枢支構造およびそれを利用したカード処理装置
【課題】 枢支構造において、組付けの作業を容易にする。
【解決手段】 第1の枢支部材60の第1の挿通孔60dと、第2の枢支部材80の第1の貫通孔80aとに第1の枢軸81を挿通することにより、第1の枢支部材60が第2の枢支部材80に枢支される。第2の枢支部材80の第2の貫通孔80bと、支持部材59の第2の挿通孔59cとに第2の枢軸66を挿通させることにより、第2の枢支部材80が支持部材59に枢支される。規制部材82は、第1の枢軸81の係入溝81aに係入される凹部82dと、第2の枢軸66が挿通される第3の挿通孔82eと、第2の枢支部材80の被係合部80cと係合する連結部82bとを有する。
【解決手段】 第1の枢支部材60の第1の挿通孔60dと、第2の枢支部材80の第1の貫通孔80aとに第1の枢軸81を挿通することにより、第1の枢支部材60が第2の枢支部材80に枢支される。第2の枢支部材80の第2の貫通孔80bと、支持部材59の第2の挿通孔59cとに第2の枢軸66を挿通させることにより、第2の枢支部材80が支持部材59に枢支される。規制部材82は、第1の枢軸81の係入溝81aに係入される凹部82dと、第2の枢軸66が挿通される第3の挿通孔82eと、第2の枢支部材80の被係合部80cと係合する連結部82bとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三つの部材のそれぞれの間を二つの軸を介して枢支する枢支構造およびそれを利用したカード処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の枢支構造としては、互いに対向する一対の第1の挿通孔が形成された第1の枢支部材と、一端部に第1の貫通孔が形成され、他端部に第2の貫通孔が形成された第2の枢支部材と、互いに対向する一対の第2の挿通孔が形成された支持部材とを備え、第1の挿通孔および第1の貫通孔に第1の枢軸を挿通することにより第1の枢支部材を第2の枢支部材の一端部に枢支し、第2の挿通孔および第2の貫通孔に第2の枢軸を挿通することにより第2の枢支部材の他端部を支持部材に枢支したものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような従来の枢支構造においては、第1および第2の枢軸の両端部にリング状の係入溝を形成し、これらの各係入溝にEリングを嵌合させることにより、第1および第2の枢軸の軸線方向への抜けを規制している。このように複数の係入溝に煩雑なEリングの嵌合作業を行わなければならないため、組付けの作業が煩雑になるという問題があった。
【0004】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、組付けの作業を容易にするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明は、互いに対向する一対の第1の挿通孔が形成された第1の枢支部材と、一端部に第1の貫通孔が形成され、中央部に第2の貫通孔が形成され、他端部に被係合部が形成された第2の枢支部材と、前記第1の挿通孔および前記第1の貫通孔に挿通されることにより前記第1の枢支部材を前記第2の枢支部材の一端部に枢支する第1の枢軸と、互いに対向する一対の第2の挿通孔が形成された支持部材と、前記第2の挿通孔および前記第2の貫通孔に挿通されることにより前記第2の枢支部材の他端部を前記支持部材に枢支する第2の枢軸とを備えた枢支構造において、前記第1の枢軸の両端部にリング状の係入溝を設け、前記第1の枢軸の軸線方向への抜けを規制する金属製の薄板によって形成された規制部材を備え、前記規制部材は、互いに対向する一対の腕部とこれら腕部の各基端部間を連結する連結部とによってコ字状に形成され、前記各腕部の先端部に前記第1の枢軸の係入溝に係入される開口を有する凹部を設け、前記各腕部の中央部に前記第2の枢軸が挿通される第3の挿通孔を設け、前記第2の貫通孔に貫通される前記第2の枢軸が前記第3の挿通孔に挿通された状態で、前記規制部材の連結部が前記第2の枢支部材の被係合部に係合することにより、前記第2の枢軸を回動中心とした前記規制部材の回動が規制されるものである。
【0006】
本発明は、カード挿入口に連通するカード処理通路と、このカード処理通路に設けられカードを処理するカード処理部と、前記カード処理通路の前記カード挿入口と反対側に設けられカードを回収するカード回収部と、前記カード挿入口と前記カード処理部との間でカードを搬送する第1のカード搬送手段と、前記カード処理部と前記カード回収部との間でカードを搬送する第2のカード搬送手段とを備え、前記第2のカード搬送手段は、モータによって正逆方向に回転し前記カード処理部と前記カード回収部との間に延在するねじ棒と、このねじ棒に螺合するナット部材と、このナット部材に一体に形成され回転が規制された状態で前記ねじ棒の軸線方向に移動自在に支持されたホルダーと、このホルダーに回動自在に支持された回動部材と、この回動部材を介して前記ねじ棒の軸線方向に移動自在で、前記第1のカード搬送手段によってカードを搬送しているときに前記カード処理通路から退避させるように前記カード処理通路に進退自在となるように当該回動部材に回動自在に支持され前記カード処理通路に進出することによりカードの前端と後端とのそれぞれに係合する爪部材と、前記回動部材に係合し前記ねじ棒を回動中心として回動自在に支持された駆動ブラケットと、この駆動ブラケットを回動させることにより、前記回動部材を介して前記爪部材とカードの前端および後端との係合を解除させこれら爪部材を前記カード処理通路から退避させる駆動手段とを備え、前記ホルダーに、前記爪部材の前記カード処理通路からの進退動作を案内する案内部を設け、前記爪部材、回動部材、ホルダーのそれぞれを、請求項1に係る発明における各第1の枢支部材、第2の枢支部材、支持部材としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1の枢軸の係入溝に規制部材の腕部の先端部に設けた凹部を係入し、第2の枢軸を腕部の第3の挿通孔と第2の枢支部材の第2の貫通孔とに挿通することにより、第2の枢軸を回動中心とした規制部材の回動が規制される。したがって、規制部材の凹部が第1の枢軸の係入溝から脱落するようなことがないから、第1の枢軸の軸線方向への抜けが規制部材の一対の腕部によって規制される。このように、第1の枢軸の係入溝にEリングを嵌合するような煩雑な作業が不要となり、規制部材の腕部に形成した開口を有する凹部を第1の枢軸の係入溝に係入させればよいので作業が容易になる。
【0008】
本発明のうちの一つの発明によれば、爪部材が回動部材に回動自在に支持されているため、駆動手段によって回動部材を回動させることにより、回動部材に随伴して移動する爪部材は、カード処理通路に進出した姿勢を維持したままカード処理通路から退避することができる。したがって、爪部材全体をカード処理通路から同じ距離だけ退避させることができるから、退避した爪部材の一部がカード処理通路内のカードに接触するようなことがない。このため、第1のカード搬送手段によってカードを搬送する際に搬送不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置の平断面図である。
【図3】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置において、カードを回収する動作を説明するための図2における III-III線断面図である。
【図4】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置において、カードを回収する動作を説明するための図2における III-III線断面図である。
【図5】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置において、カードを回収する動作を説明するための図2における III-III線断面図である。
【図6】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置において、カードを回収する動作およびカードを発行する動作を説明するための図2における III-III線断面図である。
【図7】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置におけるカード押圧手段の斜視図である。
【図8】図2におけるVIII-VIII 線断面図である。
【図9】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置における第2のカード搬送手段を示し、カード搬送爪がカード処理通路内に進出した状態を上方から視た斜視図である。
【図10】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置における第2のカード搬送手段を示し、カード搬送爪がカード処理通路から退避した状態を下方から視た斜視図である。
【図11】図2におけるXI矢視図で、爪部材がカード処理通路内に進出した状態を示す。
【図12】図2におけるXI矢視図で、爪部材がカード処理通路から退避した状態を示す。
【図13】本発明に係る枢支構造の平面図である。
【図14】本発明に係る枢支構造の分解斜視図である。
【図15】図13におけるXV-XV 線断面図である。
【図16】本発明に係る枢支構造において、規制部材の組付け方法を説明するために、図15において要部を抜粋した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図16に基づいて説明する。なお、図2において、説明の便宜上、第2のカード搬送手段の一部は図示を省略している。また、明細書中において方向を説明するために使用した「上、下」は、あくまでも図中における方向を説明したものであって、本発明に係るカード処理装置が実際に使用される際の上、下の方向とは必ずしも一致するものではない。
【0011】
図1において、全体を符号1で示すカード処理装置は、4つの側壁によって形成された枠体2を備え、この枠体2の前端には非接触ICカード(以下、単にカードという)Pが挿入されるカード挿入口3を有するカード挿入口部材4が取り付けられている。この枠体2には、図3に示すように、後述するアッパーケース18の底部20とともにカード挿入口3に連通するカード処理通路5を形成する通路壁6が一体に設けられており、この通路壁6に連設され底部7および囲い壁8とによってカード回収用凹部9が設けられている。すなわち、このカード回収用凹部9は、カード処理通路5を挟んでカード挿入口3と反対側に設けられている。このカード回収用凹部9の底部7には複数のばね保持用の凸部10が設けられており、囲い壁8には互いに対向するガイド溝11が上下方向に延在するように設けられている。
【0012】
上記通路壁6の下方には、図示を省略した支持部材によって回転自在に支持された駆動ローラ13が設けられており、この駆動ローラ13は通路壁6に設けた窓14からカード処理通路5内に臨んでいる。この駆動ローラ13は駆動軸15の一端部に軸着され、駆動軸15の他端部にはウォームホイール16が軸着されており、このウォームホイール16には、第1のモータ17の出力軸に軸着されたウォーム(図示せず)が噛合している。したがって、第1のモータ17を正・逆方向に駆動することにより、駆動ローラ13が図3中反時計方向または時計方向に回転する。
【0013】
図3に符号18で示すアッパーケースは、開口した上面がカバー19(図1参照)によって覆われており、底部20が通路壁6とカードPの厚みよりも大きな間隔だけ隔てて対向するように枠体2に取り付けられており、底部20と通路壁6とによってカード処理通路5が形成されている。このアッパーケース18にはピンチローラ21が回転自在に支持されており、このピンチローラ21は底部20の窓22からカード処理通路5内に臨み、上記駆動ローラ13に対接している。これら駆動ローラ13とピンチローラ21とによって、カード挿入口3と後述するカード処理部23との間でカードPを搬送する第1のカード搬送手段を構成している。
【0014】
このような構成において、カード挿入口3からカードPが挿入されると、図示を省略したセンサによってこれが検知され、第1のモータ17が正方向に駆動し、駆動ローラ13が反時計方向に回転する。したがって、カードPの先端が駆動ローラ13とピンチローラ21との対接部まで挿入すると、カードPはこれら両ローラ13,21とによってカード処理通路5内を矢印A方向に搬送され、図3(a)に示すようにカード処理通路5内に取り込まれて停止する。
【0015】
この状態で、カードPとカード処理部としてのアンテナ基板23との間で無線を介してカードPに記録されたデータの処理が行われ、データの処理が終わると、第1のモータ17が逆方向に駆動する。したがって、駆動ローラ13が図中時計方向に回転するため、カードPは駆動ローラ13とピンチローラ21とによってカード処理通路5内を矢印B方向へ搬送されカード挿入口3から返却される。
【0016】
次に、図8を用いてカード回収部25について説明する。カード回収部25は、カード回収用凹部9内において複数枚の発行用のカードPを積載する積載台26が備えられており、この積載台26の下面側には軸27を保持する保持部28が一体に設けられている。この軸27の径はカード回収用凹部9のガイド溝11の幅よりも僅かに大きく形成されており、この軸27の両端部はガイド溝11内に係入されている。したがって、積載台26は、軸27がガイド溝11に案内されることにより、カード回収用凹部9内を図中左右に揺動可能な状態で上下方向へ移動自在に支持されている。
【0017】
積載台26の下面側には、上記したばね保持用凸部10に対向するばね保持用凸部29が一体に設けられており、これら凸部10,29間に第1の付勢手段としての圧縮コイルばね30が弾装されている。したがって、積載台26は圧縮コイルばね30の弾発力によって上方に付勢されており、積載台26上に積載された複数枚のカードPの最上位置のカードPAが、後述するようにガイドケース34の底部36に係止されることにより、このカードPAがカード処理通路5に臨むようにカード処理通路5と同じ高さに位置付けられている。
【0018】
次に、図1、図2、図3および図7を用いて、カード押圧手段33について説明する。図3に示すように、カード押圧手段33は、上記したカード回収部25の上方に位置し上方が開口し断面コ字状に形成されたガイドケース34を備え、このガイドケース34が、図1に示す枠体2の上方の開口を覆うカバー35の下面側に取り付けられている。このガイドケース34の底部36の矢印B方向の端部には、図7に示すように、切欠き37と窓38が設けられており、底部36の中央部には、矢印A−B方向に延在し互いに対向する一対のガイド壁39,39と、これらガイド壁39,39に挟まれこれらガイド壁39に平行な一対のガイドリブ40,40が一体に立設されている。
【0019】
ガイド壁39には、図3に示すように、ガイド用の切欠きが矢印A−B方向に延在するように設けられており、この切欠きの下面とガイドリブ40の上面とが協働してガイド部42を形成している。このガイド部42は、矢印B方向の一端側から矢印A方向に向かって、順次高さが高くなる第1のガイド部42a、第2のガイド部42b、第3のガイド部42cが連設されている。
【0020】
図7において、45は上方が開口し箱状に形成された移動子であって、両側壁に第1の軸46と第2の軸47が横架され、第2の軸47は、図3に示すように第1の軸46よりも高い部位に位置付けられている。これら第1および第2の軸46,47がガイドケース34のガイド部42に係入されることにより、移動子45はガイドケース34に矢印A−B方向に移動自在に支持される。移動子45の矢印B方向の端部には、矢印A−B方向と直交する方向に延在する支持軸49が横架されており、この支持軸49とガイドケース34の底部36との間に懸架された第2の付勢手段としての引張りコイルばね50(図2参照)の引張力によって、移動子45は常時矢印B方向へ付勢されている。
【0021】
支持軸49の両端部には、係合部材としての一対のカード押圧レバー52,52が回動自在に支持されており、これらカード押圧レバー52,52は、支持軸49に巻回され両端部がそれぞれカード押圧レバー52,52に係止されたねじりコイルばね53のねじりモーメントによって図3中時計方向に付勢されている。時計方向に付勢されたカード押圧レバー52,52は、ガイドケース34の切欠き37と窓38からガイドケース34の下方に突出し、カード押圧レバー52に突設したストッパピン54がガイドケース34の底部36に係止されることにより、カード押圧レバー52の時計方向への回動が規制されている。ガイドケース34の切欠き37と窓38からガイドケース34の下方に突出したカード押圧レバー52は、カード回収部25の近接した位置においてカード処理通路5に臨んでおり、このカード押圧レバー52の右端には鉛直方向に延設され鉛直部52aが形成されており、左端には矢印A方向に斜め上方に傾斜し傾斜部52bが形成されている。
【0022】
次に、図9ないし図12および図14を用いてカードをカード処理部とカード回収部との間で搬送する第2の搬送手段について説明する。図9に符号55で示す第2のカード搬送手段は、カードを搬送する駆動源である第2のモータ56と、この第2のモータ56によって正・逆方向に回転するねじ棒57と、このねじ棒57に螺合しねじ棒の回転にしたがって矢印A−B方向へ移動するナット部材58と、このナット部材58に一体に形成された支持部材としてのホルダー59と、このホルダー59に回動可能に支持された第2の枢支部材としての回動部材80と、この回動部材80に回動自在に支持された第1の枢支部材としての爪部材60と、この爪部材60を回動させる駆動手段としてのソレノイド61とによって概ね構成されている。
【0023】
第2のモータ56は正・逆方向に駆動し、カバー19(図1参照)に取り付けられ、出力軸にはギア62が軸着され、このギア62と噛合するギア63およびこのギア63に噛合し、ねじ棒57の一端部に軸着されたギア64を介して、第2のモータ56の駆動がねじ棒57に伝達される。ねじ棒57はカバー35の折曲部間に回転自在に支持されている。65はカバー19の折曲部間に横架され矢印A−B方向に延在するガイドバーであって、ホルダー59はこのガイドバー65に矢印A−B方向に移動自在に支持されている。
【0024】
ホルダー59には、図14に示すように互いに対向する一対の両側壁59b,59bが形成されており、これら両側壁59b,59bには、爪部材60の断面積よりもわずかに大きい外形の断面矩形状の案内部59aが設けられている。この案内部59aは、カード処理通路5から退避する爪部材60をカード処理通路5内のカードPAのカード面に直交する方向に移動するように案内するものである。また、両側壁59b,59bには、第2の枢軸66が挿通される第2の挿通孔59c,59cが設けられており、第2の枢軸66を介して回動部材80がホルダー59に枢支される。第2の枢軸66の両端部には、Eリング84が嵌合するリング状の嵌合溝66a,66aが形成されている。
【0025】
次に、主に図14を用いて、本発明の特徴である爪部材60の支持構造について説明する。上記した爪部材60は、図14に示すように細長い扁平な直方体状に形成され、両端に互いに対向するように爪60a,60bが一体に突設されており、これら爪60a,60b間の間隔は、カードPの全長よりもやや長く形成されている。また、この爪部材60の爪60a,60bが設けられた側と反対側の裏面には、一対の支持体60c,60cが一体に突設されており、これら支持体60c,60cには、爪部材60の長手方向に向かって後述する第1の枢軸81が挿通される第1の挿通孔60dが貫通形成されている。
【0026】
上記した回動部材80は全体がプラスチックによって形成されており、一端部に第1の枢軸81が挿通される第1の貫通孔80aが形成され、中央部に後述する第2の枢軸66が挿通される第2の貫通孔80bが形成され、他端部に被係合部80cが形成されている。第1の枢軸81の両端側には、後述する規制部材82の凹部82d,82dが係入するリング状の係入溝81a,81aが円周方向全体にわたって形成されている。係入溝81a,81a間の間隔D1は、回動部材80の全長D2よりもわずかに長く形成されている。
【0027】
82は第1の枢軸81の軸線方向への抜けを規制する金属製の薄板によって形成された規制部材であって、互いに対向する一対の腕部82a,82aと、これら腕部82a,82aの各基端部間を連結する連結部82bとによって、図14において平面視コ字状に形成されている。この規制部材82の各腕部82a,82aの先端部には、第1の枢軸81の係入溝81a,81aに係入される開口82cを有する凹部82dが設けられ、各腕部82a,82aの中央部には、第2の枢軸66が挿通される第3の挿通孔82e,82eが設けられている。規制部材82の腕部82a,82a間の間隔D1は、係入溝81a,81a間の間隔D1と同じ長さに形成されており、したがって回動部材80の全長D2よりもわずかに長く形成されている。
【0028】
次に、このように構成された爪部材60を回動部材80を介してホルダー59に枢支するための組付け方法について説明する。先ず、第1の枢軸81の一端を爪部材60の一方の支持体60cの第1の挿通孔60dに挿通させ、挿通させた第1の枢軸81を回動部材80の第1の貫通孔80aを貫通させ、他方の支持体60cの第1の挿通孔60dに挿通させることにより、第1の枢軸81を介して爪部材60を回動部材80に枢支する。
【0029】
次いで、図16に示すように、規制部材82の両腕部82a,82aの凹部82dを開口82cから第1の枢軸81の係入溝81a,81aに係入させ、第1の枢軸81を回動中心として図中反時計方向へ略180°回動させることにより、図15に示すように規制部材82の連結部82bが回動部材80の係合部80cに係合するとともに、第3の挿通孔82e,82eが第2の貫通孔80bに一致する。
【0030】
この状態で、図14に示すように第2の枢軸66の一端をホルダー59の一方の第2の挿通孔59cに挿通させ、さらに規制部材82の一方の第3の挿通孔82eから回動部材80の第2の貫通孔80bおよび他方の第3の挿通孔82eを挿通させた後、ホルダー59の他方の第2の挿通孔59cを挿通させることにより、図15に示すように回動部材80が規制部材82と一体的に第2の枢軸66を介してホルダー59に枢支される。第2の枢軸66の係入溝66a,66aにEリング84,84を嵌合させることにより、第2の枢軸66のホルダー59の第2の挿通孔59cからの軸線方向への抜けが規制される。
【0031】
このとき、規制部材82の両腕部82a,82aの凹部82dが第1の枢軸81の係入溝81a,81aに係入され、連結部82bが係合部80cに係合しているため、規制部材82は、図15において第2の枢軸66を回動中心とする回動が規制されている。このため、規制部材82の両腕部82a,82aの凹部82d,82dが第1の枢軸81の係入溝81a,81aに係入された状態が保持されるから、規制部材82の両腕部82a,82aが第1の枢軸81に対してEリングとして機能し、第1の枢軸81の回動部材80の第1の貫通孔80aからの軸線方向への抜けが規制される。
【0032】
このように、第1の枢軸81の軸線方向への抜けを規制するのに、規制部材82の両腕部82a,82aの凹部82dを第1の枢軸81の係入溝81a,81aに係入させるだけでよいから、従来のように係入溝81a,81aにEリングを嵌合させる煩雑な作業が不要になり、組付け作業が容易になる。また、金属製の規制部材82が第1および第2の枢軸81,66を介して回動部材80と一体化した構造となっているため、プラスチックによって形成された回動部材80の強度が補強され、回動部材80の耐久性が向上する。また、回動部材80の被係合部80cに回動部材80の連結部80bが係合し、後述するように駆動ブラケット69の係合部69aがこの連結部80bを介して被係合部80cを押圧する構造となっているため、被係合部80cの摩耗を防止することができる。
【0033】
回動部材80と一体化された規制部材82は、図11に示すように、第2の枢軸66に巻回されたねじりコイルばね67のねじりモーメントによって、常時図中反時計方向に付勢されている。したがって、第1の枢軸81を介して回動部材80に枢支された爪部材60は、ねじりコイルばね67のねじりモーメントによって、図11中下方に付勢され、爪60a,60bがカード処理通路5に進出している。すなわち、爪部材60は、回動部材80およびナット部材58のホルダー59を介してガイドバー65に沿って矢印A−B方向に移動自在で、かつ第1の枢軸81を介して回動部材80に回動自在に支持されている。
【0034】
図9において、69はねじ棒57の全長よりもやや短く形成された駆動ブラケットであって、図11に示すように一端部が折曲形成されており、上記した規制部材82の連結部82bを介して回動部材80の被係合部80cに係合する係合部69aが設けられている。また、この駆動ブラケット69は、両端部が互いに対向するように折り曲げられて折曲部70,70が形成されており、これら折曲部70,70の中央部に孔70a,70a(一方の孔70aは図示せず)が設けられ、一端部に矩形状の孔70b,70bが設けられている。この駆動ブラケット69は、孔70a,70aに上記したねじ棒57の両端部が挿通されており、このねじ棒57を回動中心として回動自在に支持されている。
【0035】
図9において、71は細長く形成された駆動板であって、両端部が駆動ブラケット69の孔70b,70bに係入され、一部が突出形成されて突出部71a(図11参照)が設けられている。ソレノイド61のロッド72の中央部には、図11に示すようにスリット状の溝72aが設けられており、この溝72aに駆動板71の突出部71aが挿入され、ピン73によって突出部71aがロッド72に枢着されている。
【0036】
したがって、ソレノイド61が非作動状態でロッド72が進出した図11に示す状態においては、回動部材80がねじりコイルばね67のねじりモーメントによって反時計方向に回動し、この回動部材80を介して爪部材60の爪60a,60bがカード処理通路5内に進出している。この状態で、爪部材60の一部(上部)がホルダー59の案内部59aに嵌入され、爪部材60の爪60a,60bの各下端とカードPAのカード面とが平行な状態に維持される。
【0037】
この状態で、第2のモータ56が正・逆方向に駆動することにより、ねじ棒57が正逆方向に回転するから爪部材60がナット部材58および回動部材80を介して矢印A−B方向に移動し、爪部材60の爪60aが前端に係合し、爪60bが後端に係合するカードPAをカード処理部とカード回収部25との間で搬送する。爪60aの突出長さt1は、図8に示すようにカードPAの厚みよりも僅かに短く形成され、爪60bの突出長さt2は、カードAPの厚みよりも僅かに長く形成されている。
【0038】
一方、ソレノイド61が作動しロッド72が後退すると、図12に示すように、駆動板71を介して駆動ブラケット69がねじ棒57を回動中心として反時計方向に回動するから、連結部82bを介して被係合部80cに係合している係合部69aによって回動部材80はねじりコイルばね67のねじりモーメントに抗して第2の枢軸66を回動中心として時計方向へ回動する。この回動部材80の時計方向への回動に対して爪部材60も随伴して図中上方へ移動する。
【0039】
このとき、爪部材60が第1の枢軸81を介して回動部材80に回動自在に支持されているため、回動部材80が第2の枢軸66を回動中心として回動するにもかかわらず、ホルダー59の案内部59aに案内されて移動する爪部材60は、カード処理通路5内のカードPAのカード面と爪60a,60bの各下端とが平行状態を保ったまま、カードPAのカード面と直交する方向(図中上方)に移動し、爪60a,60bが、図10に示すようにカードPAとの係合が解除されるようにカード処理通路5から退避する。
【0040】
このように、カードPAのカード面と爪60aとが平行状態を保ったまま、爪部材60がカードPAのカード面と直交する方向(図中上方)に移動するため、従来のように爪60a,60bの各下端がカードPAのカード面に対して傾斜することにより,爪60a,60bの一部がカードPAに接触するというようなことがない。このため、第1のカード搬送手段によってカードPAを搬送する際に搬送不良を防止することができる。
【0041】
次に、図3ないし図6を用いて、このような構成のカード処理装置1におけるカードの回収動作を説明する。予め、第2のモータ56を逆方向に駆動し、爪部材60を矢印B方向へ移動させカード処理部23に位置付けておき、ソレノイド61を作動させ爪部材60の爪60a,60bをカード処理通路5から退避させておく。カード処理通路5内においてアンテナ基板23によるカードの処理が終了し、処理したカードPAをカード回収部25に回収する必要が生じた場合には、ソレノイド61の通電を断として非作動状態とすることにより爪部材60の爪60a,60bをカード処理通路5内に進出させ、図3(a)に示すように、爪60bをカードPの後端に係合させる。
【0042】
第2のモータ56を正方向に駆動するとねじ棒57が正回転することにより、ナット部材58は矢印A方向へ移動し、この移動にともなって爪部材60も同方向へ移動する。したがって、爪部材60の爪60aが後端に係合したカードPが、カード処理通路5内を矢印A方向へ搬送されるため、同図(b)に示すように、カードPの前端がカード押圧レバー52の鉛直部52aに係合する。
【0043】
さらに、カードPが矢印A方向へ搬送されると、カード押圧レバー52がねじりコイルばね53によって時計方向に付勢され、かつストッパピン54がガイドケース34の底部36に係止されることにより、カード押圧レバー52の時計方向への回動が規制されているため、カード押圧レバー52もカードPと一体的に矢印A方向へ移動する。したがって、移動子45が引っ張りコイルばね50の引張力に抗して、ガイドケース34内を矢印A方向に移動する。
【0044】
さらに、カードPが矢印A方向へ搬送されると、カード押圧レバー52の傾斜部52bがカード回収部に積載されているカードPの最上位置のカードPBに当接し、これを押し下げるため、図4(a)に示すように、最上位置のカードPBとガイドケース34の底部36との間にカードPAを回収するだけの隙間が形成される。したがって、カードPAの前端部が最上位置のカードPBとガイドケース34の底部36との間に入り込む。
【0045】
一方、カード押圧レバー52と一体的に矢印A方向へ移動子45が移動することにより、同図(b)に示すように、第1の軸46が第1のガイド部42aから第2のガイド部42bに移行し始め、第2の軸47が第2のガイド部42bから第3のガイド部42cに移行し始める。
【0046】
さらに、移動子45がカード押圧レバー52と一体的に矢印A方向へ移動することにより、図5(a)に示すように、第1の軸46が第1のガイド部42aから第2のガイド部42bに移行し、第2の軸47が第2のガイド部42bから第3のガイド部42cに移行する。したがって、移動子45が上方に移動し、カード押圧レバー52と回収するカードPAとの係合が解除される退避位置に位置付けられるため、移動子45は引張りコイルばね50の引張力によって矢印B方向へ移動し、同図(b)に示すように、カード押し下げレバー52が回収するカードPA上に乗り上げる。
【0047】
爪部材60がカード回収部25に位置付けられると、図6(a)に示すように、回収するカードPAが最上位置のカードPBとガイドケース34の底部36との間に回収される。一方、移動子45は引張りコイルばね50の引張力によって矢印B方向へ移動し、初期位置に復帰し、カード押圧レバー52,52は、ガイドケース34の切欠き37と窓38からガイドケース34の下方に突出し、カード回収部25の近接した位置においてカード処理通路5に臨む。
【0048】
次に、カード回収部25からカード処理部23へカードを発行する動作を説明する。図6(a)に示す状態から、第2のモータ56を逆方向に駆動し、ねじ棒57を逆方向へ回転させると、爪部材60が矢印B方向へ移動し、爪部材60の爪60aがカード回収部25内に積載されたカードPのうちの最上位置のカードPAの後端に係合する。この状態から、さらに爪部材60を矢印B方向へ移動させると、最上位置のカードPAも矢印B方向に搬送され、このカードPAの先端がカード押圧レバー52の傾斜部52bに当接する。
【0049】
さらに、爪部材60を矢印B方向へ移動させ、カードPAによってカード押圧レバー52を矢印B方向に押圧すると、傾斜部52bによってカード押圧レバー52を反時計方向に回動させる分力が発生する。したがって、発行されるカードPAによってカード押圧レバー52がねじりコイルばね53のねじりモーメントに抗して同図(b)に二点鎖線で示すように、反時計方向に回動しカード処理通路5から退避するため、カードPAはカード処理通路5のカード処理部23に搬送される。
【符号の説明】
【0050】
1…カード処理装置、5…カード処理通路、23…アンテナ基板(カード処理部)、25…カード回収部、55…第2の搬送手段、56…第2のモータ、57…ねじ棒、58…ナット部材、59…ホルダー(支持部材)、59a…案内部、59c…第2の挿通孔、60…爪部材(第1の枢支部材)、60a,60b…爪、61…ソレノイド、66…第2の枢軸、66a…係入溝、80…回動部材(第2の枢支部材)、80a…第1の貫通孔、80b…第2の貫通孔、80c…被係合部、81…第1の枢軸、81a…係入溝、82…規制部材、82a…腕部、82b…連結部、82c…開口、82d…凹部、82e…第3の挿通孔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、三つの部材のそれぞれの間を二つの軸を介して枢支する枢支構造およびそれを利用したカード処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の枢支構造としては、互いに対向する一対の第1の挿通孔が形成された第1の枢支部材と、一端部に第1の貫通孔が形成され、他端部に第2の貫通孔が形成された第2の枢支部材と、互いに対向する一対の第2の挿通孔が形成された支持部材とを備え、第1の挿通孔および第1の貫通孔に第1の枢軸を挿通することにより第1の枢支部材を第2の枢支部材の一端部に枢支し、第2の挿通孔および第2の貫通孔に第2の枢軸を挿通することにより第2の枢支部材の他端部を支持部材に枢支したものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような従来の枢支構造においては、第1および第2の枢軸の両端部にリング状の係入溝を形成し、これらの各係入溝にEリングを嵌合させることにより、第1および第2の枢軸の軸線方向への抜けを規制している。このように複数の係入溝に煩雑なEリングの嵌合作業を行わなければならないため、組付けの作業が煩雑になるという問題があった。
【0004】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、組付けの作業を容易にするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明は、互いに対向する一対の第1の挿通孔が形成された第1の枢支部材と、一端部に第1の貫通孔が形成され、中央部に第2の貫通孔が形成され、他端部に被係合部が形成された第2の枢支部材と、前記第1の挿通孔および前記第1の貫通孔に挿通されることにより前記第1の枢支部材を前記第2の枢支部材の一端部に枢支する第1の枢軸と、互いに対向する一対の第2の挿通孔が形成された支持部材と、前記第2の挿通孔および前記第2の貫通孔に挿通されることにより前記第2の枢支部材の他端部を前記支持部材に枢支する第2の枢軸とを備えた枢支構造において、前記第1の枢軸の両端部にリング状の係入溝を設け、前記第1の枢軸の軸線方向への抜けを規制する金属製の薄板によって形成された規制部材を備え、前記規制部材は、互いに対向する一対の腕部とこれら腕部の各基端部間を連結する連結部とによってコ字状に形成され、前記各腕部の先端部に前記第1の枢軸の係入溝に係入される開口を有する凹部を設け、前記各腕部の中央部に前記第2の枢軸が挿通される第3の挿通孔を設け、前記第2の貫通孔に貫通される前記第2の枢軸が前記第3の挿通孔に挿通された状態で、前記規制部材の連結部が前記第2の枢支部材の被係合部に係合することにより、前記第2の枢軸を回動中心とした前記規制部材の回動が規制されるものである。
【0006】
本発明は、カード挿入口に連通するカード処理通路と、このカード処理通路に設けられカードを処理するカード処理部と、前記カード処理通路の前記カード挿入口と反対側に設けられカードを回収するカード回収部と、前記カード挿入口と前記カード処理部との間でカードを搬送する第1のカード搬送手段と、前記カード処理部と前記カード回収部との間でカードを搬送する第2のカード搬送手段とを備え、前記第2のカード搬送手段は、モータによって正逆方向に回転し前記カード処理部と前記カード回収部との間に延在するねじ棒と、このねじ棒に螺合するナット部材と、このナット部材に一体に形成され回転が規制された状態で前記ねじ棒の軸線方向に移動自在に支持されたホルダーと、このホルダーに回動自在に支持された回動部材と、この回動部材を介して前記ねじ棒の軸線方向に移動自在で、前記第1のカード搬送手段によってカードを搬送しているときに前記カード処理通路から退避させるように前記カード処理通路に進退自在となるように当該回動部材に回動自在に支持され前記カード処理通路に進出することによりカードの前端と後端とのそれぞれに係合する爪部材と、前記回動部材に係合し前記ねじ棒を回動中心として回動自在に支持された駆動ブラケットと、この駆動ブラケットを回動させることにより、前記回動部材を介して前記爪部材とカードの前端および後端との係合を解除させこれら爪部材を前記カード処理通路から退避させる駆動手段とを備え、前記ホルダーに、前記爪部材の前記カード処理通路からの進退動作を案内する案内部を設け、前記爪部材、回動部材、ホルダーのそれぞれを、請求項1に係る発明における各第1の枢支部材、第2の枢支部材、支持部材としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1の枢軸の係入溝に規制部材の腕部の先端部に設けた凹部を係入し、第2の枢軸を腕部の第3の挿通孔と第2の枢支部材の第2の貫通孔とに挿通することにより、第2の枢軸を回動中心とした規制部材の回動が規制される。したがって、規制部材の凹部が第1の枢軸の係入溝から脱落するようなことがないから、第1の枢軸の軸線方向への抜けが規制部材の一対の腕部によって規制される。このように、第1の枢軸の係入溝にEリングを嵌合するような煩雑な作業が不要となり、規制部材の腕部に形成した開口を有する凹部を第1の枢軸の係入溝に係入させればよいので作業が容易になる。
【0008】
本発明のうちの一つの発明によれば、爪部材が回動部材に回動自在に支持されているため、駆動手段によって回動部材を回動させることにより、回動部材に随伴して移動する爪部材は、カード処理通路に進出した姿勢を維持したままカード処理通路から退避することができる。したがって、爪部材全体をカード処理通路から同じ距離だけ退避させることができるから、退避した爪部材の一部がカード処理通路内のカードに接触するようなことがない。このため、第1のカード搬送手段によってカードを搬送する際に搬送不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置の平断面図である。
【図3】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置において、カードを回収する動作を説明するための図2における III-III線断面図である。
【図4】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置において、カードを回収する動作を説明するための図2における III-III線断面図である。
【図5】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置において、カードを回収する動作を説明するための図2における III-III線断面図である。
【図6】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置において、カードを回収する動作およびカードを発行する動作を説明するための図2における III-III線断面図である。
【図7】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置におけるカード押圧手段の斜視図である。
【図8】図2におけるVIII-VIII 線断面図である。
【図9】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置における第2のカード搬送手段を示し、カード搬送爪がカード処理通路内に進出した状態を上方から視た斜視図である。
【図10】本発明に係る枢支構造を利用したカード処理装置における第2のカード搬送手段を示し、カード搬送爪がカード処理通路から退避した状態を下方から視た斜視図である。
【図11】図2におけるXI矢視図で、爪部材がカード処理通路内に進出した状態を示す。
【図12】図2におけるXI矢視図で、爪部材がカード処理通路から退避した状態を示す。
【図13】本発明に係る枢支構造の平面図である。
【図14】本発明に係る枢支構造の分解斜視図である。
【図15】図13におけるXV-XV 線断面図である。
【図16】本発明に係る枢支構造において、規制部材の組付け方法を説明するために、図15において要部を抜粋した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図16に基づいて説明する。なお、図2において、説明の便宜上、第2のカード搬送手段の一部は図示を省略している。また、明細書中において方向を説明するために使用した「上、下」は、あくまでも図中における方向を説明したものであって、本発明に係るカード処理装置が実際に使用される際の上、下の方向とは必ずしも一致するものではない。
【0011】
図1において、全体を符号1で示すカード処理装置は、4つの側壁によって形成された枠体2を備え、この枠体2の前端には非接触ICカード(以下、単にカードという)Pが挿入されるカード挿入口3を有するカード挿入口部材4が取り付けられている。この枠体2には、図3に示すように、後述するアッパーケース18の底部20とともにカード挿入口3に連通するカード処理通路5を形成する通路壁6が一体に設けられており、この通路壁6に連設され底部7および囲い壁8とによってカード回収用凹部9が設けられている。すなわち、このカード回収用凹部9は、カード処理通路5を挟んでカード挿入口3と反対側に設けられている。このカード回収用凹部9の底部7には複数のばね保持用の凸部10が設けられており、囲い壁8には互いに対向するガイド溝11が上下方向に延在するように設けられている。
【0012】
上記通路壁6の下方には、図示を省略した支持部材によって回転自在に支持された駆動ローラ13が設けられており、この駆動ローラ13は通路壁6に設けた窓14からカード処理通路5内に臨んでいる。この駆動ローラ13は駆動軸15の一端部に軸着され、駆動軸15の他端部にはウォームホイール16が軸着されており、このウォームホイール16には、第1のモータ17の出力軸に軸着されたウォーム(図示せず)が噛合している。したがって、第1のモータ17を正・逆方向に駆動することにより、駆動ローラ13が図3中反時計方向または時計方向に回転する。
【0013】
図3に符号18で示すアッパーケースは、開口した上面がカバー19(図1参照)によって覆われており、底部20が通路壁6とカードPの厚みよりも大きな間隔だけ隔てて対向するように枠体2に取り付けられており、底部20と通路壁6とによってカード処理通路5が形成されている。このアッパーケース18にはピンチローラ21が回転自在に支持されており、このピンチローラ21は底部20の窓22からカード処理通路5内に臨み、上記駆動ローラ13に対接している。これら駆動ローラ13とピンチローラ21とによって、カード挿入口3と後述するカード処理部23との間でカードPを搬送する第1のカード搬送手段を構成している。
【0014】
このような構成において、カード挿入口3からカードPが挿入されると、図示を省略したセンサによってこれが検知され、第1のモータ17が正方向に駆動し、駆動ローラ13が反時計方向に回転する。したがって、カードPの先端が駆動ローラ13とピンチローラ21との対接部まで挿入すると、カードPはこれら両ローラ13,21とによってカード処理通路5内を矢印A方向に搬送され、図3(a)に示すようにカード処理通路5内に取り込まれて停止する。
【0015】
この状態で、カードPとカード処理部としてのアンテナ基板23との間で無線を介してカードPに記録されたデータの処理が行われ、データの処理が終わると、第1のモータ17が逆方向に駆動する。したがって、駆動ローラ13が図中時計方向に回転するため、カードPは駆動ローラ13とピンチローラ21とによってカード処理通路5内を矢印B方向へ搬送されカード挿入口3から返却される。
【0016】
次に、図8を用いてカード回収部25について説明する。カード回収部25は、カード回収用凹部9内において複数枚の発行用のカードPを積載する積載台26が備えられており、この積載台26の下面側には軸27を保持する保持部28が一体に設けられている。この軸27の径はカード回収用凹部9のガイド溝11の幅よりも僅かに大きく形成されており、この軸27の両端部はガイド溝11内に係入されている。したがって、積載台26は、軸27がガイド溝11に案内されることにより、カード回収用凹部9内を図中左右に揺動可能な状態で上下方向へ移動自在に支持されている。
【0017】
積載台26の下面側には、上記したばね保持用凸部10に対向するばね保持用凸部29が一体に設けられており、これら凸部10,29間に第1の付勢手段としての圧縮コイルばね30が弾装されている。したがって、積載台26は圧縮コイルばね30の弾発力によって上方に付勢されており、積載台26上に積載された複数枚のカードPの最上位置のカードPAが、後述するようにガイドケース34の底部36に係止されることにより、このカードPAがカード処理通路5に臨むようにカード処理通路5と同じ高さに位置付けられている。
【0018】
次に、図1、図2、図3および図7を用いて、カード押圧手段33について説明する。図3に示すように、カード押圧手段33は、上記したカード回収部25の上方に位置し上方が開口し断面コ字状に形成されたガイドケース34を備え、このガイドケース34が、図1に示す枠体2の上方の開口を覆うカバー35の下面側に取り付けられている。このガイドケース34の底部36の矢印B方向の端部には、図7に示すように、切欠き37と窓38が設けられており、底部36の中央部には、矢印A−B方向に延在し互いに対向する一対のガイド壁39,39と、これらガイド壁39,39に挟まれこれらガイド壁39に平行な一対のガイドリブ40,40が一体に立設されている。
【0019】
ガイド壁39には、図3に示すように、ガイド用の切欠きが矢印A−B方向に延在するように設けられており、この切欠きの下面とガイドリブ40の上面とが協働してガイド部42を形成している。このガイド部42は、矢印B方向の一端側から矢印A方向に向かって、順次高さが高くなる第1のガイド部42a、第2のガイド部42b、第3のガイド部42cが連設されている。
【0020】
図7において、45は上方が開口し箱状に形成された移動子であって、両側壁に第1の軸46と第2の軸47が横架され、第2の軸47は、図3に示すように第1の軸46よりも高い部位に位置付けられている。これら第1および第2の軸46,47がガイドケース34のガイド部42に係入されることにより、移動子45はガイドケース34に矢印A−B方向に移動自在に支持される。移動子45の矢印B方向の端部には、矢印A−B方向と直交する方向に延在する支持軸49が横架されており、この支持軸49とガイドケース34の底部36との間に懸架された第2の付勢手段としての引張りコイルばね50(図2参照)の引張力によって、移動子45は常時矢印B方向へ付勢されている。
【0021】
支持軸49の両端部には、係合部材としての一対のカード押圧レバー52,52が回動自在に支持されており、これらカード押圧レバー52,52は、支持軸49に巻回され両端部がそれぞれカード押圧レバー52,52に係止されたねじりコイルばね53のねじりモーメントによって図3中時計方向に付勢されている。時計方向に付勢されたカード押圧レバー52,52は、ガイドケース34の切欠き37と窓38からガイドケース34の下方に突出し、カード押圧レバー52に突設したストッパピン54がガイドケース34の底部36に係止されることにより、カード押圧レバー52の時計方向への回動が規制されている。ガイドケース34の切欠き37と窓38からガイドケース34の下方に突出したカード押圧レバー52は、カード回収部25の近接した位置においてカード処理通路5に臨んでおり、このカード押圧レバー52の右端には鉛直方向に延設され鉛直部52aが形成されており、左端には矢印A方向に斜め上方に傾斜し傾斜部52bが形成されている。
【0022】
次に、図9ないし図12および図14を用いてカードをカード処理部とカード回収部との間で搬送する第2の搬送手段について説明する。図9に符号55で示す第2のカード搬送手段は、カードを搬送する駆動源である第2のモータ56と、この第2のモータ56によって正・逆方向に回転するねじ棒57と、このねじ棒57に螺合しねじ棒の回転にしたがって矢印A−B方向へ移動するナット部材58と、このナット部材58に一体に形成された支持部材としてのホルダー59と、このホルダー59に回動可能に支持された第2の枢支部材としての回動部材80と、この回動部材80に回動自在に支持された第1の枢支部材としての爪部材60と、この爪部材60を回動させる駆動手段としてのソレノイド61とによって概ね構成されている。
【0023】
第2のモータ56は正・逆方向に駆動し、カバー19(図1参照)に取り付けられ、出力軸にはギア62が軸着され、このギア62と噛合するギア63およびこのギア63に噛合し、ねじ棒57の一端部に軸着されたギア64を介して、第2のモータ56の駆動がねじ棒57に伝達される。ねじ棒57はカバー35の折曲部間に回転自在に支持されている。65はカバー19の折曲部間に横架され矢印A−B方向に延在するガイドバーであって、ホルダー59はこのガイドバー65に矢印A−B方向に移動自在に支持されている。
【0024】
ホルダー59には、図14に示すように互いに対向する一対の両側壁59b,59bが形成されており、これら両側壁59b,59bには、爪部材60の断面積よりもわずかに大きい外形の断面矩形状の案内部59aが設けられている。この案内部59aは、カード処理通路5から退避する爪部材60をカード処理通路5内のカードPAのカード面に直交する方向に移動するように案内するものである。また、両側壁59b,59bには、第2の枢軸66が挿通される第2の挿通孔59c,59cが設けられており、第2の枢軸66を介して回動部材80がホルダー59に枢支される。第2の枢軸66の両端部には、Eリング84が嵌合するリング状の嵌合溝66a,66aが形成されている。
【0025】
次に、主に図14を用いて、本発明の特徴である爪部材60の支持構造について説明する。上記した爪部材60は、図14に示すように細長い扁平な直方体状に形成され、両端に互いに対向するように爪60a,60bが一体に突設されており、これら爪60a,60b間の間隔は、カードPの全長よりもやや長く形成されている。また、この爪部材60の爪60a,60bが設けられた側と反対側の裏面には、一対の支持体60c,60cが一体に突設されており、これら支持体60c,60cには、爪部材60の長手方向に向かって後述する第1の枢軸81が挿通される第1の挿通孔60dが貫通形成されている。
【0026】
上記した回動部材80は全体がプラスチックによって形成されており、一端部に第1の枢軸81が挿通される第1の貫通孔80aが形成され、中央部に後述する第2の枢軸66が挿通される第2の貫通孔80bが形成され、他端部に被係合部80cが形成されている。第1の枢軸81の両端側には、後述する規制部材82の凹部82d,82dが係入するリング状の係入溝81a,81aが円周方向全体にわたって形成されている。係入溝81a,81a間の間隔D1は、回動部材80の全長D2よりもわずかに長く形成されている。
【0027】
82は第1の枢軸81の軸線方向への抜けを規制する金属製の薄板によって形成された規制部材であって、互いに対向する一対の腕部82a,82aと、これら腕部82a,82aの各基端部間を連結する連結部82bとによって、図14において平面視コ字状に形成されている。この規制部材82の各腕部82a,82aの先端部には、第1の枢軸81の係入溝81a,81aに係入される開口82cを有する凹部82dが設けられ、各腕部82a,82aの中央部には、第2の枢軸66が挿通される第3の挿通孔82e,82eが設けられている。規制部材82の腕部82a,82a間の間隔D1は、係入溝81a,81a間の間隔D1と同じ長さに形成されており、したがって回動部材80の全長D2よりもわずかに長く形成されている。
【0028】
次に、このように構成された爪部材60を回動部材80を介してホルダー59に枢支するための組付け方法について説明する。先ず、第1の枢軸81の一端を爪部材60の一方の支持体60cの第1の挿通孔60dに挿通させ、挿通させた第1の枢軸81を回動部材80の第1の貫通孔80aを貫通させ、他方の支持体60cの第1の挿通孔60dに挿通させることにより、第1の枢軸81を介して爪部材60を回動部材80に枢支する。
【0029】
次いで、図16に示すように、規制部材82の両腕部82a,82aの凹部82dを開口82cから第1の枢軸81の係入溝81a,81aに係入させ、第1の枢軸81を回動中心として図中反時計方向へ略180°回動させることにより、図15に示すように規制部材82の連結部82bが回動部材80の係合部80cに係合するとともに、第3の挿通孔82e,82eが第2の貫通孔80bに一致する。
【0030】
この状態で、図14に示すように第2の枢軸66の一端をホルダー59の一方の第2の挿通孔59cに挿通させ、さらに規制部材82の一方の第3の挿通孔82eから回動部材80の第2の貫通孔80bおよび他方の第3の挿通孔82eを挿通させた後、ホルダー59の他方の第2の挿通孔59cを挿通させることにより、図15に示すように回動部材80が規制部材82と一体的に第2の枢軸66を介してホルダー59に枢支される。第2の枢軸66の係入溝66a,66aにEリング84,84を嵌合させることにより、第2の枢軸66のホルダー59の第2の挿通孔59cからの軸線方向への抜けが規制される。
【0031】
このとき、規制部材82の両腕部82a,82aの凹部82dが第1の枢軸81の係入溝81a,81aに係入され、連結部82bが係合部80cに係合しているため、規制部材82は、図15において第2の枢軸66を回動中心とする回動が規制されている。このため、規制部材82の両腕部82a,82aの凹部82d,82dが第1の枢軸81の係入溝81a,81aに係入された状態が保持されるから、規制部材82の両腕部82a,82aが第1の枢軸81に対してEリングとして機能し、第1の枢軸81の回動部材80の第1の貫通孔80aからの軸線方向への抜けが規制される。
【0032】
このように、第1の枢軸81の軸線方向への抜けを規制するのに、規制部材82の両腕部82a,82aの凹部82dを第1の枢軸81の係入溝81a,81aに係入させるだけでよいから、従来のように係入溝81a,81aにEリングを嵌合させる煩雑な作業が不要になり、組付け作業が容易になる。また、金属製の規制部材82が第1および第2の枢軸81,66を介して回動部材80と一体化した構造となっているため、プラスチックによって形成された回動部材80の強度が補強され、回動部材80の耐久性が向上する。また、回動部材80の被係合部80cに回動部材80の連結部80bが係合し、後述するように駆動ブラケット69の係合部69aがこの連結部80bを介して被係合部80cを押圧する構造となっているため、被係合部80cの摩耗を防止することができる。
【0033】
回動部材80と一体化された規制部材82は、図11に示すように、第2の枢軸66に巻回されたねじりコイルばね67のねじりモーメントによって、常時図中反時計方向に付勢されている。したがって、第1の枢軸81を介して回動部材80に枢支された爪部材60は、ねじりコイルばね67のねじりモーメントによって、図11中下方に付勢され、爪60a,60bがカード処理通路5に進出している。すなわち、爪部材60は、回動部材80およびナット部材58のホルダー59を介してガイドバー65に沿って矢印A−B方向に移動自在で、かつ第1の枢軸81を介して回動部材80に回動自在に支持されている。
【0034】
図9において、69はねじ棒57の全長よりもやや短く形成された駆動ブラケットであって、図11に示すように一端部が折曲形成されており、上記した規制部材82の連結部82bを介して回動部材80の被係合部80cに係合する係合部69aが設けられている。また、この駆動ブラケット69は、両端部が互いに対向するように折り曲げられて折曲部70,70が形成されており、これら折曲部70,70の中央部に孔70a,70a(一方の孔70aは図示せず)が設けられ、一端部に矩形状の孔70b,70bが設けられている。この駆動ブラケット69は、孔70a,70aに上記したねじ棒57の両端部が挿通されており、このねじ棒57を回動中心として回動自在に支持されている。
【0035】
図9において、71は細長く形成された駆動板であって、両端部が駆動ブラケット69の孔70b,70bに係入され、一部が突出形成されて突出部71a(図11参照)が設けられている。ソレノイド61のロッド72の中央部には、図11に示すようにスリット状の溝72aが設けられており、この溝72aに駆動板71の突出部71aが挿入され、ピン73によって突出部71aがロッド72に枢着されている。
【0036】
したがって、ソレノイド61が非作動状態でロッド72が進出した図11に示す状態においては、回動部材80がねじりコイルばね67のねじりモーメントによって反時計方向に回動し、この回動部材80を介して爪部材60の爪60a,60bがカード処理通路5内に進出している。この状態で、爪部材60の一部(上部)がホルダー59の案内部59aに嵌入され、爪部材60の爪60a,60bの各下端とカードPAのカード面とが平行な状態に維持される。
【0037】
この状態で、第2のモータ56が正・逆方向に駆動することにより、ねじ棒57が正逆方向に回転するから爪部材60がナット部材58および回動部材80を介して矢印A−B方向に移動し、爪部材60の爪60aが前端に係合し、爪60bが後端に係合するカードPAをカード処理部とカード回収部25との間で搬送する。爪60aの突出長さt1は、図8に示すようにカードPAの厚みよりも僅かに短く形成され、爪60bの突出長さt2は、カードAPの厚みよりも僅かに長く形成されている。
【0038】
一方、ソレノイド61が作動しロッド72が後退すると、図12に示すように、駆動板71を介して駆動ブラケット69がねじ棒57を回動中心として反時計方向に回動するから、連結部82bを介して被係合部80cに係合している係合部69aによって回動部材80はねじりコイルばね67のねじりモーメントに抗して第2の枢軸66を回動中心として時計方向へ回動する。この回動部材80の時計方向への回動に対して爪部材60も随伴して図中上方へ移動する。
【0039】
このとき、爪部材60が第1の枢軸81を介して回動部材80に回動自在に支持されているため、回動部材80が第2の枢軸66を回動中心として回動するにもかかわらず、ホルダー59の案内部59aに案内されて移動する爪部材60は、カード処理通路5内のカードPAのカード面と爪60a,60bの各下端とが平行状態を保ったまま、カードPAのカード面と直交する方向(図中上方)に移動し、爪60a,60bが、図10に示すようにカードPAとの係合が解除されるようにカード処理通路5から退避する。
【0040】
このように、カードPAのカード面と爪60aとが平行状態を保ったまま、爪部材60がカードPAのカード面と直交する方向(図中上方)に移動するため、従来のように爪60a,60bの各下端がカードPAのカード面に対して傾斜することにより,爪60a,60bの一部がカードPAに接触するというようなことがない。このため、第1のカード搬送手段によってカードPAを搬送する際に搬送不良を防止することができる。
【0041】
次に、図3ないし図6を用いて、このような構成のカード処理装置1におけるカードの回収動作を説明する。予め、第2のモータ56を逆方向に駆動し、爪部材60を矢印B方向へ移動させカード処理部23に位置付けておき、ソレノイド61を作動させ爪部材60の爪60a,60bをカード処理通路5から退避させておく。カード処理通路5内においてアンテナ基板23によるカードの処理が終了し、処理したカードPAをカード回収部25に回収する必要が生じた場合には、ソレノイド61の通電を断として非作動状態とすることにより爪部材60の爪60a,60bをカード処理通路5内に進出させ、図3(a)に示すように、爪60bをカードPの後端に係合させる。
【0042】
第2のモータ56を正方向に駆動するとねじ棒57が正回転することにより、ナット部材58は矢印A方向へ移動し、この移動にともなって爪部材60も同方向へ移動する。したがって、爪部材60の爪60aが後端に係合したカードPが、カード処理通路5内を矢印A方向へ搬送されるため、同図(b)に示すように、カードPの前端がカード押圧レバー52の鉛直部52aに係合する。
【0043】
さらに、カードPが矢印A方向へ搬送されると、カード押圧レバー52がねじりコイルばね53によって時計方向に付勢され、かつストッパピン54がガイドケース34の底部36に係止されることにより、カード押圧レバー52の時計方向への回動が規制されているため、カード押圧レバー52もカードPと一体的に矢印A方向へ移動する。したがって、移動子45が引っ張りコイルばね50の引張力に抗して、ガイドケース34内を矢印A方向に移動する。
【0044】
さらに、カードPが矢印A方向へ搬送されると、カード押圧レバー52の傾斜部52bがカード回収部に積載されているカードPの最上位置のカードPBに当接し、これを押し下げるため、図4(a)に示すように、最上位置のカードPBとガイドケース34の底部36との間にカードPAを回収するだけの隙間が形成される。したがって、カードPAの前端部が最上位置のカードPBとガイドケース34の底部36との間に入り込む。
【0045】
一方、カード押圧レバー52と一体的に矢印A方向へ移動子45が移動することにより、同図(b)に示すように、第1の軸46が第1のガイド部42aから第2のガイド部42bに移行し始め、第2の軸47が第2のガイド部42bから第3のガイド部42cに移行し始める。
【0046】
さらに、移動子45がカード押圧レバー52と一体的に矢印A方向へ移動することにより、図5(a)に示すように、第1の軸46が第1のガイド部42aから第2のガイド部42bに移行し、第2の軸47が第2のガイド部42bから第3のガイド部42cに移行する。したがって、移動子45が上方に移動し、カード押圧レバー52と回収するカードPAとの係合が解除される退避位置に位置付けられるため、移動子45は引張りコイルばね50の引張力によって矢印B方向へ移動し、同図(b)に示すように、カード押し下げレバー52が回収するカードPA上に乗り上げる。
【0047】
爪部材60がカード回収部25に位置付けられると、図6(a)に示すように、回収するカードPAが最上位置のカードPBとガイドケース34の底部36との間に回収される。一方、移動子45は引張りコイルばね50の引張力によって矢印B方向へ移動し、初期位置に復帰し、カード押圧レバー52,52は、ガイドケース34の切欠き37と窓38からガイドケース34の下方に突出し、カード回収部25の近接した位置においてカード処理通路5に臨む。
【0048】
次に、カード回収部25からカード処理部23へカードを発行する動作を説明する。図6(a)に示す状態から、第2のモータ56を逆方向に駆動し、ねじ棒57を逆方向へ回転させると、爪部材60が矢印B方向へ移動し、爪部材60の爪60aがカード回収部25内に積載されたカードPのうちの最上位置のカードPAの後端に係合する。この状態から、さらに爪部材60を矢印B方向へ移動させると、最上位置のカードPAも矢印B方向に搬送され、このカードPAの先端がカード押圧レバー52の傾斜部52bに当接する。
【0049】
さらに、爪部材60を矢印B方向へ移動させ、カードPAによってカード押圧レバー52を矢印B方向に押圧すると、傾斜部52bによってカード押圧レバー52を反時計方向に回動させる分力が発生する。したがって、発行されるカードPAによってカード押圧レバー52がねじりコイルばね53のねじりモーメントに抗して同図(b)に二点鎖線で示すように、反時計方向に回動しカード処理通路5から退避するため、カードPAはカード処理通路5のカード処理部23に搬送される。
【符号の説明】
【0050】
1…カード処理装置、5…カード処理通路、23…アンテナ基板(カード処理部)、25…カード回収部、55…第2の搬送手段、56…第2のモータ、57…ねじ棒、58…ナット部材、59…ホルダー(支持部材)、59a…案内部、59c…第2の挿通孔、60…爪部材(第1の枢支部材)、60a,60b…爪、61…ソレノイド、66…第2の枢軸、66a…係入溝、80…回動部材(第2の枢支部材)、80a…第1の貫通孔、80b…第2の貫通孔、80c…被係合部、81…第1の枢軸、81a…係入溝、82…規制部材、82a…腕部、82b…連結部、82c…開口、82d…凹部、82e…第3の挿通孔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の第1の挿通孔が形成された第1の枢支部材と、
一端部に第1の貫通孔が形成され、中央部に第2の貫通孔が形成され、他端部に被係合部が形成された第2の枢支部材と、
前記第1の挿通孔および前記第1の貫通孔に挿通されることにより前記第1の枢支部材を前記第2の枢支部材の一端部に枢支する第1の枢軸と、
互いに対向する一対の第2の挿通孔が形成された支持部材と、
前記第2の挿通孔および前記第2の貫通孔に挿通されることにより前記第2の枢支部材の他端部を前記支持部材に枢支する第2の枢軸とを備えた枢支構造において、
前記第1の枢軸の両端部にリング状の係入溝を設け、
前記第1の枢軸の軸線方向への抜けを規制する金属製の薄板によって形成された規制部材を備え、
前記規制部材は、互いに対向する一対の腕部とこれら腕部の各基端部間を連結する連結部とによってコ字状に形成され、前記各腕部の先端部に前記第1の枢軸の係入溝に係入される開口を有する凹部を設け、前記各腕部の中央部に前記第2の枢軸が挿通される第3の挿通孔を設け、
前記第2の貫通孔に貫通される前記第2の枢軸が前記第3の挿通孔に挿通された状態で、前記規制部材の連結部が前記第2の枢支部材の被係合部に係合することにより、前記第2の枢軸を回動中心とした前記規制部材の回動が規制されることを特徴とする枢支構造。
【請求項2】
カード挿入口に連通するカード処理通路と、このカード処理通路に設けられカードを処理するカード処理部と、前記カード処理通路の前記カード挿入口と反対側に設けられカードを回収するカード回収部と、前記カード挿入口と前記カード処理部との間でカードを搬送する第1のカード搬送手段と、前記カード処理部と前記カード回収部との間でカードを搬送する第2のカード搬送手段とを備え、
前記第2のカード搬送手段は、
モータによって正逆方向に回転し前記カード処理部と前記カード回収部との間に延在するねじ棒と、
このねじ棒に螺合するナット部材と、
このナット部材に一体に形成され回転が規制された状態で前記ねじ棒の軸線方向に移動自在に支持されたホルダーと、
このホルダーに回動自在に支持された回動部材と、
この回動部材を介して前記ねじ棒の軸線方向に移動自在で、前記第1のカード搬送手段によってカードを搬送しているときに前記カード処理通路から退避させるように前記カード処理通路に進退自在となるように当該回動部材に回動自在に支持され前記カード処理通路に進出することによりカードの前端と後端とのそれぞれに係合する爪部材と、
前記回動部材に係合し前記ねじ棒を回動中心として回動自在に支持された駆動ブラケットと、
この駆動ブラケットを回動させることにより、前記回動部材を介して前記爪部材とカードの前端および後端との係合を解除させこれら爪部材を前記カード処理通路から退避させる駆動手段とを備え、
前記ホルダーに、前記爪部材の前記カード処理通路からの進退動作を案内する案内部を設け、
前記爪部材、回動部材、ホルダーのそれぞれを、請求項1記載の枢支構造における各第1の枢支部材、第2の枢支部材、支持部材としたことを特徴とするカード処理装置。
【請求項1】
互いに対向する一対の第1の挿通孔が形成された第1の枢支部材と、
一端部に第1の貫通孔が形成され、中央部に第2の貫通孔が形成され、他端部に被係合部が形成された第2の枢支部材と、
前記第1の挿通孔および前記第1の貫通孔に挿通されることにより前記第1の枢支部材を前記第2の枢支部材の一端部に枢支する第1の枢軸と、
互いに対向する一対の第2の挿通孔が形成された支持部材と、
前記第2の挿通孔および前記第2の貫通孔に挿通されることにより前記第2の枢支部材の他端部を前記支持部材に枢支する第2の枢軸とを備えた枢支構造において、
前記第1の枢軸の両端部にリング状の係入溝を設け、
前記第1の枢軸の軸線方向への抜けを規制する金属製の薄板によって形成された規制部材を備え、
前記規制部材は、互いに対向する一対の腕部とこれら腕部の各基端部間を連結する連結部とによってコ字状に形成され、前記各腕部の先端部に前記第1の枢軸の係入溝に係入される開口を有する凹部を設け、前記各腕部の中央部に前記第2の枢軸が挿通される第3の挿通孔を設け、
前記第2の貫通孔に貫通される前記第2の枢軸が前記第3の挿通孔に挿通された状態で、前記規制部材の連結部が前記第2の枢支部材の被係合部に係合することにより、前記第2の枢軸を回動中心とした前記規制部材の回動が規制されることを特徴とする枢支構造。
【請求項2】
カード挿入口に連通するカード処理通路と、このカード処理通路に設けられカードを処理するカード処理部と、前記カード処理通路の前記カード挿入口と反対側に設けられカードを回収するカード回収部と、前記カード挿入口と前記カード処理部との間でカードを搬送する第1のカード搬送手段と、前記カード処理部と前記カード回収部との間でカードを搬送する第2のカード搬送手段とを備え、
前記第2のカード搬送手段は、
モータによって正逆方向に回転し前記カード処理部と前記カード回収部との間に延在するねじ棒と、
このねじ棒に螺合するナット部材と、
このナット部材に一体に形成され回転が規制された状態で前記ねじ棒の軸線方向に移動自在に支持されたホルダーと、
このホルダーに回動自在に支持された回動部材と、
この回動部材を介して前記ねじ棒の軸線方向に移動自在で、前記第1のカード搬送手段によってカードを搬送しているときに前記カード処理通路から退避させるように前記カード処理通路に進退自在となるように当該回動部材に回動自在に支持され前記カード処理通路に進出することによりカードの前端と後端とのそれぞれに係合する爪部材と、
前記回動部材に係合し前記ねじ棒を回動中心として回動自在に支持された駆動ブラケットと、
この駆動ブラケットを回動させることにより、前記回動部材を介して前記爪部材とカードの前端および後端との係合を解除させこれら爪部材を前記カード処理通路から退避させる駆動手段とを備え、
前記ホルダーに、前記爪部材の前記カード処理通路からの進退動作を案内する案内部を設け、
前記爪部材、回動部材、ホルダーのそれぞれを、請求項1記載の枢支構造における各第1の枢支部材、第2の枢支部材、支持部材としたことを特徴とするカード処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−134243(P2011−134243A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295245(P2009−295245)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】
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