説明

板金部材の切断方法及びハンドレーザ用ノズル

【課題】作業性を損なうことなくハンドレーザによる切断精度を向上する板金部材の切断方法等を提供する。
【解決手段】作業者が手持ちして用いるハンドレーザ1によって板金部材10を所定のトリムラインTに沿って第1部分12及び第2部分13に切断する板金部材の切断方法を、板金部材の第1部分と第2部分との少なくとも一方にトリムラインから所定の間隔を隔てて延在するガイド部14をプレス成型し、ハンドレーザのノズル部3に設けられた被ガイド部4をガイド部に当接させた状態で切断を行う構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板金部材の切断方法及びこの切断方法に用いられるハンドレーザ用ノズルに関し、特には作業性を損なうことなくハンドレーザによる切断精度を向上したものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用の車体構造部品として用いられるスチール、アルミニウム系合金等のプレス成型品のパネル外周縁部や、内部に設けられる開口を切断する場合、トリム用金型を用いたプレスによる打ち抜きとすることが一般的である。
しかし、対象となる製品が例えば小量生産車や試作車の部品のように小ロットである場合には、金型等のコスト負担が大きくなってしまう。
【0003】
また、このような切断(トリム)作業を、レーザカッタによって行うことも知られている。レーザカッタは、レーザ発振器で生成されたレーザ光を集光光学系を用いてワークに照射し、金属材料を溶融させて切断するものである。
こうしたレーザカッタにおいて、ワークにレーザを照射するトーチを作業者が手持ち可能としたハンドレーザが知られている。
【0004】
従来、ハンドレーザによる切断作業の精度を確保するため、ロボットアームの先端に取り付けて切断させることが行われているが、この場合、ロボットアームの導入コストや、ロボットアームに切断パスをティーチングする工数の増加が問題となる。
また、ハンドレーザを手持ちして精度よい切断を行うための従来技術として、例えば特許文献1には、ハンドレーザを案内するレールを被加工体に取り付けて作業を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−051879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術のように、被加工体にレール等の冶具を取り付けて切断を行う場合、冶具の製作、保管、被加工体への着脱などで大幅な工数、コスト等の増加となる。また、冶具を取り付ける際の精度によって切断加工の精度が左右されるため、作業に熟練を要するという問題があった。
本発明の課題は、作業性を損なうことなくハンドレーザによる切断精度を向上する板金部材の切断方法及びハンドレーザ用ノズルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1の発明は、作業者が手持ちして用いるハンドレーザによって板金部材を所定のトリムラインに沿って第1部分及び第2部分に切断する板金部材の切断方法であって、前記板金部材の第1部分と第2部分との少なくとも一方に前記トリムラインから所定の間隔を隔てて延在するガイド部をプレス成型し、前記ハンドレーザのノズル部に設けられた被ガイド部を前記ガイド部に当接させ案内させた状態で切断を行うことを特徴とする板金部材の切断方法である。
【0008】
請求項2の発明は、前記ハンドレーザのノズルは、前記板金部材の切断面に当接する先端面部と前記被ガイド部との境界部に、前記ガイド部がプレス加工によって形成される際のコーナ部Rを回避する逃げ部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の板金部材の切断方法である。
【0009】
請求項3の発明は、作業者が手持ちして用いるハンドレーザによって板金部材を所定のトリムラインに沿って第1部分及び第2部分に切断する板金部材の切断方法であって、前記板金部材の第1部分と第2部分との少なくとも一方に、前記トリムラインから所定の間隔を隔てて延在するガイド部が形成されたアタッチメントを位置決めする位置決め部が形成され、前記板金部材に前記アタッチメントを固定し、前記ハンドレーザのノズル部に設けられた被ガイド部を前記ガイド部に当接させ案内させた状態で切断を行うことを特徴とする板金部材の切断方法である。
【0010】
請求項4の発明は、前記ハンドレーザの前記被ガイド部は、使用箇所に応じてレーザ光軸からの距離が無段階又は段階的に変化するよう形成され、前記板金部材の前記トリムラインから前記ガイド部までの間隔に応じて前記被ガイド部の使用箇所を決定することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の板金部材の切断方法である。
【0011】
請求項5の発明は、作業者が手持ちして用いるハンドレーザ用のノズルであって、切断対象となる板金部材の切断面に当接する先端面部、及び、前記板金部材に形成されるガイド用の段部の側面に当接して案内される側面部を有し、前記先端面部と前記側面部との境界部に、前記ガイド用の段部がプレス加工によって形成される際のコーナ部Rを回避する逃げ部を形成したことを特徴とするハンドレーザ用ノズルである。
【0012】
請求項6の発明は、前記被ガイド部は、使用箇所に応じてレーザ光軸からの距離が無段階又は段階的に変化するよう形成されることを特徴とする請求項5に記載のハンドレーザ用ノズルである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)板金部材にトリムラインから所定の間隔を隔てて延在するガイド部をプレス成型し、ハンドレーザのノズル部に設けられた被ガイド部をガイド部に当接させ案内させた状態で切断を行うことによって、煩雑な冶工具の取付などを行うことなくハンドレーザによる切断精度を確保することができる。
(2)ノズルの先端面部と被ガイド部との境界部に、ガイド部がプレス加工によって形成される際のコーナ部Rを回避する逃げ部が形成されることによって、被ガイド部をガイド部に密着させることができ、切断精度をよりいっそう向上することができる。
(3)板金部材にトリムラインから所定の間隔を隔てて延在するガイド部が形成されたアタッチメントを位置決めする位置決め部を形成し、板金部材にアタッチメントを固定し、ハンドレーザの被ガイド部をガイド部に当接させ案内させた状態で切断を行うことによって、直接板金部材にガイド部を形成することが困難なトリムライン形状であってもハンドレーザによって簡単にかつ精度よく切断作業を行うことができる。
(4)ハンドレーザの被ガイド部は、使用箇所に応じてレーザ光軸からの距離が無段階又は段階的に変化するよう形成され、板金部材のトリムラインからガイド部までの間隔に応じて被ガイド部の使用箇所を決定することによって、トリムライン及びガイド部の設計自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した板金部材の切断方法の実施例1に用いられ、本発明を適用したハンドレーザ用ノズルの実施例1が設けられるハンドレーザの模式的外観図である。
【図2】図1のハンドレーザのノズル部、及び、本発明を適用したハンドレーザ用ノズルの実施例2、実施例3のノズル部の拡大図である。
【図3】実施例1の板金部材の切断方法の工程を示す図である。
【図4】実施例2のノズル部による切断時の状態を示す図である。
【図5】実施例3のノズル部による切断時の状態を示す図である。
【図6】実施例1の板金部材の切断方法による開口のトリム加工を示す図である。
【図7】実施例1の板金部材の切断方法による自動車用フロアトンネル部パネルのトリム加工を示す図である。
【図8】本発明を適用した板金部材の切断方法の実施例2を示す図である。
【図9】本発明を適用したハンドレーザ用ノズルの実施例4を示す図である。
【図10】実施例4のノズルが設けられるハンドレーザの模式的外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、作業性を損なうことなくハンドレーザによる切断精度を向上する板金部材の切断方法を提供する課題を、トリムラインから所定の間隔を隔てて延在するガイド部を板金部材にプレス加工によって形成し、このガイド部にハンドレーザのノズル部の被ガイド部を当接させながら切断を行うことによって解決した。
また、本発明は、作業性を損なうことなくハンドレーザによる切断精度を向上するハンドレーザ用ノズルを提供する課題を、切断面と当接する先端面部とガイド部と当接する側面部との間にガイド部をプレス成型する際のコーナRを回避する面取り等の逃げ部を形成することによって解決した。
【0016】
まず、本発明を適用した板金部材の切断方法の実施例1、及び、本発明を適用したハンドレーザ用ノズルの実施例1乃至3について説明する。
実施例1の板金部材の切断方法は、例えば自動車のボディ構造などに用いられる鋼板プレス成型品の外縁部や、その内部に形成される開口部をトリム(切断)するものである。
【0017】
図1は、実施例1の板金部材の切断方法において用いられるハンドレーザの模式的外観図である。
ハンドレーザ1は、作業者が手持ちして図示しないレーザ発振器が発生するレーザLをワークに照射して切断するトーチである。ハンドレーザ1は、作業者に把持されるほぼ円筒状の本体部2の突端部に、レーザLが発射されるノズル3を設けたものである。
本端部2の内部には、レーザLを所定のビーム径に集約させる図示しない集光光学系が設けられている。
ノズル3は、本体部2の端部がテーパ状に絞りこまれた部分の先端部に設けられる。ノズル3は、円柱状に形成され、その中心部からレーザLを照射する。
また、ノズル3からは、レーザLのほか、図示しないガス供給装置から供給されるアシストガスがワークに対して噴出される。
【0018】
図2は、ハンドレーザ1に用いられるノズルを径方向から見た模式的側面図である。
図2(a)は、図1のハンドレーザ1のノズル3(ハンドレーザ用ノズルの実施例1)を示す図である。
図2(b)は、本発明を適用したハンドレーザ用ノズルの実施例2であるノズル3aを示す図である。
図2(c)は、本発明を適用したハンドレーザ用ノズルの実施例3であるノズル3bを示す図である。
【0019】
図2(a)に示すように、ノズル3は、円柱状に形成され、ワークであるパネルの切断面に当接する端面部4、及び、円柱外周面状の凸曲面である側面部5を備えている。側面部5は、端面部4に対して直角をなすように配置されている。側面部5は、切断作業時に後述するガイド部によって案内される被ガイド部として機能する。
端面部4と側面部5との境界部には、R面取り部6が設けられている。このR面取り部6の曲率半径は、ワークであるパネルにプレス加工によって後述するガイド部を形成する際の曲げRよりも十分に大きくなるように設定される。
【0020】
また、以上説明した実施例1のノズル3に代えて、以下説明する実施例2、3のノズル3a、3bを用いることもできる。以下の説明において、実施例1のノズル3と実質的に共通する箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図2(b)に示す実施例2のノズル3aは、実施例1のR面取り部6に代えて、C面取り部6aが形成されている。
図2(c)に示す実施例3のノズル3bは、実施例1のR面取り部6に代えて、端面部4近傍の側面部5の外径を他の部分よりも小さくして形成した段状の凹部6bが形成されている。
【0021】
次に、上述したハンドレーザ1、ノズル3等を用いた板金部材の切断(トリム)工程について説明する。
図3における図3(a)〜図3(e)は、板金部材の切断方法の実施例1における工程を示す図である。以下、図3(a)より順を追って説明する。
図3(a)に示すように、先ず平坦な鋼板等のパネル10を、金型20の上型21と下型22との間に配置する。
上型21には、後述する段部11を形成するために段状に凹まされた凹部21aが形成されている。下型22には、凹部21a側へ段状に突き出した凸部22aが形成されている。
【0022】
次に、図3(b)に示すように、上型21と下型22とによってパネル10をプレスし、パネル10に他の部分に対して段状に張出した段部11を形成する。
図3(c)は、プレス成型直後、金型20から取り出した状態のパネル10を示している。
パネル10には、切断線であるトリムラインTを挟んだ両側に、最終的に製品となる第1部分12、及び、最終的にスクラップとして廃棄される第2部分13を備えている。段部11は、例えば、第2部分13に形成される。
段部11の外周縁部に設けられるガイド部14は、トリム作業時にノズル3の側面部5と当接する面部であって、トリムラインTが設けられる切断面15に対して、ほぼ垂直に立ち上げられている。切断面15からガイド部14が立ちあがるコーナ部分には、プレス加工時の品質不良を防止するため、不可避的に設けられるR部(例えば、R2程度)が形成されている。
上述したノズル3,3a,3bのR面取り部6、C面取り部6a、凹部6bは、このR部を回避して、端面部4を切断面15に面接触させた状態でガイド部14をノズルの側面部5に線接触させることができるように形成されている。これによって、ノズル3のぐらつきがなくなり、切断精度が確保される。
【0023】
図3(d)は、ハンドレーザ1による切断作業中の状態を示している。
作業者は、ハンドレーザ1を手持ちし、ノズル3の端面部4を切断面15に当接させ、側面部5をガイド部14に当接させた状態で、ガイド部14に沿ってなぞりつつハンドレーザ1を動かしながらレーザLを発射して、トリムラインTにおいてパネル10を切断し、第1部分12と第2部分13とに分割する。
図3(e)は、最終的に製品となる第1部分12を示す図である。
【0024】
図4及び図5は、第2実施例のノズル3a、及び、第3実施例のノズル3bを用いた切断作業時に、これらのノズル3a,3bの側面部5をパネル10のガイド部14に当接させた状態を示す図である。
これらの場合においても、C面取り部6a及び凹部6bがパネル10に形成されたR部を回避することによって、端面部4を切断面15に面接触させた状態で側面部5をガイド部14に線接触させることができ、切断精度が確保される。
【0025】
図6は、実施例1の板金部材の切断方法を用いて、パネル10に開口16を形成する際の開口及び金型形状を示す模式図である。
図6(a)は、開口16の平面形状を示している。開口16は、例えばほぼ四角形状に形成され、四隅にはRがつけられている。この加工におけるトリムラインTは、開口16の外周縁部である。
図6(b)は、図6(a)のb−b部における金型20の下型22の形状を示す模式的断面図である。
凸部22は、トリムラインTに対して予め設定された所定の間隔だけ離れた箇所に、トリムラインTに沿ってガイド部14を形成可能なよう設計されている。
【0026】
例えば、ノズル3のレーザ光軸から側面部5までの半径が3.5mm、レーザLの幅が0.6mmである場合には、トリムラインTから凸部22の側面までの距離L1は、例えば、3.8mmプラス板厚に設定され、レーザLの幅が0.8mmである場合にはL1は例えば3.9mmプラス板厚に設定される。
また、凸部22の高さL2は、例えば4.0mm程度に設定される。
【0027】
図7は、実施例1の板金部材の切断方法を用いて、パネル10に開口17を形成するとともに、その外周縁部をトリムする際のワーク形状及び金型形状を示す模式図である。
図7(a)は、ワークであるパネル10の模式的外観斜視図である。
図7(b)及び図7(c)は、図7(a)のb−b部及びc−c部における金型20の下型22の形状を示す模式的断面図である。
図7に示す例においては、パネル10は、車両のフロアトンネル部を構成するものであり、中央部に鞍型に張り出した張出部18が形成されている。開口17は、張出部18の上面部に形成された矩形のものである。
トリムラインTは、開口17の外縁部、及び、パネル10の外縁部である。
図7(b)及び図7(c)に示すように、金型20の下型22の凸部22aは、製品から切り離され最終的にはスクラップとして廃棄される部分にガイド部14を形成するよう配置される。
すなわち、開口17のトリムに用いられるガイド部14は、開口17の内側に設けられ、パネル10の外縁部のトリムに用いられるガイド部14は、製品の外側に設けられる。
【0028】
以上説明した、板金部材の切断方法の実施例1及びハンドレーザ用ノズルの実施例1乃至3によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)パネル10にトリムラインTから所定の間隔を隔てて延在するガイド部14をプレス成型し、ハンドレーザ1のノズル3の側面部5をガイド部14に当接させ案内させた状態で切断を行うことによって、煩雑な冶工具の取付などを行うことなく手持ちのハンドレーザ1による切断精度を確保することができる。
(2)ノズル3の端面部4と側面部5との境界部に、ガイド部14がプレス加工によって形成される際のコーナ部Rを回避するR面取り部6、C面取り部6a、凹部6bなどが形成されることによって、端面部4を切断面に面接触させた状態で側面部5をガイド部に線接触させることができ、ノズルのぐらつきをなくして切断精度をよりいっそう向上することができる。
【0029】
次に、本発明を適用した板金部材の切断方法の実施例2について説明する。なお、以下説明する各実施例において、上述した実施例1と実質的に共通する箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図8は、実施例2の切断方法を示す模式図である。
実施例2の切断方法は、パネル110にプレス加工によって凹部111を形成し、この凹部111に嵌め込まれ位置決めされるアタッチメント120に形成されたガイド部121を用いて、ハンドレーザ1による切断作業を行っている。
凹部111は、周辺部がテーパ状の斜面112となっており、平面状の切断面113はその内部に設けられている。
【0030】
アタッチメント120は、例えば樹脂、金属、その他の材料によって形成されている。アタッチメント120は、パネル110の凹部111に倣った形状の下面部を有し、作業者がパネル110の凹部111に乗せることによって、斜面112に案内されて位置決めされるようになっている。
ガイド部121は、アタッチメント120が位置決めされた状態において、トリムラインTから所定の間隔となるように設計されている。
例えば、ノズル3のレーザ光軸から側面部5までの半径が3.5mm、レーザLの幅が0.6mmである場合には、トリムラインTからガイド部121までの距離は、例えば、3.2mmに設定され、レーザLの幅が0.8mmである場合には、この距離は例えば3.1mmに設定される。
また、アタッチメント120の厚さは、例えば3.0mm程度に設定される。
【0031】
以上説明した実施例2の板金部材の切断方法によれば、パネル110にトリムラインTから所定の間隔を隔てて延在するガイド部121が形成されたアタッチメント120を位置決めする凹部111を形成し、パネル110にアタッチメント120を固定し、ハンドレーザ1のノズル3の側面部5をガイド部121に当接させ案内させた状態で切断を行うことによって、直接パネル110にガイド部を形成することが困難なトリムラインT形状であっても手持ちのハンドレーザ1によって簡単にかつ精度よく切断作業を行うことができる。これによって、例えば凹部や凸部の内部に開口を形成するようなトリムライン形状であっても対応することができる。
【0032】
次に、本発明を適用した板金部材の切断方法の実施例3、及び、ハンドレーザ用ノズルの実施例4について説明する。
図9は、実施例4のノズル3cの二面図であって、図9(a)はレーザLの光軸と直交方向から見た側面図であって、図9(b)は図9(a)のb−b部矢視図である。
ノズル3cは、図9(b)に示すように、側面部5をレーザLの光軸方向から見た形状が楕円上に形成されるとともに、図示しないレーザ発射部が設けられる開口Oは、楕円の長軸状において一方に片寄せて配置されている。
このような構成により、ノズル3cにおいては、側面部5をパネル10のガイド部14に当接させる位置に応じて、ガイド部14からトリムラインTまでのオフセット量を無段階に変更することができる。
【0033】
図10は、ノズル3cが装着されたハンドレーザ1の模式的外観図である。
ハンドレーザ1及びノズル3cには、それぞれ目盛などのノズル3c装着角度を示す目標が設けられ、作業者は目標を確認しながらレーザLの光軸から、側面部5のガイド部に当接する箇所までのオフセット量を適切に設定することができる。
【0034】
以上説明した実施例3の板金部材の切断方法によれば、ハンドレーザ1の側面部5は、使用箇所に応じてレーザ光軸からの距離を変更することができるため、トリムラインT及びガイド部の設計自由度を向上することができる。
【0035】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)実施例1の板金部材の切断方法では、ガイド部は製品側ではなくスクラップとして廃棄される側に設けられているが、ガイド部を製品側に設けて残すようにしてもよい。例えば、ガイド部が製品となったときにはフランジ穴のフランジとして機能するようにしてもよい。
(2)パネルに形成されるガイド部、アタッチメント等の形状は、各実施例の構成に限らず適宜変更することができる。
(3)実施例4のハンドレーザ用ノズルでは、オフセットを可変とするために側面部の形状を楕円形状としているが、本発明はこれに限らず、ノズルを他の形状としてもよい。例えば、オフセット量が異なる複数の被ガイド面を側面部に配列し、オフセット量が段階的に変化するようにしてもよい。
(4)切断対象となる板金部材は、各実施例のようなスチールパネルに限らず、他種の金属によって形成されたパネルでもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 ハンドレーザ 2 本体部
3 ノズル 3a ノズル
3b ノズル 3c ノズル
4 端面部 5 側面部
6 R面取り部 6a C面取り部
6b 凹部
10 パネル 11 段部
12 第1部分 13 第2部分
14 ガイド部 15 切断面
16 開口 17 開口
18 張出部
20 金型
21 上型 21a 凹部
22 下型 22a 凸部
110 パネル 111 凹部
112 斜面 113 切断面
120 アタッチメント 121 ガイド部
O 開口 L レーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が手持ちして用いるハンドレーザによって板金部材を所定のトリムラインに沿って第1部分及び第2部分に切断する板金部材の切断方法であって、
前記板金部材の第1部分と第2部分との少なくとも一方に前記トリムラインから所定の間隔を隔てて延在するガイド部をプレス成型し、
前記ハンドレーザのノズル部に設けられた被ガイド部を前記ガイド部に当接させ案内させた状態で切断を行うこと
を特徴とする板金部材の切断方法。
【請求項2】
前記ハンドレーザのノズルは、前記板金部材の切断面に当接する先端面部と前記被ガイド部との境界部に、前記ガイド部がプレス加工によって形成される際のコーナ部Rを回避する逃げ部が形成されること
を特徴とする請求項1に記載の板金部材の切断方法。
【請求項3】
作業者が手持ちして用いるハンドレーザによって板金部材を所定のトリムラインに沿って第1部分及び第2部分に切断する板金部材の切断方法であって、
前記板金部材の第1部分と第2部分との少なくとも一方に、前記トリムラインから所定の間隔を隔てて延在するガイド部が形成されたアタッチメントを位置決めする位置決め部が形成され、
前記板金部材に前記アタッチメントを固定し、前記ハンドレーザのノズル部に設けられた被ガイド部を前記ガイド部に当接させ案内させた状態で切断を行うこと
を特徴とする板金部材の切断方法。
【請求項4】
前記ハンドレーザの前記被ガイド部は、使用箇所に応じてレーザ光軸からの距離が無段階又は段階的に変化するよう形成され、前記板金部材の前記トリムラインから前記ガイド部までの間隔に応じて前記被ガイド部の使用箇所を決定すること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の板金部材の切断方法。
【請求項5】
作業者が手持ちして用いるハンドレーザ用のノズルであって、
切断対象となる板金部材の切断面に当接する先端面部、及び、前記板金部材に形成されるガイド用の段部の側面に当接して案内される側面部を有し、
前記先端面部と前記側面部との境界部に、前記ガイド用の段部がプレス加工によって形成される際のコーナ部Rを回避する逃げ部を形成したこと
を特徴とするハンドレーザ用ノズル。
【請求項6】
前記被ガイド部は、使用箇所に応じてレーザ光軸からの距離が無段階又は段階的に変化するよう形成されること
を特徴とする請求項5に記載のハンドレーザ用ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−235308(P2011−235308A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108063(P2010−108063)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】