説明

析出金属板の搬送装置および搬送方法

【課題】チェーンコンベアを用いずに複数枚のカソードを、同時に、水平方向に、連続的に、繰り返して搬送できる析出金属板の搬送装置および搬送方法を提供する。
【解決手段】析出金属板28の下方に配置されたウォーキングビーム70により、複数個の析出金属板28を、受け入れ、フレキシング、剥離、排出などの各ステージを同時に搬送する。各ステージでは持ち上げレバー73の先端部をウォーキングビーム70の凹所77内に挿入し、持ち上げレバー73を上方に移動させることにより、析出金属板28がウォーキングビーム70から離反して上方に持ち上げられた状態にし、ウォーキングビーム70のみを元の位置に復帰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、カソード電極の両側に一対の純銅板が析出された析出金属板を連続的にフレキシングや剥離するための搬送路に適用されて好適な搬送装置および搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ISA法と称される銅の電解精錬では、ステンレス板のカソード電極を用いて、電解槽内の硫酸銅溶液中で粗銅のアノード電極からステンレス板からなるカソード電極に直流電流を流すことで、アノード中の銅分又は電解液中の銅分をイオン化してカソードに移行し、カソード電極の両面に純銅を析出させることによって行われている。
【0003】
図5は、従来使用されているステンレス板のカソード電極22を示したものである。
【0004】
このカソード電極22では、析出すべき純銅板の除去を容易にするために、ステンレス板22aの下端面にV字状の溝24を形成するとともに、ステンレス板22aの両側縁部に、プラスチックなどの絶縁材料からなる帯板26を配置し、この帯板26によりステンレス板22aの両側縁部に純銅が析出しないようにしている。
【0005】
このようなステンレス板のカソード電極22は、粗銅からなるアノード電極または単なる電極としてのアノードとともに電解液で満たされた電解槽内に交互に配され、電流が流されることにより、カソード電極22の表面に純銅が析出される。そして、カソード電極22は、ある重量になった時点で電解槽から引き上げられ第1の搬送路を搬送された後、この第1の搬送路と直交する第2の搬送路に受け渡される。そして、この第2の搬送路を進みつつ、この第2の搬送路では、図6(A)、(B)に示したように、カソード電極22の両面に析出された純銅板(以下、単に銅板という)28、28をカソード電極22のステンレス板22aから剥がすために、側方に配置されたシリンダ装置23A,23Bのロッド23a、23bを交互に押し当てることにより、ステンレス板22aと一対の銅板28、28との間に隙間を生じさせる。そして、図7に示したように、くさびなどの剥ぎ取り機30を上方から下方に押し下げることにより銅板28,28をステンレス板22aから剥ぎ取っている。
【0006】
ところで、このように銅などの純金属を電解槽により大量に製造する場合には、連続的にこれらの処理を行う必要がある。そのため、図6(A)、(B)に示したフレミング工程、あるいは図7に示した剥離工程などは同じ搬送路内で所定間隔離間した状態で連続的に行われ、最初のステージでフレミング処理が行われた後、次の第2ステージに搬送されて、ここで剥ぎ取りが行なわれている。
【0007】
このように析出金属板(ここで、析出金属板とは、電極としてのステンレス板22aに析出される銅板28を指しているが、本明細書では、カソード電極であるステンレス板22aの両側に銅板28,28が析出された3層構造の積層体も析出金属板という。また、この3層構造の積層体をカソード電極またはカソードという場合もある。)を連続的に搬送する搬送路としては、従来はチェーンコンベアが採用されていた。
【0008】
しかしながら、このチェーンコンベアは、大きな騒音が発生することに加えてチェーンの伸びが発生してしまうという問題があった。なお、析出金属板のチェーンコンベアへの固定には、チェーンコンベアにガイド板を設け、このガイド板に位置合わせして行っているが、チェーンが伸びてしまうと、正確な位置合わせができなくなる。また、析出金属板
を安定した姿勢で保持することができないという問題が生じていた。さらに、チェーンコンベアは高価であるため、コスト高になるという問題もあった。
【0009】
一方、このようなチェーンコンベアの問題を考慮して、チェーンコンベアを使用しない搬送手段も提供されている。
【0010】
図8は、特許文献1に開示されているチェーンコンベアを使用しない従来の搬送装置を示したものである。
【0011】
この搬送装置では、両端部の供給ライン4と排出ライン15とが紙面と垂直な方向に延びており、その間に中間ステージ5,6,7を順番に備えた横方向の搬送路が形成されている。
【0012】
この搬送路は、長尺なフレーム2と、このフレーム2より全長が長くされ、フレーム2上を水平方向に往復移動可能な搬送バー3とから構成され、搬送バー3が1つのブロックとしてフレーム2上を、例えば図の左方から図の右方へ1ステージ分移動することにより、4つのカソード8,9,10,11が同時に1ステージ、横方向に移動する。すなわち、搬送バー3の水平移動により、供給ライン4にあったカソード8が第1のステージ5に移動し、第1のステージ5にあったカソード9が第2のステージ6に移動し、第2のステージ6にあったカソード10が第3のステージ7に移動する。また第3のステージ7にあったカソード11は、排出ライン15に移動する。
【0013】
なお、図8では、カソード8、9、10、11が搬送バー3から浮いた状態で示されているが、右方向への実際の移動の際には搬送バー3の上面に当接した状態で搬送されている。
【0014】
このように特許文献1では、搬送バー3の移動により、4つのカソード8,9,10,11が移動する。そして、例えば、第1のステージ5において、図6のフレキシング処理が行われ、第2のステージ6において、図7の剥ぎ取り処理が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特表2002−525439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、このようにチェーンコンベアを使用しない従来の搬送装置では、搬送バー3によりカソード8,9,10,11を一旦、右方向に搬送したら、搬送バー3を元の初期位置、すなわち左端部近傍を供給ライン4の位置にまで戻す必要がある。
【0017】
従来の搬送装置では、図8に示したように、それぞれリフタ12を用いて、カソード8、9、10、11を上方に若干持ち上げることにより、これらのカソード8、9、10、11を搬送バー3から離反した状態に浮き上がらせていた。
【0018】
しかしながら、このようにカソード8、9、10、11を搬送バー3から離反させるにあたり、従来はカソード8、9、10、11を上方から吊り上げる構造であったため、図6に示したフレキシング処理及び剥離ステージにおいて、両側の銅板28,28がステンレス板22aから完全に離脱されたものについては、ステンレス板22aのみが吊り上げられて、両側の銅板28、28が下方に落下してしまうという問題があった。このような場合には、搬送に不具合が発生し、連続運転を停止しなればならない。
【0019】
本発明は、このような実情に鑑み、搬送バーのようにチェーンコンベアを用いずに複数枚の析出金属板を1つのブロックとして同時に水平方向に搬送する場合であって、そのブロックとしての搬送体(本発明の場合ウォーキングビーム)を元の初期位置に戻すにあたり、析出金属板および電極としての板部材の両方を確実に持ち上げることができ、これによりウォーキングビームのみを初期位置に戻して連続運転を継続して行うことのできる析出金属板の搬送装置および搬送方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するための本発明に係る析出金属板の搬送装置は、
電解槽内においてカソード電極の両面に析出された析出金属板を搬送路に受け入れた後、処理作業を行うための第1のステージ、第2のステージ、…第Nのステージに、それらの各上流側のステージに置かれている析出金属板を順番に1つ繰り上げて順次搬送する析出金属板の搬送装置であって、
前記析出金属板の下方に、少なくとも水平方向に往復移動可能で、かつ表面に前記受け入れステージ、前記第1のステージ、第2のステージ、…第Nのステージに対応する位置にそれぞれ上方に開口した凹所を備えた板状のウォーキングビームを配置するとともに、
前記ウォーキングビームの所定位置に形成された凹所内に対し先端部が出没自在であり、かつ上下方向に往復移動可能で前記ウォーキングビームとは独立して移動する持ち上げレバーを、前記ウォーキングビームと併設するように配置し、
前記析出金属板の下方に配置された前記ウォーキングビームにより、前記第1のステージ、前記第2のステージ、…前記第Nのステージに置かれている複数個の前記析出金属板を、同時に水平方向に搬送するとともに、1つづれた次のステージまで前記析出金属板が搬送されたときに、前記ウォーキングビームの移動を停止し、これに続いて前記持ち上げレバーの先端部を前記ウォーキングビームの前記凹所内に挿入し、さらに、この持ち上げレバーのみを上方に移動させることにより、前記析出金属板を前記ウォーキングビームから離反させて上方に持ち上げる一方、前記析出金属板が前記ウォーキングビームから離反して上方に持ち上げられた状態にしてから、前記ウォーキングビームのみを元の位置に復帰させることを特徴としている。
【0021】
また、本発明に係る析出金属板の搬送方法は、
電解槽内においてカソード電極の両面に析出された析出金属板を搬送路に受け入れた後、処理作業を行うための第1のステージ、第2のステージ、…第Nのステージに、それらの各上流側のステージに置かれている析出金属板を順番に1つ繰り上げて順次搬送する析出金属板の搬送方法であって、
前記析出金属板の下方に、少なくとも水平方向に往復移動可能で、かつ表面に前記受け入れステージ、前記第1のステージ、第2のステージ、…第Nのステージに対応する位置にそれぞれ上方に開口した凹所を備えた板状のウォーキングビームを配置するとともに、
前記ウォーキングビームの所定位置に形成された凹所内に対し先端部が出没自在であり、かつ上下方向に往復移動可能で前記ウォーキングビームとは独立して移動する持ち上げレバーを、前記ウォーキングビームと併設するように配置し、
前記析出金属板の下方に配置された前記ウォーキングビームにより、前記第1のステージ、前記第2のステージ、…前記第Nのステージに置かれている複数個の前記析出金属板を、同時に水平方向に搬送するとともに、1つづれた次のステージまで前記析出金属板が搬送されたときに、前記ウォーキングビームの移動を停止し、これに続いて前記持ち上げレバーの先端部を前記ウォーキングビームの前記凹所内に挿入し、さらに、この持ち上げレバーのみを上方に移動させることにより、前記析出金属板を前記ウォーキングビームから離反させて上方に持ち上げる一方、前記析出金属板が前記ウォーキングビームから離反して上方に持ち上げられた状態にしてから、前記ウォーキングビームのみを元の位置に復帰させることを特徴としている。
【0022】
ここで、本発明の方法では、前記持ち上げレバーは、前記ウォーキングビームによる前記析出金属板の搬送時には、待機状態に配置されることが好ましい。
【0023】
このような搬送装置および搬送方法によれば、チェーンコンベアを用いることの代わりに、1つのブロックとしてのウォーキングビームの移動により複数の析出金属板を同時に水平方向に移動させるので、騒音の発生を極力抑えることができ、また、安価に構成することができる。また、ウォーキングビームを元の初期位置に戻す場合には、析出金属板を上からではなく下方の持ち上げレバーにより下方から持ち上げる構造なので、析出金属板を確実に持ち上げることができ、これにより、ウォーキングビームのみを初期位置に戻すことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る析出金属板の搬送装置および搬送方法によれば、ウォーキングビームにより複数個の析出金属板を同時に水平方向に搬送した後、このウォーキングビームを元の初期位置に戻すにあたり、ステンレス板などから完全に剥離された析出金属板であっても、その析出金属板をウォーキングビームから確実に持ち上げて、ウォーキングビームのみを元の初期位置に戻すことができる。
【0025】
また、本発明では、析出金属板を上方から吊り上げる構造ではなく、下方から持ち上げる構造なので、析出金属板が下方に落下してしまうことがない。これにより、連続運転を確実に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る析出金属板の搬送方法の概略図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例に係る析出金属板の搬送装置の概略図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例に係る析出金属板の搬送装置を構成するウォーキングビームと持ち上げレバーとの関係を示した斜視図である。
【図4】図4は、本発明の一実施例に係る析出金属板の搬送装置の概略断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施例および従来から使用されているカソードの一例を示す斜視図である。
【図6】図6(A)、(B)は、それぞれカソードと析出金属板との間に隙間を生じさせるフレキシンの概略を示す正面図である。
【図7】図7は、楔部材を用いて銅板を剥離するときの概略側断面図である。
【図8】図8は、特表2002−525439号公報に開示されているチェーンコンベアを使用しない搬送装置の原理を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明に係る析出金属板の搬送装置および搬送方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0028】
図1は本発明の一実施例による析出金属板の搬送装置の概略を示したものである。
【0029】
本発明に係る析出金属板の搬送装置および搬送方法は、析出金属板を工場内のどのような場所からどのような場所に搬送する場合にも適用可能であるが、特には、図6に示したように、ステンレス板22aと銅板28との間に隙間を形成するフレキシング工程、および図7に示したように、剥ぎ取り機30による銅板28の剥離工程などを連続的に行う搬送路に好ましく適用することができる。
【0030】
先ず、本発明の一実施例に採用されたカソード電極は、図5のカソード電極22と同一のものが採用されている。
【0031】
すなわち、本発明のカソード電極22は、ハンガーと称される水平方向の支持部材23に、略矩形状のステンレス板22aが鉛直方向に垂下した姿勢で取付けられている。
【0032】
このようなカソード22電極は、前述したようにアノード電極とともに電解液で満たされた電解槽内に交互に配され、電流が流されることにより、ステンレス板22aの表面に例えば純銅が析出される。そして、両面に所定重量の純銅板28、28が析出されたカソード電極22は、電解槽から引き上げられる。電解槽から引き上げられたカソード電極22は、図1に示したように、第1の搬送路50に沿って直線的に搬送され、第1の搬送路50の終端部において、この第1の搬送路50に対して直交する方向に形成された第2の搬送路52に受け渡される。そして、この第2の搬送路52内では、フレキシング処理と剥離処理とが行われる。
【0033】
第2の搬送路52におけるフレキシングを行う場所を第1ステージ54とし、剥離を行う場所を第2ステージ56とする。このように、銅板を析出したカソード22は、第2の搬送路52内で1つの処理が行われた後、下流側の次のステージに送られ、ここで次の処理が行われる。最終的には、排出ステージ74から第3の搬送路58に移載される。
【0034】
なお、図1において、第1の搬送路50に対向する搬送路60、および第3の搬送路58に対向する搬送路62は、それらのリジェクトラインを示したもので、リジェクトライン60では、規格に達しないカソード22がここから外部に排出される。また、リジェクトライン62では、析出金属板28が剥がされた後のステンレス板22aに不具合があった場合、このラインに搬送されて修理工程に運ばれる。
【0035】
さらに、図1において、第1の搬送路50から第2の搬送路52にアノード22を移載するためロボットアーム64を設ければ、あるいは、第2の搬送路52から第3の搬送路58に銅板28あるいはステンレス板22aを移載するためにロボットアーム66を設ければ、これらの移載作業を自動化することができる。
【0036】
図2は第2の搬送路52を示したものである。
【0037】
すなわち、第2の搬送路52は、図2に示したように、移動不能なフレーム68と、このフレーム68上にローラなどを介して対し矢印A−A’方向に移動可能な板状のウォーキングビーム70とから構成されている。ウォーキングビーム70は、フレーム68より長尺である。
【0038】
ウォーキングビーム70は、その一端部に、図1に示した第1の搬送路50からカソード22を受け入れる受け入れステージ72を有し、他方の端部に、第3の搬送路58に銅板28を受け渡す排出ステージ74を有している。また、受け入れステージ72と排出ステージ74との間に、フレキシングを行う第1のステージ54と、銅板28の剥離を行う第2のステージ56とを有しており、さらに、場合によっては他の処理を行うための第Nのステージまで有していても良い。これらの各ステージ72,54,56,74に、電極と電解槽で析出された一対の銅板28、28とからなる積層板が、図示したように立設した状態で支持されている。
【0039】
なお、以下の説明では、ステンレス板22aに銅板28、28が析出された3層構造の積層板であっても、析出金属板28aとして記載する。
【0040】
第2の搬送路52において、長尺なウォーキングビーム70の上に、図2に示したように、4つの析出金属板28が各ステージに置かれており、この状態を初期状態とする。この初期状態から、ウォーキングビーム70を1つのブロックとして、例えば、液圧シリンダあるいはラックアンドピニオンなどの駆動によりを矢印A’方向に移動させれば、ウォーキングビーム70上の4つの析出金属板28、28,28,28を、矢印A’方向に同時に移動させることができる。このとき、ウォーキングビーム70の移動距離を1つのステージ幅とすれば、全ての析出金属板28が1ステージ下流側にずれることになる。なお、ウォーキングビーム70は、ベアリング、ローラなどの支持機構を介してフレーム68上を移動するので、騒音の発生が少ない。また、この移動により、受け入れステージ72にあった析出金属板28を第1ステージ54に、第1ステージ54にあった析出金属板28を第2ステージ56に、第2ステージ56にあった析出金属板28を排出ステージ74に、それぞれ移動させることができる。なお、排出ステージ74にあった析出金属板28は、ステンレス板22aから分離され、銅板28、28は、ロボットアーム66により図1に示した第3の搬送路58に移載される。また、ステンレス板22aはリジェクトライン62に搬送される。
【0041】
このようにして各ステージ上の4つの析出金属板28は1ステージ、下流側に移動する。そして、第1ステージ54に移動した析出金属板28に対しフレキシングが行われ、第2ステージ56に移動した析出金属板28に対し剥離が行われる。
【0042】
このように析出金属板28の処理を連続的に途切れることなく処理するには、析出金属板28を1ステージ分移動させた後、ウォーキングビーム70をその都度、矢印A方向に戻す必要がある。その場合に、析出金属板28をウォーキングビーム70から若干浮き上がらせて、ウォーキングビーム70を析出金属板28に対し自由にしなければならない。
【0043】
このようにウォーキングビーム70を析出金属板28から離反させるため、本実施例では、以下に示すような機構が採用されている。
【0044】
図3および図4は、析出金属板28を若干上方に持ち上げるための機構を備えた本発明に係る析出金属板の搬送装置80を示したものである。
【0045】
本発明の一実施例に係る析出金属板の搬送装置80は、矢印A−A’方向に移動するウォーキングビーム70と、矢印B−B’方向に移動可能で、かつ矢印C−C’方向に揺動可能な持ち上げレバー73とから構成されている。このような持ち上げレバー73が所定のタイミングでウォーキングビーム70に形成された凹所77内に収容され、さらに、持ち上げレバー73、73がウォーキングビーム70に対し矢印B方向(上方向)に移動することにより、例えば、第1のステージ54に配置されている析出金属板28,28を下方から上方に持ち上げることができる。よって、本実施例では、ステンレス板22aと一対の銅板28とが完全に剥離されている場合であっても、銅板28を落下させることなく、この3層積層体を上方に持ち上げることができる。
【0046】
持ち上げレバー73は、先端部が略平坦部で途中が屈曲して形成されたもので、その先端部には、V溝75が形成されている。また、図4に示したように、この持ち上げレバー73は、ユニット取付け台90に取付けられることにり、矢印B−B’方向に移動可能に配置されている。すなわち、ユニット取付け台90上のスライドベアリング用レール82,82にスライドベアリング84,84が配置され、これにより矢印B−B’方向(上下方向)に移動可能に取付けられている。したがって、この持ち上げレバー73は、下方の昇降シリンダ86が駆動されることにより、矢印B方向あるいは矢印B’方向に移動可能である。
【0047】
さらに、この持ち上げレバー73は、持ち上げ摺動用シリンダ88の駆動により、矢印C−C’方向への揺動が可能とされている。したがって、図4において矢印C’方向に揺動した位置での二点鎖線で示したようにウォーキングビーム70から大きく離反して待機位置に置かれている持ち上げレバー73を、摺動用シリンダ86を矢印B方向に突出させることにより、持ち上げレバー73の先端部を矢印C方向に揺動させて、持ち上げレバー73の先端部をウォーキングビーム70の凹所77内に配置することができる。
【0048】
このように、持ち上げレバー73の先端部がウォーキングビーム70の凹所77内に配置された状態にしてから、昇降シリンダ86を再度突出させれば、持ち上げレバー73のみを、析出金属板28の下方にあてがってそのまま上方に持ち上げることができる。
【0049】
このように、析出金属板28をウォーキングビーム70から持ち上げた状態にしてから、すなわち、3層構造の析出金属板をウォーキングビーム70から浮かせた状態にしてから、ウォーキングビーム70のみを、図1において矢印A方向に移動させれば、ウォーキングビーム70を初期位置に戻すことができる。
【0050】
よって、このウォーキングビーム70を初期位置に戻してから、受け入れステージ72に新たな析出金属板28を受け入れれば、連続運転を行うことができる。
【0051】
なお、上記実施例では、1つの摺動用シリンダ86により、2つの持ち上げレバー73を同時に駆動させる構成を示したが、勿論、1持ち上げレバー73を別々に駆動させる構成であっても良い。
【0052】
このように、左右の持ち上げレバ−73を別々に駆動させる構成を採用すれば、仮に隣接する2つの異なるコンベアがどのような配置になるとしてもそのコンベアのチェーンと干渉することなく所望の持ち上げ動作を行うことができる。
【0053】
なお、本実施例では、1つの摺動用シリンダ86により2ヶ所の持ち上げレバー73,73を同時に持ち上げる析出金属板の搬送装置は、剥ぎ取り(剥離)を行う第2ステージ56以外の場所で使用されている。
【0054】
一方、剥ぎ取り(剥離)を行う第2ステージ56では、持ち上げレバー73、73を別々に駆動させる搬送装置が用いらている。
【0055】
以上説明したように本実施例によれば、チェーンコンベアを使用しない構造であるので、騒音の発生が少なく、また、チェーンコンベアの伸びに起因する問題も生じない。
【0056】
さらに、ウォーキングビーム70および持ち上げレバー73は、簡単な構造であるので安価である。
【0057】
また、例えば、剥離工程において、析出された銅板28がステンレス板22aから完全に剥離した状態であるとしても、その銅板28を落下させずにステンレス板22aとともに下方から持ち上げることができる。
【0058】
さらに、上記実施例では、析出金属として銅板を例示したが、析出金属は銅に限定されず、亜鉛などであっても良好に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
22 カソード
22a ステンレス板
23 支持部材
24 溝
28 銅板
30 剥ぎ取り機
50 第1の搬送路
52 第2の搬送路
54 第1のステージ
56 第2のステージ
58 第3のステージ
64,66 ロボットアーム
72 受け入れステージ
73 持ち上げレバー
74 排出ステージ
77 凹所
80 搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解槽内においてカソード電極の両面に析出された析出金属板を搬送路に受け入れた後、処理作業を行うための第1のステージ、第2のステージ、…第Nのステージに、それらの各上流側のステージに置かれている析出金属板を順番に1つ繰り上げて順次搬送する析出金属板の搬送装置であって、
前記析出金属板の下方に、少なくとも水平方向に往復移動可能で、かつ表面に前記受け入れステージ、前記第1のステージ、第2のステージ、…第Nのステージに対応する位置にそれぞれ上方に開口した凹所を備えた板状のウォーキングビームを配置するとともに、
前記ウォーキングビームの所定位置に形成された凹所内に対し先端部が出没自在であり、かつ上下方向に往復移動可能で前記ウォーキングビームとは独立して移動する持ち上げレバーを、前記ウォーキングビームと併設するように配置し、
前記析出金属板の下方に配置された前記ウォーキングビームにより、前記第1のステージ、前記第2のステージ、…前記第Nのステージに置かれている複数個の前記析出金属板を、同時に水平方向に搬送するとともに、1つづれた次のステージまで前記析出金属板が搬送されたときに、前記ウォーキングビームの移動を停止し、これに続いて前記持ち上げレバーの先端部を前記ウォーキングビームの前記凹所内に挿入し、さらに、この持ち上げレバーのみを上方に移動させることにより、前記析出金属板を前記ウォーキングビームから離反させて上方に持ち上げる一方、前記析出金属板が前記ウォーキングビームから離反して上方に持ち上げられた状態にしてから、前記ウォーキングビームのみを元の位置に復帰させることを特徴とする析出金属板の搬送装置。
【請求項2】
電解槽内においてカソード電極の両面に析出された析出金属板を搬送路に受け入れた後、処理作業を行うための第1のステージ、第2のステージ、…第Nのステージに、それらの各上流側のステージに置かれている析出金属板を順番に1つ繰り上げて順次搬送する析出金属板の搬送方法であって、
前記析出金属板の下方に、少なくとも水平方向に往復移動可能で、かつ表面に前記受け入れステージ、前記第1のステージ、第2のステージ、…第Nのステージに対応する位置にそれぞれ上方に開口した凹所を備えた板状のウォーキングビームを配置するとともに、
前記ウォーキングビームの所定位置に形成された凹所内に対し先端部が出没自在であり、かつ上下方向に往復移動可能で前記ウォーキングビームとは独立して移動する持ち上げレバーを、前記ウォーキングビームと併設するように配置し、
前記析出金属板の下方に配置された前記ウォーキングビームにより、前記第1のステージ、前記第2のステージ、…前記第Nのステージに置かれている複数個の前記析出金属板を、同時に水平方向に搬送するとともに、1つづれた次のステージまで前記析出金属板が搬送されたときに、前記ウォーキングビームの移動を停止し、これに続いて前記持ち上げレバーの先端部を前記ウォーキングビームの前記凹所内に挿入し、さらに、この持ち上げレバーのみを上方に移動させることにより、前記析出金属板を前記ウォーキングビームから離反させて上方に持ち上げる一方、前記析出金属板が前記ウォーキングビームから離反して上方に持ち上げられた状態にしてから、前記ウォーキングビームのみを元の位置に復帰させることを特徴とする析出金属板の搬送方法。
【請求項3】
前記持ち上げレバーは、前記ウォーキングビームによる前記析出金属板の搬送時には、待機状態に配置されることを特徴とする請求項2に記載の析出金属板の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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