説明

板状物の加工方法

【課題】分割後のチップ側面に残存する分割屑低減可能な半導体ウエーハの加工方法を提供する。
【解決手段】表面に複数のチップ領域を複数有する半導体ウエーハ11を分割予定ラインに沿って分割する加工方法であって、ウエーハに対して透過性を有するレーザ光をウエーハ内部のチップの仕上げ厚みに至らない領域t2に第1の出力で集光して、該分割予定ラインに沿って分割の起点となる第1改質層25を形成する工程と、その前又は後に、ウエーハ内部のチップの仕上げ厚み領域t1に第1の出力よりも低い第2の出力でレーザ光を集光して、分割を誘導する第2改質層23を形成する工程と、該ウエーハに外力を付与してチップに分割する工程と、少なくとも該分割工程を実施するまでの何れかの時点でウエーハの表面に粘着テープTを貼着し、さらに該分割工程を実施した後、ウエーハの裏面11bを研削してチップの仕上げ厚みへと薄化する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハ等の板状物に対して透過性を有する波長のレーザビームを照射して板状物内部に改質層を形成した後、改質層を起点に板状物を分割して複数のチップを形成する板状物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、LED等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたシリコンウエーハ、サファイアウエーハ等のウエーハは、加工装置によって個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン等の各種電気機器に広く利用されている。
【0003】
ウエーハの分割には、ダイシングソーと呼ばれる切削装置を用いたダイシング方法が広く採用されている。ダイシング方法では、ダイアモンド等の砥粒を金属や樹脂で固めて厚さ30μm程度とした切削ブレードを、30000rpm程度の高速で回転させつつウエーハへと切り込ませることでウエーハを切削し、個々のデバイスチップへと分割する。
【0004】
一方、近年では、ウエーハに対して透過性を有する波長(例えば1064nm)のレーザビームの集光点を分割予定ラインに対応するウエーハの内部に位置付けて、レーザビームを分割予定ラインに沿って照射してウエーハ内部に改質層を形成し、その後外力を付与してウエーハを個々のデバイスチップに分割する方法が提案されている(例えば、特許第3408805号公報参照)。
【0005】
改質層とは密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域のことであり、溶融再硬化領域、屈折率変化領域、絶縁破壊領域の他、クラック領域やこれらが混在した領域も含まれる。
【0006】
レーザ加工装置による改質層の形成は、ダイシングソーによるダイシング方法に比べて加工速度を早くすることができるとともに、サファイアやSiC等の硬度の高い素材からなるウエーハであっても比較的容易に加工することができる。また、改質層を例えば10μm以下等の狭い幅とすることができるので、ダイシング方法で加工する場合に対してウエーハ1枚当たりのデバイス取り量を増やすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1に開示されたような分割方法で分割されて形成されたチップ側面(分割断面)には分割屑が往々にして残存する。分割屑がチップ側面に残存していると、ピックアップ工程等の後工程で装置内部を分割屑で汚染してしまい、後に処理するウエーハまで汚染させてしまう恐れがある。
【0009】
ウエーハの表面にデバイスが形成されている場合には、分割屑がデバイスの表面に付着するとデバイス品質を低下させる上、後工程のボンディングやパッケージングに支障をきたすという問題がある。
【0010】
ウエーハに外力を付与して個々のチップに分割した後のチップ間には間隔がほぼないため、分割後にウエーハを洗浄してもチップ側面に残存する分割屑を除去することは非常に難しい。
【0011】
また、シリコンウエーハからなるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスウエーハは、一般的に非常に微細で脆弱な構造を有するため、一般的な流体による洗浄が実施できず、分割屑の付着は大きな問題となる。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、分割後のチップ側面に残存する分割屑を従来よりも低減可能な板状物の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、表面に設定された交差する複数の分割予定ラインで区画されるチップ領域を複数有した板状物を該分割予定ラインに沿って分割して複数のチップを形成する板状物の加工方法であって、板状物に対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点を板状物内部のチップの仕上げ厚みに至らない領域に位置付けて、該分割予定ラインに沿って該レーザビームを第1の出力で照射して分割の起点となる第1改質層を形成する第1改質層形成ステップと、該第1改質層形成ステップを実施する前又は後に、板状物に対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点を板状物内部のチップの仕上げ厚み領域に位置付けて、該分割予定ラインに沿って該レーザビームを該第1の出力よりも低い第2の出力で照射して分割を誘導する第2改質層を形成する第2改質層形成ステップと、該第1改質層と該第2改質層が形成された板状物に外力を付与して該分割予定ラインに沿ってチップに分割する分割ステップと、少なくとも該分割ステップを実施するまでの何れかのタイミングで板状物の表面に粘着テープを貼着するテープ貼着ステップと、該分割ステップを実施した後、板状物の裏面を研削してチップの仕上げ厚みへと薄化する薄化ステップと、を具備したことを特徴とする板状物の加工方法が提供される。
【0014】
好ましくは、第2の出力は第1の出力の1/2倍以下である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の加工方法では、まず、チップの仕上げ厚みには至らない領域に分割起点となる第1改質層を形成するとともに、チップの仕上げ厚み領域にはより低い出力で形成された第2改質層を形成する。次いで、板状物に外力を付与して第1改質層を起点に板状物を分割する。
【0016】
この時、板状物の表面側には第2改質層が形成されているため、分割時に発生する第1改質層を起点に伸長するクラックは第2改質層でガイドされて分割予定ラインに沿って板状物を分割できる。
【0017】
板状物を個々のチップに分割後、分割屑が多く残存するチップの仕上げ厚みに至らない領域は研削して除去するので、最終的に形成されるチップの側面に残存する分割屑を従来に比べて大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ウエーハ内部に改質層を形成するのに適したレーザ加工装置の概略斜視図である。
【図2】レーザビーム照射ユニットのブロック図である。
【図3】半導体ウエーハの表面側斜視図である。
【図4】テープ貼着ステップを示す分解斜視図である。
【図5】第2改質層形成ステップを示す断面図である。
【図6】第1改質層形成ステップを示す断面図である。
【図7】分割ステップを示す分割装置の縦断面図である。
【図8】薄化ステップを示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明の板状物の加工方法において、第1及び第2改質層を形成するのに適したレーザ加工装置2の概略斜視図が示されている。
【0020】
レーザ加工装置2は、静止基台4上にX軸方向に移動可能に搭載された第1スライドブロック6を含んでいる。第1スライドブロック6は、ボールねじ8及びパルスモータ10から構成される加工送り手段12により一対のガイドレール14に沿って加工送り方向、すなわちX軸方向に移動される。
【0021】
第1スライドブロック6上には第2スライドブロック16がY軸方向に移動可能に搭載されている。すなわち、第2スライドブロック16はボールねじ18及びパルスモータ20から構成される割り出し送り手段22により一対のガイドレール24に沿って割り出し方向、すなわちY軸方向に移動される。
【0022】
第2スライドブロック16上には円筒支持部材26を介してチャックテーブル28が搭載されており、チャックテーブル28は加工送り手段12及び割り出し送り手段22によりX軸方向及びY軸方向に移動可能である。チャックテーブル28には、チャックテーブル28に吸引保持されたウエーハを支持する環状フレームをクランプするクランプ30が設けられている。
【0023】
静止基台4にはコラム32が立設されており、このコラム32にはレーザビーム照射ユニット34を収容するケーシング35が取り付けられている。レーザビーム照射ユニット34は、図2に示すように、YAGレーザ又はYVO4レーザを発振するレーザ発振器62と、繰り返し周波数設定手段64と、パルス幅調整手段66と、パワー調整手段68とを含んでいる。
【0024】
レーザビーム照射ユニット34のパワー調整手段68により所定パワーに調整されたパルスレーザビームは、ケーシング35の先端に取り付けられた集光器36のミラー70で反射され、更に集光用対物レンズ72によって集光されてチャックテーブル28に保持されている光デバイスウエーハ11に照射される。
【0025】
ケーシング35の先端部には、集光器36とX軸方向に整列してレーザ加工すべき加工領域を検出する撮像ユニット38が配設されている。撮像ユニット38は、可視光によって光デバイスウエーハ11の加工領域を撮像する通常のCCD等の撮像素子を含んでいる。
【0026】
撮像ユニット38は更に、光デバイスウエーハ11に赤外線を照射する赤外線照射手段と、赤外線照射手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、この光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する赤外線CCD等の赤外線撮像素子から構成される赤外線撮像手段を含んでおり、撮像した画像信号はコントローラ(制御手段)40に送信される。
【0027】
コントローラ40はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)42と、制御プログラム等を格納するリードオンリーメモリ(ROM)44と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)46と、カウンタ48と、入力インターフェイス50と、出力インターフェイス52とを備えている。
【0028】
56は案内レール14に沿って配設されたリニアスケール54と、第1スライドブロック6に配設された図示しない読み取りヘッドとから構成される加工送り量検出ユニットであり、加工送り量検出ユニット56の検出信号はコントローラ40の入力エンターフェイス50に入力される。
【0029】
60はガイドレール24に沿って配設されたリニアスケール58と第2スライドブロック16に配設された図示しない読み取りヘッドとから構成される割り出し送り量検出ユニットであり、割り出し送り量検出ユニット60の検出信号はコントローラ40の入力インターフェイス50に入力される。
【0030】
撮像ユニット38で撮像した画像信号もコントローラ40の入力インターフェイス50に入力される。一方、コントローラ40の出力インターフェイス52からはパルスモータ10、パルスモータ20、レーザビーム照射ユニット34等に制御信号が出力される。
【0031】
図3を参照すると、本発明の加工方法の加工対象となる半導体ウエーハ11の表面側斜視図が示されている。図3に示す半導体ウエーハ11は、例えば厚さが700μmのシリコンウエーハからなっており、表面11aに複数の分割予定ライン(ストリート)13が格子状に形成されているとともに、該複数の分割予定ライン13によって区画された各領域(チップ領域)にIC、LSI等のデバイス15が形成されている。
【0032】
このように構成された半導体ウエーハ11は、デバイス15が形成されているデバイス領域17と、デバイス領域17を囲繞する外周余剰領域19をその表面11aの平坦部に備えている。また、半導体ウエーハ11の外周には、シリコンウエーハの結晶方位を示すマークとしてのノッチ21が形成されている。
【0033】
尚、以下の説明では、本発明の加工方法の加工対象として半導体ウエーハ11(以下ウエーハとも言う)について説明するが、本発明の加工方法はサファイア基板上に発光層が積層された光デバイスウエーハや、表面にデバイスが形成されていないウエーハ等の板状被加工物(板状物)に適用可能である。
【0034】
本発明の板状物の加工方法では、図4に示すように、ウエーハ11の表面11aに粘着テープTを貼着するテープ貼着ステップを実施する。粘着テープTの外周部は環状フレームFに貼着されている。
【0035】
これにより、テープ貼着ステップ実施後には、ウエーハ11は粘着テープTを介して環状フレームFに支持され、その裏面11bが上方に露出される。尚、このテープ貼着ステップは、後で説明する第1改質層形成ステップ及び第2改質層形成ステップを実施した後や分割ステップを実施するまでの何れかのタイミングで実施するようにしてもよい。
【0036】
テープ貼着ステップを実施した後、図5に示すように、レーザ加工装置2のチャックテーブル28で粘着テープTを介して半導体ウエーハ11を吸引保持し、半導体ウエーハ11の裏面11bを露出させる。
【0037】
そして、撮像ユニット38の赤外線撮像素子でウエーハ11をその裏面11b側から撮像し、分割予定ライン13に対応する領域を集光器36とX軸方向に整列させるアライメントを実施する。このアライメントには、よく知られたパターンマッチング等の画像処理を利用する。
【0038】
第1の方向に伸長する分割予定ライン13のアライメントを実施後、チャックテーブル28を90度回転してから、第1の方向に直交する第2の方向に伸長する分割予定ライン13のアライメントを実施する。
【0039】
アライメント実施後、図5に示すように、半導体ウエーハ11に対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点Pをウエーハ内部のチップの仕上げ厚み領域t1に位置付け、チャックテーブル28を矢印X1方向に加工送りすることにより、ウエーハ11の裏面11b側から第2の出力のレーザビームを分割予定ライン13に沿って照射して、ウエーハ11のチップの仕上げ厚み領域t1に分割を誘導する第2改質層23を形成する。
【0040】
チャックテーブル28をY軸方向に割り出し送りしながら、第1の方向に伸長する全ての分割予定ライン13に対応するチップの仕上げ厚み領域t1に第2改質層23を形成する。
【0041】
次いで、チャックテーブル28を90度回転してから、第1の方向に直交する第2の方向に伸長する全ての分割予定ライン13に沿って対応するチップの仕上げ厚み領域t1に同様な第2改質層23を形成する。
【0042】
第2改質層23は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。例えば、溶融再硬化領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等を含み、これらの領域が混在した領域も含むものである。
【0043】
この第2改質層形成ステップの加工条件は、例えば次のように設定されている。
【0044】
光源 :LD励起Qスイッチ Nd:YVO4パルスレーザ
波長 :1064nm
繰り返し周波数 :80kHz
パルス出力 :0.25W
加工送り速度 :300mm/s
【0045】
第2改質層形成ステップ実施後、第2改質層形成ステップで使用した出力よりも大きな出力のレーザビームを使用して、ウエーハ内部に分割の起点となる第1改質層を形成する第1改質層形成ステップを実施する。
【0046】
この第1改質層形成ステップは、図6に示すように、ウエーハ11に対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点Pをウエーハ内部のチップの仕上げ厚みに至らない領域t2に位置付けて、チャックテーブル28を矢印X1方向に加工送りすることにより、レーザビームを分割予定ライン13に沿って第2の出力より大きい第1の出力で照射して、分割の起点となる第1改質層25をチップの仕上げ厚みに至らない領域t2に形成する。
【0047】
チャックテーブル28をY軸方向に割り出し送りしながら第1の方向に伸長する全ての分割予定ライン13に沿ってチップの仕上げ厚みに至らない領域t2に第1改質層25を形成する。
【0048】
次いで、チャックテーブル28を90度回転してから、第1の方向に直交する第2の方向に伸長する全ての分割予定ライン13に対応するチップの仕上げ厚みに至らない領域t2に同様な第1改質層25を形成する。
【0049】
この第1改質層形成ステップの加工条件は、例えば次のように設定されている。
【0050】
光源 :LD励起Qスイッチ Nd:YVO4パルスレーザ
波長 :1064nm
繰り返し周波数 :80kHz
パルス出力 :1.2W
加工送り速度 :300mm/s
【0051】
尚、上述した第1改質層形成ステップ及び第2改質層形成ステップでは、第1改質層25及び第2改質層23をそれぞれ複数層形成するようにしてもよい。特に、ウエーハ11の厚みが700μmであり、チップの仕上げ厚みが100μm以下であることを考慮すると、分割の起点となる第1改質層25はチップの仕上げ厚みに至らない領域t2に複数層形成するのが好ましい。
【0052】
上述した実施形態では、ウエーハ11の表面11a側を粘着テープTに貼着し、レーザビームをウエーハ11の裏面11b側から入射させているが、ウエーハ11の表面11aを粘着テープTに貼着せずに第1改質層形成ステップ及び第2改質層形成ステップを実施する場合には、レーザビームをウエーハ11の表面11a側から入射させて第1改質層25及び第2改質層23を形成するようにしてもよい。
【0053】
分割予定ライン13上にTEG(Test Element Group)、パシベーション膜等がある場合には、レーザビームを裏面から入射させることが好ましい。表面側から入射させる場合には、第2改質層形成ステップを実施する前に第1改質層形成ステップを実施して、ウエーハ11の裏面11b側から表面11a側の順に改質層を形成する(入射面から遠い順に形成する)ことで、より安定した品質で改質層23,25を形成できる。
【0054】
即ち、このような順に改質層を形成することで、レーザビームの集光点の手前に存在する改質層でレーザビームの照射が妨げられることが防止できる。ただし、改質層を形成する順番はこれに限定されるものではなく、レーザビームの入射面に近いほうから改質層を形成するようにしてもよい。
【0055】
第1及び第2改質層形成ステップ実施後、第1改質層25と第2改質層23が形成されたウエーハ11に外力を付与してウエーハを分割予定ライン13に沿って個々のデバイスチップに分割する分割ステップを実施する。
【0056】
尚、粘着テープTをウエーハ11の表面11aに貼着せずに第1改質層形成ステップ及び第2改質層形成ステップを実施した場合には、分割ステップを実施する前にウエーハ11の表面11aに粘着テープTを貼着し、粘着テープTの外周部を環状フレームFに貼着する。
【0057】
この分割ステップは、図7に示すような分割装置76により実施するのが好ましい。図7(A)において、分割装置76は環状フレームFを保持するフレーム保持ユニット78と、フレーム保持ユニット78に保持された環状フレームFに装着された粘着テープTを拡張する拡張ドラム80を具備している。
【0058】
フレーム保持ユニット76は、環状のフレーム保持部材82と、フレーム保持部材82の外周に配設された固定手段としての複数のクランプ84とから構成される。フレーム保持部材82の上面は環状フレームFを載置する載置面82aに形成されており、この載置面82a上に環状フレームFが載置される。
【0059】
フレーム保持ユニット78は、エアシリンダ88から構成される駆動手段86により、環状のフレーム保持部材82をその載置面82aが拡張ドラム80の上端と略同一高さとなる基準位置と、拡張ドラム80の上端より所定量下方の拡張位置の間を上下方向に移動する。エアシリンダ88のピストンロッド90がフレーム保持部材82の下面に連結されている。
【0060】
分割ステップでは、図7(A)に示すように、ウエーハ11を粘着テープTを介して支持した環状フレームFを、フレーム保持部材82の載置面82a上に載置し、クランプ84によってフレーム保持部材82を固定する。この時、フレーム保持部材82はその載置面82aが拡張ドラム80の上端と略同一高さとなる基準位置に位置付けられる。
【0061】
次いで、エアシリンダ88を駆動してフレーム保持部材82を図7(B)に示す拡張位置に下降する。これにより、フレーム保持部材82の載置面82a上に固定されている環状フレームFも下降するため、環状フレームFに貼着された粘着テープTは拡張ドラム80の上端縁に当接して主に半径方向に拡張される。
【0062】
その結果、粘着テープTに貼着されているウエーハ11には放射状に引張力が作用する。このようにウエーハ11に放射状に引張力が作用すると、ウエーハ11は第1改質層25を分割起点として分割予定ライン13に沿って破断され、個々のデバイスチップ15Aに分割される。
【0063】
尚、この分割時には、分割時に発生する第1改質層25を起点に伸長するクラックは第2改質層23でガイドされて分割予定ライン13に沿ってウエーハ11を個々のデバイス15に分割できる。
【0064】
ウエーハ11を個々のデバイスチップ15に分割すると、デバイスチップ15の側面のチップの仕上げ厚みに至らない領域t2には分割屑が多く付着するが、チップの仕上げ厚み領域t1に形成された第2改質層23は第1改質層形成時の出力よりも1/2倍以下の出力で形成されているため、チップの仕上げ厚み領域t1に付着する分割屑を低減することができる。
【0065】
分割ステップを実施した後、ウエーハ11の裏面11bを研削してチップの仕上げ厚みへと薄化する薄化ステップを実施する。この薄化ステップでは、図8に示すように、研削装置のチャックテーブル92で粘着テープTを介してウエーハ11を吸引保持し、ウエーハ11の裏面11bを露出させる。
【0066】
図8において、研削ユニット94のスピンドル96の先端に固定されたホイールマウント98には、図示しない複数のねじにより研削ホイール100が着脱可能に装着されている。研削ホイール100は、ホイール基台102の自由端部(下端部)に複数の研削砥石104を環状に配設して構成されている。
【0067】
薄化ステップでは、チャックテーブル92を矢印aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削ホイール100を矢印bで示す方向に例えば6000rpmで回転させるとともに、研削ユニット送り機構を駆動して研削ホイール100の研削砥石104をウエーハ11の裏面11bに接触させる。そして、研削ホイール100を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りする。
【0068】
接触式又は非接触式の厚み測定ゲージでウエーハ11の厚みを測定しながら、ウエーハ11を所望の厚みt1に研削する。ウエーハ11を所望の厚みt1に研削すると、第1改質層25は研削により全て除去される。
【0069】
本実施形態の板状物の加工方法では、分割屑が多く残存するとともにチップの仕上げ厚みに至らない領域は研削して除去することで、最終的に形成されるチップの側面に残存する分割屑を従来に比べて大幅に低減することができる。
【符号の説明】
【0070】
2 レーザ加工装置
11 半導体ウエーハ
13 分割予定ライン
15 デバイス
23 第2改質層
25 第1改質層
28 チャックテーブル
34 レーザビーム照射ユニット
36 集光器
38 撮像ユニット
76 分割装置
94 研削ユニット
100 研削ホイール
104 研削砥石
T 粘着テープ
F 環状フレーム
P 集光点
t1 チップの仕上げ厚み領域
t2 チップの仕上げ厚みに至らない領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に設定された交差する複数の分割予定ラインで区画されるチップ領域を複数有した板状物を該分割予定ラインに沿って分割して複数のチップを形成する板状物の加工方法であって、
板状物に対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点を板状物内部のチップの仕上げ厚みに至らない領域に位置付けて、該分割予定ラインに沿って該レーザビームを第1の出力で照射して分割の起点となる第1改質層を形成する第1改質層形成ステップと、
該第1改質層形成ステップを実施する前又は後に、板状物に対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点を板状物内部のチップの仕上げ厚み領域に位置付けて、該分割予定ラインに沿って該レーザビームを該第1の出力よりも低い第2の出力で照射して分割を誘導する第2改質層を形成する第2改質層形成ステップと、
該第1改質層と該第2改質層が形成された板状物に外力を付与して該分割予定ラインに沿ってチップに分割する分割ステップと、
少なくとも該分割ステップを実施するまでの何れかのタイミングで板状物の表面に粘着テープを貼着するテープ貼着ステップと、
該分割ステップを実施した後、板状物の裏面を研削してチップの仕上げ厚みへと薄化する薄化ステップと、
を具備したことを特徴とする板状物の加工方法。
【請求項2】
前記第2の出力は前記第1の出力の1/2倍以下の出力である請求項1記載の板状物の加工方法。
【請求項3】
板状物はシリコンウエーハから構成される請求項1〜2の何れか一つに記載の板状物の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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