説明

板バネおよびレンズ駆動装置

【課題】レンズ駆動装置の推力を向上させること。
【解決手段】中央部に配置された柱状の可動部(14,16)を、この可動部の周囲に配置された筒状の固定部(12,18,20,28)に対して、径方向に位置決めした状態で中心軸(O)方向に変位可能に支持する板バネ(22;24)は、比透磁率が1.1以上のステンレス鋼から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ駆動装置に関し、特に、レンズアセンブリ(レンズバレル)を保持するレンズホルダ(可動部)の筒状部の光軸方向両側に設けられ、レンズホルダをハウジング(固定部)に対して径方向に位置決めした状態で、光軸方向に変位可能に支持する板バネ(支持部材;弾性部材)に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ付携帯電話機には携帯型小型カメラが搭載されている。この携帯型小型カメラには、オートフォーカス用レンズ駆動装置が用いられる。従来から、種々のオートフォーカス用レンズ駆動装置が提案されている。
【0003】
このようなレンズ駆動装置に使用される駆動源(駆動方法)には、ボイス・コイル・モータ(VCM)を使用したVCM方式と、形状記憶合金(Shape Memory Alloy:SMA)を使用したSMA方式とがある。いずれの方式のレンズ駆動装置においても、レンズを含む可動部(レンズ+レンズホルダ)を、固定部に対して径方向に位置決めした状態で、光軸方向(中心軸方向)に変位可能に支持する支持部材(弾性部材)が使用される。そのような支持部材(弾性部材)としては、一般的に、少なくとも1つの板バネが使用されている。
【0004】
従来、板バネの材料として、ベリリウム銅やSUS系鋼材が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、耐衝撃性を向上させた板バネも種々提案されている。
【0006】
例えば、特許文献2(特開2009−210055号公報)は、耐衝撃性を向上させた、安価な板バネを開示している。板バネは、各々円環状に形成された内周側端部(内環部)および外周側端部(外環部)と、これらの間を連結するために周方向に沿って設けられたN本のアーム部とから構成されている。各アーム部は周方向に沿って延出している。内周側端部と各アーム部との間の内周側連結部は、内周側端部から半径方向外側に突設している。外周側端部と各アーム部との間の外周側連結部は、外周側端部から半径方向内側に突設している。アーム部の内周側根本部の板幅及び外周側根本部の板幅の少なくとも一方が、アーム部の長手方向中央部の板幅よりも広くなっている。
【0007】
また、特許文献3(特開2007−322540公報)は、衝撃による板バネの架橋部(アーム部)の基部(根本部)への応力集中を防止し、耐衝撃性に優れたカメラモジュールを開示している。
【0008】
特許文献3に開示された板バネは、外環部と、この外環部に対して変位する内環部と、内環部を外環部に対して支持している3本の架橋部(アーム部)とを有する。架橋部は、外環部と内環部の間に形成されているリング状の間隙内において、外環部の内周縁と内環部の外周縁に沿うように延在している。架橋部は、応力集中防止手段であるスリットを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−122360号公報([0027])
【特許文献2】特開2009−210055号公報(図3)
【特許文献3】特開2007−323540号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したオードフォーカス用レンズ駆動装置で駆動される携帯型小型カメラを搭載する携帯電話機に対しては、次に述べるような、2つの性能(特性)の向上が要求されている。第1の性能(特性)は、携帯電話機の使用・保管時の落下等に対する耐衝撃性能(特性)である。第2の性能(特性)は、携帯電話機に搭載されるカメラの高画素化に伴う、動作時のレンズ傾き(チルト)性能(特性)である。
【0011】
これら性能(特性)は、上記板バネに大きく依存している。耐衝撃性能(特性)を向上させるためには、板バネの平面方向の剛性「歪み」を小さくすれば良い。一方、動作時のレンズ傾き(チルト)性能(特性)を向上させるためには、(板バネ+レンズホルダ)全体の「ねじり剛性」を大きくすればよい。
【0012】
しかしながら、板バネ平面方向の剛性と、(板バネ+レンズホルダ)全体の「ねじり剛性」とは、反比例の関係にある。すなわち、板バネが支配的な耐衝撃性能(特性)とレンズ傾き(チルト)性能(特性)とは反比例の関係にある。
【0013】
板バネの材料として使用されるベリリウム銅は、上記第1および第2の性能(特性)において優れていることが知られている。そのため、ベリリウム銅は高性能のバネ材料として広く使われている。しかしながら、ベリリウムの化合物は毒性が強いことも知られている。そのため、環境上の観点から、板バネの材料としてベリリウム銅以外の材料を使用すること(ベリリウムフリー)が望まれている。
【0014】
一方、駆動方法としてVCM方式を採用するレンズ駆動装置では、駆動手段として永久磁石を使用する。そのため、板バネの材料として透磁率の大きい磁性材料を使用すると、レンズ駆動装置の性能に悪影響を与えてしまう。したがって、板バネの材料としては、透磁率の小さい材料を使用することが好ましい。通常使用されているステンレス鋼(SUS)は、比透磁率が1に近い非磁性材料である。
【0015】
本発明の課題は、高い推力が得られる、板バネおよびレンズ駆動装置を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、説明が進むにつれて明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、中央部に配置された柱状の可動部(14,16;41,48)を、該可動部の周囲に配置された筒状の固定部(12,18,20,28;42)に対して、径方向に位置決めした状態で中心軸(O)方向に変位可能に支持する板バネ(22;22A;22B;22C;22D;22E;22F;22G;24)であって、前記板バネが、比透磁率が1.1以上のステンレス鋼から成ることを特徴とする板バネが得られる。
【0018】
上記板バネ(22;22A;22B;22C;22D;22E;22F;22G;24)は、例えば、円環状の内周側端部(221;241)と、該内周側端部から離間して設けられ、前記内周側端部よりも半径の大きな外周側端部(222)と、前記内周側端部と前記外周側端部との間を連結するために周方向に沿って設けられたN本(Nは2以上の整数)のアーム部(223;243)と、前記内周側端部と前記N本のアーム部とを連結するN個の内周側連結部(224)と、前記外周側端部と前記N本のアーム部とを連結するN個の外周側連結部(225)と、から構成されて良い。上記板バネ(22;22A;22B;22C;22D;22E;22F;22G;24)は、前記外周側端部と各アーム部との間に形成された第1のスリット(226;226A)と、前記内周側端部と各アーム部との間に形成された第2のスリット(227;227A;227B)とを有してよい。この場合、前記第1のスリットは、前記外周側端部と各アーム部との間に形成された円弧状の第1の延在スリット部(226a;226Aa)と、前記外周側連結部の近傍に形成された第1の根本スリット部(226b;226Ab)とを有してよく、前記第2のスリットは、前記内周側端部と各アーム部との間に形成された実質的に円弧状の第2の延在スリット部(227a;227Aa;227Ba)と、前記内周側連結部の近傍に形成された第2の根本スリット部(227b;227Ab;227Bb)とを有してよい。
【0019】
上記板バネ(22;22A;22B)において、前記第1の根本スリット部(226b)は、前記第1の延在スリット部(226a)のスリット幅よりも大きい幅を持ち、かつ各アーム部(223)の根本部から離間するように形成された曲線で囲まれた膨出形状をしていることが好ましい。また、前記内周側連結部(224)は、前記内周側端部(221)を前記可動部に取り付けるための開口(224a)を持ってよい。この場合、前記第2の根本スリット部(227b)は、前記開口に近接し、かつ各アーム部(223)の根本部から離間するように、前記第2の延在スリット部(227a)から突出して形成されることが好ましい。また、前記第2の根本スリット部(227Ab)は、各アーム部(223)から離間するように、前記第2の延在スリット部(227Aa)から突出して形成されていることが望ましい。前記外周側端部(222)は、その隅に形成され、当該外周側端部を前記固定部に取り付けるための丸穴(222a)と、該丸穴と前記第1の根本スリット部(226b)との間に形成された円弧状のスリット(222b)とを持ってよい。前記第1の根本スリット部(226Ab)は、前記第1の延在スリット部(226Aa)のスリット幅よりも大きい幅を持ち、かつ曲線で囲まれた膨出形状をしてよく、前記第2の根本スリット部(227Bb)は、前記第2の延在スリット部(227Ba)のスリット幅よりも大きい幅を持ち、かつ曲線で囲まれた膨出形状をしていてよい。
【0020】
また、上記板バネ(22C;22D;22E;22F;22G)において、前記板バネの板厚をtとし、前記アーム部(223)の幅寸法をwとしたとき、アームアスペクト比(w/t)が、6.0〜1.5の範囲にあることが好ましい。前記Nが2〜4の範囲にあることが望ましい。各アーム部(223)は、少なくとも1本のスリット(223a)を有することが好ましい。隣接するアーム部(223)が互いに重複して配置されていてよい。前記内周側端部(221)は、蛇腹部(221−1)を有してよい。
【0021】
また、本発明によるレンズ駆動装置(10)は、駆動源としてボイス・コイル・モータ(VCM)を使用したVCM方式を採用したレンズ駆動装置(10)である。前記可動部として、レンズアセンブリを保持するための筒状部(140)を有するレンズホルダ(14)と、該レンズホルダに前記筒状部の周囲に位置するように固定された駆動コイル(16)と、を備える。前記固定部として、前記駆動コイルと対向する永久磁石(18)を備えたヨーク(20)を備える。前記レンズ駆動装置(10)は、前記レンズホルダ(14)の筒状部(140)の光軸(O)方向両側に設けられ、前記レンズホルダ(14)を径方向に位置決めした状態で光軸(O)方向に変位可能に支持する一対の板バネ(22;22A;22B;22C;22D;22E;22F;22G;24)を備える。前記一対の板バネの各々は、前記レンズホルダ(14)に取り付けられた前記内周側端部と前記ヨークに取り付けられた前記外周側端部とを有する。レンズ駆動装置(10)は、前記駆動コイル(16)に通電することで、前記永久磁石(18)の磁界と前記駆動コイル(16)に流れる電流による磁界との相互作用によって、前記可動部(14;16)を光軸(O)方向に位置調整可能である。本発明によれば、前記一対の板バネ(22;22A;22B;22C;22D;22E;22F;22G;24)の各々は、上述した板バネから成る。
【0022】
尚、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例に過ぎず、これらに限定されないのは勿論である。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、板バネが、比透磁率が1.1以上のステンレス鋼から成るので、レンズ駆動装置の推力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるレンズ駆動装置の外観斜視図である。
【図2】図1に示したレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施例による板バネの化学成分を示す図である。
【図4】図3に示した化学成分を持つ板バネの冷間加工率(%)に対するビッカース硬さ(HV)の特性を示す特性図である。
【図5】図3に示した化学成分を持つ板バネの低温焼鈍温度(℃)に対するビッカース硬さ(HV)の特性を示す特性図である。
【図6】本発明の第2の実施例による板バネの化学成分を示す図である。
【図7】図6に示した化学成分を持つ板バネの冷間加工度(%)に対するビッカース硬さ(HV)の特性を示す特性図である。
【図8】図6に示した化学成分を持つ板バネの熱処理温度(℃)に対するビッカース硬さ(HV)の特性を示す特性図である。
【図9】SUS301のビッカース硬度と降伏応力(耐力)との間の関係を示すグラフである。
【図10】図2に示したレンズ駆動装置の駆動コイルに流す電流(mA)と、比透磁率の異なる板バネを使用した場合のストローク(μm)との関係を示すグラフである。
【図11】図10に基いて求められた、比透磁率とVCM特性傾き(μm/mA)との関係を示すグラフである。
【図12】本発明の第1の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)の主要部を示す平面図である。
【図13】本発明の第2の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)の主要部を示す平面図である。
【図14】本発明の第3の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)の主要部を示す平面図である。
【図15】本発明の第4の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)の斜視図である。
【図16】図15に示した板バネのアスペクト比(w/t)とチルト悪化率(倍)との関係を示すグラフである。
【図17】本発明の第5の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)を示す平面図である。
【図18】図17に示した上側板バネ(前側スプリング)の一部を拡大して示す部分拡大図である。
【図19】本発明の第6の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)の一部を示す平面図である。
【図20】本発明の第7の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)の一部を示す平面図である。
【図21】本発明の第8の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)の一部を示す平面図である。
【図22】本発明の第2の実施の形態によるレンズ駆動装置の外環を斜め前方上方から観た斜視図である。
【図23】図22に示したレンズ駆動装置を、レンズバレルを省いた状態で、斜め前方上方から観た斜視図である。
【図24】図22に示したレンズ駆動装置を、レンズバレルと外上側カバーとを省いた状態で、斜め前方上方から観た斜視図である。
【図25】図22に示したレンズ駆動装置を、レンズバレルを省いた状態で、斜め前方上方から見た分解斜視図である。
【図26】図22に示したレンズ駆動装置を、レンズバレルと外上側カバーと内上側カバーとを省いた状態で示す、正面図である。
【図27】図26に示したSMAアセンブリを電極ホルダに取り付けた状態を、斜め前方上方から観た斜視図である。
【図28】図27に示した状態を、斜め後方上方から観た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施の形態によるレンズ駆動装置10について説明する。図1はレンズ駆動装置10の外観斜視図であり、図2はレンズ駆動装置10の分解斜視図である。
【0027】
ここでは、図1及び図2に示されるように、直交座標系(X,Y,Z)を使用している。図1及び図2に図示した状態では、直交座標系(X,Y,Z)において、X軸は前後方向(奥行方向)であり、Y軸は左右方向(幅方向)であり、Z軸は上下方向(高さ方向)である。そして、図1及び図2に示す例においては、上下方向Zがレンズの光軸O方向である。
【0028】
但し、実際の使用状況においては、光軸O方向、すなわち、Z軸方向が前後方向となる。換言すれば、Z軸の上方向が前方向となり、Z軸の下方向が後方向となる。
【0029】
図示のレンズ駆動装置10は、駆動源(駆動方法)として、ボイス・コイル・モータ(VCM)を使用したVCM方式を採用した、レンズ駆動装置である。
【0030】
図示のレンズ駆動装置10は、オートフォーカス可能なカメラ付き携帯電話機に備えられる。レンズ駆動装置10は、レンズアセンブリ(バレル)(図示せず)を光軸O方向に移動させるためのものである。レンズ駆動装置10は、Z軸方向(光軸O方向)の下側(後側)に配置されたアクチュエータ・ベース12を有する。このアクチュエータ・ベース12の下部(後部)には、図示はしないが、基板に配置された撮像素子が搭載される。この撮像素子は、レンズアセンブリにより結像された被写体像を撮像して電気信号に変換する。撮像素子は、例えば、CCD(charge coupled device)型イメージセンサ、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージセンサ等により構成される。したがって、レンズ駆動装置10と、基板と、撮像素子との組み合わせによって、カメラモジュールが構成される。
【0031】
レンズ駆動装置10は、レンズアセンブリ(バレル)を保持するための筒状部140を有するレンズホルダ14と、このレンズホルダ14に筒状部140の周囲に位置するように固定された駆動コイル16と、この駆動コイル16と対向する永久磁石18を備えたヨーク20と、レンズホルダ14の筒状部140の光軸O方向両側に設けられた一対の板バネ22、24とを備える。一対の板バネ22、24は、レンズホルダ14を径方向に位置決めした状態で光軸O方向に変位可能に支持する。一対の板バネ22、24のうち、一方の板バネ22は上側板バネと呼ばれ、他方の板バネ24は下側板バネと呼ばれる。
【0032】
また、前述したように、実際の使用状況においては、Z軸方向(光軸O方向)の上方向が前方向、Z軸方向(光軸O方向)の下方向が後方向となる。したがって、上側板バネ22は前側スプリングとも呼ばれ、下側板バネ24は後側スプリングとも呼ばれる。
【0033】
上側板バネ(前側スプリング)22および下側板バネ(後側スプリング)24はいずれも、後述するような、特殊なステンレス鋼の金属製からなる。そして、上側板バネ(前側スプリング)22および下側板バネ(後側スプリング)24は、所定の薄板に対するプレス加工、あるいはフォトリソグラフィ技術を用いたエッチング加工により製造される。尚、プレス加工よりもエッチング加工の方が好ましい。その理由は、エッチング加工では、板バネに残留応力が残らないからである。
【0034】
図2に示されるように、ヨーク20は八角筒状をしている。すなわち、ヨーク20は、八角筒形状の外筒部202と、この外筒部202の上端(前端)に設けられた八角形のリング状端部204とを有する。従って、駆動コイル16も、八角筒状のヨーク20の形状に合わせた、八角筒状をしている。永久磁石18は、ヨーク20の八角筒形状の外筒部202の各側辺に配置された、8個の矩形状の永久磁石片182から成る。
【0035】
図2に示されるように、ヨーク20の外筒部202の内周面に、駆動コイル16と間隔を置いて、永久磁石18が配置されている。
【0036】
上側板バネ(前側スプリング)22はレンズホルダ14における光軸O方向上側(前側)に配置され、下側板バネ(後側スプリング)24はレンズホルダ14における光軸O方向下側(後側)に配置される。上側板バネ(前側スプリング)22と下側板バネ(後側スプリング)24とは、略同一構成をしている。
【0037】
上側板バネ(前側スプリング)22は、レンズホルダ14に取り付けられた内周側端部221と、ヨーク20に取り付けられた外周側端部222と、内周側端部221と外周側端部222との間を連結するために周方向に沿って設けられたN(Nは2以上の整数)本のアーム部(架橋部)223とを有する。内周側端部221は円環状をしている。外周側端部222は、内周側端部221から離間して設けられ、内周側端部221よりも大きい半径を持つ。各アーム部223は周方向に沿って延出している。内周側端部221と各アーム部223との間を連結する内周側連結部224は、内周側端部221から半径方向外側に突設している。外周側端部222と各アーム部223との間を連結する外周側連結部225は、外周側端部222から半径方向内側に突設している。
【0038】
同様に、下側板バネ(後側スプリング)24は、レンズホルダ14に取り付けられた内周側端部241と、ヨーク20に取り付けられた外周側端部(図示せず)と、内周側端部241と外周側端部との間を連結するために周方向に沿って設けられたN本のアーム部(架橋部)243とを有する。内周側端部241は円環状をしている。外周側端部は、内周側端部241から離間して設けられ、内周側端部241よりも大きな半径を持つ。各アーム部243は周方向に沿って延出している。内周側端部241と各アーム部243との間を連結する内周側連結部244は、内周側端部241から半径方向外側に突設している。外周側端部と各アーム部243との間を連結する外周側連結部245は、外周側端部から半径方向内側に突設している。
【0039】
尚、内周側端部は内輪(内環部)とも呼ばれ、外周側端部は外輪(外環部)とも呼ばれる。
【0040】
上側板バネ(前側スプリング)22の内周側端部221は、レンズホルダ14とストッパ26に挟持されて固定されている。換言すれば、ストッパ26は、上側板バネ(前側スプリング)22の内周側端部221を、レンズホルダ14との間で挟持するように、レンズホルダ14と嵌合する。一方、上側板バネ(前側スプリング)22の外周側端部222は、ヨーク20とカバー28との間に挟持され固定されている。
【0041】
ストッパ26には、次に述べるような機能がある。すなわち、ストッパ26は、上側板バネ(前側スプリング)22の内周側端部221をレンズホルダ14にバラツキなく高精度に密着させる機能を持つ。これにより、VCM(ボイス・コイル・モータ)特性のバラツキを改善できる。また、ストッパ26は、上側板バネ(前側スプリング)22の接着強度を向上させる機能をもつ。これにより、レンズ駆動装置10の耐衝撃性を向上させている。さらに、ストッパ26は、レンズ駆動装置10の落下衝撃の際の上側板バネ(前側スプリング)22の変形を防止する機能を持つ。これによっても、レンズ駆動装置10の耐衝撃性を向上させている。また、ストッパ26は、レンズ駆動装置10の機械的ストロークを決める機能を持つ。
【0042】
尚、後述するように、本実施の形態では、このストッパ26には、レンズホルダ14の回転防止機能も付加されている。
【0043】
一方、下側板バネ(後側スプリング)24の外周側端部は、スペーサ30を介してヨーク20に固定されている。換言すれば、スペーサ30と下側板バネ(後側スプリング)24の外周側端部とは、ヨーク20とアクチュエータ・ベース12との間に挟持されて固定されている。下側板バネ(後側スプリング)24の内周側端部241は、レンズホルダ14の下端(後端)側に固定されている。
【0044】
レンズホルダ14の筒状部140の内周壁には雌ネジ142が切られている。一方、図示しないが、レンズアセンブリ(バレル)の外周壁には、上記雌ネジ142に螺合される雄ネジが切られている。従って、レンズアセンブリ(バレル)をレンズホルダ14に装着するには、レンズアセンブリ(バレル)をレンズホルダ14の筒状部140に対して光軸O周りに回転して光軸O方向に沿って螺合することにより、レンズアセンブリ(バレル)をレンズホルダ14内に収容し、接着剤なとによって互いに接合する。
【0045】
この際、レンズホルダ14が一緒に回転しまう恐れがあるが、後述するように、レンズホルダ14が回転するのは完全に防止される。
【0046】
駆動コイル16に通電することで、永久磁石18の磁界と駆動コイル16に流れる電流による磁界との相互作用によって、レンズホルダ14(レンズアセンブリ)を光軸O方向に位置調整することが可能である。
【0047】
下側板バネ(後側スプリング)24とアクチュエータ・ベース12との間には、シート状電極32が配置されている。このシート状電極32は、駆動コイル16に電力を供給するためのものである。
【0048】
図示の実施の形態では、ストッパ26は、光軸Oに対して180°だけ回転させた2回回転対称な位置に設けられた2つのコ字形状の回転防止押え部262を持つ。これらコ字形状の回転防止押え部262は、レンズアセンブリをレンズホルダ14の筒状部140に装着する際に、レンズホルダ14が回転するのを完全に防止する回転防止部材として働く。すなわち、レンズアセンブリのレンズホルダ14の筒状部140への装着時に、2つのコ字形状の回転防止押え部262に治具(図示せず)を差し込み保持することで、レンズホルダ14が回転するのを完全に防止する。この際、ストッパ16とカバー28との間のクリアランスは確保(保持)される。
【0049】
上記レンズ駆動装置10において、レンズアセンブリを保持するレンズホルダ14と駆動コイル16との組み合わせは、中央部に配置された柱状の可動部(14,16)として働く。また、アクチュエータ・ベース12、永久磁石18、ヨーク20、およびカバー28の組み合わせは、可動部(14,16)の周囲に配置された筒状の固定部(12,18,20、28)として働く。
【0050】
次に、上側板バネ(前側スプリング)22および下側板バネ(後側スプリング)24として使用される材料(材質)について説明する。以下では、上側板バネ22および下側板バネ24を纏めて、単に「板バネ」と呼ぶことにする。
【0051】
本発明の第1の実施形態に係るレンズ駆動装置10では、板バネ(22,24)として、ビッカース硬さが500HV以上の材料を使用している。これにより、耐衝撃性能とレンズ傾き(チルト)性能とを両立させた、レンズ駆動装置10を提供することができる。
【実施例1】
【0052】
本発明の第1の実施例では、板バネ(22,24)として、冷間加工によるビッカース硬さが500HV以上と高く、かつ透過率の小さい高硬度非磁性ステンレス鋼を使用する。そのようなステンレス鋼としては、例えば、日本金属工業株式会社製のNTK S−4を使用することができる。その化学成分(質量%)は、図3に示す通りである。
【0053】
この高硬度非磁性ステンレス鋼の比透磁率は、約1.002である。
【0054】
この素材のビッカース硬さは260HVと低いが、冷間加工を施すことにより、図4に示されるように、ビッカース硬さを500HV以上まで上昇させることができる。図4において、横軸は冷間加工率(%)を示し、縦軸はビッカース硬さ(HV)を示す。
【0055】
次に、冷間圧延による板バネの素材(薄板)の製造方法について説明する。まず、素材巻替機を使用して、素材大コイルを必要量に分割する。次に、冷間可逆化逆式圧延機を使用して、焼鈍工程に適合した厚さまで素材を圧延する(中間圧延)。薄板用脱脂装置を使用して、圧延した素材から圧延油を除去する(脱脂洗浄)。堅型連続光輝焼鈍炉を使用して、圧延した素材の結晶組織を調整し、内部歪を除去する(光輝焼鈍)。冷間逆式圧延機を使用して、調整した素材の最終厚みと形状を出し、所定の機械特性へ仕上げる(最終圧延)。薄板用脱脂装置を使用して、圧延した素材から圧延油を除去する(脱脂洗浄)。横型連続光輝焼鈍炉を使用して、圧延した素材から圧延歪を除去する(TA)。そして、薄板条巾切断機を使用して、圧延した素材を所定寸法に切断する(切断)。
【0056】
また、図5に示されるように、300〜500℃の低温焼鈍により、ビッカース硬さは圧延状態により60〜70HV上昇することが分かる。図5において、横軸は低温焼鈍温度(℃)を示し、縦軸はビッカース硬さ(HV)を示す。
【0057】
ここで、ベリリウム銅のビッカース硬さは、380〜450HVの範囲にあることが知られている。したがって、第1の実施例に係る高硬度非磁性ステンレス鋼のビッカース硬さは、ベリリウム銅のそれよりも高いことが分かる。
【0058】
この技術分野において周知のように、ビッカース硬さが高ければ高い程、降伏応力(耐力)も高くなることが知られている。
【0059】
このように、第1の実施例では、板バネとして、ビッカース硬さが500HV以上の高硬度非磁性ステンレス鋼を使用することにより、耐衝撃性能とレンズ傾き(チルト)性能とを両立させた、レンズ駆動装置10を提供することができる。
【実施例2】
【0060】
本発明の第2の実施例では、板バネとして、冷間加工によるビッカース硬さが500HV以上と高い高硬度ステンレス鋼(オーステナイト系のクロム・ニッケル鋼)を使用する。そのようなステンレス鋼としては、例えば、日本金属工業株式会社製のNTK 301(SUS301)を使用することができる。その化学成分(質量%)は、図6に示す通りである。
【0061】
この高硬度ステンレス鋼の比透磁率は、約1.50である。
【0062】
この素材のビッカース硬さは191HVと低いが、冷間加工を施すことにより、図7に示されるように、ビッカース硬さを500HV以上まで上昇させることができる。図7において、横軸は冷間加工度(%)を示し、縦軸はビッカース硬さ(HV)を示す。
【0063】
冷間圧延による板バネの素材(薄板)の製造方法は、上記第1の実施例と同様なので、その説明については省略する。
【0064】
また、図8に示されるように、300〜400℃の熱処理によりビッカース硬さは30〜40HV上昇することが分かる。図8において、横軸は熱処理温度(℃)を示し、縦軸はビッカース硬さ(HV)を示す。
【0065】
上述したように、ベリリウム銅のビッカース硬さは、380〜450HVの範囲にあることが知られている。したがって、第2の実施例に係る高硬度ステンレス鋼のビッカース硬さは、ベリリウム銅のそれよりも高いことが分かる。
【0066】
図9は、SUS301のビッカース硬さと降伏応力(耐力)との間の関係を示すグラフである。図9において、横軸はビッカース硬さ(HV)を示し、縦軸は耐力(N/mm)を示す。図9から、ビッカース硬さが高ければ高い程、降伏応力(耐力)も高くなることが分かる。
【0067】
このように、第2の実施例では、板バネとして、ピッカーズ硬さが500HV以上の高硬度ステンレス鋼を使用することにより、耐衝撃性能とレンズ傾き(チルト)性能とを両立させた、レンズ駆動装置10を提供することができる。
【0068】
図10は、図2に示したレンズ駆動装置10の駆動コイル16に流す電流(mA)と、比透磁率の異なる板バネ(22、24)を使用した場合のストローク(μm)との関係を示すグラフである。
【0069】
図10から、比透磁率が1.0002の板バネ(22.24)を使用した場合よりも、比透磁率が1.5の板バネ(22.24)を使用した方が、始動電流値が25mA増加していることが分かる。また、比透磁率が1.0002の板バネ(22.24)を使用した場合の傾きが6.3であるのに対して、比透磁率が1.5の板バネ(22.24)を使用した場合の傾きが7.4であることが分かる。すなわち、比透磁率が高いほうが、推力が増加することが分かる。
【0070】
図11は、図10に基いて求められた、比透磁率とVCM特性傾き(μm/mA)との関係を示すグラフである。図11から、比透磁率が1.1以上であれば、従来に比べて十分に高い推力が得られることが分かる。
【0071】
換言すれば、図2に示すレンズ駆動装置10において、撮像素子に近い下側板バネ24として、比透磁率μが1.1以上のステンレス鋼を使用することにより、固定側の漏れ磁界を少なくすることができ、レンズ駆動装置10の推力を増加させることができる。
【0072】
後述する変形例1〜3は、上記実施例1又は上記実施例2を前提とした上で、より耐衝撃性能を向上させる例である。
【0073】
[変形例1]
次に、本発明に係る板バネの第1の変形例について説明する。
【0074】
図12は、本発明の第1の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)22の主要部を示す平面図である。尚、下側板バネ(後側スプリング)24も、上側板バネ(前側スプリング)22と同様の構成を有するので、その説明については省略する。
【0075】
上側板バネ22は、外周側端部222と各アーム部223との間に形成された第1のスリット226を持つ。この第1のスリット226は、外周側端部222と各アーム部223との間に形成された円弧状の第1の延在スリット部226aと、外周側連結部225の近傍に形成された第1の根本スリット部226bとを有する。この第1の根本スリット部226bは、第1の延在スリット部226aのスリット幅より大きい幅を持ち、かつ各アーム部223の根本部から離間するように形成された曲線で囲まれた膨出形状をしている。
【0076】
また、上側板バネ22は、内周側端部221と各アーム部223との間に形成された第2のスリット227を持つ。内周側連結部224には、内周側端部221をレンズホルダ14に取り付けるための開口224aが形成されている。第2のスリット227は、内周側端部221とアーム部223との間に形成された実質的に円弧状の第2の延在スリット部227aと、内周側連結部224の近傍に形成された第2の根本スリット部227bとを有する。この第2の根本スリット部227bは、上記開口224aに近接し、かつ各アーム部223の根本部から離間するように、第2の延在スリット部227aから突出して形成されている。
【0077】
このように、各アーム部223の根本に、第1及び第2の根本スリット部226b、227bを形成したので、板バネ22の各アーム部223の根本にかかる応力を緩和させることができる。これにより、携帯電話機の落下等の耐衝撃性能を向上させることができる。
【0078】
また、第2の根本スリット部227bが、内周側連結部224の開口224aに近接しているので、動作時に内周側端部221からアーム部223へ伝達される捩れを吸収することができる。
【0079】
[変形例2]
次に、本発明に係る板バネの第2の変形例について説明する。
【0080】
図13は、本発明の第2の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)22Aの主要部を示す平面図である。尚、下側板バネ(後側スプリング)も、上側板バネ(前側スプリング)22Aと同様の構成を有するので、その説明については省略する。
【0081】
図示の上側板バネ22Aは、後述するように、実質的に、第2のスリットの形状が異なる点を除いて、図12に示した上側板バネ22と同様の構成を有する。従って、第2のスリットに227Aの参照符号を付してある。説明の簡略化の為に、以下では第1の変形例との相違点についてのみ説明する。
【0082】
外周側端部222は、その四隅に、当該外周側端部222をヨーク22に取り付けるための4つの丸穴222aを持つ。また、外周側端部222は、各丸穴222aと第1のスリット226の根本スリット部226bとの間に形成された、円弧状スリット222bを持つ。
【0083】
内周側連結部224は、図12に示したような、開口224aを持っていない。
【0084】
第2のスリットに227Aは、内周側端部221とアーム部223との間に形成された円弧状の第2の延在スリット部227Aaと、内周側連結部224の近傍に形成された第2の根本スリット部227Abとを有する。この第2の根本スリット部227Abは、各アーム部223の根本部から離間するように、第2の延在スリット部227Aaから突出して形成されている。
【0085】
このように、各アーム部223の根本に第1及び第2の根本スリット部226b、227Abを形成し、第1の根本スリット部226bの近傍に円弧状スリット222bを形成したので、板バネ22Aの各アーム部223の根本にかかる応力を緩和させることができる。これにより、携帯電話機の落下等の耐衝撃性能を向上させることができる。
【0086】
[変形例3]
次に、本発明に係る板バネの第3の変形例について説明する。
【0087】
図14は、本発明の第3の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)22Bの主要部を示す平面図である。尚、下側板バネ(後側スプリング)も、上側板バネ(前側スプリング)22Bと同様の構成を有するので、その説明については省略する。
【0088】
図示の上側板バネ22Bは、後述するように、第1および第2のスリットの形状が異なる点を除いて、図13に示した上側板バネ22Aと同様の構成を有する。従って、第1および第2のスリットに、それぞれ、226Aおよび227Bの参照符号を付してある。説明の簡略化の為に、以下では第2の変形例との相違点についてのみ説明する。
【0089】
第1のスリット226Aは、外周側端部222と各アーム部223との間に形成された円弧状の第1の延在スリット部226Aaと、外周側連結部225の近傍に形成された第1の根本スリット部226Abとを有する。この第1の根本スリット部226Abは、第1の延在スリット部226Aaのスリット幅より大きい幅を持ち、かつ曲線で囲まれた膨出形状をしている。
【0090】
第2のスリット227Bは、内周側端部221とアーム部223との間に形成された円弧状の第2の延在スリット部227Baと、内周側連結部224の近傍に形成された第2の根本スリット部227Bbとを有する。この第2の根本スリット部227Bbは、第2の延在スリット部227Baのスリット幅より大きい幅を持ち、かつ曲線で囲まれた膨出形状をしている。
【0091】
このように、各アーム部223の根本に第1及び第2の根本スリット部226Ab、227Bbを形成し、第1の根本スリット部226Abの近傍に円弧状スリット222bを形成したので、板バネ22Bの各アーム部223の根本にかかる応力を緩和させることができる。これにより、携帯電話機の落下等の耐衝撃性能を向上させることができる。
【0092】
後述する変形例4は、上記実施例1又は上記実施例2を前提とした上で、よりレンズ傾き(チルト)性能を向上させる例である。
【0093】
[変形例4]
次に、本発明に係る板バネの第4の変形例について説明する。
【0094】
図15は、本発明の第4の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)22Cの斜視図である。尚、下側板バネ(後側スプリング)も、上側板バネ(前側スプリング)22Cと同様の構成を有するので、その説明については省略する。
【0095】
図示の上側板バネ22Cにおいて、その板厚tが0.03mm〜0.08mmの範囲にある。アーム部223の幅寸法wは、0.08mm〜0.35mmの範囲にある。また、アーム部223の長さ寸法Lは、6mm〜9mmの範囲ある。図示の上側板バネ22Cでは、アーム部223の本数Nが4である。しかしながら、この本数Nは2〜4の範囲にあればよい。
【0096】
図16は、アームアスペクト比(w/t)とチルト悪化率との関係を示すグラフである。図16において、横軸はアームアスペクト比(w/t)を示し、縦軸はチルト悪化率(倍)を示す。
【0097】
具体的には、上側板バネ22Cの板厚tが0.03mmで、アーム部223の幅寸法wが0.18mmであるとき、アームアスペクト比(w/t)は6.0に等しい。図16は、このアームアスペクト比(w/t)が6.0のときのチルト悪化率を1とした場合のグラフである。
【0098】
図16から、アームアスペクト比(w/t)が小さければ小さい程、チルト悪化率が上昇(悪化)していることが分かる。具体的には、アームアスペクト比(w/t)が6.0〜1.5の範囲では、チルト悪化率が緩やかに上昇しているが、アームアスペクト比(w/t)が1.5未満になると、チルト悪化率が急激に悪化(上昇)していることが分かる。
【0099】
したがって、アームアスペクト比(w/t)が6.0〜1.5の範囲にあれば、レンズ傾き(チルト)性能を向上させることができることが分かる。
【0100】
後述する変形例5〜8は、上記実施例1又は上記実施例2を前提とし、かつ上記変形例4を前提とした上で、より耐衝撃性能を向上させる例である。
【0101】
[変形例5]
次に、本発明に係る板バネの第5の変形例について説明する。
【0102】
図17は、本発明の第5の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)22Dを示す平面図である。図18は、図17に示した上側板バネ(前側スプリング)22Dの一部を拡大して示す部分拡大図である。尚、下側板バネ(後側スプリング)も、上側板バネ(前側スプリング)22Dと同様の構成を有するので、その説明については省略する。
【0103】
この第5の変形例は、上記特許文献3に開示されたものと同様の構成を有する。すなわち、上側板バネ22Dにおいて、各アーム部223は、1本のスリット223aを有する。このスリット223aは、アーム部223の基部への応力集中を防止する応力集中防止手段として働く。これにより、携帯電話機の落下等の耐衝撃性能を向上させることができる。
【0104】
[変形例6]
次に、本発明に係る板バネの第6の変形例について説明する。
【0105】
図19は、本発明の第6の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)22Eの一部を示す平面図である。尚、下側板バネ(後側スプリング)も、上側板バネ(前側スプリング)22Eと同様の構成を有するので、その説明については省略する。
【0106】
図示の上側板バネ22Eにおいて、各アーム部223は、2本のスリット223aを有する。これらスリット223aは、アーム部223の基部への応力集中を防止する応力集中防止手段として働く。これにより、携帯電話機の落下等の耐衝撃性能を向上させることができる。
【0107】
[変形例7]
次に、本発明に係る板バネの第7の変形例について説明する。
【0108】
図20は、本発明の第7の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)22Fの一部を示す平面図である。尚、下側板バネ(後側スプリング)も、上側板バネ(前側スプリング)22Fと同様の構成を有するので、その説明については省略する。
【0109】
図示の上側板バネ22Fは、8本のアーム部223を有する。各アーム部223は、略90度の角度の円弧状をしており、隣接するアーム223と重複した状態で配置されている。このような構造により、アーム部223の基部への応力集中を防止することができる。その結果、携帯電話機の落下等の耐衝撃性能を向上させることができる。
【0110】
[変形例8]
次に、本発明に係る板バネの第8の変形例について説明する。
【0111】
図21は、本発明の第8の変形例に係る上側板バネ(前側スプリング)22Gの一部を示す平面図である。尚、下側板バネ(後側スプリング)も、上側板バネ(前側スプリング)22Gと同様の構成を有するので、その説明については省略する。
【0112】
図示の上側板バネ22Gにおいて、内周側端部221は、蛇腹部221−1を有する。このような構造により、アーム部223の基部への応力集中を防止することができる。その結果、携帯電話機の落下等の耐衝撃性能を向上させることができる。
【0113】
尚、上記変形例8では、内周側端部221に蛇腹部221−1を設けているが、他の部分に蛇腹部を設けてもよい。例えば、アーム部223に蛇腹部を設けてもよい。換言すれば、アーム部223は、略円弧状の形状である必要がなく、種々の形状を採用してよい。
【0114】
図22乃至図26を参照して、本発明の第2の実施の形態によるレンズ駆動装置10Aについて説明する。図22はレンズ駆動装置10Aの外観を斜め前方上方から観た斜視図である。図23はレンズ駆動装置10Aを、レンズバレル41を省いた状態で、斜め前方上方から観た斜視図である。図24はレンズ駆動装置10Aを、レンズバレル41と外上側カバー46とを省いた状態で、斜め前方上方から観た斜視図である。図25はレンズ駆動装置10Aを、レンズバレル41を省いた状態で、斜め前方上方から観た分解斜視図である。図26はレンズ駆動装置10Aを、レンズバレル41と外上側カバー46と内上側カバー(ストッパ)60とを省いた状態で示す、正面図である。
【0115】
ここでは、図22乃至図26に示されるように、直交座標系(X,Y,Z)を使用している。図22乃至図26に図示した状態では、直交座標系(X,Y,Z)において、X軸方向は前後方向(奥行方向)であり、Y軸方向は左右方向(幅方向)であり、Z軸方向は上下方向(高さ方向)である。図22乃至図26に示す例においては、上下方向Zがレンズの光軸O方向である。また、本明細書中では、前方向は第1の側とも呼ばれ、後方向は第2の側とも呼ばれる。
【0116】
但し、実際の使用状況においては、光軸O方向、すなわち、Z軸方向が前後方向となる。換言すれば、Z軸の上方向が前方向となり、Z軸の下方向が後方向となる。
【0117】
図示のレンズ駆動装置10Aは、駆動源(駆動方法)として、形状記憶合金(Shape Memory Alloy:SMA)を使用したSMA方式を採用した、レンズ駆動装置である。
【0118】
図示のレンズ駆動装置10Aは、光軸Oを通り、かつ前後方向Xおよび上下方向Zによって規定される(に延在する)平面に対して面対称の構造を有する。
【0119】
図示のレンズ駆動装置10Aは、例えば、オートフォーカス可能なカメラ付き携帯電話機に備えられる。レンズ駆動装置10Aは、可動レンズであるオートフォーカスレンズAFLを内蔵するレンズバレル(レンズアセンブリ)41を含む。レンズ駆動装置10Aは、レンズバレル41を光軸O方向にのみ移動させるためのものである。
【0120】
図22に示されるように、レンズ駆動装置10Aは、レンズバレル41を覆う略直方体形状の筐体(ハウジング)42を備える。換言すれば、筐体(ハウジング)42内に、レンズバレル41が配置される。筐体(ハウジング)42は、アクチュエータ・ベース44と、外上側カバー46とを含む。
【0121】
一方、図示はしないが、アクチュエータ・ベース44の中央部には、基板に配置された撮像素子が搭載される。この撮像素子は、可動レンズAFLにより結像された被写体像を撮像して電気信号に変換する。撮像素子は、例えば、CCD(charge coupled device)型イメージセンサ、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージセンサ等により構成される。
【0122】
レンズ駆動装置10Aは、上記レンズバレル41を保持するレンズホルダ48を含む。換言すれば、レンズバレル41はレンズホルダ48内に保持・固定される。詳述すると、レンズホルダ48は略円筒状をした筒状部482を含む。レンズホルダ48の筒状部482の内周壁には雌ネジ(図示せず)が切られている。一方、レンズバレル41の外周壁には、上記雌ネジに螺合される雄ネジ(図示)が切られている。従って、レンズバレル41をレンズホルダ48に装着するには、レンズバレル41をレンズホルダ48に対して光軸O周りに回転して光軸O方向に沿って螺合することにより、レンズバレル41をレンズホルダ48内に収容し、接着剤などによって互いに接合する。
【0123】
レンズホルダ48は、ハウジング42内で、後述するように、光軸O方向にのみ移動可能に支持される。レンズバレル41とレンズホルダ48との組み合わせによってレンズ可動部(41,48)が構成される。
【0124】
レンズホルダ48の筒状部482の外周壁には、前後方向Xの前方で半径方向外側に突出する突出部484を有する。突出部484は、筒状部482の上端から下端へ向けて上下方向Zに沿って突出している。この突出部484は、後述する線状に形成された形状記憶合金ワイヤ62の中間部62aを掛止するためのものである。したがって、突出部484は掛止突起とも呼ばれる。
【0125】
アクチュエータ・ベース44は、リング状のベース部442と、ベース部442の四隅で上下方向Zの上方へ僅かに突出する4つのベース突出部444を有する。4つのベース突出部444は、それぞれ、上方へ突出する4つのベース突起444aを持つ。4つのベース突出部444の内、前方の2つのベース突出部444間には前方凹部446が形成され、後方の2つのベース突出部444間には後方凹部448が形成されている。
【0126】
筐体(ハウジング)42は、前方支持部材52と後方支持部材54とをさらに有する。前方支持部材52は、アクチュエータ・ベース44の前方に取り付けられ、後方支持部材54は、アクチュエータ・ベース44の後方に取り付けられる。前方支持部材52と後方支持部材54は、実質的に同一の形状をしている。前方支持部材52および後方支持部材54は、光軸Oを通り、かつ左右方向Yおよび上下方向Zによって規定される(に延在する)平面に関して面対称に配置されている。換言すれば、前方支持部材52および後方支持部材54は、上記平面に対して鏡像関係にある。
【0127】
前方支持部材52は第1の支持部材とも呼ばれ、後方支持部材54は第2の支持部材とも呼ばれる。第1および第2の支持部材を一纏めにして単に、支持部材とも呼ばれる。
【0128】
尚、前方支持部材52は、後述する一対の電極64を保持するためのものであるので、電極ホルダとも呼ばれる。
【0129】
前方支持部材(電極ホルダ)52は、アクチュエータ・ベース44の前方凹部446に挿入される前方ベース部522と、アクチュエータ・ベース44の前方の一対のベース突出部444上に搭載される一対の前方支持突出部524と、前方ベース部522の両端部と一対の前方支持突出部524との間を連結する一対の前方支持連結部526とを有する。一対の前方支持突出部524は、上方へ突出しており、それぞれ、上方へ突出する一対の前方支持突起524aを持つ。尚、図示はしないが、一対の前方支持突出部524は、その底部に、前方の一対のベース突出部444から突出した一対のベース突起444aが挿入される一対の前方支持穴を持つ。後述するように、一対の電極64は、一対の前方支持連結部526で保持される。
【0130】
同様に、後方支持部材54は、アクチュエータ・ベース44の後方凹部448に挿入される後方ベース部542と、アクチュエータ・ベース44の後方の一対のベース突出部444上に搭載される一対の後方支持突出部544と、後方ベース部542の両端部と一対の後方支持突出部544との間を連結する一対の後方支持連結部546とを有する。一対の後方支持突出部544は、上方へ突出しており、それぞれ、上方へ突出する一対の後方支持突起544aを持つ。尚、図示はしないが、一対の後方支持突出部544は、その底部に、後方の一対のベース突出部444から突出した一対のベース突起444aが挿入される一対の後方支持穴を持つ。
【0131】
レンズ駆動装置10Aは、レンズホルダ48の筒状部482の光軸O方向の上側および下側にそれぞれ設けられた上側板バネ56と一対の下側板バネ58とを備える。上側板バネ56と一対の下側板バネ58とは、レンズホルダ48とハウジング42との間に配置されて、レンズホルダ48を径方向に位置決めした状態で光軸O方向に変位可能に支持する弾性部材50として働く。
【0132】
また、前述したように、実際の使用状況においては、Z軸方向(光軸O方向)の上方向が前方向、Z軸方向(光軸O方向)の下方向が後方向となる。したがって、上側板バネ56は前側スプリングとも呼ばれ、一対の下側板バネ58は後側スプリングとも呼ばれる。
【0133】
これら上側板バネ(前側スプリング)56および一対の下側板バネ(後側スプリング)58はいずれも、上述した第1の実施例または第2の実施例で示した、特殊なステンレス鋼の金属製からなる。そして、上側板バネ(前側スプリング)56および一対の下側板バネ(後側スプリング)58は、所定の薄板に対するプレス加工、あるいはフォトリソグラフィ技術を用いたエッチング加工により製造される。尚、プレス加工よりもエッチング加工の方が好ましい。その理由は、エッチング加工では、板バネに残留応力が残らないからである。
【0134】
上側板バネ56はレンズホルダ48における光軸O方向上側に配置され、一対の下側板バネ58はレンズホルダ48における光軸O方向下側に配置される。
【0135】
上側板バネ56は、レンズホルダ48に取り付けられる上側リング部562と、後述するようにハウジング42の四隅に取り付けられる4つの上側端部564とを有する。上側リング部562と4つの上側端部564とに間には、4つの上側腕部566が設けられている。すなわち、4つの上側腕部566は、上側リング部562と4つの上側端部564とを繋いでいる。
【0136】
上側板バネ56の上側リング部562は、レンズホルダ48の筒状部482に固定される。詳述すると、レンズホルダ48は、筒状部482の上端から半径方向外側へ突出する4つの上側ホルダ突出部486を有する。4つの上側ホルダ突出部486は、それぞれ、上方へ突出する4つの上側ホルダ突起部486aを持つ。上側板バネ56の上側リング部562は、これら4つの上側ホルダ突起部486aがそれぞれ挿入される4つの上側バネ穴562aを持つ。
【0137】
一方、上側板バネ56の4つの上側端部564は、前方支持部材52の一対の前方支持突出部524および後方支持部材54の一対の後方支持突出部544に固定される。詳述すると、上側板バネ56の4つの上側端部564は、それぞれ、一対の前方支持突出部524に形成された一対の前方支持突起524aおよび一対の後方支持突出部544に形成された一対の後方支持突起544aが嵌入される4つの上側端部穴564aを持つ。ハウジング42は、外上側カバー46の内部に設けられた樹脂製の内上側カバー60を更に有する。この内上側カバー60によって、上側板バネ56の4つの上側端部564が固定される。
【0138】
詳述すると、内上側カバー60は、リング形状をした内カバー本体602と、この内カバー本体602の四隅で下方へ僅かに突出する4つの係止突出部604と、前側の一対の突出部604の近傍で下方へ延出する一対の前方延出部606と、後側の一対の突出部604の近傍で下方へ延出する一対の後方延出部608とから構成される。4つの係止突出部604は、それぞれ、前方支持部材52の一対の前方突起524aおよび後方支持部材54の一対の後方支持突起544aが挿入される4つの貫通穴604aを持つ。したがって、上側板バネ56の4つの上側端部564は、内上側カバー60の4つの係止突出部604と、前方支持部材52の一対の前方支持突出部524および後方支持部材54の一対の後方支持突出部544との間に挟持された状態で、固定される。内上側カバー60は、上側板バネ56が前方支持部材52および後方支持部材54から外れるのを防止する機能を有するので、ストッパとも呼ばれる。
【0139】
従って、ハウジング42は、アクチュエータ・ベース44、外上側カバー46、前方支持部材(電極ホルダ)52、後方支持部材54、および内上側カバー(ストッパ)60から構成される。
【0140】
一対の下側板バネ58の内、一方は左右方向Yの右側に設けられ、他方は左右方向Yの左側に設けられている。一対の下側板バネ58は、光軸Oを通り、かつ前後方向Xおよび上下方向Zによって規定される(に延在する)平面に関して面対称に配置されている。換言すれば、一対の下側板バネ58の一方および他方は、上記平面に対して互いに鏡像関係にある。
【0141】
右側の下側板バネ58は、右方で前後方向Xに弧状に延在する下側円弧部582と、右側の前後方向Xの2隅に設けられた一対の下側端部584とを有する。下側円弧部582と一対の下側端部584との間には、一対の下側腕部586が設けられている。すなわち、一対の下側腕部586は、下側円弧部582と一対の下側端部584とを繋いでいる。一対の下側端部584は、アクチュエータ・ベース44の4つのベース突起444aの内、右方に設けられた一対のベース突起444aが嵌入される一対の下側端部穴584aを持つ。したがって、右側の下側板バネ58の一対の下側端部584は、アクチュエータ・ベース44の右側の一対のベース突出部444と、前方支持部材52の右側の前方突出部524および後方支持部材54の右側の後方突出部544との間に挟持されて、固定される。右側の下側板バネ58の下側円弧部582は、レンズホルダ48の筒状部482の下端部の右側に取り付けられる。
【0142】
同様に、左側の下側板バネ58は、左方で前後方向Xに弧状に延在する下側円弧部582と、左側の前後方向Xの2隅に設けられた一対の下側端部584とを有する。下側円弧部582と一対の下側端部584との間には、一対の下側腕部586が設けられている。すなわち、一対の下側腕部586は、下側円弧部582と一対の下側端部584とを繋いでいる。一対の下側端部584は、アクチュエータ・ベース44の4つのベース突起444aの内、左方に設けられた一対のベース突起444aが嵌入される一対の下側端部穴584aを持つ。したがって、左側の下側板バネ58の一対の下側端部584は、アクチュエータ・ベース44の左側の一対のベース突出部444と、前方支持部材52の左側の前方突出部524および後方支持部材54の左側の後方突出部544との間に挟持されて、固定される。左側の下側板バネ58の下側円弧部582は、レンズホルダ48の筒状部482の下端部の左側に取り付けられる。
【0143】
上側板バネ56と一対の下側板バネ58とから成る弾性部材50は、レンズホルダ48を光軸O方向にのみ移動可能に案内する案内手段として働く。上側板バネ56および一対の下側板バネ58の各々は、上述したように、上記第1の実施例および第2の実施例で示された、特殊なステンレス鋼から成る。
【0144】
このような構成により、レンズ可動部(41,48)は、筐体(ハウジング)42に対して光軸O方向にのみ移動可能である。
【0145】
上記レンズ駆動装置10Aにおいて、レンズバレス41を保持する筒状部482を含むレンズホルダ48は、中央部に配置された可動部(41,48)として働く。また、アクチュエータ・ベース44、外上側カバー46、前方支持部材(電極ホルダ)52、後方支持部材54、および内上側カバー(ストッパ)60から成るハウジング42は、可動部(41,48)の周囲に配置された筒状の固定部として働く。
【0146】
レンズ駆動装置10Aは、レンズホルダ48の筒状部482の外壁近傍に配置された線状に形成された形状記憶合金ワイヤ62と、この形状記憶合金ワイヤ62の両端部にそれぞれ電気的に接続された一対の電極64とを備えている。形状記憶合金(SMA)ワイヤ62と一対の電極64との組み合わせは、形状記憶合金(SMA)アセンブリ66と呼ばれる。SMAアセンブリ66は、後述するように、前方支持部材(電極ホルダ)52に保持される。
【0147】
図27及び図28を参照して、SMAアセンブリ66の前方支持部材(電極ホルダ)52への取付け状態について説明する。図27は、SMAアセンブリ66を電極ホルダ52に取り付けた状態を、斜め前方上方から見た斜視図である。図28は、SMAアセンブリ66を電極ホルダ52に取り付けた状態を、斜め後方上方から見た斜視図である。
【0148】
一対の電極64は、左右対称の形状をしている。一対の電極64は、実質的に上下方向Zに延在している。各電極64は、前方支持連結部526で保持される略L字型の被保持部642と、この被保持部642の上端部で断面コ字状に曲げられた接続部644と、被保持部642の内側端部から下方へ延在する帯状の端子部646とを有する。各電極64は、接続部644をかしめて、形状記憶合金ワイヤ62の端部と電気的に接続される。端子部646は、図示しない駆動回路からの駆動電流の供給を受けるためのものである。
【0149】
図28に示されるように、電極64の被保持部642は、電極ホルダ52の前方支持連結部526の背面で保持される。被保持部642は円穴642aを持つ。
【0150】
図28に示されるように、前方支持連結部526は、被保持部642の円穴642aに嵌入するように、その背面から後方へ突出する円柱状の第1の突出部526aを有する。また、前方支持連結部526は、被保持部642の底面部と係止するように、その背面から後方へ突出する第2の突出部526bを有する。さらに、前方支持連結部526は、被保持部642のL字の内側曲げ部と係合するように、その背面から後方へ突出する略三角柱状の第3の突出部526cとを有する。尚、電極64の被保持部642の外側面は、電極ホルダ52の前方支持突出部524の内側壁に係止される。
【0151】
このようにして、SMAアセンブリ66は、前方支持部材(電極ホルダ)52に取り付けられている。尚、形状記憶合金ワイヤ62の中間部62aは、レンズホルダ48の突出部(掛止突起)484と掛止される。すなわち、形状記憶合金ワイヤ62は、レンズホルダ48とハウジング42との間に張架されている。
【0152】
次に、レンズ駆動装置10Aの概略の動作について説明する。
【0153】
周知のように、「形状記憶合金」とは、予め与えられた変形歪が、特定の温度領域において、ゼロとなって元の形状に回復する性質を持つ金属である。形状記憶合金は、例えば、TiNi合金からなる。
【0154】
尚、図示の形状記憶合金ワイヤ62は、通電により自己発熱すると予め記憶された収縮長さに収縮し、通電を止めると自然冷却により予め決められた元の長さ(弛緩状態の長さ)に戻るタイプのワイヤである。
【0155】
上記弾性部材50は、レンズホルダ48を光軸O方向に沿って下方向に付勢するように作用する。一方、形状記憶合金ワイヤ62は、駆動回路(図示せず)から一対の電極64を介して通電されると、収縮する。その結果、レンズホルダ48は、弾性部材50の下方向の付勢力に抗して、光軸O方向に沿って上方へ移動する。
【0156】
一方、形状記憶合金ワイヤ62への通電を停止すると、形状記憶合金ワイヤ62は自然に冷却される。その結果、弾性部材50の下方向の付勢力により、形状記憶合金ワイヤ62は、伸張する。その結果、レンズホルダ48は、光軸O方向に沿って下方へ移動する。
【0157】
すなわち、形状記憶合金ワイヤ62は、その通電/非通電による温度変化により光軸O方向に伸縮し、レンズホルダ48を光軸O方向に移動させる移動手段として働く。
【0158】
弾性部材50とSMAアセンブリ66との組み合わせは、レンズ可動部(41,48)を光軸O方向に移動可能に支持しながら、レンズ可動部(41,48)を駆動するレンズ駆動部(50,66)として働く。
【0159】
レンズ駆動部(50,66)とレンズ可動部(41,48)とは、図24に示されるように、光軸Oに対して並置されている。したがって、レンズ駆動装置10Aを低背化することができる。
【0160】
本発明の第2の実施形態に係るレンズ駆動装置10Aでは、板バネ(56,58)として、ビッカース硬さが500HV以上の材料を使用している。これにより、耐衝撃性能とレンズ傾き(チルト)性能とを両立させた、レンズ駆動装置10Aを提供することができる。
【0161】
以上、本発明についてその好ましい実施の形態によって説明してきたが、本発明の精神を逸脱しない範囲内で、種々の変形が当業者によって可能であるのは明らかである。例えば、上述した実施の形態では、内周側端部221と外周側端部222との間を3本または4本のアーム部223で連結しているが、一般には、内周側端部221と外周側端部222との間をN本(Nは2以上の整数)のアーム部で連結する板バネにも適用可能である。但し、Nは2〜4の範囲にあることが好ましい。
【符号の説明】
【0162】
10、10A レンズ駆動装置
12 アクチュエータ・ベース
14 レンズホルダ
140 筒状部
142 雌ネジ
16 駆動コイル
18 永久磁石
182 永久磁石片
20 ヨーク
202 外筒部
22、22A、22B、22C、22D、22E、22F、22G 上側板バネ(前側スプリング)
221 内周側端部(内輪)
221−1 蛇腹部
222 外周側端部(外輪)
222a 丸穴
222b 円弧状スリット
223 腕部(アーム部)
223a スリット
224 内周側連結部
224a 開口
225 外周側連結部
226、226A 第1のスリット
226a、226Aa 第1の延在スリット部
226b、226Ab 第1の根本スリット部
227、227A、227B 第2のスリット
227a、227Aa、227Ba 第2の延在スリット部
227b、227Ab、227Bb 第2の根本スリット部
24 後側スプリング(下側板バネ)
241 内周側端部(内輪)
243 腕部(アーム部)
26 ストッパ
262 コ字形の回転防止押さ部(回転防止部材)
28 カバー
41 レンズバレル(レンズアセンブリ)
42 筐体(ハウジング)
44 アクチュエータ・ベース
442 ベース部
444 ベース突出部
444a ベース突起
446 前方凹部
448 後方凹部
46 外上側カバー
48 レンズホルダ
482 筒状部
484 突出部(掛止突起)
486 上側ホルダ突出部
486a 上側ホルダ突起部
50 弾性部材
52 前方支持部材(電極ホルダ)
522 前方ベース部
524 前方支持突出部
524a 前方支持突起
526 前方支持連結部
526a 第1の突出部
526b 第2の突出部
526c 第3の突出部
54 後方支持部材
542 後方ベース部
544 後方支持突出部
544a 後方支持突起
546 後方支持連結部
56 上側板バネ(前側スプリング)
562 上側リング部
562a 上側バネ穴
564 上側端部
564a 上側端部穴
566 上側腕部
58 下側板バネ(後側スプリング)
582 下側円弧部
584 下側端部
584a 下側端部穴
586 下側腕部
60 内上側カバー(ストッパ)
602 内カバー本体
604 係止突出部
604a 貫通穴
606 前方突出部
608 後方突出部
62 形状記憶合金ワイヤ
62a 中間部
64 電極
642 被保持部
642a 丸穴
644 接続部
646 端子
66 形状記憶合金(SMA)アセンブリ
AFL 可動レンズ
t 板バネの板厚
w アーム部の幅寸法
L アーム部の長さ寸法
N アーム部の本数
O 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に配置された柱状の可動部を、該可動部の周囲に配置された筒状の固定部に対して、径方向に位置決めした状態で中心軸方向に変位可能に支持する板バネであって、
前記板バネが、比透磁率が1.1以上のステンレス鋼から成ることを特徴とする板バネ。
【請求項2】
前記板バネは、
円環状の内周側端部と、
該内周側端部から離間して設けられ、前記内周側端部よりも半径の大きな外周側端部と、
前記内周側端部と前記外周側端部との間を連結するために周方向に沿って設けられたN本(Nは2以上の整数)のアーム部と、
前記内周側端部と前記N本のアーム部とを連結するN個の内周側連結部と、
前記外周側端部と前記N本のアーム部とを連結するN個の外周側連結部と、
を有する、請求項1に記載の板バネ。
【請求項3】
前記板バネは、
前記外周側端部と各アーム部との間に形成された第1のスリットと、
前記内周側端部と各アーム部との間に形成された第2のスリットとを有し、
前記第1のスリットは、
前記外周側端部と各アーム部との間に形成された円弧状の第1の延在スリット部と、
前記外周側連結部の近傍に形成された第1の根本スリット部とを有し、
前記第2のスリットは、
前記内周側端部と各アーム部との間に形成された実質的に円弧状の第2の延在スリット部と、
前記内周側連結部の近傍に形成された第2の根本スリット部とを有する、
請求項2に記載の板バネ。
【請求項4】
前記第1の根本スリット部は、前記第1の延在スリット部のスリット幅よりも大きい幅を持ち、かつ各アーム部の根本部から離間するように形成された曲線で囲まれた膨出形状をしている、請求項3に記載の板バネ。
【請求項5】
前記内周側連結部は、前記内周側端部を前記可動部に取り付けるための開口を持ち、
前記第2の根本スリット部は、前記開口に近接し、かつ各アーム部の根本部から離間するように、前記第2の延在スリット部から突出して形成されている、請求項3に記載の板バネ。
【請求項6】
前記第2の根本スリット部は、各アーム部から離間するように、前記第2の延在スリット部から突出して形成されている、請求項3に記載の板バネ。
【請求項7】
前記外周側端部は、その隅に形成され、当該外周側端部を前記固定部に取り付けるための丸穴と、該丸穴と前記第1の根本スリット部との間に形成された円弧状のスリットとを持つ、請求項6に記載の板バネ。
【請求項8】
前記第1の根本スリット部は、前記第1の延在スリット部のスリット幅よりも大きい幅を持ち、かつ曲線で囲まれた膨出形状をしており、
前記第2の根本スリット部は、前記第2の延在スリット部のスリット幅よりも大きい幅を持ち、かつ曲線で囲まれた膨出形状をしている、
請求項3に記載の板バネ。
【請求項9】
前記板バネの板厚をtとし、前記アーム部の幅寸法をwとしたとき、アームアスペクト比(w/t)が、6.0〜1.5の範囲にある、請求項1に記載の板バネ。
【請求項10】
前記Nが2〜4の範囲にある、請求項9に記載の板バネ。
【請求項11】
各アーム部が少なくとも1本のスリットを有する、請求項9又は10に記載の板バネ。
【請求項12】
隣接するアーム部が互いに重複して配置されている、請求項9又は10に記載の板バネ。
【請求項13】
前記内周側端部が蛇腹部を有する、請求項9又は10に記載の板バネ。
【請求項14】
駆動源としてボイス・コイル・モータ(VCM)を使用したVCM方式を採用したレンズ駆動装置であって、
前記可動部として、レンズアセンブリを保持するための筒状部を有するレンズホルダと、該レンズホルダに前記筒状部の周囲に位置するように固定された駆動コイルと、を備え、
前記固定部として、前記駆動コイルと対向する永久磁石を備えたヨークを備え、
前記レンズ駆動装置は、前記レンズホルダの筒状部の光軸方向両側に設けられ、前記レンズホルダを径方向に位置決めした状態で光軸方向に変位可能に支持する一対の板バネを備え、
前記一対の板バネの各々は、前記レンズホルダに取り付けられた前記内周側端部と前記ヨークに取り付けられた前記外周側端部とを有し、
前記駆動コイルに通電することで、前記永久磁石の磁界と前記駆動コイルに流れる電流による磁界との相互作用によって、前記可動部を光軸方向に位置調整可能なレンズ駆動装置において、
前記一対の板バネの各々は、請求項2乃至13の何れか1つに記載の板バネから成ることを特徴とするレンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−169446(P2011−169446A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35895(P2010−35895)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】