説明

架橋ポリロタキサンを有する材料、及びその製造方法

【課題】架橋ポリロタキサンを有する材料であって「へたり」を改善した材料の提供。
【解決手段】 第1のポリロタキサン及び第2のポリロタキサンを有する材料であって、該第1及び第2のポリロタキサンは第1及び第2の環状分子を介して架橋してなり、該材料が溶媒フリーであり、該材料は、X)圧縮永久歪が10%以下;Y)引張応力緩和が15%以下;及びZ)ヒステリシスロスが25%以下;からなる群から選ばれる少なくとも1種の特性を有する材料により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ポリロタキサンを有する材料であって、該材料が低減された圧縮永久歪、耐応力緩和特性、及び低ヒステリシスロスのうちの少なくとも1つの特性を有し、且つ溶媒フリーである材料に関する。また、本発明は、該材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムは、代表的な粘弾性材料であるが、長期間の荷重や変形下などでは、塑性流動が起こることが知られている。これは「へたり」と呼ばれる現象で、圧縮永久歪、応力緩和、及び/又はヒステリシスロスなどの特性として観察することができる。
ゴム製品は、その特徴により圧縮されて使用されることが多いため、これらの特性が製品の性能と密接な関係となる。例えばOリングに代表されるシール材や複写機などに用いられている紙送りのための給紙ロールなど、低い圧縮永久歪を要求される分野においては、該特性を達成するために様々な提案がなされており、数%程度の低い値が達成されている(特許文献1〜4を参照のこと)。
【0003】
また、誘電型アクチュエータなどのエラストマー材料を用いるソフトアクチュエータでは、繰り返し使用における耐久性向上のため、エラストマーとして応力緩和性やヒステリシスロスがほとんど無い材料が求められており、様々なエラストマー素材を用いた研究がなされている(非特許文献1を参照のこと)。
【0004】
さらに、「へたり」が少ない材料(圧縮永久歪、応力緩和及び/又はヒステリシスロスが低い材料)を達成するためには、より理想的な弾性体へ近づける必要がある。しかしながら、ゴムやエラストマーのような材料では、架橋点が固定されているために、架橋点間距離に不均一性が発生し、理想的な弾性体に近づけるには限界がある。そのため、塑性流動から起こる「へたり」を完全になくすことは難しい。
【0005】
一方、環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるポリロタキサンは、環状分子が相対的に直鎖状分子上を移動することに由来する特性から、種々の応用が期待されている(特許文献5を参照のこと)。
【0006】
架橋ポリロタキサンは、直鎖状分子上にある複数の環状分子が架橋することによって架橋点が形成されている。該架橋点は、直鎖状分子に沿って移動可能であるため、応力を均一に分散することができる。この架橋点の移動が十分に早い場合では、外力がかかっても高分子の形態は常に等方的になってしまうため、高分子の形態変化に基づくエントロピー弾性(ゴム弾性)が発生しないことになる。しかしながら、架橋点に関与していない直鎖状分子上にある自由な環状分子は、架橋点を通り抜けることができないため、自由な環状分子の分布が不均一になって新たなエントロピー弾性が発生する(非特許文献2)。これらの可動な架橋点と特有のエントロピー弾性から、ポリロタキサン架橋体は、理想的な弾性体として作用する可能性を秘めているが、該架橋ポリロタキサンは、「へたり」に関して、未だ研究がなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−85636。
【特許文献2】特開2005−70574。
【特許文献3】特開2005−154545。
【特許文献4】特開2006−274146。
【特許文献5】特許第3475252号公報。
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】"Performance of dielectic elastomer actuators and materials", Smart Structures and Materials, Electroactive Polymer Actuators and Devices, Proc. SPIE Vol. 4695, pp. 158-166, 2002。
【非特許文献2】2011年3月10日 第11回リングチューブ超分子研究会シンポジウム「環動高分子のスライディングモード」 予稿 pp. 19-22。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、塑性流動から起こる「へたり」を改善した材料、特に架橋ポリロタキサンを有する材料であって「へたり」を改善した材料を提供することにある。
具体的には、本発明の目的は、低減された圧縮永久歪、低減された応力緩和特性、及び低ヒステリシスロスのうちの少なくとも1つの特性を有する材料であり且つ架橋ポリロタキサンを有する材料を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記目的の他に、又は上記目的に加えて、該材料の製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、上記目的の他に、又は上記目的に加えて、上記材料の原料となる組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記目的の他に、又は上記目的に加えて、該組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、次の発明を見出した。
<1> 第1のポリロタキサン及び第2のポリロタキサンを有する材料であって、
第1のポリロタキサンは、第1の環状分子の開口部が第1の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第1の擬ポリロタキサンの両端に前記第1の環状分子が脱離しないように第1の封鎖基を配置してなり、
第2のポリロタキサンは、第2の環状分子の開口部が第2の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第2の擬ポリロタキサンの両端に前記第2の環状分子が脱離しないように第2の封鎖基を配置してなり、
該第1及び第2のポリロタキサンは、第1及び第2の環状分子を介して架橋してなり、
該材料が溶媒フリーであり、
該材料は、
X)圧縮永久歪が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下;
Y)引張応力緩和が15%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下;及び
Z)ヒステリシスロスが25%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下;
からなる群から選ばれる少なくとも1種の特性を有する、上記材料。
【0011】
該特性は、X)圧縮永久歪とY)引張応力緩和との組合せ、Y)引張応力緩和とZ)ヒステリシスロスとの組合せ、Z)ヒステリシスロスとX)圧縮永久歪の組合せ、X)圧縮永久歪とY)引張応力緩和とZ)ヒステリシスロスとの組合せ、であるのがよい。なお、各々の特性の数値は、上記の任意の値であり、特性は、それらの任意の組合せであるのがよい。
【0012】
<2> 上記<1>の架橋において、第1及び第2の環状分子間に、繰返し単位を3以上有する重合体部位を有するのがよい。
<3> 上記<2>において、重合体部位の繰返し単位は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート又はポリエン、もしくはそれらの共重合体であるのがよい。好ましくは、繰返し単位は、ポリエーテル又はポリカーボネート、もしくはそれらの共重合体であるのがよい。
<4> 上記<2>又は<3>において、重合体部位が数平均分子量300以上10000以下、好ましくは400〜5000、より好ましくは500〜3000であるのがよい。
【0013】
<5> 上記<1>の架橋において、第1及び第2の環状分子間に、数平均分子量300以上10000以下、好ましくは400〜5000、より好ましくは500〜3000である重合体部位を有するのがよい。なお、重合体部位は、繰返し単位を3以上有するのがよい。また、該重合体部位の繰返し単位は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート又はポリエン、もしくはそれらの共重合体であるのがよい。好ましくは、繰返し単位は、ポリエーテル又はポリカーボネート、もしくはそれらの共重合体であるのがよい。
<6> 上記<2>〜<5>のいずれかにおいて、第1及び第2の環状分子がそれぞれ第1及び第2の活性基を有し、
重合体部位の両端にそれぞれ第1及び第2の反応基を有し、
第1の活性基と第1の反応基とから結合が形成され、第2の活性基と第2の反応基とから結合が形成され、架橋が形成されるのがよい。
【0014】
<7> 第1のポリロタキサン及び第2のポリロタキサンを有し、該第1及び第2のポリロタキサンは架橋してなり、且つ溶媒フリーである材料であって、該材料が、
X)圧縮永久歪が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下;
Y)引張応力緩和が15%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下;及び
Z)ヒステリシスロスが25%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下;
からなる群から選ばれる少なくとも1種の特性を有する材料の製造方法であって、
a)第1の環状分子の開口部が第1の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第1の擬ポリロタキサンの両端に第1の環状分子が脱離しないように第1の封鎖基を配置してなる第1のポリロタキサンを準備する工程;
b)第2の環状分子の開口部が第2の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第2の擬ポリロタキサンの両端に第2の環状分子が脱離しないように第2の封鎖基を配置してなる第2のポリロタキサンを準備する工程;
c)重合体部位を有する第1の架橋化合物を準備する工程;及び
d)第1及び第2のポリロタキサン、並びに第1の架橋化合物を有する架橋前駆体を反応させて、第1及び第2のポリロタキサンを、重合体部位を介して架橋させる工程;
を有することにより、材料を得る、上記方法。
【0015】
なお、上記のX)〜Z)の特性は、X)圧縮永久歪とY)引張応力緩和との組合せ、Y)引張応力緩和とZ)ヒステリシスロスとの組合せ、Z)ヒステリシスロスとX)圧縮永久歪の組合せ、X)圧縮永久歪とY)引張応力緩和とZ)ヒステリシスロスとの組合せ、であるのがよい。なお、各々の特性の数値は、上記の任意の値であり、特性は、それらの任意の組合せであるのがよい。
【0016】
<8> 上記<7>において、重合体部位は、繰返し単位を3以上有するのがよい。
<9> 上記<8>において、繰返し単位は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート又はポリエン、もしくはそれらの共重合体であるのがよい。好ましくは、繰返し単位は、ポリエーテル又はポリカーボネート、もしくはそれらの共重合体であるのがよい。
【0017】
<10> 上記<7>において、重合体部位は、数平均分子量300以上10000以下、好ましくは400〜5000、より好ましくは500〜3000であるのがよい。なお、重合体部位は、繰返し単位を3以上有するのがよい。また、該重合体部位の繰返し単位は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート又はポリエン、もしくはそれらの共重合体であるのがよい。好ましくは、繰返し単位は、ポリエーテル又はポリカーボネート、もしくはそれらの共重合体であるのがよい。
【0018】
<11> 上記<7>〜<10>のいずれかにおいて、第1の架橋化合物は、重合体部位の両端にそれぞれ第1及び第2の反応基を有するのがよい。該第1の架橋化合物は、
c)−1)重合体部位を得る工程;及び
c)−2)重合体部位の両端にそれぞれ第1及び第2の反応基を設ける工程;
を有して得られるのがよい。
第1及び第2の環状分子がそれぞれ第1及び第2の活性基を有し、
第1の活性基と第1の反応基とから結合が形成され、第2の活性基と第2の反応基とから結合が形成され、架橋が形成されるのがよい。
【0019】
<12> 上記<7>〜<11>のいずれかにおいて、架橋前駆体が、少なくとも第3及び第4の反応基を有する第2の架橋化合物を有するのがよい。
第1及び第2の環状分子がそれぞれ第1及び第2の活性基を有し、
第1の架橋化合物は、重合体部位の両端にそれぞれ第1及び第2の反応基を有し、
第1の活性基と第1の反応基とから結合が形成され、第2の活性基と第2の反応基とから結合が形成され、第1及び第2のポリロタキサンが、重合体部位を介して架橋され、かつ
第1の活性基と第3の反応基とから結合が形成され、第2の活性基と第4の反応基とから結合が形成され、第1及び第2のポリロタキサンが、第2の架橋化合物を介して架橋されるのがよい。
【0020】
<13> 上記<7>〜<12>のいずれにおいて、第1の架橋化合物は、重合体部位の両端にそれぞれ第1及び第2の反応基を有し、該第1及び第2の反応基がそれぞれ第1及び第2の保護基により保護されるのがよい。該第1の架橋化合物が、
c)−1)繰返し単位を3以上有する重合体部位を得る工程;
c)−2)前記重合体部位の両端にそれぞれ第1及び第2の反応基を設ける工程;及び
c)−3)前記第1及び第2の反応基をそれぞれ保護する第1及び第2の保護基を設ける工程;
を有して得られ、
第1及び第2の環状分子がそれぞれ第1及び第2の活性基を有し、
架橋前駆体の反応の際に、第1及び第2の保護基が脱保護され、
第1の活性基と第1の反応基とから結合が形成され、第2の活性基と第2の反応基とから結合が形成され、第1及び第2のポリロタキサンが、重合体部位を介して架橋されるのがよい。
【0021】
<14> 上記<7>〜<13>のいずれかにおいて、架橋前駆体が、少なくとも第3及び第4の反応基を有し、かつ該第3及び第4の反応基がそれぞれ第3及び第4の保護基により保護されるのがよい。
該第2の架橋化合物が、
e)第3及び第4の反応基をそれぞれ保護する第3及び第4の保護基を設ける工程;
を有して得られ、
架橋前駆体の反応の際に、第3及び第4の保護基が脱保護され、
第1の活性基と第1の反応基とから結合が形成され、第2の活性基と第2の反応基とから結合が形成され、第1及び第2のポリロタキサンが、重合体部位を介して架橋され、かつ
第1の活性基と第3の反応基とから結合が形成され、第2の活性基と第4の反応基とから結合が形成され、第1及び第2のポリロタキサンが、第2の架橋化合物を介して架橋されるのがよい。
【0022】
<15> 上記<6>及び<11>〜<14>のいずれかにおいて、第1及び第2の反応基はそれぞれ2以上の官能基を有するのがよい。
<16> 上記<2>〜<15>のいずれかにおいて、重合体部位が、複数の重合体及び該重合体を連結するリンカー部を有するのがよい。
<17> 上記<2>〜<16>のいずれかにおいて、重合体部位が、分岐鎖を有するのがよい。
【0023】
<18> 上記<17>において、複数の重合体のいずれかが分岐鎖を有するか、及び/又はリンカー部が分岐鎖を有するのがよい。
<19> 上記<6>及び<11>〜<18>のいずれかにおいて、第1及び第2の活性基は、各々独立に、−OH、−SH、−NH、−COOH、−SOH、及び−POHからなる群から選ばれる基由来であるのがよい。
<20> 上記<6>及び<11>〜<19>のいずれかにおいて、第1及び第2の反応基、並びに第3及び第4の反応基は、各々独立に、イソシアネート基、チオイソシアネート基、オキシラン基、オキセタン基、カルボジイミド基、シラノール基、オキサゾリン基、及びアジリジン基からなる群から選ばれるのがよい。好ましくはイソシアネート基又はチオイソシアネート基であるのがよく、より好ましくはイソシアネート基であるのがよい。
【0024】
<21> 上記<6>及び<11>〜<20>のいずれかにおいて、第1及び第2の保護基、並びに第3及び第4の保護基は、各々独立に、ε-カプロラクタム、1,2−ピラゾール、ブタノンオキシム、1,2,4−トリアゾール、ジイソプロピルアミン、3,5−ジメチルピラゾール、ジエチルマロネート、ジメチルマロネート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、N,N’-ジフェニルホルムアミジン化合物との反応による保護基からなる群から選ばれるのがよい。好ましくはε-カプロラクタム、3,5−ジメチルピラゾール又はブタノンオキシムであるのがよく、より好ましくはε-カプロラクタム又は3,5−ジメチルピラゾールであるのがよい。
<22> 上記<15>〜<21>のいずれかにおいて、2以上の官能基が、イソシアネート基、チオイソシアネート基、オキシラン基、オキセタン基、カルボジイミド基、シラノール基、オキサゾリン基、及びアジリジン基からなる群から選ばれる2つ以上の基であるのがよい。好ましくはイソシアネート基又はチオイソシアネート基であるのがよく、より好ましくはイソシアネート基であるのがよい。
<23> 上記<6>及び<11>〜<22>のいずれかにおいて、第1及び第2の活性基が−OH基由来であり、第1及び第2の反応基又は官能基がイソシアネート基であり、重合体部位がポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート又はポリシロキサン、もしくはそれらの共重合体であるのがよい。
【0025】
<24> I)環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に前記環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるポリロタキサン;及び
II)第1の重合体部位を有する第1の架橋化合物であって、該第1の重合体部位の両末端に、第1及び第2の反応基を有し且つ該第1及び第2の反応基を保護する第1及び第2の保護基を有する第1の架橋化合物;
を有する組成物。
【0026】
<25> 上記<24>の組成物が、さらに、III)少なくとも第3及び第4の反応基を有し且つ該第3及び第4の反応基を保護する第3及び第4の保護基を有する第2の架橋化合物;を有するのがよい。
【0027】
<26> A) I)環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるポリロタキサン;を準備する工程;
B) II)第1の重合体部位を有する第1の架橋化合物であって、該第1の重合体部位の両末端に、第1及び第2の反応基を有し且つ該第1及び第2の反応基を保護する第1及び第2の保護基を有する第1の架橋化合物;を準備する工程;及び
C) I)ポリロタキサン;及びII)第1の架橋化合物;を混合する工程;
を有して、組成物を得る、組成物の製造方法。
【0028】
<27> 上記<26>において、
D) III)少なくとも第3及び第4の反応基を有し且つ該第3及び第4の反応基を保護する第3及び第4の保護基を有する第2の架橋化合物;を準備する工程;
をさらに有し、
C)工程において、I)ポリロタキサン;II)第1の架橋化合物;及びIII)第2の架橋化合物;を混合するのがよい。
【0029】
<28> 上記<1>〜<27>のいずれかにおいて、第1及び第2の環状分子は、各々独立に、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群から選択されるのがよい。
<29> 上記<1>〜<28>のいずれかにおいて、第1及び第2の直鎖状分子は、各々独立に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよく、例えばポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテルからなる群から選ばれるのがよく、特にポリエチレングリコールであるのがよい。
【0030】
<30> 上記<1>〜<29>のいずれかにおいて、第1及び第2の直鎖状分子は、各々独立に、その重量平均分子量が3,000以上、好ましくは5,000〜100,000、より好ましくは10,000〜50,000であるのがよい。
<31> 上記<1>〜<30>のいずれかにおいて、第1及び第2の封鎖基は、各々独立に、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニルなどを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類(置換基として、上記と同じものを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、及びステロイド類からなる群から選ばれるのがよい。なお、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、及びピレン類からなる群から選ばれるのが好ましく、より好ましくはアダマンタン基類又はトリチル基類であるのがよい。
【0031】
<32> 上記<1>〜<31>のいずれかにおいて、第1及び第2の環状分子は、各々独立に、α−シクロデキストリン由来であり、第1及び第2の直鎖状分子がポリエチレングリコールであるのがよい。
<33> 上記<1>〜<32>のいずれかにおいて、第1及び第2の環状分子が第1及び第2の直鎖状分子により串刺し状に包接される際に第1及び第2の環状分子が最大限に包接される量を1とした場合、第1及び第2の環状分子は、各々独立に、0.001〜0.6、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.4の量で第1及び第2の直鎖状分子に串刺し状に包接されるのがよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、塑性流動から起こるへたりを改善した材料を提供することができる。
本発明により、低減された圧縮永久歪、低減された応力緩和特性、及び低ヒステリシスロスのうちの少なくとも1つの特性を有する材料を提供することができる。
また、本発明により、上記効果の他に、又は上記効果に加えて、該材料の製造方法を提供することができる。
さらに、本発明により、上記効果の他に、又は上記効果に加えて、上記材料の原料となる組成物を提供することができる。
また、本発明により、上記効果の他に、又は上記効果に加えて、該組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】引張試験の応力−歪曲線からヒステリシスロス値が得られることを説明する図である。
【図2】本発明の材料中の架橋ポリロタキサンの一態様1を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本願に記載する発明を詳細に説明する。
本願は、第1及び第2のポリロタキサンを有する材料であって、
該第1及び第2のポリロタキサンは、各々の環状分子を介して架橋してなり、
該材料が溶媒フリーであり、
X)圧縮永久歪が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下;
Y)引張応力緩和が15%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下;及び
Z)ヒステリシスロスが25%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下;
からなる群から選ばれる少なくとも1種の特性を有する材料を提供する。
【0035】
本発明の第1及び第2のポリロタキサンを有する材料は、溶媒フリーでありつつ、所望の特性、即ち上記X)〜Z)のうちから選ばれる少なくとも1種の特性をもたらすことができる。この特性を有することにより、「へたり」を改善することができる。
【0036】
本願において「溶媒フリー」とは、より好ましくは溶媒が全くないことを意味するが、微少量、即ち溶媒を3wt%(材料全体を100wt%とした場合)好ましくは1wt%以下まで含んでもよい。なお、本発明の材料を、通常の条件下で製造する際、もしくは処理又は加工する際には、溶媒を含んでもよいが、最終的な材料の溶媒量が上記範囲内にあることを意味する。
【0037】
本発明の材料は、X)圧縮永久歪が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下;
Y)引張応力緩和が15%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下;及び
Z)ヒステリシスロスが25%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下;
からなる群から選ばれる少なくとも1種の特性を有する。
特に、該特性は、X)圧縮永久歪とY)引張応力緩和との組合せ、Y)引張応力緩和とZ)ヒステリシスロスとの組合せ、Z)ヒステリシスロスとX)圧縮永久歪の組合せ、X)圧縮永久歪とY)引張応力緩和とZ)ヒステリシスロスとの組合せ、であるのがよい。なお、これらの組合せにおいて、各々の特性の数値は、上記の任意の値であるのがよい。
より特に、X)圧縮永久歪とY)引張応力緩和とZ)ヒステリシスロスとの組み合わせにおいて、圧縮永久歪が1%以下、引張応力緩和が5%以下、ヒステリシスロスが10%以下であるのがよい。
【0038】
なお、本明細書において、圧縮永久歪とは、JIS K6301に準拠して測定されるものをいう。
また、本明細書において、引張応力緩和とは、JIS K6263に準拠して測定されるものをいう。
【0039】
さらに、本明細書において、ヒステリシスロスとは、JIS K6400に準拠した、変形及び回復の1サイクルにおける機械的エネルギー損失率(ヒステリシスロス)において、材料の変形の代わりに材料の引張試験による歪を用いたものをいう。
具体的には、ダンベル7号形(ダンベル7号形は、JIS K−6251に準拠する)のサンプルを引張試験にかけ、応力−歪曲線を測定する。伸長が有効長さの100%まで伸長した後、伸長と同じ速度で0%まで収縮する。このサイクルを10回行い、ヒステリシスロスを算出する。具体的には、図1に図示する方法で面積を測定し計算される。各サイクルにおける伸長時の面積(図1の面積:oabedo)と収縮時の面積(図1の面積:dcbed)を算出する。各サイクルにおける伸長時の面積に対する収縮時の面積の減少率を算出し、2から10サイクルの平均値を本願におけるヒステリシスロスとする。
【0040】
ヒステリシスロス(%)=
{(面積:oabedo)−(面積:dcbed)}×100/(面積:oabedo)。
【0041】
このような特性を有する本発明の材料は、繰り返し使用される用途や長期間変形して使用する用途などにおいて、復元性に優れたエラストマーを実現することができる。よって、既存エラストマーであるウレタンエラストマーやゴムエラストマーにおいて、長期使用や繰り返し使用で材料の「へたり」が問題になるような分野に適用できる。
これらのことから、本発明の材料は、長期間の繰り返し使用に対して「へたり」の少ないものが要求される用途に応用することができる。例えば、ゴムホースなどのホース類、Oリングやガスケットなどのシール部品、歯付ベルトなどの動力伝達ベルトや搬送用コンベヤベルト、産業機械用などの防振ゴム、製紙用ロールなどの工業用ロール、OA機器用ロールなどの各種機器用ロール、誘電アクチュエータなどのソフトアクチュエータなどが挙げられる。
また、本発明の材料は、他ポリマーと組み合わせることで、圧縮永久歪や応力緩和特性、ヒステリシスロスの低減ができ、材料としてのへたりの改善を図ることができる。
【0042】
本発明の材料について、より詳細に説明する。
第1又は第2のポリロタキサンは、それぞれ、つぎのような構成を有する。即ち、第1(第2)のポリロタキサンは、第1(第2)の環状分子の開口部が第1(第2)の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第1(第2)の擬ポリロタキサンの両端に第1(第2)の環状分子が脱離しないように第1(第2)の封鎖基を配置してなる。
第1及び第2のポリロタキサンは、同じであっても異なってもよい。要するに、本発明において、ポリロタキサン分子が2以上存在し、2以上の分子が架橋していることが必要である。
なお、第1(第2)のポリロタキサンを構成する要素、即ち、第1(第2)の環状分子、第1(第2)の直鎖状分子、第1(第2)の封鎖基については、後述する。
【0043】
本発明の材料は、第1及び第2のポリロタキサンが、各々の環状分子を介して架橋してなる。
具体的には、第1及び第2の環状分子間に、重合体部位を有するように架橋が形成されるのがよい。該重合体部位は、繰返し単位を3以上有するか、及び/又は該重合体部位の数平均分子量が300以上10000以下、好ましくは400〜5000、より好ましくは500〜3000であるのがよい。
【0044】
より具体的には、第1及び第2の環状分子がそれぞれ第1及び第2の活性基を有し、重合体部位の両端にそれぞれ第1及び第2の反応基を有し、第1の活性基と第1の反応基とが、及び、第2の活性基と第2の反応基とが、直接、化学結合して架橋が形成されるのがよい。なお、「重合体部位」の繰返し単位は、重合体部位が、途中、何等かのスペーサで分断されていてもよいが、第1及び第2の反応基間の繰返し単位が上述の範囲であるのがよい。また、「重合体部位」の分子量についても、重合体部位が、途中、何等かのスペーサで分断されていてもよいが、第1及び第2の反応基間の分子量が上述の範囲であるのがよい。
重合体部位は、例えば、複数の重合体及び該重合体を連結するリンカー部を有してもよい。この場合であっても、第1及び第2の反応基間の繰返し単位及び/又は分子量が上述の範囲であるのがよい。
重合体部位は、分岐鎖を有してもよい。この場合、該分岐鎖は、複数の重合体のいずれかが有するか、及び/又はリンカー部が有有してもよい。
重合体部位は、1種のモノマー由来であっても、2種以上のモノマー由来であってもよい。
【0045】
重合体部位、又は第1及び第2の反応基をその両端に有する重合体部位の例として、ポリエーテル、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート又はポリエン、もしくはそれらの共重合体、もしくはそれらの混合体を挙げることができる。
より具体的には、ポリエチレングリコールジオール、ポリエチレングリコールジカルボン酸末端、ポリエチレングリコールジチオール酸末端、ポリプロピレンジオール、ポリテトラヒドロフラン、ポリ(テトラヒドロフラン)ビス(3−アミノプロピル)末端、ポリプロピレングリコールビス(2−アミノプロピルエーテル)、グリセロールプロポキシレート、グリセロールトリス[ポリ(プロピレングリコール)アミノ末端]、ペンタエリトリトールエトキシレート、ペンタエリトリトールプロポキシレートなどのポリエーテル類;ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(1、3−プロピレンアジペート)ジオール末端、ポリ(1、4−ブチレンアジペート)ジオール末端、ポリラクトンなどのポリエステル類;変性ポリブタジエン、変性ポリイソプレンなどのポリエン類;ポリジメチルシロキサンジシラノール末端、ポリジメチルシロキサン水素化末端、ポリジメチルシロキサンビス(アミノプロピル)末端、ポリジメチルシロキサンジグリシジルエーテル末端、ポリジメチルシロキサンジカルビノール末端、ポリジメチルシロキサンジビニール末端、ポリジメチルシロキサンジカルボン酸末端などのシロキサン類;1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどを成分とするポリアルキレンカーボネートジオール類;を挙げることができるが、これらに限定されない。特に、重合体部位は、ポリエーテル類又はポリカーボネート類であるのがよい。
【0046】
重合体部位は、該重合体部位が有する基とある基とを反応させることにより、その両端に反応基を有することもできる。例えば、その「ある基」による「反応基」の付与として、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型、イソシアヌレート型、アダクト型、トリレン2、4−ジイソシアネート、ジイソシアン酸イソホロン、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、(4,4’-メチレンジシクロヘキシル)ジイソシアネートなどの多官能イソシアネートによるイソシアネート基の付与;エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンなどのオキシラン化合物によるオキシラン基の付与;3−(クロロメチル)−3−メチルオキセタンなどのオキセタン化合物によるオキセタン基の付与;2、2‘−ビス(2−オキサゾリン)などによるオキサゾリン基付与;多官能アジリジンPZ−33、DZ−22E(日本触媒製)などによるアジリジン基の付与;を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0047】
反応基は、上述したものにも含まれるが、イソシアネート基、チオイソシアネート基、オキシラン基、オキセタン基、カルボジイミド基、シラノール基、オキサゾリン基、及びアジリジン基からなる群から選ばれるのがよい。好ましくはイソシアネート基又はチオイソシアネート基であるのがよく、より好ましくはイソシアネート基であるのがよい。
第1及び第2の反応基はそれぞれ2以上の官能基を有してもよい。
2以上の官能基が、イソシアネート基、チオイソシアネート基、オキシラン基、オキセタン基、カルボジイミド基、シラノール基、オキサゾリン基、及びアジリジン基からなる群から選ばれる2つ以上の基であるのがよい。好ましくはイソシアネート基又はチオイソシアネート基であるのがよく、より好ましくはイソシアネート基であるのがよい。
【0048】
以下、第1(第2)のポリロタキサンを構成する要素について、それぞれ説明する。なお、以降、「第1」又は「第2」については、特記しない限り、区別せずに説明する。
<<環状分子>>
環状分子は、その開口部に直鎖状分子が串刺し状に包接される分子であり、活性基を有するのであれば、特に限定されない。
活性基として、−OH、−SH、−NH、−COOH、−SOH、及び−POHからなる群から選ばれる基由来であるのがよい。
環状分子として、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群から選択されるのがよい。α−シクロデキストリンなどの−OH基の一部を、他の基、例えば上述の基に置換してもよい。なお、環状分子は、上述の活性基以外の基を有してもよい。
【0049】
活性基以外の基の例として、アセチル基、プロピオニル基、ヘキサノイル基、メチル基、エチル基、プロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、1,2-ジヒドロキシプロピル基、シクロヘキシル基、ブチルカルバモイル基、ヘキシルカルバモイル基、フェニル基、ポリカプロラクトン基、アルコキシシラン基、アクリロイル基、メタクリロイル基又はシンナモイル基、ポリマー鎖(ポリカプロラクトン基、ポリカーボネート基など)、もしくはこれらの誘導体が挙げられる。また、上記活性基が直接環状分子に結合されても、活性基以外の基を介して環状分子に結合されてもよい。これらの基を環状分子に設けることにより、例えば、架橋体を作製する工程における該ポリロタキサンの溶媒に対する溶解性の向上、重合体部位との相溶性の向上、及び特定の機能性を付与すること(例えば、撥水撥油機能、摩擦制御機能、光硬化機能、表面密着向上機能など)を図ることができる。
【0050】
<<直鎖状分子>>
本発明のポリロタキサンの直鎖状分子は、環状分子の開口部に串刺し状に包接され得るものであれば、特に限定されない。
例えば、直鎖状分子として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよい。例えばポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテルからなる群から選ばれるのがよい。特にポリエチレングリコールであるのがよい。
【0051】
直鎖状分子は、その重量平均分子量が3,000以上、好ましくは5,000〜100,000、より好ましくは10,000〜50,000であるのがよい。
本発明の第1(第2)のポリロタキサンにおいて、第1(第2)の環状分子がα−シクロデキストリン由来であり、直鎖状分子がポリエチレングリコールであるのがよい。
【0052】
環状分子が直鎖状分子により串刺し状に包接される際に環状分子が最大限に包接される量を1とした場合、前記環状分子が0.001〜0.6、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.4の量で直鎖状分子に串刺し状に包接されるのがよい。
なお、環状分子の最大包接量は、直鎖状分子の長さと環状分子の厚さとにより、決定することができる。例えば、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がα−シクロデキストリン分子の場合、最大包接量は、実験的に求められている(Macromolecules 1993, 26, 5698-5703を参照こと。なお、この文献の内容はすべて本明細書に組み込まれる)。
【0053】
<<封鎖基>>
本発明のポリロタキサンの封鎖基は、擬ポリロタキサンの両端に配置され、環状分子が脱離しないように作用する基であれば、特に限定されない。
例えば、封鎖基として、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニルなどを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類(置換基として、上記と同じものを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、及びステロイド類からなる群から選ばれるのがよい。なお、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、及びピレン類からなる群から選ばれるのが好ましく、より好ましくはアダマンタン基類又はトリチル基類であるのがよい。
【0054】
上述の、本発明の材料、即ち架橋ポリロタキサンを有する材料を、図を用いて説明する。
図2は、本発明の材料中の架橋ポリロタキサンの一態様1を模式的に説明する図である。
図中、左側が第1のポリロタキサン2に由来し、右側が第2のポリロタキサン4に由来し、双方が架橋されてなる。
第1のポリロタキサン2は、第1の環状分子5a、5b及び5cの開口部が第1の直鎖状分子6によって串刺し状に包接されてなり、該第1の直鎖状分子6の両端に第1の環状分子5a、5b及び5cが脱離しないように第1の封鎖基7a及び7bが配置してなる。
また、第1の環状分子5aは、活性基以外の基としてのグラフト鎖8aを、第1の環状分子5bは、活性基以外の基としてのグラフト鎖8b及び8cを、第1の環状分子5cは、活性基以外の基としてのグラフト鎖8d及び8eをそれぞれ有してなる。
【0055】
同様に、第2のポリロタキサン4も、第2の第1の環状分子15a、15b及び15cの開口部が第2の直鎖状分子16によって串刺し状に包接されてなり、該第2の直鎖状分子16の両端に第2の環状分子15a、15b及び15cが脱離しないように第2の封鎖基17a及び17bが配置してなる。
また、第2の環状分子15aは、活性基以外の基としてのグラフト鎖18a及び18bを、第2の環状分子15bは、活性基以外の基としてのグラフト鎖18c及び18dを、第2の環状分子15cは、活性基以外の基としてのグラフト鎖18e及び18fを有してなる。
【0056】
第1のポリロタキサン2と第2のポリロタキサン4とは、第1の環状分子5aと第2の環状分子15bとを介して、より具体的には第1の環状分子5a、グラフト鎖8a、重合体部位21a、グラフト鎖18d、及び第2の環状分子15bを介して、架橋される。
また、第1の環状分子5bと第2の環状分子15bとを介しても架橋が形成され、より具体的には、第1の環状分子5b、グラフト鎖8c、重合体部位21b、及び第2の環状分子15bを介して、架橋が形成される。
さらに、第1の環状分子5cと第2の環状分子15cとを介しても架橋が形成され、より具体的には、第1の環状分子5c、重合体部位21c、及び第2の環状分子15cを介して、架橋が形成される。
【0057】
本発明の材料は、ポリロタキサンを使用することで、圧縮永久歪、応力緩和特性及び/又はヒステリシスロスが低いエラストマーを実現することができる。これにより、繰り返し使用される用途や長期間変形して使用する用途などにおいて復元性に優れたエラストマーを実現することができる。そのため、特に長期間の利用や繰り返し利用に対する「へたり」の少ない部材を必要とする用途に応用できる。例えば、ゴムホースなどのホース類、Oリングやガスケットなどのシール部品、歯付ベルトなどの動力伝達ベルトや搬送用コンベヤベルト、産業機械用などの防振ゴム、製紙用ロールなどの工業用ロール、OA機器用ロールなどの各種機器用ロール、誘電アクチュエータなどのソフトアクチュエータなどが挙げられる。
【0058】
<本発明の材料の製造方法>
上述の、本発明の材料は、例えば、次の方法により得ることができる。
即ち、
a)第1の環状分子の開口部が第1の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第1の擬ポリロタキサンの両端に第1の環状分子が脱離しないように第1の封鎖基を配置してなる第1のポリロタキサンを準備する工程;
b)第2の環状分子の開口部が第2の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第2の擬ポリロタキサンの両端に第2の環状分子が脱離しないように第2の封鎖基を配置してなる第2のポリロタキサンを準備する工程;
c)重合体部位を有する第1の架橋化合物を準備する工程;及び
d)第1のポリロタキサン、第2のポリロタキサン、及び第1の架橋化合物を混合し反応させて、第1及び第2のポリロタキサンを、重合体部位を介して架橋させる工程;
を有することにより、本発明の材料を得ることができる。
【0059】
工程a)及びb)は、いわゆるポリロタキサンを準備する工程である。ポリロタキサンは、本願の出願前に発表された文献(例えばWO2005−080469及びWO2005−108464(本文献は、その内容すべてが参考として本明細書に組み込まれる))を参照することにより、得ることができる。第1及び第2のポリロタキサンが同一であれば、a)及びb)工程を1つの工程で行うことができる。なお、第1及び第2のポリロタキサンについては上述と同じである。
【0060】
工程c)は、第1の架橋化合物を準備する工程である。なお、ここで、重合体部位は、上述と同様であり、繰返し単位を3以上有するか、及び/又は該重合体部位の数平均分子量が300以上10000以下、好ましくは400〜5000、より好ましくは500〜3000であるのがよい。重合体部位は、その他の点についても、同様である。
【0061】
工程c)として、上述の「重合体部位」又は「第1及び第2の反応基を有する重合体部位」の例として挙げたものに、反応基を付与することにより、第1の架橋化合物を得ることができる。即ち、c)−1)重合体部位を得る工程;及びc)−2)重合体部位の両端にそれぞれ第1及び第2の反応基を設ける工程;を有することにより、第1の架橋化合物を得ることができる。さらに、c)−3)第1及び第2の反応基をそれぞれ保護する第1及び第2の保護基を設ける工程;を有してもよい。この場合、第1及び第2の保護基により、安定化した第1の架橋化合物を得ることができ、該第1の架橋化合物の長期保存などに役立てることができる。なお、第1及び第2の保護基を有する第1の架橋化合物を用いる場合、その後の工程d)において、又は工程d)前に、該第1及び第2の保護基を脱保護する工程を有するのがよい。
【0062】
第1及び第2の保護基は、各々独立に、ε-カプロラクタム、1,2−ピラゾール、ブタノンオキシム、1,2,4−トリアゾール、ジイソプロピルアミン、3,5−ジメチルピラゾール、ジエチルマロネート、ジメチルマロネート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、N,N’-ジフェニルホルムアミジン化合物との反応による保護基からなる群から選ばれるのがよい。好ましくはε-カプロラクタム、3,5−ジメチルピラゾール又はブタノンオキシムであるのがよく、より好ましくはε-カプロラクタム又は3,5−ジメチルピラゾールであるのがよい。
脱保護する工程は、主に加熱によって行うことができる。また、系内に脱保護を促進する脱保護用触媒を添加してもよい。
【0063】
脱保護用触媒は、系内の存在する化合物、第1及び第2の保護基などに依存するが、ジラウリン酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジオクチル錫、トリ(アセテート)ブチル錫、ジ(アセテート)ジブチル錫、アセテートトリブチル錫、メトキシトリブチル錫、トリ(2-エチルヘキサノエート)ブチル錫、ビス(2-エチルヘキサノエート)ジブチル錫、トリ(ラウレート)ブチル錫、ジ(オクタノエート)ジブチル錫、トリ(オクタノエート)ブチル錫、ジブチル錫オキサイド、モノブチル錫ヒドロキサイドオキサイド、スタナスオクトエート等の錫系触媒;トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N-メチルモルホリン、1,2-ジメチルイミダゾール、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(以下、DBUと略称)、これらアミン系触媒のボラン塩、DBUフェノール塩、DBUオクチル酸塩、DBU炭酸塩等の各種アミン塩系触媒;ナフテン酸マグネシウム、ナフテン酸鉛、酢酸カリウム等のカルボキシレート類;トリエチルホスフィン、トリベンジルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類;ナトリウムメトキサイド等のアルカリ金属のアルコキシド類;亜鉛系有機金属触媒等;を挙げることができるがこれに限定されない。
【0064】
工程c)−1)及びc)−2)として、i)反応基を付与できる箇所を有する重合体と反応基2個以上を有する化合物とを反応させて、架橋化合物を得る手法;ii)モノマーを一般の方法で重合し、重合体部位を作製し、作製工程で、反応基となる化合物を付与する手法;を挙げることができるが、これに限定されない。なお、ここでのモノマーは繰り返し単位を有するモノマーであってもよい。
【0065】
上記i)の手法は一般的には、反応基2個以上を有する化合物を、重合体と過剰に反応させた後、反応物をそのまま使用してもよいし、精製して使用してもよい。反応基2個以上を有する化合物として、「ある基」による「反応基」の付与として上述した化合物を挙げることができるがこれに限定されない。
上記ii)の具体的な例として、(メタ)アクリル酸メチルの重合にグリシジルメタクリレートを添加して得られる架橋化合物、(メタ)アクリル酸メチルの重合にα−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトンを添加して得られる架橋化合物、エチレングリコールとアジピン酸の縮合重合による末端カルボン酸基を有するようにして得られる架橋化合物、トリエチレングリコールとヘキサメチレンジイソシアネートの重付加によって得られるイソシアネート末端を有する架橋化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
なお、これらの反応は、用いる重合体部位、用いる「ある基」、用いる反応基に依存するが、トルエン、キシレン、酢酸ブチルの溶媒中で、常圧、室温〜120℃の反応温度条件下で行うことができる。
【0066】
工程d)は、第1及び第2のポリロタキサン、並びに第1の架橋化合物を混合し反応させて、第1及び第2のポリロタキサンを、重合体部位を介して架橋させる工程である。
工程d)は、用いるポリロタキサン、用いる重合体部位などに依存するが、一般に、溶媒中で反応させるのがよい。溶媒として、第1及び第2のポリロタキサン、並びに架橋化合物に依存するが、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトニトリル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン又はアセトン、もしくはこれらの混合溶媒を挙げることができるが、これらに限定されない。また、反応は、反応基、活性基、及び溶媒に依存するが、室温から150℃、5分間〜24時間、触媒の存在下の条件などを挙げることができるが、これに限定されない。
【0067】
工程d)において、第1の架橋化合物とは異なる第2の架橋化合物を有してもよい。
第2の架橋化合物は、その両端に第3及び第4の反応基を有するのがよい。また、第2の架橋化合物は、さらに第5の反応基を有してもよい。
第3及び第4、並びに第5の反応基は、各々独立に、イソシアネート基、チオイソシアネート基、オキシラン基、オキセタン基、カルボジイミド基、シラノール基、オキサゾリン基、及びアジリジン基からなる群から選ばれるのがよい。好ましくはイソシアネート基又はチオイソシアネート基であるのがよく、より好ましくはイソシアネート基であるのがよい。
【0068】
また、第2の架橋化合物は、第3及び第4の反応基、並びに、有する場合には第5の反応基が、それぞれ第3及び第4、並びに第5の保護基により保護されていてもよい。なお、該保護基は、工程d)において、又は工程d)前に脱保護されるのがよい。
第3及び第4、並びに第5の保護基は、各々独立に、ε-カプロラクタム、1,2−ピラゾール、ブタノンオキシム、1,2,4−トリアゾール、ジイソプロピルアミン、3,5−ジメチルピラゾール、ジエチルマロネート、ジメチルマロネート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、N,N’-ジフェニルホルムアミジン化合物との反応による保護基からなる群から選ばれるのがよい。好ましくはε-カプロラクタム、3,5−ジメチルピラゾール又はブタノンオキシムであるのがよく、より好ましくはε-カプロラクタム又は3,5−ジメチルピラゾールであるのがよい。
保護基の脱保護は、主に加熱によって行うことができる。また、系内に脱保護を促進する脱保護用触媒を添加してもよい。
【0069】
脱保護用触媒は、系内の存在する化合物、例えば第1及び第2のポリロタキサンなど;及び第1及び第2の保護基などに依存するが、ジラウリン酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジオクチル錫、トリ(アセテート)ブチル錫、ジ(アセテート)ジブチル錫、アセテートトリブチル錫、メトキシトリブチル錫、トリ(2-エチルヘキサノエート)ブチル錫、ビス(2-エチルヘキサノエート)ジブチル錫、トリ(ラウレート)ブチル錫、ジ(オクタノエート)ジブチル錫、トリ(オクタノエート)ブチル錫、ジブチル錫オキサイド、モノブチル錫ヒドロキサイドオキサイド、スタナスオクトエート等の錫系触媒;トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N-メチルモルホリン、1,2-ジメチルイミダゾール、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(以下、DBUと略称)、これらアミン系触媒のボラン塩、DBUフェノール塩、DBUオクチル酸塩、DBU炭酸塩等の各種アミン塩系触媒;ナフテン酸マグネシウム、ナフテン酸鉛、酢酸カリウム等のカルボキシレート類;トリエチルホスフィン、トリベンジルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類;ナトリウムメトキサイド等のアルカリ金属のアルコキシド類;亜鉛系有機金属触媒等;を挙げることができるがこれに限定されない。
【0070】
本願の方法が溶媒を用いる場合、得られた架橋体を含む材料を溶媒フリーとするために、種々の乾燥工程を、工程d)後、もしくは工程d)と同時に設けてもよい。また、工程d)において、型(モールド)の中で乾燥を行っても、基板上にて乾燥を行ってもよい。さらに、乾燥工程を効率的に行うため、溶媒置換工程を乾燥工程の前に設けてもよい。
乾燥工程として、室温放置して自然乾燥による乾燥工程、常圧加熱による乾燥工程、減圧加熱による乾燥工程、凍結乾燥工程などを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0071】
工程a)、b)、c)、及びd)以外に、他の工程を設けてもよい。例えば、上述の、工程d)後の乾燥工程、工程d)の際及び/又は工程d)後に、材料に他の成分を含ませる工程、工程d)後の溶媒による洗浄工程、第1及び第2、第3及び第4、並びに第5の保護基を有する場合の該保護基の脱保護工程などである。他の成分として、他ポリマー又はオリゴマー、可塑剤、低分子量架橋剤、界面活性剤、UV吸収剤、抗菌剤、粘度調整剤、無機微粒子、酸化防止剤、シランカップリング剤、消泡剤などを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0072】
他の成分のうち、他ポリマー又はオリゴマーとして、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、片末端水酸基化ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリジメチルシロキサン、片末端水酸基化ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、片末端水酸基化ポリカーボネート、ポリエステル、片末端水酸基化ポリエステルなどが挙げられるが、それらに限定されない。なお、この他ポリマー又はオリゴマーに反応基を付与できる箇所を1つのみ有しても良いし、有しなくても良い。これらのポリマー又はオリゴマーを加えることで、本材料の粘弾特性を適度に調節することができる。
【0073】
他の成分のうち、可塑剤として、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)、リン酸トリクレジルなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0074】
他の成分のうち、低分子量架橋剤として、塩化シアヌル、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、脂肪族多官能イソシアネート、芳香族多官能イソシアネート、ジイソシアン酸トリレイン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジビニルスルホン、1,1’−カルボニルジイミダゾール、エチレンジアミン四酢酸二無水物、meso-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物などの酸無水物類、多官能酸ヒドラジン類、多官能カルボイミド類、アルコキシシラン類、およびそれらの誘導体を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0075】
他の成分のうち、界面活性剤として、ポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタンなどの非イオン性界面活性剤;硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸トリエタノールアミン、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルピリジニウムクロリド、などのイオン性界面活性剤などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0076】
他の成分のうち、UV吸収剤として、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、サリチル酸2−エチルヘキシル、2、4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2、2、6、6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、パラメトキシケイ皮酸2エチルヘキシル、パラメトキシケイヒ酸イソプロピル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、メトキシケイヒ酸オクチルなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0077】
他の成分のうち、抗菌剤として、銀、亜鉛、銅化合物または錯体及びそのイオン;有機ケイ素化合物;有機リン化合物などを挙げることができるが、これらに限定されない。
他の成分のうち、粘度調整剤として、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸プロピレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
他の成分のうち、無機微粒子として、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭化ケイ素などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0078】
他の成分のうち、酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などを挙げることができるが、これらに限定されない。
他の成分のうち、シランカップリング剤として、ビニールシラン、エポキシシラン、アミノシランなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0079】
本願は、上述の架橋ポリロタキサンを有する材料を得るための組成物を提供する。
該組成物は、
I)環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に前記環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるポリロタキサン;及び
II)第1の重合体部位を有する第1の架橋化合物であって、該第1の重合体部位の両末端に、第1及び第2の反応基を有し且つ該第1及び第2の反応基を保護する第1及び第2の保護基を有する第1の架橋化合物;
を有する。
【0080】
ここで、I)ポリロタキサンは、上述の第1及び第2のポリロタキサンと同じ定義を有する。なお、I)ポリロタキサンは、1種のポリロタキサンであっても、2種以上のポリロタキサンを有してもよい。
また、II)第1の架橋化合物も、上述の第1の架橋化合物と同じ定義を有する。ただし、上述では、第1及び第2の保護基は任意であったが、ここでは、第1及び第2の保護基を有する点が異なる。このようにII)第1の架橋化合物が、第1及び第2の保護基を有することにより、組成物内のI)ポリロタキサンとII)第1の架橋化合物が反応することがなく、安定して存在することができる。なお、架橋を行う際には、第1及び第2の保護基を、架橋前に、脱保護するのがよい。脱保護については、上述した通りである。なお、第1及び第2の反応基、並びに第1及び第2の保護基についても上述と同じ定義を有する。
【0081】
組成物は、さらに、III)少なくとも第3及び第4の反応基を有し且つ該第3及び第4の反応基を保護する第3及び第4の保護基を有する第2の架橋化合物;を有するのがよい。
該第2の架橋化合物は、上述と同じ定義を有する。また、第3及び第4の反応基、並びに第3及び第4の保護基も、上述と同じ定義を有する。
【0082】
本発明の組成物は、上記I)〜III)以外の、他の成分を有してもよい。他の成分として、他ポリマー又はオリゴマー、可塑剤、低分子量架橋剤、界面活性剤、UV吸収剤、抗菌剤、粘度調整剤、無機微粒子、酸化防止剤、シランカップリング剤、消泡剤などを挙げることができるがこれらに限定されない。なお、消泡剤以外、他の成分は、上述した定義と同じ定義を有する。消泡剤については後述する。
【0083】
本願の組成物は、次のように製造することができる。
即ち、A) I)環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるポリロタキサン;を準備する工程;
B) II)第1の重合体部位を有する第1の架橋化合物であって、該第1の重合体部位の両末端に、第1及び第2の反応基を有し且つ該第1及び第2の反応基を保護する第1及び第2の保護基を有する第1の架橋化合物;を準備する工程;及び
C) I)ポリロタキサン;及びII)第1の架橋化合物;を混合する工程;
を有して、組成物を得ることができる。
【0084】
ここで、工程A)は、上述の工程a)及びb)、即ち第1及び第2のポリロタキサンを準備する工程と同じである。
工程B)は、上述の工程c)、特に工程c)−3)を有するものと同じである。
工程C)は、I)ポリロタキサン;及びII)第1の架橋化合物;を混合する工程である。混合は、溶媒を含まない乾式混合であっても、溶媒を用いる混合であってもよい。
溶媒を用いる場合、該溶媒として、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトニトリル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン又はアセトン、もしくはこれらの混合溶媒を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0085】
混合する手法として、例えば、マグネチックスターラー、メカニカル撹拌、ホモディスパー機、高圧乳化機、超音波乳化分散機などが挙げられるが、それらに限定されない。
均一に混合した後、減圧脱泡、遠心脱泡などの方法で脱泡工程を設けてもよい。
混合時に消泡剤を添加してもよい。消泡剤の種類として、シリコーン系消泡剤;界面活性剤、ポリエーテル、高級アルコールなどの有機系消泡剤;などを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0086】
本発明の組成物が、上記I)〜III)以外の、他の成分を有する場合、該他の成分は、上記C)工程で混合するのがよい。
【0087】
上記製法は、上記工程A)〜C)以外に、その他の工程を有してもよい。例えば、工程C)後に、組成物を成型する工程を有してもよい。成型工程は、従来公知の工程を用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂の成型法に用いる工程を用いることができる。より具体的には、射出成型、モールド成型、コーター及び/又は塗工機による膜成形などの手法を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0088】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0089】
(合成例A−1)
<ヒドロキシプロピル基を有するポリロタキサンの作製>
直鎖分子:ポリエチレングリコール(重量平均分子量3.5万)、環状分子:α−シクロデキストリン(以下、単に「α−CD」と略記する場合がある)、封鎖基:アダマンタンアミン基からなるポリロタキサンのα−CDのOH基の一部を、さらにヒドロキシプロピル化した化合物(以下、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを「HAPR35」と略記する)を、WO2005−080469(なお、この文献の内容は全て参考として本明細書に組み込まれる)に記載される方法と同様に調製した。
H−NMR分析により、α−CD包接率:25%、ヒドロキシプロピル基の導入率:48%を確認した。また、GPCにより平均重量分子量Mw:150,000を確認した。
【0090】
なお、合成したポリロタキサンの分子量、分子量分布の測定は、TOSOH HLC−8220GPC装置で行った。カラム:TSKガードカラムSuper AW−HとTSKgel Super AWM−H(2本連結)、溶離液:ジメチルスルホキシド(DMSO)/0.01M LiBr、カラムオーブン:50℃、流速:0.5ml/min、試料濃度を約0.2wt/vol%、注入量:20μl、前処理:0.2μmフィルターでろ過、スタンダード分子量:PEO、の条件下で測定した(合成例B−2及びB−3についても同様である)。H−NMR分析は、400MHzのJEOL JNM−AL400(日本電子株式会社製)で行った。
【0091】
(合成例A−2)
<ヒドロキシプロピル基及びポリカプロラクトン基を有するポリロタキサンの作製>
合成例A−1で得られたHAPR35 20gを三口フラスコに入れ、窒素をゆっくり流しながら、ε−カプロラクトン90gを導入した。100℃、60分間メカニカル撹拌機によって均一に撹拌した後、予めトルエンで薄めた2−エチルヘキサン酸スズ(50wt%溶液)6gを添加し、5時間反応させ、溶媒を除去し、反応生成物(HAPR35にポリカプロラクトン基を導入したものであり、以下、「HAPR35にポリカプロラクトンを導入したもの」を一般に「HAPR35−g−PCL」と略記する場合がある)113gを得た。IRを測定した結果、1736cm−1のエステル由来のピークが見られた。また、GPCにより、重量平均分子量Mwは586,800、分子量分布Mw/Mnは1.7であった。
【0092】
<合成例B 重合部位を有する架橋剤の合成>
<<合成例B−1 架橋剤B−1の調製>>
20L反応槽に、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(三井化学社製タケネート600)2.80kgを入れ、窒素気流下で攪拌しながら80℃に昇温した。
ポリカーボネートジオール(ポリアルキレンカーボネートジオール(1,5-ペンタンジオール及び/又は1,6-ヘキサンジオールを繰返し単位とするポリアルキレンポリカーボネート)96wt%以上、1,5-ペンタンジオール2wt%以下、1,6-ヘキサンジオール2wt%以下の組成からなるポリカーボネート)、デュラノール(登録商標)T−5650J(旭化成ケミカルズ株式会社製、Mn:800;1,5-ペンタンジオール及び/又は1,6-ヘキサンジオールを繰返し単位とする場合、該繰返し単位が6〜7。以降、単に「ポリカーボネートジオール デュラノール(登録商標)T5650J」と略記する)4.98kgを70℃に温め、上記反応槽へ、4時間かけてゆっくりと滴下した後、更に3時間攪拌して、両末端にイソシアネート基変性したポリカーボネートジオール及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを有する架橋剤B−1(7.78kg)を得た。
【0093】
<<合成例B−2 架橋剤B−2の調製>>
20L反応槽に、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(三井化学社製タケネート600)3.00kgを入れ、窒素気流下で攪拌しながら80℃に昇温した。
ポリカーボネートジオール(1,5-ペンタンジオール及び/又は1,6-ヘキサンジオールを繰返し単位とするポリアルキレンカーボネートジオール96wt%以上、1,5-ペンタンジオール2wt%以下、1,6-ヘキサンジオール2wt%以下の組成からなるポリカーボネート)、デュラノール(登録商標)T−5650E(旭化成ケミカルズ株式会社製、Mn:500;1,5-ペンタンジオール及び/又は1,6-ヘキサンジオールを繰返し単位とする場合、該繰返し単位が4〜5。以降、単に「ポリカーボネートジオール デュラノール(登録商標)T5650E」と略記する)3.32kgを70℃に温め、上記反応槽へ、2時間かけてゆっくりと滴下した後、更に3時間攪拌して、両末端にイソシアネート基変性したポリカーボネートジオール及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを有する架橋剤B−2(6.32kg)を得た。
【0094】
<<合成例B−3 架橋剤B−3の調製>>
窒素雰囲気下、80℃で、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(三井化学社製タケネート600)198mlを激しく攪拌した。
これとは別に、ポリカーボネートジオール デュラノール(登録商標)T5650J 300gをトルエン300mlに溶解させた溶液を準備した。この溶液を、タケネート600に、ゆっくりと滴下した後、2時間攪拌した。反応後、減圧下で溶媒を除去して、両末端にイソシアネート基変性したポリカーボネートジオール及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを有する架橋剤B−3(517g)を得た。
【0095】
<<合成例B−4 架橋剤B−4の調製>>
窒素雰囲気下、80℃で、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(三井化学社製タケネート600)168mlを激しく攪拌した。
これとは別に、トリオール型ポリプロピレングリコール(Mn:700,和光純薬。プロピレングリコールの繰返し単位が12〜13)150gをトルエン450mlに溶解させた溶液を準備した。この溶液を、タケネート600に、ゆっくりと滴下した後、2時間攪拌した。反応後、減圧下で溶媒を除去して、ポリプロピレンの3つの末端がイソシアネート基変性したもの及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを有する架橋剤B−4(334g)を得た。
【0096】
<合成例C ブロック化架橋剤の調製>>
<<合成例C−1 架橋剤C−1の調製>>
200L反応槽に架橋剤B−1(77.78kg)を入れ、窒素気流下で攪拌しながら100℃に昇温した。これにε−カプロラクタム(20.38kg)を入れて6時間攪拌して、ポリカーボネートの両末端のイソシアネート基をε−カプロラクタムで保護した架橋剤C−1を得た。FT−IRで測定した結果、2250cm−1付近におけるイソシアネート基由来のピークが消失していることから、イソシアネート基が保護されたことを確認した。
【0097】
<<合成例C−2 架橋剤C−2の調製>>
20L反応槽に架橋剤B−2(6.32kg)を入れ、窒素気流下で攪拌しながら100℃に昇温した。これにε-カプロラクタム(1.99kg)を入れて6時間攪拌して、ポリカーボネートの両末端のイソシアネート基をε−カプロラクタムで保護した架橋剤C−2を得た。FT−IRで測定した結果、2250cm−1付近におけるイソシアネート基由来のピークが消失していることから、イソシアネート基が保護されたことを確認した。
【実施例1】
【0098】
<合成例D 一液架橋用試料の調製>
<<合成例D−1 一液架橋用試料D−1の調製>>
架橋剤C−1(4.6kg)、ポリカーボネートジオール デュラノール(登録商標)T5650J(2.94kg)、合成例A−2で得られたHAPR−g−PCL(3.22kg)、脱保護用触媒:ジラウリン酸ジブチル錫(1.1g)、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール(BASF社製、Irganox1726)(211g)を反応槽に入れて80℃に昇温し、攪拌して均一溶液とした後、減圧下で脱泡して一液架橋用試料D−1を得た。
得られた一液架橋用試料D−1は、室温下において、90日以上、安定して存在した。
【実施例2】
【0099】
<<合成例D−2 一液架橋用試料D−2の調製>>
架橋剤C−2(8.31kg)、ポリカーボネートジオール デュラノール(登録商標)T5650E(6.69kg)、合成例A−2で得られたHAPR−g−PCL(3kg)、脱保護用触媒:ジラウリン酸ジブチル錫(5.2g)、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール(BASF社製、Irganox1726)(180g)を反応槽に入れて80℃に昇温し、攪拌して均一溶液とした後、減圧下で脱泡して一液架橋用試料D−2を得た。
得られた一液架橋用試料D−2は、室温下において、90日以上、安定して存在した。
【実施例3】
【0100】
<合成例E 架橋物の調製>
<<合成例E−1 架橋物E−1の調製>>
一液架橋用試料D−1を80℃で脱泡した後、テフロン(登録商標)モールドに入れて150℃のオーブン内で5時間、反応を行い、架橋物E−1を得た。
得られた架橋物E−1は、赤外分光法により、HAPR35−g−PCLのOH基に由来する3450cm−1付近でのピークの減少から、架橋剤B−1及び/又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアネート基とHAPR35−g−PCLのOH基とが反応し、架橋が形成されたことを確認した。
【実施例4】
【0101】
<<合成例E−2 架橋物E−2の調製>>
一液架橋用試料D−2を80℃で脱泡した後、テフロン(登録商標)モールドに入れて150℃のオーブン内で5時間、反応を行い、架橋物E−2を得た。
得られた架橋物E−2は、架橋物E−1と同様に、赤外分光法により、架橋剤B−2及び/又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアネート基とHAPR35−g−PCLのOH基とが反応し、架橋が形成されたことを確認した。
【実施例5】
【0102】
<<合成例E−3 架橋物E−3の調製>>
合成例A−2で得られたHAPR−g−PCL(10g)、ポリカーボネートジオール デュラノール(登録商標)T5650J(5.35g)、架橋剤B−3(4.63g)、架橋剤B−4(3.55g)、トルエン(25g)、ジラウリン酸ジブチル錫(8mg)を混合して均一溶液とした後、脱泡してテフロン(登録商標)モールドに入れて40℃のオーブン内で20時間、反応を行い、得られた反応物を減圧下で乾燥して架橋物E−3を得た。
得られた架橋物E−3は、架橋物E−1及びE−2と同様に、赤外分光法により、架橋剤B−3及び/又はB−4及び/又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアネート基とHAPR35−g−PCLのOH基とが反応し、架橋が形成されたことを確認した。
【実施例6】
【0103】
架橋物E−1〜E−3について、圧縮永久歪、応力緩和、及びヒステリシスロスを測定した。その結果を表1に示す。なお、各々の測定は、以下にしたがった。
<圧縮永久歪の測定>
上述したように、JIS K6301に準拠して、70℃×24時間、圧縮率25%で測定した。
<応力緩和の測定>
上述したように、JIS K6263に準拠して、JIS短冊3号試験片を用いて、40℃×72時間で測定した。
<ヒステリシスロスの測定>
JISダンベル状7号試験片を用いて、引張速度0.2mm/sで10サイクル測定し、2〜10のヒステリシスロスの平均で算出した。なお、各ヒステリシスロスの値は、上述したように測定した。
【0104】
表1から、本願の架橋物は、圧縮永久歪、応力緩和、及びヒステリシスロスのうちのいずれか1つが、低い値を示すことがわかる。
特に、架橋物E−1は、圧縮永久歪、応力緩和、及びヒステリシスロスの3種全てにおいて、低い値を示すことがわかる。
また、架橋物E−2は、圧縮永久歪及びヒステリシスロスの2種において、低い値を示すことがわかる。
さらに、架橋物E−3は、応力緩和及びヒステリシスロスの2種において、低い値を示すことがわかる。
【0105】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリロタキサン及び第2のポリロタキサンを有する材料であって、
前記第1のポリロタキサンは、第1の環状分子の開口部が第1の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第1の擬ポリロタキサンの両端に前記第1の環状分子が脱離しないように第1の封鎖基を配置してなり、
前記第2のポリロタキサンは、第2の環状分子の開口部が第2の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第2の擬ポリロタキサンの両端に前記第2の環状分子が脱離しないように第2の封鎖基を配置してなり、
該第1及び第2のポリロタキサンは前記第1及び第2の環状分子を介して架橋してなり、
該材料が溶媒フリーであり、
前記材料は、
X)圧縮永久歪が10%以下;
Y)引張応力緩和が15%以下;及び
Z)ヒステリシスロスが25%以下;
からなる群から選ばれる少なくとも1種の特性を有する、上記材料。
【請求項2】
前記架橋において、前記第1及び第2の環状分子間に、繰返し単位を3以上有する重合体部位を有する請求項1記載の材料。
【請求項3】
前記重合体部位の繰返し単位は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート又はポリエン、もしくはそれらの共重合体である請求項2記載の材料。
【請求項4】
前記重合体部位が数平均分子量300以上10000以下である請求項2又は3記載の材料。
【請求項5】
前記架橋において、前記第1及び第2の環状分子間に、数平均分子量300以上10000以下である重合体部位を有する請求項1〜3のいずれか1項記載の材料。
【請求項6】
前記第1及び第2の環状分子がそれぞれ第1及び第2の活性基を有し、
前記重合体部位の両端にそれぞれ第1及び第2の反応基を有し、
前記第1の活性基と前記第1の反応基とから結合が形成され、前記第2の活性基と前記第2の反応基とから結合が形成され、前記架橋が形成される請求項2〜5のいずれか1項記載の材料。
【請求項7】
第1のポリロタキサン及び第2のポリロタキサンを有し、該第1及び第2のポリロタキサンは架橋してなり、且つ溶媒フリーである材料であって、該材料が、
X)圧縮永久歪が10%以下;
Y)引張応力緩和が15%以下;及び
Z)ヒステリシスロスが25%以下;
からなる群から選ばれる少なくとも1種の特性を有する材料の製造方法であって、
a)第1の環状分子の開口部が第1の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第1の擬ポリロタキサンの両端に前記第1の環状分子が脱離しないように第1の封鎖基を配置してなる前記第1のポリロタキサンを準備する工程;
b)第2の環状分子の開口部が第2の直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる第2の擬ポリロタキサンの両端に前記第2の環状分子が脱離しないように第2の封鎖基を配置してなる前記第2のポリロタキサンを準備する工程;
c)重合体部位を有する第1の架橋化合物を準備する工程;及び
d)前記第1及び第2のポリロタキサン、並びに前記第1の架橋化合物を有する架橋前駆体を反応させて、前記第1及び第2のポリロタキサンを、前記重合体部位を介して架橋させる工程;
を有することにより、前記材料を得る、上記方法。
【請求項8】
前記重合体部位は、繰返し単位を3以上有する請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記繰返し単位は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート又はポリエン、もしくはそれらの共重合体である請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記重合体部位は、数平均分子量300以上10000以下である請求項7〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記第1の架橋化合物が、
c)−1)前記重合体部位を得る工程;及び
c)−2)前記重合体部位の両端にそれぞれ第1及び第2の反応基を設ける工程;
を有して得られ、
前記第1及び第2の環状分子がそれぞれ第1及び第2の活性基を有し、
前記第1の活性基と前記第1の反応基とから結合が形成され、前記第2の活性基と前記第2の反応基とから結合が形成され、前記架橋が形成される請求項7〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記架橋前駆体が、少なくとも第3及び第4の反応基を有する第2の架橋化合物を有し、
前記第1の架橋化合物は、前記重合体部位の両端にそれぞれ第1及び第2の反応基を有し、
前記第1及び第2の環状分子がそれぞれ第1及び第2の活性基を有し、
前記第1の活性基と前記第1の反応基とから結合が形成され、前記第2の活性基と前記第2の反応基とから結合が形成され、前記第1及び第2のポリロタキサンが、前記重合体部位を介して架橋され、かつ
前記第1の活性基と前記第3の反応基とから結合が形成され、前記第2の活性基と前記第4の反応基とから結合が形成され、前記第1及び第2のポリロタキサンが、前記第2の架橋化合物を介して架橋される、請求項7〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記第1の架橋化合物が、
c)−1)繰返し単位を3以上有する重合体部位を得る工程;
c)−2)前記重合体部位の両端にそれぞれ第1及び第2の反応基を設ける工程;及び
c)−3)前記第1及び第2の反応基をそれぞれ保護する第1及び第2の保護基を設ける工程;
を有して得られ、
前記第1及び第2の環状分子がそれぞれ第1及び第2の活性基を有し、
前記架橋前駆体の前記反応の際に、第1及び第2の保護基が脱保護され、
前記第1の活性基と前記第1の反応基とから結合が形成され、前記第2の活性基と前記第2の反応基とから結合が形成され、前記第1及び第2のポリロタキサンが、前記重合体部位を介して架橋される請求項7〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記第2の架橋化合物が、
e)前記第3及び第4の反応基をそれぞれ保護する第3及び第4の保護基を設ける工程;
を有して得られ、
前記架橋前駆体の前記反応の際に、第3及び第4の保護基が脱保護され、
前記第1の活性基と前記第1の反応基とから結合が形成され、前記第2の活性基と前記第2の反応基とから結合が形成され、前記第1及び第2のポリロタキサンが、前記重合体部位を介して架橋され、かつ
前記第1の活性基と前記第3の反応基とから結合が形成され、前記第2の活性基と前記第4の反応基とから結合が形成され、前記第1及び第2のポリロタキサンが、前記第2の架橋化合物を介して架橋される、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
I)環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に前記環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるポリロタキサン;及び
II)第1の重合体部位を有する第1の架橋化合物であって、該第1の重合体部位の両末端に、第1及び第2の反応基を有し且つ該第1及び第2の反応基を保護する第1及び第2の保護基を有する第1の架橋化合物;
を有する組成物。
【請求項16】
さらに、
III)少なくとも第3及び第4の反応基を有し且つ該第3及び第4の反応基を保護する第3及び第4の保護基を有する第2の架橋化合物;
を有する請求項15記載の組成物。
【請求項17】
A) I)環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両端に前記環状分子が脱離しないように封鎖基を配置してなるポリロタキサン;を準備する工程;
B) II)第1の重合体部位を有する第1の架橋化合物であって、該第1の重合体部位の両末端に、第1及び第2の反応基を有し且つ該第1及び第2の反応基を保護する第1及び第2の保護基を有する第1の架橋化合物;を準備する工程;及び
C) 前記I)ポリロタキサン;及び前記II)第1の架橋化合物;を混合する工程;
を有して、組成物を得る、組成物の製造方法。
【請求項18】
さらに、
D) III)少なくとも第3及び第4の反応基を有し且つ該第3及び第4の反応基を保護する第3及び第4の保護基を有する第2の架橋化合物;を準備する工程;
を有し、
前記C)工程において、前記I)ポリロタキサン;前記II)第1の架橋化合物;及び前記III)第2の架橋化合物;を混合する、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−241401(P2011−241401A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−120522(P2011−120522)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(505136963)アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】