説明

架橋剤およびそれを用いた吸水性樹脂

【課題】エポキシ基を有する架橋剤とほぼ同等の優れた吸水性を提供し、かつ皮膚刺激性の問題を回避し得る、架橋剤およびそれを用いた吸水性樹脂を提供すること。
【解決手段】架橋剤およびそれを用いた吸水性樹脂が開示されている。本発明の架橋剤は、エポキシ基を有することなく、その構造内に少なくとも2つのヒドロキシエステル単位を有する。本発明の架橋剤を用いて得られた吸水性樹脂は、皮膚刺激性の問題を起こすことなく優れた吸水性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋剤およびそれを用いた吸水性樹脂に関する。より詳細には、本発明は、吸水性樹脂を製造するにあたり、優れた吸水性を提供しかつ皮膚刺激性に対する問題を回避し得る、架橋剤およびそれを用いた吸水性樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙オムツおよび生理用ナプキンに代表される、いわゆる失禁パットのような衛生用品には、体液を吸収させることを目的として吸水性樹脂が汎用されている。吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル共重合体、アクリルアミド共重合体のような親水性樹脂の架橋物、ケン化物または加水分解物が挙げられる。
【0003】
衛生用品において、これら吸水性樹脂は、体液中の水性の液体に接した際に、優れた吸水量、吸収速度、通液性、膨潤ゲルのゲル強度、液体を含んだ基材から水を吸い上げるときの吸引力などの点で優れた特性を有することが必要である。
【0004】
しかし、上記吸水性樹脂においては、これらの特性間の関係は必ずしも正の相関関係を示さない。例えば、従来の吸水性樹脂においては無加圧下の吸収倍率が高いものほど加圧下の吸収特性が低下するという問題があった。
【0005】
吸水性樹脂の特性をバランス良く改良する方法として吸水性樹脂の表面近傍を架橋する技術が知られている。このような技術の例としては、架橋剤として、多価アルコールを用いる方法(特許文献1および2);多価グリシジル化合物、多価アジリジン化合物、多価アミン化合物および/または多価イソシアネート化合物を用いる方法(特許文献3);グリオキシサールを用いる方法(特許文献4);多価金属を用いる方法(特許文献5〜7);シランカップリング剤を用いる方法(特許文献8〜10);ならびにアルキレンカーボネートを用いる方法(特許文献11)が挙げられる。
【0006】
また、架橋剤の混合または架橋反応時に架橋剤の分散性を向上させる目的で、第三物質として不活性無機粉末を存在させる方法(特許文献12および13);二価アルコールを存在させる方法(特許文献14);水とエーテル化合物とを存在させる方法(特許文献15);一価アルコールのアルキレンオキサイド付加物、有機酸塩、ラクタム等を存在させる方法(特許文献16);リン酸を存在させる方法(特許文献17)も知られている。
【0007】
しかし、従来の吸水性樹脂の表面近傍を架橋する技術では、最近の高度化された吸水性樹脂の要求性能に十分対応できないという問題があった。例えば、近年、衛生用品においては薄型化が図られる傾向にある。そのため、1つ当たりの衛生用品に対しては、吸収体中の吸水性樹脂濃度が高くなる。そこで、吸水性樹脂を多量(つまり高濃度)に含有する吸収体において、該吸水性樹脂に所望される特性としては、無加圧下での吸収倍率と高加圧下での吸収倍率とのバランスが優れていることが必要とされる。
【0008】
さらに、使用する架橋剤自体にも安全性の問題がある。
【0009】
従来、吸水性樹脂の製造においては、エポキシ基の反応性の高い基を有する架橋剤の使用が知られている。しかし、このタイプの架橋剤は皮膚刺激性を有し、作業環境の問題に加え、衛生用品への応用を考えるとその樹脂中の残存量等のコントロールを厳密に行う必要があった。また、このタイプの架橋剤の使用においては、残存量低減のためにもプロセス上煩雑な操作が必要であった。
【0010】
他方、吸水性樹脂の製造においては、皮膚刺激等の問題に対して、比較的安全性の高い多価アルコールを架橋剤として使用することも知られている。しかし、このタイプの架橋剤は、一般に反応性が低いため、吸水性樹脂を高温下にて製造する必要がある。その結果、架橋反応時に吸水性樹脂の劣化または物性の低下を引き起こす場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭58−180233号公報
【特許文献2】特開昭61−16903号公報
【特許文献3】特開昭59−189103号公報
【特許文献4】特開昭52−117393号公報
【特許文献5】特開昭51−136588号公報
【特許文献6】特開昭61−257235号公報
【特許文献7】特開昭62−7745号公報
【特許文献8】特開昭61−211305号公報
【特許文献9】特開昭61−252212号公報
【特許文献10】特開昭61−264006号公報
【特許文献11】独国特許第4020780号公報
【特許文献12】特開昭60−163956号公報
【特許文献13】特開昭60−255814号公報
【特許文献14】特開平1−292004号公報
【特許文献15】特開平2−153903号公報
【特許文献16】欧州特許第555692号公報
【特許文献17】特表平8−508517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、エポキシ基を有する架橋剤とほぼ同等の優れた吸水性を提供し、かつ皮膚刺激性の問題を回避し得る、架橋剤およびそれを用いた吸水性樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、架橋剤であって、以下の一般式(I)で表される化合物:
【0014】
【化1】

【0015】
ここで、nは2から6の整数であり;Rは、1個から20個の炭素原子を有する、水酸基で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状のn価の炭化水素基であり;そしてRからRは、それぞれ独立して、−H、−CHまたは−CHOHである;を含有する、架橋剤である。
【0016】
好ましい実施形態においては、上記炭化水素基は、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、および脂環式炭化水素基からなる群より選択される基である。
【0017】
好ましい実施形態においては、上記一般式(I)で表される化合物のうち、nが2から4の整数であり、かつRが6個の炭素原子を有する水酸基で置換されていてもよいn価の芳香族炭化水素基である、化合物を含有する。
【0018】
好ましい実施形態においては、上記一般式(I)で表される化合物のうち、nが2から6の整数であり、かつRが1個から20個の炭素原子を有する水酸基で置換されていてもよいn価の脂肪族炭化水素基である、化合物を含有する。
【0019】
好ましい実施形態においては、上記化合物のRは、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−CH(OH)CH−、−CH(OH)CH(OH)−、
【0020】
【化2】

【0021】
からなる群より選択される基である。
【0022】
好ましい実施形態においては、上記化合物は、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミド、N,N’−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)エタンジアミド、N,N’−ビス[2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]エタンジアミド、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミド、N,N’−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)プロパンジアミド、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブタンジアミド、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペンタンジアミド、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキサンジアミド、2−ヒドロキシ−N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブタンジアミド、2,3−ジヒドロキシ−N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブタンジアミド、およびN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−1,4−ベンゼンジカルボキシアミドからなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
【0023】
本発明はまた、架橋剤であって、以下の一般式(I’)で表される化合物:
【0024】
【化3】

【0025】
ここで、RからRならびにR2’からR5’は、それぞれ独立して、−H、−CHまたは−CHOHである;を含有する、架橋剤である。
【0026】
本発明はまた、架橋剤であって、以下の一般式(II)で表される化合物:
【0027】
【化4】

【0028】
ここで、nは2から6の整数であり;Rは、1個から20個の炭素原子を有する、水酸基で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状のn価の炭化水素基であり;そしてRからRは、それぞれ独立して、−H、−CHまたは−CHOHである;を含有する、架橋剤である。
【0029】
好ましい実施形態においては、上記炭化水素基は、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、および脂環式炭化水素基からなる群より選択される基である。
【0030】
好ましい実施形態においては、上記一般式(II)で表される化合物のうち、nが2から4の整数であり、かつRが6個の炭素原子を有する、水酸基で置換されていてもよいn価の芳香族炭化水素基である、化合物を含有する。
【0031】
好ましい実施形態においては、上記一般式(II)で表される化合物のうち、nが2から6の整数であり、かつRが1個から20個の炭素原子を有する水酸基で置換されていてもよいn価の脂肪族炭化水素基である、化合物を含有する。
【0032】
好ましい実施形態においては、上記化合物のRは、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−CH(OH)CH−、−CH(OH)CH(OH)−、
【0033】
【化5】

【0034】
からなる群より選択される基である。
【0035】
好ましい実施形態においては、上記化合物は、4,4’,5,5’−テトラヒドロ−4,4,4’,4’−テトラメチル−2,2’−ビスオキサゾール、2,2’−(1,3−プロパンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]、2,2’−(1,4−ブタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]、および2,2’−(1,2−エタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0036】
本発明はまた、親水性樹脂を架橋して得られる吸水性樹脂であって、該架橋が以下の一般式(III)で表される構造:
【0037】
【化6】

【0038】
(ここで、nは2から6の整数であり;Rは、1個から20個の炭素原子を有する、水酸基で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状のn価の炭化水素基であり;そしてRからRは、それぞれ独立して、−H、−CHまたは−CHOHである)を有する、吸水性樹脂である。
【0039】
好ましい実施形態においては、上記炭化水素基は、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、および脂環式炭化水素基からなる群より選択される基である。
【0040】
好ましい実施形態においては、上記架橋は、nが2から4の整数であり、かつRが6個の炭素原子を有する、水酸基で置換されていてもよいn価の芳香族炭化水素基である、構造を有する。
【0041】
好ましい実施形態においては、上記架橋は、nが2から6の整数であり、かつRが1個から20個の炭素原子を有する水酸基で置換されていてもよいn価の脂肪族炭化水素基である、構造を有する。
【0042】
好ましい実施形態においては、Rが、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−CH(OH)CH−、−CH(OH)CH(OH)−、
【0043】
【化7】

【0044】
からなる群より選択される基である。
【0045】
好ましい実施形態においては、上記親水性樹脂は、変性ポリアクリル酸およびその誘導体、変性ポリ乳酸およびその誘導体、変性ポリグルタミン酸およびその誘導体、ならびに変性ポリアスパラギン酸およびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である。
【0046】
本発明はまた、親水性樹脂を架橋して得られる吸水性樹脂であって、該架橋が以下の一般式(III’)で表される構造:
【0047】
【化8】

【0048】
(ここで、RからRならびにR2’からR5’は、それぞれ独立して、−H、−CHまたは−CHOHである)を有する、吸水性樹脂である。
【0049】
好ましい実施形態においては、上記親水性樹脂は、変性ポリアクリル酸およびその誘導体、変性ポリ乳酸およびその誘導体、変性ポリグルタミン酸およびその誘導体、ならびに変性ポリアスパラギン酸およびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である。
【0050】
本発明はまた、上記一般式(I)で表される化合物を含有する架橋剤で架橋して得られる、吸水性樹脂である。
【0051】
本発明はまた、上記一般式(I’)で表される化合物を含有する架橋剤で架橋して得られる、吸水性樹脂である。
【0052】
本発明はまた、上記一般式(II’)で表される化合物を含有する架橋剤で架橋して得られる、吸水性樹脂である。
【0053】
本発明はまた、吸水性樹脂を製造するための方法であって、親水性樹脂と、上記一般式(I)で表される化合物を含有する架橋剤とを混合する工程;および該混合物を加熱する工程;を包含する、方法である。
【0054】
本発明はまた、吸水性樹脂を製造するための方法であって、親水性樹脂と、上記一般式(I)で表される化合物を含有する架橋剤とを混合する工程;および該混合物を加熱する工程;を包含する、方法である。
【0055】
本発明はまた、吸水性樹脂を製造するための方法であって、親水性樹脂と、上記一般式(II)で表される化合物を含有する架橋剤とを混合する工程;および該混合物を加熱する工程;を包含する、方法である。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、従来のアルコール系架橋剤よりも優れ、かつ従来のエポキシ基を有する架橋剤とほぼ同等の吸水性を提供し得る吸水性樹脂用架橋剤を得ることができる。本発明の吸水性樹脂用架橋剤は、その構造内にエポキシ基を含有していないため、吸水性樹脂の製造時および該樹脂を吸水剤として使用した失禁パットのような衛生用品の装着時において皮膚刺激等の問題を回避し得る。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0058】
本発明の第一の架橋剤は、以下の一般式(I)で表される化合物を含有する:
【0059】
【化9】

【0060】
ここで、nは2から6の整数であり;Rは、1個〜20個の炭素原子を有する、水酸基で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状のn価の炭化水素基であり;そしてRからRは、それぞれ独立して、−H、−CHまたは−CHOHである。ここで、本明細書中に用いられる用語「水酸基で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状のn価の炭化水素基」とは、直鎖状、分岐鎖状または環状でなるn価の炭化水素基であって、炭素原子と水素原子とのみから構成される基、および当該炭化水素基内の水素原子の一部が水酸基で置換されている基を包含していう。
【0061】
上記一般式(I)中のRで表される炭化水素基の例としては、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、および脂環式炭化水素基が挙げられ、より好ましくは、6個〜20個の炭素原子を含有する芳香族炭化水素基、1個〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、および3個から20個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基が挙げられる。
【0062】
また、上記一般式(I)で表される化合物において、好ましいRの例としては、6個〜20個、好ましくは6個〜15個の炭素原子を有し、かつ未置換のまたは1個〜2個の水酸基で置換されていてもよいn価の芳香族炭化水素基;ならびに1個〜20個、好ましくは1個〜10個の炭素原子を有し、かつ未置換のまたは1個〜4個の水酸基で置換されていてもよいn価の脂肪族炭化水素基;が挙げられる。さらに好ましいRの例としては、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−CH(OH)CH−、−CH(OH)CH(OH)−、
【0063】
【化10】

【0064】
が挙げられる。
【0065】
本発明においては、上記一般式(I)で表される化合物のうち、当該化合物自体の入手および/または合成が容易である点から、上記一般式(I)におけるnが2から4の整数であり、かつRが6個の炭素原子を有する、水酸基で置換されていてもよいn価の芳香族炭化水素基を有する化合物;ならびに上記一般式(I)におけるnが2から6の整数であり、かつRが1個〜20個の炭素原子を有する、水酸基で置換されていてもよいn価の脂肪族炭化水素基を有する化合物;がさらに好ましい。これらさらに好ましい化合物の例としては、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミド、N,N’−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)エタンジアミド、N,N’−ビス[2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]エタンジアミド、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミド、N,N’−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)プロパンジアミド、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブタンジアミド、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペンタンジアミド、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキサンジアミド、2−ヒドロキシ−N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブタンジアミド、2,3−ジヒドロキシ−N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブタンジアミド、およびN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−1,4−ベンゼンジカルボキシアミドが挙げられる。特にN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブタンジアミドが好ましい。
【0066】
これら化合物は、市販により入手可能であるか、または当業者によって容易に合成され得る。
【0067】
なお、本発明の第一架橋剤においては、上記一般式(I)で表される化合物を、1種類単独または複数の種類を組合わせて、あるいは後述する一般式(I’)で表される化合物および/または一般式(II)で表される化合物と組合わせて、含有していてもよい。複数種の当該化合物を組合わせて使用する場合、それらの組成比は当業者により適切に選択され得る。
【0068】
本発明の第二の架橋剤は、以下の一般式(I’)で表される化合物を含有する:
【0069】
【化11】

【0070】
ここで、RからRならびにR2’からR5’は、それぞれ独立して、−H、−CHまたは−CHOHである。このような一般式(I’)で表される化合物の例としては、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)シュウ酸アミド、N,N’−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)シュウ酸アミド、およびN,N’−ビス(トリヒドロキシメチルメチル)シュウ酸アミドが挙げられる。これら化合物は、市販により入手可能であるか、または当業者によって容易に合成され得る。特に、後述する親水性樹脂との間で優れた架橋密度を提供し、かつ化合物自体の入手および/または合成が比較的容易である点から、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)シュウ酸アミドが好ましい。
【0071】
なお、本発明の第二架橋剤においては、上記一般式(I’)で表される化合物を、1種類単独または複数の種類を組合わせて、あるいは上記一般式(I)で表される化合物および/または後述する一般式(II)で表される化合物と組合わせて、含有していてもよい。複数種の当該化合物を組合わせて使用する場合、それらの組成比は当業者により適切に選択され得る。
【0072】
本発明の第三の架橋剤は、以下の一般式(II)で表される化合物を含有する:
【0073】
【化12】

【0074】
ここで、nは2から6の整数であり;Rは、1個から20個の炭素原子を有する、水酸基で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状のn価の炭化水素基であり;そしてRからRは、それぞれ独立して、−H、−CHまたは−CHOHである。
【0075】
上記一般式(II)中のRで表される炭化水素基の例としては、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、および脂環式炭化水素基が挙げられ、より好ましくは、6個〜20個の炭素原子を含有する芳香族炭化水素基、1個〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、および3個から20個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基が挙げられる。
【0076】
また、上記一般式(II)で表される化合物において、好ましいRの例としては、6個〜20個、好ましくは6個〜15個の炭素原子を有し、かつ未置換のまたは1個〜2個の水酸基で置換されていてもよいn価の芳香族炭化水素基;ならびに1個〜20個、好ましくは1個〜10個の炭素原子を有し、かつ未置換のまたは1個〜4個の水酸基で置換されていてもよいn価の脂肪族炭化水素基;が挙げられる。さらに好ましいRの例としては、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−CH(OH)CH−、−CH(OH)CH(OH)−、
【0077】
【化13】

【0078】
が挙げられる。
【0079】
本発明においては、上記一般式(II)で表される化合物のうち、当該化合物自体の入手および/または合成が容易である点から、上記一般式(II)におけるnが2から4の整数であり、かつRが6個の炭素原子を有する、水酸基で置換されていてもよいn価の芳香族炭化水素基を有する化合物;ならびに上記一般式(II)におけるnが2から6の整数であり、かつRが1個〜20個の炭素原子を有する、水酸基で置換されていてもよいn価の脂肪族炭化水素基を有する化合物;がさらに好ましい。
【0080】
これらさらに好ましい化合物の例としては、4,4’,5,5’−テトラヒドロ−4,4,4’,4’−テトラメチル−2,2’−ビスオキサゾール、2,2’−(1,3−プロパンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]、2,2’−(1,4−ブタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]、および2,2’−(1,2−エタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]が挙げられる。特に2,2’−(1,4−ブタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]が好ましい。
【0081】
これら化合物は、市販により入手可能であるか、または当業者によって容易に合成され得る。
【0082】
なお、本発明の第三架橋剤においては、上記一般式(II)で表される化合物を、1種類単独または複数の種類を組合わせて、あるいは上記一般式(I)で表される化合物および/または一般式(I’)で表される化合物と組合わせて、含有していてもよい。複数種の当該化合物を組合わせて使用する場合、それらの組成比は当業者により適切に選択され得る。
【0083】
上記のように、一般式(I)で表される化合物、一般式(I’)で表される化合物および一般式(II)で表される化合物はいずれも、その構造内に少なくとも2つのヒドロキシエステルアミドユニット、または開環によりヒドロキシエステルアミドユニットを形成し得るオキサゾリンユニットを有する。これらユニットにより、本発明の吸水性樹脂用架橋剤は、後述する親水性樹脂内の少なくとも2つのカルボキシル基と反応し、該樹脂を架橋することができる。
【0084】
以下に本発明の吸水性樹脂について説明する。
【0085】
本発明の吸水性樹脂は、親水性樹脂を架橋して得られる吸水性樹脂であって、該架橋が以下の一般式(III)で表される構造:
【0086】
【化14】

【0087】
(ここで、nは2から6の整数であり;Rは、1個から20個の炭素原子を有する、水酸基で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状のn価の炭化水素基であり;そしてRからRは、それぞれ独立して、−H、−CHまたは−CHOHである)を有する。Rの好ましい例は、上記と同様である。
【0088】
あるいは、本発明の吸水性樹脂は、親水性樹脂を架橋して得られる吸水性樹脂であって、該架橋が以下の一般式(III’)で表される構造:
【0089】
【化15】

【0090】
(ここで、RからRならびにR2’からR5’は、それぞれ独立して、−H、−CHまたは−CHOHである)を有する。
【0091】
本発明の吸水性樹脂においては、上記一般式(III)で表される架橋構造と、一般式(III’)で表される架橋構造との一方あるいは両方のいずれが含まれていてもよい。
【0092】
本発明に用いられる親水性樹脂は、イオン交換水中において、重量換算で好ましくは50倍から1000倍の水を吸収しかつヒドロゲルを形成し得る、ポリマー鎖上にカルボキシル基を有する公知の樹脂である。このような親水性樹脂の例としては、ポリアクリル酸およびその誘導体、ポリ乳酸およびその誘導体、ポリグルタミン酸およびその誘導体、ポリアスパラギン酸およびその誘導体、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0093】
本発明に用いられる親水性樹脂はまた変性または未変性のいずれの樹脂であってもよい。ここで、本明細書中に用いられる用語「変性」とは、後述する他の架橋剤(内部架橋剤)により、すでに内部架橋された状態を指していう。本発明においては変性の親水性樹脂がより好ましい。このような変性の親水性樹脂の例としては、変性ポリアクリル酸およびその誘導体;変性ポリ乳酸およびその誘導体;変性ポリグルタミン酸およびその誘導体;変性ポリアスパラギン酸およびその誘導体;ならびにそれらの組合せが挙げられる。特に、吸水性樹脂への汎用性が高い点から変性ポリアクリル酸およびその誘導体が好ましい。
【0094】
ポリアクリル酸およびその誘導体は、代表的にはアクリル酸および/またはその塩(中和物)を主成分とする親水性単量体を重合することにより得ることができる。
【0095】
上記アクリル酸塩としては、アクリル酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられる。上記ポリアクリル酸およびその誘導体は、その構成単位として10モル%〜40モル%のアクリル酸および90モル%〜60モル%のアクリル酸塩(ただし、両者の合計量は100モル%とする)の範囲にあるものが好ましい。アクリル酸および/またはその誘導体を主成分とする親水性単量体を重合して親水性樹脂を得る際には、必要に応じて、これらアクリル酸またはその塩と併用して、アクリル酸以外の単量体を含有していてもよい。
【0096】
アクリル酸以外の単量体の種類は、特に限定されないが、具体的には、例えば、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸などのアニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジンなどのノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、およびこれらの四級塩のようなカチオン性不飽和単量体が挙げられる。これら単量体は、単独で用いてもよく、必要に応じて2種類以上を混合して用いてもよい。
【0097】
上記親水性樹脂において、アクリル酸以外の単量体を用いる場合には、このアクリル酸以外の単量体は、主成分として用いるアクリル酸および/またはその誘導体との合計量に対して、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下の割合で含有されている。上記アクリル酸以外の単量体をこのような範囲で用いることにより、得られる本発明の吸水性樹脂の吸水特性がより一層向上するとともに、吸水性樹脂をより一層安価に得ることができる。
【0098】
本発明に用いられる親水性樹脂として、例えば、上記アクリル酸および/またはその誘導体を主成分とする親水性単量体を重合するに際しては、バルク重合または沈殿重合を行うことが可能である。他方で、性能面で優れかつ重合の制御が容易である点から、上記親水性単量体の水溶液を用いる水溶液重合または逆相懸濁重合を行うことが好ましい。なお、上記親水性単量体の水溶液を用いる場合の該水溶液(以下、単量体水溶液と称する)中の単量体の濃度は、特に限定されないが、好ましくは10重量%〜70重量%の範囲内であり、より好ましくは20重量%〜40重量%の範囲内である。また、上記水溶液重合または逆相懸濁重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられる溶媒の種類は、特に限定されない。
【0099】
上記の重合を開始させる際には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)二塩酸塩などのラジカル重合開始剤を使用することができる。さらに、これら重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用することにより、両者を組み合わせたレドックス系開始剤として使用することもできる。上記の還元剤の例としては、亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムのような(重)亜硫酸(塩)、L−アスコルビン酸(塩)、第一鉄塩などの還元性金属(塩)、アミン類などが挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0100】
これら重合開始剤の使用量は、好ましくは0.001モル%〜2モル%、より好ましくは0.01モル%〜0.1モル%である。これら重合開始剤の使用量が0.001モル%未満の場合には、未反応の単量体が多くなるため、得られる吸水性樹脂中の残存単量体量が増加する恐れがある。一方、これら重合開始剤の使用量が2モル%を超えると、得られる吸水性樹脂中の水可溶成分量が増加する恐れがある。
【0101】
また、反応系に放射線、電子線、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより重合反応の開始を行ってもよい。なお、上記重合反応における反応温度は、特に限定されないが、好ましくは20℃〜90℃である。また、反応時間も特に限定されず、親水性単量体および重合開始剤の種類、反応温度などに応じて適宜設定され得る。
【0102】
本発明に用いられる親水性樹脂として変性の樹脂を用いる場合、一分子中に、2個以上の重合性不飽和基および/または2個以上の反応性基を有する内部架橋剤を共重合または反応させたものがさらに好ましい。これら内部架橋剤の具体例としては、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、およびグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0103】
これら内部架橋剤は、単独で用いてもよく、必要に応じて2種類以上を混合して用いてもよい。また、これら内部架橋剤は、反応系に一括添加してもよく、分割添加してもよい。2種類以上の内部架橋剤を使用する場合には、得られる親水性樹脂の吸水特性などを考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を必須に用いることが好ましい。
【0104】
これら内部架橋剤の使用量は、上記親水性単量体に対して、0.005モル%〜2モル%の範囲内であることが好ましく、0.01モル%〜1モル%の範囲内とすることがさらに好ましい。内部架橋剤の使用量が0.005モル%〜2モル%の範囲外である場合、親水性樹脂自体が満足し得る吸水特性を備えない恐れがある。
【0105】
上記内部架橋剤を用いて架橋構造を親水性樹脂内部に導入する場合には、上記内部架橋剤を、上記親水性単量体の重合時または重合後、あるいは重合または中和後に反応系に添加すればよい。なお、上記重合に際しては、反応系に、炭酸(水素)塩、二酸化炭素、アゾ化合物、不活性有機溶媒などの各種発泡剤;澱粉・セルロース、澱粉・セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体などの親水性高分子;各種界面活性剤;次亜燐酸(塩)などの連鎖移動剤を添加してもよい。
【0106】
本発明の吸水性樹脂は、上記一般式(III)で表される架橋構造および/または上記一般式(III’)で表される架橋構造を有することにより、その製造において、特に高温下での反応を必要とすることもない。また、その構造内にエポキシ基を有していないため、皮膚刺激性の問題も回避することができる。
【0107】
本発明の吸水性樹脂は以下のようにして製造される。
【0108】
まず、上記変性または未変性の親水性樹脂と、上記一般式(I)で表される化合物、上記一般式(I’)で表される化合物、および/または上記一般式(II)で表される化合物(本発明の架橋剤)とが混合される。
【0109】
親水性樹脂と架橋剤との混合比は、特に限定されず、当業者によって任意に設定され得る。
【0110】
具体的な例としては、内部架橋された(変性の)親水性樹脂を使用する場合(すなわち、本発明の架橋剤を表面架橋剤として使用する場合)、該親水性樹脂100重量部に対して本発明の架橋剤は、好ましくは 0.001重量部〜20重量部である。混合される本発明の架橋剤の量が0.001重量部モルを下回ると、得られる吸水性樹脂は充分な吸水性および吸水速度を有さない恐れがある。混合される本発明の架橋剤の量が20重量部を上回ると、吸水性樹脂中に未反応の架橋剤が多く残存する可能性があり経済性に劣る、および/または架橋密度が高くなりすぎて得られる樹脂が充分な吸水性および吸水速度を有さないなどの問題が発生する恐れがある。
【0111】
他方、本発明の架橋剤を内部架橋剤として使用する場合、未変性の親水性樹脂100重量部に対して本発明の架橋剤は、好ましくは0.005重量部〜10重量部であり、より好ましくは0.01重量部〜5重量部である。混合される本発明の架橋剤の量が0.005重量部を下回ると、得られる吸水性樹脂は充分な吸水性を有さない恐れがある。混合される本発明の架橋剤の量が10重量部を上回ると、吸水性樹脂中に未反応の架橋剤が多く残存する可能性があり経済性に劣る、および/または架橋密度が高くなりすぎて得られる樹脂が充分な吸水性および吸水速度を有さないなどの問題が発生する恐れがある。
【0112】
通常、親水性樹脂と本発明の架橋剤との混合には、例えば、円筒型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型混合機、粉砕型ニーダー等を用いて充分な攪拌が行われることが好ましい。充分な攪拌を行うことにより、親水性樹脂の各分子の間に、本発明の架橋剤が均一に分散するからである。
【0113】
さらに、本発明の架橋剤を用いて親水性樹脂を表面架橋する場合、上記混合は、水、親水性有機溶媒またはこれらの組合せでなる溶媒中で行われることが好ましい。具体的には、本発明の架橋剤を予めこの溶媒に溶解させ、次いで得られた溶液と親水性樹脂とが混合させる。このような混合において用いられる親水性有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコールおよびイソプロピルアルコールのような低級脂肪族アルコール類;アセトンのようなケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフランおよびメトキシ(ポリ)エチレングリコールのようなエーテル類;ならびにε−カプロラクタムおよびN,N−ジメチルホルムアミドのようなアミド類が挙げられる。
【0114】
上記親水性有機溶媒の量は、使用する親水性樹脂の種類、粒径、含水率などによって一概に限定されないが、親水性樹脂の固形分100重量部に対して好ましくは0.1重量部〜20重量部、より好ましくは0.5重量部〜10重量部の範囲である。
【0115】
混合後、親水性樹脂と本発明の架橋剤とを含有する混合物は加熱される。加熱温度は、特に限定されないが、好ましくは40℃〜250℃であり、より好ましくは70℃〜200℃である。加熱に要する時間もまた特に限定されないが、好ましくは0.2時間〜3時間である。
【0116】
上記加熱を行うことにより、本発明の架橋剤は、その構造内に含まれる少なくとも2つのヒドロキシエステルアミドユニットが親水性樹脂内のカルボキシル基と反応し、その結果、一般式(III)および/または(III’)で表される架橋構造を形成する。
【0117】
このようにして、一般式(III)および/または(III’)で表される架橋構造を有する本発明の吸水性樹脂が製造される。なお、本発明の吸水性樹脂においては、種々の機能を付与する目的で、消毒剤、消臭剤、抗菌剤、香料、各種の無機粉末、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、肥料、酸化剤、還元剤、水、および塩類などの他の添加剤を含有していてもよい。これら他の添加剤の添加量および添加の時期は当業者により適切に選択される。
【0118】
さらに本発明の吸水性樹脂においては、上記本発明の架橋剤とともに、当該架橋剤による表面架橋の効果を妨げない範囲で、従来より知られている他の表面架橋剤が併用されてもよい。このような他の表面架橋剤の例としては、多価アルコール化合物、多価アミン化合物、ポリイソシアネート化合物、多価オキサゾリン化合物、アルキレンカーボネート化合物、シランカップリング剤、多価金属化合物ならびにこれらの組合わせが挙げられる。さらに、人体等に悪影響を及ぼさない範囲であれば、さらにエポキシ化合物およびハロエポキシ化合物ならびにこれらの組合わせも併用されてもよい。
【0119】
このような多価アルコール化合物の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトールおよびソルビトール、ならびにそれらの組合わせが挙げられる。
【0120】
上記多価アミン化合物の例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびポリエチレンイミン、ならびにそれらの無機塩または有機塩(例えば、アジチニウム塩)と、それら組合わせとが挙げられる。
【0121】
上記ポリイソシアネート化合物の例としては、2,4−トリレンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート、ならびにそれらの組合わせが挙げられる。
【0122】
上記多価オキサゾリン化合物の例としては、1,2−エチレンビスオキサゾリンが挙げられる。
【0123】
上記アルキレンカーボネート化合物の例としては、1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オンおよび1,3−ジオキソバン−2−オン、ならびにそれらの組合わせが挙げられる。
【0124】
上記シランカップリング剤の例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよびγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ならびにそれらの組合わせが挙げられる。
【0125】
上記多価金属化合物の例としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄およびジルコニウムのような金属の水酸化物ならびに塩化物と、それらの組合わせとが挙げられる。
【0126】
上記エポキシ化合物の例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびグリシドール、ならびにそれらの組合わせが挙げられる。
【0127】
上記ハロエポキシ化合物の例としては、エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリンおよびα−メチルエピクロロヒドリン、ならびにそれらの多価アミン付加物(例えば、ハーキュレス社製カイメン(登録商標))と、それらの組合わせとが挙げられる。
【0128】
本発明の架橋剤と上記他の表面架橋剤とを併用する場合、その組成比は、本発明の架橋剤による表面架橋の効果を妨げない範囲で当業者によって適切に選択され得る。
【0129】
本発明の吸水性樹脂は、優れた吸水性を有する。さらに皮膚刺激性もないため、使用者は安心して使用することもできる。本発明の吸水性樹脂は、紙おむつおよび生理用ナプキンのような衛生用品の吸収剤として有用である。
【実施例】
【0130】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はそれら実施例に限定されるものではない。
【0131】
<製造例1:N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドの合成>
100mLのガラス製反応器に、13.4g(0.22モル)のアミノエタノールおよび30gのメタノールを仕込み、この溶液を室温で攪拌した。次いで、この溶液に11.8g(0.10モル)のシュウ酸ジメチルを徐々に滴下した。滴下後、溶液を室温で2時間攪拌した。さらに、この溶液に、30gのトルエンを添加し、メタノールを減圧下にて除去した。得られた結晶を濾取し、減圧乾燥させて、17.3gの白色結晶を得た。
【0132】
この白色結晶についてH−NMRによる分析を行った。H−NMR分析の結果を表1に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
この結果より、得られた白色結晶が標題化合物であることを確認した。
【0135】
<製造例2:N,N’−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)エタンジアミドの合成>
100mLのガラス製反応器に、9.8g(0.11モル)の2−アミノ−2−メチルプロパノールおよび30gのメタノールを仕込み、この溶液を室温で攪拌した。次いで、この溶液に5.9g(0.05モル)のシュウ酸ジメチルを徐々に滴下した。滴下後、溶液を室温で24時間攪拌した。さらに、この溶液に、30gのトルエンを添加し、メタノールを減圧下にて除去した。得られた結晶を濾取し、減圧乾燥させて、10.93gの白色結晶を得た。
【0136】
この白色結晶についてH−NMRによる分析を行った。H−NMR分析の結果を表2に示す。
【0137】
【表2】

【0138】
この結果より、得られた白色結晶が標題化合物であることを確認した。
【0139】
<製造例3:N,N’−ビス[2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]エタンジアミドの合成>
200mLのガラス製反応器に、11.5g(0.10モル)のトリスヒドロキシメチルアミノメタンおよび90gのメタノールを仕込み、この懸濁溶液を室温で攪拌した。次いで、この懸濁溶液に5.0g(0.04モル)のシュウ酸ジメチルを徐々に滴下した。滴下後、溶液を65℃で2時間攪拌した。得られた結晶を濾取し、減圧乾燥させて、12.07gの白色結晶を得た。
【0140】
この白色結晶についてH−NMRによる分析を行った。H−NMR分析の結果を表3に示す。
【0141】
【表3】

【0142】
この結果より、得られた白色結晶が標題化合物であることを確認した。
【0143】
<製造例4:N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミドの合成>
200mLのガラス製反応器に、20.0g(0.33モル)のアミノエタノール、40gのトルエンおよび40gのメタノールを仕込み、この溶液を室温で攪拌した。次いで、この溶液に20.0g(0.15モル)のマロン酸ジメチルを徐々に滴下した。滴下後、溶液を70℃で2時間攪拌した。さらに、メタノールおよびトルエン留去し、残渣に、20gのメタノールを添加して溶解し、さらにトルエン50gを加えた。得られた結晶を濾取し、減圧乾燥させて、26.0gの白色結晶を得た。
【0144】
この白色結晶についてH−NMRによる分析を行った。H−NMR分析の結果を表4に示す。
【0145】
【表4】

【0146】
この結果より、得られた白色結晶が標題化合物であることを確認した。
【0147】
<製造例5:N,N’−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)プロパンジアミドの合成>
200mLのガラス製反応器に、19.7g(0.22モル)の2−アミノ−2−メチルプロパノール、30gのトルエンおよび30gのメタノールを仕込み、この溶液を室温で攪拌した。次いで、この溶液に13.2g(0.10モル)のマロン酸ジメチルを徐々に滴下した。滴下後、溶液を65℃で2時間攪拌した。さらに、メタノールを留去し、得られた結晶を濾取し、減圧乾燥させて、22.4gの白色結晶を得た。
【0148】
この白色結晶についてH−NMRによる分析を行った。H−NMR分析の結果を表5に示す。
【0149】
【表5】

【0150】
この結果より、得られた白色結晶が標題化合物であることを確認した。
【0151】
<製造例6:N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブタンジアミドの合成>
200mLのガラス製反応器に、9.2g(0.15モル)のアミノエタノール、40gのメタノールおよび40gのトルエンを仕込み、この溶液を室温で攪拌した。次いで、この溶液に10.0g(0.07モル)のコハク酸ジメチルを徐々に滴下した。滴下後、65℃でメタノールを留去し、40gのトルエンを加えた。20gのイソプロピルアルコールを加え、さらに残留メタノールを留去した後、得られた結晶を濾取し、減圧乾燥させて、4.68gの白色結晶を得た。
【0152】
この白色結晶についてH−NMRによる分析を行った。H−NMR分析の結果を表6に示す。
【0153】
【表6】

【0154】
この結果より、得られた白色結晶が標題化合物であることを確認した。
【0155】
<製造例7:N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペンタンジアミドの合成>
200mLのガラス製反応器に、13.8g(0.23モル)のアミノエタノール、8gのメタノールおよび5gの水を仕込み、この溶液を室温で攪拌した。次いで、この溶液に16.0g(0.10モル)のグルタル酸ジメチルを徐々に滴下した。滴下後、65℃でメタノールを留去し、100gのトルエンを加えた。さらに残留メタノールを留去し、20gのイソプロピルアルコールを加え、冷却後、得られた結晶を濾取し、減圧乾燥させて、13.14gの白色結晶を得た。
【0156】
この白色結晶についてH−NMRによる分析を行った。H−NMR分析の結果を表7に示す。
【0157】
【表7】

【0158】
この結果より、得られた白色結晶が標題化合物であることを確認した。
【0159】
<製造例8:N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキサンジアミドの合成>
200mLのガラス製反応器に、8.0g(0.13モル)のアミノエタノール、100gのメタノールを仕込み、この溶液を室温で攪拌した。次いで、この溶液に9.3g(0.05モル)のアジピン酸ジメチルを徐々に滴下した。滴下後、室温で13時間攪拌した。100gのトルエンを加え、110℃で残留メタノールを留去し、冷却後、12gの粗体を得た。これを40gのイソプロピルアルコールに加熱溶解し、徐々に冷却した。得られた結晶を濾取し、減圧乾燥させて、5.7gの白色針状結晶を得た。
【0160】
この白色結晶についてH−NMRによる分析を行った。H−NMR分析の結果を表8に示す。
【0161】
【表8】

【0162】
この結果より、得られた白色結晶が標題化合物であることを確認した。
【0163】
<製造例9:2−ヒドロキシ−N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブタンジアミドの合成>
1000mLのガラス製反応器に、145.0g(2.37モル)のアミノエタノール、150gのメタノール、および10gの水を仕込み、この溶液を室温で攪拌した。次いで、この溶液に195g(1.03モル)のリンゴ酸ジエチルを徐々に滴下した。滴下後、室温で2時間攪拌した。100gのトルエンを加え、メタノールを減圧留去した後、30gのメタノールおよび250g のトルエンを加え、得られた結晶を濾取し、メタノール・トルエン混合溶媒で結晶を洗浄した。減圧乾燥させて、215.0gの白色結晶を得た。
【0164】
この白色結晶についてH−NMRによる分析を行った。H−NMR分析の結果を表9に示す。
【0165】
【表9】

【0166】
この結果より、得られた白色結晶が標題化合物であることを確認した。
【0167】
<製造例10:2,3−ジヒドロキシ−N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブタンジアミドの合成>
1000mLのガラス製反応器に、160.0g(2.62モル)のアミノエタノール、300gのメタノール、および10gの水を仕込み、この溶液を室温で攪拌した。次いで、この溶液に250.0g(1.21モル)の酒石酸ジエチルを徐々に滴下した。滴下後、室温で15時間攪拌した。メタノールを概略留去した後、360gのイソプロピルアルコールを加えた。得られた結晶を濾取し、減圧乾燥させて、259.7gの白色鱗片状結晶を得た。
【0168】
この白色結晶についてH−NMRによる分析を行った。H−NMR分析の結果を表10に示す。
【0169】
【表10】

【0170】
この結果より、得られた白色結晶が標題化合物であることを確認した。
【0171】
<製造例11:N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−1,4−ベンゼンジカルボキシアミドの合成>
1000mLのガラス製反応器に、195.0g(1.03モル)のテレフタルジメチル、400gのメタノール、100gのトルエンおよび15gの水を仕込み、この懸濁溶液を40℃で攪拌した。次いで、この懸濁溶液に140.0g(2.29モル)のアミノエタノール、を徐々に滴下した。滴下後、68℃で1時間攪拌した。メタノールを概略留去した後、275gのトルエンを加えた。得られた結晶を濾取し、減圧乾燥させて、191.2gの白色結晶を得た。
【0172】
この白色結晶についてH−NMRによる分析を行った。H−NMR分析の結果を表11に示す。
【0173】
【表11】

【0174】
この結果より、得られた白色結晶が標題化合物であることを確認した。
【0175】
<製造例12:4,4’,5,5’−テトラヒドロ−4,4,4’,4’−テトラメチル−2,2’−ビスオキサゾールの合成>
50mLのガラス製反応器に、1.0g(0.004モル)のN,N’−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)エタンジアミド、40gのキシレン、25gのメシチレンおよび0.2mLのメタンスルホン酸を仕込み、この溶液を窒素雰囲気下140℃で2時間加熱還流した。ディーンスターク管を用いて生成する水を除去し、室温まで冷却下、得られた結晶を濾取し、減圧乾燥させて、0.18gの白色針状結晶を得た。
【0176】
この白色結晶についてH−NMRによる分析を行った。H−NMR分析の結果を表12に示す。
【0177】
【表12】

【0178】
この結果より、得られた白色結晶が標題化合物であることを確認した。
【0179】
<製造例13:2,2’−(1,3−プロパンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]の合成>
200mLのガラス製反応器に、34.6g(0.39モル)の2−アミノ−2−メチルプロパノール、60gのキシレンおよび16.1gのグルタル酸ジメチルを仕込み、この溶液を窒素雰囲気下133℃で19時間加熱還流した。ディーンスターク管を用いて生成する水を除去し、室温まで冷却下、得られた結晶を濾取し、減圧乾燥させて、11.3gの粗体を得た。粗体をカラムクロマトグラフィーにより精製し、1.36gの白色結晶を得た。
【0180】
この白色結晶についてH−NMRによる分析を行った。H−NMR分析の結果を表13に示す。
【0181】
【表13】

【0182】
この結果より、得られた白色結晶が標題化合物であることを確認した。
【0183】
<製造例14:2,2’−(1,4−ブタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]の合成>
200mLのガラス製反応器に、22.0g(0.25モル)の2−アミノ−2−メチルプロパノール、50gのキシレンおよび50gのメシチレンおよび0.4gのメタンスルホン酸を仕込み、この溶液を室温で攪拌した。この溶液に14.0g(0.10モル)のアジピン酸を滴下し、ディーンスターク管を用いて生成する水を除去しながら138〜144℃で25時間加熱還流した。室温まで冷却下、50gの水を加え、有機層を採取した。有機層を50gの水で洗浄後、有機溶剤を減圧留去し、14.0gの黄色油状物を得た。
【0184】
この黄色油状物についてH−NMRによる分析を行った。H−NMR分析の結果を表14に示す。
【0185】
【表14】

【0186】
この結果より、得られた黄色油状物が標題化合物であることを確認した。
【0187】
<製造例15:2,2’−(1,2−エタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]の合成>
300mLのガラス製反応器に、0.90gの塩化亜鉛、10.0g(0.11モル)の2−アミノ−2−メチルプロパノール、7.0g(0.05モル)のリンゴ酸および100gのキシレンを仕込み、窒素雰囲気下、攪拌した。ディーンスターク管を用いて生成する水を除去しながら135℃で20時間加熱還流した。室温まで冷却下、100gの水および50gの酢酸エチルを加え、有機層を採取した。有機層を50gの水で洗浄後、有機溶剤を減圧留去し、2.8gの褐色固体を得た。
【0188】
この褐色固体についてH−NMRによる分析を行った。H−NMR分析の結果を表15に示す。
【0189】
【表15】

【0190】
この結果より、得られた褐色個体が標題化合物であることを確認した。
【0191】
<製造例16:内部架橋された親水性樹脂の製造>
500mLのセパラブルフラスコに、147.1gのアクリル酸(東亜合成社製AA−98)、123.2gの48.7%水酸化ナトリウム水溶液、145.1gの蒸留水および0.3gのビスコート#295(トリメチロールプロパントリアクリレート;大阪有機化学工業社製)を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを充填した。次いで、このフラスコに、レドックス系開始剤として0.062gの過硫酸アンモニウム(和光純薬社製)および0.021gの亜硫酸水素ナトリウム(ナカライテスク社製)を仕込み、フラスコ内の温度を40℃〜80℃)の間に保持して放置した。
【0192】
6時間後、フラスコ内に生成したゲル状ポリマーを分離し、これを150℃の熱風乾燥機中にて一晩乾燥させた。次いで、乾燥させたポリマーを小型粉砕機で粉砕した後、50メッシュのふるいにかけることにより、内部架橋された親水性樹脂を得た。
【0193】
<実施例1>
0.5gの蒸留水に、製造例1で得られた0.05gのN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドを添加し、溶液を得た。
【0194】
この溶液を、製造例16で得られた10.0gの親水性樹脂に滴下し、次いで、この混合物を小型粉砕機に入れて1分間攪拌した後、シャーレに配置した。これを乾燥機中で175℃にて30分間加熱することにより、表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0195】
この表面架橋された吸水性樹脂を以下の加圧下吸水性テストの手法を用いて試験した。
【0196】
(加圧下吸水性テスト)
内径40mmのるつぼ型グラスフィルターと40mmよりもわずかに小さい内径を有するポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルムとでなる加圧下装置の総重量(W)を精秤した。次いで、該装置から一旦フィルムを外し、およそ0.5gの表面架橋された吸水性樹脂をこのグラスフィルターの底面に均一となるように入れ、そして吸水性樹脂の上に再びフィルムを静かに配置して、総重量(WG1)を精秤した。総重量の差(WG1−W)を該装置に入れた表面架橋された吸水性樹脂の重量(W)とした。
【0197】
表面架橋された吸水性樹脂上に、配置されたフィルムを介して、20g/cmの荷重に調整された、40mmよりも僅かに小さい外径を有するおもり(総重量251g;このおもりは装置内のガラスフィルターの内壁との間に隙間を形成せずかつ装置の上下方向の移動は妨げられないものである)を配置した。次いで、この装置自体を、グラスフィルター底面が充分浸漬するように、0.9%のNaCl水溶液中に浸漬した。
【0198】
30分後、装置をNaCl水溶液から取り出し、装置外周部の水分をふき取り、そして装置からおもりを取り外した。このときの装置の重量(WG2;吸水後の重量)を精秤した。
【0199】
他方、ガラスフィルター中に上記吸水性樹脂を配置することなく装置のみの重量(WGB1)を精秤し、次いで、上記と同様にしてNaCl水溶液に浸漬した後の装置の重量(WGB2)をブランクとして精秤した。
【0200】
以上より表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を次式により算出した:
【0201】
【数1】

【0202】
本実施例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0203】
<実施例2>
架橋剤としてN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドの代わりに、製造例2で得られた0.05gのN,N’−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)エタンジアミドを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0204】
本実施例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0205】
<実施例3>
架橋剤としてN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドの代わりに、製造例3で得られた0.05gのN,N’−ビス[2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]エタンジアミドを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0206】
本実施例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0207】
<実施例4>
架橋剤としてN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドの代わりに、製造例4で得られた0.05gのN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミドを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0208】
本実施例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0209】
<実施例5>
架橋剤としてN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドの代わりに、製造例5で得られた0.05gのN,N’−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)プロパンジアミドを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0210】
本実施例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0211】
<実施例6>
架橋剤としてN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドの代わりに、製造例6で得られた0.05gのN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブタンジアミドを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0212】
本実施例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0213】
<実施例7>
架橋剤としてN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドの代わりに、製造例7で得られた0.05gのN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペンタンジアミドを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0214】
本実施例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0215】
<実施例8>
架橋剤としてN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドの代わりに、製造例8で得られた0.05gのN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキサンジアミドを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0216】
本実施例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0217】
<実施例9>
架橋剤としてN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドの代わりに、製造例9で得られた0.05gの2−ヒドロキシ−N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブタンジアミドを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0218】
本実施例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0219】
<実施例10>
架橋剤としてN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドの代わりに、製造例10で得られた0.05gの2,3−ジヒドロキシ−N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブタンジアミドを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0220】
本実施例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0221】
<実施例11>
架橋剤としてN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドの代わりに、製造例11で得られた0.05gのN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−1,4−ベンゼンジカルボキシアミドを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0222】
本実施例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0223】
<実施例12>
架橋剤としてN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドの代わりに、製造例12で得られた0.05gの4,4’,5,5’−テトラヒドロ−4,4,4’,4’−テトラメチル−2,2’−ビスオキサゾールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0224】
本実施例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0225】
<実施例13>
架橋剤としてN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドの代わりに、製造例13で得られた0.05gの2,2’−(1,3−プロパンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0226】
本実施例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0227】
<実施例14>
架橋剤としてN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドの代わりに、製造例14で得られた0.05gの2,2’−(1,4−ブタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0228】
本実施例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0229】
<実施例15>
架橋剤としてN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エタンジアミドの代わりに、製造例15で得られた0.05gの2,2’−(1,2−エタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0230】
本実施例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0231】
<比較例1>
架橋剤としてN,N’−ビス[2−ヒドロキシエチル−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロパンジアミドの代わりに、0.05gのジエチレングリコールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0232】
本比較例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0233】
<比較例2>
架橋剤としてN,N’−ビス[2−ヒドロキシエチル−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロパンジアミドの代わりに、0.05gのエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面架橋された吸水性樹脂を製造した。
【0234】
本比較例で得られた、表面架橋された吸水性樹脂の吸水倍率を表16に示す。
【0235】
【表16】

【0236】
表16に示されるように、本発明の架橋剤を使用して表面架橋された吸水性樹脂(実施例1〜15)は、いずれも高い吸水倍率を有することがわかる。また、これら吸水性樹脂は、従来のアルコール系架橋剤を使用して表面架橋されたもの(比較例1)と比較して、優れた吸水性を有する。さらに、実施例1〜15で製造された吸水性樹脂は、皮膚刺激性の問題が懸念される従来のエポキシ基を有する架橋剤を使用して表面架橋されたものと比較しても、さほど優位な差のない吸水性を有することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋剤であって、以下の一般式(II)で表される化合物:
【化1】

ここで、nは2から6の整数であり;Rは、1個から20個の炭素原子を有する、水酸基で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状のn価の炭化水素基であり;そしてRからRは、それぞれ独立して、−H、−CHまたは−CHOHである;を含有する、架橋剤。
【請求項2】
前記炭化水素基が、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、および脂環式炭化水素基からなる群より選択される基である、請求項1に記載の架橋剤。
【請求項3】
前記一般式(II)で表される化合物のうち、nが2から4の整数であり、かつRが6個の炭素原子を有する、水酸基で置換されていてもよいn価の芳香族炭化水素基である、化合物を含有する、請求項1に記載の架橋剤。
【請求項4】
前記一般式(II)で表される化合物のうち、nが2から6の整数であり、かつRが1個から20個の炭素原子を有する水酸基で置換されていてもよいn価の脂肪族炭化水素基である、化合物を含有する、請求項1に記載の架橋剤。
【請求項5】
前記化合物のRが、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−CH(OH)CH−、−CH(OH)CH(OH)−、
【化2】

からなる群より選択される基である、請求項1に記載の架橋剤。
【請求項6】
前記化合物が、4,4’,5,5’−テトラヒドロ−4,4,4’,4’−テトラメチル−2,2’−ビスオキサゾール、2,2’−(1,3−プロパンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]、2,2’−(1,4−ブタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]、および2,2’−(1,2−エタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチルオキサゾール]からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の架橋剤。
【請求項7】
親水性樹脂を請求項1から6のいずれかに記載の架橋剤で架橋して得られる、吸水性樹脂。
【請求項8】
吸水性樹脂を製造するための方法であって、親水性樹脂と請求項1から6のいずれかに記載の架橋剤とを混合する工程;および該混合物を加熱する工程;を包含する、方法。

【公開番号】特開2011−208148(P2011−208148A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109112(P2011−109112)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【分割の表示】特願2001−205324(P2001−205324)の分割
【原出願日】平成13年7月5日(2001.7.5)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】