説明

枚葉印刷機の給紙装置

【課題】積載された用紙を1枚ずつ確実に分離し、印刷機に供給する。
【解決手段】枚葉印刷機の給紙装置1は、積載された複数の用紙の最上に位置する1枚の用紙を吸引し持ち上げる第1サッカー2と、第1サッカー2が持ち上げた用紙を吸引し、該用紙を印刷機に送り出す第2サッカー3と、第1サッカー2の吸引力と第2サッカー3の吸引力とを個々に調整する圧力調整弁15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枚葉印刷機の給紙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の枚葉印刷機の給紙装置は、積載された用紙から1枚ずつ印刷機に供給することができるようになっている(例えば特許文献1参照)。
図4は、従来の枚葉印刷機に搭載されている給紙装置の構成の一例を示す。
図4に示すように、従来の給紙装置は、エアー分配弁101によりバキューム圧が分配された第1サッカー102と第2サッカー103とを備え、紙積み台104に積載された用紙からその最上に位置する1枚の用紙だけを第1サッカー102で吸引して持ち上げ、第1サッカー102が持ち上げた用紙を第2サッカー103で更に吸引し不図示の印刷機の方に送り出している。従来の給紙装置は、印刷機に送り出すための構成として、例えば、送りコロ105や差し板106等を有する。
【0003】
また、図4に示すように、従来の給紙装置は、吹き足107やさばき108から空気を送り出すことで、第1サッカー102で持ち上げた1枚の用紙をその下に位置する用紙から分離させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−11057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の給紙装置では、和紙等の空気を通し易い薄紙等に紙の厚さが変わることによって、第1サッカー102が2枚の用紙を同時に吸引してしまうことがある。この結果、2枚の用紙が印刷機に送り出されることになり、印刷機が停止することがあった。
【0006】
このようなことから、バキューム圧を変化させることも考えられる。しかし、第1サッカー102のためにバキューム圧を下げてしまうと、同時に第2サッカー103の吸引力も低下してしまう。この場合、第2サッカー103で用紙を並行に保って送り出すことができなくなり、用紙が曲がった状態で印刷機に送られてしまうことがある。この場合も、印刷機が停止する原因となってしまう。
【0007】
本発明の目的は、積載された用紙を1枚ずつ確実に分離し、印刷機に供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するために、請求項1に係る発明は、積載された複数の枚葉紙の最上に位置する1枚の枚葉紙を吸引し持ち上げる第1吸引部と、前記第1吸引部が持ち上げた枚葉紙を吸引し、該枚葉紙を印刷機に送り出す第2吸引部と、前記第1吸引部の吸引力と前記第2吸引部の吸引力とを個々に調整する調整手段と、を備えることを特徴とする枚葉印刷機の給紙装置である。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1の記載において、前記第1及び第2吸引部と配管により接続され、前記第1及び第2吸引部に吸引力を発生させるポンプを備え、前記調整手段は、前記ポンプと前記第1吸引部とを接続する配管に設けた圧力調整弁であることを特徴とする枚葉印刷機の給紙装置である。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2の記載において、前記第1吸引部が持ち上げた枚葉紙の下に位置する枚葉紙を上から押さえて、前記第1吸引部が持ち上げた枚葉紙とその下に位置する枚葉紙とを分離する吹き足を備え、前記吹き足は、該吹き足を操作する操作部材に対して上下方向に弾性自在に支持されることを特徴とする枚葉印刷機の給紙装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1吸引部の吸引力と第2吸引部の吸引力とを個々に制御することで、積載された用紙を1枚ずつ確実に分離し、印刷機に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の枚葉印刷機の給紙装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】本実施形態の枚葉印刷機の給紙装置の概略構成を示す他の側面図である。
【図3】吹き足の構成を示す側面図である。
【図4】従来の枚葉印刷機の給紙装置の概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の最良の形態について説明する。
(構成)
図1及び図2は、実施形態の枚葉印刷機の給紙装置1の概略構成を示す図である。
図1及び図2に示すように、第1及び第2サッカー(吸口)2,3、バキューム圧発生装置(又はサッカー位置制御装置)10、吹き足4、及び用紙搬送部20を有する。
【0014】
バキューム圧発生装置10は、第1及び第2サッカー2,3に吸引力(バキューム圧力)を発生させるように構成されている。具体的には、図1に示すように、バキューム圧発生装置10は、バキューム圧を発生させるドライポンプ11と、ドライポンプ11が発生するバキューム圧を分配する分配弁12と、分配弁12と第1及び第2サッカー2,3とをそれぞれ接続する各ポンプ配管13,14と、分配弁12と第1サッカー2のポンプ配管13との間(又はポンプ配管13の途中)に配置された圧力調整弁(又は流量調整弁、スピコン)15と、を有する。
【0015】
これにより、第1及び第2サッカー2,3では、バキューム圧が発生するとともに、第1サッカー2については圧力調整弁15によりそのバキューム圧(吸引力)が制御可能になっている。
なお、第1サッカー2のバキューム圧の制御、又は第1及び第2サッカー2,3のバキューム圧の制御を圧力調整弁15以外の手段により行っても良い。
【0016】
第1サッカー2は、紙積み台に積載された用紙に対して位置制御されるようになっている。第1サッカー2は、位置制御されて、不図示の紙積み台に積載された用紙から最上に位置する1枚の用紙を吸引し持ち上げる。第2サッカー3は、第1サッカー2が持ち上げた用紙を吸引し、図2に示すように、用紙搬送部20側に並行移動して用紙搬送部20にその用紙100を送り出す。
【0017】
図2に示すように、吹き足4は、ほぼL字形状をなしている。吹き足4には、紙の給紙方向に延びる下部4aの先端に吹出し口4cが形成されている。この吹き足4は、上端部(根元)から空気が供給されて、吹出し口4cから空気が吹き出すようになっている。この吹き足4は、上下移動及び前後移動し該吹き足4を操作する操作部材5に取り付けられている。また、吹き足4は、その途中が弾性体により構成されている。
【0018】
図3は、吹き足4の構成の一例を示す。図3に示すように、吹き足4は、上部4bと下部4aとがバネ等の弾性体4dにより連結されている。
以上のような構成の吹き足4は、第1サッカー2が吸引し持ち上げた用紙の下に位置する用紙を上から押さえるとともに、第1サッカー2が吸引し持ち上げた用紙とその下に位置する用紙との間に、吹出し口4cから空気(紙さばき用エアー)を吹き出す。これにより、吹き足4は、第1サッカー2が持ち上げた用紙とその下に位置する用紙とを完全に分離させている。また、吹き足4は、操作部材5により操作されて第1サッカー2による用紙の吸引と同時に上下運動して、第1サッカー2が2枚同時に吸引しないようにもしている。
【0019】
図1に示すように、用紙搬送部20は、各種のフィーダローラ(又は送り出しコロ等)21,22,23により構成されている。図2に示すように、用紙搬送部20は、第2サッカー3により送り出される用紙100が供給されて、その供給された用紙100を不図示の印刷機側まで搬送する。このとき、不図示のシートフラップが紙流れ方向へ倒れこみ、積載された用紙の最上面の紙のみを送り出すようになっている。
【0020】
(動作等)
給紙装置1は、積載された用紙の最上に位置する用紙を第1サッカー2で吸引し持ち上げる。このとき、給紙装置1は、第1サッカー2が持ち上げた用紙とその下に位置する用紙との間に吹き足4により紙さばき用エアーを吹き込み、それら用紙を完全に分離させる。さらに、給紙装置1は、第2サッカー3が用紙を吸引し、その吸引状態のまま前進して用紙を用紙搬送部20に送り出す。その際、不図示のシートフラップが紙流れ方向へ倒れこみ、積載された用紙の最上面の用紙のみを用紙搬送部20に送り出す。
【0021】
前述のように、給紙装置1は、第1サッカー2の吸引力を圧力調整弁15により制御しており、第1サッカー2の吸引力と第2サッカー3の吸引力とを個々に制御している。
これにより、給紙装置1は、第1サッカー2の吸引力を圧力調整弁15により制御することで、薄紙等に紙の厚さが変わっても、第1サッカー2で確実に1枚の用紙を吸引することができる。
【0022】
さらに、給紙装置1では、第1サッカー2の吸引力と第2サッカー3の吸引力とを個々に制御できるため、第1サッカー2の吸引力を制御した場合でも第2サッカー3の吸引力を適切に維持できる。この結果、給紙装置1は、用紙を曲がった状態で印刷機に送り出してしまうようなことがなく、確実に用紙を印刷機に送り出すことができる。
【0023】
また、給紙装置1では、吹き足4が上部4bと下部4aとがバネ等の弾性体4dにより連結されていることで、操作部材5に対して吹き足4が上下方向で弾性自在に支持された状態になっている。
【0024】
ここで、従来の給紙装置では、吹き足が上下運動すると用紙がバウンドし、跳ね返りが起きることで、2枚止めを飛び越え2枚の用紙が同時に給紙されてしまうことがあった。この結果、2枚止め検知により、装置が停止してしまうことがあった。
これに対して、本実施形態の給紙装置1では、吹き足4が上下方向に弾性自在に支持された状態になっていることで、吹き足4の用紙に対する衝撃を和らげて用紙のバウンドを抑えることができ、用紙の分離を安定させ、2枚の用紙を給紙してしまうのを防止できる。
【0025】
また、給紙装置1では、紙積み台に積載された用紙に対して第1サッカー2を位置制御している。これにより、給紙装置1は、積載された用紙の最上に位置する1枚の用紙を第1サッカー2で安定して吸引し持ち上げることができる。この結果、給紙装置1は、2枚取りなどの給紙不良の発生を防ぐことができる。
なお、本実施形態では、第1吸引部として第1サッカー2を用いている。また、第2吸引部として第2サッカー3を用いている。また、調整手段として圧力調整弁15を用いている。
【符号の説明】
【0026】
1 給紙装置、2 第1サッカー、3 第2サッカー、4 吹き足、5 操作部材、10 バキューム圧発生装置、11 ドライポンプ、12 分配弁、13,14 ポンプ配管、15 圧力調整弁、20 用紙搬送部、100 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載された複数の枚葉紙の最上に位置する1枚の枚葉紙を吸引し持ち上げる第1吸引部と、
前記第1吸引部が持ち上げた枚葉紙を吸引し、該枚葉紙を印刷機に送り出す第2吸引部と、
前記第1吸引部の吸引力と前記第2吸引部の吸引力とを個々に調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする枚葉印刷機の給紙装置。
【請求項2】
前記第1及び第2吸引部と配管により接続され、前記第1及び第2吸引部に吸引力を発生させるポンプを備え、
前記調整手段は、前記ポンプと前記第1吸引部とを接続する配管に設けた圧力調整弁であることを特徴とする請求項1に記載の枚葉印刷機の給紙装置。
【請求項3】
前記第1吸引部が持ち上げた枚葉紙の下に位置する枚葉紙を上から押さえて、前記第1吸引部が持ち上げた枚葉紙とその下に位置する枚葉紙とを分離する吹き足を備え、
前記吹き足は、該吹き足を操作する部材に対して上下方向に弾性自在に支持されることを特徴とする請求項1又は2に記載の枚葉印刷機の給紙装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−207585(P2011−207585A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77100(P2010−77100)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】