説明

杭打機

【課題】ワイヤロープの干渉を防止することができるガントリを備える杭打機を提供すること。
【解決手段】杭打機50によれば、ガントリ1は、支持部材31によって支持軸30を主軸4よりも下方において支持することで第2シーブ6を第1シーブ5よりも下方に配設し、サードロープ77をリーダ起伏ロープ71より下方において支持することができる。これにより、サードロープ77をハンガ20の下方からリーダ60側へ導くことができる。よって、ハンガ20とブライドル80との間に巻回されリーダ60側へ導かれたリーダ起伏ロープ71のロープ間を通さずにサードロープ77をリーダ60側へ導くことができるので、リーダ起伏ロープ71とサードロープ77との干渉を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、特に、ワイヤロープの干渉を防止することができるガントリを備える杭打機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガントリとは、例えば、特開昭58−195625号公報に開示されるAフレームのように、杭打機やクレーンに設けられ、それら杭打機のリーダやクレーンのブームを起伏させるワイヤロープを支持するためのものである。ここで、図5を参照して、杭打機に設けられるガントリについて説明する。
【0003】
図5に示すように、ガントリ101は、ハイガントリ101aと、そのハイガントリ101aの頂部に設けられるシーブ101bとを主に備えて構成され、そのシーブ101bには、起伏ロープ102が支持されている。起伏ロープ102は、一端側が起伏ドラム103によって巻上げられる一方、他端側がハンガ104とブライドル105との間に巻回されてハンガ104に取り付けられ、起伏ドラム103からハンガ104へ至るまでの間をガントリ101のシーブ101bによって支持されている。また、ブライドル105にはペンダントロープ106の一端側が取り付けられ、そのペンダントロープ106の他端側がリーダ107に取り付けられている。これにより、起伏ドラム103によって起伏ロープ102を巻上げることで、ペンダントロープ106を介してリーダ107を起伏させることができる。
【0004】
また、図5に示すように、ガントリ101のシーブ101bには、更に、杭圧入用ロープ108が支持されている。杭圧入用ロープ108は、一端側が第4のドラム109によって巻上げられる一方、他端側がハンマ110に取り付けられ、第4のドラム109からハンマ110へ至るまでの間をガントリ101のシーブ101bによって支持されている。この杭圧入用ロープ108は、ハンガ104の上方(図5上側)からハンガ104とブライドル105との間に巻回された起伏ロープ102のロープ間を通してハンマ110へ導かれている。
【0005】
ところで、杭圧入用ロープ108が第4のドラム109によって巻上げられる際の角度、いわゆるフリートアングルは、一般に、その角度が小さいほど(例えば、2度以下)、第4のドラム109への杭圧入用ロープ108の乱巻きを抑制することができる。即ち、ガントリ101においては、ハイガントリ101aを延長してガントリ101を大型化することで、シーブ101bを第4のドラム109から遠ざけることが望まれる。
【0006】
しかしながら、ガントリ101を大型化すると、その分、コストの増加や安全性の低下を招くので、シーブ101bを第4のドラム109から遠ざけるには限界がある。そこで、従来より、シーブ101bをスライド自在に構成し、そのシーブ101bを杭圧入用ロープ108の動きに合わせてスライドさせることで、フリートアングルを小さくして第4のドラム109への杭圧入用ロープ108の乱巻きを抑制する技術が採用されていた。
【特許文献1】特開昭58−195625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように、杭圧入用ロープ108は、ハンガ104とブライドル105との間に巻回された起伏ロープ102のロープ間を通してハンマ110へ導かれているので、シーブ101bをスライドさせる場合には、杭圧入用ロープ108と起伏ロープ102とが干渉してしまうという問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ワイヤロープの干渉を防止することができるガントリを備える杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を解決するために請求項1記載の杭打機は、軸状の主軸と、その主軸に軸支される第1シーブと、前記主軸に揺動自在に軸支されるハンガとを有し、リーダを起伏させる第1ワイヤロープを前記第1シーブによって支持すると共に、前記第1シーブによって支持された第1ワイヤロープを前記ハンガから離間して設けられたブライドルと前記ハンガとの間に巻回して前記リーダ又はブーム側へ導くガントリを備えるものであって、前記ガントリは、軸状の支持軸と、その支持軸にスライド自在に軸支されると共に第2ワイヤロープを支持する第2シーブと、前記支持軸を前記主軸よりも下方において支持する支持部材とを備え、その支持部材によって前記支持軸を前記主軸よりも下方において支持することで前記第2シーブを前記第1シーブよりも下方に配設し、前記第2ワイヤロープを前記第1ワイヤロープより下方において支持して、前記第2ワイヤロープを前記ハンガの下方から前記リーダ又はブーム側へ導く。
【0010】
請求項2記載の杭打機は、請求項1記載の杭打機において、前記支持部材は、前記主軸に揺動自在に軸支されている。
【0011】
請求項3記載の杭打機は、請求項1又は2に記載の杭打機において、前記支持部材は、前記支持軸を両側で支持するように一対設けられ、その一対の支持部材は、前記支持軸の外径よりも大きく形成される当接部をそれぞれ備えている。
【0012】
請求項4記載の杭打機は、請求項1から3のいずれかに記載の杭打機において、前記ハンガが前記支持部材側へ揺動した場合または前記支持部材が前記ハンガ側へ揺動した場合に、前記ハンガと前記第2シーブとの間に隙間を形成するために、前記ハンガ又は前記支持部材に当接する前記ハンガ又は前記支持部材のうちの少なくとも一方に突設された突設部を備えている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の杭打機によれば、ガントリは、支持部材によって支持軸を主軸よりも下方において支持することで第2シーブを第1シーブよりも下方に配設し、第2ワイヤロープを第1ワイヤロープより下方において支持することができる。これにより、第2ワイヤロープをハンガの下方からリーダ又はブーム側へ導くことができる。よって、ハンガとブライドルとの間に巻回されつつリーダ又はブーム側へ導かれた第1ワイヤロープのロープ間を通さずに第2ワイヤロープをリーダ又はブーム側へ導くことができるので、第1ワイヤロープと第2ワイヤロープとの干渉を防止することができるという効果がある。
【0014】
請求項2記載の杭打機によれば、請求項1記載の杭打機の奏する効果に加え、支持部材は、主軸に揺動自在に軸支されているので、第2ワイヤロープが引っ張られる方向へ支持部材が揺動することができる。よって、支持部材に無理な力が加わることを防止できるので、支持部材の破損等を防止することができる。その結果、耐久性の向上を図ることができるという効果がある。
【0015】
請求項3記載の杭打機によれば、請求項1又は2に記載の杭打機の奏する効果に加え、支持部材は、支持軸を両側で支持するように一対設けられ、その一対の支持部材は、支持軸の外径よりも大きく形成される当接部をそれぞれ備えているので、第2シーブが支持部材の当接部に当接することで第2シーブのスライドを規制することができると共に、そのスライド範囲を一対の支持部材間に形成された隙間によって規制することができる。よって、第2シーブのスライドとスライド範囲とを規制する構造を支持部材によって兼用することができるので、構造の簡略化を図ることができるという効果がある。
【0016】
請求項4記載の杭打機によれば、請求項1から3のいずれかに記載の杭打機の奏する効果に加え、ハンガ又は支持部材のうちの少なくとも一方に突設された突設部を備えているので、ハンガが支持部材側へ揺動した場合または支持部材がハンガ側へ揺動した場合に、突設部がハンガ又は支持部材に当接することでハンガと第2シーブとの間に隙間が形成される。よって、ハンガと第2シーブとの干渉を防止することができるという効果がある。従って、第2シーブの機能性を確保することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態における杭打機50の側面図である。
【0018】
まず、図1を参照して、杭打機50の概略構成について説明する。杭打機50は、パイルPを地盤へ打ち込む杭打ち作業を行うための車両であり、図1に示すように、走行装置51と、その走行装置51に支持される上部旋回体52と、その上部旋回体52の前部(図1右側)に配設されるリーダ60と、上部旋回体52の後部(図1左側)に配設されるガントリ1とを主に備えて構成されている。
【0019】
走行装置51は、杭打機50を走行させるための装置であり、図1に示すように、複数の車輪51aと、それら複数の車輪51aに掛架されるクローラベルト51bとを備え、そのクローラベルト51bによって前後進および旋回を行うクローラとして構成されている。
【0020】
上部旋回体52は、リーダ60やガントリ1等の各種設備が配設される杭打機50の本体であり、図1に示すように、旋回装置53を介して走行装置51に支持されると共に、その旋回装置53によって旋回自在に構成されている。なお、本実施形態では、旋回装置53は、駆動源と、その駆動源から与えられる駆動力によって駆動される油圧モータと、その油圧モータの駆動を上部旋回体52の旋回運動に変換する歯車機構(いずれも図示せず)とを主に備えて構成されている。
【0021】
リーダ60は、パイルPを地盤へ打ち込むハンマ61や地盤を掘削するためのオーガ(図示せず)を支持するものであり、図1に示すように、上部旋回体52の前部(図1右側)に設けられたブラケット54のピン54aに軸支されている。
【0022】
このリーダ60は、リーダドラム70に巻回されたリーダ起伏ロープ71によって持ち上げられ、ブラケット54のピン54aを支点として起伏される。また、リーダ起伏ロープ71によって起伏された後は、リーダ60に一端が連結された支柱体55の他端が上部旋回体52に連結されることで、立設した状態で上部旋回体52に固定される。
【0023】
リーダドラム70は、リーダ60を起伏させるリーダ起伏ロープ71を駆動装置(図示せず)の駆動力によって巻上げるものであり、図1に示すように、上部旋回体52の後部(図1左側)に配設されている。リーダ起伏ロープ71は、図1に示すように、一端側がリーダドラム70によって巻上げられる一方、他端側がハンガ20とブライドル80との間に巻回されつつハンガ20に取り付けられ、リーダドラム70からハンガ20に至るまでの間を後述するガントリ1の第1シーブ5によって支持されている。
【0024】
また、ブライドル80にはペンダントロープ81の一端側が取り付けられ、そのペンダントロープ81の他端側がリーダ60に取り付けられている。これにより、リーダドラム70によってリーダ起伏ロープ71を巻上げることで、ペンダントロープ81を介してリーダ60を起伏させることができる。
【0025】
また、図1に示すように、上部旋回体52には、リーダドラム70の他にも、メインドラム72、サブドラム74及びサードドラム76が配設されている。メインドラム72は、ハンマ61を昇降させる主巻ロープ73を駆動装置(図示せず)の駆動力によって巻上げるものであり、図1に示すように、上部旋回体52の略中央部に配設されている。主巻ロープ73は、図1に示すように、一端側がメインドラム72によって巻上げられる一方、他端側がハンマ61に取り付けられ、メインドラム72からハンマ61に至るまでの間をブラケット54に配設されたボトムシーブ56と、リーダ60の上部(図1上側)に配設されたトップシーブ57とによって支持されている。
【0026】
サブドラム74は、パイルPを懸吊する補巻ロープ75を駆動装置(図示せず)の駆動力によって巻上げるものであり、上部旋回体52の略中央部にメインドラム72と並設して配設されている。補巻ロープ75は、図1に示すように、一端側がサブドラム74によって巻上げられる一方、他端側がパイルPに取り付けられ、サブドラム74からパイルPに至るまでの間をボトムシーブ56と、トップシーブ57とによって支持されている。
【0027】
サードドラム76は、オーガ(図示せず)を昇降させるサードロープ77を駆動装置(図示せず)の駆動力によって巻上げるものであり、上部旋回体52の後部(図1左側)にリーダドラム70と併設して配設されている。サードロープ77は、図1に示すように、一端側がサードドラム76によって巻上げられる一方、他端側がオーガに取り付けられ、サードドラム76からオーガに至るまでの間を後述するガントリ1の第2シーブ6と、ブラケット54に配設されたガイドシーブ58と、トップシーブ57とによって支持されている。即ち、ガントリ1の第2シーブ6に支持されることで、一端、ガントリ1の上部(図1上側)を経由して取り回されている。これにより、上部旋回体52においてサードドラム76よりも前方(図1右側)に配設されたメインドラム72やサブドラム74に制約されることなく、サードロープ77をガイドシーブ58へ導くことができる。
【0028】
ガントリ1は、上述したようにリーダ起伏ロープ71及びサードロープ77を支持するためのものであり、図1に示すように、前脚2と、その前脚2に連結される後脚3と、それら前脚2と後脚3とを連結する主軸4とを主に備えて構成されている。
【0029】
前脚2は、図1に示すように、柱状に構成されると共に、下端が上部旋回体52に連結され、上端が上部旋回体52の後部(図1左側)側へ傾斜して立設されている。後脚3は、図1に示すように、柱状に構成されると共に、下端が前脚2よりも後方(図1左側)に連結され、略垂直に立設されている。これら前脚2及び後脚3の上端には、挿通穴2a,3a(図2(a)参照)がそれぞれ穿設され、それら挿通穴2a,3aに主軸4が挿通されることで前脚2と後脚3とが連結されている。
【0030】
また、ガントリ1は、左右に一対の前脚2と一対の後脚3とを備え、それら一対の前脚2と一対の後脚3とが主軸4によってそれぞれ連結されている(図2(a)参照)。
【0031】
ここで、図2を参照して、ガントリ1の詳細構成について説明する。図2(a)は、図1の矢印IIa方向から視たガントリ1の上面図であり、図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線におけるガントリ1の断面図である。なお、図2では、発明の理解を容易とするために、前脚2及び後脚3の一部が省略されていると共に、リーダ起伏ロープ71及びサードロープ77が2点鎖線を用いて図示されている。
【0032】
主軸4は、図2に示すように、前脚2に穿設された挿通穴2aと後脚3に穿設された挿通穴3aとにそれぞれ挿通されると共に、両端がボルト90によって後脚3に締結されている。また、主軸4には、図2(a)に示すように、第1シーブ5が回動自在に軸支されている。
【0033】
第1シーブ5は、リーダ起伏ロープ71を支持するものであり、図2に示すように、円盤状に構成され、外周面には掛止溝5aが凹設されている。この掛止溝5aには、リーダ起伏ロープ71が掛止されている。
【0034】
また、第1シーブ5は、リーダ起伏ロープ71がリーダドラム70によって巻上げられる際のフリートアングルを小さくしてリーダドラム70へのリーダ起伏ロープ71の乱巻きを抑制するため、主軸4の軸心O1方向へスライド自在に構成されている。このため、ガントリ1には、図2に示すように、第1シーブ5のスライド範囲を規制するスペーサ10が設けられると共に、そのスペーサ10を固定するために、挿通部材11と、一対の保持部材12と、第1カラー13と、第2カラー14とが設けられている。
【0035】
ここで、図3(a)及び図3(b)を参照して、スペーサ10について説明する。図3(a)は、スペーサ10の正面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線におけるスペーサ10の断面図である。
【0036】
スペーサ10は、図3(a)及び図3(b)に示すように、第1挿通部10aと、第2挿通部10bと、それら第1挿通部10aと第2挿通部10bとを連結する連結部10c,10dとを備えて構成されている。
【0037】
第1挿通部10aは、図3(a)及び図3(b)に示すように、円筒状に構成され、内径が後述する挿通部材11の外径と略同一径に構成されると共に、軸心方向の長さがL1に構成されている。この第1挿通部10aには、挿通部材11が挿通される(図2(a)参照)。
【0038】
第2挿通部10bは、図3(a)及び図3(b)に示すように、円筒状に構成され、内径が主軸4の外径と略同一径に構成されると共に、軸心方向の長さが第1挿通部10aと略同一長さのL1に構成されている。また、この第2挿通部10bは、連結部10c,10dによって第1挿通部10aに連結されることで第1挿通部10aと略平行に配設されている。この第2挿通部10bには、主軸4が挿通される(図2(a)参照)。
【0039】
連結部10cは、図3(a)及び図3(b)に示すように、平板状に構成され、一方の対辺が第1挿通部10aの外周面と第2挿通部10bの外周面とにそれぞれ連結されている。連結部10dは、図3(a)及び図3(b)に示すように、平板状に構成され、第1挿通部10aの端部と第2挿通部10bの端部とをそれぞれ連結している。
【0040】
図2に戻って説明する。挿通部材11は、上述したようにスペーサ10の第1挿通部10aに挿通される部材であり、図2(a)に示すように、軸状に構成され、軸心方向の長さがL2に構成されている。具体的には、主軸4の軸心O1方向の長さよりも短く、且つ、スペーサ10の第1挿通部10a(第2挿通部10b)の長さL1よりも長く構成されている。また、挿通部材11は、両端が一対の保持部材12によって保持されることで主軸4と略平行に配設されると共に、図2(b)に示すように、後述する第1カラー13に挿通された状態において、第1シーブ5と第1カラー13との間に形成される隙間S1の間隔がリーダ起伏ロープ71のロープ径よりも小さくなるように、第1シーブ5の周縁に対向して配設されている。
【0041】
保持部材12は、図2に示すように、板状に構成され、図2(b)に示すように、挿通穴12aが穿設されている。この挿通穴12aに主軸4が挿通されることで、保持部材12が主軸4に揺動自在に軸支されている。また、保持部材12は、図2(b)に示すように、ガントリ1の後方側(図2(b)左側)へ向けて突設される突設部12bを備えている。この突設部12bに挿通部材11の端部がボルト95によって固定されることで、挿通部材11の両端が一対の保持部材12によって保持されている。更に、保持部材12は、ガントリ1の前方側(図2右側)へ向けて延設され、この延設部分にハンガ20が配設されることで、ハンガ20が主軸4に揺動自在に軸支されている。
【0042】
ハンガ20は、上述したようにブライドル80との間でリーダ起伏ロープ71を巻回するものであり、図2に示すように、ハンガシーブ21と、そのハンガシーブ21を支持する一対の板部材22とを主に備えて構成されている。
【0043】
ハンガシーブ21は、図2に示すように、円盤状に構成され、外周面には掛止溝21aが凹設されている。この掛止溝21aには、リーダ起伏ロープ71が掛止されている。また、ハンガシーブ21は、軸部材23によって板部材22に回動自在に軸支されている。なお、本実施形態では、図2に示すように、3個のハンガシーブ21が積重されると共に、合計6個のハンガシーブ21がハンガ20に設けられている。
【0044】
板部材22は、図2に示すように、板状に構成され、一対の保持部材12の延設部分に架設されている。また、一対の板部材22は、互いに対向して配設され、その対向間にハンガシーブ21が配設されている。更に、板部材22には、ブライドル80との間で巻回されたリーダ起伏ロープ71の端部が取り付けられている。
【0045】
第1カラー13及び第2カラー14は、挿通部材11が挿通される部材である。ここで、図3(c)及び図3(d)を参照して、第1カラー13について説明する。図3(c)は、第1カラー13の正面図であり、図3(d)は、第1カラー13の側面図である。
【0046】
第1カラー13は、図3(c)及び図3(d)に示すように、円筒状に構成され、内径が挿通部材11の外径と略同一径に構成されると共に、軸心方向の長さがL3に構成されている。この第1カラー13には、挿通部材11が挿通される(図2(a)参照)。
【0047】
なお、ここでは、第1カラー13について説明したが、第1カラー13と第2カラー14とは、軸心方向の長さのみが異なり、第2カラー14の軸心方向の長さは、L4に構成されている。また、第1カラー13及び第2カラー14の長さL3,L4とスペーサ10の第1挿通部10a(第2挿通部10b)の長さL1とを足し合わせた合計は、挿通部材11の長さL2と略同一長さに構成されている(図2(a)参照)。
【0048】
図2に戻って説明する。上述のように構成される第1カラー13は、図2(a)に示すように、挿通部材11が挿通されると共に、スペーサ10と一対の保持部材12のうちの一方の保持部材12(図2(a)上側の保持部材12)との間に介設されている。また、第2カラー14は、図2(a)に示すように、挿通部材11が挿通されると共に、スペーサ10と一対の保持部材12のうちの他方の保持部材12(図2(a)下側の保持部材12)との間に介設されている。
【0049】
これにより、第1カラー13の一端がスペーサ10の第1挿通部10aに当接する一方、他端が保持部材12(図2(a)上側の保持部材12)に当接すると共に、第2カラー14の一端がスペーサ10の第1挿通部10aに当接する一方、他端が保持部材12(図2(a)下側の保持部材12)に当接することで、スペーサ10を一対の保持部材12間に固定することができる。
【0050】
また、第1シーブ5がスペーサ10の第2挿通部10b及び保持部材12(図2(a)上側の保持部材12)に当接することで第1シーブ5のスライドを規制することができると共に、スペーサ10の第2挿通部10bと保持部材12(図2(a)上側の保持部材12)との間に第1カラー13の長さL3分の隙間が形成されることで、その隙間の間隔によって第1シーブ5のスライド範囲を規制することができる。
【0051】
ところで、第2カラー14の一端がスペーサ10の第1挿通部10aに当接する一方、他端が保持部材12(図2(a)下側の保持部材12)に当接することで、スペーサ10の第2挿通部10bと保持部材12(図2(a)下側の保持部材12)との間に第2カラー14の長さL4分の隙間が形成される。この隙間に対応する部分には、第2シーブ6が配設されている。
【0052】
ここで、図4を参照して、かかる隙間に対応する部分のガントリ1の詳細構成について説明する。図4(a)は、図2(a)の矢印IVa方向から視たガントリ1の背面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線におけるガントリ1の断面図である。なお、図4では、発明の理解を容易とするために、ガントリ1の一部が省略されていると共に、サードロープ77が2点鎖線を用いて図示されている。また、図4(b)では、ハンガ20が支持部材31側へ揺動した状態が2点鎖線を用いて図示されている。
【0053】
第2シーブ6は、サードロープ77を支持するものであり、図4に示すように、円盤状に構成され、外周面には掛止溝6aが凹設されている。この掛止溝6aには、サードロープ77が掛止されている。また、第2シーブ6は、支持軸30に回動自在に軸支されると共に、サードロープ77がサードドラム76によって巻上げられる際のフリートアングルを小さくしてサードドラム76へのサードロープ77の乱巻きを抑制するため、支持軸30の軸心O2方向へスライド自在に構成されている。
【0054】
支持軸30は、図4に示すように、両端側が一対の支持部材31によって支持されることで主軸4と略平行に配設され、主軸4よりも下方(図4下側)に配設されている。これにより、第2シーブ6が第1シーブ5よりも下方(図4下側)に配設されている。
【0055】
支持部材31は、図4に示すように、板状に構成され、図4(b)に示すように、挿通穴31aが穿設されている。この挿通穴31aに主軸4が挿通されることで、支持部材31が主軸4に揺動自在に軸支されている。また、支持部材31は、図4(b)に示すように、主軸4の外径よりも大きく形成される当接部31bを備えており、その当接部31bには、挿通穴31b1が穿設されている。この挿通穴31b1に支持軸30が挿通され、支持されている。これにより、第2シーブ6が支持部材31の当接部31bに当接することで第2シーブ6のスライドを規制することができると共に、そのスライド範囲を一対の支持部材31間に形成された隙間の間隔によって規制することができる。
【0056】
また、支持部材31には、図4(b)に示すように、支持部材31が主軸4に軸支された状態において、ハンガ20側およびその反対側へ向けてそれぞれ突設される突設部31cを備えている。これにより、ハンガ20が支持部材31側へ揺動した場合または支持部材31がハンガ20側へ揺動した場合に、突設部31cがハンガ20に当接することでハンガ20と第2シーブ6との間に隙間が形成される。よって、ハンガ20と第2シーブ6との干渉を防止することができる。従って、第2シーブ6の機能性を確保することができる。
【0057】
また、突設部31cには、図4に示すように、脱落防止部材40が配設されている。脱落防止部材40は、第2シーブ6からのサードロープ77の脱落を防止するためのものであり、図4に示すように、パイプ41と、ボルト42と、そのボルト42に螺合されるナット43とを備えている。
【0058】
パイプ41は、図4に示すように、円筒状に構成され、一対の支持部材31間に形成される隙間と略同一長さに構成されている。このパイプ41は、ボルト42が沿通され、両端がボルト20とナット21とによって一対の支持部材31に固定されることで支持軸30と略平行に配設されると共に、図4(b)に示すように、第2シーブ6との間に形成される隙間S2の間隔がサードロープ77のロープ径よりも小さくなるように、第2シーブ6の周縁に対向して配設されている。これにより、第2シーブ6からのサードロープ77の脱落を防止することができる。
【0059】
上述のように構成される杭打機50によれば、ガントリ1は、支持部材31によって支持軸30を主軸4よりも下方(図4下側)において支持することで第2シーブ6を第1シーブ5よりも下方(図4下側)に配設し、サードロープ77をリーダ起伏ロープ71より下方(図4下側)において支持することができる。これにより、サードロープ77をハンガ20の下方(図4下側)からリーダ60側へ導くことができる。よって、ハンガ20とブライドル80との間に巻回されつつリーダ60側へ導かれたリーダ起伏ロープ71のロープ間を通さずにサードロープ77をリーダ60側へ導くことができるので、リーダ起伏ロープ71とサードロープ77との干渉を防止することができる。
【0060】
また、支持部材31は、主軸4に揺動自在に軸支されているので、オーガの昇降に伴ってサードロープ77が引っ張れる方向へ支持部材31が揺動することができる。よって、支持部材31に無理な力が加わることを防止できるので、支持部材31の破損等を防止することができる。その結果、耐久性の向上を図ることができる。
【0061】
また、第2シーブ6のスライドとスライド範囲とを規制する構造を支持部材31によって兼用することができるので、構造の簡略化を図ることができる。
【0062】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0063】
例えば、上記実施形態では、ガントリ1の第2シーブ6によってサードロープ77を支持する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、主巻ロープ73を支持するように構成しても良く、或いは、補巻ロープ75を支持するように構成しても良い。
【0064】
また、上記実施形態では、支持部材31が主軸4に揺動自在に軸支される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、主軸4に固定しても良い。なお、支持部材31の破損等を防止するべく、支持部材31を主軸4に揺動自在に軸支することが望ましい。
【0065】
また、上記実施形態では、支持部材31に突設部31cが設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、支持部材31側へ向けて突設される突設部をハンガ20に設けても良く、或いは、支持部材31の突設部31cに加えてハンガ20に突設部を設けても良い。この場合にも、ハンガ20が支持部材31側へ揺動した場合または支持部材31がハンガ20側へ揺動した場合に、ハンガ20に設けられた突設部が支持部材31に当接することでハンガ20と第2シーブ6との間に隙間が形成されるので、ハンガ20と第2シーブ6との干渉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態における杭打機の側面図である。
【図2】(a)は、図1の矢印IIa方向から視たガントリの上面図であり、(b)は、図2(a)のIIb−IIb線におけるガントリの断面図である。
【図3】(a)は、スペーサの正面図であり、(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線におけるスペーサの断面図である。また、(c)は、第1カラーの正面図であり、(d)は、第1カラーの側面図である。
【図4】(a)は、図2の矢印IV方向から視たガントリの背面図であり、(b)は、図4(a)のIVb−IVb線におけるガントリの断面図である。
【図5】従来の杭打機の側面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ガントリ
4 主軸
5 第1シーブ
6 第2シーブ
20 ハンガ
30 支持軸
31 支持部材(一対の支持部材の一部)
31b 当接部
30c 突設部
50 杭打機
60 リーダ
71 リーダ起伏ロープ(第1ワイヤロープ)
77 サードロープ(第2ワイヤロープ)
80 ブライドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状の主軸と、その主軸に軸支される第1シーブと、前記主軸に揺動自在に軸支されるハンガとを有し、リーダを起伏させる第1ワイヤロープを前記第1シーブによって支持すると共に、前記第1シーブによって支持された第1ワイヤロープを前記ハンガから離間して設けられたブライドルと前記ハンガとの間に巻回して前記リーダ又はブーム側へ導くガントリを備える杭打機において、
前記ガントリは、
軸状の支持軸と、
その支持軸にスライド自在に軸支されると共に第2ワイヤロープを支持する第2シーブと、
前記支持軸を前記主軸よりも下方において支持する支持部材とを備え、
その支持部材によって前記支持軸を前記主軸よりも下方において支持することで前記第2シーブを前記第1シーブよりも下方に配設し、前記第2ワイヤロープを前記第1ワイヤロープより下方において支持して、前記第2ワイヤロープを前記ハンガの下方から前記リーダ又はブーム側へ導くことを特徴とする特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記支持部材は、前記主軸に揺動自在に軸支されていることを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【請求項3】
前記支持部材は、前記支持軸を両側で支持するように一対設けられ、
その一対の支持部材は、前記支持軸の外径よりも大きく形成される当接部をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の杭打機。
【請求項4】
前記ハンガが前記支持部材側へ揺動した場合または前記支持部材が前記ハンガ側へ揺動した場合に、前記ハンガと前記第2シーブとの間に隙間を形成するために、前記ハンガ又は前記支持部材に当接する前記ハンガ又は前記支持部材のうちの少なくとも一方に突設された突設部を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の杭打機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−127944(P2008−127944A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317084(P2006−317084)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】