説明

板状構成材を積層するための積層方法

【課題】公知の方法の改善によってさらに優れた作業成果の達成または真空積層プレスに要されるサイクル時間の短縮、あるいはその両方を実現する。
【解決手段】気密に区画すると共に圧力差によって上下に変位する押付手段を備えた真空チャンバ内に構成材が装入され、真空チャンバは排気され、構成材が給気や圧力付与によって構成材側に押し付けられることにより、加工熱が構成材に伝達され、接着剤層は加熱され軟化し、活性化温度に達すると、押付手段による所定の積層荷重の作用下で活性化される。その際、構成材は真空チャンバ内に装入された後、先ず、押付手段によって所定の積層荷重の約2%から約10%までに相当する微小積層荷重が加えられると同時に、構成材は接着剤層の活性化温度以下に保たれ、その後に構成材から微小積層荷重が取り除かれ、次に、構成材は接着剤層の活性化温度にまで加熱されて、押付手段によって積層荷重が加えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールなどを構成するための実質的に板状の構成材を、少なくとも1つの熱活性化接着剤層を含め、熱圧作用下で積層するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の方法に際しては、通常は1つの真空チャンバ、または多段式の場合複数の真空チャンバを有する単段または多段真空積層プレスが使用される。真空チャンバは、真空チャンバを開閉するために相対可動する上側ハーフチャンバと下側ハーフチャンバとによって構成される。真空チャンバは押付手段によって気密に区画された空間を作り出し、さらにこの押付手段は真空チャンバ内の圧力差によって上下方向に変位する。
【0003】
一般に、この押付手段は、真空チャンバを、少なくとも1つの構成材を収容するために設けられた排気可能な製品(構成材)側空間と、排気可能なまたは加圧可能なあるいはその両方が可能な加圧・減圧空間とに区画する柔軟なダイヤフラムを含む。製品側空間の排気によってまたは加圧・減圧空間の圧力付与によってあるいはその両方によって作り出される真空チャンバ内の圧力差により、柔軟なダイヤフラムは構成材に圧接され、その結果、ダイヤフラムは真空チャンバを限界するプレート(これは通例、真空チャンバの下側面であるが場合によっては、プレートと構成材の間にさらにコンベアベルトが設けられていることがある)に向かって構成材を直接または間接に押し付けることで、積層に必要な荷重が構成材に加えられる。多くの場合、真空チャンバの下側面であるこのプレートはヒートプレートによって形成されているために、積層に必要な加工熱はプレス工程に際して構成材に直接伝達される。
【0004】
この種の積層方法では、1つの構成材、特に太陽電池モジュールとなる複数の構成材(以下、構成材の数が1つであっても複数であっても、これらを単に構成材と称する)は同時に当該使用真空積層プレスの真空チャンバ内に装入されると、真空チャンバが閉じられる。次に、真空チャンバは排気され、押付手段は真空チャンバ内の構成材が収容されてない側のハーフチャンバの給気によってまたは圧力付与によってあるいはその両方によって構成材に圧接され、これにより、構成材は真空チャンバを境界付けているプレートに向かって直接または間接に押し付けられる。このプレートは、通例、真空チャンバの下側面となる。
【0005】
積層プロセスに必要な加工熱は、通例、真空チャンバの下側面がヒートプレートとして形成されているこの面に構成材が押付手段によって押し付けられることによって、構成材に伝えられる。これにより、圧力と加工熱とが連携して接着剤層の軟化ないし活性化が実現されると共に、場合により、接着剤層の硬化ないし架橋反応も達成される。ただし、その他の方法による加工熱の伝達も採用可能である。
【0006】
通常、真空チャンバの排気は、先ず、押付手段の上側に位置する真空チャンバ内の加圧・減圧空間に対して行われ、これにより、押付手段が上側ハーフチャンバに向かって上方に引っ張られる。その後、一定時間の経過後、押付手段の下側に位置する、構成材を収容した製品側空間も排気される。その際、加圧・減圧空間と製品側空間の間の圧力差が維持されることによって、押付手段が上側ハーフチャンバ側に保持され、押付手段が構成材と早期に接触することがないように、真空チャンバ内の双方の空間の排気が制御される。
【0007】
真空チャンバ内の製品側空間が一般に1mbar以下の目標圧力にまで排気された後に、加圧・減圧空間の給気が行われるため、加圧・減圧空間と製品側空間の間の圧力差は逆転し、押付手段は構成材に圧接される。その結果、積層に必要な荷重を構成材に及ぼすべく、加圧・減圧空間内の気圧の制御によって押付手段に所望される圧接力が調節される。
【0008】
この場合、従来の技術によれば、真空チャンバ内の特に製品側空間は急速に、しかも構成材が顕著に加熱される前に、いずれにせよ、接着剤層の粘着作用が活性化される前に排気されなければならない。これによって、場合により生ずる空気の封じ込め(構成材の各層間の残留空気)または場合により加熱時に形成されたプロセスガスを接着剤層の接着剤の硬化ないし架橋が開始される前に構成材から抜き出すことが可能になる。これにより、完成積層済みの構成材に含まれた気泡によって積層製品の耐久寿命は大幅に損なわれ、あるいは最悪の場合には、当該積層済み構成材の即時使用不能したがって欠陥品の製造が招来されることが回避される。これは太陽電池モジュールの場合に特に重要である。
【0009】
国際公開第94/29106号公報(特許文献1)には、硬化性接着剤層を含んでいる太陽電池モジュールを熱圧作用下で積層する方法が開示されている。ここでは、真空チャンバを製品側ハーフチャンバと加圧・減圧側ハーフチャンバとに区画する柔軟な押付手段としてのダイヤフラムが配置された真空積層プレスが使用される。加工熱(積層時の熱)は、キャリアプレートを通じて構成材に間接的に作用するヒートプレートによって、太陽電池モジュールに伝達される。真空チャンバが閉じられた後、該チャンバは、太陽電池モジュールから、太陽電池モジュールが顕著に加熱される前に、残留空気ならびにその他のガスを抜き出すため、急速に排気される。その後、真空チャンバのダイヤフラムの上側に位置する加圧・減圧側ハーフチャンバが給気され、これにより作り出された圧力差によってダイヤフラムは構成材に荷重を及ぼすと共に、ヒートプレートから構成材への熱伝達を開始するか、あるいは熱伝達の付加的な促進を実現する。
【0010】
上記の国際公開第94/29106号公報(特許文献1)に開示された方法において、太陽電池モジュールは真空積層プレスにおいて予備的に積層されるだけである。次に、真空チャンバは冷却プロセスなしで開放され、予備的に積層された構成材は硬化炉に移送され、同所で接着剤層は高温にて硬化される。この場合、太陽電池モジュールに通例使用される接着剤層は硬化ないし架橋反応の開始後に早くも高い粘着作用を発揮するため、構成材の外部から構成材の個々の層間への空気の侵入を懸念する必要が早期になくなってしまう。したがって、その後の積層は真空下で行われなくなる。構成材は接着剤層が完全に硬化ないし架橋完了するまで真空積層プレス内に留まっている必要がなく、その後の硬化ないし架橋反応は硬化炉にて行われることが可能となれば、真空積層プレスのサイクル数と共に設備全体の加工速度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第94/29106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、従来の技術から出発して、上述した公知の方法の改善によってさらに優れた作業成果の達成または真空積層プレスに要されるサイクル時間の短縮、あるいはその両方を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
太陽電池モジュールなどの、少なくとも1つの熱活性化接着剤層を含んでいる実質的に板状の構成材を熱圧作用下で積層する積層方法において、上記目的を達成するため、本発明では、真空チャンバを気密に区画すると共に圧力差によって上下に変位する押付手段を備えた真空積層プレスの真空チャンバ内に1つ以上の構成材が装入され、前記真空チャンバは排気され、前記真空チャンバのうち構成材が存在しない方の区画に対する給気または圧力付与あるいはその両方によって前記押付手段は前記構成材側に押し付けられ、その結果、前記構成材は前記真空チャンバの上側面および下側面を形成するプレートに向かって直接または間接に押し付けられることにより、加工熱が前記構成材に伝達され、この熱伝達によって前記接着剤層は加熱されると共にそれによって軟化し、活性化温度に達すると、前記押付手段による所定の積層荷重の作用下で活性化され、さらにその際、前記構成材は前記真空チャンバ内に装入された後、先ず、前記押付手段によって所定の積層荷重の約2%から約10%までに相当する微小積層荷重が加えられると同時に、前記構成材は前記接着剤層の活性化温度以下に保たれ、その後に前記構成材から前記の微小積層荷重が取り除かれ、次に、前記構成材は前記接着剤層の活性化温度にまで加熱されて、前記押付手段によって積層荷重が加えられる。
【0014】
本発明による方法では、真空チャンバ内に装入された後、板状構成材(以下単に構成材と称する)に先ず押付手段によって積層荷重の約2%から約10%までに相当するごく微小積層荷重、これは好ましくは約20mbarから約200mbarまで、さらに好ましくは約50mbarから約100mbarまでの比面積荷重に相当する、が加えられるとの点で、従来の方法とは異なっている。その際、構成材は接着剤層の活性化温度以下の温度に保たれる。その後、上記の微小積層荷重は再び構成材から取り除かれる。その後に初めて、構成材は接着剤層の活性化温度にまで加熱され、押付手段によって構成材に積層荷重が加えられる。好適には、押付手段は先ず構成材をヒートプレートに向かって押し付けるとよい。これによって、構成材は速やかに加熱され、構成材の接着剤層は急速に活性化温度に達する。
【0015】
本発明の好適な実施形態において、上記の微小積層荷重を加える前または加えている間に、構成材を、接着剤層の軟化は生ずるが接着剤層の活性化温度には達していない予熱温度に加熱するのが好ましい。このような予熱は構成材に微小積層荷重を加えることによって実現可能であるが、これによって構成材が、好ましくはヒートプレートに押し付けられることにより、ヒートプレートから構成材への良好な熱伝達が可能となるからである。ただし、本発明の別な好適実施形態として、構成材をそれが真空チャンバ内に装入される前に予熱温度に加熱することも可能である。これは、予め構成材に熱エネルギーが付与されているために真空チャンバ内で構成材にそのような熱エネルギーを与える必要がないことから、真空積層プレスのサイクル時間を短縮するのに有用である。
【0016】
本発明では、排気時に従来の接着剤層、たとえば特にエチレン酢酸ビニル共重合体シート(EVAシート)から発生するガス、このガスは従来の技術においては接着剤層が顕著に軟化して粘着作用を開始するようになる前に最初に吸引しておく必要があるが、排気によってその周囲圧力が大幅に低下してしまうので、このガスの大半は接着剤層から発生しているとみなしている。したがって、従来の技術における、自らの排気は、不都合な作用を発揮させないようにするために排気によって吸引されなければならないガスの大半をつくり出していることになる。
【0017】
本発明によれば、構成材に微小積層荷重を加えることにより、接着剤層からのプロセスガスの放出を引き起こすことなく、真空チャンバを排気することが可能である。なぜなら、付与される積層荷重が僅かであることにより、これらのプロセスガスは、本発明の好適な実施形態の1つによって提案されているように、構成材がすでに接着剤層が軟化するに至るまで予備加熱される場合もしくは微小積層荷重が加えられることによって予備加熱される場合においても、接着剤層中に溶存したままとなるからである。
【0018】
さらに、従来の技術による接着剤層からのプロセスガスの発生ならびに吸引除去は、接着剤層が接着剤層中に残存していることが望ましい添加剤を含んでいることが多いことから、短所となることがある。粘着物質としてEVAが使用される場合には、たとえばペルオキシドが所望の架橋重合反応の反応体として使用される。熱可塑性プラスチックが接着剤層として使用される場合には、同じく吸引除去されてはならない軟化剤および定着剤が揮発性添加剤として添加されている。微小積層荷重は、特に、通常の太陽電池モジュールの接着剤層中の揮発性含有物質を溶存したままに保ち、それらのガス化を妨げるだけでなく、さらに、構成材、特に太陽電池モジュールの個々の構成材の間にすでにガス状で存在している残留空気が構成材から側方に追い出されて、真空チャンバの排気によって吸引除去されることも実現する。これは、接着剤層が軟化して粘着作用が開始されるほどに構成材がすでに予熱されている場合にも十分に機能を発揮する。
【0019】
本発明の好適な実施形態の1つでは、真空チャンバは構成材に微小積層荷重が加えられる前にすでに排気されるまたはこうした付加荷重が加えられている間に排気される。前述したように、本発明による微小積層荷重は、構成材が予熱温度にまで予熱されたまたは予熱される場合にも、接着剤層からのガス放出の発生を防止する。しかも、それにもかかわらず、構成材中になお存在しているその他のガス、たとえば特に残留空気は確実に吸引除去される。これによって、構成材中の気泡形成は顕著に減少すると共に、本発明による方法の作業成果は従来の技術による方法のそれに比較して改善している。
【0020】
構成材に微小積層荷重が加えられる前もしくはそのような微小積層荷重が加えられている間に真空チャンバをたとえば約150mbar、好ましくは約5mbarに達する前段真空までのみ排気し、構成材からそうした微小積層荷重が取り除かれた後に初めて真空チャンバを、押付手段が構成材に積層荷重を及ぼして、本来の積層プロセスが開始される前に、完全に、特に1mbar以下に排気するのが好適である。
【0021】
本発明の好適な実施形態の1つでは、積層荷重は、構成材の接着剤層が活性化温度の約70%から約100%までの温度に達すると、直ちに構成材に加えられてよい。というのも、接着剤層は先ず活性化温度の約70%に相当する温度に達すると、機械的圧力を全方向に均等に分散させる粘流動状態に達することが認識されたからである。太陽電池モジュールにふつう使用される個々のシリコン太陽電池は極めて壊れやすい。したがって、シリコン太陽電池層を有する太陽電池モジュールに、接着剤層がまだ軟化していない段階で荷重が加えられる場合、個々のシリコン太陽電池は確実に破壊されることになる。ただし、接着剤層が軟化して、個々の太陽電池が相応して低粘性物質中に包封されている場合には、積層に必要な荷重を、個々の太陽電池が破壊される恐れなしに、太陽電池モジュールに加えることが可能である。
【0022】
これに関連して、積層プロセス時に流動状態となる物質中に太陽電池層が完全に包封されるようにするだけの十分な量の接着材料が使用される場合には、個々のシリコン太陽電池さえも、従来の技術において通例のかなり高い積層荷重が選択されようとも、破壊されることがないことが判明した。従来の技術において、真空積層プレスによる積層はおおよそ周囲圧力に等しい比面積荷重にて、したがって、通例約1000mbarにて行われる。さらには、本発明の好適な実施形態の1つでは、好ましくは周囲圧力を上回る比面積圧力による積層荷重、したがって、約1020mbarを上回る、しかも、好ましくは、約1500mbarから約2000mbarまでの比面積圧力による積層荷重にて積層するのが好ましい。これは、押付手段によって気密に区画された真空チャンバのうち、構成材が収容されていないチャンバ区画が給気されるだけでなく、同所に意図的に高圧が加えられることによって行われる。
【0023】
その際、本発明では、積層荷重の高まりによって架橋反応ないし硬化速度が高まるだけでなく、それにより、高温によって接着剤層中に発生するプロセスガスならびに場合によりなお存在する残留空気さえも硬化中ないし架橋反応中の接着剤層内に溶存された状態で保たれるまたは溶存されることになるとみなしている。これによって、構成材中の不適な気泡形成が従来の技術におけるよりも効果的に防止されることが認識された。したがって、従来の技術に比較して著しく高められた積層荷重を作用させる方策により、一方でさらなる作業成果の改善が、他方でサイクル時間のさらなる短縮化が達成される。
【0024】
本発明の好適な実施形態の重要な要点は、本発明によって予熱された構成材を、真空チャンバ内において十分に形成された真空下で、使用された接着剤層の活性化温度を上回る、好ましくは約110℃を上回る、さらに好ましくは120℃を上回る加工温度にて、かつ、少なくとも約900mbarから約1000mbarまで、好ましくは1020mbarから約2000mbarまでの比面積荷重に等しい積層荷重の作用下で積層し、この積層プロセスを、構成材を気密封入被覆する接着剤層の第1の粘着作用の発生後に中断し、次に、構成材を後置されたラミネータに移送し、同所で加工温度下および同一のまたは高められた積層荷重下でさらに積層を継続する点にある。
【0025】
本発明による微小積層荷重の付与が、すでに真空チャンバの排気時に、構成材の予熱と組み合わされ、しかも、予熱が真空チャンバ外で行われるか、または、好ましくは、微小積層荷重の負荷時に行われる場合、真空積層プレスにおける積層プロセスのサイクル時間は短縮される。上述したように、これはさらに従来の技術によるよりも通例著しく高められた積層荷重の付与を採用したことによって増強可能である。さらに、このような高い積層荷重は、構成材が予熱されていれば、従来可能であったよりも早期に構成材に作用させることが可能であり、しかもそれによって本発明による積層方法の主たる適用分野である、太陽電池モジュールの積層処理時に個々の太陽電池の破損を招来するリスクが回避される。
【0026】
かくて、真空積層ブレスにおけるサイクル時間の短縮は、構成材が気密封入被覆された後に積層プロセスが中断されて、構成材は後置されたラミネータに移送され、同所で加工温度および積層荷重下でさらに積層が継続される場合、積層時間全体の短縮化に最適利用されることになる。
【0027】
本発明による方法のさらに別の好適実施形態によれば、後置されたラミネータにおける高荷重での積層プロセスも接着剤層が完全に硬化ないし架橋完了するまでは持続されない。むしろ、このプロセスも中断されて、なお積層未完成の構成材は、それ自体は公知である硬化炉に移送され、同所でさらに完全に硬化ないし架橋完了させることが可能である。このようにして、本発明によって可能となる真空積層プレスにおける非常に短いサイクル時間を、後置されたラミネータにおいても維持することが可能であり、これによって、プロセス全体が非常に高速化されることになる。
【0028】
プロセス速度をいっそう高めるため、それ自体は知られているが、積層プロセスが完全に実施された後に構成材が段階的に冷却される冷却ステーションを最終段に設けてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明による方法の1つの実施例を詳細に記述して、説明することとする。
カバーガラスと、互いに接続された個々のシリコン太陽電池からなる1つの層(構成材)と、背面シート(構成材)と、さらに、カバーガラスと太陽電池層の間ないし太陽電池層と背面シートの間にそれぞれ介装された熱活性化接着剤層(構成材)としてのEVAシートとを含んでいる太陽電池モジュールが本発明によって構成された方法で積層された。
【0030】
先ず、上記の各層(構成材)が互いに重ねられて、この積層体が真空積層プレスの真空チャンバ内に装入された。この従来のタイプの真空積層プレスは、下側ハーフチャンバと上下に可動する上側ハーフチャンバとを有する1個の真空チャンバを含み、下側ハーフチャンバは実質的にヒートプレートによって形成されていた。上側ハーフチャンバには、上側ハーフチャンバならびに下側ハーフチャンバの両方を封止する周回式シールを備えたダイヤフラムフレームが配置され、このダイヤフラムフレーム全体に及んで柔軟なシリコンダイヤフラムが押付手段として張設されていた。上記の1つの積層体からなる構成材が、上記の真空チャンバの上側ハーフチャンバと下側ハーフチャンバの間を通り抜けて駆動するコンベアベルト上に載置され、真空チャンバ内に搬送装入された。この方法ステップに要した時間は約30秒であった。
【0031】
続いて、真空積層プレスは閉じられ、構成材はダイヤフラムで覆われて、約100mbarの微小積層荷重が加えられ、これにより生ずる構成材とヒートプレートとの接触によって約100℃の予熱温度に予熱された。この予熱過程に要した時間もまた約30秒であり、その際、同時に、ダイヤフラムとヒートプレートの間に位置する、構成材とコンベアベルトとを収容した製品側区画は約5mbarのガス圧まで排気された。
【0032】
上記のさらなる30秒間にわたる予熱過程の後に、ダイヤフラムは構成材から持ち上げられて引き離されたため、ヒートプレートから構成材への熱伝達も大幅に緩慢化され、製品側空間は積層に必要な1mbarを下回る真空レベルにまで排気された。この排気は約90秒間持続され、その際、構成材の温度は放射熱効果と低い伝熱効果とによって約100℃(予熱温度)から約120℃に上昇した。
【0033】
120℃の温度に際してすでにEVAシートの活性化温度は到達されていたために、続いて即座に、ダイヤフラムが再び構成材に被せられ、ダイヤフラムの上側の加圧・減圧空間が給気されることにより、本来の積層プロセスが開始されることにより、ダイヤフラムにより積層荷重として1000mbarをかろうじて上回る比面積荷重が構成材に付与された。この場合、構成材の加工温度も150℃に高まった。1000mbarをかろうじて上回る積層荷重と約150℃の加工温度下での構成材のこうした積層は約60秒間実施されたため、この時点までに総計約3.5分間に及ぶ第1の処理工程が経過した。
【0034】
上記の時間が経過した後、真空積層プレスの真空チャンバは完全に給気され、プレスが開放されて、積層プロセスは中断された。これに続いて行われた、後置されたラミネータへの移送は約30秒以内で実施されたため、構成材の温度は明白な低下を示さなかった。構成材がその内部で引き続き約150℃の加工温度に保たれていたラミネータが閉じられた後、ラミネータ内で構成材に2000mbarまでに達する高い荷重が加えられた。その際、この圧力付与は約30秒以内で行われ、この高荷重ならびに加工温度の作用は約3分間保持された。
【0035】
またも約3.5分間に及ぶ上記の第2の仕事行程が経過した後、ラミネータは開放され、構成材は、冷却を防止するため、約30秒以内で硬化炉に移送され、同所で加圧なしで加工温度に保たれ、積層プロセスは完了した。これに要した時間は約3.5分間であった。
【0036】
したがって、本発明による方法の上記実施形態は、それぞれ約3.5分間の3つの加工ステップからなる超短加工工程によるプロセスである。これらの加工ステップがそれぞれ多段ラミネータで実施されれば、非常に高い処理能力が得られる。本願出願人の一連のテストにおいて、単結晶シリコン太陽電池層を有した太陽電池モジュールは上述の積層方法によって、気泡も歪みも、さらに個々の太陽電池の破損も生ずることなく、積層された。
【0037】
以下に本発明による積層方法の好適な実施形態例を列挙しておく:
(1)前記構成材が、前記の微小積層荷重が加えられる前または加えられている間に、前記接着剤層の軟化は生ずるが、前記接着剤層の活性化温度には達していない予熱温度にまで加熱される。
(2)前記予熱温度までの加熱が、前記構成材内の前記接着剤層が約80℃から約120℃まで、好ましくは約80℃から約100℃まで実施される。
(3)前記真空チャンバが、前記構成材に前記の微小積層荷重が加えられる前または加えられている間に排気される。
(4)前記真空チャンバが、前記の微小積層荷重が加えられる前または加えられている間に前段真空までのみ排気され、前記真空チャンバが、前記の微小積層荷重が前記構成材から取り除かれた後に初めて、ただし前記押付手段が前記構成材に積層荷重を加える前に、完全に排気される。
(5)前記構成材が、1020mbarを上回る、好ましくは1500mbarから約2000mbarまでの比面積圧力による積層荷重にて積層される。
(6)前記積層荷重が、前記構成材の前記接着剤層がその活性化温度の約70%から約100%までに相当する温度に達してから、前記構成材に加えられる。
(7)前記真空積層プレスにおける前記構成材の積層が、前記構成材を気密封入被覆する前記接着剤層の第1の粘着作用の発生後に中断されて、前記構成材は後置されたラミネータに移送され、同所で、前記接着剤層の活性化温度もしくはそれを上回る温度にて、同時に、積層荷重下もしくはそれを上回る荷重下にて、さらに積層が継続される。
(8)前記構成材が、前記ラミネータ中でのさらなる積層の後に硬化炉に移送され、同所で、前記構成材は、荷重が加えられることなく、熱処理に付される。
(9)前記の微小積層荷重が、約20mbarから約200mbarまで、特に約50mbarから約100mbarまでの比面積圧力に相当している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの熱活性化接着剤層を含んでいる板状の構成材を熱圧作用下で積層するための方法であって、真空チャンバを気密に区画すると共に圧力差によって上下に変位する押付手段を備えた真空積層プレスの真空チャンバ内に1つ以上の構成材が装入され、前記真空チャンバは排気され、前記真空チャンバのうち構成材が存在しない方の区画に対する給気または圧力付与あるいはその両方によって前記押付手段は前記構成材側に押し付けられ、その結果、前記構成材は前記真空チャンバの上側面および下側面を形成するプレートに向かって直接または間接に押し付けられることにより、加工熱が前記構成材に伝達され、この熱伝達によって前記接着剤層は加熱されると共にそれによって軟化し、活性化温度に達すると、前記押付手段による所定の積層荷重の作用下で活性化される積層方法において、
前記構成材は前記真空チャンバ内に装入された後、先ず、前記押付手段によって所定の積層荷重の約2%から約10%までに相当する微小積層荷重が加えられると同時に、前記構成材は前記接着剤層の活性化温度以下に保たれ、その後に前記構成材から前記の微小積層荷重が取り除かれ、次に、前記構成材は前記接着剤層の活性化温度にまで加熱されて、前記押付手段によって積層荷重が加えられることを特徴とする積層方法。
【請求項2】
前記構成材が、前記の微小積層荷重が加えられる前または加えられている間に、前記接着剤層の軟化は生ずるが、前記接着剤層の活性化温度には達していない予熱温度にまで加熱されることを特徴とする請求項1に記載の積層方法。
【請求項3】
前記予熱温度までの加熱が、前記構成材内の前記接着剤層が約80℃から約120℃まで、好ましくは約80℃から約100℃まで実施されることを特徴とする請求項2に記載の積層方法。
【請求項4】
前記真空チャンバが、前記構成材に前記の微小積層荷重が加えられる前または加えられている間に排気されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層方法。
【請求項5】
前記真空チャンバが、前記の微小積層荷重が加えられる前または加えられている間に前段真空までのみ排気され、前記真空チャンバが、前記の微小積層荷重が前記構成材から取り除かれた後に初めて、ただし前記押付手段が前記構成材に積層荷重を加える前に、完全に排気されることを特徴とする請求項4に記載の積層方法。
【請求項6】
前記構成材が、1020mbarを上回る、好ましくは約1500mbarから約2000mbarまでの比面積圧力による積層荷重にて積層されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層方法。
【請求項7】
前記積層荷重が、前記構成材の前記接着剤層がその活性化温度の約70%から約100%までに相当する温度に達してから、前記構成材に加えられることを特徴とする請求項6に記載の積層方法。
【請求項8】
前記構成材の積層が、前記構成材を気密封入被覆する前記接着剤層の第1の粘着作用の発生後に中断されて、前記構成材は後置されたラミネータに移送され、同所で、前記接着剤層の活性化温度もしくはそれを上回る温度にて、同時に、積層荷重下もしくはそれを上回る荷重下にて、さらに積層が継続されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層方法。
【請求項9】
前記構成材が、前記ラミネータ中でのさらなる積層の後に硬化炉に移送され、同所で、前記構成材は、荷重が加えられることなく、熱処理に付されることを特徴とする請求項8に記載の積層方法。
【請求項10】
前記の微小積層荷重が、約20mbarから約200mbarまで、特に約50mbarから約100mbarまでの比面積圧力に相当していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層方法。

【公開番号】特開2012−116190(P2012−116190A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262266(P2011−262266)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(599098714)ロベルト・ビュルクレ・ゲー・エム・ベー・ハー (15)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BUERKLE GMBH
【住所又は居所原語表記】STUTTGARTER STRASSE 123, D‐72250 FREUDENSTADT, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
【Fターム(参考)】