板材成形方法、板材成形装置、板材成形装置の成形条件決定方法および板材成形装置の成形条件決定装置
【課題】板材を局所的に加熱して成形する際に、板材を精度良く加工することが可能な板材成形方法、板材成形装置、板材成形装置の成形条件決定方法および板材成形装置の成形条件決定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る板材成形方法は、チタン製またはチタン合金製の板材10に引張り力を負荷した状態で、引張り力が負荷された板材10の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型2に押し当てる押圧ステップと、板材10のうち少なくとも成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱ステップとを含む。
【解決手段】本発明に係る板材成形方法は、チタン製またはチタン合金製の板材10に引張り力を負荷した状態で、引張り力が負荷された板材10の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型2に押し当てる押圧ステップと、板材10のうち少なくとも成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱ステップとを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を局所的に加熱して成形する板材成形方法、板材成形装置、板材成形装置の成形条件決定方法および板材成形装置の成形条件決定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チタン合金を冷間加工すると、スプリングバックや割れが発生しやすい。また、冷間加工では、成形後に生じる残留応力除去が必須である。このため、チタン合金の板材加工では、残留応力除去が不要で、成形性のよい熱間加工が行われている。しかし、熱間加工は、加熱や加工のための専用設備が必要であり、高温に対して強度を有する金型等の設備や治具にかかるコストが高価である。また、熱間加工では、加熱時間や保持時間が必要であり、加工時間が長いという問題がある。
【0003】
一方、局所加熱成形技術は、板材全体を加熱成形する従来の熱間加工とは異なり、局所的に板材を加熱して目標形状となるように成形する。局所的な加熱には、例えば、移動可能であって、点状又は比較的小さな円形状に板材を加熱できる加熱源を使用する。この技術は、従来の熱間加工に比べて、設備費・治具費が安価であり、短時間での加工が可能である。
【0004】
特許文献1では、局所加熱成形装置に関する基本的な仕様が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6601426号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チタン合金は、熱伝導性が低く、加熱源によって照射された加熱領域と、加熱領域以外の非加熱領域との境界で温度勾配が大きくなる。そのため、加熱領域の熱膨張は、加熱領域に比べて低温である周囲の非加熱領域に拘束されて、図1に示すような面外変形が生じる。すなわち、板材10は、加熱源4によって照射された部分が熱膨張して、金型2に沿った形状に成形されない。
【0007】
また、高温の加熱領域と低温の非加熱領域の境界で歪みの不整合が生じ、成形後その境界に残留応力が発生する。さらに、加熱源が移動している間に、材料の応力分布が変化し、熱源の移動方向に不均一な歪みが生じる。
【0008】
一方、特許文献1等の局所加熱成形装置を用いた局所加熱技術は、具体的な成形条件が記載されておらず、上記のような形状精度低下要因が存在することや、成形条件を整えなければ精度の高い成形を行うことができないことは指摘されていない。したがって、従来技術による局所加熱成形装置による成形方法では、精度良く板材を成形することは困難であった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、板材を局所的に加熱して成形する際に、板材を精度良く加工することが可能な板材成形方法、板材成形装置、板材成形装置の成形条件決定方法および板材成形装置の成形条件決定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の板材成形方法、板材成形装置、板材成形装置の成形条件決定方法および板材成形装置の成形条件決定装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る板材成形方法は、チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷した状態で、引張り力が負荷された板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧ステップと、板材のうち少なくとも成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱ステップとを含む。
【0011】
この発明によれば、引張り力がチタン製またはチタン合金製の板材に負荷され、引張り力が負荷された板材の成形部分に、成形目標の曲率を有する金型が押し当てられる。そして、板材のうち少なくとも成形部分が、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱される。なお、加熱に伴い板材が変形して、金型から板材が浮くこともあるが、板材が金型から浮くと、板材が面外変形を起こしやすくなる。そのため、板材が金型から浮く場合には、金型の位置または板材の引張り方向等を調整して、金型と板材が密着した状態を維持しながら板材の加熱を行うことが望ましい。
【0012】
チタンまたはチタン合金は、アルミニウムまたはアルミニウム合金に比べて熱伝導性が低く、加熱部によって加熱された加熱領域と、加熱されない非加熱領域の境界で温度勾配が大きくなる。よって、加熱領域の熱膨張は非加熱領域によって拘束され、加熱領域は熱膨張によって面外に変形する。本発明では、板材は、一ライン上ではそれぞれ連続的または断続的に加熱され、互いに平行な複数のライン上で加熱される。そのため、板材は、金型が押し当てられた成形部分が全面的または一ラインのみで加熱されるのではなく、加熱される部分が少なくとも2ラインであり、かつ加熱領域が制御されているため、全面的に加熱される場合や一ラインのみで加熱される場合に比べて、板材を成形目標の曲率に成形し易い。
【0013】
また、板材が一ライン上で断続的に加熱される場合、一ライン上で連続的に加熱される場合に比べて、伸び量を軽減したり、浮き上がりを抑制することができるため、成形精度を向上させることができる。
【0014】
なお、板材の加熱は、加熱部が板材に対して相対移動可能であり、加熱部が一方向に連続的または断続的に板材を加熱し、その後、隣接するライン上に移動するようにしてもよい。また、板材表面に黒体塗料を塗布し加熱部を板材に対して均一に加熱するようにしてもよい。黒体塗料を塗布した部分は、金属光沢部分に比べて吸収能が高く、加熱されやすい。また、黒体塗料を塗布した部分は、加熱に伴う酸化による輻射率の変化も発生しないため、安定した温度に加熱できる。さらに、加熱部を加熱パターンが形成された形状を有するように構成して、一度の加熱で加熱パターン状に板材を加熱するようにしてもよい。
【0015】
上記発明において、板材のうち少なくとも成形部分を500℃以上で加熱することが望ましい。
【0016】
チタンまたはチタン合金は、通常500℃以上になることによって、強度が低下する、すなわち、降伏応力が下がる。したがって、この発明によれば、常温の場合に比べて板材に対して塑性変形を与えやすくなり、かつ板材の降伏応力の低下によって弾性変形量が減るため、成形後のスプリングバック量も小さくなる。その結果、板材を金型に沿った形状に加工しやすい。
【0017】
上記発明において、加熱ステップにおける隣接するライン間のピッチは、板材の成形目標の曲率に応じて決定された長さでもよい。
【0018】
この発明によれば、ライン間のピッチが、板材の成形目標の曲率に応じて決定されるため、板材において加熱領域と非加熱領域の間隔が調整される。その結果、板材における熱膨張が調整されるため、精度良く板材を成形目標の曲率に成形できる。
【0019】
上記発明において、加熱ステップにおける加熱部の加熱温度は、板材の成形目標の曲率に応じて決定されてもよい。
【0020】
この発明によれば、加熱温度が、板材の成形目標の曲率に応じて決定されるため、板材において熱膨張によって生ずる膨張長さが調整される。その結果、精度良く板材を成形目標の曲率に成形できる。なお、加熱温度は、加熱部の設定温度で調整してもよいし、同じ走査ライン上を複数回加熱することで調整してもよい。
【0021】
上記発明において、負荷ステップにおいて負荷する引張り力は、板材の成形目標の曲率に応じて決定されてもよい。
【0022】
この発明によれば、引張り力が、板材の成形目標の曲率に応じて適正に設定されるため、板材において生ずるひずみが調整される。その結果、精度良く板材を成形目標の曲率に成形できる。
【0023】
上記発明において、加熱ステップでは、加熱源として移動可能な光源が用いられ、加熱源は板材の成形目標の曲率に応じて加熱領域が制御されてもよい。
【0024】
この発明によれば、板材は移動可能な光源によって加熱される。このとき、加熱源による加熱領域は、板材の成形目標の曲率によって制御される。光源は、例えばハロゲンランプ等の光エネルギーを利用したランプ、または各種レーザー等である。また、入熱量や温度を制御できれば、一般に溶接で使用されるアークやガスの燃焼に伴う火炎や、高周波等による加熱でもよい。なお、この場合、温度の制御ができ、熱源が移動できることが望ましい。
【0025】
上記発明において、加熱に伴い板材と金型の間に隙間が生じた場合、板材と金型の間に隙間が生じないようにした状態で、板材を加熱し成形してもよい。
【0026】
この発明によれば、板材が金型から浮くことによって、板材と金型の間に隙間が生じる場合、金型の位置または板材の引張り方向等を調整して、金型と板材が密着した状態を維持しながら板材の加熱を行う。板材が金型から浮くと板材が面外変形を起こしやすくなるが、これを防止できる。
【0027】
上記発明において、板材の加熱領域と非加熱領域で輻射率を変化させて、加熱時の入熱や温度の制御を行ってもよい。
【0028】
この発明によれば、板材がチタンまたはチタン合金であるため、通常、板材の表面において光の吸収率が悪い。一方、加熱ステップの前に、所要部分にて例えば黒体塗料を塗布したり酸化処理を施したりして、板材の表面の加熱領域と非加熱領域で輻射率を変化させることによって、加熱時の入熱や温度制御を行うことができる。
【0029】
上記発明において、板材にて加熱されている部分の温度は、放射温度計によって測定されてもよい。
【0030】
この発明によれば、放射温度計が板材にて加熱されている部分の温度を測定し、測定された温度に基づいて加熱源の出力が制御される。加熱部の温度を制御することによって、プロセスの再現性を高めることと、過熱による材料の劣化を防止することができる。加熱源が移動可能である場合、放射温度計は加熱源と共に移動できるようにしてもよい。
【0031】
上記発明において、加熱ステップにて加熱部が板材を移動方向に断続的に加熱する場合、一走査ライン上での加熱距離または非加熱距離は、板材の成形目標の曲率に応じて決定された長さでもよい。
【0032】
この発明によれば、板材が移動方向に断続的に加熱されるとき、一走査ライン上での加熱距離または非加熱距離が、板材の成形目標の曲率に応じて決定されるため、板材において伸び量を軽減したり、浮き上がりを抑制したりする領域が調整される。その結果、精度良く板材を成形目標の曲率に成形できる。
【0033】
上記発明において、加熱ステップにて加熱部が板材のうち成形部分以外も加熱してもよい。
【0034】
この発明によれば、板材のうち成形部分だけでなく成形部分以外も加熱され、非加熱領域は、成形部分から外れた領域になるため、成形部分に残留応力を残すことなく成形することが可能になり、品質が高い成形を行うことができる。
【0035】
上記発明において、加熱ステップによる成形の後、板材のうち加熱部によって加熱されていない非加熱領域を除去してもよい。
【0036】
この発明によれば、板材のうち加熱部によって加熱されていない非加熱領域が、加熱ステップによる成形の後、成形された板材から除去される。これにより、加熱領域と非加熱領域の境界に生じる残留応力を低減できる。特に、境界よりも加熱領域側において、材料を切断することによって、残留応力の除去と成形精度を改善することが可能である。
【0037】
また、本発明に係る板材成形装置は、チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷する負荷部と、引張り力が負荷された板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧部と、板材のうち少なくとも成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱部とを備える。
【0038】
この発明によれば、負荷部によって、引張り力がチタン製またはチタン合金製の板材に負荷され、押圧部によって、引張り力が負荷された板材の成形部分に、成形目標の曲率を有する金型が押し当てられる。そして、板材のうち少なくとも成形部分が、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱される。
【0039】
板材は、一ライン上ではそれぞれ連続的または断続的に加熱され、互いに平行な複数のライン上で加熱される。そのため、板材は、金型が押し当てられた成形部分が全面的または一ラインのみで加熱されるのではなく、加熱される部分が少なくとも2ラインであり、かつ加熱領域が制御されているため、全面的に加熱される場合や一ラインのみで加熱される場合に比べて、板材を成形目標の曲率に成形し易い。また、板材が一ライン上で断続的に加熱される場合、一ライン上で連続的に加熱される場合に比べて、伸び量を軽減したり、浮き上がりを抑制したりすることができるため、成形精度を向上させることができる。
【0040】
上記発明において、加熱部は、加熱源として移動可能な熱源が用いられ、加熱源は板材の成形目標の曲率に応じて加熱領域が制御されてもよい。
【0041】
この発明によれば、板材は移動可能な光源によって加熱される。このとき、加熱源による加熱領域は、板材の成形目標の曲率によって制御される。
【0042】
上記発明において、板材にて加熱されている部分の温度は、放射温度計によって測定されてもよい。
【0043】
この発明によれば、放射温度計が板材にて加熱されている部分の温度を測定し、測定された温度に基づいて加熱源の出力が制御される。加熱源が移動可能である場合、放射温度計は加熱源と共に移動できるようにしてもよい。
【0044】
また、本発明に係る板材成形装置の成形条件決定方法は、チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷する負荷部と、引張り力が負荷された板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧部と、板材のうち少なくとも成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱部とを備える板材成形装置の成形条件決定方法であって、隣接するライン間のピッチ、板材を加熱する加熱温度、および板材に負荷する引張り力を設定する設定ステップと、設定されたピッチ、加熱温度および引張り力によって板材を加熱したときに得られる板材の曲率を、板材の加熱による材料の強度変化と熱膨張に基づいて算出する算出ステップと、成形目標の曲率と、算出された板材の曲率とを比較して、実際の板材成形におけるピッチ、加熱温度および引張り力を決定する決定ステップとを備える。
【0045】
この発明によれば、まず、隣接するライン間のピッチ、板材を加熱する加熱温度、および板材に負荷する引張り力が設定され、次に、設定されたピッチ、加熱温度、および引張り力によって板材が加熱されたときに得られる板材の曲率が、板材の加熱による材料の強度変化(例えば材料の軟化)と熱膨張に基づいて算出される。そして、算出された板材の曲率は、予め決めておいた成形目標の曲率と比較されて、比較結果に基づいて実際に成形するときのピッチ、加熱温度、および引張り力が決定される。そのため、上述した板材成形装置における適切な成形条件を予め推測、決定することができ、精度良く板材を成形することができる。
【0046】
また、本発明に係る板材成形装置の成形条件決定装置は、チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷する負荷部と、引張り力が負荷された板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧部と、板材のうち少なくとも成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱部とを備える板材成形装置の成形条件決定装置であって、隣接するライン間のピッチ、板材を加熱する加熱温度、および板材に負荷する引張り力を設定する設定部と、設定されたピッチ、加熱温度および引張り力によって板材を加熱したときに得られる板材の曲率を、板材の加熱による材料の強度変化と熱膨張に基づいて算出する算出部と、成形目標の曲率と、算出された板材の曲率とを比較して、実際の板材成形におけるピッチ、加熱温度および引張り力を決定する決定部とを備える。
【0047】
この発明によれば、まず、設定部によって、隣接するライン間のピッチ、板材を加熱する加熱温度、および板材に負荷する引張り力が設定され、次に、算出部によって、設定されたピッチ、加熱温度、および引張り力によって板材が加熱されたときに得られる板材の曲率が、板材の加熱による材料の強度変化(例えば材料の軟化)と熱膨張に基づいて算出される。そして、決定部によって、算出された板材の曲率は、予め決めておいた成形目標の曲率と比較されて、比較結果に基づいて実際に成形するときのピッチ、加熱温度、および引張り力が決定される。そのため、上述した板材成形装置における適切な成形条件を予め推測、決定することができ、精度良く板材を成形することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、板材を局所的に加熱して成形する際に、板材を精度良く加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】局所加熱によって生じる面外変形を示すため金型と板材を示す側面図である。
【図2】局所加熱における加熱領域と部品部分を示すため金型と板材を示す上面図である。
【図3】応力と温度の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係る板材成形装置を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る板材成形装置を示す側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る板材成形装置を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る板材成形装置を示す側面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る板材成形装置を示す側面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る板材成形装置による板材成形方法を示すフローチャートである。
【図10】成形された板材の一例を示す斜視図である。
【図11】加熱源による照射領域と加熱ピッチを示す説明図である。
【図12】成形後の板材の曲率半径と照射率の関係を示すグラフである。
【図13】成形後の板材の曲率半径と加熱温度の関係を示すグラフである。
【図14】成形後の板材の曲率半径と引張り応力の関係を示すグラフである。
【図15】局所加熱における加熱ピッチを示すため金型と板材を示す上面図である。
【図16】(A)は金型の断面を示す部分断面図であり、(B)は成形後の板材の曲率半径と金型中心からの距離の関係を示すグラフである。
【図17】成形後の板材の頂点からの高さと金型中心からの距離の関係を示すグラフである。
【図18】成形後の板材の頂点からの高さと金型中心からの距離の関係を示すグラフである。
【図19】局所加熱における加熱ピッチを示すため金型と板材を示す上面図である。
【図20】成形された板材の一例を示す斜視図である。
【図21】局所加熱における照射部を示すため金型と板材を示す上面図である。
【図22】局所加熱における照射部を示すため金型と板材を示す上面図である。
【図23】局所加熱における照射部を示すため金型と板材を示す上面図である。
【図24】成形後の板材の金型からの距離と板材端部からの幅方向の距離の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明の一実施形態に係る板材成形装置による板材成形は、例えばチタン製またはチタン合金製の板材を成形対象とする。板材成形によって、例えば航空機の胴体外板、翼前縁、ヘリコプターブレードの金属カバー等が得られる。チタン合金は、チタンを主成分とする合金であり、添加元素としてアルミニウム、鉄、スズ、モリブデン、バナジウムなどを含むものである。
【0051】
本実施形態に係る板材成形装置1は、図6に示すように、金型2と、金型2を移動させるための油圧シリンダー3と、加熱源4と、クランプ5と、ヒンジ6と、クランプ5を移動させるための油圧シリンダー7等を有する。金型2は、二つのクランプ5の間に配置される。クランプ5,ヒンジ6および油圧シリンダー7は、それぞれ二つ設けられる。なお、本実施形態では、油圧シリンダーを用いるとしているが、長さや荷重を調整できれば、電気駆動式のシリンダーや空気圧を用いたシリンダーでもよい。
【0052】
金型2は、板材10を目標とする形状にするための型であり、油圧シリンダー3に固定されている。油圧シリンダー3は、金型2を移動させることができ、被成形材の板材10へ金型2を近づけたり、板材10から金型2を離隔したりすることができる。また、油圧シリンダー3は、押圧部の一例であり、金型2を板材10の成形部分に押し当てる。
【0053】
加熱源4は、加熱部の一例であり、例えば集光方式のハロゲンランプ等の光エネルギーを利用したランプ、または各種レーザー等の光源である。加熱源4は、移動可能であって、点状又は比較的小さな円形状に板材10を加熱できる。本実施形態では、加熱源4は、板材10のうち少なくとも成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する。なお、板材にて加熱されている部分の温度は、放射温度計(図示せず。)によって測定されてもよい。このとき、放射温度計が板材10にて加熱されている部分の温度を測定し、測定された温度に基づいて加熱源4の出力が制御される。加熱源4が移動可能である場合、放射温度計は加熱源4と共に移動できるようにしてもよい。
【0054】
クランプ5は、板材10を把持したり、板材10の把持を解除したりする。クランプ5は、例えばねじ止めまたは油圧機構によって板材10を固定する。ヒンジ6は、一端がクランプ5と接続され、他端が油圧シリンダー7と接続され、油圧シリンダー7に対してクランプ5を回動させ、クランプ5の方向を変更できる。なお、図には示していないが、ヒンジ6は、油圧シリンダー7に対する角度を調整する機能を有しているほうがよい。
【0055】
油圧シリンダー7は、クランプ5を移動させることができ、クランプ5を金型2側へ近づけたり、金型2から遠ざけたりすることができる。金型2が板材10を押圧しているとき、クランプ5を金型2から遠ざかる方向へ移動させるようにすることで、油圧シリンダー7は板材10に引張り力を負荷することができる。
【0056】
次に、図9を参照して、本実施形態の板材成形装置による板材成形方法について説明する。
まず、図4に示すように、金型2を下げた状態で被成形材である板材10をクランプ5によって拘束する(ステップS1)。次に、図5に示すように、金型2を上昇させつつ、クランプ5の位置を調整する(ステップS2)。すなわち、金型2の上昇に伴って、クランプ5が金型2側に寄せられるように油圧シリンダー7が動作する。このとき、ヒンジ6の回動によって板材10が金型2に密着する。
【0057】
そして、油圧シリンダー3が金型2の位置を固定しつつ、油圧シリンダー7が板材10へ引張り力を負荷する(ステップS3)。チタン製やチタン合金製ではなく、アルミニウム製やアルミニウム合金製の軟質な板材では、本実施形態のステップS3までの状態で成形が完了する。しかし、チタンやチタン合金は、降伏応力が高く、常温では成形後にスプリングバックが生じるため、形状を十分に付与できない。本実施形態は、チタン製やチタン合金製の板材を被成形材とすることから、ステップS3の状態を維持したまま、板材10の表面を加熱源4によって加熱する。
【0058】
まず、例えば図6に示すように、加熱源4を加熱位置に配置する(ステップS4)。そして、加熱源4によって板材10の必要な部分を加熱する(ステップS5)。例えば、引張り力が負荷された板材10に対して、板材10に塑性変形が加わる温度域になるまで、加熱源4を用いて板材10を加熱する。塑性変形が加わる温度域とは、常温時の強度と比べて、半分ぐらいの強度になるまで上昇したときの温度域である。図3に示すような特性を有する材料であれば、材料強度が急激に低下し始める500℃以上に板材10を加熱する。これにより、常温の場合に比べて、板材10に対して塑性変形を与えやすくなり、かつ板材10の降伏応力の低下によって弾性変形量が減るため、成形後のスプリングバック量も小さくなる。その結果、板材10を金型2に沿った形状に加工しやすい。
【0059】
そして、板材10が加熱によって所定温度まで上昇したら、板材10の長手方向または長手方向に対して垂直方向に、加熱源4を移動させる。このとき、加熱源4はライン上で連続的または断続的に板材10を加熱する。加熱源4の移動によって、所定の加熱領域を網羅したところで加熱を終了する。なお、加熱に伴う変形によって、板材10が金型2より浮くような事象が生じた場合には、油圧シリンダー3及び油圧シリンダー7を駆動することで引張り力を増加させ、板材10と金型2を密着させる。そして、板材10と金型2に隙間が生じないようにした状態で、板材10を加熱し成形することで、より精度の高い部品を得ることができる。
【0060】
加熱終了後は、加熱によって成形されて成形品となった板材10を拘束している外力を取り除く(ステップS6)。すなわち、油圧シリンダー3,7によって生じている引張り力を解除する。そして、図8に示すように、金型2および成形品を取り外す(ステップS7)。これによって、成形品が得られる。なお、必要に応じて、加熱領域と非加熱領域境界に生じる残留応力を低減するために、境界よりも加熱領域側において、材料を切断することによって、部品部分は、残留応力の除去と成形精度を改善することが可能である。
【0061】
次に、加熱源4による加熱パターンについて説明する。
上述したステップS5において、板材10を加熱して成形する際に、目標とする形状を得るため、金型2の形状だけではなく、加熱源2が材料を照射する部分(加熱領域)の設定、加熱温度の設定、引張り力の設定をする。
【0062】
図10に示す板材10による成形品断面の曲率半径R1や幅方向の曲率半径R2は、加熱範囲、加熱温度、引張り力によって変化する。例えば、加熱範囲は、図15に示すように、幅方向は連続的な直線14とし、幅方向に対して垂直方向は所定の間隔(加熱ピッチ)だけ離隔して断続的に加熱する。加熱ピッチは、図15(A)に示すように狭くしてもよいし、図15(C)に示すように広くしてもよい。
【0063】
板材を全面的に加熱せず、隙間をあけて加熱することで、板材10の幅方向に生じるそりを抑制できる。また、加熱温度を比較的低温に設定し、加熱ピッチも広いほうが、得られる板材10による成形品断面の曲率半径R1が大きくなる。さらに、加熱温度を比較的高温に設定し、加熱ピッチを狭くしたほうが、材料10の幅方向のそりが大きくなる。またさらに、加熱温度を比較的高温に設定し、引張り力を大きくするほど、材料10の幅方向のそりが大きくなる。
【0064】
また、図2に示すように、加熱源4によって照射が行われ高温になる部分12と、照射がまったく行われず低温のままの部分との間の境界が、成形によって得られる部品外(金型2の範囲外)になるように加熱を行う。これによって、高温部分と低温部分の境界で生ずる残留応力を成形部品に残さないことが可能になる。成形後、境界よりも照射部(加熱領域、高温部分)側で切断することによって、部品部分は形状精度の向上と残留応力の軽減を図ることができる。
【0065】
また、熱源移動による1回当りの変形量を抑制し、同じ加熱領域を複数回加熱することによって目的とする形状となるように変形量を付与するようにしてもよい。これによって、熱源移動方向に不均一なひずみが生じることを防止できる。
【0066】
以上のように、適切な加熱領域(加熱ピッチ)、加熱温度、引張り力を設定することによって、板材10を目標とする形状に成形できる。加熱領域(加熱ピッチ)、加熱温度、引張り力の決定は、予備試験、または板材10の加熱による強度変化特性や熱膨張特性を考慮して、成形後の板材10の曲率を推定する数値解析によって行われる。
【0067】
次に加熱パターンの決定方法について説明する。
目標とする形状の曲率半径に応じて、加熱ピッチを変更する場合について説明する。曲率半径と照射率の関係は、例えば図12に示すようなグラフとなる。曲率半径と照射率の関係は、予備試験又は数値解析によって導出することができる。ここで、照射率は、図11に示すような加熱半径(L1)と加熱ピッチ(L)によって定められる。すなわち、加熱半径(L1)は、加熱源によって均一に加熱できる領域の幅(円のときは直径)とし、加熱ピッチ(L)は、照射中心間の距離としたとき、照射率(L1/L)が1であれば、全面加熱となり、照射率(L1/L)が1よりも大きいときは、重複して加熱される部分が生じ、照射率(L1/L)が1よりも小さいときは、加熱されない部分が生じる。
【0068】
図12に示すように、加熱温度を比較的低温に設定しつつ、加熱ピッチを広くして照射率を小さくしたほうが、得られる板材10の幅方向の曲率半径が大きくなる。図12の例において、目標曲率半径が600mmの場合は、加熱温度650℃、照射率0.46にすることで目標とする形状を達成できる。
【0069】
成形後の曲率半径と照射率の関係を数値解析によって導出するためには、設定した温度、引張り力などの成形条件に基づいて、設定した加熱領域における板材10の加熱による強度変化や板材10の熱膨張を算出する。そして、板材10の全領域における形状変化を算出することで、成形によって得られる板材10の曲率半径を導出する。設定条件のうち、照射率を変えることによって、例えば図12に示すような曲率半径と照射率の関係が得られる。
【0070】
次に、目標とする形状の曲率半径に応じて、加熱温度を変更する場合について説明する。曲率半径と加熱温度の関係は、例えば図13に示すようなグラフになる。曲率半径と加熱温度の関係は、予備試験又は数値解析によって導出することができる。図13に示すように、加熱温度を比較的低温に設定したほうが、得られる板材10による成形品断面の曲率半径R1が大きくなる。図13の例において、目標曲率半径が500mmの場合は、加熱温度を680℃にすることで目標とする形状を達成できる。
【0071】
成形後の曲率半径と加熱温度の関係を数値解析によって導出するためには、設定した加熱領域、引張り力などの成形条件に基づいて、設定した加熱温度における板材10の加熱による強度変化や板材10の熱膨張を算出する。そして、板材10の全領域における形状変化を算出することで、成形によって得られる板材10の曲率半径を導出する。設定条件のうち、加熱温度を変えることによって、例えば図13に示すような曲率半径と加熱温度の関係が得られる。
【0072】
また、目標とする形状の曲率半径R1に応じて、引張り荷重を変更する場合について説明する。曲率半径R1と引張り応力の関係は、例えば図14に示すようなグラフになる。曲率半径R1と引張り応力の関係は、予備試験又は数値解析により導出することができる。図14に示すように、引張り応力を大きくしたほうが、得られる板材10の幅方向の曲率半径R1が大きくなる。図14の例において、目標曲率半径が500mmの場合は、引張り応力を100MPaにすることで目標とする形状を達成できる。
【0073】
成形後の曲率半径と引張り応力の関係を数値解析によって導出するためには、設定した加熱領域、加熱温度などの成形条件に基づいて、設定した引張り応力における板材10の加熱による強度変化や板材10の熱膨張を算出する。そして、板材10の全領域における形状変化を算出することで、成形によって得られる板材10の曲率半径を導出する。設定条件のうち、引張り応力を変えることによって、例えば図14に示すような曲率半径と引張り応力の関係が得られる。
【0074】
また、曲率半径R1が一定でない場合の決定方法について説明する。
例えば、図16に示すような、曲率半径R1が一定ではなく、金型中心からの距離によって曲率半径R1が異なるような金型形状の場合、加熱ピッチを一定にするのではなく、金型中心からの距離に応じて加熱ピッチを変化させる。
【0075】
図17および図18は、加熱条件に応じて成形される形状を示すグラフである。図17の一点鎖線aは、加熱温度650℃、加熱ピッチ70mmとしたときの形状を示し、図17の実線bは、加熱温度650℃、加熱ピッチ35mmとしたときの形状を示す。また、図18の実線cは、加熱温度600℃、加熱ピッチ35mmとしたときの形状を示し、図18の点線dは、加熱温度700℃、加熱ピッチ35mmとしたときの形状を示し、図18の細線eは、加熱温度650℃、加熱ピッチ35mmとしたときの形状を示す。
【0076】
以上から、加熱温度600℃、加熱ピッチ35mmとしたとき(実線c)は、目標とする形状(図18の破線で示す金型形状)と比較して、成形後、頂点部近傍で曲げ不足が生ずることが分かる。そこで、図19に示すように、加熱領域として直線15を追加して、頂点部近傍で加熱ピッチを細かくし、17.5mmとすることで、金型とほぼ同一形状にすることができた。これは、加熱ピッチを細かくして塑性変形不足を補うことができたためである。このように、数値解析または実験結果に基づいて、曲率半径に応じて加熱ピッチや加熱温度などを変化させることによって、成形条件を適正化した結果、目標とする成形形状が得られることが分かる。
【0077】
次に、板材10の幅方向の曲率半径R2を考慮する必要がある場合について説明する。加熱条件によっては、板材10の幅方向にそりが生じる場合がある。そこで、そりを生じさせず、図20に示すような形状に成形する場合について説明する。すなわち、図22に示すように、板材10を直線状に加熱した場合、図24の破線aで示すように成形される板材10が金型に比べてそりを生じさせる。一方、図23に示すように、板材10を断続的に加熱した場合、図24の実線bで示すように成形される板材10のそりを低減できる。このように、適切な間隔を設定することで、板材10の幅方向にそりや凹凸のない形状に成形することが可能となる。
【0078】
そして、図23のように断続的に板材10を加熱しつつ、加熱ピッチを設けて板材10を加熱することによって、図21に示すように千鳥状に加熱領域16が配置されるようにしてもよい。このような加熱パターンで加熱することによって、成形精度を向上させることができる。加熱領域の間隔は、板材の幅や剛性などによって変化させて、加工精度を調整する。
【0079】
次に、加熱源による板材のその他の加熱方法について説明する。
上述の説明では、ハロゲンランプやレーザーなどの光源を用いた加熱源によって、点状(または円形状)に板材10を加熱しつつ、加熱源を移動させる場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0080】
例えば、加熱に必要な部分を一度に照射できるように、連続的または断続的に複数の加熱源を配置してもよい。図7は、複数の加熱源4によって板材10を加熱している状態を示している。これによって、加熱源の移動量を減らし、効率良く加熱に必要な部分を連続的又は断続的に加熱することができ、板材を目標とする形状に成形できる。
【0081】
また、板材10側の輻射率を変化させることで、板材10に入射する熱量を変化させてもよい。例えば、ハロゲンランプを用いて加熱する際、板材の表面に黒体塗料を塗布し、その上をハロゲンランプによって一定出力で加熱することによって、複雑な加熱パターンを実現することもできる。
【0082】
板材10は、チタン製またはチタン合金製の金属部材であり、表面は光沢のある状態で輻射率が低い。輻射率は、例えば常温で0.3以下である。そのため、板材10は、ランプやレーザー等の光の吸収率が悪い。しかし、板材10に黒体塗料を塗ると、塗布部分は輻射率が0.9以上となり、熱の吸収が良い。または、板材10を酸化処理すると、酸化部分は輻射率が約0.7となり、比較的熱の吸収が良い。したがって、板材10の加熱したい部分に、成形のための加熱に先立ち、塗料を塗布したり、酸化処理したりした後、処理部分を一定速度で加熱することで、上述した加熱源4のように板材10を加熱できる。材料10がチタンである場合、加熱によって表面の酸化が起こって輻射率が変化するため、光学的な熱源を用いた場合、安定した加熱が困難であるが、黒体塗料を塗布したり予め酸化処理したりすることによって安定した加熱が可能となる。
【0083】
また、上記説明において、光源は、例えばランプ、または各種レーザー等であるとして説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、入熱量や温度を制御できれば、一般に溶接で使用されるアークやガスの燃焼に伴う火炎や、高周波等によって、板材を加熱し、成形してもよい。なお、これらの方法によって成形する場合、温度の制御ができ、熱源が移動できることが望ましい。
【0084】
成形条件の決定には、予備実験のほか、数値解析による方法があるが、これはパーソナルコンピューターなどの情報処理装置によって実行できる。情報処理装置は、例えば、隣接するライン間のピッチ、板材を加熱する加熱温度、および板材に負荷する引張り力を設定する設定部と、設定されたピッチ、加熱温度および引張り力によって板材を加熱したときに得られる板材の曲率を、板材の加熱による材料の強度変化と熱膨張に基づいて算出する算出部と、成形目標の曲率と、算出された板材の曲率とを比較して、実際の板材成形におけるピッチ、加熱温度および引張り力を決定する決定部とを備える。
【0085】
数値解析によれば、上述した板材成形装置における適切な成形条件を予め推測、決定することができ、精度良く板材を成形することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 板材成形装置
2 金型
3,7 油圧シリンダー
4 加熱源
5 クランプ
6 ヒンジ
10 板材
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を局所的に加熱して成形する板材成形方法、板材成形装置、板材成形装置の成形条件決定方法および板材成形装置の成形条件決定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チタン合金を冷間加工すると、スプリングバックや割れが発生しやすい。また、冷間加工では、成形後に生じる残留応力除去が必須である。このため、チタン合金の板材加工では、残留応力除去が不要で、成形性のよい熱間加工が行われている。しかし、熱間加工は、加熱や加工のための専用設備が必要であり、高温に対して強度を有する金型等の設備や治具にかかるコストが高価である。また、熱間加工では、加熱時間や保持時間が必要であり、加工時間が長いという問題がある。
【0003】
一方、局所加熱成形技術は、板材全体を加熱成形する従来の熱間加工とは異なり、局所的に板材を加熱して目標形状となるように成形する。局所的な加熱には、例えば、移動可能であって、点状又は比較的小さな円形状に板材を加熱できる加熱源を使用する。この技術は、従来の熱間加工に比べて、設備費・治具費が安価であり、短時間での加工が可能である。
【0004】
特許文献1では、局所加熱成形装置に関する基本的な仕様が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6601426号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チタン合金は、熱伝導性が低く、加熱源によって照射された加熱領域と、加熱領域以外の非加熱領域との境界で温度勾配が大きくなる。そのため、加熱領域の熱膨張は、加熱領域に比べて低温である周囲の非加熱領域に拘束されて、図1に示すような面外変形が生じる。すなわち、板材10は、加熱源4によって照射された部分が熱膨張して、金型2に沿った形状に成形されない。
【0007】
また、高温の加熱領域と低温の非加熱領域の境界で歪みの不整合が生じ、成形後その境界に残留応力が発生する。さらに、加熱源が移動している間に、材料の応力分布が変化し、熱源の移動方向に不均一な歪みが生じる。
【0008】
一方、特許文献1等の局所加熱成形装置を用いた局所加熱技術は、具体的な成形条件が記載されておらず、上記のような形状精度低下要因が存在することや、成形条件を整えなければ精度の高い成形を行うことができないことは指摘されていない。したがって、従来技術による局所加熱成形装置による成形方法では、精度良く板材を成形することは困難であった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、板材を局所的に加熱して成形する際に、板材を精度良く加工することが可能な板材成形方法、板材成形装置、板材成形装置の成形条件決定方法および板材成形装置の成形条件決定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の板材成形方法、板材成形装置、板材成形装置の成形条件決定方法および板材成形装置の成形条件決定装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る板材成形方法は、チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷した状態で、引張り力が負荷された板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧ステップと、板材のうち少なくとも成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱ステップとを含む。
【0011】
この発明によれば、引張り力がチタン製またはチタン合金製の板材に負荷され、引張り力が負荷された板材の成形部分に、成形目標の曲率を有する金型が押し当てられる。そして、板材のうち少なくとも成形部分が、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱される。なお、加熱に伴い板材が変形して、金型から板材が浮くこともあるが、板材が金型から浮くと、板材が面外変形を起こしやすくなる。そのため、板材が金型から浮く場合には、金型の位置または板材の引張り方向等を調整して、金型と板材が密着した状態を維持しながら板材の加熱を行うことが望ましい。
【0012】
チタンまたはチタン合金は、アルミニウムまたはアルミニウム合金に比べて熱伝導性が低く、加熱部によって加熱された加熱領域と、加熱されない非加熱領域の境界で温度勾配が大きくなる。よって、加熱領域の熱膨張は非加熱領域によって拘束され、加熱領域は熱膨張によって面外に変形する。本発明では、板材は、一ライン上ではそれぞれ連続的または断続的に加熱され、互いに平行な複数のライン上で加熱される。そのため、板材は、金型が押し当てられた成形部分が全面的または一ラインのみで加熱されるのではなく、加熱される部分が少なくとも2ラインであり、かつ加熱領域が制御されているため、全面的に加熱される場合や一ラインのみで加熱される場合に比べて、板材を成形目標の曲率に成形し易い。
【0013】
また、板材が一ライン上で断続的に加熱される場合、一ライン上で連続的に加熱される場合に比べて、伸び量を軽減したり、浮き上がりを抑制することができるため、成形精度を向上させることができる。
【0014】
なお、板材の加熱は、加熱部が板材に対して相対移動可能であり、加熱部が一方向に連続的または断続的に板材を加熱し、その後、隣接するライン上に移動するようにしてもよい。また、板材表面に黒体塗料を塗布し加熱部を板材に対して均一に加熱するようにしてもよい。黒体塗料を塗布した部分は、金属光沢部分に比べて吸収能が高く、加熱されやすい。また、黒体塗料を塗布した部分は、加熱に伴う酸化による輻射率の変化も発生しないため、安定した温度に加熱できる。さらに、加熱部を加熱パターンが形成された形状を有するように構成して、一度の加熱で加熱パターン状に板材を加熱するようにしてもよい。
【0015】
上記発明において、板材のうち少なくとも成形部分を500℃以上で加熱することが望ましい。
【0016】
チタンまたはチタン合金は、通常500℃以上になることによって、強度が低下する、すなわち、降伏応力が下がる。したがって、この発明によれば、常温の場合に比べて板材に対して塑性変形を与えやすくなり、かつ板材の降伏応力の低下によって弾性変形量が減るため、成形後のスプリングバック量も小さくなる。その結果、板材を金型に沿った形状に加工しやすい。
【0017】
上記発明において、加熱ステップにおける隣接するライン間のピッチは、板材の成形目標の曲率に応じて決定された長さでもよい。
【0018】
この発明によれば、ライン間のピッチが、板材の成形目標の曲率に応じて決定されるため、板材において加熱領域と非加熱領域の間隔が調整される。その結果、板材における熱膨張が調整されるため、精度良く板材を成形目標の曲率に成形できる。
【0019】
上記発明において、加熱ステップにおける加熱部の加熱温度は、板材の成形目標の曲率に応じて決定されてもよい。
【0020】
この発明によれば、加熱温度が、板材の成形目標の曲率に応じて決定されるため、板材において熱膨張によって生ずる膨張長さが調整される。その結果、精度良く板材を成形目標の曲率に成形できる。なお、加熱温度は、加熱部の設定温度で調整してもよいし、同じ走査ライン上を複数回加熱することで調整してもよい。
【0021】
上記発明において、負荷ステップにおいて負荷する引張り力は、板材の成形目標の曲率に応じて決定されてもよい。
【0022】
この発明によれば、引張り力が、板材の成形目標の曲率に応じて適正に設定されるため、板材において生ずるひずみが調整される。その結果、精度良く板材を成形目標の曲率に成形できる。
【0023】
上記発明において、加熱ステップでは、加熱源として移動可能な光源が用いられ、加熱源は板材の成形目標の曲率に応じて加熱領域が制御されてもよい。
【0024】
この発明によれば、板材は移動可能な光源によって加熱される。このとき、加熱源による加熱領域は、板材の成形目標の曲率によって制御される。光源は、例えばハロゲンランプ等の光エネルギーを利用したランプ、または各種レーザー等である。また、入熱量や温度を制御できれば、一般に溶接で使用されるアークやガスの燃焼に伴う火炎や、高周波等による加熱でもよい。なお、この場合、温度の制御ができ、熱源が移動できることが望ましい。
【0025】
上記発明において、加熱に伴い板材と金型の間に隙間が生じた場合、板材と金型の間に隙間が生じないようにした状態で、板材を加熱し成形してもよい。
【0026】
この発明によれば、板材が金型から浮くことによって、板材と金型の間に隙間が生じる場合、金型の位置または板材の引張り方向等を調整して、金型と板材が密着した状態を維持しながら板材の加熱を行う。板材が金型から浮くと板材が面外変形を起こしやすくなるが、これを防止できる。
【0027】
上記発明において、板材の加熱領域と非加熱領域で輻射率を変化させて、加熱時の入熱や温度の制御を行ってもよい。
【0028】
この発明によれば、板材がチタンまたはチタン合金であるため、通常、板材の表面において光の吸収率が悪い。一方、加熱ステップの前に、所要部分にて例えば黒体塗料を塗布したり酸化処理を施したりして、板材の表面の加熱領域と非加熱領域で輻射率を変化させることによって、加熱時の入熱や温度制御を行うことができる。
【0029】
上記発明において、板材にて加熱されている部分の温度は、放射温度計によって測定されてもよい。
【0030】
この発明によれば、放射温度計が板材にて加熱されている部分の温度を測定し、測定された温度に基づいて加熱源の出力が制御される。加熱部の温度を制御することによって、プロセスの再現性を高めることと、過熱による材料の劣化を防止することができる。加熱源が移動可能である場合、放射温度計は加熱源と共に移動できるようにしてもよい。
【0031】
上記発明において、加熱ステップにて加熱部が板材を移動方向に断続的に加熱する場合、一走査ライン上での加熱距離または非加熱距離は、板材の成形目標の曲率に応じて決定された長さでもよい。
【0032】
この発明によれば、板材が移動方向に断続的に加熱されるとき、一走査ライン上での加熱距離または非加熱距離が、板材の成形目標の曲率に応じて決定されるため、板材において伸び量を軽減したり、浮き上がりを抑制したりする領域が調整される。その結果、精度良く板材を成形目標の曲率に成形できる。
【0033】
上記発明において、加熱ステップにて加熱部が板材のうち成形部分以外も加熱してもよい。
【0034】
この発明によれば、板材のうち成形部分だけでなく成形部分以外も加熱され、非加熱領域は、成形部分から外れた領域になるため、成形部分に残留応力を残すことなく成形することが可能になり、品質が高い成形を行うことができる。
【0035】
上記発明において、加熱ステップによる成形の後、板材のうち加熱部によって加熱されていない非加熱領域を除去してもよい。
【0036】
この発明によれば、板材のうち加熱部によって加熱されていない非加熱領域が、加熱ステップによる成形の後、成形された板材から除去される。これにより、加熱領域と非加熱領域の境界に生じる残留応力を低減できる。特に、境界よりも加熱領域側において、材料を切断することによって、残留応力の除去と成形精度を改善することが可能である。
【0037】
また、本発明に係る板材成形装置は、チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷する負荷部と、引張り力が負荷された板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧部と、板材のうち少なくとも成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱部とを備える。
【0038】
この発明によれば、負荷部によって、引張り力がチタン製またはチタン合金製の板材に負荷され、押圧部によって、引張り力が負荷された板材の成形部分に、成形目標の曲率を有する金型が押し当てられる。そして、板材のうち少なくとも成形部分が、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱される。
【0039】
板材は、一ライン上ではそれぞれ連続的または断続的に加熱され、互いに平行な複数のライン上で加熱される。そのため、板材は、金型が押し当てられた成形部分が全面的または一ラインのみで加熱されるのではなく、加熱される部分が少なくとも2ラインであり、かつ加熱領域が制御されているため、全面的に加熱される場合や一ラインのみで加熱される場合に比べて、板材を成形目標の曲率に成形し易い。また、板材が一ライン上で断続的に加熱される場合、一ライン上で連続的に加熱される場合に比べて、伸び量を軽減したり、浮き上がりを抑制したりすることができるため、成形精度を向上させることができる。
【0040】
上記発明において、加熱部は、加熱源として移動可能な熱源が用いられ、加熱源は板材の成形目標の曲率に応じて加熱領域が制御されてもよい。
【0041】
この発明によれば、板材は移動可能な光源によって加熱される。このとき、加熱源による加熱領域は、板材の成形目標の曲率によって制御される。
【0042】
上記発明において、板材にて加熱されている部分の温度は、放射温度計によって測定されてもよい。
【0043】
この発明によれば、放射温度計が板材にて加熱されている部分の温度を測定し、測定された温度に基づいて加熱源の出力が制御される。加熱源が移動可能である場合、放射温度計は加熱源と共に移動できるようにしてもよい。
【0044】
また、本発明に係る板材成形装置の成形条件決定方法は、チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷する負荷部と、引張り力が負荷された板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧部と、板材のうち少なくとも成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱部とを備える板材成形装置の成形条件決定方法であって、隣接するライン間のピッチ、板材を加熱する加熱温度、および板材に負荷する引張り力を設定する設定ステップと、設定されたピッチ、加熱温度および引張り力によって板材を加熱したときに得られる板材の曲率を、板材の加熱による材料の強度変化と熱膨張に基づいて算出する算出ステップと、成形目標の曲率と、算出された板材の曲率とを比較して、実際の板材成形におけるピッチ、加熱温度および引張り力を決定する決定ステップとを備える。
【0045】
この発明によれば、まず、隣接するライン間のピッチ、板材を加熱する加熱温度、および板材に負荷する引張り力が設定され、次に、設定されたピッチ、加熱温度、および引張り力によって板材が加熱されたときに得られる板材の曲率が、板材の加熱による材料の強度変化(例えば材料の軟化)と熱膨張に基づいて算出される。そして、算出された板材の曲率は、予め決めておいた成形目標の曲率と比較されて、比較結果に基づいて実際に成形するときのピッチ、加熱温度、および引張り力が決定される。そのため、上述した板材成形装置における適切な成形条件を予め推測、決定することができ、精度良く板材を成形することができる。
【0046】
また、本発明に係る板材成形装置の成形条件決定装置は、チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷する負荷部と、引張り力が負荷された板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧部と、板材のうち少なくとも成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱部とを備える板材成形装置の成形条件決定装置であって、隣接するライン間のピッチ、板材を加熱する加熱温度、および板材に負荷する引張り力を設定する設定部と、設定されたピッチ、加熱温度および引張り力によって板材を加熱したときに得られる板材の曲率を、板材の加熱による材料の強度変化と熱膨張に基づいて算出する算出部と、成形目標の曲率と、算出された板材の曲率とを比較して、実際の板材成形におけるピッチ、加熱温度および引張り力を決定する決定部とを備える。
【0047】
この発明によれば、まず、設定部によって、隣接するライン間のピッチ、板材を加熱する加熱温度、および板材に負荷する引張り力が設定され、次に、算出部によって、設定されたピッチ、加熱温度、および引張り力によって板材が加熱されたときに得られる板材の曲率が、板材の加熱による材料の強度変化(例えば材料の軟化)と熱膨張に基づいて算出される。そして、決定部によって、算出された板材の曲率は、予め決めておいた成形目標の曲率と比較されて、比較結果に基づいて実際に成形するときのピッチ、加熱温度、および引張り力が決定される。そのため、上述した板材成形装置における適切な成形条件を予め推測、決定することができ、精度良く板材を成形することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、板材を局所的に加熱して成形する際に、板材を精度良く加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】局所加熱によって生じる面外変形を示すため金型と板材を示す側面図である。
【図2】局所加熱における加熱領域と部品部分を示すため金型と板材を示す上面図である。
【図3】応力と温度の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係る板材成形装置を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る板材成形装置を示す側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る板材成形装置を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る板材成形装置を示す側面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る板材成形装置を示す側面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る板材成形装置による板材成形方法を示すフローチャートである。
【図10】成形された板材の一例を示す斜視図である。
【図11】加熱源による照射領域と加熱ピッチを示す説明図である。
【図12】成形後の板材の曲率半径と照射率の関係を示すグラフである。
【図13】成形後の板材の曲率半径と加熱温度の関係を示すグラフである。
【図14】成形後の板材の曲率半径と引張り応力の関係を示すグラフである。
【図15】局所加熱における加熱ピッチを示すため金型と板材を示す上面図である。
【図16】(A)は金型の断面を示す部分断面図であり、(B)は成形後の板材の曲率半径と金型中心からの距離の関係を示すグラフである。
【図17】成形後の板材の頂点からの高さと金型中心からの距離の関係を示すグラフである。
【図18】成形後の板材の頂点からの高さと金型中心からの距離の関係を示すグラフである。
【図19】局所加熱における加熱ピッチを示すため金型と板材を示す上面図である。
【図20】成形された板材の一例を示す斜視図である。
【図21】局所加熱における照射部を示すため金型と板材を示す上面図である。
【図22】局所加熱における照射部を示すため金型と板材を示す上面図である。
【図23】局所加熱における照射部を示すため金型と板材を示す上面図である。
【図24】成形後の板材の金型からの距離と板材端部からの幅方向の距離の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明の一実施形態に係る板材成形装置による板材成形は、例えばチタン製またはチタン合金製の板材を成形対象とする。板材成形によって、例えば航空機の胴体外板、翼前縁、ヘリコプターブレードの金属カバー等が得られる。チタン合金は、チタンを主成分とする合金であり、添加元素としてアルミニウム、鉄、スズ、モリブデン、バナジウムなどを含むものである。
【0051】
本実施形態に係る板材成形装置1は、図6に示すように、金型2と、金型2を移動させるための油圧シリンダー3と、加熱源4と、クランプ5と、ヒンジ6と、クランプ5を移動させるための油圧シリンダー7等を有する。金型2は、二つのクランプ5の間に配置される。クランプ5,ヒンジ6および油圧シリンダー7は、それぞれ二つ設けられる。なお、本実施形態では、油圧シリンダーを用いるとしているが、長さや荷重を調整できれば、電気駆動式のシリンダーや空気圧を用いたシリンダーでもよい。
【0052】
金型2は、板材10を目標とする形状にするための型であり、油圧シリンダー3に固定されている。油圧シリンダー3は、金型2を移動させることができ、被成形材の板材10へ金型2を近づけたり、板材10から金型2を離隔したりすることができる。また、油圧シリンダー3は、押圧部の一例であり、金型2を板材10の成形部分に押し当てる。
【0053】
加熱源4は、加熱部の一例であり、例えば集光方式のハロゲンランプ等の光エネルギーを利用したランプ、または各種レーザー等の光源である。加熱源4は、移動可能であって、点状又は比較的小さな円形状に板材10を加熱できる。本実施形態では、加熱源4は、板材10のうち少なくとも成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する。なお、板材にて加熱されている部分の温度は、放射温度計(図示せず。)によって測定されてもよい。このとき、放射温度計が板材10にて加熱されている部分の温度を測定し、測定された温度に基づいて加熱源4の出力が制御される。加熱源4が移動可能である場合、放射温度計は加熱源4と共に移動できるようにしてもよい。
【0054】
クランプ5は、板材10を把持したり、板材10の把持を解除したりする。クランプ5は、例えばねじ止めまたは油圧機構によって板材10を固定する。ヒンジ6は、一端がクランプ5と接続され、他端が油圧シリンダー7と接続され、油圧シリンダー7に対してクランプ5を回動させ、クランプ5の方向を変更できる。なお、図には示していないが、ヒンジ6は、油圧シリンダー7に対する角度を調整する機能を有しているほうがよい。
【0055】
油圧シリンダー7は、クランプ5を移動させることができ、クランプ5を金型2側へ近づけたり、金型2から遠ざけたりすることができる。金型2が板材10を押圧しているとき、クランプ5を金型2から遠ざかる方向へ移動させるようにすることで、油圧シリンダー7は板材10に引張り力を負荷することができる。
【0056】
次に、図9を参照して、本実施形態の板材成形装置による板材成形方法について説明する。
まず、図4に示すように、金型2を下げた状態で被成形材である板材10をクランプ5によって拘束する(ステップS1)。次に、図5に示すように、金型2を上昇させつつ、クランプ5の位置を調整する(ステップS2)。すなわち、金型2の上昇に伴って、クランプ5が金型2側に寄せられるように油圧シリンダー7が動作する。このとき、ヒンジ6の回動によって板材10が金型2に密着する。
【0057】
そして、油圧シリンダー3が金型2の位置を固定しつつ、油圧シリンダー7が板材10へ引張り力を負荷する(ステップS3)。チタン製やチタン合金製ではなく、アルミニウム製やアルミニウム合金製の軟質な板材では、本実施形態のステップS3までの状態で成形が完了する。しかし、チタンやチタン合金は、降伏応力が高く、常温では成形後にスプリングバックが生じるため、形状を十分に付与できない。本実施形態は、チタン製やチタン合金製の板材を被成形材とすることから、ステップS3の状態を維持したまま、板材10の表面を加熱源4によって加熱する。
【0058】
まず、例えば図6に示すように、加熱源4を加熱位置に配置する(ステップS4)。そして、加熱源4によって板材10の必要な部分を加熱する(ステップS5)。例えば、引張り力が負荷された板材10に対して、板材10に塑性変形が加わる温度域になるまで、加熱源4を用いて板材10を加熱する。塑性変形が加わる温度域とは、常温時の強度と比べて、半分ぐらいの強度になるまで上昇したときの温度域である。図3に示すような特性を有する材料であれば、材料強度が急激に低下し始める500℃以上に板材10を加熱する。これにより、常温の場合に比べて、板材10に対して塑性変形を与えやすくなり、かつ板材10の降伏応力の低下によって弾性変形量が減るため、成形後のスプリングバック量も小さくなる。その結果、板材10を金型2に沿った形状に加工しやすい。
【0059】
そして、板材10が加熱によって所定温度まで上昇したら、板材10の長手方向または長手方向に対して垂直方向に、加熱源4を移動させる。このとき、加熱源4はライン上で連続的または断続的に板材10を加熱する。加熱源4の移動によって、所定の加熱領域を網羅したところで加熱を終了する。なお、加熱に伴う変形によって、板材10が金型2より浮くような事象が生じた場合には、油圧シリンダー3及び油圧シリンダー7を駆動することで引張り力を増加させ、板材10と金型2を密着させる。そして、板材10と金型2に隙間が生じないようにした状態で、板材10を加熱し成形することで、より精度の高い部品を得ることができる。
【0060】
加熱終了後は、加熱によって成形されて成形品となった板材10を拘束している外力を取り除く(ステップS6)。すなわち、油圧シリンダー3,7によって生じている引張り力を解除する。そして、図8に示すように、金型2および成形品を取り外す(ステップS7)。これによって、成形品が得られる。なお、必要に応じて、加熱領域と非加熱領域境界に生じる残留応力を低減するために、境界よりも加熱領域側において、材料を切断することによって、部品部分は、残留応力の除去と成形精度を改善することが可能である。
【0061】
次に、加熱源4による加熱パターンについて説明する。
上述したステップS5において、板材10を加熱して成形する際に、目標とする形状を得るため、金型2の形状だけではなく、加熱源2が材料を照射する部分(加熱領域)の設定、加熱温度の設定、引張り力の設定をする。
【0062】
図10に示す板材10による成形品断面の曲率半径R1や幅方向の曲率半径R2は、加熱範囲、加熱温度、引張り力によって変化する。例えば、加熱範囲は、図15に示すように、幅方向は連続的な直線14とし、幅方向に対して垂直方向は所定の間隔(加熱ピッチ)だけ離隔して断続的に加熱する。加熱ピッチは、図15(A)に示すように狭くしてもよいし、図15(C)に示すように広くしてもよい。
【0063】
板材を全面的に加熱せず、隙間をあけて加熱することで、板材10の幅方向に生じるそりを抑制できる。また、加熱温度を比較的低温に設定し、加熱ピッチも広いほうが、得られる板材10による成形品断面の曲率半径R1が大きくなる。さらに、加熱温度を比較的高温に設定し、加熱ピッチを狭くしたほうが、材料10の幅方向のそりが大きくなる。またさらに、加熱温度を比較的高温に設定し、引張り力を大きくするほど、材料10の幅方向のそりが大きくなる。
【0064】
また、図2に示すように、加熱源4によって照射が行われ高温になる部分12と、照射がまったく行われず低温のままの部分との間の境界が、成形によって得られる部品外(金型2の範囲外)になるように加熱を行う。これによって、高温部分と低温部分の境界で生ずる残留応力を成形部品に残さないことが可能になる。成形後、境界よりも照射部(加熱領域、高温部分)側で切断することによって、部品部分は形状精度の向上と残留応力の軽減を図ることができる。
【0065】
また、熱源移動による1回当りの変形量を抑制し、同じ加熱領域を複数回加熱することによって目的とする形状となるように変形量を付与するようにしてもよい。これによって、熱源移動方向に不均一なひずみが生じることを防止できる。
【0066】
以上のように、適切な加熱領域(加熱ピッチ)、加熱温度、引張り力を設定することによって、板材10を目標とする形状に成形できる。加熱領域(加熱ピッチ)、加熱温度、引張り力の決定は、予備試験、または板材10の加熱による強度変化特性や熱膨張特性を考慮して、成形後の板材10の曲率を推定する数値解析によって行われる。
【0067】
次に加熱パターンの決定方法について説明する。
目標とする形状の曲率半径に応じて、加熱ピッチを変更する場合について説明する。曲率半径と照射率の関係は、例えば図12に示すようなグラフとなる。曲率半径と照射率の関係は、予備試験又は数値解析によって導出することができる。ここで、照射率は、図11に示すような加熱半径(L1)と加熱ピッチ(L)によって定められる。すなわち、加熱半径(L1)は、加熱源によって均一に加熱できる領域の幅(円のときは直径)とし、加熱ピッチ(L)は、照射中心間の距離としたとき、照射率(L1/L)が1であれば、全面加熱となり、照射率(L1/L)が1よりも大きいときは、重複して加熱される部分が生じ、照射率(L1/L)が1よりも小さいときは、加熱されない部分が生じる。
【0068】
図12に示すように、加熱温度を比較的低温に設定しつつ、加熱ピッチを広くして照射率を小さくしたほうが、得られる板材10の幅方向の曲率半径が大きくなる。図12の例において、目標曲率半径が600mmの場合は、加熱温度650℃、照射率0.46にすることで目標とする形状を達成できる。
【0069】
成形後の曲率半径と照射率の関係を数値解析によって導出するためには、設定した温度、引張り力などの成形条件に基づいて、設定した加熱領域における板材10の加熱による強度変化や板材10の熱膨張を算出する。そして、板材10の全領域における形状変化を算出することで、成形によって得られる板材10の曲率半径を導出する。設定条件のうち、照射率を変えることによって、例えば図12に示すような曲率半径と照射率の関係が得られる。
【0070】
次に、目標とする形状の曲率半径に応じて、加熱温度を変更する場合について説明する。曲率半径と加熱温度の関係は、例えば図13に示すようなグラフになる。曲率半径と加熱温度の関係は、予備試験又は数値解析によって導出することができる。図13に示すように、加熱温度を比較的低温に設定したほうが、得られる板材10による成形品断面の曲率半径R1が大きくなる。図13の例において、目標曲率半径が500mmの場合は、加熱温度を680℃にすることで目標とする形状を達成できる。
【0071】
成形後の曲率半径と加熱温度の関係を数値解析によって導出するためには、設定した加熱領域、引張り力などの成形条件に基づいて、設定した加熱温度における板材10の加熱による強度変化や板材10の熱膨張を算出する。そして、板材10の全領域における形状変化を算出することで、成形によって得られる板材10の曲率半径を導出する。設定条件のうち、加熱温度を変えることによって、例えば図13に示すような曲率半径と加熱温度の関係が得られる。
【0072】
また、目標とする形状の曲率半径R1に応じて、引張り荷重を変更する場合について説明する。曲率半径R1と引張り応力の関係は、例えば図14に示すようなグラフになる。曲率半径R1と引張り応力の関係は、予備試験又は数値解析により導出することができる。図14に示すように、引張り応力を大きくしたほうが、得られる板材10の幅方向の曲率半径R1が大きくなる。図14の例において、目標曲率半径が500mmの場合は、引張り応力を100MPaにすることで目標とする形状を達成できる。
【0073】
成形後の曲率半径と引張り応力の関係を数値解析によって導出するためには、設定した加熱領域、加熱温度などの成形条件に基づいて、設定した引張り応力における板材10の加熱による強度変化や板材10の熱膨張を算出する。そして、板材10の全領域における形状変化を算出することで、成形によって得られる板材10の曲率半径を導出する。設定条件のうち、引張り応力を変えることによって、例えば図14に示すような曲率半径と引張り応力の関係が得られる。
【0074】
また、曲率半径R1が一定でない場合の決定方法について説明する。
例えば、図16に示すような、曲率半径R1が一定ではなく、金型中心からの距離によって曲率半径R1が異なるような金型形状の場合、加熱ピッチを一定にするのではなく、金型中心からの距離に応じて加熱ピッチを変化させる。
【0075】
図17および図18は、加熱条件に応じて成形される形状を示すグラフである。図17の一点鎖線aは、加熱温度650℃、加熱ピッチ70mmとしたときの形状を示し、図17の実線bは、加熱温度650℃、加熱ピッチ35mmとしたときの形状を示す。また、図18の実線cは、加熱温度600℃、加熱ピッチ35mmとしたときの形状を示し、図18の点線dは、加熱温度700℃、加熱ピッチ35mmとしたときの形状を示し、図18の細線eは、加熱温度650℃、加熱ピッチ35mmとしたときの形状を示す。
【0076】
以上から、加熱温度600℃、加熱ピッチ35mmとしたとき(実線c)は、目標とする形状(図18の破線で示す金型形状)と比較して、成形後、頂点部近傍で曲げ不足が生ずることが分かる。そこで、図19に示すように、加熱領域として直線15を追加して、頂点部近傍で加熱ピッチを細かくし、17.5mmとすることで、金型とほぼ同一形状にすることができた。これは、加熱ピッチを細かくして塑性変形不足を補うことができたためである。このように、数値解析または実験結果に基づいて、曲率半径に応じて加熱ピッチや加熱温度などを変化させることによって、成形条件を適正化した結果、目標とする成形形状が得られることが分かる。
【0077】
次に、板材10の幅方向の曲率半径R2を考慮する必要がある場合について説明する。加熱条件によっては、板材10の幅方向にそりが生じる場合がある。そこで、そりを生じさせず、図20に示すような形状に成形する場合について説明する。すなわち、図22に示すように、板材10を直線状に加熱した場合、図24の破線aで示すように成形される板材10が金型に比べてそりを生じさせる。一方、図23に示すように、板材10を断続的に加熱した場合、図24の実線bで示すように成形される板材10のそりを低減できる。このように、適切な間隔を設定することで、板材10の幅方向にそりや凹凸のない形状に成形することが可能となる。
【0078】
そして、図23のように断続的に板材10を加熱しつつ、加熱ピッチを設けて板材10を加熱することによって、図21に示すように千鳥状に加熱領域16が配置されるようにしてもよい。このような加熱パターンで加熱することによって、成形精度を向上させることができる。加熱領域の間隔は、板材の幅や剛性などによって変化させて、加工精度を調整する。
【0079】
次に、加熱源による板材のその他の加熱方法について説明する。
上述の説明では、ハロゲンランプやレーザーなどの光源を用いた加熱源によって、点状(または円形状)に板材10を加熱しつつ、加熱源を移動させる場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0080】
例えば、加熱に必要な部分を一度に照射できるように、連続的または断続的に複数の加熱源を配置してもよい。図7は、複数の加熱源4によって板材10を加熱している状態を示している。これによって、加熱源の移動量を減らし、効率良く加熱に必要な部分を連続的又は断続的に加熱することができ、板材を目標とする形状に成形できる。
【0081】
また、板材10側の輻射率を変化させることで、板材10に入射する熱量を変化させてもよい。例えば、ハロゲンランプを用いて加熱する際、板材の表面に黒体塗料を塗布し、その上をハロゲンランプによって一定出力で加熱することによって、複雑な加熱パターンを実現することもできる。
【0082】
板材10は、チタン製またはチタン合金製の金属部材であり、表面は光沢のある状態で輻射率が低い。輻射率は、例えば常温で0.3以下である。そのため、板材10は、ランプやレーザー等の光の吸収率が悪い。しかし、板材10に黒体塗料を塗ると、塗布部分は輻射率が0.9以上となり、熱の吸収が良い。または、板材10を酸化処理すると、酸化部分は輻射率が約0.7となり、比較的熱の吸収が良い。したがって、板材10の加熱したい部分に、成形のための加熱に先立ち、塗料を塗布したり、酸化処理したりした後、処理部分を一定速度で加熱することで、上述した加熱源4のように板材10を加熱できる。材料10がチタンである場合、加熱によって表面の酸化が起こって輻射率が変化するため、光学的な熱源を用いた場合、安定した加熱が困難であるが、黒体塗料を塗布したり予め酸化処理したりすることによって安定した加熱が可能となる。
【0083】
また、上記説明において、光源は、例えばランプ、または各種レーザー等であるとして説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、入熱量や温度を制御できれば、一般に溶接で使用されるアークやガスの燃焼に伴う火炎や、高周波等によって、板材を加熱し、成形してもよい。なお、これらの方法によって成形する場合、温度の制御ができ、熱源が移動できることが望ましい。
【0084】
成形条件の決定には、予備実験のほか、数値解析による方法があるが、これはパーソナルコンピューターなどの情報処理装置によって実行できる。情報処理装置は、例えば、隣接するライン間のピッチ、板材を加熱する加熱温度、および板材に負荷する引張り力を設定する設定部と、設定されたピッチ、加熱温度および引張り力によって板材を加熱したときに得られる板材の曲率を、板材の加熱による材料の強度変化と熱膨張に基づいて算出する算出部と、成形目標の曲率と、算出された板材の曲率とを比較して、実際の板材成形におけるピッチ、加熱温度および引張り力を決定する決定部とを備える。
【0085】
数値解析によれば、上述した板材成形装置における適切な成形条件を予め推測、決定することができ、精度良く板材を成形することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 板材成形装置
2 金型
3,7 油圧シリンダー
4 加熱源
5 クランプ
6 ヒンジ
10 板材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷した状態で、前記引張り力が負荷された前記板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧ステップと、
前記板材のうち少なくとも前記成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱ステップと、
を含む板材成形方法。
【請求項2】
前記板材のうち少なくとも前記成形部分を500℃以上で加熱する請求項1に記載の板材成形方法。
【請求項3】
前記加熱ステップにおける隣接するライン間のピッチは、前記板材の成形目標の曲率に応じて決定された長さである請求項1または2に記載の板材成形方法。
【請求項4】
前記加熱ステップにおける前記加熱部の加熱温度は、前記板材の成形目標の曲率に応じて決定される請求項1から3のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項5】
前記負荷ステップにおいて負荷する前記引張り力は、前記板材の成形目標の曲率に応じて決定される請求項1から4のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項6】
前記加熱ステップでは、加熱源として移動可能な光源が用いられ、前記加熱源は前記板材の成形目標の曲率に応じて加熱領域が制御される請求項1から5のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項7】
加熱に伴い前記板材と前記金型の間に隙間が生じた場合、前記板材と前記金型の間に隙間が生じないようにした状態で、前記板材を加熱し成形する請求項1から6のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項8】
前記板材の加熱領域と非加熱領域で輻射率を変化させて、加熱時の入熱や温度の制御を行う請求項1から7のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項9】
前記板材にて加熱されている部分の温度は、放射温度計によって測定される請求項1から8のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項10】
前記加熱ステップにて前記加熱部が前記板材を移動方向に断続的に加熱する場合、一走査ライン上での加熱距離または非加熱距離は、前記板材の成形目標の曲率に応じて決定された長さである請求項1から9のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項11】
前記加熱ステップにて前記加熱部が前記板材のうち前記成形部分以外も加熱する請求項1から10のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項12】
前記加熱ステップによる成形の後、前記板材のうち前記加熱部によって加熱されていない非加熱領域を除去する請求項11に記載の板材成形方法。
【請求項13】
チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷する負荷部と、
引張り力が負荷された前記板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧部と、
前記板材のうち少なくとも前記成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱部と、
を備える板材成形装置。
【請求項14】
前記加熱部は、加熱源として移動可能な熱源が用いられ、前記加熱源は前記板材の成形目標の曲率に応じて加熱領域が制御される請求項13に記載の板材成形装置。
【請求項15】
前記板材にて加熱されている部分の温度は、放射温度計によって測定される請求項13または14に記載の板材成形装置。
【請求項16】
チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷する負荷部と、
引張り力が負荷された前記板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧部と、
前記板材のうち少なくとも前記成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱部と、
を備える板材成形装置の成形条件決定方法であって、
隣接するライン間のピッチ、前記板材を加熱する加熱温度、および前記板材に負荷する前記引張り力を設定する設定ステップと、
設定された前記ピッチ、前記加熱温度および前記引張り力によって前記板材を加熱したときに得られる前記板材の曲率を、前記板材の加熱による材料の強度変化と熱膨張に基づいて算出する算出ステップと、
前記成形目標の曲率と、算出された前記板材の曲率とを比較して、実際の板材成形における前記ピッチ、前記加熱温度および前記引張り力を決定する決定ステップと、
を備える板材成形装置の成形条件決定方法。
【請求項17】
チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷する負荷部と、
引張り力が負荷された前記板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧部と、
前記板材のうち少なくとも前記成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱部と、
を備える板材成形装置の成形条件決定装置であって、
隣接するライン間のピッチ、前記板材を加熱する加熱温度、および前記板材に負荷する前記引張り力を設定する設定部と、
設定された前記ピッチ、前記加熱温度および前記引張り力によって前記板材を加熱したときに得られる前記板材の曲率を、前記板材の加熱による材料の強度変化と熱膨張に基づいて算出する算出部と、
前記成形目標の曲率と、算出された前記板材の曲率とを比較して、実際の板材成形における前記ピッチ、前記加熱温度および前記引張り力を決定する決定部と、
を備える板材成形装置の成形条件決定装置。
【請求項1】
チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷した状態で、前記引張り力が負荷された前記板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧ステップと、
前記板材のうち少なくとも前記成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱ステップと、
を含む板材成形方法。
【請求項2】
前記板材のうち少なくとも前記成形部分を500℃以上で加熱する請求項1に記載の板材成形方法。
【請求項3】
前記加熱ステップにおける隣接するライン間のピッチは、前記板材の成形目標の曲率に応じて決定された長さである請求項1または2に記載の板材成形方法。
【請求項4】
前記加熱ステップにおける前記加熱部の加熱温度は、前記板材の成形目標の曲率に応じて決定される請求項1から3のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項5】
前記負荷ステップにおいて負荷する前記引張り力は、前記板材の成形目標の曲率に応じて決定される請求項1から4のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項6】
前記加熱ステップでは、加熱源として移動可能な光源が用いられ、前記加熱源は前記板材の成形目標の曲率に応じて加熱領域が制御される請求項1から5のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項7】
加熱に伴い前記板材と前記金型の間に隙間が生じた場合、前記板材と前記金型の間に隙間が生じないようにした状態で、前記板材を加熱し成形する請求項1から6のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項8】
前記板材の加熱領域と非加熱領域で輻射率を変化させて、加熱時の入熱や温度の制御を行う請求項1から7のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項9】
前記板材にて加熱されている部分の温度は、放射温度計によって測定される請求項1から8のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項10】
前記加熱ステップにて前記加熱部が前記板材を移動方向に断続的に加熱する場合、一走査ライン上での加熱距離または非加熱距離は、前記板材の成形目標の曲率に応じて決定された長さである請求項1から9のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項11】
前記加熱ステップにて前記加熱部が前記板材のうち前記成形部分以外も加熱する請求項1から10のいずれか1項に記載の板材成形方法。
【請求項12】
前記加熱ステップによる成形の後、前記板材のうち前記加熱部によって加熱されていない非加熱領域を除去する請求項11に記載の板材成形方法。
【請求項13】
チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷する負荷部と、
引張り力が負荷された前記板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧部と、
前記板材のうち少なくとも前記成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱部と、
を備える板材成形装置。
【請求項14】
前記加熱部は、加熱源として移動可能な熱源が用いられ、前記加熱源は前記板材の成形目標の曲率に応じて加熱領域が制御される請求項13に記載の板材成形装置。
【請求項15】
前記板材にて加熱されている部分の温度は、放射温度計によって測定される請求項13または14に記載の板材成形装置。
【請求項16】
チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷する負荷部と、
引張り力が負荷された前記板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧部と、
前記板材のうち少なくとも前記成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱部と、
を備える板材成形装置の成形条件決定方法であって、
隣接するライン間のピッチ、前記板材を加熱する加熱温度、および前記板材に負荷する前記引張り力を設定する設定ステップと、
設定された前記ピッチ、前記加熱温度および前記引張り力によって前記板材を加熱したときに得られる前記板材の曲率を、前記板材の加熱による材料の強度変化と熱膨張に基づいて算出する算出ステップと、
前記成形目標の曲率と、算出された前記板材の曲率とを比較して、実際の板材成形における前記ピッチ、前記加熱温度および前記引張り力を決定する決定ステップと、
を備える板材成形装置の成形条件決定方法。
【請求項17】
チタン製またはチタン合金製の板材に引張り力を負荷する負荷部と、
引張り力が負荷された前記板材の成形部分を、成形目標の曲率を有する金型に押し当てる押圧部と、
前記板材のうち少なくとも前記成形部分を、互いに平行な複数のライン上で連続的または断続的に加熱する加熱部と、
を備える板材成形装置の成形条件決定装置であって、
隣接するライン間のピッチ、前記板材を加熱する加熱温度、および前記板材に負荷する前記引張り力を設定する設定部と、
設定された前記ピッチ、前記加熱温度および前記引張り力によって前記板材を加熱したときに得られる前記板材の曲率を、前記板材の加熱による材料の強度変化と熱膨張に基づいて算出する算出部と、
前記成形目標の曲率と、算出された前記板材の曲率とを比較して、実際の板材成形における前記ピッチ、前記加熱温度および前記引張り力を決定する決定部と、
を備える板材成形装置の成形条件決定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図17】
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【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−187600(P2012−187600A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51847(P2011−51847)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、経済産業省、「次世代構造部材創製・加工技術開発(次世代チタン合金構造部材創製・加工技術開発)チタン板金部品の低コスト製造技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、経済産業省、「次世代構造部材創製・加工技術開発(次世代チタン合金構造部材創製・加工技術開発)チタン板金部品の低コスト製造技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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