説明

架橋アミンポリマー

本発明は、イオンバランス障害治療のための方法と製薬組成物を提示する。本発明は特に、架橋アミンポリマーを含むポリマー組成物および製薬組成物を提示する。治療効果や予防効果に関し、このポリマー組成物および製薬組成物の使用方法が、本明細書中に開示されている。これら方法の例には、腎臓病および高リン酸血症の治療が含まれる。また、本発明の一局面は、ポリマーコアとシェルを含むコア−シェル組成物である。いくつかの実施形態において、ポリマーコアは本明細書中に記載されている架橋ポリマーを含む。シェル物質は、化学的にコア物質に固定するか、または物理的にコーティングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
この本願は、米国特許出願第10/806,495号(名称:CROSSLINKED AMINE POLYMERS、2004年3月22日出願)、同第10/965,044号(名称:ANION−BINDING POLYMERS AND USES THEREOF、2004年10月13日出願)、同第10/701,385号(名称:ANION−BINDING POLYMERS AND USES THEREOF、2004年11月3日出願)、の一部継続出願であり、参照文献としてこれら全体が引用されており、35 USCセクション120に基づき、これらに対して優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
正常な腎機能を有する患者の場合は、カルシウムとリンのバランスが、上皮小体ホルモン(PTH)とカルシトリオール(ビタミンDの活性代謝物質)との相互作用により維持されている。PTHは、カルシウムイオン・リン酸イオンの腸内再吸収や腎臓からの排出を制御し、また細胞外体液と骨間でのこれらのイオン交換を制御することにより、細胞外のカルシウム濃度とリン酸塩濃度をコントロールするメカニズムを提供する。
【0003】
しかしながら進行性腎不全では、腎機能の不全によりリンの保持率が増加する。リンのバランスを取り戻すために、PTH濃度が補償的に増加し、これによりカルシウムが腎臓で再吸収される量が増加し、リンの尿細管での再吸収量が減少する。このようにして腎疾患の初期段階では、上皮小体機能が補償的に亢進することによる影響として、血清中リン濃度が正常範囲に保たれる。
【0004】
腎疾患でリン酸塩を濾過し排泄する機能が低下した結果、リンの保持量が増加すると、血清中の遊離カルシウムが減り、これが刺激となってもっとPTHが分泌される。腎機能の低下が進むと、持続する高濃度のPTHのもとで何とか血清リン酸塩濃度を正常に保持する、という新たな安定状態に達する。腎機能の低下に伴い、この繰り返しが起こり、重い上皮小体亢進状態が恒常的になり、ついには、この補償機能では血清中リン濃度の上昇を抑えきれなくなってしまう。腎糸球体濾過率が正常の20%以下になると、明らかな高リン酸血症となる。末期段階の腎疾患(PTHによる補償機能がもはや効かなくなっている)患者では、リン排泄の低下だけでなく恒常的なPTH高濃度により、血漿中リン酸塩濃度が増加し、骨からのカルシウムおよびリン酸塩放出による問題がさらに悪化する。
【0005】
高リン酸血症の臨床的症状はさまざまであり、かなり高い死亡率のリスクを伴う。重症の高リン酸血症は、低カルシウム血症を誘発することがあり、これがPTHの生成増加によってさらにバランスを悪化させることになる。高リン酸血症ではカルシトリオールの腎合成が阻害されるため、低カルシウム血状態が悪化する。高リン酸血症で最も重い症状としては、テタニーや異所性石灰化を伴う重症の低カルシウム血症の発生が挙げられる。石灰化は、関節や軟組織、肺、腎臓、結膜などに発生する。軟組織石灰化は心臓血管のリスクを引き起こし、心臓血管疾患は、全透析患者の死因の45%以上を占めている。末期段階の腎疾患(ESRD)患者には、骨や筋肉に影響が現われる腎性骨形成異常や、ひどいかゆみが生じることがよくある。進行性の重い腎疾患がある状態でPTHレベルが高いと、中枢神経系や末梢神経系、心筋組織に間接的な影響が生じ、高脂血症や筋肉成長遅滞、動脈硬化、骨量喪失、免疫不全などの障害をさらに引き起こす。
【0006】
高リン酸血症の予防・治療は、リン摂取を制限する食事療法や、透析、口内のリン酸イオン結合剤など、さまざまな方法で行われる。ただし透析では、細胞内リンと細胞外リンの間の平衡が遅いため、血清中のリン酸イオンを除去する効率は良くない。そのため、治療法は主に、リンを制限した食事と、リン酸イオン結合剤の食事時投与が中心となる。ただし低リン食は、長期的に選択できる選択肢ではない。患者のコンプライアンスが難しく、血液透析を受けている患者は1.2g/kg/日のタンパク質摂取が推奨されているのに、タンパク質摂取量の制限なしにリン酸摂取量を1000mg/日未満にすることはできないからである。
【0007】
経口のリン酸結合剤には、主に無機金属塩と、ポリマー樹脂(メタルフリー結合剤と呼ばれる)の2種類がある。無機金属塩の結合剤の例としては、例えば炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム(PhosLo)、炭酸ランタン(Fosrenol)などがある。アルミニウム塩とカルシウム塩は治療に長年使用されているが、これらは水溶性の金属イオンを生成し、胃腸内粘膜を通り抜けて血中に入り込み、毒性影響をもたらす。例えば、炭酸アルミニウム塩は脳障害やアルミニウム骨症(骨のアルミニウム吸収による)などに関与していることが示されている。カルシウム結合剤はまた、大量の水溶性カルシウム陽イオンを生成するため、吸収されて高カルシウム血症を起こすことがある。さらに、因果関係はまだ完全には明らかにされていないが、リン酸カルシウム生成物の濃度が高いと、軟組織の石灰化や心臓血管疾患を引き起こす。炭酸ランタンは金属吸収が少ないと見られるが、ランタンは骨に蓄積するため、人間における長期的な影響はまだ不明である。
【0008】
メタルフリー結合剤には、イオン交換樹脂と架橋ポリアリルアミン樹脂がある。イオン交換樹脂には、コレスチラミン、塩酸コレスチポール、Dowexなどがある。これらの樹脂は金属塩に代わるものとして開発されたが、結合力が低く、口内感覚が良くないため、臨床用途で広く普及するには至っていない。塩酸セベラマー(Renagel)などの架橋ポリアリルアミンは、次世代のメタルフリーリン酸結合樹脂として開発されたものである。しかし、健康な志願者を対象に実施したフェーズ1臨床試験によれば、Renagelのin vivo結合容量は、in vitroの研究から予測されていた値よりもはるかに低いものであった。その結果、ESRDの患者は臨床的目標を達成するためには大量のRenagelを服用しなければならず、胃腸の不調などの副作用や患者コンプライアンスの問題を引き起こしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、高リン酸血症の患者のために、副作用の少ない、より良いリン酸イオン結合治療を開発するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の概要)
本発明は、一局面において、架橋アミン部分を有するポリマー組成物に関するものである。第1の実施形態において、本発明は、化学式Iのアミンを含む架橋アミンポリマーである。
【0011】
【化8】

ここで各nはそれぞれ独立に3以上の数であり、mは1以上、各Rは独立にHまたは必要に応じて置換されたアルキル基またはアリール基であるか、あるいは近隣のRに結合して、必要に応じて置換された脂環式基、芳香族基、複素環式基を形成する。アミンは架橋剤によって架橋している。
【0012】
第2の実施形態において、本発明は、化学式IIのアミンを含む架橋アミンポリマーである。
【0013】
【化9】

ここでpは1、2、3、4のいずれかである。各Rは独立にHまたは必要に応じて置換されたアルキル基またはアリール基であるか、あるいは近隣のRに結合して、必要に応じて置換された脂環式基、芳香族基、複素環式基を形成する。RとRはそれぞれ独立にHまたは必要に応じて置換されたアルキル基またはアリール基(ただしp=1のときはRとRの両方がHではなく、p=2、3、4のときはRとRがHかアルキル基か−C(R−R−N(Rで、ここでRは結合またはメチレンである。アミンは架橋剤によって架橋している。
【0014】
第3の実施形態において、本発明は、化学式IIIを含むアミンの架橋アミンポリマーである。
【0015】
【化10】

ここでqは0、1、2のいずれかであり、各Rは独立にHまたは必要に応じて置換されたアルキル基またはアリール基であるか、あるいは近隣のRに結合して、必要に応じて置換された脂環式基、芳香族基、複素環式基を形成する。アミンは架橋剤によって架橋している。
【0016】
第4の実施形態において、本発明は、化学式IVのアミンを含む架橋アミンポリマーである。
【0017】
【化11】

ここで各nはそれぞれ独立に3以上の数であり、各rは独立に0、1、2のいずれかであり、各Rは独立にHまたは必要に応じて置換されたアルキル基またはアリール基であるか、あるいは近隣のRに結合して、必要に応じて置換された脂環式基、芳香族基、複素環式基を形成する。アミンは架橋剤によって架橋している。
【0018】
第5の実施形態において、本発明は、化学式Vのアミンを含む架橋アミンポリマーである。
【0019】
【化12】

ここで各nはそれぞれ独立に3以上の数であり、各rは独立に0、1、2のいずれか、各Rは独立にHまたは必要に応じて置換されたアルキル基またはアリール基であるか、あるいは近隣のRに結合して、必要に応じて置換された脂環式基、芳香族基、複素環式基を形成する。アミンは架橋剤によって架橋している。
【0020】
本発明は、別の一局面において、ヒトを含む動物の治療方法を提示する。この治療方法には、本明細書中に記載されている架橋アミンポリマーの有効量を投与することが含まれる。
【0021】
別の局面として、本発明は、少なくとも1つの受容可能な製薬担体とともに、本発明の1つまたは複数のポリマーを含む製薬組成物を提示する。本明細書中に記載されているポリマーには、いくつかの治療用途がある。例えば、架橋アミンポリマーは消化管内のリン酸イオンを除去するのに役立つ。いくつかの実施形態において、架橋アミンポリマーはリン酸イオンバランス障害および腎臓病の治療に用いられる。
【0022】
さらに別の一局面において、架橋アミンポリマーは、塩素イオン、重炭酸イオン、シュウ酸イオンなどの陰イオン溶質を除去するのに役立つ。シュウ酸イオンを除去するポリマーは、シュウ酸バランス障害の治療に用いられる。塩素イオンを除去するポリマーは、例えばアシドーシスの治療に用いられる。いくつかの実施形態において、架橋アミンポリマーは、胆汁酸、その他関連物質の除去に役立つ。
【0023】
本発明はさらに、上記ポリマーのいずれかを含む組成物を提示する。本明細書中でポリマーは粒子の形状であり、ポリマー粒子は外殻に収められている。
【0024】
本発明は、別の一局面において、製薬組成物を提示する。ある実施形態において、製薬組成物は本発明のポリマーおよび製薬用賦形剤を含む。またいくつかの実施形態において、組成物は液体製剤であり、ポリマーが水および適切な製薬用賦形剤の液体ビヒクル中に分散している。いくつかの実施形態において、本発明は、標的陰イオンを結合する陰イオン結合ポリマーと、1つまたは複数の適切な製薬用賦形剤を含み、その組成物はチュアブル錠剤または口中で崩れる錠剤の形で提供される。いくつかの実施形態において、チュアブル錠剤には、蔗糖、マンニトール、キシリトール、マルトデキストリン、果糖、ソルビトール、またはこれらの組合せからなる群から選択された製薬用賦形剤が含まれ、ポリマーが賦形剤とあらかじめ配合されて固溶体を形成するプロセスによって生成される。いくつかの実施形態において、ポリマーの標的陰イオンはリン酸イオンである。いくつかの実施形態において、陰イオン結合ポリマーは、錠剤重量の約50%以上を占める。いくつかの実施形態において、錠剤は円筒形をしていて、直径は約22mm、高さは約4mmであり、陰イオン結合ポリマーは錠剤の合計重量のうち1.6g以上を占めている。本発明による、いくつかのチュアブル錠剤では、賦形剤は甘味剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤を含む群から選ばれる。必要に応じて、ポリマーは平均で直径約40μm未満の粒子として使用される。いくつかの実施形態において、甘味料は蔗糖、マンニトール、キシリトール、マルトデキストリン、果糖、ソルビトール、またはこれらの組合せからなる群から選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
(架橋アミンポリマー)
本発明は、一局面において、架橋アミン部分を有するポリマーを含む組成物を用いる方法を提供するものである。ポリマー(ホモポリマーおよびコポリマーを含む)には、架橋アミン単位の繰り返しがあり、本明細書中に架橋アミンコポリマーとして言及される。ポリマー中の繰り返しアミン単位は、同じ長さまたは可変長さの繰り返しリンカー(または介在)単位によって分けられる。いくつかの実施形態において、ポリマーはアミンプラス介在リンカー単位の繰り返し単位を含む。他の実施形態においては、複数のアミン単位が、1つまたは複数のリンカー単位によって分けられている。
【0026】
第1の実施形態において、本発明は、有効量の架橋アミンポリマーを投与することによって動物の消化管内からリン酸イオンを除去する方法である。ここでポリマーは、化学式Iのアミンを含む。
【0027】
【化13】

ここで各nはそれぞれ独立に3以上の数であり、mは1以上、各Rは独立にHまたは必要に応じて置換されたアルキル基またはアリール基であるか、あるいは近隣のRに結合して、必要に応じて置換された脂環式基、芳香族基、複素環式基を形成する。アミンは架橋剤によって架橋している。
【0028】
化学式Iの好ましいアミンとしては次のものがある:
【0029】
【化14】

第2の実施形態において、本発明は、有効量の架橋アミンポリマーを投与することによって被験動物の消化管内からリン酸イオンを除去する方法である。ここでポリマーは、化学式IIのアミンを含む。
【0030】
【化15】

ここでpは1、2、3、4のいずれかである。各Rは独立にHまたは必要に応じて置換されたアルキル基またはアリール基であるか、あるいは近隣のRに結合して、必要に応じて置換された脂環式基、芳香族基、複素環式基を形成する。RとRはそれぞれ独立にHまたは必要に応じて置換されたアルキル基またはアリール基(ただしp=1のときはRとRの両方がHではなく、p=2、3、4のときはRとRがHかアルキル基か−C(R−R−N(Rで、ここでRは結合またはメチレンである。アミンは架橋剤によって架橋している。
【0031】
化学式IIの好ましいアミンとしては次のものがある:
【0032】
【化16】

第3の実施形態において、本発明は、有効量の架橋アミンポリマーを投与することによって動物の消化管内からリン酸イオンを除去する方法である。ここでポリマーは、化学式IIIのアミンを含む。
【0033】
【化17】

ここでqは0、1、2のいずれかであり、各Rは独立にHまたは必要に応じて置換されたアルキル基またはアリール基であるか、あるいは近隣のRに結合して、必要に応じて置換された脂環式基、芳香族基、複素環式基を形成する。アミンは架橋剤によって架橋している。
【0034】
化学式IIIの好ましいアミンとしては次のものがある。
【0035】
【化18】

第4の実施形態において、本発明は、有効量の架橋アミンポリマーを投与することによって動物の消化管内からリン酸イオンを除去する方法である。ここでポリマーは、化学式IVのアミンを含む。
【0036】
【化19】

ここで各nはそれぞれ独立に3以上の数であり、各rは独立に0、1、2のいずれか、各Rは独立にHまたは必要に応じて置換されたアルキル基またはアリール基であるか、あるいは近隣のRに結合して、必要に応じて置換された脂環式基、芳香族基、複素環式基を形成する。アミンは架橋剤によって架橋している。
【0037】
化学式IVの好ましいアミンとしては次のものがある:
【0038】
【化20】

第5の実施形態において、本発明は、有効量の架橋アミンポリマーを投与することによって動物の消化管内からリン酸イオンを除去する方法である。ここでポリマーは、化学式Vのアミンを含む。
【0039】
【化21】

ここで各nはそれぞれ独立に3以上の数であり、各rは独立に0、1、2のいずれか、各Rは独立にHまたは必要に応じて置換されたアルキル基またはアリール基であるか、あるいは近隣のRに結合して、必要に応じて置換された脂環式基、芳香族基、複素環式基を形成する。アミンは架橋剤によって架橋している。
【0040】
化学式Vの好ましいアミンとしては次のものがある。
【0041】
【化22】

本発明は、別の一局面において、架橋アミン部分を有するポリマーを含む組成物を提供するものである。このポリマー(ホモポリマーおよびコポリマーを含む)には、架橋アミン単位の繰り返しがある。
【0042】
第1の実施形態において、本発明は、架橋アミンポリマーであり、このポリマーは上記化学式Iのアミンを含む。本発明の第2の実施形態は、アミンの架橋アミンポリマーであり、このポリマーは上記化学式IIのアミンを含む。本発明の第3の実施形態は、アミンの架橋アミンポリマーであり、このポリマーは上記化学式IIIのアミンを含む。本発明の第4の実施形態は、アミンの架橋アミンポリマーであり、このポリマーは上記化学式IVのアミンを含む。本発明の第5の実施形態は、架橋アミンポリマーであり、このポリマーは上記化学式Vのアミンを含む。
【0043】
化学式IIのアミンを含むポリマーは、p=1〜4で上記に記載されている。また、いくつかの実施形態において、化学式IIのアミンにはpが4より大きいアミンが含まれる。さまざまな実施形態において、pは8より大、12より大、16より大、20より大となり得る。他の実施形態において、pは25未満、20未満、15未満、10未満となり得る。
【0044】
化学式I〜VIで示されているアミンは、この分野でよく知られている手法によって合成することができる。この合成方法には、アルコールの触媒転換や、カルボニル化合物の還元的アミノ化、Michael付加、ニトリルの水素化などがある(例えばKarsten Ellerら,Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry 2002 by Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.KGaAを参照)。小さいアミンモノマーやアミン+介在リンカー単位をいくつかつなげたものも、市販されている。
【0045】
ある実施形態において、この発明で有用なアミンの1つであるテトラメチレンテトラミン(下記参照)は、市販されているジアミノマレオニトリル(DAMN)の触媒的水素化により合成される。
【0046】
【化23】

重合は、この分野で知られている手法により、この分野の技能をもつ者が達成することができる。この例は、本明細書中で開示される実施例で詳細に説明されている。例えば架橋反応は、バルクの溶液中(無希釈アミンと無希釈架橋化合物を使用するなど)か、分散媒体の中で行なわれる。バルクプロセスを使用する場合、溶媒は、反応物質が相互溶解し、アミン架橋反応を阻害しないように選択する。適切な溶媒としては、水、低沸点アルコール(メタノール、エタノール、ブタノール)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、およびこれらに類似のものが挙げられる。
【0047】
分散媒体中のプロセスとしては、逆懸濁(inverse suspension)や直接懸濁、エアロゾルなどがある。連続相は、トルエン、ベンゼン、炭化水素、ハロゲン化溶媒、超臨界二酸化炭素などの無極性溶媒の中から選択される。直接懸濁プロセスでは、水も使用できる。塩水も、アミンと架橋剤を液粒の分離相中で「塩析」させるのに有用である(米国特許第5,414,068号参照)。
【0048】
架橋剤対アミンのモル比により、生成されるゲル物質の量と、架橋密度がコントロールされる。比率が低すぎると架橋が不十分になり、可溶性オリゴマーが生じることがある。また高すぎると網状組織が密になりすぎ、結合特性がほとんどなくなることがある。アミン成分は、単独あるいは何種類かのアミンの組合せが使用できる。架橋剤についても同様である。アミンと架橋剤の新しい組合せについては、どちらの官能基もゲル生成量と膨潤性に影響を与えるため、最適化の作業が必要となる。いくつかの実施形態において、架橋剤対アミンのモル比は約0.2〜約10、好ましくは約0.5〜約5、最も好ましくは約0.5〜約2である。
【0049】
架橋反応はバッチとして、または準連続モードで行う。準連続モードの場合、アミンまたは架橋剤のいずれか一方を最初に加え、次に一定時間をおいて一定量ずつ、もう一方の反応物質を加える。ある実施形態において、アミンモノマー全部を加えて溶解性の前駆ポリマーを用意し、次に架橋剤の一部を連続的に加えていき、シロップを形成する。このシロップを、油の連続相中の液粒として乳化し、架橋剤の残りを加えて架橋ビーズを生成させる。架橋剤がアルキルハライド化合物である場合は、反応中に生成される酸を除去するために塩基を使用することができる。無機塩基または有機塩基のいずれでもよい。NaOHが好ましい。架橋剤に対する塩基の比率は、好ましくは約0.5〜約2である。
【0050】
本発明のポリマーは架橋材料であるため、溶媒には溶けず、溶媒中で膨潤するだけである。膨潤率は、緩衝液中の膨潤ゲルと乾燥架橋ポリマーとの重量比で表わされる。生理学的等張性緩衝液中(消化管内などの使用環境を代表)での膨潤率は、通常約1.2〜約100の範囲であり、好ましくは約2〜約20である。
【0051】
本明細書中に記載されているポリマーは、リン酸イオン結合性を有している。リン酸イオン結合容量は、リン酸イオン結合剤が所定の溶液内で結合できるリン酸イオンの量の尺度である。例えば、リン酸イオン結合剤の結合容量は、in vitro(水中や生理食塩水中など)、またはin vivo(リン酸イオンの尿排出からなど)、またはex vivo(実験動物や患者、志願者から採取した糜粥などの吸引物など)において測定することができる。リン酸イオンだけを含む溶液中、または少なくとも他にポリマー樹脂との結合をリン酸イオンと競う溶質が存在しない溶液中で測定することができる。この場合は、非干渉性緩衝液を使用する。また別法として、樹脂との結合をリン酸イオン(標的溶質)と競う他のイオンや代謝産物などの競合溶質が存在する溶液中で測定することができる。
【0052】
ポリマーのリン酸イオン結合容量は、V*(Cstart−Ceq)/Pという式(単位mmol/g)で表わすことができる。ここでVは使用溶液の一定体積(単位L)、Cstartは溶液中の最初のリン酸イオン濃度(単位mM)、Ceqは、ポリマー重量P(単位g)が追加されて平衡に達するのを待った後の、平衡時の溶液中のリン酸イオン濃度(単位mM)である。
【0053】
リン酸イオン結合容量は約0.5〜約10mmol/gの範囲にすることができ、好ましくは約2.5〜約8mmol/g、さらに好ましくは約3〜約6mmol/gの範囲になる。リン酸イオン結合容量を測定する技術は、いくつか知られている。適切な技術の例を、後述の「実施例」の項に記載する。
【0054】
本発明で使用され得るアミンは通常、重合反応のためのモノマーまたはモノマー単位としてはたらく低分子アミンであるが、これに限定されない。本発明のポリマー合成に適したアミンの例(これらに限定されない)を、表1に示す。
【0055】
【表1】

架橋剤は通常、少なくとも2つの官能基を有する化合物で、その官能基は、ハロゲン基、カルボニル基、エポキシ基、エステル基、酸無水物基、酸ハライド基、イソシアネート基、ビニル基、クロロホルメート基の中から選択される。架橋剤は炭素主鎖に結合するか、またはアミンポリマーのペンダント窒素に付く結合する。本発明のポリマー合成に適した架橋剤の例(これらに限定されない)を、表2に示す。
【0056】
【表2−1】

【0057】
【表2−2】

【0058】
【表2−3】

【0059】
【表2−4】

【0060】
【表2−5】

【0061】
【表2−6】

本発明は他の局面において、化学式VI:
【0062】
【化24】

のアミンを含む架橋アミンポリマーおよびその使用方法である。ここで各mは独立に、3以上である。アミンは架橋剤によって架橋している。
【0063】
(コア−シェルの組成物)
本発明の一局面は、ポリマーコアとシェルを含むコア−シェル組成物である。いくつかの実施形態において、ポリマーコアは本明細書中に記載されている架橋ポリマーを含む。シェル物質は、化学的にコア物質に固定するか、または物理的にコーティングする。最初の方法では、例えば次のような化学的方法で、シェルをコア成分上に生成できる:コアポリマーに固定された活性部位からのリビング重合法を使用してコアにシェルポリマーの化学的グラフトを行う方法、界面反応(コア粒子表面での化学反応など)(例えば界面重縮合)方法、コア粒子合成中に懸濁剤としてブロックコポリマーを使用する方法。
【0064】
化学的方法を使用する場合は、界面反応とブロックポリマーの使用が好ましい。界面反応経路においては通常、コア界面で低分子または高分子を反応させることによってコア粒子の表面を化学的に変性させておく。例えば、アミンを含むイオン結合コア粒子は、エポキシやイソシアネート、活性化エステル、ハロゲン基などのアミンと反応性の基を含むポリマーと反応させることにより、コアの周りに架橋したシェルを形成する。
【0065】
他の実施形態においては、シェルを最初に準備する。すなわち界面重縮合や溶媒コアセルベーションを使用して、カプセルを生成する。次にカプセルの内部にコア生成の前駆物質を充填し、シェルカプセル内でコアを構築する。
【0066】
いくつかの実施形態では、ブロックコポリマーアプローチを使用して、両親媒性のブロックコポリマーを懸濁剤として用い、逆懸濁または直接懸濁の粒子形成プロセスでコア粒子を形成する。油中水型の逆懸濁プロセスを使用する場合、ブロックコポリマーが連続的油相に溶ける最初のブロックを含み、別の親水性ブロックにはコアポリマーと反応できる官能基が含まれる。コア形成前駆物質と共に水相に加え、次に油相を加えると、ブロックコポリマーは油中水界面に集まり、懸濁剤として作用する。親水性ブロックはコア物質と反応するか、またはコア形成前駆物質と共反応する。粒子を油相から分離すると、ブロックコポリマーは、共有結合でコア表面に固定された薄いシェルを形成する。ブロックの化学的性質と長さは、目的の溶質に対するシェルの浸透特性を変えるために、変更することができる。
【0067】
シェル物質がコア物質に物理吸着している場合、溶媒コアセルベートや流動床スプレーコーター、マルチエマルジョンプロセスなどのマイクロカプセル化技術という周知の技術を使用することができる。マイクロカプセル化の好ましい方法は、Wurster構成の流動床スプレーコーターである。また別の実施形態において、シェル物質は、口や食道にある間のコア粒子膨潤を遅らせるために一時的に働くものであり、必要に応じて胃や十二指腸で分解する。シェルは、疎水性が高く、水浸透性が非常に低い層を形成することによって、コア粒子に水が浸透するのを妨げるようなものを選ぶ。
【0068】
ある実施形態において、シェル材質は使用環境中で選択的にマイナス電荷を有する。特定の作用機序に限らず、マイナス電荷のシェル材質を陰イオン結合ビーズにコーティングすることにより、低い電荷密度を有する小さい無機イオン(リン酸イオンなど)の結合力が、原子価やサイズが大きい競合イオンよりも強くなるよう強化される。例えば、架橋アミンポリマーのコア粒子をポリ陰イオンシェルでコーティングすると、合成の消化管内環境における測定で、リン酸イオンの結合容量が増大する。とりわけ、クエン酸や胆汁酸、脂肪酸などの競合陰イオンは、この陰イオン結合コアに対する親和性が相対的に低くなる。これはおそらく、シェルの浸透性が限定されたためであると考えられる。
【0069】
好ましいシェル材質とは、小腸内で見出される典型的pH範囲においてマイナス電荷を有するポリマーである。例えば、カルボン酸基やスルホン酸基、ヒドロスルホン酸基、スルファミン酸基、リン酸基、ヒドロリン酸基、ホスホン酸基、ヒドロホスホン酸基、ホスホルアミド基、フェノール基、ボロン酸基、またはこれらの組合せのようなペンダント酸基を有するものがあるが、これらに限定されない。ポリマーはプロトン化あるいは脱プロトン化することができる。脱プロトン化の場合は、酸の陰イオンを、製薬として受容可能な陽イオン(Na、K、Li、Ca、Mg、NHなど)で中和できる。
【0070】
別の実施形態において、最終的にポリ陰イオンとして活性化する前駆物質としてポリ陰イオンを投与することができる:例えば、ポリスルホン酸やポリカルボン酸の、不安定な特定のエステル形態または無水物形態は、胃の酸性環境中で容易に加水分解され、活性陰イオンとなる。
【0071】
シェルポリマーは、直鎖型、分岐型、高分岐型、セグメント型(隣接ブロックが連続した基幹ポリマーで、少なくとも一種のブロックにペンダント型酸基が含まれる)、櫛型、星形、または架橋型で、完全にまたは部分的に相互貫入する網状組織(IPN)である。シェルポリマーの組成はランダムまたはブロック型になっており、共有結合または物理的結合によってコア材質に付着している。このような酸性シェルポリマーの例としては、ポリ(アクリル酸)、ポリ(スチレンスルホン酸)、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カラギーナン、アルギン酸エステル、ポリ(メタクリル酸)エステル、アクリル酸/マレイン酸コポリマー、スチレン/マレイン酸ポリマー、イタコン酸/アクリル酸コポリマー、フマル酸/アクリル酸コポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
いくつかの好ましい実施形態において、シェルポリマーは、製薬として受容可能な次のようなポリマーの中から選択される:Eudragit L100−55およびEudragit L100(メタクリル酸エステル、Degussa/Roehm)、Carbopol 934(ポリアクリル酸、Noveon)、C−A−P NF(酢酸フタル酸セルロース − Eastman)、Eastacryl(メタクリル酸エステル−Eastman)、カラギーナンおよびアルギン酸エステル(FMC Biopolymer)、Anycoat−P(Samsung Fine Chemicals−フタル酸HPMC)、またはAqualon(カルボキシメチルセルロース−Hercules)、メチルビニルエーテル/マレイン酸コポリマー(Gantrez)、スチレン/マレイン酸(SMA)。
【0073】
シェルは、さまざまな方法でコーティングされる。ある実施形態において、シェル材質は製薬段階に活性賦形剤として添加される。例えば、シェル材質には粉末を物理的にリン酸イオン結合ポリマーその他の賦形剤と混合し、必要に応じて顆粒化し、圧縮して錠剤を形成する、というように固体製剤に含めることができる。ゆえに、いくつかの実施形態において、シェル材質は必ずしも、薬物製品のコア材質を覆っている必要はない。例えば、錠剤やカプセル、ゲル、液剤、ウエハー、押し出し成形製剤などの製薬形態に陰イオン結合コアポリマーと共に酸性シェルポリマーを添加するのは利点が大きいことが明らかになっている。製剤製品が口や食道、最終的には消化器官内の作用箇所において平衡に至る際、シェルポリマーは溶解し、コア表面のシェルコーティングとして不均一に分散する。1つの理論に拘束される意図はないが、プラスに荷電した陰イオン結合剤はポリ陰イオンのシェル材質に対し高い親和力を有するため、荷電の中和作用により自発的にコア−シェル構造を形成する傾向がある、と仮説が立てられる。
【0074】
いくつかの実施形態において、シェルはシェルポリマーの薄い層である。この層は、コア粒子表面を覆うポリ陰イオンの分子層とすることができる。コアに対する重量比は約0.0001%〜約30%であり、好ましくは約0.1%〜約5%を占める。
【0075】
好ましくは、シェルポリマーの最低分子量は、コアの細孔体積に容易には浸透せず、またコア表面から容易に溶出しない程度が良い。好ましくは、シェル酸性ポリマーの分子量は約1000g/mol、さらに好ましくは約5000g/mol、もっと好ましくは約20,000g/molである。
【0076】
シェル材質の陰イオン電荷密度(使用環境と同様の状態において)は、通常0.5mEq/g〜22mEq/gであり、好ましくは2mEq/g〜15mEq/gである。投薬形態の製造段階としてポリマー粒子上にシェルを形成するのにコーティングプロセスが用いられる場合は、製薬業界の当業者に公知の手法が適用される。好ましい実施形態において、シェルは流動床コーター(Wursterコ―ター)によって形成される。他の実施形態においては、シェルは制御沈殿手法やコアセルベーションによって形成される。これら手法においては、ポリマー粒子をポリマー溶液中に懸濁させ、溶媒の特性を変えて、ポリマー粒子上に沈殿またはコーティングされるようにする。
【0077】
適切なコーティングプロセスには、製薬業界で通常使用されている手法が含まれる。代表的なものとしては、コーティング手法の選択を、シェル材質の形態(バルク、溶液、乳濁液、懸濁液、融解液)、コア材質の形状や性質(球形ビーズ、不定形など)、沈殿させるシェルの量が挙げられるが、これらに限定されず、いくつかのパラメータから選択する。
【0078】
(リン酸イオンバランスの異常と腎臓病の治療)
本明細書中で使用される場合、「リン酸イオンバランス障害」とは、体内に存在するリン酸イオン濃度が異常な状態を指す。リン酸イオンバランス障害のひとつが、高リン酸血症である。本明細書中で使用される場合、「高リン酸血症」とは、体内に存在するリン元素の濃度が高い状態を指す。通常、例えば血液中のリン酸イオンレベルが約4.5mg/dLを超える場合、あるいは例えば腎糸球体濾過率が約20%よりも大きいレベルに減少している場合、たいていの場合高リン酸血症と診断される。
【0079】
本発明の方法、組成物、キットで治療できる他の疾患としては、低カルシウム血症、甲状腺亢進症、腎臓でのカルシトリオール合成低下、低カルシウム血症によるテタニー、腎不全、軟組織(関節、肺、腎臓、結膜、心筋組織など)の異所性石灰化などが挙げられる。また本発明は、上記疾患の予防的治療を含め、ESRDおよび透析患者の治療に使用することができる。
【0080】
また、本明細書中に記載されているポリマーは、他の治療(例えばリン摂取量の食事制限、無機金属塩の透析、および/または他のポリマー樹脂を用いる治療)の補助としても使用することができる。
【0081】
本発明の組成物は、消化管内から塩素イオン、重炭酸イオン、鉄イオン、シュウ酸イオン、胆汁酸を除去するのにも役立つ。シュウ酸イオンを除去するポリマーは、腎臓結石の生成リスクが高くなるシュウ酸症(高シュウ酸血症)などの、シュウ酸イオンバランス障害の治療に用いられる。塩素イオンを除去するポリマーは、例えばアシドーシス、胸焼け、酸逆流症、胃のむかつきや胃炎などの治療に用いられる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、脂肪酸やビリルビン、その他関連化合物の除去に役立つ。いくつかの実施形態では、タンパク質や核酸、ビタミン、細胞破片などの高分子量分子を結合・除去することができる。
【0082】
本発明は、動物治療のための方法、製薬組成物、キットを提示する。本明細書中で「動物」や「被験体動物」とは、人間以外の哺乳類だけでなく、人間も含む。本発明のひとつの実施形態は、本明細書中に記載されている架橋アミンポリマーの有効量を投与することによって動物の消化管内からリン酸イオンを除去する方法である。
【0083】
本明細書中で使用される「治療」および同等の用語は、治療効果や予防的効果の達成が含まれる。治療効果とは、治療されている対象疾患の根本的治癒、状態改善、予防を意味する。例えば、高リン酸血症の患者における治療効果とは、高リン酸血症の根本的治癒または状態改善が含まれる。また治療効果は、元となっている疾患そのものはまだ残っていても、それに関連する生理学的症状の1つ以上を根本的に治癒、状態改善、または予防し、これにより患者の回復が見られるようにすることである。例えば、本明細書中に記載されている架橋アミンポリマーを腎不全や高リン酸血症の患者に投与すると、患者の血清リン酸イオン濃度が下がるだけでなく、異所性石灰化や腎性骨形成異常など、腎不全および/または高リン酸血症を併発している他の疾患についても改善が見られる。予防的効果では例えば、高リン酸血症の診断がついていなくとも、高リン酸血症を起こす高リスク患者や、高リン酸血症の生理学的症状が1つまたは複数出ている患者に、架橋アミンポリマーを投与することができる。
【0084】
本発明の製薬組成物は、架橋アミンポリマーが効果的な分量、すなわち治療効果や予防効果を達成できる分量で存在する組成物である。個々の用途に効果的な実際量は、患者(年齢や体重)、治療されている病状、投与経路によって異なってくる。有効量の決定は、特に本明細書中に記載される情報を踏まえれば、十分に当業者の技能の範囲内である。
【0085】
人間に対する有効量は、動物モデルから決定することができる。例えば、人間の用量は、動物に効果が見出された循環中濃度や消化管内濃度を達成するように、処方することができる。
【0086】
動物における架橋アミンポリマーの用量は、治療する疾患や投与経路、動物の身体的特徴などによって異なる。いくつかの実施形態において、治療および予防目的の架橋アミンポリマーの投薬レベルは、約1g/日〜約30g/日の範囲となる。ポリマーは、食事と共に投与されるのが好ましい。ポリマーは1日1回、2回、3回のいずれかで投与できる。好ましい用量の範囲は、約2g/日〜約20g/日、より好ましくは約3g/日〜約7g/日である。本明細書中に記載されているポリマーの用量は、約50g/日未満、好ましくは約40g/日未満、もっと好ましくは約g/日未満、より好ましくは約30g/日未満、さらに好ましくは約20g/日未満、最も好ましくは約10g/日未満である。
【0087】
好ましくは、治療や予防目的で使用される架橋アミンポリマーは、単独で、あるいは製薬組成物の形で、投与できる。製薬組成物は、架橋アミンポリマー、1つまたは複数の製薬上受容可能な担体、希釈剤や賦形剤、および必要に応じて追加される他の治療薬を含む。例えば、本発明の架橋アミンポリマーは、治療する症状によって、他の製薬有効成分と共に投与することができる。共に投与できる薬剤の例としては、プロトンポンプ阻害剤、擬カルシウム剤(cinacalcetなど)、ビタミンDおよびその類似体、リン酸イオン結合剤などがあるが、これらに限定されない。適切なリン酸イオン結合剤の例としては、例えば炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム(PhosLo)、炭酸ランタン(Fosrenol)、Renagelなどがあり、これらに限定されない。共投与の際は、2つの薬剤を同じ投与形態で同時に投与することも、別々の投与形態で同時に投与することも、また別々の投与にすることもできる。例えば、高リン酸血症の治療には、高リン酸血症によって生じた低カルシウム血症の治療のために用いられるカルシウム塩を、架橋アミンポリマーと共に投与することができる。カルシウム塩とポリマーは同じ投与形態の中に一緒に製剤することができ、同時に投与することができる。また、カルシウム塩とポリマーは、両方の薬剤を別々の形態にして、同時に投与することができる。また別の方法として、カルシウム塩の投与後にポリマーを投与、またはその逆の順で投与することができる。別の投与プロトコルでは、ポリマーとカルシウム塩の投与は数分間、数時間、数日間の間をおいて投与することができる。
【0088】
ポリマーは注射、局所、経口、経皮、直腸を経由して投与することができる。好ましくは、ポリマー、およびポリマーを含む製薬組成物は経口投与される。ポリマーを投与する経口剤の形態には、粉末、錠剤、カプセル、液剤、乳剤などがある。有効量を1用量で投与することもできれば、適切な時間間隔(例えば数時間)をおいて、用量を何回かに分けて投与することもできる。
【0089】
本発明に従った使用の製薬組成物は、従来的手法により調剤することができる。すなわち、1つまたは複数の、生理学的に受容できる担体(賦形剤と助剤を含む)を使用し、活性物質のプロセスを促進し、製薬分野で使用可能な調剤にする。適切な調剤は、選択する投与経路によって異なる。アミン類の製薬組成物を調製する適切な技法は、当該分野で周知である。
【0090】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーは、チュアブル錠剤の形態における製薬組成物として提示される。有効成分に加え、次のようなタイプの賦形剤が一般的に使用されている:必要な口内感覚を得るための甘味料、および、甘味料が錠剤の硬さのために充分でない場合は結合剤を追加;抜き型の壁の摩擦を抑え、錠剤を外れやすくするための潤滑剤;場合によっては咀嚼を容易にするために少量の崩壊剤。一般に、現在使用されているチュアブル錠剤の賦形剤濃度は、活性成分の3〜5倍であり、甘味料が非活性成分の量のうち大半を占めている。
【0091】
本発明は、本発明のポリマーと、チュアブル錠剤の製剤に適した製薬賦形剤を含む、チュアブル錠剤を提示する。本発明のチュアブル錠剤に使用されているポリマーが、口腔内および食道内を移動する際の膨潤率は、約5未満、好ましくは約4未満、より好ましくは約3未満、さらに好ましくは2.5未満、最も好ましくは約2未満である。いくつかの実施形態において、ポリマーは、リン酸イオンやシュウ酸イオンを結合する陰イオン結合ポリマーであり、好ましい実施形態においては、このポリマーはリン酸イオン結合ポリマーである。このポリマーと適切な賦形剤とを組合せて含む錠剤は、口内触感、味、歯への粘着性などの感覚的特性が許容できる程度であり、同時に、噛んで唾液と接触しても食道を塞ぐ危険性がない。
【0092】
本発明のある面において、賦形剤の一般的なはたらきである機械的・熱的特性はポリマーがすでにもっているため、製剤に必要な賦形剤の量を減らすことができる。いくつかの実施形態において、有効成分(例えばポリマー、好ましくは陰イオン結合ポリマー)は、チュアブル錠剤の重量の約30%以上、好ましくは約40%以上、より好ましくは約50%以上、最も好ましくは約60%以上を占め、残りが適切な賦形剤から成っている。いくつかの実施形態において、ポリマー(例えば陰イオン結合ポリマー)は、約0.6g〜約2.0gの錠剤、好ましくは約0.8g〜約1.6gの錠剤を構成する。いくつかの実施形態において、ポリマー(例えば陰イオン結合ポリマー)は、錠剤の約0.8g以上、好ましくは約1.2g以上、最も好ましくは約1.6g以上を占める。ポリマーは、適切な強度/脆さと粒子サイズを有するよう製造され、適切な硬さ、良好な口内触感、圧縮性など、従来の賦形剤の使用目的と同じ性質を提供する。本発明のチュアブル錠剤に使用されているポリマーの粒子サイズは、平均直径が約80ミクロン未満、70ミクロン未満、60ミクロン未満、50ミクロン未満、40ミクロン未満、30ミクロン未満、20ミクロン未満である。好ましい実施形態において、粒子サイズは約80ミクロン未満、好ましくは約60ミクロン未満、最も好ましくは約40ミクロン未満である。
本発明のチュアブル錠剤に有用な製薬賦形剤としては、結合剤(微結晶性セルロース、コロイド状シリカとその組合せ(Prosolv 90)、カーボポル、プロビドン、キサンタンガムなど)、矯味矯臭剤(蔗糖、マンニトール、キシリトール、マルトデキストリン、果糖、ソルビトールなど)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、植物性脂肪酸など)、および必要に応じて崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム、ゲランガム、セルロースの低置換ヒドロキシプロピルエーテル、スターチグリコレートナトリウムなど)がある。その他の添加剤としては、可塑剤、色素、タルクなどがある。添加剤およびその他の適切な成分については、この分野でよく知られており、例えばGennaro AR(ed),Remington’s Pharmaceutical Sciences,20th Editionを参照されたい。
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書中に記載されているポリマーと適切な賦形剤を含むチュアブル錠剤として製剤する製薬組成物を提示する。いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書中に記載されているポリマーと充填剤、潤滑剤を含むチュアブル錠剤として製剤する製薬組成物を提示する。いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書中に記載されているポリマーと充填剤、潤滑剤を含むチュアブル錠剤として製剤する製薬組成物を提示し、ここで充填剤は蔗糖、マンニトール、キシリトール、マルトデキストリン、果糖、ソルビトールの中から選び、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸マグネシウム塩である。
【0094】
錠剤は噛みやすく口内で分解するものであれば、どんな大きさ・形状でもよいが、好ましくは円柱形で直径約10〜約40mm、高さ約2〜約10mm、最も好ましくは直径約22mm、高さ約6mmである。
【0095】
別の実施形態において、ポリマーは高Tg/高融点の低分子量賦形剤(例えばマンニトール、ソルボース、蔗糖など)とあらかじめ配合しておき、ポリマーと賦形剤が完全に混合した固溶体を生成させる。押出し、スプレー乾燥、冷蔵乾燥、凍結乾燥、湿潤顆粒形成などの混合方法が有用である。混合度の目安は、示差走査熱量測定や、動的機械分析などの公知の物理的測定によって得られる。
【0096】
ポリマーをはじめとする製薬成分が含まれるチュアブル錠剤の製造方法は、当該分野で知られている。例えば、欧州特許出願第No.EP373852A2号および米国特許第6,475,510号や、Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照されたい。これら全体は、参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーは、液体製剤の形態における製薬組成物として提示される。いくつかの実施形態において、製薬組成物は、イオン結合ポリマーが適切な液体賦形剤中に分散した状態で含まれている。適切な液体賦形剤については、この分野でよく知られており、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciencesを参照されたい。
【0098】
この特許明細書中に言及されている公報および特許出願はすべて、個々の公報や特許出願が具体的かつ個別に参照して組込まれると示されているかのように、参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0099】
添付の特許請求の範囲の主旨あるいは範囲から外れることなく、本明細書中に開示されている開示に対し、さまざまな変更ができることは、当業者にとっては明らかである。
【実施例】
【0100】
(実施例1:バルク溶液プロセスで生成された架橋ポリマーのライブラリと、そのリン酸イオン結合容量の測定)
(ポリマーライブラリの作成)
以降の5つの実施例はそれぞれ、最大24の架橋ポリマーを含むライブラリである。ポリマーを4×6のアレー形式に配置されたバッチ反応器で生成した。各反応器は容量が350μLまたは3mLであり、磁石で攪拌し、温度管理が行った。典型的な手順では、アミン、架橋剤、溶媒、さらに必要に応じて塩基を、自動機械を用いて各反応器に分配し、この際に必要に応じて振盪をしながら行った。反応器を密封し、指定の温度で15時間加熱した。反応器アレーを外し、架橋ポリマーの固体をガラス製バイアルに移し、すり潰し、脱イオン水で何回か洗い、凍結乾燥した。下の表3に、対応する生成時反応条件と共に、5つのライブラリを示す。
【0101】
【表3】

(非干渉性緩衝液中のリン酸イオン結合容量の測定)
リン酸イオン結合容量も、ライブラリの各ポリマーについて測定された。重量P(g)の等分した乾燥樹脂を、次記の一定量V(L)のリン酸イオン溶液(濃度Cstart(mM)、pH6.5の緩衝液)に混合し、そっとかき混ぜた。この溶液は、他にポリマーとの結合をリン酸イオンと競う溶質が存在しないため、非干渉性緩衝液と言うことができる。樹脂が平衡に達した後、溶液を遠心分離器にかけて上澄みを別容器に移し、上澄み中の残存リン酸イオン濃度Ceq(mM)をイオンクロマトグラフィーで分析する。結合容量は、V*(Cstart−Ceq)/Pで計算される(単位はmmol/g)。各ポリマーについての表に値が記載されている。
【0102】
(結果)
表4〜8に、5つのライブラリそれぞれのポリマー生成に使用された材料と量、およびその生成ポリマーについて測定された、非干渉性緩衝液中でのリン酸結合容量を示す。数値は、各反応器中で使用された物質の量(mg単位)に対応し、得られたポリマーゲルのリン酸イオン結合容量がそれぞれ記載されている(空白は、その反応で架橋ゲルが生成されなかったことを示す)。
【0103】
【表4】

【0104】
【表5】

【0105】
【表6】

【0106】
【表7】

【0107】
【表8】

(実施例2:懸濁液プロセスによる1,3−ジアミノプロパン/エピクロロヒドリン架橋ビーズの合成)
四面バッフル付きの三口丸底フラスコを備える容量3リットルの反応容器を使用した。反応フラスコにはオイルバス、冷水還流凝縮装置、3インチプロペラつきのメカニカルスターラーを装備した。この反応容器に、1,3−ジアミノプロパン(90.2g、1.21mol)を90.2gの水に溶解した溶液を入れ、界面活性剤(分岐ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩6.4gを100gの水に溶解)と1kgのトルエンを加えた。この最初の溶液を600rpmで2分間攪拌し、300rpmに落としてさらに10分間攪拌してから、エピクロロヒドリンを追加した。以降は、実験中ずっと300rpmの速度を維持した。この溶液を80℃に加熱し、以降は実験中ずっとこの温度を維持した。
【0108】
別の容器に、エピクロロヒドリンが40質量%のトルエン溶液を調製した。最初の混合液反応容器に、シリンジポンプを使って、エピクロロヒドリン1.2当量(134.7g(1.45mol))を3時間かけて加えた。さらに2時間反応させてから、40wt%溶液で0.75当量の水酸化ナトリウム(36.5g(0.91mol))を加えた。水酸化ナトリウム溶液は、シリンジポンプを用い、2.5時間かけて反応溶液に加えた。この反応をさらに8時間、80℃に保った。
【0109】
この後、生成したビーズからトルエンを除去し、1000mLのアセトンで洗い、次にメタノールで洗い、20%NaOH溶液で洗い(界面活性剤を除去するため)、さらに2回、脱イオン水で洗うことによって精製した。ビーズは3日間凍結乾燥して、160g(収率92%)の白い微粉末を得、平均直径は93μmであった。
【0110】
(実施例3:1,3−ジアミノプロパン/1,3−ジクロロプロパン架橋ポリマーの合成)
溶媒として水を使用し、20mLのシンチレーションバイアルに、B−SM−22−DA 1000mgを、X−Cl−3 1524mgおよび水2524mgと混合した。磁石スターラーで混ぜながら一晩80℃に保持し、さらに2時間、90℃に保持して反応させた。反応混合物(1,716mg)の34wt%が精製された。水洗い/遠心分離の手順を3回行い、この実施例のポリマー粉末144.7mgを得た。
【0111】
(実施例4:1,3−ジアミノプロパン/1,3−ジクロロプロパン架橋ポリマーの合成)
溶媒として水を使用し、20mLのシンチレーションバイアルに、B−SM−22−DA 2,000mgを、3048mgのX−Cl−3および5,048mgの水と混合した。磁石スターラーで混ぜながら一晩80℃に保持し、反応させた。
【0112】
3時間反応させた後、この反応中に生成した酸(使用した架橋剤はアルキルハライドであるため)を除去するためにNaOHの30wt%水溶液3597mgを加えた。反応混合物(2,773.5mg)の20.3wt%が精製された。水洗い/遠心分離の手順を3回行い、この実施例のポリマー粉末591.3mgを得た。
【0113】
(実施例5:前駆ポリマーアプローチを用いた、1,3−ジアミノプロパン/1,3−ジクロロプロパンによる架橋ビーズの合成)
(前駆ポリマーの調製)
反応容器に250mLの二口丸底フラスコを用い、冷水還流凝縮装置、磁石スターラーを装備し、アルゴン雰囲気中で実施した。この反応容器に、1,3−ジアミノプロパン(31.15g、0.42mol)を水30.15gに溶かした溶液を入れた。この最初の溶液を300rpmで攪拌した。この溶液を80℃に加熱し、以降は実験中ずっとこの温度を維持した。最初の混合液反応容器に、シリンジポンプを使って、1,3−ジクロロプロパン(Aldrich 99%)1当量(47.47g、40.0mL、0.42mol)を2時間かけて加えた。さらに2時間反応させてから、10mol%(1,3−ジアミノプロパンに対して)の水酸化ナトリウム(1.68g(0.042mol)のNaOHの40wt%水溶液)を加えた。水酸化ナトリウム溶液は、ピペットを用い、2分間かけて反応溶液に加えた。この反応をさらに4時間、80℃に保った。この溶液は80℃で粘性をもち、25℃に冷めると固形になり、これは水に簡単に溶けた。
【0114】
(精製)
この固形物に水を加え、水200mlとMeOH 200mlで洗う。1LのビーカーにMeOH/イソプロピルアルコールの50/50溶液を入れておき、洗った固形物をビーカーに入れた。白いポリマーが沈殿した。この懸濁液を遠心分離にかけ、上澄み液を除去した。イソプロピルアルコールを用いて、このプロセスをあと2回繰り返した。白い沈殿物を室温減圧下で乾燥させ、イソプロピルアルコールを除去した。分離されたポリマーの分子量:Mn(ポリエチレンイミン標準に対するGPC)は約600。
【0115】
(架橋粒子の合成
フラスコに、白色の前駆ポリマー(8.7g)を、分岐ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩1.3g(30wt%水溶液)およびトルエン34.8gと共に入れた。これにより、トルエン中にポリマーが懸濁した20wt%溶液が得られた。ポリマーを、グラインダー機械(ブランド:IKA、モデル:Ultra−Turax T8)でミクロンサイズの粒子にすり潰した。得られた懸濁液2.2gを10mLの反応フラスコに移した。フラスコにはヒーター、メカニカルスターラー、シリンジポンプが装備されている。反応フラスコに、追加のトルエン3779mgを入れた。フラスコを80℃に加熱し、スターラーを使用した(500 RPM)。この温度で3時間攪拌した後、エピクロロヒドリン112.2mg(0.0012mol)を1.5時間かけて加えた。さらに2時間反応させてから、水酸化ナトリウム(40wt%水溶液)224.4mg(0.0056mol)を2時間かけて追加した。これを室温に冷まし、攪拌を止めた。生成したビーズからトルエンを除去し、メタノールで洗い、20%NaOH溶液で洗い(界面活性剤を除去するため)、さらに2回、脱イオン水で洗って精製した。ビーズは3日間冷凍乾燥して、白い微粉末を得た。非干渉性緩衝液中の結合容量は3.85mmol/gであった。
【0116】
(実施例6:逆懸濁液によるN,N’−(テトラ−3−アミノプロピル)−1.4−ジアミノブタン/エピクロロヒドリンからの、ミクロンサイズの架橋ビーズの合成)
【0117】
【化25】

(方法)
次のストック溶液を調製した:2モル当量の濃塩酸を1モル当量のN,N,N’,N’−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミンに2時間かけて加えた。水と界面活性剤(分岐ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩30wt%水溶液)をこの溶液に加えて、溶液全体でN,N,N’,N’−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミンが41.8wt%、HClが9.4wt%、水が41.1wt%、界面活性剤(30wt%水溶液)が7.7wt%となるようにした。
次に、反応の例を挙げる:反応容器には四面バッフル付きの3リットル三口丸底フラスコを使用し、オイルバス、内部反応温度を測定する温度計、冷水還流凝縮装置、1インチプロペラつきのメカニカルスターラーを装備した。この反応容器に、調製ストック溶液362.3gとトルエン1086gを入れた。この最初の溶液を600rpmで2分間攪拌し、240rpmに落としてさらに10分間攪拌してから、エピクロロヒドリンを加えた。実験中ずっとこの速度を維持した。この溶液を80℃に加熱し、以降は実験中ずっとこの温度を維持した。窒素を20分間パージしてから、エピクロロヒドリンを追加し、反応を進めている間も、窒素のブランケットが維持された。
【0118】
別の容器に、エピクロロヒドリンが40wt%のトルエンストック溶液を調製した。シリンジポンプを使用して、ストック溶液のエピクロロヒドリンを2.5mol当量、90分間かけて加えた。エピクロロヒドリンを加えてから6時間後、加熱から下ろして反応を止め、窒素パージ下で冷ました。
生成したビーズからトルエンを除去し、メタノールで洗い、20%NaOH溶液(界面活性剤を除去するため)を加えてpHを11とした。ビーズをメタノールで洗い、液を切った。ビーズを窒素パージ下のSoxhlet装置に入れ、脱イオン水で12時間洗った。ビーズを平たい容器に移し、凍らせて3日間冷凍乾燥し(凍結乾燥機を使用)、白い微粉末を得た。
【0119】
(実施例7:消化モデルにおける結合容量)
この手順は、消化器官内におけるリン酸イオン結合ポリマー使用の条件を模するために設計されたもので、他の代謝産物(競合溶質)が存在する中でリン酸イオン(標的溶質)に対するポリマーの結合特性を測定するものである。流動食を調製し、実施例2、3または4それぞれのポリマーを流動食に加え、ペプシンおよび膵臓ジュースの存在下で人工的に消化した。消化プロセスを空腸レベルまで模するよう、酵素の追加の順序とpH条件を調製した。消化模擬液の一部を遠心分離し、上澄みについてリン酸イオン量を分析した。リン酸イオン結合分析については、液体に消化模擬液を使用する他は、上記の非干渉性緩衝液と同様である。消化模擬液内の結合容量は、上記に従って計算された。その結果を下記の表9に示す。
【0120】
【表9】

(実施例8:水溶性シェルを用いるミクロンサイズのポリアミンビーズのコーティング)
反応は、4mLバイアルと攪拌棒を使用した24ウェルの重合反応器中で行った。Symyx Technologiesソフトウェアで駆動される市販の液体処理ロボットを使用して、試薬をバイアルに測り入れた。典型的な反応手順は次の通りである:4mLバイアルそれぞれに、実施例6のポリアミンビーズ材料0.3gを入れた。このビーズに水を追加した。スターラーを作動させた。ポリアクリル酸20wt%の水溶液を調製した。液体分注ロボットを用いて、所望量のポリアクリル酸を室温にしておいた4mLバイアルに加えた。ポリアミンタイプのビーズが、水に追加ポリアクリル酸を加えた量の12wt%となるように、反応させた。ポリアクリル酸を水とビーズの溶液に加えた後、反応プレートを85℃で12時間加熱した。4mLバイアル中のビーズを8mL試験管に移し、約6mLの脱イオン水で洗って余分のポリアクリル酸を除去した。この水洗いの手順をあと3回繰り返した。ビーズは3日間冷凍乾燥して、白い微粉末を得た。次に、実施例7の説明に従って、合成消化模擬液中におけるこのサンプルの膨潤度、リン酸イオン結合、クエン酸イオン結合の特性を調べた。
【0121】
この結果を表10〜13にまとめる。
【0122】
【表10】

【0123】
【表11】

【0124】
【表12】

【0125】
【表13】

これらの実施例では、ポリ陰イオンポリマーをシェル材料として沈殿させた場合の結合容量が、全体的に、比較標準(すなわち、シェルがないもの)に比べて大幅に増加したことが示されている。
【0126】
(実施例9:体外吸引物における結合容量)
健康な患者に、実施例6の消化模擬液と同じ組成の食事を与え、小腸内に挿管したチューブを使用して、糜粥の一部を採取した。
【0127】
2つの管腔のポリビニル製チューブの端に水銀おもりをつけてチューブを動きやすくし、被験体の小腸内に収まるように挿管した。直接配置の蛍光透視法を用いて、2つの管腔の吸引口のひとつを胃の中に、もうひとつをトライツ靱帯(上部空腸)に置いた。
【0128】
正しく挿管したら、流動化した試験食550mL(マーカーとしてポリエチレングリコール(PEG)2g/550mLを添加)を、胃の挿入管を通して22mL/分の速度で胃に注入した。この流動食が全部胃に達するまでに約25分間をかけた。これは、通常の食事にかかる時間を模している。
【0129】
トライツ靱帯にある挿管から、空腸糜粥を吸引した。この液体は、計2時間半、30分おきに連続的に採取した。これによって得られた5つの検体を混合し、体積を測定し、凍結乾燥した。
【0130】
この体外吸引物について、リン酸イオン結合分析を実施することができる。リン酸イオン結合分析については、液体に体外吸引物(凍結乾燥したサンプルに適切な量の脱イオン水を加えて再生したもの)を使用する他は、上記の非干渉性緩衝液と同様である。体外吸引物のリン酸イオン結合容量は、胃腸内模擬液の実験と同様にして算出された。これは、消化模擬液の実験と同様の結果が報告されると見込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物からリン酸イオンを除去する方法であって、該方法は、有効量の架橋アミンポリマーを投与する工程を包含し、ここで該ポリマーは、化学式V:
【化1】

のアミンを含み、ここで各nはそれぞれ独立に3以上の数であり、各rは独立に0、1、2のいずれかであり、各Rは独立にHまたは必要に応じて置換されたアルキル基またはアリール基であるか、あるいは近隣のRに結合して、必要に応じて置換された脂環式基、芳香族基、複素環式基を形成し、該アミンは架橋剤によって架橋している、方法。
【請求項2】
前記アミンが次のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【化2】

【請求項3】
前記架橋剤が1,3−ジクロロプロパンまたはエピクロロヒドリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記動物が、高リン酸血症、低カルシウム血症、甲状腺亢進症、腎臓でのカルシトリオール合成低下、低カルシウム血症によるテタニー、腎不全、軟組織の異所性石灰化、ESRDのうち少なくとも1つから選択される疾患に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記架橋アミンポリマーのリン酸イオン結合容量が約1〜約6mmol/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記リン酸イオンが消化管内から除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記投与方法が経口投与である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーが、プロトンポンプ阻害剤、擬カルシウム剤、ビタミンDおよびその類似物、リン酸イオン結合剤のうち少なくとも1つと共に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
リン酸イオン結合剤が、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸ランタン、塩酸セベラマーのうち少なくとも1つである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
架橋アミンポリマーを含むポリマー組成物であって、該ポリマーはアミンを含み、該アミンは少なくとも以下:
【化3】

のいずれかであり、そして該ポリマーは架橋剤によって架橋している、ポリマー組成物。
【請求項12】
前記架橋剤が1,3−ジクロロプロパンまたはエピクロロヒドリンである、請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
架橋アミンポリマーと受容可能な製薬担体を含む製薬組成物であって、該ポリマーは化学式V:
【化4】

のアミンを含み、ここで各nはそれぞれ独立に3以上の数であり、各rは独立に0、1、2のいずれかであり、各Rは独立にHまたは必要に応じて置換されたアルキル基またはアリール基であるか、あるいは近隣のRに結合して、必要に応じて置換された脂環式基、芳香族基、複素環式基を形成し、該アミンは架橋剤によって架橋している、製薬組成物。
【請求項14】
前記アミンが以下:
【化5】

いずれかである、請求項13に記載の製薬組成物。
【請求項15】
前記架橋剤が1,3−ジクロロプロパンまたはエピクロロヒドリンである、請求項13に記載の製薬組成物。
【請求項16】
前記組成物が、リン酸イオンを消化管内から除去することができる、請求項13に記載の製薬組成物。
【請求項17】
前記組成物が、リン酸イオンバランス障害に罹患している動物において治療効果および/または予防効果をもたらす、請求項13に記載の製薬組成物。
【請求項18】
コア−シェル粒子を含む組成物であって、該コア−シェル粒子はポリマーのコア成分とポリマーのシェル成分を含み、該ポリマーコア成分は化学式V:
【化6】

のアミンを含み、ここで各nはそれぞれ独立に3以上の数であり、各rは独立に0、1、2のいずれかであり、各Rは独立にHまたは必要に応じて置換されたアルキル基またはアリール基であるか、あるいは近隣のRに結合して、必要に応じて置換された脂環式基、芳香族基、複素環式基を形成し、該アミンは架橋剤によって架橋している、組成物。
【請求項19】
前記アミンが以下:
【化7】

のいずれかであり、前記架橋剤は1,3−ジクロロプロパンまたはエピクロロヒドリンである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記ポリマーシェル成分が酸性シェルポリマーである、請求項18に記載の組成物。

【公表番号】特表2007−530737(P2007−530737A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505079(P2007−505079)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/009394
【国際公開番号】WO2005/092039
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506151486)イリプサ, インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】