説明

杭打設システム

【課題】障害物の影響を抑え、測量時の正確性を高める。
【解決手段】この杭打設システムは、鋼管杭の位置を測量するためのトータルステーションと、トータルステーションのターゲットとなる光学プリズムとを備えている。光学プリズムは、鋼管杭の上端部に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打設システムに係り、特に後方交会を用いた杭打設システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場においては、鋼管杭を打設する工事を行う際に、鋼管杭を杭リーダーにより支持し、打設位置を自動追尾しながら打設するシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。打設位置の認識は、当該杭リーダーの下部に光学プリズムを設置し、この光学プリズムを測量用ターゲットとしたトータルステーションにより実現されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−121219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した杭打設システムであると、光学プリズムが杭リーダーの下部に設置されているので、例えば重機等の障害物がトータルステーションと光学プリズムとの間に存在していると、それが障害物となってトータルステーションから光学プリズムが認識できないおそれがある。
このため、本発明の課題は、障害物の影響を抑え、測量時の正確性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係る杭打設システムは、
鋼管杭の位置を測量するためのトータルステーションと、
前記トータルステーションのターゲットとなる光学プリズムとを備え、
前記光学プリズムは、前記鋼管杭の上端部に設置されていることを特徴としている。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の杭打設システムにおいて、
前記鋼管杭は、鋼管矢板と当該鋼管矢板に対して同方向に延在する継手とを備え、
前記継手は、前記鋼管矢板に隣接して設けられていて、その上端位置が前記鋼管矢板の上端よりも下方に配置されており、
前記光学プリズムは、前記継手の上端部に設置されていることを特徴としている。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の杭打設システムにおいて、
前記光学プリズムは、前記継手の上端部における略中央に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、光学プリズムが鋼管杭の上端部に設置されているので、障害物がトータルステーションと光学プリズムとの間に存在していたとしても、光学プリズムが障害物よりも上方に位置することになり、障害物を回避することができる。したがって、障害物の影響を抑え、測量時の正確性を高めることができる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、鋼管杭の継手の上端部に光学プリズムが設置されているので、鋼管杭をバイブロハンマーで打設する際にバイブロハンマーの妨げにならない位置に光学プリズムを設置することができる。
請求項3記載の発明によれば、継手の上端部における略中央に光学プリズムが配置されているので、鋼管矢板の中心と光学プリズムまでの位置を一定にすることができる。これにより、鋼管矢板の中心、すなわち設計座標までのオフセット設定を統一することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の杭打設システムが適用される鋼管杭の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の杭打設システムの全体構成を示す概略図である。
【図3】図2の杭打設システムに備わるプリズム用取付具の概略構成を示す正面図である。
【図4】図3に示すプリズム用取付具の概略構成を示す下面図である。
【図5】本実施形態の継手用取付具の概略構成を示す斜視図である。
【図6】図5の継手用取付具の概略構成を示す下面図である。
【図7】図6の継手用取付具がカバーに覆われた状態を示す正面図である。
【図8】本実施形態の鋼管杭とバイブロハンマーとを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して本実施形態を詳細に説明する。まず、本実施形態の杭打設システムが適用される鋼管杭について説明する。図1は、鋼管杭の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように鋼管杭1は、円筒状の鋼管矢板11と、当該鋼管矢板11に対して同方向に延在する継手12とを備えている。継手12は、鋼管矢板11に隣接して一体的に設けられていて、その上端位置が鋼管矢板11の上端よりも下方に配置されている。また、継手12は、略円筒状に形成されていて、その一部に上下方向に沿う切欠13が形成されている。なお、打設時においては、鋼管杭1の上端部にはバイブロハンマーH(図8参照)が設置されていて、バイブロハンマーHを介してクレーンCにより保持されている。
【0012】
図2は本実施形態の杭打設システムの全体構成を示す概略図である。図2に示すように杭打設システム2は、トータルステーション3と、2つの基準用光学プリズム4,5と、トータルステーション3のターゲットとなる光学プリズム6と、トータルステーション3の通信用パソコン7と、通信用パソコン7からトータルステーション3の測定結果が入力される操作用パソコン8とを備えている。操作用パソコン8は、その画面上にトータルステーション3の測定結果が表示される。鋼管杭1を位置決めするクレーンCのオペレーターは、その表示内容に基づき、クレーンCを操作して鋼管杭1を所定の位置に位置合わせして、打設する。
【0013】
トータルステーション3は、基準用光学プリズム4,5を基に後方交会を行うことで、ターゲットとなる光学プリズム6の三次元位置を測定するものである。基準用光学プリズム4,5は後方交会の基準となるそれぞれ別の基準位置に設置されている。光学プリズム6は、打設予定の鋼管杭1の上端部に設置されている。
【0014】
ここで、鋼管杭1の上端部に光学プリズム6を取り付けるためのプリズム用取付具20について説明する。図3はプリズム用取付具20の概略構成を示す正面図であり、図4は下面図である。図3及び図4に示すように、プリズム用取付具20は、鋼管矢板11の曲率に対応するように湾曲した本体部21と、本体部21と鋼管矢板11とを係止する係止ボルト22とを備えている。本体部21の上面には、光学プリズム6が取り付けられる取付穴23が設けられている。本体部21の下面には、鋼管矢板11が係合される係合溝24が形成されており、この係合溝24に対して係止ボルト22が本体部21の外周面から出没するようになっている。係合溝24に鋼管矢板11の上端部が挿入されて、係止ボルト22を締めることで、鋼管矢板11にプリズム用取付具20が固定され、光学プリズム6も取り付けられることになる。
【0015】
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、杭打設前にトータルステーション3、基準用光学プリズム4,5及び光学プリズム6を設置する。基準用光学プリズム4,5は後方交会の基準となるそれぞれ別の基準位置に設置し、光学プリズム6はプリズム用取付具20を介して鋼管矢板11の上端部に取り付ける。
その後、鋼管矢板11に取り付けた光学プリズム6の位置をトータルステーション3によって自動連続測距しながら、鋼管杭1の位置を検出する。この測定結果は通信用パソコン7を介して操作用パソコン8に随時表示されているため、クレーンCのオペレーターは当該画面を見ながら鋼管杭1を打設位置まで移動させる。
【0016】
打設位置に移動させたら、その座標位置をトータルステーション3及び操作用パソコン8に打設基準位置として登録し、再度トータルステーション3により自動連続測距を行う。その後、オペレーターはバイブロハンマーを駆動させて打設を開始する。打設時においても常に鋼管杭1の座標位置が操作用パソコン8に表示されているので、オペレーターはその測定結果を基に位置ズレ等を補正しつつ打設を継続する。
【0017】
なお、打設時においては、地中の空洞が原因で鋼管杭1が急激に降下することがある。この急激な降下によってトータルステーション3の連続追尾の範囲から外れて測定が不能となるおそれがある。これを防止すべく、トータルステーション3は、連続追尾中に光学プリズム6が検出できなくなると、一旦計測角度を下げて鋼管矢板11の中ほどくらいから上方に向けて再サーチを実行する。この再サーチ中に光学プリズム6が検出されれば、その位置から再度連続追尾を開始する。
【0018】
以上のように、本実施形態によれば、トータルステーション3のターゲットである光学プリズム6が鋼管杭1の上端部に設置されているので、障害物がトータルステーション3と光学プリズム6との間に存在していたとしても、光学プリズム6が障害物よりも上方に位置することになり、障害物を回避することができる。したがって、障害物の影響を抑え、測量時の正確性を高めることができる。
【0019】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、上記実施形態ではターゲットとなる光学プリズム6が鋼管矢板11の上端部に設置される場合を例示して説明したが、光学プリズム6は継手12の上端部に設置されていても良い。具体的に説明すると、光学プリズム6は、図5,6に示す継手用取付具30により継手12の上端部に設置されている。
【0020】
図5は継手用取付具30の概略構成を示す斜視図であり、図6は下面図である。図5及び図6に示すように、継手用取付具30は、継手12の上端部を覆う本体部31と、本体部31の略中央から上方に延出し、光学プリズム6を支持する支持部32とを備えている。本体部31の周縁には、継手12の周面を覆うため下方に延出した壁部33が設けられていて、この壁部33には、当該壁部33の内側に向けて出没する複数の係止ボルト34が設けられている。本体部31に継手12の上端部が係合して、係止ボルト34を締めることで、継手12に継手用取付具30が固定されて、光学プリズム6も取り付けられることになる。
また、光学プリズム6を支持部32に取り付けた後においては、図7に示すように泥水避けとしてのカバー38によって光学プリズム6を覆う。このカバー38は円筒状に形成されていて、その上部は閉塞されている。そしてカバー38の側方には、光学プリズム6を露出させる開口39が形成されている。泥水を避けた状態でも開口39によって光学プリズム6をトータルステーション3が検出できるようになっている。
【0021】
ここで、図8に示すように、バイブロハンマーHは鋼管矢板11の上端部に設置されるので、鋼管矢板11の上端部に光学プリズム6を設置する際には種々の制約が出てしまう。しかしながら、鋼管杭1の継手12の上端部に光学プリズム6が設置されるのであれば、鋼管杭1をバイブロハンマーHで打設する際にバイブロハンマーHの妨げにならない位置に光学プリズムを設置することができる。
また、継手12の上端部における略中央に光学プリズム6が配置されているので、鋼管矢板11の中心と光学プリズム6までの位置を一定にすることができる。これにより、鋼管矢板11の中心、すなわち設計座標までのオフセット設定を統一することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 鋼管杭
2 杭打設システム
3 トータルステーション
4 基準用光学プリズム
5 基準用光学プリズム
6 光学プリズム
7 通信用パソコン
8 操作用パソコン
11 鋼管矢板
12 継手
13 切欠
20 プリズム用取付具
21 本体部
22 係止ボルト
23 取付穴
24 係合溝
30 継手用取付具
31 本体部
32 支持部
33 壁部
34 係止ボルト
38 カバー
39 開口
C クレーン
H バイブロハンマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭の位置を測量するためのトータルステーションと、
前記トータルステーションのターゲットとなる光学プリズムとを備え、
前記光学プリズムは、前記鋼管杭の上端部に設置されていることを特徴とする杭打設システム。
【請求項2】
請求項1記載の杭打設システムにおいて、
前記鋼管杭は、鋼管矢板と当該鋼管矢板に対して同方向に延在する継手とを備え、
前記継手は、前記鋼管矢板に隣接して設けられていて、その上端位置が前記鋼管矢板の上端よりも下方に配置されており、
前記光学プリズムは、前記継手の上端部に設置されていることを特徴とする杭打設システム。
【請求項3】
請求項2記載の杭打設システムにおいて、
前記光学プリズムは、前記継手の上端部における略中央に配置されていることを特徴とする杭打設システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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