説明

板材用材料、化粧板及び板材用材料の製造方法

【課題】 樹脂系の素材を使用しつつ、発熱量を充分に抑制して、不燃性を発現する。
【解決手段】 化粧板10は、板材用材料12と、この板材用材料12に積層される表面
層14とを備えている。板材用材料12は、熱可塑性樹脂層20と、少なくとも、アルミニウム層16と、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂及び水酸化アルミニウム等の無機充填材を有する不燃性コア層18とを備えた積層体から成っている。アルミニウム層16は、不燃性コア層18よりも外側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材用材料、化粧板及び板材用材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、様々な箇所で不燃性又は難燃性等の耐熱性を要する材料の設置が要求されるに至っている。このような不燃性又は難燃性等を有する耐熱性材料としては、端的には、金属性材料を挙げることができ、その中でも、特に、アルミニウムは、比較的軽量で加工も容易であることから耐熱性に関しては、材料として適切であるといえる。しかし、アルミニウムをそのまま使用すると、コストが高騰し、その結果、使用量にも限界が生じる問題があった。
【0003】
このため、アルミニウムの代替材として、熱硬化性樹脂系の化粧板において、メラミン樹脂等に水酸化アルミニウム等の無機充填材を添加して、耐熱性を向上させることも提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、熱硬化性樹脂中への水酸化アルミニウムの分散混合や、得られたワニスを塗布乃至は塗工することが必ずしも容易ではなく、その結果、主に、不織布や紙等の基材に樹脂を含浸させたプリプレグを積層して加熱加圧して形成される化粧板として適用するには、高度な生産技術を要していた。このため、現状では、化粧板として装飾的な外観を有しつつ、同時に充分な耐熱性をも併せ持つ板材は殆ど提供されていないのが実情である。
【0004】
加えて、特に、この耐熱性については、2000年に、建築基準法が改正され、その第2条第9号に定める不燃材料に該当するための政令で定める技術的基準に適合するかの判断基準となる不燃材料試験が、表面燃焼試験、基材燃焼試験から、コーンカロリーメーター発熱性試験やガス有害性試験に変更され、不燃性材料として使用するためには、発熱量を抑制することが要求されるに至っている。このため、上記のような樹脂系の耐熱性化粧板では、発熱量の抑制が難しく、改正後の建築基準法第2条第9号に定める「不燃材料」の認定を取得することが困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−56539号公報
【特許文献2】特開平1−56540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、樹脂系の素材を使用しつつ、発熱量をも抑制して充分な耐熱性を備えた化粧板及びそのような化粧板に適した板材用材料及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(7)に記載の本発明により達成される。
(1)表面に表面層が積層されて、板材を構成する板材用材料であって、前記板材用材料は、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、アルミニウム層と、無機充填材として少なくとも水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムと熱硬化性樹脂とを含む不燃性コア層と、アルミニウム層とがこの順に積層体を構成していることを特徴とする板材用材料。
(2)前記熱可塑性樹脂層は、ポリウレタン樹脂を含上記(1)に記載の板材用材料。
(3)前記熱可塑性樹脂層は、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を含む上記(1)に記載の板材用材料。
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載された板材用材料の意匠面側に、表面層として化粧層が加熱加圧して積層されていることを特徴とする化粧板。
(5)上記(4)に記載された化粧板であって、前記板材用材料の前記意匠面側とは反対側の面にさらに芯材層が積層されている化粧板。
(6)表面に表面層が積層されて板材を構成する板材用材料の製造方法であって、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、アルミニウム層と、無機充填材として少なくとも水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムと熱硬化性樹脂とを含む不燃性コア層と、アルミニウム層とがこの順に配置して積層することを特徴とする板材用材料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂系の素材を使用しつつ、発熱量をも抑制して充分な耐熱性を備えた化粧板及びそのような化粧板に適した板材用材料及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態を表す化粧板の概念図である。
【図2】本発明の一実施の形態を表す化粧板の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態の化粧板10を示し、この化粧板10は、図1に示すように、本発明に係る板材用材料12と、この板材用材料12の表面に積層された表面層14とから成っている。
【0011】
表面層14は、図示の実施の形態では、化粧層14Aであり、この化粧層14Aは、本発明の板材用材料12の意匠面側に配置される。図示の実施の形態では、板材用材料12の片面に、表面層14である化粧層14Aが積層されているのが示されているが、装飾が必要な意匠面を両面に設定する場合には、図示の実施の形態と異なり、両面側に、化粧層14Aを積層することもできる。両面側に、化粧層を積層する場合には図2に示すようにアルミニウム層16と化粧層との間に熱可塑性樹脂層を設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0012】
また、意匠面を片面のみに設定する場合には、この意匠面とは反対側の面には、更に、図示しない芯材層を積層することもできる。この化粧板10は、これらの板材用材料12、表面層14である化粧層等を各々形成した後、これらを重ね合わせて加熱加圧成形して、図1に示すように、各層を積層することにより製造することができる。
【0013】
なお、本発明の板材用材料12に積層される表面層14は、必ずしも、化粧層14Aに限定されるものではなく、特に装飾の必要がない内部材料として使用する場合には、表面層14として、例えば、ベニヤを積層することもできるし、また、強度の確保が必要な場合には、金属製材料を積層することもできる。
<1.板材用材料>
本発明の板材用材料12は、図1に示すように、熱可塑性樹脂層20と、アルミニウム層16と、熱硬化性樹脂及び無機充填材を有する不燃性コア層18とを備えた積層体から成っている。
<1−1.熱可塑性樹脂層>
熱可塑性樹脂層20は、表面の化粧層とアルミニウム層との接着性が良く且つ、加熱曲げができるようにするには表面の化粧層とアルミニウム層の間で滑らせることで化粧層の割れを防止させるために熱可塑性樹脂を使用する。アルミニウム層との接着性を良好にするため、熱可塑性樹脂の中でも極性の強いタイプのものが好ましく、費用の面からエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系のものが好ましく、耐熱性の面からポリウレタン系のものが更に好ましい。厚みは100μm以下のものが好ましい。100μmより厚くなると、化粧層への充填量が多くなり過ぎ、化粧層の表面が破れる場合があるため好ましくない。
<1−2.アルミニウム層>
アルミニウム層16は、アルミニウム箔又はアルミニウム板から成り、板材用材料12に主に耐熱性を付与する機能を有する。このアルミニウム層16は、少なくとも、0.1mm以上の厚みに設定することが望ましい。0.1mm未満の厚みにすると、不燃性を充分に確保することができなくなるためである。上限については、特に限定はなく、厚みが大きければ大きい程、不燃性は向上するが、板材用材料12、ひいては、化粧板10全体の厚みと重量が増大すると共に、コストも嵩むため、最終的な製品における設計上、許容される範囲で設定することが好ましく、化粧板10として使用する場合には、0.3mm以下にすることが好ましい。
<1−3.不燃性コア層>
不燃性コア層18は、具体的には、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム等の無機充填材とメラミン樹脂又はフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂とが含浸されたガラス繊維不織布から成っている。不燃性コア層18は、無機充填材と熱硬化性樹脂との配合物を生成し、この配合物を基材であるガラス繊維不織布に含浸させることにより、形成することができる。
【0014】
この場合、基材としてガラス繊維不織布を使用するのは、無機充填材と熱硬化性樹脂との配合物を内部に浸透させる上で好適だからである。このガラス繊維不織布としては、具体的には、坪量が30〜150g/cm2のものを使用することが望ましい。坪量が30g/cm2未満のガラス繊維不織布では、強度や自己保形性が充分ではないため、基材であるガラス繊維不織布に、無機充填材と熱硬化性樹脂の配合物を塗工する際、また、積層等による成形時等における取扱いが困難となる場合がある一方、坪量が150g/cm2超のガラス繊維不織布では、積層による成形時に各層間の密着性が不十分となるおそれがあるからである。
【0015】
一方、難燃性を有する水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム等の無機充填材を配合する熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、又は、フェノール樹脂等を挙げることができるが、その中でも、特に、メラミン樹脂に配合させることが最も望ましい。これは、メラミン樹脂を使用すると、フェノール樹脂等の他の熱硬化性樹脂を使用する場合よりも、無機充填材を適切に保持する上で必要な粘度を充分に確保することができ、また、このメラミン樹脂を結合剤として使用すると、コンマコーター等によりガラス繊維不織布に塗工することも可能となり、良好な取扱い性を確保することができるからである。但し、フェノール樹脂を使用した場合であっても、後述する実施例に示すように、本発明が目的とする不燃材料としての認定試験に合格することはできる。
【0016】
この場合、この無機充填材と熱硬化性樹脂は、無機充填材と熱硬化性樹脂との合計量を100重量%とした場合に、熱硬化性樹脂10〜30重量%に対し無機充填材90〜70重量%の割合で配合することが望ましい。即ち、例えば、熱硬化性樹脂を10重量%に設定した場合には無機充填材は90重量%、熱硬化性樹脂を20重量%に設定した場合には無機充填材は80重量%、熱硬化性樹脂を30重量%に設定した場合には無機充填材は70重量%に設定して配合することが望ましい。この場合、無機充填材の配合率の方を高く設定するのは、充分な不燃性を確保するためであり、熱硬化性樹脂は、いわば無機充填材の結合剤(バインダ)としての役割を有する。
【0017】
これは、熱硬化性樹脂を10重量%未満とすると、熱硬化性樹脂が結合剤としての機能を充分に発揮できず、芯材となる板材用材料12としての取扱い時に結合力不足のために、取扱いが困難となる場合があり、その結果、成形後の化粧板10において層間接着強度が不十分となることがあるからである。また、粘度上昇やままこ状態になることを防ぐため高価で特殊な混合機を使用するか、又は溶剤や水により低粘度化する必要があり、さらに塗布工程でも、高い粘度の樹脂液を塗布する技術が必要となるか、あるいは、多量の溶剤や水で低粘度化した場合は、溶剤燃焼による炭酸ガス増加等の環境汚染や乾燥するためのエネルギーや工程が多大となるなど生産性の低下やコストの増大となり、好ましくない。一方、熱硬化性樹脂が30重量%を越えると(無機充填材を70重量%未満とすると)、不燃効果が低下するため、好ましくない。
【0018】
なお、これらの水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムと熱硬化性樹脂との配合に際しては、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムの他にカーボン等の無機フィラーも添加すると水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムの分散性が向上するため好ましい。また、メラミン樹脂若しくはフェノール樹脂又は水酸化アルミニウム若しくは水酸化マグネシウムは、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その一部を、他の樹脂や無機充填材に置き換えてもよく、この場合も本発明の範囲に含まれるものである。
【0019】
この無機充填材と熱硬化性樹脂の配合物はそのままの状態、もしくは水、アルコール等の溶剤にて希釈して使用する。この配合物において、固形分に対する水、アルコール等の溶剤(もともと樹脂に含有されているものも含む)の割合を希釈率とすると、希釈率は、配合物中の樹脂の割合にもよるが、通常0.05〜0.5程度、好ましくは0.1〜0.3程度である。この範囲より小さいと配合物の粘度が高く塗工が行いにくい場合があり、一方、この範囲より大きいと粘度が低くなり塗工された配合物がガラス繊維不織布上に保持されにくいことがある。
【0020】
次に、この必要により希釈された無機充填材と熱硬化性樹脂の配合物を、ガラス繊維不織布に塗工により、基材であるガラス繊維不織布に含浸させることにより、不燃性コア層18として形成される。この場合、この塗工として、例えば、コンマコーターやダイコーター等の各種の通常のコーター装置により塗工することにより、あるいは、スプレーやノズル等の噴霧装置により吹き付けることにより、無機充填材に剪断力を負荷することなく、基材に含浸させることができる。これは、本発明において、上記のように、無機充填材を、メラミン樹脂等の適切な材料と適切な配合率で配合しているため、良好な取扱い性を確保しているために可能となることである。
【0021】
この場合、塗工時のガラス繊維不織布に対する無機充填材と熱硬化性樹脂の配合物(固形分)の割合を含浸率とすると、含浸率は、ガラス繊維不織布の坪量にもよるが、重量比で通常5〜100倍程度、好ましくは10〜60倍程度とする。上記下限値未満では、必要厚さを維持しにくくなり、表面仕上がりも充分でないことがあるためである。更に、耐燃性の低下、コスト上昇となる。一方、上記上限値を越えると、耐燃性はよいが、積層前の材料の取扱い時に崩れやすい等の欠点が生じてくる。
【0022】
なお、熱硬化性樹脂として好適な例であるメラミン樹脂は、通常メラミンに対するホルムアルデヒドのモル比(以下、単にモル比という)が1.0〜4.0のものが使用されるが、必ずしも、この範囲に限定されるものではない。但し、樹脂ワニスとしての保存性等の点からは、1.0〜2.0の範囲とすることが好ましく、また、酸性の硬化剤を適宜配合することができる。
【0023】
一方、無機充填材としての水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムも、特に限定はないが、平均粒径が1〜100μmのものを好ましく使用することができる。なお、粒子径の大きいものと小さいものを混合使用し、最密充填してもよい。
【0024】
不燃性コア層18は、このようにして形成された無機充填材とメラミン樹脂とが含浸されたガラス繊維不織布を、図1に示すように、複数積層して形成される。このため、1枚1枚のガラス繊維不織布を薄く形成することができ、無機充填材を基材である各ガラス繊維不織布に樹脂を使用して充分に含浸させることが容易となると共に、1枚の厚い基材に浸透させた場合と異なり、無機充填材が内部まで充分に浸透した複数のプリプレグによって、不燃性コア層のほぼ全ての断面において、万遍なく充分に無機充填材を分散させることができるため、不燃効果を高めることができる。なお、この不燃性コア層18は、少なくとも、無機充填材と配合された熱硬化性樹脂をガラス繊維不織布に含浸させたものを有すれば、他に補強層等をも備えていてもよい。
<2.化粧層>
一方、表面層14として板材用材料12に積層される化粧層14は、その本来の材質には、特に限定はなく、本発明においても、通常の化粧層と同様に、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を含有する液状のワニスを調製し、これをグラビア印刷紙等のシート基材に含浸させた後、約50℃〜60℃程度で加熱乾燥により溶剤を除去して、熱硬化性樹脂を半硬化させた状態のプリプレグを使用することができる。なお、この場合、ワニスを紙基材に含浸させる方法に、特に限定はなく、通常行われるキスコーターを用いる方法を採ることもできるし、ディップによる方法を採ることもできる。
【0025】
この場合、このシート基材に特に限定はないが、好ましくはパルプ、リンター、合成繊維、ガラス繊維等を使用することができ、必要に応じて酸化チタン等の顔料を含有する坪量40〜150g/m2のシート又は紙とすることができる。
【0026】
一方、このシート基材に含浸させる熱硬化性樹脂としても、特に限定はなく、例えば、メラミン樹脂単独で使用することもできるが、耐熱性をより一層向上させるためには、メラミン樹脂60〜95重量%、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム又はシリカ40〜5重量%からなる配合物を含浸した含浸シート又は含浸紙を使用することができる。このメラミン樹脂又は配合物の含浸率は、通常、シート又は紙に対して50〜80重量%である。メラミン樹脂は、通常の変性剤(例えば、グリコール類)を0.1〜20重量%添加されたものも使用可能であり、酸性の硬化剤を適宜配合することができる。
【0027】
その他、坪量10〜50g/m2のシート又は紙に、メラミン樹脂単独、又はメラミン樹脂60〜95重量%、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム又はシリカ40〜5重量%からなる配合物を含浸したオーバーレイ含浸紙を組合せて積層することができる。このオーバーレイ含浸紙のメラミン樹脂又は配合物の含浸率は、通常のシート又は紙に対して50〜80重量%である。また、樹脂を含浸しない化粧シート又は化粧紙の表面にこのオーバーレイ含浸紙を組合せることもできる。
【0028】
この化粧層14Aは、板材用材料の表面に積層一体化されるが、反りの防止等のために裏面側にも設置することが好ましい。これらの化粧層14Aは、ともに厚さが0.5mm以下で、かつ有機物の量が360g/m2以下であることが望ましい。
<3.化粧板への加工>
以上の板材用材料12と、表面層14である化粧層14Aは、通常の高圧樹脂化粧板10の場合と同様に、各層を積層して加熱加圧することにより、化粧板10とすることができる。但し、この場合、本発明においては、図1に示すように、アルミニウム層16を、不燃性コア層18よりも外側に配置する。更に、アルミニウム層16は、図1に示すように、不燃性コア層18の両面側に配置することが望ましい。
【0029】
即ち、本発明においては、図1に示すように、熱可塑性樹脂層20、アルミニウム層16を複数重ね、その間に不燃性コア層18を複数枚挿入して(アルミニウム層16、不燃性コア層18、アルミニウム層16の順)、その表面側又は両面側に表面層14を重ねた上で、これらを加熱加圧成形して、化粧板10とすることができる。
【0030】
なお、この化粧板10としての加熱加圧成形時には、板材用材料12と化粧層14とを、熱硬化性樹脂が硬化する程度の温度で加熱しながら、60〜100kg/cm2程度で加圧することが好ましい。成形時には鏡面仕上げ板、エンボス板またはエンボスフィルム等が重ねられ、ミラー仕上げ、エンボス仕上げ等の表面に仕上ることもできる。
【実施例】
【0031】
次に、本発明の化粧板10の実施例及びその効果を立証するための比較例について説明する。不燃性コア層18を構成する無機充填材と熱硬化性樹脂との配合物について、無機充填材と熱硬化性樹脂の合計量100重量%に対する熱硬化性樹脂の割合を、実施例1では30重量%、実施例2では10重量%、比較例1では8重量%、比較例2では32重量%にそれぞれ設定した。また、熱硬化性樹脂として、実施例1及び比較例2についてはメラミン樹脂を、実施例2及び比較例1についてはフェノール樹脂を使用した。一方、無機充填材として、実施例1及び比較例2については水酸化マグネシウムを、実施例2及び比較例1については水酸化アルミニウムを使用した。
(実施例1)
米坪80g/mのチタン化粧紙にポストフォーム用のメラミン樹脂を含浸した(a)メラミン化粧層を得た。坪量75g/m2 、比重0.23g/cm3 、有機バインダー量11%のガラス繊維不織布に、水酸化マグネシウム(平均粒子径10μm)70重量%と、メラミン樹脂(モル比1.5、樹脂固形分50重量%)30重量%(固形分換算、以下同じ)と、水及びアルコール15重量部からなる配合物を塗工し、含浸率20倍の(b)不燃性コア層18を得た。アルミニウム層16として、厚さ0.3mmの(c)アルミニウム箔を使用した。一方、厚さ70μmのウレタン系ホットメルトフィルム(日本マタイ社製 UH203)を(d)熱可塑性樹脂層20として使用した。そして、これらを(a)1枚、(d)1枚、(c)1枚、(b)4枚、(c)1枚の順に積層し、140℃、80kg/cm2 の条件下で20分間加熱加圧成形して、厚さ4.1mmの試料(1)を得た。
(実施例2)
米坪80g/mのチタン化粧紙にポストフォーム用のメラミン樹脂を含浸した(a)メラミン化粧層を得た。実施例1で使用したものと同じガラス繊維不織布に、水酸化アルミニウム(平均粒子径10μm)90重量%と、フェノール樹脂(モル比1.5、樹脂固形分50重量%)10重量%(固形分換算、以下同じ)と、水及びアルコール15重量部からなる配合物を塗工し、含浸率20倍の(b)不燃性コア層18を得た。アルミニウム層16として、厚さ0.1mmの(c)アルミニウム箔を使用した。一方、厚さ80μmのエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)系ホットメルトフィルム(日本マタイ社製 OH501)を(d)熱可塑性樹脂層20として使用した。そして、これらを、実施例1と同様、(a)1枚、(d)1枚、(c)1枚、(b)4枚、(c)1枚の順番に積層し、140℃、80kg/cm2 の条件下で20分間加熱加圧成形して、厚さ4.0mmの試料(2)を得た。
(比較例1)
米坪80g/mのチタン化粧紙にポストフォーム用のメラミン樹脂を含浸した(a)メラミン化粧層を得た。実施例1で使用したものと同じガラス繊維不織布に、水酸化アルミニウム(平均粒子径10μm)92重量%と、実施例2で使用したものと同じフェノール樹脂8重量%と、水及びアルコール15重量部からなる配合物を塗工し、含浸率20倍の(b)不燃性コア層18を得た。アルミニウム層16として、厚さ0.1mmの(c)アルミニウム箔を使用した。一方、クラフト紙にフェノール樹脂を含浸させた(e)コア層を熱可塑性樹脂層の代わりに用いた。そして、これらを(a)1枚、(e)1枚、(c)1枚、(b)4枚、(c)1枚の順番に積層し、140℃、80kg/cm2 の条件下で20分間成形して、厚さ4.0mmの試料(3)を得た。即ち、この比較例1は、熱可塑性樹脂層の代わりにクラフト紙にフェノール樹脂を含浸させたコア層を用いたのと、水酸化アルミニウムとフェノール樹脂との配合割合の点でのみ実施例2と異なり、熱硬化性樹脂の重量%が本発明における下限値を下回る比較例である。
(比較例2)
米坪80g/mのチタン化粧紙にポストフォーム用のメラミン樹脂を含浸した(a)メラミン化粧層を得た。実施例1で使用したものと同じガラス繊維不織布に、水酸化マグネシウム(平均粒子径10μm)68重量%と、実施例1で使用したものと同じメラミン樹脂32重量%と、水及びアルコール15重量部からなる配合物を塗工し、含浸率20倍の(b)不燃性コア層18を得た。アルミニウム層16として、厚さ0.3mmの(a)アルミニウム箔を使用した。一方、クラフト紙にフェノール樹脂を含浸させた(e)コア層を熱可塑性樹脂層の代わりに用いた。そして、これらを(a)1枚、(e)1枚、(c)1枚、(b)4枚、(c)1枚の順番に積層し、140℃、80kg/cm2 の条件下で20分間成形して、厚さ4.0mmの試料(4)を得た。即ち、この比較例2は、熱可塑性樹脂層の代わりにクラフト紙にフェノール樹脂を含浸させたコア層を用いたのと、水酸化マグネシウムとメラミン樹脂との配合割合の点でのみ実施例1と異なり、熱硬化性樹脂の重量%が本発明における上限値を上回る比較例である。
【0032】
以上の実施例で得られた試料(1)〜(4)について特性を評価し、その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
(試験方法)
1.不燃性試験
日本建築総合試験場の業務標準「防耐火性能試験・評価業務方法書」4.10 不燃性能試験・評価方法における、(2)ii)4.10.2 の発熱性試験・評価方法 及び 4.10.3 のガス有害性試験・評価方法、により実施した。業務標準「防耐火性能試験・評価業務方法書」の上記項目には、建築基準法第2条第9号(不燃材料)の規定に基づく認定に係わる性能評価方法について記載されている。
2.層間強度
JAS平面引張り試験に準拠した。
3.加熱曲げ試験
サンプルの裏面にVカットを行い、最も薄いV字の先端からサンプル表面までの厚さが残り0.5mmとなる様にカットした。JIS K6902の曲げ成形性試験に準拠して3Rの曲げ成形性試験を行った。
【0035】
上記表1に示す結果から明らかなように、実施例1、2で得られた試料(1)(2)は、不燃性が基準等に適合するように適切に備わっている。これに対して、比較例1で得られた試料(3)は、不燃性は充分だが層間強度が小さく、熱硬化性樹脂の配合割合が本発明の範囲を下回って少なくなると強度の点で問題が残ることが立証されている。
【0036】
表面層とアルミニウム層の接着に熱可塑性樹脂を用いた(1)(2)は加熱曲げ後も表面層に割れを生じさせることなく良好な曲げ成形性を示したのに対し、接着にフェノール樹脂を用いた(3)(4)は加熱曲げで表面層に割れが生じ、曲げ成形性NGという結果である。
【0037】
また、比較例2で得られた試料(4)は、不燃性が基準をクリアすることができなかった。このことから、無機充填材の配合割合が本発明の範囲を下回って少なくなると、不燃性をクリアすることができないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明による化粧板は、充分な不燃性と層間強度の両方が備わっている。さらに、化粧層には従来の化粧板と同様の化粧層用シート材料が使用できるため、豊富な色柄から自由に選択でき且つ、公共施設等における不燃性を有する材料の規制を受ける壁等の用途に広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0039】
10 化粧板
12 板材用材料
14 表面層
14A 化粧層
16 アルミニウム層
18 不燃性コア層
20 熱可塑性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】

表面に表面層が積層されて、板材を構成する板材用材料であって、
前記板材用材料は、少なくとも、熱可塑性樹脂層と、アルミニウム層と、無機充填材として少なくとも水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムと熱硬化性樹脂とを含む不燃性コア層と、アルミニウム層とがこの順に積層体を構成していることを特徴とする板材用材料。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂層は、ポリウレタン樹脂を含む請求項1に記載の板材用材料。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂層は、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を含む請求項1に記載の板材用材料。
【請求項4】

請求項1ないし3のいずれかに記載された板材用材料の意匠面側に、表面層として化粧層が加熱加圧して積層されていることを特徴とする化粧板。
【請求項5】

請求項4に記載された化粧板であって、前記板材用材料の前記意匠面側とは反対側の面にさらに芯材層が積層されている化粧板。
【請求項6】

表面に表面層が積層されて板材を構成する板材用材料の製造方法であって、
少なくとも、熱可塑性樹脂層と、アルミニウム層と、無機充填材として少なくとも水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムと熱硬化性樹脂とを含む不燃性コア層と、アルミニウム層とがこの順に配置して積層することを特徴とする板材用材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−11337(P2011−11337A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154475(P2009−154475)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】