説明

板材収納ラック、及び、板材収納ラック用の連動機構

【課題】作業者の操作動線が短くなって作業の合理化を図ることができ、しかも構造が簡単で重量の増加も抑制できる板材収納ラック、及び、板材収納ラック用の連動機構を提供する。
【解決手段】天板2と底板3との間に固定側板4と可動側板5とを設け、可動側板5を固定するクランプ機構6と、クランプ機構6の操作レバー41を連動させる連動機構8とを備えた板材収納ラック1であって、連動機構8は、下リンク部材42と、上リンク部材43と、上リンク部材43に設けられた上クロスジョイント44aと、下リンク部材42に設けられた下クロスジョイント44bと、上延出部分51が上クロスジョイント44aに、下延出部分52が下クロスジョイント44bにそれぞれ同じ位相で回動可能な状態で止着された上下連結リンク部材50と、を備え、いずれか1の操作レバー41を回動操作すると、連動機構8を介して他の操作レバー41がすべて連動して動くようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電気・電子機器に組み込まれるプリント基板等の板材をその幅に対応させて可動側板を移動して幅調整可能な板材収納ラック、及び可動側板を移動する際に操作レバーを連動させて簡単に移動操作できるようにした板材収納ラック用の連動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プリント基板をその幅に対応させて可動側板を移動して幅調整可能な板材収納ラックは、一定間隔をあけて設けられた天板と底板との間に2枚の直立する矩形の側板を向かい合わせて設け、一方の側板を固定側板とし、他方の側板を固定側板と平行な状態で移動できる可動側板とし、この可動側板が固定側板と平行な状態で移動できるように天板側と底板側にラックギアを設ける一方で可動側板の縦方向と横方向に設けた軸の端にピニオンギアを設け、両側のピニオンギアがラックギアに噛み合って移動することにより可動側板が固定側板と平行な状態で移動できるように構成し、基板の幅に対応させて可動側板を移動したならば可動側板の四隅に配設したクランプ機構のレバーを回動して当該位置でクランプし、作業中に幅が変化しないように構成されている(特許文献1)。
【0003】
前記した板材収納ラックでは、幅調整する度に可動側板の四隅に設けられたクランプ機構を1つずつ解除しなければならない。
そこで、ワンタッチで解除操作できる収納ラックも提案されている。この収納ラックは、中央に2つの歯車を上下に配置して噛合させるとともに両歯車の軸にスプロケットを取り付けた歯車機構を設け、ラックの四隅にスプロケットをそれぞれ配置し、歯車機構の上側の歯車のスプロケットからラックの四隅のうちの上側のスプロケットにチェーンを掛け渡し、歯車機構の下側の歯車のスプロケットからラックの四隅のうちの下側のスプロケットにもチェーンを掛け渡し、歯車機構の一方の歯車を回転操作すると、前記した両チェーンを介して四隅のスプロケットが回転してロックが解除される構成を採っている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6−11577号公報
【特許文献2】実公平6−863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した板材収納ラックは、幅調整する度に四隅のクランプ機構の操作レバーを1つずつ操作しなければならないので、作業者の手の操作動線が複雑且つ長くなってしまい、幅調整作業が煩わしい。
また、ワンタッチで解除操作できるように構成した前記基板ラックは、チェーンやスプロケットを複数設けることが必要となり、構造が複雑になり、且つ重量が大幅に増大してしまい、かえって取り扱いが面倒になってしまう。また、中央に操作ハンドルを設けることになり、作業者の姿勢や好みが異なるので、手の操作動線がこの操作ハンドルに適合しない場合もある。
【0006】
本発明は、前記した事項に鑑み提案されたもので、その目的は、作業現場における作業者の手の操作動線ができるだけ短くなって作業の合理化を図ることができ、しかも構造が簡単で重量の増加も抑制できる板材収納ラックを提供しようとするものである。さらに、既存の板材収納ラックに取り付けることにより、幅調整作業でワンタッチ操作でクランプ、アンクランプの操作が可能となる板材収納ラック用の連動機構を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のものは、一定間隔をあけて設けられた天板と底板との間に2枚の直立する矩形の側板を向かい合わせて設け、一方の側板を固定側板とし、他方の側板を固定側板と平行な状態で移動できる可動側板とし、両側板の間に収納する板材の大きさに応じて移動した可動側板を固定するクランプ機構と、可動側板の四隅にそれぞれ設けられたクランプ機構の操作レバーを連動させる連動機構と、を備えた板材収納ラックであって、
前記した連動機構は、
可動側板の下側の両方の隅部に配設された操作レバーを連結して両操作レバーの動きを連動させる棒状の下リンク部材と、
可動側板の上側の両方の隅部に配設された操作レバーを連結して両操作レバーの動きを連動させる棒状の上リンク部材と、
上リンク部材の長手方向の途中に設けられ、上リンク部材の長手方向に沿ってスライド可能な上クロスジョイントと、
下リンク部材の長手方向の途中に設けられ、下リンク部材の長手方向に沿ってスライド可能な下クロスジョイントと、
可動側板の上部と下部に設けられた軸受部により縦方向の回動軸が回動可能に支持され、回動軸に対して直交する水平方向にそれぞれ延出された上延出部分と下延出部分とを有し、上延出部分の先端に縦方向に形成した回動軸が前記上クロスジョイントの回動軸受部に、下延出部分の先端に縦方向に形成した回動軸が前記下クロスジョイントの回動軸受部にそれぞれ同じ位相で回動可能な状態で止着された上下連結リンク部材と、
を備え、
前記したいずれか1の操作レバーを回動操作すると、前記連動機構を介して他の操作レバーが前記1の操作レバーの回動に連動して動くようにしたことを特徴とする板材収納ラックである。
【0008】
請求項2に記載のものは、前記クロスジョイントが、リンク部材が貫通するリンク部材用貫通空部と、前記上下連結リンク部材の回動軸が貫通する回動軸用貫通空部とを有し、該リンク部材用貫通空部の軸方向に対して、回動軸用貫通空部の軸方向が直交する状態でプラスチック材により一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載の板材収納ラックである。
【0009】
請求項3に記載のものは、可動側板を固定するクランプ機構を固定状態か前記固定を解除した状態のいずれかの状態に維持する状態維持機構を備え、
該状態維持機構は、前記上下連結リンク部材の回動軸に設けられた状態維持用カムと、該状態維持用カムのカム面に当接するカムフォロアとからなり、
前記状態維持用カムは、回転中心部分に上下連結リンク部材の回動軸を通す孔を開設し、外周に形成したカム面の内側にカム面形状に沿った空部を形成してなり、
該カム面に当接するカムフォロアは、可動側板側に突設された突起から構成され、
前記カム面の弾性によりカムフォロアがカム面に圧接して状態を維持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の板材収納ラックである。
【0010】
請求項4に記載のものは、一定間隔をあけて設けられた天板と底板との間に2枚の直立する矩形の側板を向かい合わせて設け、一方の側板を固定側板とし、他方の側板を固定側板と平行な状態で移動できる可動側板とし、両側板の間に収納する板材の大きさに応じて移動した可動側板を固定するクランプ機構と、を備えた板材収納ラックに取り付けられて使用され、可動側板の四隅にそれぞれ設けられたクランプ機構の操作レバーを連動させる板材収納ラック用の連動機構であって、
前記した連動機構は、
可動側板の下側の両方の隅部に配設された操作レバーを接続して両操作レバーの動きを連動させる棒状の下リンク部材と、
可動側板の上側の両方の隅部に配設された操作レバーを接続して両操作レバーの動きを連動させる棒状の上リンク部材と、
上リンク部材の長手方向の途中に設けられ、上リンク部材の長手方向に沿ってスライド可能な上クロスジョイントと、
下リンク部材の長手方向の途中に設けられ、下リンク部材の長手方向に沿ってスライド可能な下クロスジョイントと、
可動側板の上部と下部に設けられた軸受部により縦方向の回動軸が回動可能に支持され、回動軸に対して直交する水平方向にそれぞれ延出された上延出部分と下延出部分とを有し、上延出部分の先端に縦方向に形成した回動軸が前記上クロスジョイントの回動軸受部に、下延出部分の先端に縦方向に形成した回動軸が前記下クロスジョイントの回動軸受部にそれぞれ同じ位相で回動可能な状態で止着された上下連結リンク部材と、
を含み、
前記したいずれか1の操作レバーを回動操作すると、他の操作レバーが前記1の操作レバーの回動に連動して動くことを特徴とする板材収納ラック用の連動機構である。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によれば、いずれか1つの操作レバーを操作すれば、連動機構を介して残りの操作レバーが連動して動くので、作業者は、自分が操作し易い操作レバーを選択して操作することができ、作業現場における作業者の手の操作動線をできるだけ短くでき、これにより作業の合理化を図ることができるし、作業者への負担の軽減を図ることができる。しかも、構造が簡単で重量の増加も抑制した板材収納ラックを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】連動機構を取り外した状態における板材収納ラックの斜視図である。
【図2】操作レバーを第1状態に変換したときの可動側板の斜視図である。
【図3】操作レバーを第2状態に変換したときの可動側板の斜視図である。
【図4】ピニオンギアとラックギアの周辺構造を示す一部欠截斜視図である。
【図5】操作レバー本体の組付けを示す斜視図である。
【図6】操作レバー本体に装着するホルダの斜視図である。
【図7】(a)は第2状態に変換した下ストッパー機構の説明図、(b)は第1状態における下ストッパー機構の説明図である。
【図8】連動機構の上下連結リンク部材に操作部を設けた板材収納ラックの第1状態(ロック状態)における斜視図である。
【図9】連動機構の上下連結リンク部材に操作部を設けた板材収納ラックの第2状態(アンロック状態)における斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、連動機構を分離した状態で示す板材収納ラックの斜視図、図2は、クランプ機構をクランプ状態に変換した状態における可動側板の斜視図、クランプ機構をアンクランプ状態に変換した状態における可動側板の斜視図である。
この板材収納ラック1は、一定間隔をあけて設けられた天板2と底板3との間に2枚の直立する矩形の側板を向かい合わせて設け、一方(図1では左側)の側板を固定側板4とし、他方(図1では右側)の側板を前記固定側板4と平行な状態で左右幅方向(X軸方向)に移動できる可動側板5とし、両側板4,5の間に収納するプリント基板等の板材の大きさに応じて移動した可動側板5を固定するクランプ機構6と、可動側板5の四隅にそれぞれ配設されたクランプ機構6の操作レバーを連動させる連動機構8と、を備えた直方体形の枠体である。
なお、以下の説明においては、前面に開口した開口部10の左右幅方向をX軸方向、このX軸方向に直交する奥行き方向をY軸方向、X軸方向とY軸方向とに直交する高さ方向をZ軸方向とする。
【0014】
底板3は、プラスチック製の四角形の板材であり、前辺と後辺の近傍にX軸方向に沿って下ガイドレール11を設け、この下ガイドレール11の側面にラックギア12aを形成すると共に下ガイドレール11の段差上面にラックギア12bを形成してある。また、手前の下ガイドレール11の手前と、奥の下ガイドレール11のさらに奥に位置する床板13、すなわち両下ガイドレール11の外側に、X軸方向に沿って長尺な長孔14を床板13の厚み方向に貫通した状態でそれぞれ開設する。
【0015】
天板2は、底板3とほぼ同じ大きさ、形状のプラスチック製の板材であり、底板3に対応させて上ガイドレール15を底板3と同様に設け、この上ガイドレール15の側面と段差下面にラックギア12をそれぞれ形成し、また、手前の上ガイドレール15の手前と、奥の上ガイドレール15のさらに奥に位置する部分(底板3の床板13に対応する部分)、すなわち上ガイドレール15の外側に、X軸方向に沿って長尺な長孔14を板の厚み方向に貫通した状態でそれぞれ開設する。そして、この天板2は、底板3の一側(本実施形態では左側)に直立状態で立設した固定側板4と、底板3の他側(右側手前と右側奥)に立設した支柱16とにより、底板3から所定の高さに支持されている。
【0016】
固定側板4は、内面(可動側板5に対向する面)に、多数の支持溝17を平行に形成した板材であり、本実施形態では、外面の手前と奥に縦方向に設けた2本の縦材に単位板18を複数段(図面では5段)重ねた状態で取り付けて構成されている。
【0017】
一方、可動側板5は、内面(固定側板4に対向する面)に、多数の支持溝17を平行に形成した板材であり、本実施形態では、外面の手前と奥に縦方向に設けた2本の縦材(ハット型材)20に単位板を複数段重ねた状態で取り付けて構成されている点では固定側板4と同様であるが、固定側板4に対して平行な状態を維持しながらX軸方向に移動できるようにするために、下辺と上辺の近傍にY軸方向に沿って軸21を設け、該軸21の両端にピニオンギア22を取り付け、各ピニオンギア22を段差上面のラックギア12に噛合させ、また、手前の辺と奥の辺の近傍にZ軸方向に沿って軸23を設け、該軸23の両端にピニオンギア24を取り付け、各ピニオンギア24を上下の梁の側面に形成したラックギア12に噛合させる。したがって、可動側板5をX軸方向に移動すると、ピニオンギア22,24がラックギア12に噛合して回動し、可動側板5の一部が移動方向に先行したり、あるいは遅れることがなく固定側板4に対して常に平行な状態で移動できる。
【0018】
次に、移動した可動側板5を固定するクランプ機構6について説明する。
図5に示すクランプ機構6は、挟圧式であり、可動側板5の縦材20の上端と下端に取り付けられ取付孔25を有する固定片26を突設したスライダ27と、天板2と底板3に開設した長孔14内に貫通するテンションロッド28の端部に長孔14の幅よりも大きなフランジ状頭部29を設けるとともに頭部29とは反対側の端部に軸孔付軸着片30を有する挟圧部材31と、該挟圧部材31の軸孔付軸着片30を空部に差し込んだ状態で側面に開口した軸孔32から軸32´を挿入して当該軸を軸着片の軸孔に貫通して挟圧部材31を取り付け、軸孔32を挟んで遠く離れた一方の端部を回動操作すると軸孔32に近い他方の端部周辺に形成したカム面33が固定片26を押圧する操作レバー本体34とからなる。そして、前記した操作レバー本体34のカム面33は、図5に示すように、操作レバー本体34が固定片26に対して起立した第1状態で固定片26に当たる面と軸孔32との距離と、操作レバー本体34が矢印方向に回動して倒された第2状態(図3、図4)で固定片26に当たる面と軸孔32との距離とでは、操作レバー本体34を起立させた第1状態における距離が第2状態における距離よりも大きくなるように成形されている。したがって、操作レバー本体34を倒した第2状態では、カム面と頭部29との間で長孔14の縁を強く挟みつけることにならず解放状態(アンロック状態)となる。そして、可動側板5の四隅に設けられているすべてのクランプ機構6をアンロック状態にすると、可動側板5を手で押すことにより任意に移動することができる。一方、操作レバー本体34を回動することにより第2状態から第1状態に変換すると、固定片26に当たるカム面33と軸32´との距離が増加するので、カム面33と頭部29との間で長孔14の縁を強く挟みつけて固定する状態(ロック状態)となり、可動側板5を手で押しても動かない。なお、クランプ機構6は、可動側板5の外側から操作できるように、可動側板5の上端左右に設けたものは操作レバー本体34を下方に回動した状態で第2状態(アンロック状態)に、下端左右に設けたものは操作レバー本体34を上方に回動した状態で第1状態(ロック状態)となり、上端の操作レバー本体34にあっては上方に向けて回動して固定片26に対して起立させると第1状態(ロック状態)となり、下端の操作レバー本体34にあっては下方に向けて回動して起立させると第1状態(ロック状態)となる。
【0019】
次に、前記した操作レバー(操作レバー本体34)を連動させる連動機構8について説明する。
連動機構8は、可動側板5に取り付けられてすべてのクランプ機構6の操作レバーを連動させるものであり、本実施形態では、前記した操作レバー本体34にホルダ40を装着して一体化して操作レバー41としてあり、可動側板5の下方(下部)両隅部に設けたクランプ機構6の両操作レバー41を接続して両操作レバー41の動きを連動させる棒状の下リンク部材42と、可動側板5の上側(上部)の両方の隅部に配設されたクランプ機構6の両操作レバー41を接続して両操作レバー41の動きを連動させる棒状の上リンク部材43と、上リンク部材43の長手方向の途中(ほぼ中央)に設けられ、上リンク部材43の長手方向に沿ってスライド可能な上クロスジョイント44aと、下リンク部材42の長手方向の途中(ほぼ中央)に設けられ、下リンク部材42の長手方向に沿ってスライド可能な下クロスジョイント44bと、可動側板5の縦材20の上部同士を接続する横長な上梁材45の途中(長手方向のほぼ中央)に設けた上軸受部46と、縦材20同士の下部同士を接続する横長な下梁材47の途中(長手方向のほぼ中央)に設けた下軸受部48と、この下軸受部48と上軸受部46により回動軸49が支持されて回動可能な上下連結リンク部材50とから概略構成されている。そして、上下連結リンク部材50は、回動軸49に対して直交する水平方向にそれぞれ延出された上延出部分51と下延出部分52とを有し、上延出部分51の先端に縦方向に形成した回動軸51´が前記上クロスジョイント44aの回動軸受部に、下延出部分52の先端に縦方向に形成した回動軸52´が前記下クロスジョイント44bの回動軸受部にそれぞれ同じ位相で回動可能な状態で止着されている。
【0020】
操作レバー41のホルダ40は、図6に示すように、操作レバー本体34を差し込む空部53を有するプラスチック製のレバーであり、側面には下リンク部材42あるいは上リンク部材43の端部を取り付けるリンク取付部54aを有し、前記した空部53内に操作レバー本体34の自由端側を差し込んでから固定ネジ孔54bにネジ(図示せず)で固定すると、操作レバー本体34と一体化する。
【0021】
クロスジョイント44は、Y軸方向のリンク部材42,43を相対的に左右スライド可能な状態で内包するリンク部材用貫通空部55と、上下連結リンク部材50の延出部分の先端に縦方向に形成した回動軸51´,52´を回動可能であって且つ上下スライド可能な状態で貫通する回動軸用貫通空部56とを形成したプラスチック製の部材であり、リンク部材用貫通空部55の軸方向と回動軸用貫通空部56の軸方向とが直交する配置となるように成形されている。そして、取り付ける場合には、リンク部材用貫通空部55が可動側板5の梁材45,47寄りの姿勢となるようにする。そして、このクロスジョイント44は、リンク部材用貫通空部55内を貫通するリンク部材の位置と回動軸用貫通空部56内を貫通する回動軸の位置とに応じて、自転することなく同じ姿勢で三次元的に移動してリンク部材と回動軸との間で駆動力の方向を変換しつつ円滑に伝達する。なお、実際の動きは後で詳述する。
【0022】
また、本実施形態では、第1状態または第2状態を維持する状態維持機構を備える。この状態維持機構は、図7に示すように、軸受近傍に設けられており、上下連結リンク部材50の回動軸49の屈曲部分近傍に状態維持用カム60を取り付け、このカム60のカム面61にカムフォロア62が圧接して上下連結リンク部材50の回動を規制することにより状態を維持するようにしたものである。
【0023】
状態維持用カム60は、回転中心部分に上下連結リンク部材50の回動軸49を通す軸孔を開設し、外周に形成したカム面61の内側にカム面形状に沿った内面を有する空部63を形成してカム面61と空部63との間のベルト状部分の肉厚をほぼ同じ厚さとし、軸孔を挟んでカム面61とは反対側に腕部65を形成してなり、軸孔内に上下連結リンク部材50を通して延出部分52をカム60の腕部65の溝66内に嵌合することにより取り付ける。
【0024】
一方、カムフォロア62は、軸受46,48を設けた上梁材45あるいは下梁材47に突起として梁材と一体成形されている。このカムフォロア62は、不動であるが、状態維持用カム60のカム面61が空部との間のベルト状部分の撓み復元力による弾性を備えているので、常に適宜な圧力でカム面61に圧接し、これにより上下連結リンク部材50を所定の位相に維持して操作レバー41の状態を維持する。この様にして、カム60のカム面61の裏側に空部63を形成すると、カム面61に過不足のない弾性復元力を付与することができ、カムフォロアを付勢するバネを設ける必要がなくなり、構成の簡略化を図ることができる。
【0025】
前記した構成からなる連動機構8を備えた板材収納ラック1において板材の幅に合わせて可動側板5の位置を調整する調整作業の操作について説明する。なお、各クランプ機構6は、図2に示すように固定状態(第1状態)であって、上下連結リンク部材50の上延出部分51と下延出部分52の各先端を梁材側に近づけて可動側板5に沿って倒した状態にあるものとする。
まず、可動側板5が固定された状態、すなわち、すべての操作レバー41が可動側板5に沿って倒した第1状態で、いずれか1つの操作レバー41を回動操作すると、前記連動機構8を介して他の操作レバー41が前記した1つの操作レバー41の回動に連動して一斉に動いて第1状態から第2状態に変換する。すなわち、上方に配設されているクランプ機構6のうちの一方の操作レバー41を自由端側が上昇する方向に回動操作すると、この操作レバー41に接続している上リンク部材43が操作レバー41の動きに同調してY軸反時計回り(図2中矢印A方向)に円弧移動し、この上リンク部材43の円弧移動により上クロスジョイント44aが上リンク部材43の円弧移動に伴って上昇しつつ外側(移動側板から離れる方向)に移動し、この上クロスジョイント44aの外側への円弧移動により、上クロスジョイント44aが上下連結リンク部材50の上延出部分51の先端を、回動軸49を中心にして上延出部分51の長さを半径とする軌跡上を図2中矢印B方向に回動し、この回動に伴って上クロスジョイント44aが上リンク部材43に沿って手前側(図2中左側)に移動(スライド)する。この様にして、上延出部分51の先端が手前に移動する方向に上下連結リンク部材50が回動すると、この回動により下延出部分52の先端が外側に移動しつつ手前に移動し、これにより下クロスジョイント44bが手前に移動しながら下降し、この下クロスジョイント44bの移動により、下リンク部材42がY軸時計回り(図2中矢印C方向)に円弧移動し、この下リンク部材42の円弧移動により下方に配設されているクランプ機構6の操作レバー41が自由端を下降する方向に回動する。そして、1つの操作レバー41の操作により残り3つの操作レバー41も充分に回動して第2状態に変換すると、図3に示すように、すべての操作レバー41が可動側板5に対して起立した状態となり、前記したように、操作レバー本体34のカム面33と挟圧部材31の頭部29との間で長孔14の縁を強く挟みつけて固定する状態(ロック状態)から強く挟みつけない解放状態(アンロック状態、ロック解除状態)に変換する。したがって、この第2状態に変換すると可動側板5を自由に移動することができ、収納するプリント基板を固定側板4と可動側板5との間に位置させて両側から挟みつけるなどして基板の幅に応じて可動側板5を移動して位置決めすることができる。
【0026】
前記した操作により可動側板5の位置決めをしたならば、作業者が最も操作し易い操作レバー41、例えば、手の動きが楽な最も近い操作レバー41を1つ選んで、この操作レバー41を回動操作すると、前記連動機構8を介して他の操作レバー41が前記1の操作レバー41の回動に連動して一斉に動いて第2状態から第1状態に変換する。
具体的には、例えば、下方手前に配設されているクランプ機構6の操作レバー41を自由端側を上昇する方向に回動操作すると、この操作レバー41に接続している下リンク部材42が操作レバー41の動きに同調してY軸反時計回り(図3中矢印D方向)に円弧移動し、この下リンク部材42の円弧移動により下クロスジョイント44bが下リンク部材42の円弧移動に伴って上昇しつつ内側(移動側板に近づく方向)に移動し、この下クロスジョイント44bの内側への移動により、下クロスジョイント44bが上下連結リンク部材50の下延出部分52の先端を図3中矢印E方向に回動し、この回動に伴って下クロスジョイント44bが下リンク部材42に沿って奥側に移動する。この様にして、下延出部分52の先端が奥側に移動する方向に上下連結リンク部材50が回動すると、この回動により上延出部分51の先端が内側に移動しつつ奥側に移動し、これにより上クロスジョイント44aが奥側に移動しながら下降し、この上クロスジョイント44aの移動により、上リンク部材43がY軸時計回り(図3中矢印F方向)に円弧移動し、この上リンク部材43の円弧移動により上方に配設されているクランプ機構6の操作レバー41が自由端を下降する矢印F方向に回動する。そして、下方手前の操作レバー41の操作により残り3つの操作レバー41も充分に回動すると、図2に示すように、すべての操作レバー41が可動側板5に対して起立した第2状態から倒れた第1状態に復元し、前記したように、操作レバー本体34のカム面33と挟圧部材31の頭部29との間で長孔14の縁を強く挟みつけて固定する状態(ロック状態)に変換する。したがって、このロック状態に復元すると可動側板5を自由に移動することができず、収納するプリント基板に対応して位置決めした位置に固定される。これにより固定側板4と可動側板5との間隔が基板の幅に適した間隔となり、基板を開口部10からラック内部に円滑に差し込んで収納でき、また、円滑に取り出すことができる。
【0027】
なお、前記した実施形態においては、いずれか1つの操作レバー41を操作することにより、当該操作レバー41の動きを連動機構8を介して他の操作レバー41に伝達する構成を採ったが、本発明は、連動機構8の一部を操作することにより、すべての操作レバー41が連動機構8を介して一斉に動くように構成してもよい。
【0028】
例えば、図8及び図9に示す板材収納ラック1は、上下連結リンク部材50の回動軸49の上下中央当りを上下の延出部分51,52と同じ方向に矩形波状に屈曲し、この屈曲部分を操作部70としたものであり、他の構成は前記した実施形態と同じである。
したがって、この実施形態においては、上下連結リンク部材50の操作部を操作しても、あるいは任意の操作レバー41を操作しても、同じく第1状態を第2状態に変換でき、その逆に第2状態を第1状態に復帰させる操作も行うことができる。
また、上下連結リンク部材50は、金属線材を屈曲成形したものに限定されるものではなく、回動軸49に相当する部分で回転可能な状態で支持されて、回転したときに延出部分の回動軸に相当する部分で上リンク部材や下リンク部材に接続する縦方向の軸を備えていれば、例えば、板状の部材で構成してもよい。この様にして上下連結リンク部材50を板状の部材で構成すると、自由端側のどこに手を掛けて回動しても良いこととなり、前記した操作部70を拡大した場合と同様に操作が一層容易である。
【0029】
また、前記した各実施形態においては、別成形した操作レバー本体34にホルダ40を装着することにより操作レバー41としたが、本発明における操作レバー41は、成形時から一体であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 板材収納ラック、2 天板、3 底板、4 固定側板、5 可動側板、6 クランプ機構、8 連動機構、10 開口部、11 下ガイドレール、12 ラックギア、13 床板、14 長孔、15 上ガイドレール、16 支柱、17 支持溝、20 縦材、21 軸、22 ピニオンギア、23 軸、24 ピニオンギア、25 取付孔、26 固定片、27 スライダ、28 テンションロッド、29 頭部、30 軸孔付軸着片、31 挟圧部材、32 軸孔、33 カム面、34 操作レバー本体、40 ホルダ、41 操作レバー、42 下リンク部材、43 上リンク部材、44a 上クロスジョイント、44b 下クロスジョイント、45 上梁材、46 上軸受部、47 下梁材、48 下軸受部、49 回動軸、50 上下連結リンク部材、51 上延出部分、52 下延出部分、53 空部、54a リンク取付部、54b 固定ネジ孔、55 リンク部材用貫通空部、56 回動軸用貫通空部、60 状態維持用カム、61 カム面、62 カムフォロア、63 空部、65 腕部、66 溝、70 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定間隔をあけて設けられた天板と底板との間に2枚の直立する矩形の側板を向かい合わせて設け、一方の側板を固定側板とし、他方の側板を固定側板と平行な状態で移動できる可動側板とし、両側板の間に収納する板材の大きさに応じて移動した可動側板を固定するクランプ機構と、可動側板の四隅にそれぞれ設けられたクランプ機構の操作レバーを連動させる連動機構と、を備えた板材収納ラックであって、
前記した連動機構は、
可動側板の下側の両方の隅部に配設された操作レバーを連結して両操作レバーの動きを連動させる棒状の下リンク部材と、
可動側板の上側の両方の隅部に配設された操作レバーを連結して両操作レバーの動きを連動させる棒状の上リンク部材と、
上リンク部材の長手方向の途中に設けられ、上リンク部材の長手方向に沿ってスライド可能な上クロスジョイントと、
下リンク部材の長手方向の途中に設けられ、下リンク部材の長手方向に沿ってスライド可能な下クロスジョイントと、
可動側板の上部と下部に設けられた軸受部により縦方向の回動軸が回動可能に支持され、回動軸に対して直交する水平方向にそれぞれ延出された上延出部分と下延出部分とを有し、上延出部分の先端に縦方向に形成した回動軸が前記上クロスジョイントの回動軸受部に、下延出部分の先端に縦方向に形成した回動軸が前記下クロスジョイントの回動軸受部にそれぞれ同じ位相で回動可能な状態で止着された上下連結リンク部材と、
を備え、
前記したいずれか1の操作レバーを回動操作すると、前記連動機構を介して他の操作レバーが前記1の操作レバーの回動に連動して動くようにしたことを特徴とする板材収納ラック。
【請求項2】
前記クロスジョイントは、リンク部材が貫通するリンク部材用貫通空部と、前記上下連結リンク部材の回動軸が貫通する回動軸用貫通空部とを有し、該リンク部材用貫通空部の軸方向に対して、回動軸用貫通空部の軸方向が直交する状態でプラスチック材により一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載の板材収納ラック。
【請求項3】
可動側板を固定するクランプ機構を固定状態か前記固定を解除した状態のいずれかの状態に維持する状態維持機構を備え、
該状態維持機構は、前記上下連結リンク部材の回動軸に設けられた状態維持用カムと、該状態維持用カムのカム面に当接するカムフォロアとからなり、
前記状態維持用カムは、回転中心部分に上下連結リンク部材の回動軸を通す軸孔を開設し、外周に形成したカム面の内側にカム面形状に沿った空部を形成してなり、
該カム面に当接するカムフォロアは、可動側板側に突設された突起から構成され、
前記カム面の弾性によりカムフォロアがカム面に圧接して状態を維持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の板材収納ラック。
【請求項4】
一定間隔をあけて設けられた天板と底板との間に2枚の直立する矩形の側板を向かい合わせて設け、一方の側板を固定側板とし、他方の側板を固定側板と平行な状態で移動できる可動側板とし、両側板の間に収納する板材の大きさに応じて移動した可動側板を固定するクランプ機構と、を備えた板材収納ラックに取り付けられて使用され、可動側板の四隅にそれぞれ設けられたクランプ機構の操作レバーを連動させる板材収納ラック用の連動機構であって、
前記した連動機構は、
可動側板の下側の両方の隅部に配設された操作レバーを接続して両操作レバーの動きを連動させる棒状の下リンク部材と、
可動側板の上側の両方の隅部に配設された操作レバーを接続して両操作レバーの動きを連動させる棒状の上リンク部材と、
上リンク部材の長手方向の途中に設けられ、上リンク部材の長手方向に沿ってスライド可能な上クロスジョイントと、
下リンク部材の長手方向の途中に設けられ、下リンク部材の長手方向に沿ってスライド可能な下クロスジョイントと、
可動側板の上部と下部に設けられた軸受部により縦方向の回動軸が回動可能に支持され、回動軸に対して直交する水平方向にそれぞれ延出された上延出部分と下延出部分とを有し、上延出部分の先端に縦方向に形成した回動軸が前記上クロスジョイントの回動軸受部に、下延出部分の先端に縦方向に形成した回動軸が前記下クロスジョイントの回動軸受部にそれぞれ同じ位相で回動可能な状態で止着された上下連結リンク部材と、
を含み、
前記したいずれか1の操作レバーを回動操作すると、他の操作レバーが前記1の操作レバーの回動に連動して動くことを特徴とする板材収納ラック用の連動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−171300(P2010−171300A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13949(P2009−13949)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000226507)株式会社ニックス (96)
【Fターム(参考)】