説明

枝状部材を具える打ち込み式支柱装置

【課題】防獣に効果的な防護柵を施工能率よく構築し得る打ち込み式支柱装置を提供する。
【解決手段】上端が打撃部2となる打ち込み式の支柱3と、該支柱3に突設される枝状部材5とを含む。枝状部材5は、支柱3の側面部16の上端側の部分をなす側面軸部29から突出する枝状突出片17の基端に、側面軸部29に固定される固定部20が設けられている。固定部20は、側面軸部29に取り付いた状態で支柱3の長さ方向にスライドでき、支柱3の所要高さ位置で支柱3に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枝状部材を具える打ち込み式支柱装置及び、枝状部材を具える支柱の立設工法に関するものである。より詳しくは、猪や鹿等の野生動物が農地に侵入するのを防止するための防護柵を構築するに際して好適な、枝状部材を具える打ち込み式支柱装置に関するものであり、又、支柱の打ち込み状態が後に緩んだときにも、支柱の打ち込み状態の安定化と枝状部材の高さ調整を容易に行なうことのできる、枝状部材を具える支柱の立設工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、野生動物による農作物の被害が各地で見られているが、取り分け猪による被害が増大してきている。
【0003】
猪による被害対策の一例としては、例えば特許文献1に示すように、農作物等を栽培する農地の周囲を、金網や樹脂ネット、トタン板、樹脂波板等を用いた防護柵で囲むことが一般的に行なわれていた。
【0004】
例えば格子状金網を用いた防護柵としては、非特許文献1に記載のものが提案されている。該防護柵aは、図44に示すように、農地bの外方に向けて斜めに屈曲した上方傾斜部cを有していた。該防護柵aを構築するに際しては、高さが1m程度の金網dの上部の30cm程度の長さ部分d1(図44(B))を垂直線に対して外側に20〜30度の角度θで折り曲げることによって前記上方傾斜部cが設けられてなる金網eを形成し、該上方傾斜部cを有する該金網eを、支柱fを1〜2m間隔で地面に打ち込んで形成した支柱列に張設し該支柱fに針金等で固定していた。
【0005】
この防護柵aは、猪は助走を付けずにその場で踏み切って柵を飛び越えるという、猪の行動様式に着眼して開発されたものである。このような行動様式を有する結果、猪が該防護柵aに近接した状態で柵を跳び越えようとすると柵の前記上方傾斜部cが猪に覆い被さった状態となるので、猪は踏切位置を後方にずらすことになる。踏切位置をこのように後方にずらした位置で、猪の視点から防護柵aを仰ぎ見ると、この防護柵aの高さは、前記上方傾斜部cが形成されていない防護柵よりも高く見える。加えて、猪と防護柵との距離も遠くなる。このようなことから猪は、柵を跳び越えようとする行動自体を諦めてしまうことを期待でき、これによって、猪が農地に侵入するのを回避せんとするものであった。上方傾斜部cを有するかかる防護柵aは、実際に猪の跳躍侵入を防止でき、有効な防護柵とされている。
【0006】
しかしながら、金網の上部を所要角度に折り曲げて上方傾斜部c付きの特別な金網eを形成するのに多くの手間を要したため、防護柵aの施工コストの上昇を招く問題があった。
【0007】
そこで本発明者は図45に示すような、上部が斜め上方に屈曲されて傾斜片部jが設けられた屈曲支柱kを用意し、該屈曲支柱kを、所要間隔(例えば1.5m程度の間隔)で、支柱下部mを地面nに押し込んで立設状態とした後、この並置された支柱列pに、屈曲の自由な市販の繊維製のネットqを張設してなる防護柵rを開発した。該防護柵rは、その上部が農地の外方に向けて斜めに屈曲して傾斜屈曲部sが形成されているため、上方傾斜部cを有する前記防護柵aと同様の猪侵入防止効果を発揮できた。
【0008】
しかしながら、このように上部が屈曲した屈曲支柱kは、打撃して地面nに打ち込むことができないために支柱下部mを地面nに押し込むことになるが、その際、地面に予め下孔を設け該下孔に支柱下端を挿入し、その後、支柱の側面部を両手で握って該支柱を地面に押し込むことを要した。そのため、屈曲支柱を地面に押し込む施工が行いにくく施工手間を要する問題があった。又、地面に凹凸があるときは、場所によって支柱の押し込み長さが異なるために前記傾斜片部jの高さが不揃いになり易かった。そのため、支柱を更に押し込んだり或いは支柱を若干引き抜いたりして前記傾斜片部jの高さを揃えなければならない非常に面倒な調整作業を要した。このように、傾斜片部jを有する屈曲支柱kを用いて構築する防護柵は、施工能率が悪く、施工コストの上昇を招く問題があったのである。
【0009】
又、上部が屈曲した前記屈曲支柱kは、防護柵構築専用の支柱にならざるを得ず、植物栽培用途等に一般に使用されている市販の支柱を代用することはできず、経済性に劣る問題もあった。
【0010】
又、ある程度期間が経過して支柱の地面への挿入部分が緩んだ場合、該屈曲支柱kを更に地面に押し込んだとすれば、前記傾斜片部jが下がることになり、防護柵の上端高さがその部分で低くなってしまい、所望の防獣効果が発揮されなくなる問題が発生した。
【0011】
【特許文献1】特開2002−233293号公報
【非特許文献1】独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構、近中四農研・地域基盤研究部・鳥獣害研究室、“イノシシから農地を守る「金網忍び返し柵」”、[2007年3月14日検索]、インターネット〈URL:http://www.naro.affrc.go.jp/top/seika/2004/kinki/ki04002.html 〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、例えば前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、上端が打撃部となる打ち込み式の支柱と、該支柱の側面軸部に後付けによって突設される枝状部材とを具える基本構成を採用することによって、地面に対する支柱の立設を容易に且つ確実に行なうことができると共に、地面に凹凸があったり、支柱の打ち込み長さにバラツキがある等した場合も、枝状部材の高さを揃えるのが容易である、枝状部材を具える打ち込み式支柱装置の提供を課題とするものである。
【0013】
更に進んで、枝状部材の水平面内での突出方向を設定するが容易である、枝状部材を具える打ち込み式支柱装置の提供を課題とするものである。
【0014】
又、直径が若干異なる支柱に対しても枝状部材を確実に固定できる、枝状部材を具える打ち込み式支柱装置の提供を課題とするものである。
【0015】
又、支柱の打ち込み状態が後に緩んだときにも、支柱の打ち込み状態の安定化と枝状部材の高さ調整を容易に行なうことのできる、枝状部材を具える支柱の立設工法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため本発明は以下の手段を採用する。
即ち本発明に係る枝状部材を具える打ち込み式支柱装置(以下支柱装置という)は、上端が打撃部となる打ち込み式の支柱と、該支柱に突設される枝状部材とを含む枝状部材を具える支柱装置であって、前記枝状部材は、前記支柱の側面部の上端側の部分をなす側面軸部から突出する枝状突出片の基端に、前記側面軸部に固定される固定部が設けられており、該固定部は、前記側面軸部に取り付いた状態で前記支柱の長さ方向にスライドでき、前記支柱の所要高さ位置で該支柱に固定されることを特徴とするものである。
【0017】
本発明に係る支柱装置のより具体的な態様は、上端が打撃部となる打ち込み式の支柱と、該支柱に突設される枝状部材とを含む枝状部材を具える支柱装置であって、前記枝状部材は、前記支柱の側面部の上端側の部分をなす側面軸部から突出する枝状突出片の基端に、前記側面軸部に固定される固定部が設けられ、該固定部は、該側面軸部を嵌入させるための嵌入溝を形成する左右一対の挾持片からなる嵌入筒部を有し、該嵌入筒部は、該嵌入溝に該側面軸部が嵌入した状態で、該側面軸部の長さ方向にスライドできると共に該側面軸部の周方向に回転できる如くなされている。又、両挾持片の先端に、ネジ軸片が所要間隔を置いた対向状態で突設されており、該ネジ軸片間を弾性的に拡開させつつ前記側面軸部を前記嵌入溝に嵌入させることができ、又、該ネジ軸片の外周面には雄ネジ部が設けられており、該左右のネジ軸片が構成するネジ軸が、操作ナット部材の雌ネジ部と螺合し得るようになされており、該操作ナット部材を締め付けるに伴い、前記左右の挾持片が前記側面軸部を締め付け、これにより前記固定部が前記側面軸部に固定されることを特徴とするものである。
【0018】
前記支柱装置において、前記両ネジ軸片の向き合う内面に、その長さ方向中央線に沿って規制突部を対向状態で設け、両ネジ軸片が自由状態においては該両規制突部間に隙間が形成される如くなし、該規制突部は、前記ネジ軸片の内面から浮き上がった状態で該内面と平行してその長さ方向に延長する直線状案内面を有し、該直線状案内面の先端で、前記ネジ軸片先端に向けて外方に傾斜する傾斜案内面が連設されたものとし、又、該傾斜案内面の先端で、前記ネジ軸片の先端内側に形成された、外方に傾斜する傾斜面が一連に連なったものとし、これにより、前記ネジ軸の先端に案内凹部が形成されたものとするのがよい。
【0019】
前記固定部が前記嵌入筒部を有する場合、前記支柱の径を調整するための調整リング部材が前記側面部に嵌着されることによって前記側面軸部が構成される如くなすのがよい。
【0020】
該調整リング部材を具える場合、該調整リング部材をC字状の調整リング部材とするのがよい。該C字状の調整リング部材は、割り溝状の開口部を具え且つ外周面が円形面を呈するC字状片を有したものとし、該C字状片は、該開口部を弾性的に拡開させつつ前記側面部に弾性的に嵌着される如くなすと共に、該C字状片を前記支柱の長さ方向にスライドできるようになし、又、該C字状片の上下には、前記嵌入筒部の上下端に当接し得るフランジが設けられたものとして構成するのがよい。
【0021】
前記各支柱装置において、前記枝状突出片の基端部を、前記固定部に設けられた支持部に、該枝状突出部が上下に回動可能に連結し、該枝状突出片が所要角度で固定されるように構成するのがよい。
【0022】
前記各支柱装置において、前記固定部が前記側面軸部に固定された状態で、前記支柱の上端部分が該固定部の上方に突出したものとし、該突出した部分は、該支柱の打ち込み状態が後に緩んだときに該支柱を更に地面に打込む際の打ち込み余裕部とし、前記固定部を該打ち込み余裕部に沿って上方向にスライドさせ得るように構成するのがよい。
【0023】
本発明に係る枝状部材を具える支柱の立設工法は、前記打ち込み余裕部を有する支柱装置を用いる立設工法であって、前記支柱をその打撃部を打撃して地面に所要長さを打ち込んで後、前記枝状部材の固定部を前記支柱の所要高さ位置で固定し、該固定状態において、前記支柱の上端部分を該固定部の上方に突出する打ち込み余裕部とし、該支柱の打ち込み状態が後に緩んだときに、前記打撃部を打撃して該支柱を所要長さ地面に打ち込み、その後、前記固定部の固定状態を解除し、該固定部を前記打ち込み余裕部に沿って上方向にスライドさせ、前記枝状部材の高さを当初の状態に戻すことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
(1) 本発明に係る支柱装置は、上端が打撃部となる打ち込み式の支柱と、該支柱に後付けにより突設される枝状部材とを具え、該枝状部材は、支柱長さ方向にスライドでき、所要高さ位置で支柱に固定されるものである。
【0025】
従って本発明によるときは、支柱を地面に立設する際、例えば図45に示すような屈曲支柱を地面に立設する場合とは異なり、地面に下孔を設け該下孔に支柱下端を挿入しなければならないといった面倒さがなく、枝状部材が取り外された状態で支柱上端を打撃することよって地面に対する支柱の立設を容易且つ確実に行なうことができる。又、枝状部材は、支柱の長さ方向にスライドでき、所要高さ位置で支柱に固定されるため、地面に凹凸があったり、支柱の打ち込み長さにバラツキがあっても、枝状部材の高さを揃えるのが容易である。かかることから、傾斜片部が一体に設けられてなる前記支柱を地面に立設する場合とは異なり、地面の凹凸を考慮して支柱の突き刺し長さを調整するために神経を使う必要がなく、或いは、一旦押し込んだ支柱を所要長さ引き上げる等の高さ調整のための施工手間を要さない。
【0026】
このようなことから、枝状部材が突設された立設状態の支柱にネットやシート等を取り付けて、猪や鹿等の野生動物が農地に侵入するのを防止する防護柵を構築したり、日除けや雨除け等を構築する際、その施工の容易化と施工能率の向上を期し得ることとなる。
【0027】
(2) そして本発明は、枝状部材の固定部を支柱の側面軸部に固定する構成を採用しているため、該固定部の上側に支柱の上端部分が突出した状態となし得、支柱の上端に枝状部材を直接突設する場合とは異なり、枝状部材が固定された状態においても支柱の打撃部は露出状態にある。
【0028】
かかることから、地面に対する支柱の打ち込み状態が緩んだ場合は、該打撃部を打撃して支柱を更に打ち込むことにより支柱の立設状態を安定化させ得ると共に、該枝状部材の固定部を、その打ち込んだ長さの分だけ上にスライドさせて支柱に固定し直すことにより、防護柵等を、枝状突出部の高さが揃った(高さが若干異なっても略揃った状態を含む)当初の状態に戻すことができる。
【0029】
(3) 本発明に係る支柱装置は、上端が打撃部となる打ち込み式の支柱と、該支柱に後付けにより突設される枝状部材とを具えており、別体の支柱と枝状部材との組み合わせからなるため、該支柱は、植物栽培用途等に一般に使用されている市販の支柱を代用することもできるのであり、経済性に優れる。
【0030】
(4) 支柱の側面部に調整リング部材を嵌着して側面軸部を構成する場合は、使用する支柱が嵌入筒部の内径に比して稍小径であるときも、該支柱に対して同一の枝状部材を使用できる利点がある。該調整リング部材をC字状に構成することにより、該調整リング部材を、側面部に横方向から簡易に嵌着できる利点がある。
【0031】
(5) 前記枝状部材の固定部を、支柱の周方向に回転できるように構成した場合は、枝状部材の高さを所要に設定できると共に、枝状部材の水平面内での突出方向も容易に調節でき、支柱を地面に打ち込んだ後における枝状部材の方向調整作業も能率化し得る利点がある。
【0032】
(6) 枝状部材の固定部を、左右一対の挾持片からなる嵌入筒部を以て構成した場合は、一定範囲で直径の異なる複数種類の支柱に対して該固定部を安定状態に固定できることになる。そして、該両挾持片の先端にネジ軸片を突設し、該両ネジ軸片が構成するネジ軸に操作ナット部材の雌ネジ部を螺合することにより、該操作ナット部材の締め付けによって、左右の挾持片が前記側面軸部を締め付けた状態となし得、これにより枝状部材を支柱に簡易に固定できることとなる。
【0033】
(7) 特に、前記両ネジ軸片の向き合う内面に、直線状案内面の先端に傾斜案内面が連設されてなる規制突部を設ける場合は、前記側面軸部を、該傾斜案内面、直線状案内面に案内させつつ前記固定部の嵌入溝に円滑に嵌入させることができる。
【0034】
(8) 枝状突出部を固定部に対して、上下方向で回動でき、所要角度で固定されるように構成した場合は、該枝状突出部の突出方向を、斜め上方だけでなく、水平方向や斜め下方に設定することも容易であり、防護柵だけでなく日除けや雨除け等も構成できるなど、本発明に係る支柱装置の用途拡大を達成できることになる。
【0035】
(9) 本発明に係る枝状部材を具える支柱の立設工法によるときは、支柱の打ち込み状態が後に緩んだときにも、支柱の打ち込み状態の安定化と枝状部材の高さ調整を容易に行なうことができる。
【実施例1】
【0036】
図1〜3において本発明に係る支柱装置1は、上端が打撃部2となる打ち込み式の支柱3と、該支柱3に後付けによって突設される枝状部材5とを具えるものである。
【0037】
前記支柱3は、中実の支柱でもよいのであるが、本実施例においては図3(A)に示すように外径が25mmで全長が150cmのパイプを以って構成され、その外周面10は平滑に形成されている。そして支柱下端には、図1に示すように、下方に向けて細くなる円錐状の下端キャップ11が取り付けられると共に、支柱上端には、上面12が平面に形成された上端キャップ13が取り付けられている。該上端キャップ13は、該上面12が、支柱3が図2に示すように地面15に打ち込まれる際に打撃される前記打撃部2となるため、その打撃に対する耐久性を考慮して製作されている。
【0038】
なお該支柱3は図3(B)に拡大して示すように、鋼製の直線状パイプ本体6の表面7に樹脂被覆部9が施されているのであるが、便宜上、図3(B)以外の図面では該樹脂被覆部9を省略している。
【0039】
又前記枝状部材5は、例えばポリプロピレンやポリエチレン等の弾力性に富む樹脂を用いて構成されており、図1〜3に示すように、前記支柱3の側面部16の上端側の部分をなす円柱状の側面軸部29から斜め上方に例えば45度の傾斜角度で突出し得る直線棒状の枝状突出片17の基端19に、該側面軸部29に固定される固定部20が設けられている。該枝状突出片17は、例えば30cm程度の長さを有し、図4に示すように、下端開放の空洞部21が設けられた断面逆U字状を呈しており、該空洞部21には、所要間隔で補強連結片22が配設されている。又、該枝状突出片17の両外側面23,23の上端部分と下端部分には、後述の防護ネット79を引っ掛けるための上の掛着片26と下の掛着片27が設けられている。
【0040】
そして前記固定部20は図4〜7に示すように、前記側面軸部29を嵌入させる嵌入溝30を形成する左右一対の挾持片31,31からなる嵌入筒部32を有する。該嵌入筒部32は本実施例においては円筒状に形成されており、円形溝状を呈する前記嵌入溝30に前記側面軸部29が図1(B)、図7に示すように嵌入した状態(固定部20が側面軸部29に取り付いた状態)で、該嵌入筒部32は、図1(B)に矢印F1で示すように、前記支柱3の長さ方向にスライドできると共に、図7に矢印F2で示すように、該側面軸部29の周方向に回転できる。なお本実施例においては、図5に示すように、前記嵌入溝30の内面28の前記基端19側の両側に位置させて、2条の小突条34,34が突設されている。該小突条34,34は軟質であってもよいのであるが、本実施例においては、その耐久性を考慮して硬質に形成している。
【0041】
又図5〜6に示すように、各挾持片31,31の先端33,33に、ネジ軸片35,35が、相互間に所要の間隙36(例えば9mm程度の間隙36)を置いた対向状態で突設されており、両ネジ軸片35,35の外周面37,37には雄ネジ部39,39が設けられ、該両ネジ軸片35,35によって円柱状のネジ軸40が構成されると共に、該ネジ軸40の先端部41は、先端に向かうにつれて小径になる小径部42とされている。本実施例においては、両ネジ軸片35,35の基端側43の外面に、前記雄ネジ部39よりも直径の大きい半割り大径部45,45が設けられており、該半割り大径部45,45によって、前記ネジ軸40よりも大径の大径部46が形成されている。
【0042】
又本実施例においては、該ネジ軸片35,35は、その成形に要する樹脂量を少なくして製造コストの低減を図るために比較的薄肉に形成されており、両ネジ軸片35,35間に前記のように比較的大きい間隙36が形成されるので、両ネジ軸片35,35の向き合う内面47,47の長さ方向中央線に沿って規制突部49,49が対向状態に設けられている。そして両ネジ軸片35,35が自由状態においては、両規制突部49,49間に1.5mm程度の若干の隙間48が形成されるようになされている。そして該規制突部49は、前記ネジ軸片35の前記内面47から稍浮き上がった状態で該内面47と平行してその長さ方向に延長する直線状案内面50が設けられ、該直線状案内面50の先端で、ネジ軸片先端に向け外方に傾斜する傾斜案内面51が連設されており、その先端で、前記ネジ軸片35の先端内側に形成された傾斜面52に一連に連なっている。これにより、前記ネジ軸40の先端には、三角形凹部からなる案内凹部53が形成されている。
【0043】
然して、前記側面軸部29を図8(A)に示すように、前記案内凹部53の先端に当てがって後、前記固定部20を該側面軸部29に向けて押圧すると、該側面軸部29が、図8(B)、図8(C)に示すように、前記傾斜面52,52、前記傾斜案内面51,51、前記直線状案内面50,50に案内されて移動し、その際、前記両ネジ軸片35,35が図8(B)、図8(C)に示すように弾性的に拡開し、最終的に、図7(A)に示すように前記嵌入溝30に嵌入せしめられる。このように嵌入されると同時に、両ネジ軸片35,35は図7(A)に示すように弾性的に窄まる。本実施例においては、この状態で、両ネジ軸片35,35は、前記自由状態におけるよりも稍大きく拡開した状態となる。このように側面軸部29を嵌入溝30に嵌入した状態において、図7に示すように、該嵌入筒部32が側面軸部29を弾性的に挾持した状態となり、該嵌入筒部32は、図1(B)に矢印F1で示すように支柱3の上下方向でスライドできると共に、図7に矢印F2で示すように支柱3の周方向で回転できる。なお本実施例においては、図7に示すように、前記小突条34,34が前記側面軸部29の外周面24を支持した状態となる。
【0044】
図3、図6〜7は、前記両ネジ軸片35,35が構成する前記ネジ軸40に螺合し得る雌ネジ部54が設けられてなる操作ナット部材55を示すものであり、ねじ込みの操作容易性を考慮して楕円形状に構成されている。そして、前記雌ネジ部54の軸線方向の両端部分は、外方に向けて拡径しており、前記ネジ軸40の先端61,61を嵌め入れることができると共に、前記大径部46を嵌め入れることのできる、先端に向けて拡張したテーパ状のガイド凹部57,57とされている。
【0045】
かかる構成を有する固定部20を前記支柱3の所要高さに位置させると共に、前記枝状突出片17を所要方向に突出状態とした後、該固定部20を前記側面軸部29に固定するのであるが、その固定要領は図9に示す通りである。
【0046】
先ず支柱3を図2に示すように、その上端の打撃部2を打撃して地面15に打ち込む。例えば、支柱下部60の30cm程度の長さ部分を打ち込んで支柱3を垂直な立設状態とする。その後、該支柱3の上端側をなす側面軸部29を前記要領により前記嵌入溝30に嵌入させる。この嵌入状態で、図7に示すように、左右のネジ軸片35.35が開いた状態となる。この状態で、図9(A)に示すように、両ネジ軸片35,35の先端61,61を前記操作ナット部材55の前記ガイド凹部57に嵌め入れ、該操作ナット部材55をねじ込んでいく。このねじ込みに伴い、図9(B)に示すように、前記拡開状態のネジ軸片35,35が窄まるように弾性変形されてネジ軸40が前記雌ネジ部54にねじ込まれていく。そして、最終締め付け段階においては、図9(C)に示すように、前記テーパ状のガイド凹部57の内面44に前記ネジ軸40の基端側に存する前記大径部46の外周縁部分58が当接せしめられ、乃至該ガイド凹部57内に該外周縁部分58が嵌入せしめられることになり、これにより両ネジ軸片35,35が強固に絞られ、前記左右の挾持片31,31が前記側面軸部29を締め付ける。この締め付け状態で、前記両規制突部49,49相互が前記直線状案内面50,50の先端部分50a,50aで当接し、ネジ軸40がそれ以上に細径となるのが防止され、確実なネジ締め効果が発揮されるようになされている。なお本実施例においては、前記のように、側面軸部29の外周面24が、2条の小突条34,34で支持されているため、該小突条34,34が滑り止め機能を発揮し、風の影響等によって固定部20が支柱3の周方向に回転しにくい。
【0047】
図10(A)は、支柱3の直径が比較的小さい場合における前記側面軸部29の他の態様を示すものであり、該側面軸部29は、前記支柱3の側面部16に、該支柱3の径を調整するための調整リング部材62を弾性的に嵌着して構成されている。該調整リング部材62は、本実施例においては、平面視でC字状を呈するC字状の調整リング部材62aとして構成されている。
【0048】
該C字状の調整リング部材62aは、図11に示すように、上下全長に亘る割り溝状の開口部63を具え且つ外周面48が円形面を呈するC字状片65を有し、図10(B)に示すように、該C字状片65の内径L1は、用いる支柱3の側面部16の外径L2よりも若干小さく形成されている。然して該C字状片65を、図10(C)に示すように、前記開口部63を弾性的に拡開させつつ前記側面部16に弾性的に嵌着させると、該C字状片65は支柱3に密着状態となり、該C字状片65は図10(A)に矢印F1で示すように支柱3の長さ方向でスライドできると共に、図10(C)に矢印F2で示すように、支柱3の周方向で回転できる。そして前記C字状片65の上下(本実施例においては上下端)には、図11、図10に示すように、前記嵌入筒部32の上下端66,67に当接し得るフランジ69,69が設けられている。なお本実施例においては、前記C字状片65の、前記開口部63と対向した内周面部分68の左右両側に位置させて、2条の小突条84,84が突設されると共に、該C字状片65の外周面74には、前記嵌入筒部32の嵌入溝30の内面28に設けられている前記2条の小突条34,34と嵌合し得る溝状の嵌入凹部78が設けられている。
【0049】
然して、該C字状の調整リング部材62aを前記支柱3の側面部16に嵌着して構成された側面軸部29を前記嵌入筒部32の嵌入溝30に嵌め入れるに際しては、図12(A)に示すように、該側面軸部29の外周面70(前記C字状の調整リング部材62aの外周面70a)を、前記と同様にして該案内凹部53の先端に当てがって後、前記固定部20を該側面軸部29に向けて押圧すると、該側面軸部29が、前記傾斜面52,52、前記傾斜案内面51,51、前記直線状案内面50,50に案内されて移動し、その際に図12(B)、図12(C)に示すように、前記両ネジ軸片35,35が弾性的に拡開し、最終的に前記嵌入溝30に嵌入せしめられる。これにより図12(C)に示すように、嵌入筒部32の内面64と前記支柱3の側面部16の外面38との間に前記該C字状の調整リング部材62aが介在される。このように嵌入されると同時に、両ネジ軸片35,35は、図12(C)に示すように弾性的に窄まる。本実施例においては、この状態で、両ネジ軸片35,35が外方に向けて稍拡開した状態となる。
【0050】
このように嵌入溝30に側面軸部29が嵌入した状態で、図13に示すように、前記C字状片65の上下に設けられている前記フランジ69,69が該嵌入筒部32の上下端34,34に当接乃至、極接近した状態となり、これによりC字状の調整リング部材62aと嵌入筒部32とが一体化される。従って該嵌入筒部32は、該C字状の調整リング部材62aと一体となって、図13(A)に矢印F1で示すように支柱3の上下方向でスライドできると共に、図12(C)に矢印F2で示すように支柱3の周方向で回転できる。そして、このように側面軸部29が嵌入溝30に嵌入した状態で、図14に拡大して示すように、前記C字状片65の内周面に設けられている2条の小突条84,84で支柱3の側面部16が支持されると共に、前記嵌入筒部32に設けられている前記2条の小突条34,34と前記C字状片65の外周面に設けられている前記溝状の嵌入凹部78,78とが嵌合する。これにより、C字状片65と嵌入筒部32とが凹凸係合作用によって確実に一体化され、前記小突条84,84が滑り止め機能を発揮するため、風等の影響等によって固定部20が支柱3の周方向に回転しにくい。
【0051】
そして、前記と同様にして、図15〜16に示すように、両ネジ軸片35,35の先端61,61を前記操作ナット部材55の前記ガイド凹部57に嵌め入れ、該操作ナット部材55をねじ込んでいく。このねじ込みに伴い、前記拡開状態のネジ軸片35,35が窄まるように弾性変形されてネジ軸40が前記雌ネジ部54にねじ込まれていく。そして、最終締め付け段階においては、図15に示すように、前記テーパ状のガイド凹部57の内面44に前記ネジ軸40の基端側に存する前記大径部46の外周縁部分58が当接せしめられ、乃至該案内凹部57内に該外周縁部分58が嵌入せしめられることになり、これにより両ネジ軸片35,35が強固に絞られることになる。その結果、C字状の調整リング部材62aが支柱3に固定され、且つ、嵌入筒部32が該C字状の調整リング部材62aに固定され、該嵌入筒部32が前記支柱3に固定される。即ち、前記固定部20が前記支柱2の所要高さ位置で該支柱2に固定される。
【0052】
図17は、かかる構成を有する支柱装置1を用いて構築した、猪が農地に進入するのを防止する防護柵71の一部分を示すものである。該防護柵71を構築するに際しては、例えば図18に示すように、農地72の周縁73に沿って例えば1.5m間隔で前記支柱3を地面59に打ち込む。その際、支柱上端の打撃部2を打撃し、支柱下部60の例えば30cm程度の長さ部分を地面に打ち込む。支柱3を打ち込んだ後、その側面軸部29の概略高さ位置で、前記枝状部材5の固定部20を取り付けておく。なお前記操作ナット部材55は緩く取り付けておく。このようにして複数本の支柱3を垂直状態に立設しながら、夫々の支柱3に枝状部材5を固定していく。該固定部20を前記側面軸部29に取り付けるに際しては、前記嵌入溝30に前記側面軸部29を嵌入させて行なうのであるが、該側面軸部29は、図1に基づいて説明したように、支柱3の側面部16であることの他、図10に基づいて前記したように、C字状の調整リング部材62aを該側面部16に嵌着して構成された側面軸部29であることもある。かかる側面軸部29を嵌入溝30に嵌入状態とする。
【0053】
このように支柱3を立設する際、農地72のコーナ76においては、例えば図19に示すように、前記枝状部材5を、平面視で、該コーナ76を挟む支柱列77a,77bに対して例えば45度方向に突出した状態となるように該枝状突出片17の突出方向を調整して固定部20を支柱3に取り付ける。その方向調整は、前記嵌入筒部32を前記側面軸部29の周方向に適当に回転させることによって行なうことができる。図20〜21は、農地72のコーナ76に位置する支柱3に上下二段で枝状部材5,5を固定した状態を示すものである。例えば、上に位置する枝状部材5aの枝状突出片17aは、コーナ76を挟む一方の支柱列77aの枝状部材5の枝状突出片17Aと同方向で突出させると共に、下に位置する枝状部材5bの枝状突出片17bは、コーナ76を構成する他方の支柱列77bの枝状部材5の枝状突出片17Bと同方向に突出させる。
【0054】
その後、図17に示すように、農地72の外側において、支柱列77に、ポリエチレン製等の繊維製防護ネット79を張設するのであるが、その際、図22に示すように、該防護ネット79の上端縁80を前記枝状突出片17の前記上の掛着片26に引っ掛けると共に、該防護ネット79の上端縁80の稍下側部位81を、前記枝状突出片17の前記下の掛着片27に引っ掛け、それよりも下側のネット部分82を、図17、図22、図25に示すように、支柱3に沿って垂らす。これにより該防護ネット79は、自ずから、前記支柱列77の外面に沿った屈曲状態になる。
【0055】
このようにして防護ネット79を各支柱の枝状突出片17に取り付けるのであるが、その際、各枝状部材5について、その高さを所要に設定し、前記操作ナット部材55を締め付けて前記固定部20を支柱3に固定する。これにより、枝状部材5の枝状突出片17が支柱の側面部16から45度の傾斜角度で斜め上方に突出状態となり、この状態で枝状部材5が支柱3に固定されることになる。そして本実施例においては、この状態で、支柱3の上端部分75が該固定部20の上方に5〜15cm程度突出した状態とする。この突出長さは、通常は、地面が平坦でないために各支柱によって異なるが、支柱の上端部分75を固定部20の上方に突出させる点では共通している。その後、図17に示すように、パッカー83を用いて防護ネット79を支柱3の下端部分や、中間部分、上端側の部分に固定する。なお、該支柱列77に張設された防護ネット79の下端部分89は、図17に示すように地面59に被せられ、押えピン90等で地面59に固定される。
【0056】
図23は、猪に対する、作物を覆い隠す目隠し効果を目的として、支柱3の下側の50cm程度の幅部分を遮蔽するように、前記防護ネット79の外側に被る如く、黒色シート等の遮光シート92を張設し、該遮光シート92を防護ネット79と共にパッカー83で支柱3に固定している。
【0057】
なお、前記のように支柱3の上端部分75を固定部20の上方に稍突出させておくのは、ある程度の期間を経過した後に支柱3の打ち込み状態が緩んだときに、例えば図24(B)に示すように支柱3を多少地面に打ち込んで該支柱3を安定させるための打ち込み余裕部を設けるためである。図24(A)に示す当初の状態で支柱3の打ち込み状態が緩んだときは、図24(B)に示すように、前記打撃部2を打撃して該支柱3を多少長さ分(例えば5cm程度の長さ分)H1、地面59に打ち込む。このように打ち込んだとき、支柱3と一体化されている前記枝状部材5は、支柱3を打ち込んだ分H1だけ下降する。そこで、図24(C)に示すように、前記操作ナット部材55を緩めて固定部20を上方向にスライドさせ(スライド方向を、図24(B)で矢印で示す)、この状態で該操作ナット部材55を締め付けることにより、当初高さの安定状態で防護柵71を維持できることになる。そして、このように枝状部材5を上にスライドさせることにより、防護ネット79の高さも上昇することになる。
【0058】
このようにして構成された防護柵71によるときは、並列状態にある各枝状突出片17が斜め上方に屈曲しているために、防護ネット79の、該並列状態の枝状突出片17に支持された部分は、図25に示すように、前記支柱列77の外側の上部を覆う傾斜ネット部93を形成する。
【0059】
このようにして構築された防護柵71による、農地72への猪の浸入防止作用は次のようである。即ち、猪は助走を付けずにその場で踏み切って柵を飛び越えるという行動様式を有する結果、猪が該防護柵71に近接した状態で柵を跳び越えようとすると、前記支柱列77の外側にはその上部を覆うように傾斜ネット部93が形成されているため、該傾斜ネット部93が猪に覆い被さった状態となる。そのため猪は、踏切位置を後方にずらすことになる。踏切位置をこのように後方にずらした位置で、猪の視点から防護柵71を仰ぎ見ると、この防護柵の高さは、前記傾斜ネット部93が形成されていない防護柵71よりも高く見える。加えて、猪と防護柵71との距離も遠くなる。このようなことから猪は、防護柵71を跳び越えようとする行動自体を諦めてしまうことを期待でき、これによって、猪が農地72に侵入するのを防止できることとなるのである。
【実施例2】
【0060】
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0061】
(1) 図26〜28は、本発明に係る枝状部材5の他の態様を示すものであり、枝状突出片17の基端に設けられる固定部20の構成が前記実施例における場合と相違する。該固定部20は、前記支柱3をその上端側から挿通させ得る挿通孔95を有した円筒状の挿通筒部96を有しており、該挿通孔95内に前記支柱3をその上端94側から挿通させて該挿通筒部96を側面軸部29に位置させた後、該挿通筒部96に付設した止めネジ97を締め付けることによって該挿通筒部96を支柱3に固定できるように構成されている。
【0062】
該止めネジ97は、本実施例においては図28に示すように、前記挿通筒部96の外面に設けた収容凹部99に収容されたナット100の雌ネジ部98(図26)に螺合せしめられ、該止めネジ97を締め付けることにより、前記挿通筒部96に設けられた孔部101を挿通したネジ軸102の先端103が前記支柱3の側面部16(側面軸部29)を押圧し、これにより前記固定部20が支柱3に固定されるようになされている。
【0063】
該止めネジ97を緩めた状態においては、該挿通筒部96は支柱3の長さ方向にスライドできると共に支柱3の周方向にも回転できる。従って、前記のように支柱3を地面59に所要に打ち込んだ状態において、該挿通筒部96の高さと枝状突出片17の突出方向を所要に設定し、該止めネジ97を締め付けると、支柱3の側面部16から突出する枝状部材5の高さと平面視における突出方向を所要に設定できることになる。
【0064】
なお図26〜28においては、前記側面軸部29が、外周面105が円形状面として形成された支柱の側面部16を以て構成されており、又図29においては、前記側面軸部29が、前記と同様に構成されたC字状の調整リング部材62aを支柱3の側面部16に弾性的に嵌着することにより形成されている。
【0065】
(2) 図30〜31、図32は、本発明に係る枝状部材5のその他の態様を示すものであり、前記と同様に構成された枝状突出片17の基端19に設けられた固定部20の構成が前記実施例における場合と相違する。
【0066】
該固定部20は、支柱3の側面軸部29を嵌合させ得る、上下端106,107が開放した溝形凹所109が設けられた嵌合受体110と、該溝形凹所109に嵌合状態にある側面軸部29の外周面70を押圧するように該溝形凹所109の開放端111を覆うように該嵌合受体110に着脱可能に装着される固定蓋体112とを具えている。該固定蓋体112は、図30〜31においては、前記溝形凹所109の一側縁113で開閉可能に取り付けられている。又図32においては、該固定蓋体112の両端部分に設けた第1の係合部115,115を前記嵌合受体110の両側部分に設けた第2の係合部116,116と着脱係合可能とされている。
【0067】
(3) 図33〜34は、本発明に係る枝状部材5のその他の態様を示すものであり、実施例1における場合において、枝状突出片17の基端部117を、前記固定部20に設けられた支持部119に、該枝状突出片17が上下回動可能となるように連結し、所定の回動状態で、該基端部117と該支持突片119とに挿通する固定ネジ120をナット118に螺合して締め付けることにより、該枝状部材5を所要の回動状態で固定部20に固定できるように構成されている。
【0068】
図33において実線で示す枝状突出片17は、水平線に対して45度の傾斜角度で斜め上方に突出する如く支柱3に固定された状態を示すものであり、図33において一点鎖線で示す枝状突出片17は、水平方向に突出する如く支柱3に固定された状態を示すものである。又図33において二点鎖線で示す枝状突出片17は、水平線に対して大きい傾斜角度で、例えば70度程度の角度で突出する如く支柱3に固定された状態を示すものである。更に、図33において破線で示す枝状突出片17は、斜め下方に突出する如く支柱3に固定された状態を示すものである。
【0069】
例えば図33において実線で示すように、45度の傾斜角度で斜め上方に突出する如く枝状突出片17を支柱3に固定した場合は、前記したような猪除けや、鹿除け等のための防護柵を構築するために用いて好適である。又図35に示すように、水平方向に突出する如く枝状突出片17を固定した場合は、同図に示すように、所要間隔を置いて左右対向状態で立設した支柱3,3の上端側に、水平突出の枝状突出片17,17を向き合う状態に突出させることにより、該向き合う枝状突出片17,17で、シート121の下面122を支持させると、日除けを構成できる。又図36に示すように、斜め下方に突出する如く枝状突出片17を支柱3に固定した場合は、同図に示すように、防水シート123の下面125を該枝状突出片17で支持させることにより雨除けを構成できる。
【0070】
(4) 本発明を構成する支柱3は、外周面105が平滑な支柱として構成されることの他、図37に示すように、突部126が支柱3の長さ方向に不連続状態に突設されてなる突部列127の1条又は複数条を有する植物支持用の支柱を流用することもできる。
【0071】
(5) 又本発明を構成する支柱3は、図38に示すような、対向側が平坦面129,129に形成され、該平坦面129,129の端部相互を円弧状面130で繋いだ形状の、横断面が楕円形状を呈する支柱3や、例えば図39に示すような、横断面が四角形状を呈する支柱3を用いることもできる。なお、固定部20は図26〜29に示すと同様の挿通筒部96として構成されており、該固定部20は、図26〜29に示すと同様にして止めネジ97とナット100とを用いて支柱3に固定されるようになされている。
【0072】
同図においては、かかる構成の支柱3の側面部16を側面軸部29とし、枝状部材5の固定部20を該側面軸部29に固定しているため、該固定部20は支柱3の周方向で回転できない。これとは異なり、例えば図40〜41に示すように、外周面131が円形面を呈するリング状部材132を支柱3の側面部16に装着して形成した側面軸部29に枝状部材5の固定部20を固定するときは、図40〜41に矢印で示すように、該固定部20は支柱3の周方向で回転できる。該リング状部材132は、図40に示すような周方向に連続したものとして構成されることの他、図41に示すようなC字状に構成されることもある。なお該リング状部材132は、該固定部20の上下スライド動作を可能として前記枝状部材5の高さ調整を可能とするように上下に稍長く形成するのがよい。
【0073】
(6) 図42は、使用する支柱3が前記嵌入筒部32の内径に比して稍小径である場合も、該支柱3に対して同一の枝状部材5を使用できるようにするために用いる、前記支柱3の側面部16に嵌着される調整リング部材62の他の態様を示すものであり、周方向に閉じた筒状を呈している。
周方向に閉じた調整リング部材62の上下や、C字状の調整リング部材62aを構成するC字状片65の上下に、前記嵌入筒部32の上下端66,67に当接し得るフランジ69,69を設ける場合、該フランジは、前記調整リング部材62やC字状片65の上下端に設けられることの他、該上下端の間で設けられることもある。
【0074】
(7) 前記ネジ軸片35は、前記規制突部49,49が設けられることなく、図43に示すように厚肉に形成されることもある。このように構成した場合も、前記と同様にして、固定部20の有する嵌入溝30に前記側面軸部29を嵌入させ得る。
【0075】
(8) 本発明に係る支柱3は、前記のように防護ネットや遮光シート、防水シート等を取り付けるために用いられることの他、有刺鉄線を架設して防護柵を構築したり、電気刺激を与える電線を架設して電柵を構築するため等にも利用できる。該支柱3としては、例えば120〜250cm程度の長さのものを用いるのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る支柱装置を示す斜視図である。
【図2】支柱装置を構成する支柱の下部を地面に打ち込んで支柱を立設状態とした側面図である。
【図3】枝状部材の固定部の構成を説明する斜視図と支柱の断面図である。
【図4】枝状部材を示す斜視図である。
【図5】枝状部材の固定部の構成を説明する断面図である。
【図6】枝状部材の固定部の構成と操作ナット部材の構成を説明する一部断面斜視図である。
【図7】枝状部材の固定部を支柱に装着した状態を操作ナット部材と共に示す断面図である。
【図8】枝状部材の固定部を支柱に装着する工程を説明する断面図である。
【図9】支柱に装着された固定部を操作ナット部材のねじ込みによって支柱に固定状態とする工程を説明する断面図である。
【図10】C字状の調整リング部材を支柱に嵌着した状態を、その嵌着作業工程と共に示す断面図である。
【図11】枝状部材の固定部をC字状の調整リング部材を用いて支柱に固定する工程を説明する斜視図である。
【図12】C字状の調整リング部材を用いて構成された側面軸部に、枝状部材の固定部を装着する作業工程を説明する断面図である。
【図13】C字状の調整リング部材を用いて構成された側面軸部に、枝状部材の固定部を装着した状態を示す斜視図と断面図である。
【図14】その側面軸部に固定部を装着した状態の部分拡大断面図である。
【図15】その側面軸部に装着された固定部を操作ナット部材を用いて支柱に固定した状態を示す断面図である。
【図16】その固定状態を示す斜視図である。
【図17】本発明に係る支柱装置を用いて構築した防獣用の防護柵を示す斜視図である。
【図18】防護柵を構築するに際して支柱を地面に立設し、該支柱に枝状部材を突設した状態を示す斜視図である。
【図19】農地の周縁に沿って立設された支柱を、枝状部材の突設状態と共に示す平面図である。
【図20】農地の周縁に沿って立設した支柱を、枝状部材の他の突設状態と共に示す平面図である。
【図21】農地のコーナに位置する支柱に、上下2段で枝状部材を固定した状態を示す斜視図である。
【図22】枝状部材に防護ネットの上端側の部分を掛着した状態を示す斜視図である。
【図23】遮光シートが防護ネットに重ねて取り付けられた防護柵を示す斜視図である。
【図24】支柱の打ち込み状態が緩んだときに支柱を更に打ち込み、その後、枝状部材の高さ調整を行う工程を説明する側面図である。
【図25】防護柵の作用効果を説明する説明図である。
【図26】枝状部材の固定部の他の態様を説明する分解斜視図である。
【図27】この固定部を支柱に固定した状態を示す斜視図である。
【図28】その断面図である。
【図29】枝状部材の固定部を、C字状の調整リング部材を介して支柱に固定した状態を示す断面図である。
【図30】枝状部材の固定部のその他の態様を、側面軸部に固定された状態で示す斜視図である。
【図31】その断面図である。
【図32】その固定部の他の固定状態を示す断面図である。
【図33】枝状突出片を上下に回動可能とした枝状部材を示す側面図である。
【図34】その回動構成を示す分解斜視図である。
【図35】その枝状突出片を水平状態に突設した支柱装置をその使用状態と共に示す側面図である。
【図36】枝状突出片を斜め下方に突設した支柱装置をその使用状態で示す側面図である。
【図37】複数条の突部列を有する支柱に枝状部材の固定部を固定した状態を示す斜視図である。
【図38】横断面が楕円形状を呈する支柱に枝状部材の固定部を固定した状態を示す斜視図である。
【図39】横断面が四角形状を呈する支柱に枝状部材の固定部を固定した状態を示す斜視図である。
【図40】周方向に連続した筒状を呈するリング状部材を介して枝状部材の固定部を支柱に固定した状態を示す断面図である。
【図41】C字状のリング状部材を介して、枝状部材の固定部を支柱に固定した状態を示す断面図である。
【図42】調整リング部材の他の態様を示す斜視図である。
【図43】固定部の他の態様を示す斜視図である。
【図44】金網を用いて構成した従来の防護柵を示す斜視図である。
【図45】支柱上部に傾斜片部が設けられた支柱を用いて構築された防護柵を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0077】
1 支柱装置
2 打撃部
3 支柱
5 枝状部材
17 枝状突出片
20 固定部
26 上の掛着片
27 下の掛着片
29 側面軸部
30 嵌入溝
31 挾持片
32 嵌入筒部
35 ネジ軸片
39 雄ネジ部
40 ネジ軸
45 半割り大径部
46 大径部
49 規制突部
50 直線状案内面
51 傾斜案内面
52 傾斜面
53 案内凹部
54 雌ネジ部
55 操作ナット部材
60 支柱下部
62 調整リング部材
63 開口部
64 外周面
65 C字状片
69 フランジ
71 防護柵
72 農地
76 農地のコーナ
77 支柱列
79 防護ネット
92 遮光シート
93 傾斜ネット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が打撃部となる打ち込み式の支柱と、該支柱に突設される枝状部材とを含む枝状部材を具える打ち込み式支柱装置であって、
前記枝状部材は、前記支柱の側面部の上端側の部分をなす側面軸部から突出する枝状突出片の基端に、前記側面軸部に固定される固定部が設けられており、該固定部は、前記側面軸部に取り付いた状態で前記支柱の長さ方向にスライドでき、前記支柱の所要高さ位置で該支柱に固定されることを特徴とする枝状部材を具える打ち込み式支柱装置。
【請求項2】
上端が打撃部となる打ち込み式の支柱と、該支柱に突設される枝状部材とを含む枝状部材を具える打ち込み式支柱装置であって、
前記枝状部材は、前記支柱の側面部の上端側の部分をなす側面軸部から突出する枝状突出片の基端に、前記側面軸部に固定される固定部が設けられ、該固定部は、該側面軸部を嵌入させるための嵌入溝を形成する左右一対の挾持片からなる嵌入筒部を有し、該嵌入筒部は、該嵌入溝に該側面軸部が嵌入した状態で、該側面軸部の長さ方向にスライドできると共に該側面軸部の周方向に回転できる如くなされており、又、両挾持片の先端に、ネジ軸片が所要間隔を置いた対向状態で突設されており、該ネジ軸片間を弾性的に拡開させつつ前記側面軸部を前記嵌入溝に嵌入させることができ、又、該ネジ軸片の外周面には雄ネジ部が設けられており、該左右のネジ軸片が構成するネジ軸が、操作ナット部材の雌ネジ部と螺合し得るようになされており、該操作ナット部材を締め付けるに伴い、前記左右の挾持片が前記側面軸部を締め付け、これにより前記固定部が前記側面軸部に固定されることを特徴とする枝状部材を具える打ち込み式支柱装置。
【請求項3】
前記両ネジ軸片の向き合う内面に、その長さ方向中央線に沿って規制突部が対向状態で設けられており、両ネジ軸片が自由状態においては該両規制突部間に隙間が形成される如くなされており、該規制突部は、前記ネジ軸片の内面から浮き上がった状態で該内面と平行してその長さ方向に延長する直線状案内面を有し、該直線状案内面の先端で、前記ネジ軸片先端に向けて外方に傾斜する傾斜案内面が連設されており、該傾斜案内面の先端で、前記ネジ軸片の先端内側に形成された、外方に傾斜する傾斜面が一連に連なっており、これにより、前記ネジ軸の先端に案内凹部が形成されていることを特徴とする請求項2記載の枝状部材を具える打ち込み式支柱装置。
【請求項4】
前記支柱の径を調整するための調整リング部材が前記側面部に嵌着されることによって前記側面軸部が構成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の枝状部材を具える打ち込み式支柱装置。
【請求項5】
前記支柱の径を調整するためのC字状の調整リング部材が前記側面部に嵌着されることによって前記側面軸部が構成されており、該C字状の調整リング部材は、割り溝状の開口部を具え且つ外周面が円形面を呈するC字状片を有し、該C字状片は、該開口部を弾性的に拡開させつつ前記側面部に弾性的に嵌着される如くなされると共に、該C字状片は前記支柱の長さ方向にスライドでき、又、該C字状片の上下には、前記嵌入筒部の上下端に当接し得るフランジが設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載の枝状部材を具える打ち込み式支柱装置。
【請求項6】
前記枝状突出片の基端部を、前記固定部に設けられた支持部に、該枝状突出部が上下に回動可能に連結し、該枝状突出片が所要角度で固定されるようにしたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の枝状部材を具える打ち込み式支柱装置。
【請求項7】
前記固定部が前記側面軸部に固定された状態において、前記支柱の上端部分が該固定部の上方に突出しており、該突出した部分は、該支柱の打ち込み状態が後に緩んだときに該支柱を更に地面に打込む際の打ち込み余裕部とされており、前記固定部を該打ち込み余裕部に沿って上方向にスライドさせ得るように構成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の枝状部材を具える打ち込み式支柱装置。
【請求項8】
請求項7記載の枝状部材を具える打ち込み式支柱装置を用いる枝状部材を具える支柱の立設工法であって、前記支柱をその打撃部を打撃して地面に所要長さを打ち込んで後、前記枝状部材の固定部を前記支柱の所要高さ位置で前記側面軸部に固定し、該固定状態において、前記支柱の上端部分を該固定部の上方に突出する打ち込み余裕部とし、該支柱の打ち込み状態が後に緩んだときに、前記打撃部を打撃して該支柱を所要長さ地面に打ち込み、その後、前記固定部の固定状態を解除し、該固定部を前記打ち込み余裕部に沿って上方向にスライドさせ、前記枝状部材の高さを当初の状態に戻し、該固定部を前記側面軸部に固定することを特徴とする枝状部材を具える支柱の立設工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公開番号】特開2008−263827(P2008−263827A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109596(P2007−109596)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(392003225)第一ビニール株式会社 (27)
【Fターム(参考)】