説明

架橋ゴム粒子及び架橋ゴム粒子分散体

【課題】アルカリ分散性に優れた架橋ゴム粒子、及びその架橋ゴム粒子を含有する架橋ゴム粒子分散体を提供する。
【解決手段】本発明の架橋ゴム粒子は、共役ジエン単量体(A)、1個の重合性エチレン基と、少なくとも1個のヒドロキシル基とを含有する単量体(B)、1個の重合性エチレン基と、少なくとも1個のカルボキシル基とを含有する単量体(C)及びエチレン性重合性不飽和基を2個以上有する単量体(D)を乳化重合或いは懸濁重合させて得られる架橋ゴム粒子であり、且つ該架橋ゴム粒子を構成する共重合体の全構成単位を100mol%とした場合に、JIS規格K0070の方法により測定した水酸基価及び酸価から算出される上記単量体(B)由来の構成単位と上記単量体(C)由来の構成単位との合計が30〜90mol%であることを特徴とする。また、本発明の架橋微ゴム粒子分散体は、その架橋微粒子と分散媒とを含有すること特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ゴム粒子及び架橋ゴム粒子分散体に関する。更に詳しくは、ヒドロキシル基を有する構成単位とカルボキシル基を有する構成単位とを含有し、分散性に優れた架橋ゴム粒子及びその架橋ゴム粒子を含有する架橋ゴム粒子分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の半導体素子に用いられる層間絶縁膜、表面保護膜等には感光性樹脂組成物が広く利用されている。この感光性樹脂組成物については、熱衝撃性、密着性等の各種特性を改良するために多くの検討が行われている。その感光性樹脂組成物の特性について、熱衝撃性を改良するために架橋ゴム粒子を含有する感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
また、そのような架橋ゴム粒子としては、ゴム組成物に特定の組成を有する架橋ゴム粒子(特許文献2及び特許文献3参照)等が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開2007−056109号公報
【特許文献2】特開2002−012633号公報
【特許文献3】特表2004−522194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、架橋ゴム粒子に求められる性能として、熱衝撃性以外にもアルカリ現像液等に対するアルカリ分散性が必要とされる。アルカリ分散性に優れる架橋ゴム粒子を樹脂組成物に含有させることで、樹脂組成物中の架橋ゴム粒子の含有濃度を高く設定することができる。
架橋ゴム粒子のアルカリ分散性を向上させるためには、ヒドロキシル基を有する構成単位とカルボキシル基を有する構成単位とを両方含有し、その含有割合を多くすればよい。しかし、上述のように架橋ゴム粒子が各種開示されてはいるが、アルカリ分散性を向上させた架橋ゴム粒子はできなかった。
【0005】
本発明の課題は、上記の従来技術に伴う問題について鑑みてなされたものであり、優れたアルカリ分散性を有する架橋ゴム粒子を提供することを目的とする。更に、本発明はこのような架橋ゴム粒子を含有する架橋ゴム粒子分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の通りである。
1.共役ジエン単量体(A)、1個の重合性エチレン基と、少なくとも1個のヒドロキシル基とを含有する単量体(B)、1個の重合性エチレン基と、少なくとも1個のカルボキシル基とを含有する単量体(C)及びエチレン性重合性不飽和基を2個以上有する単量体(D)を乳化重合或いは懸濁重合させて得られる架橋ゴム粒子であり、且つ該架橋ゴム粒子を構成する共重合体の全構成単位を100mol%とした場合に、JIS規格K0070の方法により測定した水酸基価及び酸価から算出される上記単量体(B)由来の構成単位と上記単量体(C)由来の構成単位との合計が30〜90mol%であることを特徴とする架橋ゴム粒子。
2.上記架橋ゴム粒子を構成する共重合体の全構成単位を100mol%とした場合に、上記単量体(B)由来の構成単位が15〜60mol%である上記1.記載の架橋ゴム粒子。
3.上記単量体(B)が下記一般式(1)で表される上記1.又は上記2.に記載の架橋ゴム粒子。
【化1】

〔上記一般式(1)中、nは3〜20の整数である。Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはそれぞれ異なっていても同一であってもよく、Rはそれぞれ独立に水素原子またはヒドロキシル基を示し、Rは水素原子又はヒドロキシル基を示し、R及びRのうち少なくとも一つはヒドロキシル基である。〕
4.更に、芳香族ビニル化合物及び不飽和ニトリル化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構成単位を含有する上記1.乃至3.のいずれかに記載の架橋ゴム粒子。
5.上記架橋ゴム粒子の平均粒子径が20〜200nmである上記1.乃至4.のいずれかに記載の架橋ゴム粒子。
6.上記1.乃至5.のいずれかに記載の架橋ゴム粒子と分散媒とを含有すること特徴とする架橋ゴム粒子分散体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の架橋ゴム粒子は、ヒドロキシル基を含有する単量体(B)由来の構成単位及びカルボキシル基を含有する単量体(C)由来の構成単位の合計含有量が、30〜90mol%であることにより、優れたアルカリ分散性を有する架橋ゴム粒子とすることができる。
また、ヒドロキシル基を含有する単量体(B)由来の構成単位の含有量を15〜60mol%とした場合には、ヒドロキシル基の特性が十分に発現され、より優れたアルカリ分散性を有する架橋ゴム粒子とすることができる。
また、(B)単量体を用いると良好に架橋ゴム粒子を得られるため好ましい。
更に、芳香族ビニル化合物及び不飽和ニトリル化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構成単位を含有する場合には、その架橋ゴム粒子を樹脂組成物に含有させることにより誘電率が低い樹脂組成物を提供することができる。
また、架橋ゴム粒子の平均粒子径が20〜200nmである場合には、アルカリ分散性及び加工性に優れた架橋ゴム粒子とすることができる。
更に、本発明の架橋ゴム粒子分散体は、上記架橋ゴム粒子と分散媒とを含有することから、優れたアルカリ分散性を有する架橋ゴム粒子分散体とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
【0009】
[1]架橋ゴム粒子
本発明の架橋ゴム粒子は、共役ジエン単量体(A)、1個の重合性エチレン基と、少なくとも1個のヒドロキシル基とを含有する単量体(B)、1個の重合性エチレン基と、少なくとも1個のカルボキシル基とを含有する単量体(C)及びエチレン性重合性不飽和基を2個以上有する単量体(D)を乳化重合或いは懸濁重合させて得られる架橋ゴム粒子であり、且つ該架橋ゴム粒子を構成する共重合体の全構成単位を100mol%とした場合に、JIS規格K0070の方法により測定した水酸基価及び酸価から算出される上記単量体(B)由来の構成単位と上記単量体(C)由来の構成単位との合計が30〜90mol%であることを特徴とする。
【0010】
上記共役ジエン単量体(A)としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセン、クロロプレン等のジエン化合物等が挙げられる。これらの単量体の中でも1,3−ブタジエンが好ましい。尚、これらの共役ジエン系単量体は、それぞれ1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0011】
上記1個の重合性エチレン基と、少なくとも1個のヒドロキシル基とを含有する単量体(B)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチルメタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコ−ル等のポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数は、例えば2〜23)のモノ(メタ)アクリレート類;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド及びN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有不飽和アミド類;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、m−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン及びp−ビニルベンジルアルコール等のヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物;(メタ)アリルアルコール等、が挙げられる。これらのうちではヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類及びヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物が好ましい。尚、これらの1個の重合性エチレン基と、少なくとも1個のヒドロキシル基とを有する単量体は各々の種類のうちの1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもでき、異なる種類のものを併用することもできる。
【0012】
更に、上記1個の重合性エチレン基と、少なくとも1個のヒドロキシル基とを含有する単量体(B)としては、下記一般式(1)で示される単量体が好ましい。
【化1】

上記一般式(1)中のnは、3〜20の整数を示し、好ましくは3〜15の整数であり、より好ましくは3〜10の整数である。nが3〜20の整数である場合には、良好に架橋ゴム粒子を得られるため好ましい。
また、上記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはそれぞれ異なっていても同一であってもよく、Rはそれぞれ独立に水素原子またはヒドロキシル基を示し、Rは水素原子又はヒドロキシル基を示し、R及びRのうち少なくとも一つはヒドロキシル基である。
【0013】
また、上記一般式(1)で示される単量体の中でも、より好ましくはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートであり、特に好ましくは2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである。尚、これらの1個の重合性エチレン基と、少なくとも1個のヒドロキシル基とを含有する単量体は、それぞれ1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
上記1個の重合性エチレン基と、少なくとも1個のカルボキシル基とを含有する単量体(C)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、コハク酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、マレイン酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、フタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチルなどの不飽和酸化合物等が挙げられる。これらの単量体の中でも(メタ)アクリル酸が好まく、メタクリル酸がより好ましい。尚、これらの1個の重合性エチレン基と、少なくとも1個のカルボキシル基とを含有する単量体は、それぞれ1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
上記エチレン性重合性不飽和基を2個以上有する単量体(D)としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ハイドロキノン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和基を複数有する化合物を挙げることができる。これらの単量体の中でもジビニルベンゼンが好ましい。尚、これらのエチレン性重合性不飽和基を2個以上有する単量体は、それぞれ1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
上記架橋ゴム粒子は上記単量体(A)〜(D)由来の構成単位を含有し、更に、上記単量体(A)〜(D)以外の単量体(E)から形成される構成単位を含有させることもできる。
上記単量体(E)としては、芳香族ビニル化合物及び不飽和ニトリル化合物等から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0017】
より具体的には、芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、o―ジビニルベンゼン、m―ジビニルベンゼン、p―ジビニルベンゼン、ビニルベンジルジメチルアミン、ビニルベンジルジメチルアミノエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、4−tert−ブトキシスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。
また、不飽和ニトリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、クロトン酸ニトリル、ケイ皮酸ニトリル、イタコン酸ジニトリル、マレイン酸ジニトリル、フマル酸ジニトリル等が挙げられる。
これらの単量体は、それぞれ1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
上記架橋ゴム粒子の水酸基価は、JIS K0070の方法により測定した値で、200〜560が好ましく、より好ましくは200〜400、更に好ましくは200〜300である。水酸基価が、200〜560の範囲である場合、アルカリ現像液に対する分散性を十分に得ることができる。
また、上記架橋ゴム粒子の酸価は、JIS K0070の方法により測定した値で、20〜120が好ましく、より好ましくは20〜100、更に好ましくは20〜80である。酸価が、20〜120の範囲である場合、アルカリ現像液に対する分散性を十分に得ることができる。
更に、上記架橋ゴム粒子のヨウ素価は、JIS K0070の方法により測定した値で、10〜200が好ましく、より好ましくは40〜200、更に好ましくは90〜200である。ヨウ素価が、10〜200の範囲である場合、柔軟性が向上する。
【0019】
上記架橋ゴム粒子における上記単量体(B)由来の構成単位と上記単量体(C)由来の構成単位との合計の含有割合は、上記架橋ゴム粒子を構成する共重合体の全構成単位を100mol%とした場合に、JIS K0070の方法により測定した水酸基価及び酸価より算出した値で、上記単量体(B)由来の構成単位と上記単量体(C)由来の構成単位との合計は、30〜90mol%であり、好ましくは30〜60mol%であり、より好ましくは30〜45mol%である。上記単量体(B)由来の構成単位と上記単量体(C)由来の構成単位との合計の含有割合が30〜90mol%の範囲である場合、架橋ゴム粒子はアルカリ現像液に対する分散性を十分に得ることができる。
【0020】
また、上記架橋ゴム粒子における上記単量体(A)由来の構成単位の含有割合は、上記架橋ゴム粒子を構成する共重合体の全構成単位を100mol%とした場合に、JIS K0070の方法により測定したヨウ素価より算出した値で、上記単量体(A)由来の構成単位は、5〜65mol%が好ましく、より好ましくは20〜65mol%であり、更に好ましくは40〜65mol%である。上記単量体(A)由来の構成単位の含有割合が5〜65mol%の範囲である場合、架橋ゴム粒子の柔軟性が向上する。
【0021】
また、上記架橋ゴム粒子における上記単量体(B)由来の構成単位の含有割合は、上記架橋ゴム粒子を構成する共重合体の全構成単位を100mol%とした場合に、JIS K0070の方法により測定した酸価及び水酸基価より算出した値で、上記単量体(B)由来の構成単位は、5〜85mol%が好ましく、より好ましくは15〜60mol%であり、更に好ましくは25〜40mol%である。上記単量体(B)由来の構成単位の含有割合が5〜85mol%の範囲である場合、架橋ゴム粒子はアルカリ現像液に対する分散性を十分に得ることができる。
【0022】
また、上記架橋ゴム粒子における上記単量体(C)由来の構成単位の含有割合は、上記架橋ゴム粒子を構成する共重合体の全構成単位を100mol%とした場合に、JIS K0070の方法により測定した酸価より算出した値で、上記単量体(C)由来の構成単位は、5〜85mol%が好ましく、より好ましくは5〜60mol%であり、更に好ましくは5〜30mol%である。上記単量体(C)由来の構成単位の含有割合が5〜85mol%の範囲である場合、架橋ゴム粒子はアルカリ現像液に対する分散性を十分に得ることができる。
【0023】
上記架橋ゴム粒子は乳化重合或いは懸濁重合により得られる。また、乳化重合或いは懸濁重合においては、ラジカル重合開始剤を用いるのが好ましい。更に、上記架橋ゴム粒子は、粒子の大きさ、粒子径の均一性の観点から乳化重合により製造することが好ましい。
【0024】
ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、パラメンタンヒドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド及びジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物を使用することができる。また、アゾビスイソブチロニトリルにより代表されるアゾ化合物、過硫酸カリウムにより代表される無機過酸化物、及びこれら過酸化物と硫酸第一鉄との組み合せにより代表されるレドックス系触媒等を用いることもできる。これらのラジカル重合開始剤は各々の種類のうちの1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもでき、異なる種類のものを組み合わせることもできる。
また、tert−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四塩化炭素、チオグリコール類、ジテルペン、タ−ピノーレン及びγ−テルピネン類等の連鎖移動剤を併用することもできる。
【0025】
乳化重合において用いられる乳化剤としては、架橋ゴム粒子を乳化重合で製造することができるものであれば特に限定されないが、例えば、ルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等のノニオン系界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;両性界面活性剤等が挙げられる。また、ふっ素系の界面活性剤を使用することもできる。これらの乳化剤は各々の種類のうちの1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもでき、異なる種類のものを組み合わせることもできる。
【0026】
尚、懸濁重合において用いられる懸濁安定剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム及びヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらの懸濁安定剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0027】
また、乳化重合又は懸濁重合において、各々の単量体及びラジカル重合開始剤等は、反応容器に全量を投入してから重合を開始してもよいし、反応継続時に連続的或いは間欠的に添加してもよい。重合は酸素を除去した反応器を用いて0〜80℃で行うことができ、反応途中で温度或いは攪拌等の操作条件などを適宜に変更することもできる。重合方式は連続式でもよいし、回分式であってもよい。
【0028】
尚、乳化重合では、界面活性剤を用いて水中に架橋性モノマーを含むモノマー類を乳化し、重合開始剤としてラジカル重合開始剤を添加し、必要に応じて、メルカプタン系化合物、ハロゲン化炭化水素等の分子量調節剤を添加する。次いで、0〜80℃で重合を行い、所定の重合転化率に達した後、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン等の反応停止剤を添加して重合反応を停止させる。その後、重合系の未反応モノマーを水蒸気蒸留等で除去することによって架橋ゴム粒子を合成することができる。
【0029】
更に、上記乳化重合で得られた架橋ゴム粒子を含むラテックスを、塩析等の方法により凝固させ、水洗、乾燥することにより固体の架橋ゴム粒子を得ることもできる。架橋ゴム粒子は、塩析により凝固させる以外に、界面活性剤としてノニオン系界面活性剤を用いた場合には、ラテックスをノニオン系界面活性剤の曇点以上に加熱して凝固することもできる。ノニオン系界面活性剤以外の界面活性剤を用いて重合した場合においても、重合後にノニオン系界面活性剤を添加し、ラテックスを曇点以上に加熱することにより、架橋ゴム粒子を凝固することもできる。
【0030】
また、本発明における架橋ゴム粒子は粒子状の共重合体であり、この架橋ゴム粒子の平均粒径は、20〜200nmであることが好ましく、より好ましくは25〜150nm、更に好ましくは30〜120nmである。
この架橋ゴム粒子の粒径のコントロール方法は特に限定されないが、例えば、乳化重合により架橋ゴム粒子を合成する場合、使用する乳化剤の量により乳化重合中のミセルの数を制御し、粒径をコントロールすることができる。
尚、本発明における架橋ゴム粒子の平均粒径とは、大塚電子製の光散乱流動分布測定装置「LPA−3000」を用い、架橋ゴム粒子の分散液を希釈して測定した値である。
【0031】
[2]架橋ゴム粒子分散体
本発明の架橋ゴム粒子分散体は、上述の架橋ゴム粒子と分散媒とを含有すること特徴とする。上記架橋粒子は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、上記分散媒は特に制限されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、ブチルカルビトール等のカルビトール類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル等の乳酸エステル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクン等のラクトン類を挙げることができる。これらの分散媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
また、本発明の架橋ゴム粒子分散体には、必要に応じて他の添加剤を本発明の特性を損なわない程度に含有させることができる。このような他の添加剤としては、熱感応性酸発生剤、増感剤、レベリング剤等が挙げられる。
上記熱感応性酸発生剤としては、加熱処理により酸を発生する化合物であれば特に限定されない。この熱感応性酸発生剤として、例えば、オニウム塩化合物等を挙げることができる。
【0033】
架橋ゴム粒子分散体における上記架橋ゴム粒子の配合量は、架橋ゴム粒子分散体の全体を100質量%とした場合に、1〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%であり、更に好ましくは1〜10質量%である。この架橋ゴム粒子の配合量が1〜40質量%である場合には、他の成分との相溶性及び分散性に優れる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、この実施例に何ら限定されるものではない。尚、実施例の記載における「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。
【0035】
〔1〕架橋ゴム粒子の調整
(1)実施例[架橋ゴム粒子(1)]
水200部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5部を溶解した水溶液、原料単量体として1,3−ブタジエン40部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート48部、メタクリル酸10部、ジビニルベンゼン2部(商品名;DVB−570,純度57%,エチルスチレン39%含有品,新日鐵化学製)、及びレドックス触媒をオートクレーブに仕込み、10℃に温度調整した後、重合開始剤としてパラメンタンハイドロオキサイド0.01部を加え、重合転化率90%以上まで乳化重合を実施した。次いで、反応停止剤N,N−ジエチルヒドロキシルアミンを添加し、共重合エマルジョンを合成した。その後、このエマルジョン中に水蒸気を吹き込み未反応の原料単量体を除去した後、この溶液を5%塩化カルシウム水溶液中に添加し、析出した共重合体を蒸留水で水洗し、80℃に設定した送風乾燥機で乾燥することによって、架橋ゴム粒子(1)を得た。尚、架橋ゴム粒子(1)の組成を表1に示す。
【0036】
(2)比較例[架橋ゴム粒子(2)及び(3)]
下記表1に示した組成に従い、原料単量体成分の種類および量を変更したこと以外は、実施例(1)の架橋ゴム粒子の合成と同様にして、架橋ゴム粒子(2)及び(3)を得た。
【0037】
【表1】

【0038】
ここで、表1における単量体成分の詳細を説明する。
(A):1,3−ブタジエン
(B):2−ヒドロキシブチルメタクリレート
(C):メタクリル酸
(D):ジビニルベンゼン
(E−1):スチレン
(E−2):アクリロニトリル
【0039】
〔2〕架橋ゴム粒子の評価
(1)合成評価
上記架橋ゴム粒子(1)、(2)及び(3)における合成評価は、リアクター内面の汚れを目視により観察して評価した。評価結果を表2に示す。
重合が進んだかどうかについて、重合後、流水洗浄したリアクター内面の汚れを目視により観察し、リアクター内面に重合凝集物の付着がない場合を「○」と評価し、重合凝集物の付着がある場合を「×」と評価した。
【0040】
(2)物性評価
上記架橋ゴム粒子(1)、(2)及び(3)における物性評価は、下記の要領で行った。評価結果を表2に併記する。
[1]ヨウ素価、水酸基価、酸価、屈折率、及び微量全窒素分析測定
上記架橋ゴム粒子のヨウ素価、水酸基価、及び酸価を「JIS K0070」により測定した。また、屈折率はアタゴ株式会社製のアッペ屈折計「NAR−1T」を用い、架橋ゴム粒子をシート化したものを測定した。微量全窒素分析は株式会社住友分析センター製の元素分析計「SUMIGRAPH NCH−22F」を用い架橋ゴム粒子を測定した。 上記架橋ゴム粒子における単量体(A)由来の構成単位(a)、単量体(B)由来の構成単位(b)、単量体(C)由来の構成単位(c)、及び単量体(E)由来の構成単位(e)の含有量について、ヨウ素価、水酸基価、酸価、屈折率、及び微量全窒素分析で測定した分析値により、各構成単位(a)、(b)、(c)及び(e)の物質量を算出し、全構成単位を100mol%として、各構成単位の含有量を算出した。その結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
(3)アルカリ分散性評価
水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)2.38%水溶液(23℃)40mlに上記架橋ゴム粒子5gを投入及び攪拌し、その水溶液の濁りについて目視により評価した。
そして、水溶液が濁った場合をアルカリ分散性が優れるとして「○」、水溶液が透明の場合をアルカリ分散性が劣るとして「×」と評価した。評価結果を表3に示す。
【0043】
(4)平均粒径測定
上記架橋ゴム粒子の平均粒径を下記の要領で測定した。
大塚電子製の光散乱流動分布測定装置「LPA−3000」を用い、架橋ゴム粒子の分散液を希釈して測定した。測定方法は以下の要領で行った。測定結果を表3に併記する。
測定方法;架橋ゴム粒子の0.5%乳酸エチル分散溶液、約1.5mLを装置にセットし分析する。
【0044】
【表3】

【0045】
表2及び表3によれば、ヒドロキシル基を有する単量体(B)由来の構成単位(b)を26mol%及びカルボキシル基を有する単量体(C)由来の構成単位(c)を11mol%含有する実施例(1)の架橋ゴム粒子は、アルカリ分散性に優れることが分かる。一方、構成単位(b)及び構成単位(c)の含有量が少ない比較例(2)及び(3)は、アルカリ分散性に劣っていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン単量体(A)、
1個の重合性エチレン基と、少なくとも1個のヒドロキシル基とを含有する単量体(B)、
1個の重合性エチレン基と、少なくとも1個のカルボキシル基とを含有する単量体(C)及び
エチレン性重合性不飽和基を2個以上有する単量体(D)を乳化重合或いは懸濁重合させて得られる架橋ゴム粒子であり、且つ該架橋ゴム粒子を構成する共重合体の全構成単位を100mol%とした場合に、JIS規格K0070の方法により測定した水酸基価及び酸価から算出される上記単量体(B)由来の構成単位と上記単量体(C)由来の構成単位との合計が30〜90mol%であることを特徴とする架橋ゴム粒子。
【請求項2】
上記架橋ゴム粒子を構成する共重合体の全構成単位を100mol%とした場合に、上記単量体(B)由来の構成単位が15〜60mol%である請求項1記載の架橋ゴム粒子。
【請求項3】
上記単量体(B)が下記一般式(1)で表される請求項1又は2に記載の架橋ゴム粒子。
【化1】

〔上記一般式(1)中、nは3〜20の整数である。Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはそれぞれ異なっていても同一であってもよく、Rはそれぞれ独立に水素原子またはヒドロキシル基を示し、Rは水素原子又はヒドロキシル基を示し、R及びRのうち少なくとも一つはヒドロキシル基である。〕
【請求項4】
更に、芳香族ビニル化合物及び不飽和ニトリル化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構成単位を含有する請求項1乃至3のいずれかに記載の架橋ゴム粒子。
【請求項5】
上記架橋ゴム粒子の平均粒子径が20〜200nmである請求項1乃至4のいずれかに記載の架橋ゴム粒子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の架橋ゴム粒子と分散媒とを含有すること特徴とする架橋ゴム粒子分散体。

【公開番号】特開2009−203380(P2009−203380A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48685(P2008−48685)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】