説明

枠練り石鹸組成物

【課題】使用していく課程で石鹸が小さくなっても泡立ち性に優れ、かつ、適度な硬さを有し製造時に使用する成形容器からの型離れに優れる枠練り石鹸組成物を提供する。
【解決手段】
本発明の枠練り石鹸組成物は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):(A)炭素数12〜18の脂肪酸又はその塩であって、全脂肪酸分中、不飽和脂肪酸を8〜14重量%含有する脂肪酸又はその塩 30〜60重量%、(B)ポリオール 10〜30重量%、(C)無機塩 2〜6重量%、(D)水 残部を含有し、石鹸内部に気泡を含有し、1立方センチメートルあたりの表面積が400〜10000cmであり、かつ、比重が0.75〜0.88である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠練り石鹸組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
枠練り石鹸は、石鹸素地を溶解し、型に流しこみ、冷却過程で結晶を成長させ固化させる。このため、製造時間が非常に長いという問題を含んでいる。更に、型に流し成形するため、石鹸を取り出す際に、型に石鹸が付着し、きれいな成形ができにくいという問題を有している。量産性が重視されるようになった現代では、ほとんどの石鹸は機械練製法に換わっている。ところで、このような石鹸、例えば浴用石鹸は、使用すると小さくなり、起泡性がおち、使いにくいという問題があった。このため、市場では、液体洗浄剤に置き換わってきている。
また、浴用機械練石鹸として広く使用されるような一般的石鹸は、その性状を美しく見せるために、酸化チタン等の白色剤を添加している。そのため、コストアップになるという問題を抱えている(特許文献1)。
【0003】
これに対し、枠練り石鹸の改良がいくつか検討されている。枠練り石鹸の固化速度を改善するため、無機塩を組み合わせる方法、特定の両性界面活性剤と、ノニオン界面活性剤と、グリセリンと、少なくとも1つのグリセリン誘導体を組み合わせる方法(特許文献2、3)が開示されている。また、石鹸の薄片が、成形容器内に残存しないようにするため、シリコーン油を配合する方法などが開示(特許文献4)されている。
しかしながら、このような方法では、石鹸の使い難さ、生産性の改善には、十分対応しきれないという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献5には、石鹸内部に気泡を微小分散させることにより、二酸化チタンのような白色度改善のための剤などの添加剤を用いることなく、白色の石鹸を製造する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献6及び7には、非イオン性界面活性剤を用いなくても、気泡入り石鹸を成形することができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−134099号公報
【特許文献2】特開2004−256805号公報
【特許文献3】特開2004−352997号公報
【特許文献4】特開2000−309795号公報
【特許文献5】特開平4−218599号公報
【特許文献6】特開2006−45437号公報
【特許文献7】特開2006−45438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献5〜7では、使用すると小さくなると、起泡性がおちる観点および製造過程で成形型からの離型性を改善して生産性を上げるという観点からの検討はなされていない。
本発明は、従来の石鹸の抱えていた上記の問題を解決すべく、使用していく課程で石鹸が小さくなっても泡立ち性に優れ、かつ、製造時に使用する成形容器からの型離れに優れる枠練り石鹸組成物を提供する。
【0008】
本発明者らは、従来の枠練り石鹸において、特定の構成を有する脂肪酸塩、ポリオール、無機塩、水を組み合わせ、石鹸内部に微小な気泡を含有させ、表面積を大きくすることにより、これらの問題を解決することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)炭素数12〜18の脂肪酸又はその塩であって、全脂肪酸分中、不飽和脂肪酸を8〜14重量%含有する脂肪酸又はその塩 30〜60重量%、
(B)ポリオール 10〜30重量%、
(C)無機塩 2〜6重量%、
(D)水 残部
を含有し、石鹸内部に気泡を含有し、1立方センチメートルあたりの表面積が400〜10000cmで比重が、0.75〜0.88である枠練り石鹸組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の枠練り石鹸は、適度な硬さを有し、使い続けてもその使用感が変わらず、泡立ち性に優れ、製造時に使用する成形容器からの型離れに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
成分(A)は、炭素数12〜18の脂肪酸又はその塩であって、全脂肪酸分中、不飽和脂肪酸を8〜14重量%含有する脂肪酸又はその塩である。従って、一部の脂肪酸は、未中和の遊離脂肪酸であってもよい。また、脂肪酸塩中の脂肪酸および遊離脂肪酸を合わせた全脂肪酸分中、不飽和脂肪酸を8〜14重量%、好ましくは11〜13重量%含有するものである。この不飽和脂肪酸とは、オレイン酸や、リノール酸、リノレン酸、パルミトレイン酸等の不飽和基を1又は2以上有する脂肪酸をいう。
【0012】
成分(A)は、成分(A)を構成する全脂肪酸分中、炭素数12および14の脂肪酸の占める割合(重量比率)は、洗浄時の泡立ち性の観点から、70〜90重量%であることが好ましく、更には、75%以上80%以下であることが好ましい。更に、きめの細かいクリーミーな泡質と泡持ちを得る観点から、炭素数12の脂肪酸と炭素数14の脂肪酸との重量比率((炭素数12の脂肪酸重量)/(炭素数14の脂肪酸重量))が0.8〜1.3、更には、0.85〜1.26であることが好ましい。
【0013】
更に、成分(A)を構成する全脂肪酸分中、炭素数14の脂肪酸と不飽和脂肪酸との重量比率((不飽和脂肪酸)/(炭素数14の脂肪酸))は、製造時の型離れの観点から0.2〜0.5であることが好ましく、0.25〜0.40、更には、0.27〜0.33であることが好ましい。
【0014】
本発明において、上記の脂肪酸は、通常用いられる塩基によって中和塩となる。中和塩としては例えば、アルカリ金属塩、アミン塩、アルカノールアミン塩、塩基性アミノ酸塩等が例示できる。中でも、ナトリウム塩又はカリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましく、特にはナトリウム塩が好ましい。ここで用いられる中和剤の添加量としては、脂肪酸の中和量として80%から100%中和される量であることが好ましい。
【0015】
成分(A)の炭素数12〜18の脂肪酸又はその塩は、石鹸の成形性、泡立ち性、強度(硬さ)の観点から、本件発明の石鹸組成物中、脂肪酸として30〜60重量%、更には、35〜50重量%含まれることが好ましい。
【0016】
成分(B)のポリオールとしては、グルコール類、グリセリン、糖類が挙げられる。グルコール類としては、イソプレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。糖類としては、マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール等の4〜6炭糖の単糖又は二糖の糖アルコールが挙げられる。成分(B)のポリオールは、石鹸の固化を高め、石鹸強度を高める。また、洗浄時、石鹸の水へ溶解性を高める観点からも必要である。特に、糖類には、石鹸の製造途中の中和工程において、カラメル反応による着色が生じにくいという効果をも有するので、より好ましい。糖類の中では、特に、ソルビトールが石鹸の水へ溶解性を高める観点から好ましい。これらのポリオールは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
成分(B)のポリオールは、上記観点から、本件発明の石鹸組成物中、10〜30重量%、更には、15〜25重量%含まれることが好ましい。また、石鹸の強度を高める観点から、また、成分(A)(脂肪酸塩とする)と成分(B)との重量比(成分(A)/成分(B))が1.3〜2.5、更には、1.5〜2.0、更には1.8〜2.0であることが好ましい。
【0018】
成分(C)の無機塩は、枠練り石鹸において、製造時の固化速度を著しく加速するため、生産効率を著しく向上させる。無機塩としては、特に制限はないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硝酸ナトリウムなどが挙げられ、特に、塩化ナトリウムと硫酸ナトリウムを併用することが好ましい。本件発明の石鹸中、成分(C)の無機塩の含有量は、枠練り石鹸の固化速度を発揮する観点から、2〜6重量%、更には、3〜5重量%含むことが好ましい。
【0019】
成分(D)水は、他の成分を均一な溶融物とするための媒体として必要となる。また、石鹸生成後は、石鹸の溶解性や、柔軟性の付与するために重要である。成分(D)水は、本件発明の石鹸組成物中、成分(A)(B)(C)の残部を形成し、15〜45重量%、更には19〜38重量%、更には20〜35重量%含有することが好ましい。
【0020】
本発明の枠練り石鹸は、石鹸内部に気泡を含有する。
石鹸に取り込まれた気泡の平均粒径は、5〜35μm、好ましくは10〜30μm、更には、15〜25μmとする。また、気泡を含んだ見かけの石鹸の比重は、0.75〜0.88とすることが好ましい。
また、本発明の石鹸の表面積は、石鹸の溶解性と、後述するふやけにくさなどの石鹸性能の観点から、1立方センチメートルあたりの表面積が400〜10000cm、更には、500cm以上、更には600cm以上とすることが好ましく、3000cm以下、更には1800cm以下、更には1500cm以下が好ましい。
【0021】
また、気泡の平均粒径を上記のように設定することで、石鹸内部に入る光は、乱反射して石鹸生地の白さを向上させ、結果として視覚的に美観を向上させることができる。従って、従来のように、石鹸に、酸化チタン等の白色剤を添加することなく、コストメリットが得られる。
【0022】
更に、本発明の枠練り石鹸は、両性界面活性剤を含むことができる。両性界面活性剤としては、アルキルスルフォベタイン、アルキルアミドプロピルベタインなどが挙げられる。両性界面活性剤は、使用時の泡質を向上させるだけでなく、石鹸の硬度を高める働きがある。本発明の枠練り石鹸に含まれる両性界面活性剤は、上記観点から、0.3〜3重量%、更には0.5〜3重量%、更には0.8〜1.5重量%含有することが好ましい。
【0023】
本発明の枠練り石鹸は、石鹸の良好な使用感を得るために、1立方センチメートルあたりの表面積を400〜10000cmとすることに特徴がある。石鹸の表面積を増やすことにより、使用時の表面積が増え、石鹸生地の溶解性が高めることが可能となり、高い気泡性を得ることができる。一般に、使い始めの石鹸は、泡立ちに優れるが、使いこみ、小さくなると、泡立ちが悪く感じられる。これは、石鹸の大きさにも関連し、表面積の違いからくる、石鹸成分の溶解性の違いも原因の一つと考えられた。しかしこのように表面積を向上させることで、この問題は解決できる。
【0024】
このような枠練り石鹸は、例えば以下のようにして得られる。
まず、水、脂肪酸またはその塩、ポリオール、無機塩、および必要に応じて両性界面活性剤等とを混合し、加熱溶解する。この際、気体を混入し、撹拌することで、溶液内部に気泡を取り込むことができる。このとき、ミキサーやディスパー等で高速攪拌することにより、均一に気泡が分散した石鹸生地が得られる。このようにして得られた石鹸生地は、型に入れられ、冷却する過程で結晶が成長し、気泡が内部に均一に分散した状態で固化する。単位体積あたりの表面積は、内部に取り込まれる気泡の粒径と、気泡を含んだ見かけの石鹸の比重から、調整することができる。
【0025】
なお、このような気泡粒径の調整、比重の調整などは、機械練り製法の石鹸では難しく、枠練り石鹸のみでできる製法と考えられる。発泡に用いる気体は、石鹸及び香料成分の酸化劣化を抑制するため窒素や空気が好ましい。
【0026】
また、枠練り石鹸は、型に流し込み、成形する必要がある。この際、型に石鹸表面が接着し、型離れが悪いという問題が発生する。そこで、型と石鹸の接触点を分散させること、石鹸の硬さの調整と、ねばり(もろくないこと)の付与が必要となる。
型と石鹸の接触点を分散させるには、石鹸内部に気泡を含有させ、適度な割合で分散させることを見出した。その結果、平均気泡径を35μm以下に設定し、しかも、枠練り石鹸中(体積)の気泡含有率が10%以上有すること見出した。なお、平均気泡径は、石鹸を切断し、切断面中心部分の単位面積あたりに存在する気泡の水平方向径を測定する。この値を個数平均し、平均内部気泡粒径とした。
石鹸の硬さとねばりの調整は、成分(A)の脂肪酸組成及び、各成分の相互作用により決定される。
【0027】
一般の機械練石鹸は炭素数12〜14の脂肪酸を起泡性成分として、炭素数16〜18の脂肪酸を賦形成分として添加する。しかし、本発明の枠練り石鹸では、炭素数16〜18の脂肪酸の賦形性は重要ではなく、炭素数12〜14の脂肪酸の冷却成型時に成長するカードソープ(繊維状結晶)の性質、高い硬度と賦形性、及び高い起泡性の両方の機能を有することが重要である。このためには、成分(C)の無機塩の存在が重要となり、電解質を添加して溶液の会合状態での石鹸分子のパッキング性を上げカードソープを硬くする。
このようにしてできたカードソープは、電解質により水溶性が低下しているため、内部の水を離しやすく、もろくなりやすい。そこで成分(B)ポリオールなどの親水性の高い物質を添加することが好ましい。成分(B)ポリオールは、カードソープの構造を微細化するため、石鹸硬度もあがる点も好ましい。
【0028】
成分(E)両性界面活性剤は、カードソープの構造を更に微細化し、網目状構造の密度を増やす効果があると考えられる。これらの効果により、石鹸生地の内部は、石鹸硬度が向上すると考えられる。このため、成分(A)(脂肪酸塩)と成分(E)の関係において、成分(E)/(成分(A)+成分(E))が0より大きく、0.05以下、好ましくは0.03以下になるように設定されることが好ましい。
【0029】
更に、石鹸内部に気泡を有した場合、気泡の表面は、脂肪酸塩が綺麗に配列し硬い結晶構造ができることがわかった。しかし、硬い結晶構造は、もろいという欠点を有していると考えられる。そこで、液状の脂肪酸、不飽和脂肪酸を含有することで、ねばり性(靭性)を付与できると考えられた。本発明においては、炭素数14の脂肪酸が硬度を調整しおり、炭素数14の脂肪酸と不飽和脂肪酸との重量比率((不飽和脂肪酸)/(炭素数14の脂肪酸))を0.2〜0.5、好ましくは、0.25〜0.40とすることで、石鹸組成物の靭性を向上させ、結果として石鹸の型離れを向上させることができる。
【0030】
また、石鹸内部に気泡を有した場合、石鹸は、上記気泡表面の結晶構造とカードソープとの構造化が進み、更にふやけ難くなり、変質し難くなることがわかった。この結果、石鹸の使いこみによる石鹸の泡立ちの劣化が抑制され、最後まで使用感の変わらない石鹸が得られるものと考えられる。
【0031】
本発明の枠練り石鹸は、上述の成分の他に、従来の枠練り石鹸において使用されているような成分、例えば、抗菌剤、香料、顔料、染料、油剤、低刺激化剤等を含有することができる。ここで、抗菌剤としては、トリクロサンやトリクロロカルバニリドなどを挙げることができ、その含有量は、通常0.01〜2重量%である。また、香料、顔料あるいは染料などの含有量は、通常0.02〜5重量%である。油剤としては、ラノリン、パラフィン、ワセリン、ミリスチン酸イソプロピルなどを挙げることができ、一般に0.05〜5重量%の含有量である。
【0032】
本発明の枠練り石鹸組成物は、具体的には、以下のようにして得られる。
融点より高い温度になるまで脂肪酸を加熱して液体状態にした後、酸化防止剤を加えて均一に溶解するまで攪拌する。酸化防止剤溶解後に水で希釈したアルカリ剤を脂肪酸に徐々に加えて中和を行なう。中和後、ポリオール、塩、両性界面活性剤、キレート剤、その他水溶性成分を均一に混ぜた混合液を、脂肪酸中和液に添加し、均一になるまで攪拌する。最後に香料、植物エキス等を加えて均一に混合する。
【0033】
上記の方法で調製された石鹸液(ニートソープ)を食品用ミキサー(HMF KRAMPE&Co EUROMIX)で気体を吹き込みながらせん断攪拌を行い、気泡が均一に分散されたニートソープを得る。気泡の粒径は回転数を変えることで調整し、比重はニートソープと気体の比率を変えることで調整される。
【0034】
気泡を分散したニートソープを石鹸に成型するため金型に充填し、室温まで冷却する。この後型から石鹸を取出し、本発明の石鹸を得る。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明について、実施例および比較例を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
(実施例1〜9、比較例1〜7)
以下の手順で、枠練り石鹸組成物を製造した。
1)油相の調製
100リットルのステンレス釜に、表1に示した処方にしたがって、脂肪酸を投入し、温度80℃で溶融させる。溶融後、表1に示した酸化防止剤(ジブチルヒドロキシトルエン:BHT)を加え、プロペラ翼にて回転数100rpmで攪拌する。
【0037】
2)水相の調製
50リットルのステンレスバットに、糖またはポリオール、無機塩、両性界面活性剤(ベタイン)、キレート剤、精製水を、表1に示した処方にしたがって添加し、無機塩が完全に溶解するまで攪拌する。
【0038】
3)アルカリの調製
48%のNaOHを調製する。
4)80℃に加温した油相に水相を加え、80℃になるまで加温する。
5)回転数を200rpmに上げ、48%のNaOHを少しずつ添加する。添加終了後、中和物の塊が溶解するまで、約30分攪拌を続ける。NaOHを加えると中和熱で一時的に温度が上昇するが、攪拌途中に80℃以下に温度が下がらないように保温する。
6)香料を添加し、攪拌して均一に混合する。
【0039】
7)食品用ミキサー(HMF KRAMPE&Co EUROMIX)で窒素を吹き込みながら、発泡し、石鹸溶液内部に均一に微細な気泡を分散させた。石けん内部の気泡表面積を変えるためにはミキサー回転数を可変させることで行なった。微細な気泡を得るためにはミキサーを高回転数に上げ、大きな気泡を得るには回転数を下げた。石けんの比重を変えるためには、石けん流量と気体流量の割合を変えることで行なった。
【0040】
8)120cmのロゴ付き金型に発泡後の石鹸溶液を流し込み、金型の外側を5℃の水で10分間冷却する。
9)冷却後、金型から石鹸を取り出す。
【0041】
(評価方法)
各実施例、比較例で得られた石鹸について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(気泡平均粒子径の測定方法)
石鹸を2等分に切断し、さらに測定台に載せられるよう1mmの厚みにスライスした後、切断面の中心部付近をキーエンス製マイクロスコープVHX−100で測定した。画面視野を約600μm×400μmになるようレンズ倍率を設定し、その画面に存在する気泡の水平方向直径を200個分測定し、その直径総和を200で割ることで平均内部気泡粒径とした。
【0042】
(見かけ比重の測定方法)
体積が120cmの金型に流し込んで成型した石けんの重量を測定し、120で割ることで見かけ比重を計算した。
【0043】
(1cmあたりの表面積の計算方法)
石けん1cmに含まれる空間部分が、平均粒子径の気泡のみで構成されると考え、下記の計算式で、1立方センチメートルあたりの表面積を算出した。
見かけ比重:ρ(g/cm)、気泡平均粒子直径:dp(cm)、としたとき
計算式:1cm×(1−ρ)÷(4/3π(dp/2)^3)×4π(dp/2)^2 =3*(1−ρ)/(dp/2)
【0044】
(使用し、石けんが小さくなったときの泡立ちの評価)
石けんを1辺が3cm×3cm×2cmに切断し、40℃の水道水に1時間浸漬後、10回手の中で回転させて、泡立てを30秒間行う。その後石けんの表面に残った泡をよくすすぎ、水を切った後、室温の成り行き環境(約25℃、50%RH)で24時間乾燥させる。
この動作を5回繰り返し、小さくなった石けんで、同様に6回目の泡立て評価を行い、泡量を評価した。
【0045】
(型離れ性(金型に残る剥離面積))
120cmのロゴ付き金型に発泡後の石鹸溶液を流し込み、金型の外側を5℃の水で10分間冷却する。冷却後、金型から石鹸を取り出し、金型に残った石けんの薄皮部分の面積を測定した。
【0046】
(泡持ち)
サンプルを40℃の水道水に2wt%溶解させ100ccの溶液を調製する。この溶液を、ポンプフォーマー容器(160ml、YF−9413(吉野工業社))に入れ、ろ紙10枚重ねた上に泡をワンプッシュ吐出する。60秒後に平らなへらで残存する泡を取り除き、ろ紙に吸収された重量を測定し、吐出量に対する吸収量の割合を測定する。
(ろ紙に吸収された重量)/(ポンプフォーマーからの吐出重量)×100(%)
泡持ちが悪い×:25%以上
泡持ちが良い○:20%以上25%未満
泡持ちが非常に良い◎:20%未満
【0047】
(白さ)
石けんの底面をカッターで切断し、約φ2cmの測定面を作る。この部分をミノルタ色彩色差計CR−300で測定し、Lab値から白色度を計算した。
(石けんの硬さ)
アスカー社製ゴム硬度計で石けん底面の3箇所を測定し、その平均値を石けん硬度とした。
【0048】
(ふやけの測定法)
石けんを1cm×1cm×5cmに切断し、25℃の水道水中に3時間浸漬させる。その後石けんを引き上げる。浸漬前後の重量から浸漬後にどれだけ重量が増加したかを測定することでふやけを判断する。
【0049】
(石鹸の靭性)
石けんを1cm×1cm×5cmに切断した試験片を作成する。不動工業のレオメーターNRM−2010J−CWに折り試験用専用アダプタ37番と歯形押棒A12番をセットする。支持台の間隔を4cmにしてその上に試験片を乗せる。その際、試験片の中心に押棒が当たるようにする。支持台の上昇速度を2cm/minに設定し、押棒に試験片をじょじょに押し付けて、石けん試験片の破断状態で石鹸の靭性を測定する。
○:押し棒部分の当たった部分で折れ曲がった後に破断する
×:押し棒部分の当たった部分で、亀裂が入った後に折れ曲がって破断する
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)炭素数12〜18の脂肪酸又はその塩であって、全脂肪酸分中、不飽和脂肪酸を8〜14重量%含有する脂肪酸又はその塩 30〜60重量%、
(B)ポリオール 10〜30重量%、
(C)無機塩 2〜6重量%、
(D)水 残部
を含有し、石鹸内部に気泡を含有し、1立方センチメートルあたりの表面積が400〜10000cmで比重が、0.75〜0.88である枠練り石鹸組成物。
【請求項2】
更に成分(E)両性界面活性剤を含む請求項1記載の枠練り石鹸組成物。
【請求項3】
成分(A)を構成する脂肪酸において、炭素数12および炭素数14の脂肪酸が70〜90重量%で含有される請求項1又は2記載の枠練り石鹸組成物。
【請求項4】
成分(A)を構成する脂肪酸において、炭素数12と炭素数14との脂肪酸の重量比((炭素数12の脂肪酸)/(炭素数14の脂肪酸))が0.8〜1.3である請求項1〜3のいずれか1項記載の枠練り石鹸組成物。
【請求項5】
成分(A)を構成する脂肪酸において、炭素数14の脂肪酸と不飽和脂肪酸との重量比率((炭素数14の脂肪酸)/(不飽和脂肪酸))が、0.2〜0.5である請求項1〜4のいずれか1項記載の枠練り石鹸組成物。
【請求項6】
成分(E)両性界面活性剤と成分(A)炭素数12〜18の脂肪酸又はその塩において、重量比(成分(E)/(成分(A)+成分(E)))が0.05以下である請求項1〜5のいずれか1項記載の枠練り石鹸組成物。
【請求項7】
成分(A)と成分(B)との重量比(成分(A)/成分(B))が1.3〜2.5である請求項1〜6のいずれか1項記載の枠練り石鹸組成物。

【公開番号】特開2011−12258(P2011−12258A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129148(P2010−129148)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】