プレッシャースイッチ26又は前記上昇パイロット圧検出プレッシャースイッチ27のいずれかが接続し、前記ブザーBが鳴って警報を発するとともに、前記移動停止ソレノイド弁30が励磁されて前記下降用油圧供給回路29が遮断され、オーガ駆動装置7の移動が停止する。
【0015】
図5に示される電気回路50は、第2実施形態例を示すもので、前記リーダ起伏リミットスイッチLSaのノーマルクローズb接点を用い、リーダ5を所定角度以上倒伏させると、前記オーガ移動停止リレーR2のリレースイッチRSの先端が接点1に接続するようにし、該接点1に前記ブザーBへの回線44bと、前記移動停止ソレノイド弁30への回線44cとを接続したもので、その他の構成は前記第1実施形態例と同様である。この構成では、リーダ5が所定角度以上倒伏した状態で、オーガ駆動装置7の操作レバーを動かすと、前記下降パイロット圧検出プレッシャースイッチ26又は前記上昇パイロット圧検出プレッシャースイッチ27のいずれかが接続し、前記ブザーBが鳴って警報を発するとともに、前記移動停止ソレノイド弁30が励磁されて前記下降用油圧供給回路29が遮断され、オーガ駆動装置7の移動が停止する。
【0016】
図6に示される電気回路60は、前記第2実施形態例の電気回路からオーガ駆動装置7の移動を停止する前記移動停止ソレノイド弁30を除いて簡略化した第3実施形態例を示すもので、この構成では、リーダ5が所定角度以上倒伏した状態で、オーガ駆動装置7の操作レバーを動かすと、前記下降パイロット圧検出プレッシャースイッチ26又は前記上昇パイロット圧検出プレッシャースイッチ27のいずれかが接続し、前記ブザーBが鳴って警報を発してオペレーターに異常を知らせる。
【0017】
このように、リーダ5を倒伏させた状態で、オーガ駆動装置7の操作レバーを動かすと、ブザーBが鳴って警報を発してオペレーターに異常を知らせ、第1,2実施形態例では、オーガ駆動装置7の移動を停止させるから、杭打機1の輸送時に、オペレータが誤ってオーガ駆動装置7の移動操作レバーに触れても、オーガ駆動装置7が移動せず、したがって、ベースマシン2上のキャブ10を壊してしまうおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態例の電気回路図
【図2】リーダを立設した杭打機の側面図
【図3】リーダを倒伏した杭打機の側面図
【図4】杭打機の油圧回路図
【図5】本発明の第2実施形態例の電気回路図
【図6】本発明の第3実施形態例の電気回路図
【図7】従来の電気回路図
【符号の説明】
【0019】
1…杭打機、2…ベースマシン、3…下部走行体、4…上部旋回体、5…リーダ、6…リーダ起伏シリンダ、7…オーガ駆動装置、8…チェーンドライブモータ、9…チェーン、10…キャブ、12…油圧回路、15…リーダ起伏操作弁、19…オーガ駆動装置7の移動用操作弁、22…リーダ起伏停止ソレノイド弁、23…リモートコントロール弁、26…下降パイロット圧検出プレッシャースイッチ、27…上昇パイロット圧検出プレッシャースイッチ、28…上昇用圧油供給回路、29…下降用圧油供給回路、30…移動停止ソレノイド弁、40,50,60…電気回路、LSa…リーダ起伏リミットスイッチ、LSc…オーガ駆動装置位置検出リミットスイッチ、LSd…リーダ起伏リミットスイッチ、R1…リーダ起伏停止リレー、R2…オーガ移動停止リレー、B…ブザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンに起伏可能に設けたリーダと、該リーダに沿って移動可能に搭載されたオーガ駆動装置と、該オーガ駆動装置の移動用油圧回路とを備え、輸送時に前記リーダを倒伏させて前記ベースマシン上部に略水平に格納する杭打機において、前記リーダの起伏状態を判別する起伏判別手段と、前記オーガ駆動装置の移動操作を検出する操作検出手段と、前記リーダの倒伏時に前記オーガ駆動装置の移動操作を行うと警報を発する警報手段とを有する電気回路を前記移動用油圧回路に付設したことを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記移動用油圧回路には、前記警報手段の作動時に、移動用油圧回路を遮断して前記オーガ駆動装置の移動を停止させる遮断弁が設けられていることを特徴とする請求項1記載の杭打機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−77426(P2006−77426A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261146(P2004−261146)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】