説明

板状建材

【課題】表面の意匠性を阻害することなく、清掃性を向上し得る板状建材を提供する。
【解決手段】板状建材10は、表面11aに形成された目地溝3に、透明樹脂4bを充填して、表面10aを略平滑にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の内装材や造作材、家具材等に用いられる板状建材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内装材や家具材等に用いられる板状(パネル状)の建材としては、合板やパーティクルボード、MDF等の木質繊維板などの木質系材料を芯材(基材)として、その表面に、天然木を薄くスライスした突板(化粧単板とも言う)を貼着した板状建材や、無垢の木材からなる板状建材が汎用されている。
このような表面に突板が貼着された板状建材や、無垢の木材は、天然木であるため、その表面の色調が一定ではなく、均一な色調としたい場合には、塗装等が施される場合があった。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、均一な色調の木質系化粧材を大量に安定して供給することを目的として、以下の構成とした木質系化粧材が提案されている。
すなわち、上記木質系化粧材は、中密度繊維板と、該中密度繊維板の表面に積層された糸状物〜細条片物の引き揃え層と、該引き揃え層の上に付された木目印刷模様と、該木目印刷模様が付されている面に形成された導管溝形状のエンボス凹部と、該エンボス凹部内に充填されたワイピングインキ層と、該木目印刷模様面の全面を被覆するように形成された透明樹脂層からなる保護層とを有している。
【0004】
上記構成とされた木質系化粧材によれば、上記糸状物〜細条片物の引き揃え層によって、天然木による板材が有する光沢、照りが具現され、かつ、安定した色調が得られる、と説明されている。また、上記エンボス凹部による導管溝形状と該エンボス凹部内に充填されたワイピングインキ層との作用により、より一層天然木材による化粧材に近似する高品質感が得られ、また同時に、透明樹脂層からなる保護層により、耐水性等に優れた作用が奏される、と説明されている。
【特許文献1】特開平5−193051号公報(図5参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような板状建材は、その表面に、意匠性の観点や、突板等の表面化粧材の突き合わせ接合部における段差等の吸収のため等の観点から目地溝を形成したものが汎用されている。
このような目地溝は、一般的に、V溝形状や凹溝形状等とされており、この目地溝内に塵埃等が溜まり易く、また、汚れ等が付着した場合には、拭き取り難く、清掃性の改善が望まれていた。
上記特許文献1に記載された木質系化粧材では、均一な色調の木質系化粧材を大量に安定して供給することは可能ではあるが、上述のような目地溝による意匠性の向上、及び目地溝を備えた板状建材の清掃性の改善についての考慮はなされていなかった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、表面の意匠性を阻害することなく、清掃性を向上し得る板状建材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る板状建材は、表面に形成された目地溝に、透明樹脂を充填して、表面を略平滑にしていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る前記板状建材においては、木粉・プラスチック複合材で製された基材と、該基材の表面に貼着された化粧材とを備えた構成として、前記目地溝を、その底部が前記基材の層内に達するように形成された構成としてもよい。
上記基材は、当該基材の全質量に対して、40質量%以上の無機フィラーと、5質量%〜30質量%の木粉とを含有した構成としてもよい。
また、上記基材に、上記化粧材と同系色となるよう着色を施すようにしてもよい。
また、上記基材を、押出成形により形成して、上記目地溝を、その押出方向に沿って形成するようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る前記板状建材においては、前記目地溝に充填された透明樹脂を、当該板状建材の表面保護層と一体的に形成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る前記板状建材は、表面に形成された目地溝に、透明樹脂を充填して、表面を略平滑にしているので、当該板状建材の表面の意匠性を阻害することなく、目地溝内への塵埃や汚れ等の付着を防止できる。すなわち、目地溝に充填形成された樹脂層は、透明であるので、表面を略平滑としながらも、目地溝を形成したことによる当該板状建材の表面の立体感が視覚的には失われず、当該板状建材の表面の意匠性が向上される。また、当該板状建材の表面は、透明樹脂が充填された目地溝の部位を含んで、略平滑とされているので、清掃性を向上させることができる。
【0011】
本発明に係る前記板状建材において、木粉・プラスチック複合材で製された基材と、該基材の表面に貼着された化粧材とを備えた構成として、前記目地溝を、その底部が前記基材の層内に達するように形成された構成とすれば、以下のような効果を奏する。
すなわち、木粉・プラスチック複合材で製された基材の層内に底部が達するように目地溝を形成し、該目地溝に透明樹脂を充填する構成とすることで、木質材料に目地溝を形成し、該目地溝に透明樹脂を充填するものと比べて、該基材に形成された目地溝部位でのささくれ立ち等が生じ難く、また、該目地溝部位における透明樹脂の浸透が低減される。従って、該目地溝への透明樹脂の充填を効率的に行うことができる。
また、上記基材は、木粉・プラスチック複合材で製されているので、木質材料で製されたものと比べて、吸放湿や温度変化による当該板状建材の膨張、収縮が低減され、施工後に寸法変化等が生じ難い板状建材となる。
【0012】
上記基材を、当該基材の全質量に対して、40質量%以上の無機フィラーと、5質量%〜30質量%の木粉とを含有した構成とすれば、比較的、多量の無機フィラーが含有されているので、表面硬度が高められ、耐クラック性や耐傷付性、耐キャスター性等に優れたものとなる。従って、高い表面硬度が要求される建物の内装材、特に、踏み込みやキャスター等によって、繰り返し荷重が加えられるような箇所に施工される床材や階段の踏み板、玄関框、腰壁、内壁等に好適なものとなる。
また、上述のような吸放湿や温度変化による当該板状建材の膨張、収縮を、より効果的に低減させることができ、高い寸法安定性を有したものとなる。また、木粉の含有量が比較的、少量であるため、該基材に形成された目地溝部位におけるささくれ立ちや透明樹脂の浸透を、より効果的に低減できる。
【0013】
また、上記基材に、上記化粧材と同系色となるよう着色を施すようにすれば、上記のように基材の層内に底部が達するように形成された目地溝内の表面の化粧材の部位と、基材の部位との色調の不連続性等が形成されず、意匠性に優れたものとなる。
【0014】
また、上記基材を、押出成形により形成して、上記目地溝を、その押出方向に沿って形成するようにすれば、該基材に含有されている木粉等の配向方向が目地溝の長手方向と同方向となる。これにより、化粧材を貼着した後、目地溝を切削形成した際に、目地溝内の表面へ露出する木粉の露出率が他方向(斜めや直交する方向等)に形成した場合と比べて減少し、該基材に形成された目地溝部位におけるささくれ立ちや透明樹脂の浸透をより効果的に低減できる。
【0015】
本発明に係る前記板状建材において、前記目地溝に充填された透明樹脂を、当該板状建材の表面保護層と一体的に形成するようにすれば、上記目地溝への透明樹脂の充填工程を、表面保護層の形成とともに行えるので、形成工程の簡略化が図れる。
また、上記目地溝に充填される透明樹脂が表面保護層と一体的に形成されるので、当該板状建材の表面の目地溝が形成された部位と、他の部位とに色調の不連続性等が形成されず、意匠性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1(a)、(b)は、いずれも本実施形態に係る板状建材を模式的に示し、(a)は、概略斜視図、(b)は、(a)におけるX−X線矢視概略部分拡大縦断面図、図2(a)〜(d)は、いずれも同板状建材の形成工程の一例を説明するための概略部分拡大縦断面図である。
尚、以下で説明する各部材の表面は、例えば、板状建材を床材に適用した場合は、上面を指し、内壁や腰壁等に適用した場合は、室内空間側の面(手前側面)を指している。
【0017】
本実施形態に係る板状建材10は、図1(b)に示すように、大略的に、木粉・プラスチック複合材で製された基材を構成する複合基材(WPB(ウッドプラスチックボード))1と、該複合基材1の表面1aに紙材5を介して貼着された化粧材を構成する突板2と、複合基材1の裏面1bに固着された木質基板6とを備えている。
上記複合基材1と紙材5を介して貼着された突板2とからなる板状体11の表面11aには、底部3aが上記複合基材1の層内に達するように目地溝3が形成されるとともに、表面保護層4が形成されている。
また、本実施形態では、図1(a)に示すように、板状建材10を、床材に適用した例を示している。
【0018】
尚、板状建材10が適用される使用箇所、施工箇所としては、床材に限られず、表面の意匠性や耐汚染性等が要求される階段の踏み板や玄関框、腰壁、内壁等の内装材や造作材に適用可能である。或いは、引戸や折戸、開き戸等の扉(ドアパネル)、間仕切り、棚、キッチンパネル、天井等の内装材や、キャビネットなどの収納家具の前板(扉)、天板、棚板、側板、底板、背板等の家具材等にも適用可能である。
特に、後記するように、本実施形態に係る板状建材10は、表面硬度に優れているので、表面硬度が要求される内装材や造作材、家具材等に好適である。
【0019】
上記複合基材1は、熱可塑性樹脂、無機フィラー、木粉、相溶化剤、及び着色剤を所定の含有割合で含有しており、これらを混練して、押出成形によって形成されている。
上記熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、AS(アクリロニトリルスチレン)、アクリルなどが挙げられる。
特に、性能やコスト面等の観点からポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂が好ましく採用される。
【0020】
上記無機フィラーとしては、アスペクト比(粒子状無機物の直径を厚みで除した値)が10以上の鱗片状の微粒子が好ましく、無機物の種類としては、マイカ、アルミナ、タルク等が好ましい。
上記木粉としては、例えば、製材工場等で排出される製材屑や、廃木材を破砕、粉砕して得られたもの、合板、MDF、パーティクルボード等のサンダー粉等が採用される。このような木粉としては、成形性及び分散性の観点から、その平均粒径が、10〜150メッシュ程度のものが好ましい。
上記相溶化剤としては、上記熱可塑性樹脂や上記無機フィラー等の物性に応じて、適宜、選択可能であるが、オレフィン系の熱可塑性樹脂を採用した場合には、マレイン酸変性オレフィン樹脂としてもよい。例えば、ポリプロピレン樹脂を採用した場合には、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂としてもよい。
【0021】
上記所定の含有割合としては、複合基材1の全質量に対してそれぞれ、上記無機フィラーを40質量%以上、上記木粉を、無機フィラーよりも少量となる5質量%〜30質量%程度、上記相溶化剤を1質量%〜10質量%程度としてもよい。また、これに所定量の着色剤を添加して含有させるようにしてもよい。
このように、木粉の含有量を比較的、少量にすることで、複合基材1に形成された目地溝3の部位において、ささくれ立ちや後記する透明樹脂が浸透することを効果的に低減できる。従って、該目地溝3への透明樹脂の充填を効率的に行うことができる。また、比較的、多量の無機フィラーを含有させることで、当該板状建材(床材)10の表面10aの表面硬度を効果的に高めることができる。また、多量の無機フィラーを含有させた場合においても、上記のような割合で、木粉及び相溶化剤を添加することで、分散性及び成形性に優れ、複合基材1自体の物性が高められる。
【0022】
上記着色剤としては、後記する突板2と同系色となるような染料や顔料等としてもよい。
このように、複合基材1の色調を、突板2の色調に合わせることで、上記目地溝3内に、後記するように透明樹脂を充填して透明な表面保護層4が形成された際にも、当該目地溝3の部位において、突板2の目地溝3の表面に露出する部位と複合基材1の目地溝3の表面に露出する部位との色調の不連続性等が形成されず、意匠性に優れたものとなる。すなわち、木質材料を基材とした場合は、その種類にもよるが、突板よりも黒い、或いは、白い等、突板とは色調が異なる場合が多々ある。このように基材と突板との色調が異なる積層体に対して、該基材に達するように目地溝を形成し、該目地溝に透明樹脂を充填して透明な表面保護層を形成する場合は、目地溝の部位において突板と基材との色調が不連続となることが考えられるが、本実施形態によれば、上述のように、このような問題が生じることを効果的に低減できる。
【0023】
上記複合基材1は、本実施形態では、押出成形によって成形されており、図1(a)に示す板状建材(床材)10の長手方向と、該複合基材1の押出方向とが同方向となるように成形されている。
尚、該複合基材1の成形方法としては、例えば、公知の二軸混練押出機を用いて、混練と押出しとを同時に行う押出成形によって成形するようにしてもよく、混練した後に、押出成形によって成形するようにしてもよい。或いは、カレンダー加工により複合基材1を成形するようにしてもよい。
また、この複合基材1の厚さは、板状建材10の使用・施工箇所等に応じて適宜、設定可能であるが、本実施形態のように、木質基板6の表面に貼着されて床材10として適用される場合においては、0.5mm〜10.0mm程度、より好ましくは、0.5mm〜4.0mm程度の薄板状のものとしてもよい。これにより、高い表面硬度を有しながらも比較的安価なものとなる。本実施形態では、複合基材1の厚さを、0.6mm程度としている。
【0024】
上記突板2は、天然銘木を、厚さが100μm〜1.0mm程度に薄くスライスして形成された薄シート状とされており、本実施形態では、突板2の厚さを、0.2mm程度としている。
また、本実施形態では、上記突板2は、図1に示すように、複数枚の細長状の突板2からなり、これら複数枚の突板2の端部を突き合わせて複合基材1の表面1aに紙材5を介して貼着されている。
【0025】
上記突板2と上記複合基材1との間に介在された紙材5は、該複合基材1と突板2とを接合する接合層として機能し、坪量が10〜80g/m程度で、厚さが100μm以下のものとされている。このような紙材5を、突板2と複合基材1との間に介在させることで、特に湿式の突板2を熱プレスにて接着する際に、エマルジョン系接着剤や突板2から生じる水蒸気が紙材5を介して除去される。従って、本実施形態のように、突板2が貼着される基材を、熱可塑性樹脂を含有した水蒸気の逃げ難い複合基材1とした場合でも、水蒸気の膨張により生じる恐れがある突板2の膨れや破裂等のパンクを防止できる。
【0026】
上記目地溝3は、上記のように複合基材1の表面1aに紙材5を介して突板2が貼着されて形成された板状体11の表面に、その底部3aが複合基材1の層内に達するように形成されている。換言すれば、目地溝3は、その底部3aが突板2の層内で止まらず、かつ、木質基板6まで達しないような深さに形成されている。
また、本実施形態では、上述のように、端部同士が突き合わせられて複合基材1の表面1aに貼着された突板2の継ぎ目2bに沿って、目地溝3が形成されており(図2(c)、(d)参照)、図1に示すように、当該床材10の長手方向に沿って形成された縦目地溝3Aと、幅方向に沿って形成された横目地溝3Bとからなる。
【0027】
上記目地溝3のうち、長尺に形成された縦目地溝3Aは、複合基材1の押出方向と同方向に沿って形成されている。
このように、目地溝3のうち、長尺の縦目地溝3Aを、複合基材1の押出方向と同方向に沿って形成することで、当該複合基材1に含有されている無機フィラーや木粉の配向方向が、縦目地溝3Aの長手方向と同方向となる。これにより、突板2を貼着した後、縦目地溝3Aを切削形成した際に、縦目地溝3A内の表面へ露出する無機フィラーや木粉の露出率が他方向(斜めや直交する方向等)に形成した場合と比べて減少する。従って、該複合基材1に形成された目地溝3Aの部位でのささくれ立ち等が生じ難く、また、後記するように、透明樹脂を充填して表面保護層4を形成する際に、複合基材1に形成された縦目地溝3Aの内表面から層内への透明樹脂の浸透を効果的に低減できる。
【0028】
上記目地溝3の深さや幅は、目地溝3が形成される上記板状体11を構成する複合基材1及び突板2の厚さに応じて、適宜、設定可能であるが、本実施形態のように板状建材10を床材に適用した場合においては、0.5mm〜1.5mm程度としてもよい。上述のように、0.6mm程度の厚さとされた複合基材1に対して、0.2mm程度の厚さの突板2を貼着した本実施形態では、目地溝3の深さを0.6mm程度とし、その幅を、1.5mm程度としてもよい。
【0029】
すなわち、本実施形態では、目地溝3の深さは、突板2の厚さよりも大とされ、かつ、突板2の厚さ(本実施形態では紙材5の厚さも含む)よりも、複合基材1の表面1aに形成された目地溝3の深さが大となるように目地溝3を形成している。このように突板2を薄シート状とし、目地溝3の大部分を複合基材1に形成するようにしているので、目地溝3の切削面である表面は、その面積の大部分を複合基材1が占めることとなり、かつ、底部3a側に複合基材1が位置することとなる。これにより、上述のように、目地溝3の表面でのささくれ立ちや透明樹脂の浸透を、より効果的に低減できる。
尚、目地溝3の断面形状は、図例のようなV溝状に限られず、U溝状、半円状、上方に開口した倒コ字状等、種々の形状としてもよい。
【0030】
上記表面保護層4は、上記目地溝3内に充填して形成された目地溝充填部4aと、該目地溝充填部4aが形成された以外の板状体11の表面11aに薄塗膜状に形成された薄塗膜部4bとからなり、上記板状体11の表面11aの全面に亘って形成されている。また、該表面保護層4の表面、すなわち、当該板状建材10自体の表面10aが略平滑となるよう形成されている。
この表面保護層4を形成する塗料は、透明樹脂を主剤とした塗料であればどのようなものでもよいが、生産性や環境面等の観点から無溶剤の紫外線硬化型塗料としてもよい。このように無溶剤の塗料とすることで、揮発成分が殆ど無く、目地溝3への透明樹脂の充填が効果的になされる。
上記のような無溶剤の紫外線硬化型塗料としては、ウレタンアクリレート系やエポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系等のアクリレート系樹脂を主剤とし、光開始剤(光重合開始剤)等の添加剤が添加されたものとしてもよい。
また、突板2の素材感を阻害することがないよう低光沢(艶消し仕上げ)のものとしてもよい。
【0031】
また、上記塗料により形成される表面保護層4の塗膜厚(目地溝3の形成されていない薄塗膜部4bにおける塗膜厚)は、10μm〜100μm程度としてもよい。
これにより、突板2が本来有する木目の美観性、素材感を阻害することなく、板状建材10の表面の耐水性や耐汚染性等を向上させることができる。上記表面保護層4の塗膜厚が、10μm未満であると、耐水性や耐汚染性等が低減する傾向があるとともに、使用状況等によっては剥離し易くなる傾向がある。また、上記表面保護層4の塗膜厚が、100μmを超えると、肉持ち感が出てしまい、突板2が本来有する素材感(木質感)が損なわれる傾向があるからである。
【0032】
上記複合基材1の裏面1bに固着された木質基板6としては、合板やパーティクルボード、MDF等の木質繊維板などの木質系材料を板状に加工したものが挙げられる。
本実施形態では、板状建材10を床材に適用した例を示しているので、上記木質基板6の端部には、図1(a)に示すように、複数枚の隣接する床材同士を連結するための雄実部6a及び雌実部6bが形成されている。
尚、例えば、リフォーム用建材として、既設の床材や壁材等の表面に貼着する場合は、上記木質基板6を備えていないものを板状建材10として把握することも可能である。すなわち、複合基材1と紙材5を介して貼着された突板2とにより構成される板状体11を、板状建材10として把握するようにしてもよい。或いは、複合基材1を比較的、厚く形成して、その板状体11を板状建材10として把握するようにしてもよい。
【0033】
次に、本実施形態に係る前記板状建材(床材)10の製造方法の一例を図2(a)〜(d)に基づいて説明する。尚、図2(a)〜(d)に示す各図では、図1(b)において示した箇所に対応する箇所を模式的に示している。
【0034】
まず、図2(a)に示すように、複合基材1を製造する。本例では、ポリプロピレン(熱可塑性樹脂)及びマレイン酸変性ポリプロピレン(相溶化剤)に、マイカ(無機フィラー)、木粉及び着色剤を添加して、二軸混練押出機にて0.6mm厚の成形板を成形するようにしている。
上記各材料の配合割合は、例えば、ポリプロピレンを37質量%、マレイン酸変性ポリプロピレンを3質量%、マイカを50質量%、45メッシュの木粉を10質量%としてもよく、これに、所定量の着色剤を添加するようにしてもよい。この着色剤は、上述のように、突板2と同系色となるようなものとすることが好ましい。
【0035】
次いで、上記成形板の表面に、接着剤の接着性及びぬれ性を向上させるための表面処理として、コロナ放電処理を施し、厚さ50μmの紙材5に湿気硬化型ウレタン系接着剤を塗布して、例えば、ロールラミネーターを用いて圧締して、図2(b)に示すように、上記成形板の表面に上記紙材5を貼着する。
このように紙材5が貼着された成形板を、所望する板状建材10の大きさに合わせて、所定の大きさに裁断して、紙材5が表面1aに貼着された複合基材1が形成される。
【0036】
次いで、図2(c)に示すように、木質基板6として、例えば、所定の大きさとされ、端部に上記した雄実部6a及び雌実部6bが形成された合板6の表面に、水性ビニルウレタン系接着剤を塗布し、上記複合基材1を載置して、常温で硬化させて合板6の表面に複合基材1を貼着する。
さらに、上記複合基材1の表面1aに貼着された紙材5に、ラテックス系接着剤等のエマルジョン系接着剤を塗布し、細長状の複数枚の突板2を、それぞれの端部を突き合わせて紙材5上に載置して、熱プレスにて硬化させて貼着する。
このように、複合基材1の表面1aに、紙材5を介して突板2を貼着した後、図2(d)に示すように、突板2の上記突合せ端部に形成された継ぎ目2b(図2(c)参照)に沿って、板状体11の表面11aに、上記のように目地溝3(図例では縦目地溝3A)を形成する。
【0037】
次いで、上記のように目地溝3が形成された板状体11の表面11aに、ロールコーターによって塗装を施して、図1(b)に示すように、表面保護層4を形成する。
該表面保護層4の形成は、例えば、以下のように重ね塗りにより形成するようにしてもよい。
下塗りとして、無溶剤の紫外線硬化型塗料を、スポンジロールで塗布した後、金属リバースロールでかきとって、2.5g/尺塗布し、さらに、ゴムロールにて、同塗料を、0.8g/尺塗布した後、公知の紫外線光源を用いて紫外線を照射して硬化させる。
上記塗料を硬化させた後、表面の未硬化分の塗料を除去するため、また、後記する中塗り塗料を効果的に定着させるために、例えば、320番手程度の研磨紙(サンドペーパー)等によりサンディング処理をして、表面処理をするようにしてもよい。
【0038】
次いで、中塗りとして、無溶剤の紫外線硬化型塗料を、スポンジロールで塗布した後、金属リバースロールでかきとって、1.5g/尺塗布し、紫外線を照射して硬化させ、上記同様の表面処理をする。この工程を、3回繰り返し、さらに、ゴムロールにて、同塗料を、1.0g/尺塗布した後、紫外線を照射して硬化させ、上記同様の表面処理をする。
上記のように、スポンジロールによる塗布と、金属リバースロールによるかきとりによって、目地溝3内にも紫外線硬化型塗料が充填される。
【0039】
さらに、上塗りとして、無溶剤の艶消しの紫外線硬化型塗料を、ゴムロールで0.8g/尺塗布し、上記同様、紫外線を照射して硬化させる。
このように重ね塗りされて形成された表面保護層4の塗膜厚(薄塗膜部4bにおける塗膜厚)は、本例では、50μm程度としている。
以上の工程を経て、図1(a)に示す床材10が製造される。
尚、上記例で示した製造工程の順序や複合基材1を構成する各材料の配合割合、各部材を接合するための接着剤の種類、塗料の塗布方法等は、一例であり、他の順序、他の配合割合としてもよく、また、接着剤の種類、塗料の塗布方法等についても適宜、公知の接着剤、塗布方法の採用が可能である。
【0040】
以上のように本実施形態に係る板状建材10は、板状体11の表面11aに形成された目地溝3に、透明樹脂を充填して、当該板状建材10の表面10aを略平滑にしているので、当該板状建材10の表面10aの意匠性を阻害することなく、目地溝内への塵埃や汚れ等の付着を防止できる。すなわち、目地溝3に充填されて形成された目地溝充填部4aは、透明であるので、表面10aを略平滑としながらも、目地溝3を形成したことによる当該板状建材10の表面10aの立体感が視覚的には失われず、当該板状建材10の表面10aの意匠性が向上される。また、当該板状建材10の表面10aは、透明樹脂が充填された目地溝3の部位を含んで、略平滑となるように表面保護層4が形成されているので、清掃性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、上記複合基材1は、上記のように、木粉・プラスチック複合材で製されているので、木質材料で製されたものと比べて、吸放湿や温度変化による当該板状建材10の膨張、収縮が低減され、施工後に寸法変化等が生じ難い板状建材10となる。
さらに、本実施形態では、上記目地溝3に充填されて形成された目地溝充填部4aは、当該板状建材10の表面保護層4と一体的に形成されているので、上記のように、目地溝3への透明樹脂の充填工程を、表面保護層4の形成とともに行えるので、形成工程の簡略化が図れる。
さらにまた、上記目地溝3に充填される透明樹脂が表面保護層4と一体的に形成されるので、当該板状建材10の表面10aにおいて、目地溝3の部位と、他の部位とに色調の不連続性等が形成されず、意匠性に優れたものとなる。
また、本実施形態では、上記板状体11の表面11aに形成した表面保護層4は、薄塗膜状としているので、突板2が本来有する美観性、素材感(木質感)が損なわれず、デザイン性及び手触り性等に優れたものとなる。
【0042】
尚、本実施形態では、板状体11の表面11aに、縦目地溝3Aと横目地溝3Bとを形成した例を示しているが、横目地溝3Bを形成せずに、板状体11の長手方向かつ複合基材1の押出方向と同方向に沿って形成した縦目地溝3Aのみとしてもよい。
また、本実施形態では、複合基材1の表面1aに紙材5を介して突板2を貼着した例を示しているが、紙材5を介さずに、複合基材1の表面1aに直接、突板2を貼着するようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、目地溝3の形成対象を、突板2と、複合基材1とからなる板状体11としているが、このような積層された板状体11とせずに、化粧単板等の単板に、目地溝を形成し、該目地溝を含んで上記同様の表面保護層を形成するような態様としてもよい。
【0043】
さらにまた、本実施形態では、板状体11の表面11aに形成した目地溝3に充填された透明樹脂を、該板状体11の表面11aに形成した表面保護層4と一体的に形成するようにしているが、このような態様に限られない。例えば、目地溝3に透明樹脂を充填した後、表面保護層を形成するような態様としてもよい。或いは、目地溝3にのみ透明樹脂を充填するような態様、すなわち、表面保護層を板状体11の表面11aの全面に亘って設けないような態様としてもよい。これらの態様では、目地溝3に沿って、上記同様の塗料をビード状に塗布したり、薄円盤状のロールで塗布したりするようにしてもよい。
また、本実施形態では、突板2の素材感を現出させるために、突板2の表面2aに透明な塗料を塗布して表面保護層4を形成する態様を例示しているが、例えば、板状体の表面に目地溝を切削形成し、該目地溝内の表面を含んで該板状体の表面に、木目模様や石目模様等の各種、模様を施し、その上に、上記同様の表面保護層を形成する態様としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(a)、(b)は、いずれも本発明に係る板状建材の一実施形態を模式的に示し、(a)は、概略斜視図、(b)は、(a)におけるX−X線矢視概略部分拡大縦断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、いずれも同板状建材の形成工程の一例を説明するための概略部分拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 複合基材(基材)
1a 複合基材の表面
2 突板(化粧材)
3 目地溝
3A 縦目地溝
3B 横目地溝
3a 目地溝の底部
4 表面保護層
10 床材(板状建材)
10a 床材の表面(板状建材の表面)
11a 板状体の表面(目地溝が形成された表面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に形成された目地溝に、透明樹脂を充填して、表面を略平滑にしていることを特徴とする板状建材。
【請求項2】
請求項1において、
木粉・プラスチック複合材で製された基材と、該基材の表面に貼着された化粧材とを備え、前記目地溝は、底部が前記基材の層内に達するように形成されていることを特徴とする板状建材。
【請求項3】
請求項2において、
前記基材は、当該基材の全質量に対して、40質量%以上の無機フィラーと、5質量%〜30質量%の木粉とを含有していることを特徴とする板状建材。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記基材には、前記化粧材と同系色となるよう着色が施されていることを特徴とする板状建材。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項において、
前記基材は、押出成形により形成されており、前記目地溝は、その押出方向に沿って形成されていることを特徴とする板状建材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項において、
前記目地溝に充填された透明樹脂は、当該板状建材の表面保護層と一体的に形成されていることを特徴とする板状建材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−47928(P2010−47928A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211606(P2008−211606)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】