説明

枚葉紙への転写方法

【課題】フィルムを胴から離間させてフィルムの模様を枚葉紙に転写しない場合には、フィルムの走行を停止することができるだけでなく、走行の再開時にフィルムと胴の速度と位相とを合わせた状態で両者をドッキングさせることができる枚葉紙への転写方法を提供する。
【解決手段】胴19を一定速度で回転させる一方、前記フィルム5を第1走行経路S1に位置させて走行停止状態としておき、該フィルム5を第1走行経路S1から第2走行経路S2に移動させてドッキング状態とする前に、該フィルム5の走行速度と前記胴19の回転速度とを一致させるとともに該フィルム5に一定間隔毎に備えているマーク23と該胴19の爪Gの位相を合わせるべく、5つの工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷された枚葉紙に、転写用のフィルムを押し付けることにより、金箔、エンボス模様やホログラム模様等を転写して印刷面の付加価値を高めるための枚葉紙の転写部に関し、より具体的にはフィルムを押し付ける前にフィルムと枚葉紙の速度と位相とを合わせることができる枚葉紙への転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように印刷された枚葉紙に付加価値を付ける艶出し装置が提案されている。これは、印刷ユニットにて印刷された枚葉紙に紫外線硬化型樹脂ワニス(ニスとも言う)を塗布するニスユニットと、このニスユニットにてニスが塗布された枚葉紙に転写用のフィルムを押し付けて転写するためのホログラム形成ユニットとを備え、前記ホログラム形成ユニットが、枚葉紙を搬送する圧胴と、この圧胴上の枚葉紙にフィルムを押圧する一対の押圧ローラと、押圧ローラにて枚葉紙にフィルムを押圧している際にニスを硬化させる紫外線照射部と、前記一対の押圧ローラを圧胴に対して上方側に移動した退避位置と圧胴に近接した押圧位置とに接離可能に構成して、ホログラム形成(表面処理)を行わない場合には、押圧ローラを圧胴に対して上方側に移動した退避位置に位置させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−315229号公報(図1及び図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1の艶出し装置によれば、フィルムの模様を枚葉紙に転写しない場合には、前記のようにフィルムを圧胴から離間させることになるが、離間させた状態においても、フィルムが印刷機と同期して空走行している状態になっているため、フィルムの耐久面において不利になるだけでなく、ランニングコストも高くなる不都合があった。
又、フィルムと圧胴の位相を合わせる手段を備えていないため、枚葉紙の特定位置にフィルムの模様を合わせることができず、使用し難いものであった。
【0004】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、フィルムを胴から離間させてフィルムの模様を枚葉紙に転写しない場合には、フィルムの走行を停止することができるだけでなく、走行の再開時にフィルムと胴の速度と位相とを合わせた状態で両者をドッキングさせることができる枚葉紙への転写方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、転写用のフィルムが胴から離反した第1走行経路と該胴に接近した第2走行経路の双方においてそれぞれ走行可能となっているフィルム走行機構を備えた印刷機において該フィルムを第2走行経路に走行させながら、胴に備えた爪にて掴んで搬送される枚葉紙に押し付けることにより該枚葉紙に該フィルムの模様を転写する枚葉紙への転写方法であって、
前記胴を一定速度で回転させる一方、前記フィルムを第1走行経路に位置させて走行停止状態としておき、該フィルムを第1走行経路から第2走行経路に移動させてドッキング状態とする前に、該フィルムの走行速度と前記胴の回転速度とを一致させるとともに該フィルムに一定間隔毎に備えているマークと該胴の爪の位相を合わせるべく、下記工程、つまり、
(イ)前記フィルムが第1走行経路で走行停止状態において該フィルムの特定のマークを選択する工程。
(ロ)前記第2走行経路において前記特定のマークの位置から前記フィルムと前記枚葉紙とが合流する接触開始点までの走行経路長を求める工程。
(ハ)停止状態から前記胴の一定速度まで加速する所定の加速条件とその加速後の前記一定速度の条件とによって、第1走行経路において前記フィルムを停止状態から前記走行経路長だけ走行させると仮定した際に、前記走行経路長だけ走行するのに要する時間を求める工程。
(二)前記爪が接触開始点から起算して前記(ハ)工程で求めた時間前の位置に位置した時に第1走行経路において前記フィルムの走行を開始させて、前記 (ハ)工程で求めた時間が経過するまでに該フィルムを前記胴の一定速度にする工程。を行うことを特徴としている。
まず、フィルムが第1走行経路で走行停止状態においてフィルムの長手方向に備えたマークのうちの特定のマークを選択し、第2走行経路において選択された特定のマークの位置からフィルムと枚葉紙とが合流する接触開始点までの走行経路長を求める。次に、停止状態から胴の一定速度まで加速する所定の加速条件とその加速後の一定速度の条件とによって、第1走行経路においてフィルムを停止状態から前記求めた走行経路長だけ走行させると仮定した際に、走行経路長だけ走行するのに要する時間を求める。この時間を胴の回転時間に置き換える、つまり爪が接触開始点から起算して前記(ハ)工程で求めた時間前の位置に位置したと仮定し、その時に第1走行経路において前記フィルムの走行を開始させて、(ハ)工程で求めた時間が経過するまでにフィルムを胴の一定速度にすることによって、フィルムの走行速度と胴の回転速度とを一致させるとともにフィルムの特定のマークと胴の爪の位相を合わせることができる。この後は、フィルムを胴に接近させて第2走行経路を走行させることによって、枚葉紙の特定位置にフィルムの模様を転写することができる。
【0006】
前記走行経路長が、前記(ハ)工程の所定の加速条件で前記フィルムを停止状態から走行させると仮定した際に、該所定の加速終了時点までに走行する長さ以下である場合には、該マークよりも走行方向後方となるマークを前記(イ)工程において選択してもよい。
【発明の効果】
【0007】
フィルムを第1走行経路から第2走行経路に移動させてドッキング状態とする前に、該フィルムの走行速度と前記胴の回転速度とを一致させるとともに該フィルムに一定間隔毎に備えているマークと該胴の爪の位相を合わせることができるから、転写を行わない場合には、フィルムの走行を停止しておくことができるだけでなく、再開して転写する場合や印刷機を起動して転写する場合には、枚葉紙の特定位置にフィルムの模様を確実に転写することができ、耐久面及びランニングコスト面更には使用面において有利な枚葉紙への転写方法を提供することができる。
【0008】
前記走行経路長が、前記(ハ)工程の所定の加速条件で前記フィルムを停止状態から走行させると仮定した際に、該所定の加速終了時点までに走行する長さ以下である場合には、該マークよりも走行方向後方となるマークを前記(イ)工程において選択するように構成している場合には、フィルムと胴の速度と位相とを合わせることができない走行長さを実際にフィルムを走行させてしまうことを阻止することができ、効率のよい走行制御を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に、印刷用紙の印刷面に樹脂ワニスを塗布して光沢を出し、その上から更に金箔、エンボス模様やホログラム模様等を転写することにより、印刷面を加工することができる転写装置6が組み込まれた印刷機の一例を示している。この印刷機は、紙積み台からフィーダ装置や用紙分離装置等により一枚ずつ枚葉紙2を送り出すための給紙部1と、この給紙部1からの枚葉紙2に5色の印刷を行うための印刷部3と、該印刷部3にて印刷された印刷用紙としての枚葉紙2に紫外線硬化型樹脂ワニス(ニスとも言う)を塗布(コーティング)するワニス塗布部4と、該ワニス塗布部4にて紫外線硬化型樹脂ワニスが塗布された枚葉紙2の紫外線硬化型樹脂ワニス上に復元力を有する伸縮自在な材料(例えばポリエチレンテレフタレート、所謂PETの他、他の材料でもよい)からなる転写用のフィルム5を押し付けて該枚葉紙2の表面加工を行うための転写部Fと、該転写部Fにて表面加工された枚葉紙2を排紙するための排紙部7とを備えている。ここでは、5色の印刷が行えるように5台の印刷ユニット8,9,10,11,12を備えた印刷部3としているが、5色以外の色、つまり1色又は2色以上の印刷が行える印刷部であってもよい。又、前記排紙部7は、グリッパを備えるチェーン搬送装置にて構成しているが、この排紙部7のない印刷機であってもよいし、又、印刷機を構成する各部の具体的な構成は図に示されるものに限定されるものではない。 又、前記転写装置6を印刷機に組み込んで使用する他、印刷機に組み込まないで単独で使用するようにしてもよい。
【0010】
前記印刷面に金箔を付着させる場合には、フォイラーと呼ばれる箔押しにて印刷物を押圧することによって、印刷物の糊(ニスでもよい)の付いた部分に基材から金箔が剥がれて付着することになる。前記印刷面に金箔以外のものを付着させる構成であってもよい。
【0011】
前記印刷ユニット8〜12は、印刷用圧胴8A〜12Aを備え、これら印刷用圧胴8A〜12Aの搬送方向上流側のそれぞれには、各印刷用圧胴へ枚葉紙2を渡すための渡し胴8B〜12Bを備えている。尚、前記渡し胴8B〜12Bのうちの搬送方向始端側に位置する径の小さな渡し胴8Bを給紙胴とも言い、この渡し胴8Bとフィーダ装置や用紙分離装置等とから前記給紙部1を構成している。そして、図示していないが、前記胴8A〜12A及び渡し胴9B〜12Bのそれぞれには、送り出されてきた枚葉紙2を爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の2箇所(図2では1箇所のみ図示している。尚、1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。尚、前記径の小さな渡し胴8Bには、図示していないが、枚葉紙2を爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の1箇所に備えている。又、前記ワニス塗布部4は、紫外線硬化型樹脂ワニスが供給されるニス胴4Aとこれら対抗配置して印刷された枚葉紙2に紫外線硬化型樹脂ワニスを塗布するための圧胴4Bとを備えている。
この圧胴4Bへ枚葉紙2を受け渡すための渡し胴14を備えている。これら胴14,4Bにも図示していないが、前記同様に送り出されてきた枚葉紙2を爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の2箇所(1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。
【0012】
図1および図2に示すように、前記転写装置6は、前記胴4Bからの枚葉紙2を受け渡すために設けられた渡し胴18から枚葉紙2を受け取る圧胴19と、圧胴19上の枚葉紙2に前記フィルム5を押し付けて転写するためのフィルム転写機構20とを備えている。前記フィルム転写機構20が枚葉紙2の処理を行う処理手段であり、前記フィルム転写機構20は、ワニス塗布部4にて塗布された紫外線硬化型樹脂ワニスを接着剤として利用しながら前記フィルム5を枚葉紙2に押し付けて、フィルム5から枚葉紙2に金箔、エンボス模様やホログラム模様等を転写する。前記枚葉紙2の紫外線硬化型樹脂ワニスにフィルム5を押し付けることによって、紫外線硬化型樹脂ワニスの塗布面を平滑にすることができ、光沢度をアップさせることができる。そして、押し付けられたフィルム5の上から紫外線照射ランプ21,22(1個又は3個以上であってもよい)からの紫外線を照射することによって、紫外線硬化型樹脂ワニスを硬化させるようにしている。前記渡し胴18も、前記同様に、枚葉紙2を把持するグリッパを周方向2箇所(1箇所又は3箇所以上であってもよい)に備えている。又、前記圧胴19は、前記渡し胴18よりも直径が大きな所謂3倍胴と言われる胴になっており、前記同様に、グリッパを円周方向の3箇所(図3に3つのグリッパを構成する爪Gの位置を示しているが、1箇所又は2箇所あるいは4箇所以上に爪を備えて実施してもよい)に備えており、圧胴19が1回転する間に渡し胴18が1.5回転することにより、前記のように圧胴19側の爪Gに渡し胴18の爪からの枚葉紙2を受け渡すことができるようになっている。右側で下側に位置する爪Gが上方に移動して枚葉紙2が圧胴19の爪G(破線で示している)に受け渡された状態を図3に示している。前記圧胴19を他の胴に比べて大きな直径(3倍胴)とすることによって、紫外線照射を行う乾燥処理区間を多く確保することができるだけでなく、ワニス塗布部4との距離が長く確保できる利点があるが、他の胴と同一の直径であってもよい。
【0013】
前記転写装置6について詳述すれば、図1及び図2に示すように、前記フィルム5が巻き付けられるとともに送り出し可能な供給ロール13と、この供給ロール13から送り出されたフィルム5を前記圧胴19上の枚葉紙(印刷用紙)2に押し付ける2個(1個又は3個以上でもよい)の押圧ローラ15,16と、該押圧ローラ15,16にて前記フィルム5を押圧した後、印刷用紙から剥離される該フィルム5を巻き取る巻取用ロール17とを備えている。そして、図2に示すR1〜R10が、供給ロール13と搬送方向上流側に位置する押圧ローラ15との間に配置されたフィルム案内用のローラであり、このうちのR9とR5が、駆動ローラになっている。又、R13〜R16が、搬送方向下流側に位置する押圧ローラ16と巻取用ロール17との間に配置されたフィルム案内用のローラである。又、ローラR4は、送り出し側に設けたテンションローラであり、所定のテンションをかけるようにしている。又、ローラR15は、巻き取り側に設けたテンションローラであり、所定のテンションをかけるようにしている。前記搬送方向下流側に位置する押圧ローラ16を圧胴19から上方へ設定距離離間した位置に配置しているのは、フィルム5と枚葉紙2との分離(剥離)をスムーズに行うことができるようにするためであるが、押圧ローラ16を圧胴19に圧接した状態であってもよい。前記供給ロール13は、供給ロール用の電動モータM1の動力を用いて駆動回転され、前記巻取用ロール17は、巻取用ロール用の電動モータM2を用いて駆動回転されるようになっており、これら2つの電動モータM1,M2と前記駆動ローラR9,R5を駆動回転するための2つの電動モータ28,30の4つの電動モータは基本的には同期運転されるようになっているが、フィルム5の弛みや必要以上の張力が発生したときに原因となる電動モータの回転速度を制御して弛みや必要以上の張力を良好に解消できるようにしている。前記供給ロール13から送り出したフィルム5を巻取用ロール17に巻き取れるように構成する他、フィルム5をエンドレスに搬送できるようにロールを配置して構成したものであってもよい。前記4つの電動モータM1,M2,28,30が、後述する第1走行経路S1と第2走行経路S2のいずれの走行経路でもフィルム5を走行させることができるフィルム走行機構を構成している。電動モータ28,30からの動力は、タイミングベルト29,31をそれぞれ介して駆動ローラR9,R5に伝達されるようになっている。
【0014】
前記転写部Fを前記圧胴19に対して離間又は接近させるための駆動手段を備え、その駆動手段は、図2に示すように、エアシリンダ36の伸縮ロッド36Aに、転写装置6のケーシング6Aに回転自在に固定されたギヤ37に噛み合う歯部を形成し、前記伸縮ロッド36Aの伸縮により回転されるギヤ37の回転力を上下移動力に変換する歯部を備えたラック38の下端を、前記押圧ローラ15,16等が取り付けられた支持部材39の枚葉紙搬送方向ほぼ中央部の上端に連結している。従って、表面処理、つまりフィルム5の模様の転写を行わない場合又は印刷作業終了後に伴い電源をOFFする場合には、エアシリンダ36の伸縮ロッド36Aを図2の2点鎖線で示す上昇位置まで伸長させることにより、ギヤ37が反時計回りで回転してラック38を2点鎖線で示す上方位置まで移動させるとともに、支持部材39を上方位置へ移動させるのである。これにより、転写部F(押圧ローラ15,16及び両押圧ローラ15,16間に掛かっているフィルム5)を圧胴19に対して離反させることができるようになっている。また、転写部Fを下降させるためには、前記エアシリンダ36の伸縮ロッド36Aを図2の破線で示す位置まで短縮させることにより、転写部F(押圧ローラ15,16及び両押圧ローラ15,16間に掛かっているフィルム5)を圧胴19に対して接近させる(図2の実線参照)ことができるようになっている。ここでは、上下方向に前記転写部Fを移動させる場合を示しているが、胴19に対して接近又は離反する方向は自由に変更することができる。図では、転写装置6の下端に位置する転写部Fを圧胴19に対して離反させる構成とすることによって離反させるための構成を小型化することができる利点があるが、転写装置6全体を圧胴19に対して離反させる構成としてもよい。
【0015】
図2及び図3に示すように、前記フィルム5が胴19から離反した第1走行経路S1(2点鎖線で示す)と該胴19に接近した第2走行経路S2(実線で示す)の双方においてそれぞれ走行可能となっているフィルム走行機構は、4つの電動モータM1,M2,28,30でなり、これら4つの電動モータM1,M2,28,30を作動させることにより、転写部Fの上昇位置及び下降位置のいずれにおいてもフィルム5を走行させることができるようになっている。具体的には、転写部Fを下降位置から上昇位置に移動させる場合には、フィルム5が弛まないように4つの電動モータM1,M2,28,30の駆動を制御し、転写部Fを上昇位置から下降位置に移動させる場合には、フィルム5に必要以上のテンションが加わることがないように4つの電動モータM1,M2,28,30の駆動を制御するように構成されている。尚、胴19に対して転写部Fのドッキングを解除した上昇位置に位置するまでは、4つの電動モータM1,M2,28,30の同期を取りながら駆動し、その後それらを駆動停止することになる。
【0016】
前記転写部Fを下降させて胴19にドッキングさせるドッキング状態とする前に、該フィルム5の走行速度と前記胴19の回転速度とを一致させるとともに該フィルム5に一定間隔毎に備えているマーク23と該胴19の爪Gの位相を合わせるように構成しており、以下においてそれらの構成について説明する。
【0017】
まず、前記マーク23について説明すれば、図5に示すように、無色透明の薄いシートからなるフィルム5上に所定間隔をおいて黒色(検出可能な色であればどんな色であってもよい)に塗布されたものがマーク23であるが、図のフィルム5の長手方向に並ぶマーク23,23間に備える模様24をマークとしてもよいし、例えばフィルムの多数枚を繋ぎ合わせてフィルムとしている場合には、その繋ぎ目(半透明部分)をマークとしてもよい。又、図では模様24を全て同じものにしているが、異なる模様であってもよい。又、前記模様は、マーク間の一部にのみ形成されている構成の他、フィルムの全域に形成されていてもよい。
【0018】
前記胴19は、印刷機が駆動されることにより同期して回転し、一定速度(アイドリング速度)になると、印刷が開始されるまでその一定速度で回転されるように構成している。これに対して、前記フィルム5は、第1走行経路S1に位置している状態で走行停止状態としておき、該フィルム5を第1走行経路S1から第2走行経路S2に移動させて胴19に対してドッキング状態にして、フィルム5の模様を枚葉紙2に転写するように構成している。
【0019】
前記マーク23と該胴19の爪Gの位相を合わせるための工程として、(イ)から(二)の5つの工程を示し、これらを順番に実行するようにしている。それら5つの工程は、具体的には、
(イ)前記フィルム5が第1走行経路S1で走行停止状態において該フィルム5の特定のマーク23を選択する工程。
これは、図3に示すように、フィルム5を上昇位置に移動させてから停止したときの マーク23が後述するセンサ25を通り過ぎた位置を記憶することによって、そのマー ク23を選択するようにしている。実際にはマーク23をセンサ25にて検出してから 、前記駆動ローラR5がフィルム5を送り出した距離を駆動ローラR5の回転数を読み 取るロータリエンコーダ(図示せず)にて算出し、そのセンサ25からマーク23まで の距離を記憶させることになる。
(ロ)前記第2走行経路S2において前記記憶した特定のマーク23の位置から前記 フィルム5と前記枚葉紙2とが合流する接触開始点Tまでの走行経路長Lを求める工程 。
図3に示すように、第1走行経路S1におけるフィルム5の駆動ローラR9(図2参 照)から押圧ローラ15までの姿勢と、第2走行経路S2の駆動ローラR9(図2参照 )から押圧ローラ15までの姿勢が異なっているため、第1走行経路S1におけるフィ ルム5の特定のマーク23の位置に基づいて第2走行経路S2におけるマーク23の位 置からフィルム5と枚葉紙2とが合流する接触開始点Tまでの走行経路長Lを求めると 、第1走行経路S1におけるフィルム5の特定のマーク23の位置と第2走行経路S2 におけるマーク23の位置とが異なることから、走行経路長Lを精度良く求めることが できないと思われるが、センサ25がマーク23を検出してからの駆動ローラR9の送 り出し長さは、いずれの走行経路S1,S2であっても同一長さであるため、第2走行 経路S2において第1走行経路S1で求めた特定のマーク23の位置からフィルム5と 枚葉紙2とが合流する接触開始点Tまでの走行経路長Lを誤差のない正確な値で求める ことができるのである。又、例えば、第1走行経路S1におけるフィルム5の特定のマ ーク23の位置を求めてから、フィルム5の走行を停止した状態で転写部Fを下降させ 、その下降位置にて特定のマーク23から接触開始点Tまでの走行経路長Lを求めたも のを多数揃えてテーブル化しておき、そのテーブル化されたデータを用いるようにすれ ば、第1走行経路S1におけるフィルム5の特定のマーク23の位置からテーブル化さ れたデータを抽出することで、正確な接触開始点Tまでの走行経路長Lを求めることが できる。
(ハ)停止状態から前記胴19の一定速度まで加速する所定の加速条件とその加速後の前記一定速度の条件とによって、第1走行経路S1において前記フィルム5を停止状態から前記走行経路長Lだけ走行させると仮定した際に、前記走行経路長Lだけ走行するのに要する時間tYを求める工程。
例えば図4に示すように、等加速度で速度V2(前記胴19の速度と同一のアイドリング速度)まで加速した加速度領域L1(三角形で囲まれた領域)と、加速終了後に一定速度V2を維持する一定速度領域L2(長方形で囲まれた領域)とで走行経路長Lになると仮定し、走行経路長Lだけ走行するのに要する時間tYを求めるようにしている。つまり、加速度領域L1でフィルム5の走行速度を合わせることができ、一定速度領域L2でフィルム5と胴19との位相を合わせるようにするべく、一定速度領域L2での距離tXを求めるようにしている。図4で示す距離t1は予め設定されている既知の値であり、前記走行経路長とアイドリング速度も既知の値であることから、それらの値から距離tXを求めることができる。
前記求めたtXとt1との和を求めれば、tYになる。ここでは、加速度条件として示した等加速度の角度θの値(傾き)は自由に変更することができ、又、段階的に加速度が変化するようなものであってもよいし、カーブ(曲線)を描くような加速度であってもよく、アイドリング速度まで到達する加速度条件は、どのようなものであってもよい。
(二)前記爪Gが接触開始点Tから起算して前記(ハ)工程で求めた時間前の位置T1に位置した時に第1走行経路S1において前記フィルム5の走行を開始させて、前記(ハ)工程で求めた時間tYが経過するまでに該フィルム5を前記胴19の一定速度にする工程。
上記5つの工程を順次実行することによって、フィルム5と胴19の速度と位相とを合わせるようにしている。そして、フィルム5と胴19の速度と位相とを合わせた後は、フィルム5を下降させて胴19にドッキングさせた状態でフィルム5の模様24を枚葉紙2の所定箇所に転写することができるようにしている。
【0020】
(イ)工程の特定のマーク23を選択する場合に用いるマーク23の位置を検出する位置検出手段としては、投光部25Aと受光部25Bとからなる光電センサ25を用いているが、他のものであってもよい。そして、前記センサ25は、駆動ローラR9を通過した直後の位置(フィルム転写が開始される地点から設定距離離れたフィルム供給側の位置)に、フィルム5を挟んで両側に投光面と受光面とが対向位置する状態で配置してなり、フィルム5の走行が停止するまでに一番最後に光電センサ25を通過したマーク23を特定のマーク23として選択し、光電センサ25にて検出したときから、駆動ローラR9が回転した量(角度)をポテンショメータ等により検出して光電センサ25から走行したマーク23の距離lを、接触開始点Tから光電センサ25までの予め記憶されている距離l1から差し引くことによって、接触開始点Tから、光電センサ25にて検出したマーク23の位置までの距離Lを求めることができるようになっている。
【0021】
前記走行経路長Lが、前記(ハ)工程の所定の加速条件で前記フィルム5を停止状態から走行させると仮定した際に、該所定の加速終了時点までに走行する長さ以下である場合には、該マーク23よりも走行方向後方となるマーク23を前記(イ)工程において選択することによって、所定の加速終了時点までに走行する長さよりも走行経路長Lが長くして、フィルム5の無駄な走行制御を行うことがないようにしている。尚、選択されたマーク23よりも走行方向後方となるマーク23を選択しても、走行経路長Lが所定の加速終了時点までに走行する長さ以下になる場合には、更に走行方向後方となるマーク23を選択することになる。前記選択するマークを、フィルム5が停止するまでにセンサ25にて検出したマーク23のうちの最後のマークとする他、そのマーク23よりも走行方向後方側に位置するマーク23のうちの走行方向始端側に位置する第1番目マーク23であってもよいし、その第1番目マーク23の後ろ側に位置する第2番目のマーク23であってもよい。
【0022】
上記5つの工程は、制御装置U内に備えている各種の手段によって自動的に実行されるように構成されており、これを図6に基づいて説明する。
つまり、(イ)において特定のマーク23を選択する工程が、マーク選択手段26であり、(ロ)において選択されたマーク23の位置から接触開始点Tまでの走行経路長を求める工程が、走行経路長演算手段27であり、(ハ)において走行経路長を走行するのに要する時間を求める工程及び(二)のフィルム5の走行を開始する工程が、時間を求めて爪Gの位置T1を演算する爪位置演算手段33と、演算後にフィルム5の走行を開始するフィルム走行開始手段34と、このフィルム開始後においてフィルム5の走行速度を制御するべく、フィルム走行機構M1,M2,28,30に駆動制御信号を出力するための走行速度制御手段35とから構成されている。前記演算手段は予め演算された膨大なデータを制御装置のメモリ部に記憶しておき、それら記憶されたデータの中から抽出する構成とすることによって、フィルムの走行開始までの処理時間を短くすることができるが、演算式をメモリしておき、その都度データを入れて演算して求めてもよい。
【0023】
前記フィルム5が上昇位置で停止している状態で、印刷機の運転が開始される又は転写作業を行わず、印刷機にて印刷作業のみを行っている状態において、フィルム5の転写作業を行う転写作業モードになると、まず、フィルム5のマーク23のうちの特定のマーク23が選択され、そのマーク23の位置がフィルム5が停止した時に記憶している位置を取り出し、そのマーク23の位置からテーブル化されているデータの中から第2走行経路S2における走行経路長Lを取り出し、その走行経路長Lを走行したときに要する時間を予め記憶されているデータの中から取り出すととともにそのデータに対応する爪Gの位置T1を別のデータから取り出し、その爪Gの位置T1に爪Gが位置したことが、胴19の回転角度を検出するロータリエンコーダからの検出情報に基づいて判断され、その位置にてフィルム走行機構である4つの電動モータM1,M2,28,30を駆動してフィルム5の走行を開始させ、フィルム5の走行速度と位相を胴19の回転速度と位相に合わせることができるようにしている。フィルム5の実際の走行は、(ハ)工程で走行経路長を走行するのに要する時間を求めるために用いた図4のグラフのように、加速度領域L1(図では等加速度であるが、前述のようにどのような加速度であってもよい)と一定速度領域L2にて走行させるようにしてもよいが、加速度領域L1のみで走行させるようにしてもよい。つまり、図4のX点と0とを結ぶ等加速度にて走行させるようにしてもよいし、一定速度領域L2のないX点と0とを結ぶどのようなライン(複数の直線からなる折れ線や曲線)であってもよい。前記フィルム5の走行速度と位相を胴19の回転速度と位相に合わせた後、つまり図4のX点に到達した後は、どのタイミングにおいてもフィルム5を下降させても、フィルム5と胴19の速度と位相とを合わせた状態で、フィルム5の模様を胴19の所定箇所に合わせた状態で繰り返し転写することができるようにしている。
【0024】
前記排紙部7には、処理装置にて処理されて搬送されてきた枚葉紙2を受け取って所定位置まで搬送するための搬送装置を備えている。この搬送装置は、枚葉紙を把持するグリッパ(図示していないが、前述したグリッパと基本構成は同一である)を枚葉紙の搬送方向両端に配置された左右一対ずつのスプロケット7A,7Bに掛け渡された無端走行体である左右一対のチェーン7Cに掛け渡されている(図1参照)。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】枚葉印刷機の概略側面図である。
【図2】転写装置の側面図である。
【図3】特定のマークの位置からフィルムと枚葉紙とが合流する接触開始点までの走行経路を示す説明図である。
【図4】フィルムの走行速度と所要時間との関係を示すグラフである。
【図5】フィルムの平面図である。
【図6】制御ブロック図である。
【符号の説明】
【0026】
1…給紙部、2…枚葉紙、3…印刷部、4…ワニス塗布部、4A…ニス胴、4B…圧胴、5…フィルム、6…転写装置、6A…ケーシング、7…排紙部、7A,7B…スプロケット、7C…チェーン、8〜12…印刷ユニット、8A〜12A…印刷用圧胴、8B〜12B…渡し胴、13…供給ロール、14…胴、15,16…押圧ローラ、17…巻取用ロール、18…渡し胴、19…圧胴、20…フィルム転写機構、21,22…紫外線照射ランプ、23…マーク、24…模様、25…光電センサ、25A…投光部、25B…受光部、26…マーク選択手段、27…走行経路演算手段、28,30…電動モータ、29,31…タイミングベルト、32…走行時間演算手段、33…爪位置演算手段、34…フィルム走行開始手段、35…走行速度制御手段、36…エアシリンダ、36A…伸縮ロッド、37…ギヤ、38…ラック、39…支持部材、F…転写部、G…爪、L,l…距離、L1…加速度領域、L2…一定速度領域、M1,M2…電動モータ、R1〜R10、R13〜R16…ローラ、R4,R15…テンションローラ、R9,R5…駆動ローラ、S1,S2…走行経路、T…接触開始点、T1…位置、tY…時間、U…制御装置、V2…一定速度、θ…角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写用のフィルムが胴から離反した第1走行経路と該胴に接近した第2走行経路の双方においてそれぞれ走行可能となっているフィルム走行機構を備えた印刷機において該フィルムを第2走行経路に走行させながら、胴に備えた爪にて掴んで搬送される枚葉紙に押し付けることにより該枚葉紙に該フィルムの模様を転写する枚葉紙への転写方法であって、
前記胴を一定速度で回転させる一方、前記フィルムを第1走行経路に位置させて走行停止状態としておき、該フィルムを第1走行経路から第2走行経路に移動させてドッキング状態とする前に、該フィルムの走行速度と前記胴の回転速度とを一致させるとともに該フィルムに一定間隔毎に備えているマークと該胴の爪の位相を合わせるべく、下記工程を行うことを特徴とする枚葉紙への転写方法。
(イ)前記フィルムが第1走行経路で走行停止状態において該フィルムの特定のマークを選択する工程。
(ロ)前記第2走行経路において前記特定のマークの位置から前記フィルムと前記枚葉紙とが合流する接触開始点までの走行経路長を求める工程。
(ハ)停止状態から前記胴の一定速度まで加速する所定の加速条件とその加速後の前記一定速度の条件とによって、第1走行経路において前記フィルムを停止状態から前記走行経路長だけ走行させると仮定した際に、前記走行経路長だけ走行するのに要する時間を求める工程。
(二)前記爪が接触開始点から起算して前記(ハ)工程で求めた時間前の位置に位置した時に第1走行経路において前記フィルムの走行を開始させて、前記(ハ)工程で求めた時間が経過するまでに該フィルムを前記胴の一定速度にする工程。
【請求項2】
前記走行経路長が、前記(ハ)工程の所定の加速条件で前記フィルムを停止状態から走行させると仮定した際に、該所定の加速終了時点までに走行する長さ以下である場合には、該マークよりも走行方向後方となるマークを前記(イ)工程において選択することを特徴とする請求項1記載の枚葉紙への転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−73017(P2009−73017A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243810(P2007−243810)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】