説明

板状対象物の案内装置

フレーム1の開口を左右に並べられた複数の引戸3で閉じ、これら引戸3をフラットにする。開口部2xの上縁部には、回動リンク50が設けられ、その先端には短いレール部分51が形成されている。引戸3の上縁部にローラ15が設けられており、このローラ15がレール部分51に乗っている。引戸3が閉じ位置からその前後方向の開き準備位置へと移動する際、回動リンク50は第1回動位置から第2回動位置へと移動する。これにより、レール部分51が固定レール39と同軸に位置することになる。引戸3にはレール部材11が設けられている。閉じ位置にある引戸3のレール部分11は固定レール39と同軸をなしている。開き動作する引戸3のローラ15は、閉じ位置にある引戸3のレール部材11と固定レール39の上を走行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、1つまたは複数の板状対象物を左右に案内する装置に関する。
【背景技術】
引戸(板状対象物)は、左右に移動することにより窓や家具の開口を開閉するようになっている。引戸を閉じ位置(セット位置)からその前方又は後方の開き準備位置(準備位置)まで案内し、この開き準備位置から左または右の開き位置(非セット位置)へと案内することにより上記開口を開くようにした案内装置は公知である。
特開平7−269217号公報には、家屋の窓に用いられる開閉装置が開示されている。この開閉装置は、2枚の同一形状の戸を備えている。一方の戸は窓の右側に移動不能に固定されている。他方の戸は引戸として提供され、左右に移動可能となっていて、固定戸に隣接する開口部を開閉する。引戸が閉じ位置にある時、固定戸と面一をなして良好な外観を提供する。開口部を開く際には、引戸を閉じ位置から開き準備位置まで引出し、それから右方向の固定戸に重なった開口位置まで移動する。これとは逆に開口部を閉じる際には、引戸を上記開口位置から上記開き準備位置まで左方向に移動し、それから押し込んで固定戸と面一をなす閉じ位置まで移動する。このような引戸の動きを得るための案内装置は、窓の上下縁に設けられたレールと、これらレールに沿って走行する上下の走行体と、引戸の上下縁と上記走行体とをそれぞれ連結するパンタグラフ機構とを備えている。引戸が閉じ位置にある時にはパンタグラフ機構は折り畳まれている。引戸が引出されるとパンタグラフ機構が伸び、この伸び状態のパンタグラフ機構に保持されて引戸は開き位置へ移動される。
実公昭59−26066号公報には、3枚の引戸を有する家具が開示されている。左右の引戸は、上下に配置された第1軌道に案内されて移動し、対応する開口部を開閉する。中央の引戸は、上下に配置された第2軌道に案内されて移動し、対応する開口部を開閉する。第2軌道は第1軌道と平行をなし、第1軌道より奥に位置している。第2軌道を走行する上下の走行体と中央の引戸の上下縁とはパンタグラフ機構を介してそれぞれ連結されている。中央の引戸が左右の引戸と面一をなして閉じているとき、パンタグラフ機構は伸びている。中央の引戸を押して後退させると、パンタグラフ機構が折り畳まれ、この引戸の左右の開き位置への移動が可能となる。
上記特開平7−269217号,実公昭59−26066号公報に開示された装置では、引戸と走行体との間に複雑なパンタグラフ機構が介在されており、このパンタグラフ機構には開き動作時を含めて常時引戸の荷重が掛かっているため、故障を招く不都合があった。
【発明の開示】
上記課題を解決するため、本発明は、本体に対して板状対象物を、セット位置とこのセット位置の前方または後方の準備位置との間で案内するとともに、この準備位置とその左または右の非セット位置との間で案内する案内装置において、
(a)上記板状対象物の上下縁部の少なくとも一方の縁部に設けられた走行体と、
(b)左右に延びる主軌道を有し、この主軌道に上記走行体を乗せることにより上記板状対象物を非セット位置で支持する主レールと、
(c)上記本体に、第1回動位置と第2回動位置との間で左右に延びる回動軸線を中心として前後方向に回動可能に支持され、支持面と補助軌道を有し、第1回動位置にある時に、上記支持面に上記走行体を乗せることにより上記板状対象物を上記セット位置で支持し、第2回動位置にある時に、上記補助軌道を上記主軌道に連続させるとともにこの補助軌道に上記走行体を乗せることにより上記板状対象物を上記準備位置で支持する回動部材と、を備えたことを要旨とする。
上記構成によれば、本体に設けられた回動部材で板状対象物をセット位置および準備位置で支持するため、パンタグラフ機構等の複雑な機構を必要とせず、故障も少ない。
本発明の案内装置は、窓や家具等の開閉装置として用いることができる。すなわち、上記本体に開口部が形成されており、上記板状対象物は、セット位置にある時にこの開口部を閉じ、非セット位置にある時にこの開口部を開く。
好ましくは、上記回動部材を第2回動位置で維持する維持機構を備えている。これにより、板状対象物は非セット位置から準備位置への戻りを円滑に行うことができる。
本発明の一態様では、上記回動部材の先端縁には上記主軌道と平行をなす実質的に断面円形のレール部分が形成され、回動部材が第1回動位置にある時のレール部分の上面部分が上記支持面として提供され、回動部材が第2回動位置にある時のレール部分の上面部分が上記補助軌道として提供され、上記走行体は上記レール部分に嵌る嵌合溝を有している。これによれば、板状対象物と回動部材の係合を確保し、板状対象物がセット位置と準備位置との間で移動する際に、回動部材を追随させることができる。また、構成をより一層簡略化することができる。
上記態様において、好ましくは上記回動部材を上記第1回動位置に向けて付勢し、ひいては板状対象物をセット位置に向けて付勢する付勢部材を備えている。これにより、板状対象物のセット位置を安定して維持できる。
上記態様において、板状対象物が1枚でも複数でもよい。上記板状対象物が複数の場合、全ての板状対象物がセット位置にあって左右に並べられている時に面一をなす。各板状対象物には、上記回動部材の補助軌道と同一長さの付加軌道を有するレール部材が設けられ、セット位置にある板状対象物のレール部材が他の板状対象物のための主レールの少なくとも一部として提供される。これによれば、セット位置にある板状対象物と重なるようにして、他の板状対象物を非セット位置へ移動させることができる。
上記本体に左右に延びる固定レールが設けられ、この固定レールと上記セット位置の板状対象物のレール部材とで、主レールが構成される。あるいは、上記板状対象物のレール部材が板状対象物の幅とほぼ等しい長さを有し、セット位置にある板状対象物のレール部材だけで他の板状対象物のための主レールが構成される。
本発明の他の態様では、上記回動部材が上記主軌道と平行をなす収容溝を有し、この収容溝の内面が上記支持面および補助軌道を含み、上記板状対象物がセット位置と準備位置にある時に、上記走行体が上記収容溝に収容される。これによれば、板状対象物と回動部材の係合を確保し、板状対象物がセット位置と準備位置との間で移動する際に、回動部材を追随させることができる。
上記態様において、好ましくは、上記板状対象物に走行体支持ブラケットが左右に延びる他の回動軸線を中心として回動可能に取り付けられ、この走行体支持ブラケットに上記走行体が取り付けられている。より好ましくは、上記走行体が円盤形状をなして上記走行体支持ブラケットの先端部に回転可能に取り付けられており、上記回動部材が第1回動位置にある時、走行体が倒れてその側面が上記ガイド溝の上記支持面に当たり、上記回動部材が第2回動位置にある時、走行体が起立してその周面が上記補助軌道に当たる。これによれば、板状対象物が準備位置から非セット位置へ移動する際に、円盤形状の走行体は円滑に補助軌道から主軌道へと乗り移ることができる。
好ましくは、回動部材が第1回動位置にある時の走行体支持ブラケットの回動軸線は、回動部材の回動軸線より後方に位置し、回動部材が第2回動位置にある時の走行体支持ブラケットの回動軸線は、回動部材の回動軸線より前方に位置する。これによれば、板状対象物がセット位置と準備位置との間で移動する過程での上下方向の変位量を少なくすることができる。
好ましくは、さらに付勢部材を備え、この付勢部材は上記走行体支持ブラケットに回動トルクを付与し、これにより上記板状対象物をセット位置に向かって付勢する。これにより、板状対象物のセット位置を安定して維持できる。
上記板状対象物が複数装備される場合には、全ての板状対象物がセット位置にあって左右に並べられている時に面一をなす。各板状対象物に対応する上記回動部材は、上記補助軌道と同一長さの付加軌道を有し、回動部材が第1回動位置にある時、この回動部材の付加軌道が、他の板状対象物のための主軌道の少なくとも一部として提供される。これによれば、セット位置にある板状対象物と重なるようにして、他の板状対象物を非セット位置へ移動させることができる。
好ましくは、上記回動部材が板状対象物の長さとほぼ等しい長さを有し、セット位置の板状対象物に対応する回動部材の付加軌道のみで、他の板状対象物のための上記主軌道が構成される。これにより、構成を簡略化できる。
上記板状対象物が複数装備される場合には、全ての板状対象物がセット位置にあって左右に並べられている時に面一をなす。上記走行体支持ブラケットは、上記補助軌道と同一長さの付加軌道を有し、回動部材が第1回動位置にある時、上記走行体支持ブラケットの付加軌道が、他の板状対象物のための主軌道の少なくとも一部として提供される。これによっても、セット位置にある板状対象物と重なるようにして、他の板状対象物を非セット位置へ移動させることができる。
上記走行体が上記板状対象物の上縁部に設けられた場合、上記板状対象物のセット位置,準備位置において上記回動部材が板状対象物を吊り下げ状態で安定して支持することができる。この場合、板状対象物の下縁部は前後移動を規制しなくてもよい。
好ましくは、上記走行体が主走行体として上記板状対象物の上下縁部のいずれか一方に設けられ、副走行体が他方の縁部に設けられ、さらに、板状対象物がセット位置と準備位置との間で移動する際に上記副走行体を案内するガイド部材と、板状対象物が準備位置と非セット位置との間で移動する過程で、上記副走行体を案内する副レールとを備える。これによれば、板状対象物をより一層安定して案内することができる。
好ましくは、上記副走行体は左または右の少なくとも一方に突出する突起を有し、上記ガイド部材はこの突起を案内するガイド溝を有する。これにより、板状対象物がセット位置と準備位置との間で移動する際に、板状対象物を副走行体を介して安定して案内することができる。
好ましくは、上記副走行体は、上記副レールに形成された溝内を走行する走行部と、上記本体に取り付けられてこの走行部を支持する走行部支持ブラケットとを有し、この走行部支持ブラケットに上記突起が設けられている。
上記板状対象物がセット位置と準備位置との間で移動する過程で上昇または下降する場合には、上記ガイド部材のガイド溝は、板状対象物の変位に対応して直線状に傾斜している。
上記ガイド部材は、ガイド溝に連なる垂直溝を有し、板状対象物がセット位置にある時、副走行体の突起がこの垂直溝に収容される。これにより板状対象物をセット位置で安定して維持できる。
上記板状対象物がセット位置から準備位置まで移動する過程の途中で最も高いか最も低くなる場合には、上記ガイド溝が前後方向に延びる水平部とこの水平部の後端から上方または下方に延びる奥端部とを有する。これによれば、ガイド部材を低くすることが可能である。
上記板状対象物が複数装備され、全ての板状対象物がセット位置にあって左右に並べられている時に面一をなし、上記副走行体は、板状対象物がセット位置にある時に上記副レールと連続するレール部分を有している。これによれば、セット位置にある板状対象物と重なるようにして、他の板状対象物を非セット位置へ移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の一実施形態の引戸案内装置を組み込んだパーティションの正面図であり、図1(A)は全ての引戸を閉じた状態、図1(B)は1つの引戸を閉じ位置から開き準備位置へと引出した状態、図1(C)は引戸を開き準備位置から開き位置に向かって移動させている状態をそれぞれ示す。
図2(A)は図1(A)においてIIa−IIa線に沿う縦断面図であり、図2(B)は図1(B)においてIIb−IIb線に沿う縦断面図である。
図3(A)は引戸の背面図、図3(B)は引戸の側面図である。
図4は、同案内装置の上部構造を拡大して示す斜視図である。
図5は、引戸が閉じ位置にある時の案内装置の上部構造の拡大正面図である。
図6は、引戸が開き準備位置にある時の案内装置の上部構造の拡大正面図である。
図7は、同案内装置の上部構造の拡大側面図であり、図7(A)は引戸が閉じ位置にある時、図7(B)は引戸が開き準備位置にある時の状態をそれぞれ示す。
図8は、同案内装置の本体側の支持金具の拡大側面図である。
図9は、同案内装置の回動リンクの拡大縦断面図である。
図10は、同案内装置の引戸側の支持金具を拡大して示すものであり、図10(A)は背面図、図10(B)は側面図である。
図11は同案内装置の回動リンクの維持機構を示す拡大平面図であり、図11(A)は回動リンクが引戸の閉じ位置に対応した第1回動位置にある時の状態、図11(B)は回動リンクが引戸の開き準備位置に対応した第2回動位置にある時の状態、図11(C)は引戸が開き準備位置から開き位置へと移動し、回動リンクが第2回動位置を維持されている状態を示す。
図12は、上記維持機構の構成要素を分解して示す拡大平面図である。
図13は同案内装置の下部構造を示す断面図であり、図13(A)は引戸が閉じ位置にある時、図13(B)は引戸が開き準備位置にある時の状態をそれぞれ示す。
図14(A)は下部構造の副レールを示す拡大側面図、図14(B)は下部構造のガイド板を示す拡大側面図、図14(C)は下部構造の支持金具を示す拡大側面図である。
図15は、上記下部構造の支持金具の平面図である。
図16は、本発明の第2の実施形態を示す正面図である。
図17は、本発明の第3の実施形態を示す正面図である。
図18は、本発明の第4の実施形態を示す正面図である。
図19は、本発明の第5の実施形態を示す正面図である。
図20は、本発明の第6の実施形態に係わる引戸案内装置の縦断面図であり、図20(A)は引戸が閉じ位置にある状態を示し、図20(B)は引戸が開き準備位置にある状態を示す。
図21は、本発明の第7の実施形態を示す引戸案内装置の下部構造の縦断面図であり、引戸が閉じ位置にある状態を示す。
図22は、第7実施形態の引戸案内装置の下部構造の縦断面図であり、引戸が開き準備位置にある状態を示す。
図23は、第7実施形態の引戸案内装置の下部構造の縦断面図であり、引戸が他の閉じ位置にある引戸に重なった開き位置にある状態を示す。
図24は、第7実施形態で用いられる回動レールの維持機構を示す横断面図である。
図25は、第7実施形態で用いられる位置決め機構の正面図である。
図26は、第7実施形態の引戸案内装置の上部構造の縦断面図であり、引戸が閉じ位置にある状態を示す。
図27は、第7実施形態の引戸案内装置の上部構造の縦断面図であり、引戸が開き準備位置にある状態を示す。
図28は、第7実施形態の引戸案内装置の下部構造の縦断面図であり、引戸が閉じ位置にある他の引戸に重なった開き位置にある状態を示す。
図29は、第7実施形態の引戸案内装置の上部構造の正面図であり、引戸が閉じ位置にある状態を示す。
図30は、第7実施形態の引戸案内装置の上部構造の正面図であり、引戸が開き準備位置にある状態を示す。
図31は、第8実施形態の引戸案内装置の上部構造の縦断面図であり、引戸が閉じ位置にある状態を示す。
図32は、第8実施形態の引戸案内装置の上部構造の縦断面図であり、引戸が開き準備位置にある状態を示す。
図33は、第8実施形態の引戸案内装置の下部構造の縦断面図であり、引戸が閉じ位置にある状態を示す。
図34は、第8実施形態の引戸案内装置の下部構造の縦断面図であり、引戸が開き準備位置にある状態を示す。
図35は、第8実施形態で用いられる付勢機構の横断面図である。
図36は、同付勢機構の2つのカムのカム面を展開して示す図である。
図37は、第9実施形態に係わる引戸案内装置を示す縦断面図であり、引戸が閉じ位置にある状態を示す。
図38は、第9実施形態に係わる引戸案内装置を示す縦断面図であり、引戸が開き準備位置にある状態を示す。
図39は、第9実施形態に係わる引戸案内装置の上部構造を示す正面図であり、引戸が閉じ位置にある状態を示す。
図40は、第9実施形態に係わる引戸案内装置の上部構造を示す正面図であり、引戸が開き準備位置にある状態を示す。
図41は、第9実施形態において、引戸が閉じ位置から開き準備位置まで移動する過程での副走行体のスライダの軌跡を示す概略図である。
図42は、第9実施形態において、引戸が閉じ位置から開き準備位置まで移動する過程での、走行体支持ブラケットの回動軸の軌跡を示す概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図15を参照しながら説明する。図1に示すパーティションは、持ち運び可能であり部屋等の空間を仕切るために用いられる。パーティションは、横長の長方形のフレーム1(本体)を有している。このフレーム1の左右の枠部1a,1bは下方に延びて支柱となり、その下端に固定されたベース(図示しない)が床に載置されるようになっている。
フレーム1により形成された長い開口2は、複数の、例えば4枚の引戸3(板状対象物)を左右に並べることにより閉じられるようになっている。これら引戸3は同一寸法の縦長の四角形をなす平板からなり、その前面には、把手3aが取り付けられている。この把手3aに手を入れて引戸3を閉じ位置(セット位置)から前方の開き準備位置(準備位置)までに引き出した後、左右に移動させて開くようになっている。開口2において、各引戸3に対応する領域を開口部2xと称す。4つの開口部2xは連続している。本実施形態では、引戸3はフレーム1の左端から右端まで移動可能である。
図2,図3に示すように、引戸3の上縁部の左右端には、支持金具10(走行体支持ブラケット)が取り付けられており、その下縁部の中央にも支持金具20(走行部支持ブラケット)が取り付けられている。これら金具10,20については、後で詳細に説明する。
図1に示すように、フレーム1の上枠部1c(開口部の上縁部)の上面には、各開口部2xに対応して左右一対の支持金具30が取り付けられている。図4,図5に示すように、この支持金具30は、閉じ状態の引戸3の上縁部の左右端より所定間隔離れてその内側に配置されており、上枠部1cに沿って水平に延びる円柱部31を有している。図8に示すように、この円柱部31は上枠部1cの前方かつ上方に位置しており、その軸心が上枠部1cの上面から突出する量を符号Pで示し、上枠部1cの前面から突出する量を符号Qで示す。
図1,図4に示すように、各開口部2xに対応する左右の支持金具30の円柱部31間には、パイプ35が掛け渡されている。図11,図12に最も良く示すように、このパイプ35は円柱部31と外径が等しく、その両端が円柱部31の端面に形成された凸部31aに嵌め込まれて支持されている。左右一対の円柱部31とパイプ35は、各開口部2xに対応してフレーム1に固定された直線状の固定レール39として提供され、その上面部分が固定軌道39x(符号39xは図4,図5にのみ示す)として提供される。各固定レール39は、開口部2xの上縁部の左右端部を除く領域を占めており、4つの固定レール39は同一直線上に配置されている。
図4,図12に示すように、上記左右の支持金具30間には、パイプ35と平行をなしパイプ35よりも後方に位置する連動シャフト40が、掛け渡されている。詳述すると、支持金具30は円柱部31の後方に筒部32を有しており、この筒部32の内部空間は、軸受孔32aおよび収容孔32bを軸方向に連ねることにより構成されている。連動シャフト40は、断面円形をなす細長い基部40aと、その両端部から同軸に延びる断面非円形の連結部40bとを有している。連動シャフト40の基部40aの端部は、上記支持金具30の軸受孔32a,収容孔32bを貫通し、軸受孔32aにおいて軸受により回動可能に支持されている。
図4,図11,図12に示すように、左右の支持金具30には、回動リンク50(回動部材)が隣接しており、これら左右の回動リンク50は各開口部2xの上縁部の左右端部に配置されている。上記連動シャフト40の左右の連結部40bは左右の支持金具30から突出しており、この連結部40bに、上記回動リンク50の基端部に形成された係合孔50aが嵌め込まれている。図7参照。これにより、左右の回動リンク50は、連動シャフト40を介して同時に前後方向に回動するようになっている。この回動リンク50の回動軸線は、左右に水平に延び、上記固定レール39と平行をなしている。
図4,図9に示すように、回動リンク50は縦断面がL字形をなし、その先端には円筒形状をなすレール部分51が一体に形成されている。このレール部分51は、固定レール39と外径が等しいがこれより短く形成され、固定レール39と平行をなしている。このレール部分51の周方向に互いに隣接する面部分がそれぞれ補助軌道51xおよび支持面51yとして提供される。図7参照。
上記回動リンク50が第1回動位置と第2回動位置との間で回動することにより、上記レール部分51はフレーム1の上枠部1cの真上の第1位置(図4,図7(A)に示す)と、第1位置より前方かつ下方の第2位置(図7(B)に示す)との間で移動されるようになっている。レール部分51の第1位置において支持面51yが上面部分となり、第2位置において補助軌道51xが上面部分となって固定レール39の固定軌道39xと同一直線をなす。
図7に示すように、上記回動リンク50は、上記支持金具30の収容孔32bに収容されたねじりバネ55(付勢部材)により、常に後方へすなわち回動リンク50が第1回動位置になるように回動付勢されている。このねじりバネ55の一端は、支持金具30の収容孔32bに連なる係止溝32cに係止され、他端は回動リンク50の側面に形成された係止溝50cに入り込んでいる。係止溝50cは円弧形状をなしており、この係止溝50cには、回動リンク50にねじ込まれた調節ねじ56の先端が臨むようになっている。この調節ねじ56の先端に上記ねじりバネ55の他端が当たっており、調節ねじ56のねじ込み量により、ねじりバネ55の弾性力が調節されるようになっている。
上記回動リンク50が第2回動位置にある時、この回動リンク50の回動は図11,図12に示す維持機構60により禁じられる。この維持機構60は、各開口部2xに対応する一対の回動リンク50のうち、左側の回動リンク50に設けられている。詳述すると、回動リンク50の円筒形状をなすレール部分51には、係止ロッド61が収容されている。また、上記回動リンク50の上面には収容凹部50dが形成され、この収容凹部50dには、板形状のスライダ62が前後方向にスライド可能に収容されるとともに、このスライダ61を前方へ付勢する圧縮コイルばねからなる押圧ばね63が収容されている。なお、スライダ61は上記レール部分51に形成された長孔51a,および係止ロッド61に形成された長孔61aを貫通して、レール部分51の前方に突出している。スライダ62の前端縁は円弧形をなしており、この前端縁が図11(A)に示すように、引戸3の支持金具10の後面に形成された球面形状の係合面10aに係合するようになっている。
上記係止ロッド61とスライダ62はカム機構65を介して連結されている。このカム機構65は、スライダ62に形成されたカム孔66と、係止ロッド61に設けられてカム孔66と係合するフォロアピン67とを含んでいる。カム孔66は、前後方向に延びる第1部分66aとこの第1部分66aの後端から斜め後方に延びる第2部分66bとを有している。なお、上記フォロアピン67は、レール部分51に形成された軸方向に延びる長孔51bにも入り込んでおり、これにより係止ロッド61は軸方向移動を可能にしながら回動を禁じられている。
上記係止ロッド61は、スライダ62の移動に伴い、レール部分51に対して進退し、上記支持金具30の円柱部31の端面に形成された係止凹部31bに対して係合したり係合解除されるようになっている。詳しくは後述する。
他方、上記フレーム1の下枠部1d(開口部の下縁部)の下面には、図1(C)に示すように、複数の副レール70が下枠部1dに沿って水平に同一直線上に取り付けられている。これら副レール70は、各開口部2xの中央で、間隙71を介して離間しており、この間隙71に臨む端面にはガイド板72(ガイド部材)が固定されている。副レール70は、図14(A)に示すように下面に開口する案内溝70a(副軌道)を有している。案内溝70aの両側面は垂直をなしている。図13,図14(B)に示すように、上記ガイド板72は、上記副レール70の案内溝70aと同形状をなしてこの案内溝70aに連なる切欠72aを有している。
図14(B)に示すように、上記ガイド板72の間隙71側の面は垂直で副レール70と直交するガイド面72xとなっており、このガイド面72xには、前方に向かうにしたがって下方に進む直線状の傾斜溝72b(ガイド溝)が形成されている。この傾斜溝72bの下端は、垂直に延びる短い切欠72cに連なっている。この切欠72cはガイド板72の下縁に抜けている。なお、この傾斜溝72bは、ガイド板72の厚み方向に貫通していないが、貫通してスリット形状をなしていてもよい。
次に、引戸3の上縁部の左右端部に取り付けられた一対の支持金具10について図2〜図7を参照しながら説明する。この支持金具10は、その下部が引戸3の裏面に固定され、その中間部の前面にはレール部材11が一体に形成されている。このレール部材11は上記レール部分51と平行をなすとともに、等しい長さを有している。このレール部材11の上面部分が付加軌道11xとして提供される。図4,図5,図7参照。支持金具10の上部の後面側には、上下に離れたローラ15,16(走行体)が回転可能に支持されている。ローラ15の外周は断面円弧の嵌合溝15aを有してレール部分51,固定レール39に嵌合可能となっている。正面から見て左側の支持金具10の後面には、ローラ15,16間に前述した係合面10aが形成されている。右側の支持金具10はこの係合面10aを有していない。
次に、引戸3の下縁部の中央に形成された支持金具20について、図13,図14(C),図15を参照しながら説明する。支持金具20は、引戸3の後面に固定された垂直をなす板形状の固定部20aと、この固定部20aの中央から水平に後方へ延びる水平部20bと、この水平部20bの後端から起立する起立部20cと、この起立部20cの上端から左右に突出する一対の突起20dと、レール部分20eとを有している。このレール部分20eには、上記副レール70の案内溝70aと同形状の案内溝20fが形成されている。
上記支持金具20の水平部20bの上面には垂直の回転軸を有するローラ25(走行部)が回転可能に取り付けられている。これら支持金具20とローラ25とで副走行体29が構成されている。
上記構成をなす開閉装置の作用を説明する。最初に図1(A)に示すように、4つの開口部2xの全てが引戸3によって閉じられた状態について説明する。この状態では、引戸3の上下縁部がフレーム1の上枠部1c,下枠部1dに当接するか僅かな隙間を介して接近しており、左右に並べられた全ての引戸3の前面が同一垂直面上に位置し、面一をなしている。
引戸3が閉じ位置にある時、支持金具10の上側のローラ15は、回動リンク50のレール部分51の支持面51yに乗っており、これにより引戸3は一対の回動リンク50により吊り下げ支持されている。下側のローラ16はレール部分51の下面に接するか僅かな隙間を介して対峙している。
回動リンク50は、ねじりバネ55の弾性力により後方に付勢されており、これにより、図2(A),図7(A)に示すように回動リンク50のレール部分51は、フレーム1の上枠部1cの上方の第1位置を維持されている。なお、回動リンク50の後方への回動は、上枠部1cにおいて回動リンク50の後方に設置された図示しないストッパにより阻止されている。なお、回動リンク50の後方への回動を、引戸3がフレーム1に当たることにより阻止するようにしてもよい。
図1(A)に示すように全ての引戸3が閉じた状態では、支持金具10のレール部材11が、フレーム1に固定された固定レール39と同一直線をなしており、これら複数のレール部材11の付加軌道11xと複数の固定レール39の固定軌道39xとで、一直線をなす連続軌道Mが構築されている。図5参照
引戸3が閉じ位置にある時、引戸3の下縁部の中央に設けられた支持金具20は、一対のガイド板72間に収容されている。支持金具20の左右の突起20dは、間隙71を挟んで対峙する左右のガイド板72の傾斜溝72bの上端近傍に位置し、これにより引戸3の下縁部の前後方向の揺れを禁じている。また、支持金具20のレール部分20eの案内溝20fは、ガイド板72の切欠72aと一致し、この切欠72aを介して副レール70の案内溝70aに連なっている。
次に、選択した1つの引戸3、例えば左から2番目の引戸3の開き動作について説明する。図1(B),図2(B),図6,図7(B)に示すように、当該引戸3を把手3aを掴んで前方の開き準備位置へ引き出す。この際、引戸3のローラ15と回動リンク50のレール部分51の係合を介し、回動リンク50がねじりバネ55に抗して前方へ回動される。これにより、引戸3のレール部材11が固定レール39から外れ、その代わりに回動リンク50のレール部分51が第2位置に達して固定レール39と同一直線をなす。回動リンク50が第1回動位置から第2回動位置に回動するのに伴って、ローラ15を支持するレール部分51の上面部分は支持面51yから補助軌道51xに変わる。
1枚の引戸3が開き準備位置にある時、一直線をなす連続軌道Mは、4本の固定レール39の固定軌道39xと、開き準備位置にある上記引戸3に対応する2本のレール部分51の補助軌道51xと、他の3枚の引戸3のレール部材11の付加軌道11xとで、構築されることになる。なお、回動リンク50のさらなる前方への回動は、上枠部1cにおいて回動リンク50の前方に設置されたストッパ(図示しない)により阻止される。
引戸3は閉じ位置から開き準備位置まで回動リンク50に支持されながら移動する際、下方にも変位する。これに伴い、支持金具20が一対のガイド板72のガイド面72xに案内され、支持金具20の左右一対の突起20dは、左右のガイド板72の傾斜溝72bに沿って斜め前方へと移動し、切欠72cに達する。このようにして、引戸3は下縁部が安定して開き準備位置まで移動できる。引戸3が開き準備位置に達し、支持金具20の突起29dが切欠72cに入り込んだ時に、支持金具20のローラ25は、ガイド板72の案内溝72aに対応する位置になり、支持金具20のレール部分20eは、副レール70から外れる。
次に引戸3を開き準備位置から左右いずれかの開き位置へと移動させる。この際、支持金具10のローラ15は、回動リンク50のレール部分51の補助軌道51xから離れる。図1(C)に示すように引戸3を右に移動させた場合には、右側の上部金具15のローラ15は、右隣の引戸3の支持金具10におけるレール部材11の付加軌道11xに乗り移り、さらに固定レール39の固定軌道39xへと移る。左側の支持金具10のローラ15は、レール部分51の補助軌道51xから右隣の固定レール39の固定軌道39xへと乗り移る。このことから明らかなように、固定軌道39xと、閉じ状態の引戸3の付加軌道11xにより、開き動作する引戸3のための主軌道100が構成されている。また、上記固定レール39と閉じ位置の引戸3のレール部材11は、この主軌道100を有する主レールを構成する。
なお、本明細書で各引戸3の開き位置とは、引戸3が開口部2xを部分的に開いた位置から、左右端の他の引戸3に重なった位置までの範囲における任意の位置を言う。
上記のように引戸3を開き準備位置から左右の開き位置へと移動させる際に、上記回動リンク50のレール部分51は、固定レール39と同一直線をなす位置を維持される。詳述すると、引戸3が閉じ位置にあり、左右の回動リンク50のレール部分51に左右の支持金具10のローラ15が係合している状態では、図11(A)に示すように、左側の回動リンク50に設けられた維持機構60のスライダ62の前端縁が支持金具10の係合面10aに当たっており、圧縮コイルばね63に抗して後退された位置にある。この時、係止ロッド61のフォロアピン67がスライダ62のカム孔66の第1部分66aと第2部分66bとの交差部に位置しており、係止ロッド61はレール部分51の端面とほぼ面一をなす後退位置にある。
引戸3が開き準備位置まで移動しても、上記維持機構60は上記の状態を維持される。引戸3が開き準備位置から左右いずれかに移動すると、図11(B)に示すように、支持金具10の係合面10aの左右いずれかの縁部がスライダ62を一時的に押し込み、フォロアピン67は一時的にスライダ62のカム孔66の第1部分66aの前端位置に達する。さらに引戸3を移動させると、図11(C)に示すように、上記スライダ62が支持金具10の係合面10aによる押圧状態を解除されて前方へ突出する。これに伴いフォロアピン67がカム孔66の第1部分66aから第2部分66bに沿って相対的に移動し、この第2部分66bの後端に至る。この過程で、係合ロッド61がレール部分51の端面から突出し、支持金具30の円柱部31の端面に形成された係止凹部31bに嵌り込む。その結果、左側の回動リンク50のレール部分51は、固定レール39と同軸に維持される。なお、右側の回動リンク50は左側の回動リンク50と連動シャフト40を介して連結されているため、右側の回動リンク50のレール部分51も、固定レール39と同軸に維持される。
その結果、1つの引戸3が開き位置に向かって移動しても、この引戸3に対応する回動リンク50の補助軌道51xが連続軌道Mの一部となって残り、引戸3は連続軌道Mの端から端まで自由に移動することができ、引戸3の荷重は連続軌道Mにおいてローラ15が乗っている部位で受け止めることができる。
引戸3が開き準備位置から左右いずれかの開き位置に移動する際、下側の支持金具20のローラ25は、ガイド板72の切欠72aを経て副レール70の案内溝70aに入り込み、この案内溝70aに沿って走行する。なお、引戸3が開き準備位置と開き位置にある時、支持金具20はガイド板72の拘束を脱する。支持金具20のローラ25は、他の引戸3の支持金具20のレール部分20eとガイド板70の切欠70aと副レール70に沿って自由に走行する。
開き位置にある引戸3は、左右方向に移動させて開き準備位置に戻した後、後方へ押し込むことにより閉じ位置に戻すことができる。上述したように回動リンク50のレール部分51は固定レール39と同軸をなして係止されているので、引戸3が開き準備位置に戻る際に、引戸3のローラ15を受け止めることができる。なお、引戸3が開き準備位置に達すると、維持機構60のスライダ62の先端縁が支持金具10に押されて係合面10aに嵌ることにより、引戸3の位置決めを行うとともに、維持機構60による回動リンク50のロック状態を解除する。
本実施形態のように引戸3が3枚以上装備されている場合、1枚の引戸3が開き位置にある時、もう1枚の引戸3も同様にして閉じ位置から開き準備位置へ、開き準備位置から開き位置へと移動させることができる。そのため、2枚の引戸3を最初の位置と入れ替えることもできる。
本実施形態では、引戸3を単位にして種々の構成要素すなわち支持金具10,20、回動リンク50,支持金具30,パイプ35を揃えることにより、種々の長さのパーティションを簡単に形成することができる。なお、パーティションの左右端に位置する短い副レール70と、この副レール70に固定されたガイド板72は省いてもよい。この場合、両端の引戸3は閉じ位置から開き準備位置まで移動する過程で、1枚のガイド板72によって案内される。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。これら実施形態において先行して説明した実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
図16に示す第2の実施形態では、固定レール39は第1実施形態のように各開口部2xの上縁部中央部ではなく、隣接する開口部2xに跨って配置されている。各引戸3の一対の支持金具10は引戸3の左右端部から離れ、中央寄りに配置されている。第1実施形態と同様の形状をなす左右の回動リンクも支持金具10に対応した位置に配置されている。左右の回動リンクのレール部分51’(第1実施形態のレール部分51に相当する)とこれらレール部分51’間に連結されたパイプ151は、長い補助軌道を形成している。また、左右の支持金具10のレール部材11’(第1実施形態のレール部材11に相当する)とこれらレール部材11’間に連結されたパイプ111は、長い付加軌道を形成されている。他の構成は第1実施形態と同様である。第2実施形態では、固定レール39の数が第1実施形態より少ない。
図17に示す第3の実施形態では、第1,第2実施形態の固定レール39が省かれている。その代わりに、レール部分51’とパイプ151からなる補助軌道と、レール部材11’とパイプ111からなる付加軌道が、引戸3の幅と同程度の長さとなっている。この実施形態では、1枚の引戸が開き動作する際、残りの閉じ状態の引戸の付加軌道のみで、この開き動作する引戸のための主軌道を構築することになる。
図18に示す第4の実施形態は、家屋の窓に適用される1枚の引戸を備えた開閉装置であり、基本構造は第1実施形態と似ている。窓となる開口部2xを囲むフレーム1の上下の枠部1c,1dは、開口部2xから左右いずれかに延びている。上枠部1cの開口部2xの真上には第1実施形態と同様に固定レール39が設置されており、その左右端に隣接して一対の回動リンクが設置されている。さらに上枠部1cにおいて、開口部2xから延長された部分には他の固定レール39が設置されている。
他方、下枠部1dには、開口部2xの途中から延長部の途中まで延びる副レール70が固定されている。副レール70の両端にはガイド板72が固定されている。引戸3およびこの引戸3に取り付けられる構成要素は第1実施形態と同様であるが、付加軌道はない。この実施形態でも、引戸3は閉じ位置と開き準備位置で前後方向の移動する。この開閉装置は、例えばフレーム1への引戸3の密着により家屋の気密性を高める場合に利用できる。また、引戸を開き位置で戸袋内に収容し、閉じ状態で引戸を戸袋と面一にする開閉装置にも適用できる。
図19に示す第5の実施形態も、家屋の窓に適用される1枚の引戸を備えた開閉装置である。この実施形態の基本構造は、図16の第2実施形態と似ている。上述した全ての実施形態では、引戸3の荷重を上枠部1cに設置した回動リンク50や固定レール39で担い、引戸3を吊り下げ支持しているので、引戸3の下縁部の支持金具20や副レール70等を省くこともできる。
図20に示す第6実施形態では、引戸3に装着される金具10、20および引戸3を支持する構成要素の配置が第1実施形態と上下逆になっている。この実施形態では、引戸3の下縁部に固定された支持金具10のローラ16が回動リンク50のレール部分51や固定レール39に乗ることにより、引戸3の荷重が受け止められている。この場合、ローラ16はその周面にレール部分51と嵌合する嵌合溝を有している。引戸3は閉じ位置から開き準備位置へと向かう過程で、上方に移動する。他の構成および作用は第1実施形態と同様であるから説明を省略する。
なお、図16〜図19に示す第2〜第5実施形態でも構成要素を上下逆にすることができる。
次に、第7実施形態について図21〜図30を参照しながら説明する。まず、図21〜図25を参照しながら引戸案内装置の下部構造について説明する。図21〜図23に示すように、下枠部1dの下面には、各開口部2x毎にほぼ開口部2xの幅寸法だけ離れた左右1対の支持金具80(片方のみ示す)が固定されている。この支持金具80は、下縁から水平に延びる荷重受部80aを有している。なお、隣接する開口部2xの支持金具80は、背中合わせで隣接している。
一対の支持金具80の前側の下端部間には、左右に水平に延びる回動軸80bを介して押出型材からなる回動レール81(回動部材)の一端が回動可能に支持されている。この回動レール81は、幅広の細長い板形状をなし、平行をなす2つの平坦面81a,81bを有しており、その長さは開口部2xの幅寸法,すなわち引戸3の幅寸法とほぼ等しい。回動レール81は後方の水平倒れ位置(第1回動位置)と前方の起立位置(第2回動位置)との間で、ほぼ90°の角度範囲で回動可能となっている。回動レール81の水平倒れ位置は、回動レール81が上記支持金具80の荷重受部80aの上面に当たることによって維持される。
上記回動レール81の他方の面81bには、その幅方向中央に収容溝82が形成されている。この収容溝82は、水平倒れ位置で上部が開放されており、その開口縁には互いに向き合う一対の突条82xが形成されている。収容溝82は、幅広の底面82aと、その両側の幅の狭い第2面82b,第3面82cと、突条82xの内側の第4面82dとを有している。本実施形態では、第1面82aが支持面として提供され、回動中心に近い第2面82bが補助軌道として提供される。また、回動レール81の平坦面81bのうち回動軸80bに近い面部分は、付加軌道81xとして提供される。
上記回動レール81の回動軸80b側の端部には、上記付加軌道81xから突出する規制壁81yと、この規制壁81yと直交して付加軌道81xの反対側に突出する係止部81zとが形成されている。図22に示すように回動レール81が起立位置にある時、この係止部81zが荷重受部81aの前縁に当たることにより、回動レール81は前方への倒れを防止されている。
回動レール81が起立位置にある時、後方への倒れは図24に示す維持機構83によって防止されるようになっている。なお、この維持機構83は回動レール81の長手方向の一端側において、回動レール81の自由端近傍に設けられている。維持機構83は、回動レール81の一端に嵌め込まれたホルダケース83aと、このホルダケース83aの開口端に配置されたボール83bと、ホルダケース83aに収容されボール83bを支持金具80の側壁に向かって押すコイルバネ83cと、支持金具80の側壁に形成され、球面をなす凹部83dとを有している。回動レール81が起立位置にある時、ボール83bがこの凹部83dに嵌り、回動レール81を起立位置で保持する。
上記回動レール81には、さらに図21,図25に示す位置決め機構84が設けられている。この位置決め機構84は、引戸3が開き位置から開き準備位置へと戻る際の位置決めを行うものであり、断面L字形をなすホルダ84aと、移動部材84bとを有している。ホルダ84aの第1片は固定具84eにより回動レール81の自由端に固定され、ホルダ84aの第2片と回動部材81の平坦面81bとの間に、上記移動部材84bが配置されている。ホルダ84aの第2片には左右一対のピン84cが固定されている。
上記移動部材84bは、左右に一対の長穴84hを有している。各長穴84hは円弧形状をなし、他方の長穴84hの端部(図22に示すように回動レール81の起立状態での上端部)を中心とする円弧を描く。この長穴84hに上記ピン84cが挿入されている。これにより、移動部材84bは揺動および上下動可能となっている。上記移動部材84bは、ホルダ84aの第1片を向く面に穴を有し、この穴に上記コイルバネ84dが収容されている。このコイルバネ84dにより移動部材84bはホルダ84aの第1片から遠ざかる方向に付勢されている。移動部材84bは、上記ホルダ84aの第1片の反対側の面において、左右の傾斜したガイド面84xと、中央の円弧形状の係合面84yとを有している。この位置決め機構84の作用は後述する。
他方、引戸3の下端部後面には、左右両端に一対の支持金具85が固定されている。これら支持金具85の後端には補助ローラ89が回転可能に支持されている。一対の支持金具85間には、断面ほぼZ字形の細長い押出型材からなる支持ブラケット86(走行体支持ブラケット)がその基端部を回動軸86aを介して回動可能にして連結されている。支持ブラケット86の回動軸線は、回動レール81の回動軸線と平行をなし、左右に水平に延びている。支持ブラケット86は互いに直角をなす先端側の第1片86xと中間の第2片86yと、第1片86xと平行をなす基端側の第3片86zとを有しており、ねじりバネ87(付勢部材)により反時計回り方向に付勢されている。ねじりバネ87は、上記回動軸86aに巻回され、一端が支持金具85に固定されたピン87aに引掛けられ、他端が支持ブラケッ卜86の第2片86yに引掛けられている。
上記支持ブラケット86の第1片86xには、円盤形状のローラ88(走行体)が第1片86xと直交する支持軸88xを介して回転可能に支持されている。ローラ88は上記回動レール81の収容溝82に収容される。
次に、第7実施形態の上部構造について図26〜図30を参照しながら説明する。この上部構造は、第1実施形態の下部構造,第6実施形態の上部構造と似ているので、簡単に説明する。引戸3の上縁部の例えば右端部の後面に、支持金具120(走行部支持ブラケット)が固定されている。この支持金具120は、引戸3の後面に固定されて上方に突出する垂直の固定部120aと、この固定部120aの上端から後方へ水平に突出する水平部120bと、この水平部120bの後端から起立する起立部120cとこの起立部120cの上端から左右に突出する一対の突起120dを有している。この支持金具120の固定部120aの前面には、支持金具120の一部となるレール部分120eが固定されており、このレール部分120eには案内溝120fが形成されている。この案内溝120fの上部には狭い空間120gが形成されている。
上記支持金具120の水平部120bの上面には垂直の回転軸を有するローラ125(走行部)が回転可能に取り付けられている。支持金具120とローラ125とで副走行体129が構成されている。
上記フレーム1の上枠部1cの上面には、各開口部2xに右端部の位置に一対の支持金具171が固定されている。これら支持金具171の互いの対向面には、それぞれガイド板172(ガイド部材)が固定されている。図27に最も良く示されているように、このガイド板172の対向面(ガイド面)には、前方に向かうにしたがって下方に進む直線状の傾斜溝172b(ガイド溝)が形成されている。この傾斜溝172bの上端は上方に延びる短い垂直溝172aに連なり、下端は垂直に延びる短い切欠172cに連なっている。この切欠172cはガイド板172の下縁に抜けている。
上記各開口部2xに対応して副レール170が配置されている。合計4本の副レール170は一直線をなして左右に延びている。この副レール170は、引戸3の幅寸法から上記一対の支持金具171間の間隔分を差し引いた長さを有しており、支持金具171間に掛け渡されるようにして固定されている。副レール170は、図28に示すように下面に開口する案内溝170a(副軌道)を有している。案内溝170aの両側面は垂直をなしている。案内溝170aの上方には狭い空間170bが形成されている。これら案内溝170a,空間170bは、引戸3の支持金具120の案内溝120f及び空間120gと同形状をなしている。
次に、上記第7実施形態の案内装置の作用について説明する。複数例えば4つの開口部2xの全てが対応する引戸3によって閉じられた状態では、第1実施形態と同様に引戸3の前面が面一をなしている。
引戸3が閉じ位置にある時、図21に示すように回動レール81が水平倒れ位置にあり、下側のローラ88は倒れていて回動レール81の収容溝82に収容され、その側面が第1面82a(支持面)に当たるようにして乗っており、これにより引戸3の自重を支持している。ねじりバネ87の弾性力により、支持ブラケット86に回動トルクが付与されており、この回動トルクは引戸3を閉じ位置に向かって付勢するように働くため、引戸3の閉じ位置が維持されている。
引戸3が閉じ位置にある時、回動レール81の付加軌道81xと起立壁81yと、支持ブラケット86の第2片86yおよび第3片86zにより、他の引戸3のローラ88が走行可能な空間180が形成される。
全ての引戸3が閉じた状態では、全ての回動レール81の付加軌道81xが一直線をなす連続軌道を構築している。
他方、引戸3が閉じ位置にある時、図26,図29に示すように、引戸3の上縁部の右端部に設けられた支持金具120は、一対のガイド板172間に収容されている。支持金具120の左右の突起120dは一対のガイド板172の垂直溝172aに位置しており、前後方向の移動を禁じられている。また、支持金具120の案内溝120fは、僅かな間隙を介して副レール170の案内溝170aに連なっている。
次に、選択した1つの引戸3の開き動作について説明する。引戸3を把手を掴んで前方の開き準備位置へ引き出す。この際、引戸3のローラ88と回動レール81の収容溝82の係合を介し、回動レール81が前方へ回動され、垂直起立位置となる。この際、支持ブラケット86はねじりバネ86に抗して90°回動するので、ローラ88が倒れた状態から起立するのを許容する。上記回動レール81の回動に伴って、回動レール81の付加軌道81xが連続軌道から外れ、その代わりに回動レール81の補助軌道82bが連続軌道の一部となる。また、ローラ88はその周面が回動レール81の補助軌道82bに当たるようにして補助軌道82bに乗る。
引戸3が閉じ位置から開き準備位置に至る過程の特定点で、ねじりバネ87によるトルクを引戸3の自重によるトルクが上回り、引戸3は開き準備位置まで自重で移動することができる。図22に示すように、回動レール81の係止部81zが支持金具80の荷重受部80aに当たることにより、引戸2は開き準備位置で停止する。
引戸3が閉じ位置から開き準備位置まで回動レール81に支持されながら移動する際、下方にも変位する。これに伴い、案内装置の上部構造では、支持金具120の突起120dがガイド板172の傾斜溝172bに沿って斜め前方へと移動し、切欠172cに達する。このようにして、引戸3は上縁部も安定して開き準備位置まで移動できる。引戸3が開き準備位置に達し、支持金具120の突起120dが切欠172cに入り込んだ時に、支持金具120のローラ125は、副レール170の案内溝170aに対応する位置にある。
次に、引戸3を開き準備位置から左右いずれかの開き位置へと移動させる。この際、支持金具86のローラ88は、回動レール81の補助軌道51xから離れ、図23に示すように隣の引戸3に対応する回動レール81の付加軌道81xに乗り移る。このことから明らかなように、閉じ状態の引戸3の付加軌道81xにより、開き動作する引戸3のための主軌道が構成されて、閉じ状態の引戸3の回動レール81だけで主レールが構成される。図23に示すように、開き動作する引戸3のローラ88は、閉じ状態の引戸3の支持ブラケット86と回動レール81とで構成された空間180を走行する。補助ローラ89は、回動レール81の規制壁81y,係止部81zにより案内される。
引戸3が開き動作する際、図28に示すように、引戸3のローラ125は、副レール170の案内溝170aおよび閉じ状態の引戸3の支持金具120の案内溝120fを通る。また、開き動作する引戸3の支持金具120の起立部120cは、ガイド板172の切欠172cを通り、副レール170の空間170bおよび閉じ状態の引戸3の支持金具120の空間120gを通る。
図23,図28に示すように、開かれた引戸3は、他の閉じ状態の引戸3に重なる。
引戸3が開き位置に去った後に残された回動レール81は、前述したように維持機構83により起立状態を維持される。引戸3が開き位置から再び開き準備位置に戻ってきた時には、位置決め機構84で位置決めする。詳述すると、引戸3が例えば右から開き準備位置に戻ってくる時には、ローラ88の支持軸88xが位置決め機構84の移動部材84bの右側の傾斜したガイド面84xに当たり、この移動部材84bを右側が上がるように傾かせる。さらに引戸3が移動するとローラ88が移動部材84bの係止面84yに入り込み、引戸3を開き準備位置に位置決めする。この後で、引戸3を後方へ押し込むことにより、支持ブラケット86および回動レール81がそれぞれ90°回り、図21の状態に戻る。なお、引戸3を閉じ位置に戻す際に、引戸3の自重からねじりバネ87の弾性力を差し引いた力で、軽く持ち上げる必要があるが、途中からは、ねじりバネ87の力で自動的に閉じ位置に達する。
他の作用は、前述した他の実施形態と同様である。
次に、本発明の第8実施形態について図31〜図36を参照しながら説明する。この実施形態では、第7実施形態の上部構造と下部構造を上下逆に配置したものであり、対応する構成部には図中第7実施形態と同じ番号を付する。引戸3は閉じ位置から開き準備位置へと移動する過程で上方へ移動する。これに伴い、図33,34に示すように、ガイド板172の傾斜溝172bは前方に進むにしたがって上方に向かうように傾斜している。第7実施形態と大きく異なるのは次の点である。図31に示すように、引戸3が閉じ位置にある時、倒れ状態のローラ88の側面が収容溝82の第4面82dに当たる。すなわち、この第4面82dが引戸3を支持する支持面として提供される。図32に示すように、引戸3が開き準備位置にある時、起立状態のローラ88は回動レール81の収容溝82において回動中心から遠い第3面82cに乗る。すなわち、この第3面82cが補助軌道として提供される。
また本実施形態では、閉じ状態の引戸3の支持ブラケット86の第3片86zが、開き動作する他の引戸3を乗せるための付加軌道として提供される。
第8実施形態では、閉じ位置を維持するため、第7実施形態のねじりバネ87の代わりに、図35に示す付勢機構200が用いられる。この付勢機構200は、一対の円筒形状のカム201,202と、圧縮コイルスプリング203と、シャフト204と、一対のブラケット205,206とを備えている。一方のブラケット205は引戸3の後面に固定され、このブラケット205に一方のカム201が固定されている。他方のブラケット206はローラ88を支持するための支持ブラケット86の第3片86zに固定される。上記シャフト204の右側部は、上記ブラケット205およびカム201に回動可能に挿入支持されている。シャフト204の左側部の周面には軸方向に延びるキー204aを有しており、上記ブラケット206およびカム202に回動不能に挿入支持されている。シャフト204は支持ブラケット86の回動軸86aと同一直線上に配置されている。
上記コイルスプリング203は、上記カム202とブラケット206との間に介在されており、カム202をカム201に向かって付勢している。上記カム201,202の互いに対向する端面は図36に示すカム面201a,202aとなっており、コイルスプリング203の力で互いに接している。カム201のカム面201aは2つの山部201xを有しており、カム202のカム面202aも2つの山部202xを有している。
引戸3が閉じた状態では、図36(A)に示すように、カム202の山部202xがカム201の山部201xの一方の傾斜面に当たり、これにより、コイルスプリング203の力がカム202に一方向の回転トルクFaに変換される。この回転トルクFaは、引戸3を後方へ付勢する力となって働く。これにより引戸3の閉じ位置が安定して維持される。
引戸3を閉じ位置から開き準備位置まで引出す際に支持ブラケット86が回動し、これに伴いカム202がカム201に対して相対的に回動し、所定角度(例えば20°)回動した時に山部202xが山部201xを超えてこの山部201xの他方の傾斜面に当たることになる。その結果、図36(B)に示すように閉じ状態の時とは反対の回転トルクFbが働くことになる。この回転トルクFbは引戸3をその自重に抗して上方へ(開き準備位置へ)と向かわせる力となって働く。その結果、引戸3は開き準備位置で安定して維持される。
次に、本発明の第9実施形態について、図37〜図42を参照しながら説明する。本実施形態は図21〜図30に示す第7実施形態と似た構造であるので、対応する構成部には同番号を付して詳細な説明を省略するとともに、共通構造の一部は図示を省略する。下部構造で大きく異なるのは、次の点である。図37に示すように、引戸3が閉じ位置にあり回動レール81が第1回動位置にある時に、支持ブラケット86の回動軸86aは、回動レール81の回動軸80bより後方に位置している。そして図38に示すように、引戸3が開き準備位置にあり回動レール81が第2回動位置にある時の支持ブラケット86の回動軸86aは、回動レール81の回動軸80bより前方に位置する。したがって、図42に示すように、引戸3が閉じ位置から開き準備位置に至るまでの途中で、回動軸86aは回動軸80bの真上にある時に最も高くなるような円弧を描く。したがって、回動レール81が第1回動位置から第2回動位置に至るまでの回動軸86aの水平移動量ΔLに比べて、回動軸86aの垂直移動量ΔH’、すなわち回動軸86aの最高高さと第1回動位置での高さの差は小さくて済む。第1回動位置と第2回動位置での回動軸86aの高さの差ΔHは、ΔH’より小さい。引戸3の下縁部は回動軸86aと同じ軌跡を描く。
上記下部構造において、他の相違点は下記の通りである。ホルダ84aにストッパ84zが形成され、このストッパ84aが支持金具80の垂下片80cに当たることにより、回動レール81の起立状態が維持される。回動軸86aには軸方向に離れた2つのねじりバネ301,302が巻かれている。図37に示すねじりバネ301は支持ブラケット86を時計回り方向に付勢し、図38に示すねじりバネ302は支持ブラケット86を反時計回りに付勢し、これにより、引戸3を本体1に装着する前には、ローラ88が引戸3に対して傾斜した中立位置を維持されており、装着作業を楽にする。
次に上部構造について説明する。図39,図40に示すように、副レール400の両端部がガイド部材401として提供され、ホルダ410を介して本体1の上縁部に固定されている。本体1の上縁部には、その両端において上記ホルダ410により小ピースのガイド部材402が固定されている。ガイド部材402は上記ガイド部材401と左右方向に離れて対峙している。副レール400およびガイド部材402は、同一断面形状の押し出し型材により形成されている。
図37,図38に示すように、ガイド部材401,402の互いの対向面には、中間壁部403が切り取られてガイド溝405が形成されている。このガイド溝405は水平部405aとその後端の垂直部405b(奥端部)とを有している。水平部405aの前端は若干下方に向かう開口部405cを介して開放されている。水平部405aの後端寄りの上面には円弧形状の凹部405dが形成されている。
他方、引戸3の上縁部には、支持ブラケット420が固定されている。この支持ブラケット420は水平部421と起立部422を有しており、この起立部422の上端には円柱形状のスライダ425(走行部)が固定されており、このスライダ425の両端部は左右に突出する突起として提供される。引戸3が閉じ位置と開き準備位置との間にある時、水平部421はガイド部材401,402間に位置しており、上記スライダ425はガイド溝405に入り込んでいる。これら支持ブラケット420とスライダ425により、副走行体429が構成されている。
上記第9実施形態の作用を説明する。図37に示すように引戸3が閉じ位置にある時、回動レール81は倒れており、スライダ425はガイド溝405の垂直部405bの下端に位置している。引戸3を開き準備位置まで引出すと、回動レール81が回動して起立し、ローラ88も起立する。この過程で、前述したように支持ブラケット86の回動軸86aが途中を最高高さとする円弧軌跡を描く。この際、スライダ425は、ガイド溝405の垂直部405bに沿って上昇し、さらに水平部405aに沿って前方へ移動し、さらに若干下がって開口部405cに達する。図41に示すように、スライダ425の水平移動量は、下部構造における支持ブラケット86の回動軸86aの水平移動量ΔLと等しく、垂直移動量は、第1回動位置と第2回動位置での回動軸86aの高さの差ΔHと等しい。このようにスライダ425の垂直移動量ΔHが小さくて済むので、ガイド部材401,402を低くすることができ、ひいては案内装置全体を小型化することができる。
上記説明から明らかなように、支持ブラケット86の回動軸86aの移動軌跡すなわち引戸3の下縁部の移動軌跡は、スライダ425の移動軌跡すなわち引戸3の上縁部の移動軌跡と異なる。この移動軌跡の相違は、引戸3の若干の傾きにより補償される。なお、回動軸86aが円弧軌跡の頂点近傍にあるとき、スライダ425がガイド溝405の凹部405dに入ることにより、引戸3の傾きを緩和することができる。
第7実施形態と同様に、引戸3は開き準備位置から開き位置まで移動する際に、他の閉じ位置にある引戸3の回動レール81の付加軌道81xに乗る。この際、スライダ425は副レール400の開口部405cすなわち副軌道を通る。開口部405cは閉じ位置にある引戸3の支持ブラケット420より上方にあり、この支持ブラケット420より本体1から離れているので、開き動作中の引戸の支持ブラケット420と閉じ位置にある支持ブラケット420は干渉しない。
上記第7〜第9実施形態の構造は、1枚の引戸を開閉するために用いてもよい。この場合、主軌道として固定軌道を有するレール部材が用いられる。
上述した全ての実施形態は、家屋,天袋,家具,大型冷蔵庫等の開口部を開閉する装置に適用することもできる。複数の引戸に対応する開口部は互いに仕切られていてもよい。
引戸の開き準備位置は、閉じ位置の後方にあってもよい。この場合、引戸を押出すことにより、閉じ位置から開き準備位置にする。
上記連続軌道は、大きな曲率の円弧をなしていてもよい。この場合、引戸はレールに対応して横断面が円弧をなすのが好ましい。
引戸に取り付けられる主走行体はローラの代わりにスライダを用いてもよい。
本発明を、窓を開閉するための1枚の引戸を案内するために用いる場合、閉じ位置で戸袋と面一にし、開き位置で戸袋内に収容する構造とすることもできる。
本発明は、開口部を開閉する引戸のみならず、壁面に支持されるパネル(板状対象物)の移動にも適用することができる。
上述した実施形態の特徴は、適宜組み合わせることができる。
【産業上の利用の可能性】
以上説明したように本発明によれば、板状対象物を故障の少ない簡単な構造で、セット位置と準備位置との間,準備位置と非セット位置との間で案内することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】

【図38】

【図39】

【図40】

【図41】

【図42】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体(1)に対して板状対象物(3)を、セット位置とこのセット位置の前方または後方の準備位置との間で案内するとともに、この準備位置とその左または右の非セット位置との間で案内する案内装置において、
(a)上記板状対象物の上下縁部の少なくとも一方の縁部に設けられた走行体(15;88)と、
(b)左右に延びる主軌道(100)を有し、この主軌道に上記走行体を乗せることにより上記板状対象物を非セット位置で支持する主レールと、
(c)上記本体に、第1回動位置と第2回動位置との間で左右に延びる回動軸線を中心として前後方向に回動可能に支持され、支持面(51y;82a)と補助軌道(51x;82b)を有し、第1回動位置にある時に、上記支持面に上記走行体を乗せることにより上記板状対象物を上記セット位置で支持し、第2回動位置にある時に、上記補助軌道を上記主軌道に連続させるとともにこの補助軌道に上記走行体を乗せることにより上記板状対象物を上記準備位置で支持する回動部材(50;81)と、
を備えたことを特徴とする板状対象物の案内装置。
【請求項2】
上記本体に開口部(2x)が形成されており、上記板状対象物(3)は、セット位置にある時にこの開口部を閉じ、非セット位置にある時にこの開口部を開くことを特徴とする請求項1に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項3】
さらに、上記回動部材を第2回動位置で維持する維持機構(60;83)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項4】
上記回動部材(50)の先端縁には上記主軌道と平行をなす実質的に断面円形のレール部分(51)が形成され、回動部材が第1回動位置にある時のレール部分の上面部分が上記支持面(51y)として提供され、回動部材が第2回動位置にある時のレール部分の上面部分が上記補助軌道(51x)として提供され、上記走行体(15)は上記レール部分に嵌る嵌合溝(15a)を有していることを特徴とする請求項1に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項5】
さらに、上記回動部材(50)を、上記第1回動位置に向けて付勢し、ひいては板状対象物をセット位置に向けて付勢する付勢部材(55)を備えたことを特徴とする請求項4に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項6】
上記板状対象物が複数装備され、全ての板状対象物がセット位置にあって左右に並べられている時に面一をなし、各板状対象物には、上記回動部材(50)の補助軌道(51x)と同一長さの付加軌道(11x)を有するレール部材(11)が設けられ、セット位置にある板状対象物のレール部材が他の板状対象物のための主レールの少なくとも一部として提供されることを特徴とする請求項1または4に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項7】
上記本体に左右に延びる固定レール(39)が設けられ、この固定レールと上記セット位置の板状対象物のレール部材(11)とで、主レールが構成されることを特徴とする請求項6に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項8】
上記板状対象物のレール部材が板状対象物の幅とほぼ等しい長さを有し、セット位置にある板状対象物のレール部材だけで他の板状対象物のための主レールが構成されることを特徴とする請求項6に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項9】
上記回動部材(81)が上記主軌道と平行をなす収容溝(82)を有し、この収容溝の内面が上記支持面(82a;82d)および補助軌道(82b;82c)を含み、上記板状対象物がセット位置と準備位置にある時に、上記走行体(88)が上記収容溝に収容されることを特徴とする請求項1に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項10】
上記板状対象物に走行体支持ブラケット(86)が左右に延びる他の回動軸線を中心として回動可能に取り付けられ、この走行体支持ブラケットに上記走行体(88)が取り付けられていることを特徴とする請求項9に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項11】
上記走行体(88)が円盤形状をなして上記走行体支持ブラケット(86)の先端部に回転可能に取り付けられており、上記回動部材(81)が第1回動位置にある時、走行体が倒れてその側面が上記ガイド溝の上記支持面(82a;82d)に当たり、上記回動部材が第2回動位置にある時、走行体が起立してその周面が上記補助軌道(82b;82c)に当たることを特徴とする請求項10に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項12】
回動部材(81)が第1回動位置にある時の走行体支持ブラケット(86)の回動軸線は、回動部材の回動軸線より後方に位置し、回動部材が第2回動位置にある時の走行体支持ブラケットの回動軸線は、回動部材の回動軸線より前方に位置することを特徴とする請求項10または11に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項13】
さらに付勢部材(87)を備え、この付勢部材は上記走行体支持ブラケット(86)に回動トルクを付与し、これにより上記板状対象物をセット位置に向かって付勢することを特徴とする請求項11に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項14】
上記板状対象物が複数装備され、全ての板状対象物がセット位置にあって左右に並べられている時に面一をなし、
各板状対象物に対応する上記回動部材(81)は、上記補助軌道(82b)と同一長さの付加軌道(81x)を有し、回動部材が第1回動位置にある時、この回動部材の付加軌道が、他の板状対象物のための主軌道の少なくとも一部として提供されることを特徴とする請求項1または9に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項15】
上記回動部材(81)が板状対象物の長さとほぼ等しい長さを有し、セット位置の板状対象物に対応する回動部材の付加軌道(81x)のみで、他の板状対象物のための上記主軌道が構成されることを特徴とする請求項14に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項16】
上記板状対象物が複数装備され、全ての板状対象物がセット位置にあって左右に並べられている時に面一をなし、
上記走行体支持ブラケット(86)は、上記補助軌道(82c)と同一長さの付加軌道(86z)を有し、回動部材が第1回動位置にある時、上記走行体支持ブラケットの付加軌道が、他の板状対象物のための主軌道の少なくとも一部として提供されることを特徴とする請求項1または9に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項17】
上記走行体(15)が上記板状対象物の上縁部に設けられ、上記板状対象物のセット位置,準備位置において上記回動部材(50)が板状対象物を吊り下げ状態で支持することを特徴とする請求項1に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項18】
上記走行体(15;88)が主走行体として上記板状対象物の上下縁部のいずれか一方に設けられ、副走行体(29;129;429)が他方の縁部に設けられ、
さらに、板状対象物がセット位置と準備位置との間で移動する際に上記副走行体を案内するガイド部材(72;172;401,402)と、板状対象物が準備位置と非セット位置との間で移動する過程で、上記副走行体を案内する副レール(70;170;400)とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項19】
上記副走行体(29;129;429)は左または右の少なくとも一方に突出する突起(20d;120d;425)を有し、上記ガイド部材(72;172;401,402)はこの突起を案内するガイド溝(72b;172b;405)を有することを特徴とする請求項18に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項20】
上記副走行体(29;129)は、上記副レール(70;170)に形成された溝(70a;17a)内を走行する走行部(25;125)と、上記本体に取り付けられてこの走行部を支持する走行部支持ブラケット(20;120)とを有し、この走行部支持ブラケットに上記突起(20d;120d)が設けられていることを特徴とする請求項19に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項21】
上記板状対象物がセット位置と準備位置との間で移動する過程で上昇または下降し、上記ガイド部材(72;172)のガイド溝(72b;172b)は、板状対象物の変位に対応して直線状に傾斜していることを特徴とする請求項19に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項22】
上記ガイド部材(172)は、ガイド溝(172b)に連なる垂直溝(172a)を有し、板状対象物がセット位置にある時、副走行体(120)の突起(120d)がこの垂直溝に収容されることを特徴とする請求項21に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項23】
上記板状対象物がセット位置から準備位置まで移動する過程の途中で最も高いか最も低くなり、上記ガイド溝(405)が前後方向に延びる水平部(405a)とこの水平部の後端から上方または下方に延びる奥端部(405b)とを有することを特徴とする請求項19に記載の板状対象物の案内装置。
【請求項24】
上記板状対象物が複数装備され、全ての板状対象物がセット位置にあって左右に並べられている時に面一をなし、上記副走行体(20;120)は、板状対象物がセット位置にある時に上記副レール(70;170)と連続するレール部分(20f;120f)を有していることを特徴とする請求項18に記載の板状対象物の案内装置。

【国際公開番号】WO2004/099540
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505998(P2005−505998)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006143
【国際出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【出願人】(000107572)スガツネ工業株式会社 (153)
【Fターム(参考)】