説明

果実ワックスの抽出方法

植物成分からの果実ワックスの本発明による獲得方法は実質的に、圧縮されたC2〜C4−炭化水素を用いて実施される。超臨界CO2を用いるこれまでに適用された抽出方法とは対照的に、この提案される方法は低い圧力及び減少された抽出剤流量で実施されることができる。出発材料として、果物加工からの残留物、特にジュース獲得からの果皮が考慮される。有利な抽出剤は、エタン、プロパン、ブタン並びにこの混合物であり、その際この抽出自体は、<50mPaの圧力及び≦70℃の温度で、4〜20kg/kg出発材料の抽出剤流量でバッチ式に行われる。この抽出された果実ワックスは、傑出して、化粧品調製物又は医薬調製物のために、特に皮膚のケア及び処理のために適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明の主題は、圧縮したガスを用いた抽出による、植物成分からの果実ワックスの獲得方法である。
【0002】
果実ワックス(Fruchtwachse)、特に主として天然ベースの果実ワックスは作用物質の獲得のためのますます重要な出発材料であり、これはとりわけ、化粧品産業の保護作用物質及びケア作用物質として使用される。この種の成分の利点は特に、この際、この種の成分が、再生性の原料であることにあると考えられるべきであり、このことはこの物質をエコロジー的及び経済学的な観点下で極めて有用であるように思わせる。更に、天然の成分の適用により、消費者の許容性は著しく上昇し、というのも消費者はこの間に顕著なエコロジー上の意識を有し、かつ、ボディケア及び健康のケアのための製品は極度に厳しく選択されるからである。
【0003】
とりわけロウ及びパラフィンの範囲において、相違する概念が同義に使用され、その際一般的に認められている定義によれば「ワックス」は、可塑性のコンシステンシーの、即ちロウ状の性質の親油性物質と関連付けられる。ワックスとは、長鎖又は環式の一価又は二価アルコールの脂肪酸エステルである。このワックスは、大抵は植物性又は動物性由来であり、これによりロウは典型的な天然産物である。その構成に関与する脂肪酸及び脂肪アルコールに基づく植物性及び動物性ロウの厳格な区別化は、実施することができない。しかしながらモンタン酸、パルミチン酸及びステアリン酸が典型的な、この天然ワックスに関与する脂肪酸であることは疑いがない。このアルコールの側ではここでは特にセチルアルコール及びセリルアルコールを挙げることができる。
【0004】
植物由来の純粋な天然ワックスは、例えばパーム葉ワックス、例えばカルナウバロウ、パームワックス、ラフィアワックス(Raffiawachs)、オーリクリーワックス、ガラスワックス(Graeserwachse)、例えばカンデリラワックス、エスパルトワックス、ファイバーワックス(Fiberwachs)及びサトウキビワックス;ベリーワックス及び果実ワックスは例えば木ろう、ベイベリーワックス及びミルテろうである。動物由来の純粋な天然ワックスの公知の例は、蜜ろうであり、これはとりわけパルミチン酸−ミリシルエステルからなり、即ちミリシルアルコールでエステル化したパルミチン酸からなる。イボタロウ、シェラックワックス及びウールワックス(これは例えば羊毛から得ることができる)も公知である。
【0005】
果実ワックス及び特にリンゴワックスは既に化粧品産業により、多岐にわたる適用領域において、そして特に皮膚−及びヘアケア製品において使用され、かつ、シャンプー、リンス及びヘアトリートメント中で皮膚を、またしかしながら髪を薄いフィルムとして乾燥及び溶出(Auslaugung)から保護する。例示的にここではWO 03/053 394 A2が挙げられる。
【0006】
このリンゴワックスのための原料源として、特に絞りかす、即ち、リンゴジュース製造又はペクチン製造からの乾燥した残留物が使用される。この絞りかす中に含有されるリンゴワックスは、ジュース用リンゴの果皮に由来する。このフルーツワックスが絞りかすから単離され、かつクロロフィル残分及び農薬残分が精製された後に、通常は臭気の無い粗生成物が提供される。この原料は、更に達する物質変換無しに入手でき、即ちこの原料は、純粋に物理的に作用する方法、例えば吸着、濾過及び蒸留により精製かつ獲得されることができる。この果実ワックス獲得からの残留物は、果実ワックス含有絞りかすと同様に、家畜飼料として使用されることができる。
【0007】
既に記載した、フルーツワックスの単離はこれまでには、超臨界二酸化炭素を用いて行われ、その際これは、数十年もの間食品処理のために問題なく使用することができる溶媒である。圧縮した二酸化炭素を用いたこの相応する抽出及び/又は精製により、約2%の収率でリンゴワックスが化粧品に適した品質で得られる。
【0008】
既に示唆したとおり、天然ワックスは均一な物質分類を示さず、相違する物質分類の混合物を示す。この天然抽出物は主成分としてワックスエステル、炭化水素、脂肪酸及びその他の化合物、例えばトリグリセリド、キサントフィル及びテルペンを含有する。
【0009】
これまでに果実ワックス獲得のために使用されてきた天然抽出物の不均質な組成、そして公知の問題の無い二酸化炭素の特性のために、超臨界CO2の使用をこれまでに抽出剤は選択してきた。但しこの際、少ない選択性を当然として甘受していた。このCO2抽出は高い圧力及び高いCO2流量を要求し、これはこの種の方法を高価にする。化粧品産業はますます、そのつどの適用領域とは無関係に、定義された成分スペクトルを有するより純粋な生成物を必要とするので、この抽出は、特に、経済的な観点からも超臨界二酸化炭素を用いてはもはや十分ではない。
【0010】
この技術水準の欠点のために本発明に対して、圧縮したガスを用いた抽出による植物成分からの果実ワックスの新規の獲得方法であって、加工産業による、及び、消費者による、更に向上した要求に適合した方法を提供するとの課題が課せられた。この新規の方法は可能な限り簡単な様式で商業的に実施可能であり、かつ、果実ワックスを改善された品質で提供するものである。
【0011】
この課題は、圧縮したC2〜C4−炭化水素を用いて実施される方法により解決された。
【0012】
本発明によるこの新規の方法を用いて、提示された課題が達成されることができたのみならず、この新規の方法により意外にも、フルーツワックスが、時に顕著に上昇した収率で獲得されることができることが、実際に確認された。この収率は、技術水準に応じて超臨界二酸化炭素を用いて得られる収率を越える。
【0013】
更に、本発明による方法により得られる果実ワックスは、この果実ワックスを新規の適用領域で使用可能にする品質にある。
【0014】
出発材料に関して、本発明による方法のために果物加工からの残留物を使用することが有利であることが示され、その際特に果皮、例えば、ジュース獲得からの果皮、特に有利には絞りかす、とりわけ湿った絞りかすが適する。特に有利には、果実核並びに場合によっては皮層片、葉、茎及び木化した組織が抽出前に分離される。
【0015】
絞りかす、例えばリンゴ絞りかすは通常は、10〜15質量%がペクチン、20〜30質量%が糖質(フルクトース、グルコール、サッカロース)及び55〜70質量%までが非ペクチン物質、例えば果皮、核その他からなる。当初の抽出のためにはこの湿った絞りかすの乾燥が推奨され、これにより当初の抽出方法は著しくより経済的に実施されることができる。この抽出物の水含量は有利には≦15質量%、特に有利には1〜10質量%である。
【0016】
本発明はエタン、プロパン及びブタン並びにこの混合物を抽出剤として考慮する。この際必要に応じて、そのつど抽出剤として使用される、圧縮した炭化水素(−混合物)に、共留剤、例えばジメチルエーテル及びアルコールが添加されることができ、その際これらは有利には0.5〜50質量%の割合で適用される。
【0017】
抽出パラメーターに関しては本発明は、<50MPaの圧力及び≦70℃の温度を推奨し、その際0.5〜10MPaの圧力範囲及び20〜35℃の温度は特に有利であると考慮される。
【0018】
そのつどの出発材料(又はその湿分含量)とは無関係に、本発明による方法は、4〜20kg/kg出発材料の抽出剤流量で実施されることが望ましく、その際5〜10kg/kg出発材料の流量が有利であると考慮される。
【0019】
抽出物の分離のためには通常は、40〜48℃の温度での5〜10barへの圧力の低下が実施される。
【0020】
この提案された方法は連続的にも実施されることができる;しかしながら実際的な理由から、本発明は、この方法をバッチ式に実施することを予定しており、というのもこのような容易に追体験可能な様式においては方法パラメーターは、そのつどの出発材料、その性質及び組成に調整されることができるからである。
【0021】
本来の方法自体の他に、本発明はまた、化粧品調製物又は医薬調製物中での、特に皮膚及びその付属物のケア及び処理のための提案された方法を用いて抽出された果実ワックスの使用をも請求し、ここで全ての物のうち髪及び足の爪並びに指の爪が理解されることができる。「皮膚」との概念には本発明の範囲内においては、無論まず皮膚自体が、そして生細胞を含んでいる限りは粘膜並びに皮膚付属物もが理解されることができる。ここで特に、毛包、毛根、毛球並びに爪床の腹側上皮、脂腺及び汗腺を理解することができる。本発明による使用は、ケア並びに治療上の及び非治療上の処理を含む。
【0022】
2〜C4−炭化水素を用いた果実ワックスの抽出のためのこの新規の方法を用いて、天然の果実ワックスは、改善された品質及び向上した収率で、極めて経済的な条件下で、通常は廃棄物であり、そして二次的な原料として適用されている出発材料から得られることができる。
【0023】
以下の実施例は請求された本方法の利点を裏付ける。
【0024】
実施例
ジュース用リンゴからのリンゴジュースの製造の際にリンゴ絞りかすが生じ、この中にはリンゴワックス含有果皮の残分も見出される。
【0025】
湿分含有量<15質量%へのこのリンゴ絞りかすの乾燥後に、この成分、例えば核、茎及び葉を除去した。この残分をオートクレーブ中で30bar及び35℃で、液状プロパンを用いて抽出し、その際この抽出剤流量は平均して7.3kg/kg出発材料であった。このようにして得られる抽出物を実施された圧力低下の後に8bar及び46℃で分離した。
【0026】
このようにして、黄色の、臭気の無いリンゴワックス抽出物を収率約2.5%で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮したガスを用いた抽出による植物成分からの果実ワックスの獲得方法において、圧縮したC2〜C4−炭化水素を用いて実施することを特徴とする方法。
【請求項2】
果物加工からの残留物、特にジュース獲得からの果皮、有利には絞りかす、とりわけ湿った絞りかすを出発材料として使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
抽出剤として、エタン、プロパン及びブタン並びにこれらの混合物を使用することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
抽出を、<50MPaの圧力及び≦70℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
0.5〜10MPaの圧力及び20〜35℃の温度に調整することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
圧縮した炭化水素混合物に、共留剤、例えばジメチルエーテル及びアルコールを、有利には0.5〜50質量%の割合で添加することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
抽出を、4〜20kg/kg出発材料、有利には5〜10kg/kgの抽出剤流量で実施することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
バッチ式に実施することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
化粧品調製物又は医薬調製物中での、特に皮膚及びその付属物のケア及び処理のための請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により抽出された果実ワックスの使用。

【公表番号】特表2009−504815(P2009−504815A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525447(P2008−525447)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007756
【国際公開番号】WO2007/017205
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】