説明

架橋可能なゴム組成物および架橋ゴム成形体

【課題】耐水(耐透湿)性、耐熱性、耐極性溶剤性、ゴム弾性、充填性、粘着(接着)性、作業性(低粘度)に優れる、常温においても架橋可能であり、液状のゴム組成物を提供すること。
【解決手段】少なくとも、(A)特定の要件を満たし、かつ、エチレンから導かれる構成単位と、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位と少なくとも一種の非共役ポリエンから導かれる構成単位を含むエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体と、(B)ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物と、(C)前記共重合体(A)と相溶性があり、分子鎖の片末端又は両末端に二重結合を有する、炭素原子数6〜3000のα−オレフィン、分子鎖の内部または末端に二重結合を有する炭素数7以上かつ数平均分子量が2000以下であるテルペン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂とを含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋可能なゴム組成物、その組成物を架橋してなる架橋ゴム成形体およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポッティング材、封止材、シーリング剤、粘着材、バインダー、塗料などの材料には、高い加工性(流動性)と接着・粘着性が求められる。従来そのような部材には液状シリコーン材や液状ウレタン材、液状エポキシ材などが適用されてきた。
【0003】
しかしながら、液状シリコーンや液状ウレタンでは、透湿性、加水分解性、耐極性溶剤性などに課題があり、湿度が高い環境やメタノールなどの極性の高い溶剤環境下では長期信頼性に劣るという問題があった。また、液状エポキシ材は、高温架橋が一般的に必要であり、プロセス上高温が使えない環境では使用できないとの問題があった。
【0004】
また、特許文献1および2には、事務機器用ゴムロールやゴムホースに使われるゴム組成物についての記載がある。
しかしながら、これらのゴム組成物は、希釈溶媒を必要とし、成形性に改善の余地がある。加えて、常温での架橋が困難であるため、汎用性に乏しい。
【0005】
さらに、特許文献3には、ガスケットやゴムパッキンについての記載がある。
しかしながら、これらのガスケットやゴムパッキンは、粘度が高いうえ、柔軟性やシール性に課題を有する。
【0006】
一方、耐湿性、耐極性溶媒性の高い架橋型液状ポリマーとしては、オレフィン系の液状ポリマーが知られている(特許文献4)。
しかしながら、従来のオレフィン系液状ポリマーではポリマーとしての強度を保つため分子量を下げることに限界があり、粘度が高いといった問題や、構造に極性基を含まないため、粘着性および接着性が非常に弱いといった問題があった。さらに、これらを解決するために、炭化水素系のオイルを添加することが一般的に適用されるが、ポリマーの構造内部に取り込まれないため、ブリードアウトを引き起こすとの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−31816号公報
【特許文献2】特開2001−31813号公報
【特許文献3】特開2008−156574公報
【特許文献4】特開2003−128851公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、耐水(耐透湿)性、耐熱性、耐極性溶剤性、ゴム弾性、充填性、粘着(接着)性、作業性(低粘度)に優れる、常温においても架橋可能であり、液状のゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、少なくとも、特定のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(A)と、該共重合体(A)に対して、特定のヒドロシリル基含有化合物(B)および特定のα−オレフィン(c1)、特定のジオレフィン(c2)および特定のテルペン系樹脂(c3)から選ばれる少なくとも1種の樹脂(C)を特定量含み、かつ、特定の粘度を有する架橋可能なゴム組成物が、耐水(耐透湿)性、耐熱性、耐極性溶剤性、ゴム弾性、充填性、粘着(接着)性に優れ、常温においても架橋可能な液状の組成物であることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明の架橋可能なゴム組成物は、少なくとも、
(A)下記要件(a)〜(c)を満たし、かつ、エチレンから導かれる構成単位〔i〕と、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位〔ii〕と、下記一般式[I]および[II]から選ばれる少なくとも一種の非共役ポリエンから導かれる構成単位〔iii〕を含むエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体と、
(a)エチレン単位〔i〕/α−オレフィン単位〔ii〕のモル比(〔i〕/〔ii〕)が、35/65〜95/5であり、
(b)ヨウ素価が0.5〜50の範囲にあり、
(c)135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が0.01〜5.0(dl/g)の範囲である;
(B)ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物を、前記共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜100重量部と、
(C)前記共重合体(A)と相溶性があり、分子鎖の片末端に二重結合を有する、炭素原子数6〜3000のα−オレフィン(c1)、前記共重合体(A)と相溶性があり、分子鎖の両末端に二重結合を有する、炭素数6〜3000のジオレフィン(c2)および前記共重合体(A)と相溶性があり、分子鎖の内部または末端に二重結合を有する炭素数7以上であり、かつ数平均分子量が2000以下であるテルペン系樹脂(c3)から選ばれる少なくとも1種の樹脂を、前記共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜100重量部とを含む組成物であり、該組成物の25℃での粘度が0.001〜1000Pa・sであること特徴とする。
【0011】
【化1】

(式[I]中、nは0ないし10の整数であり、R1は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R2は水素原子または炭素原子1〜5のアルキル基である)。
【0012】
【化2】

(式[II]中、R3は水素原子または炭素原子1〜10のアルキル基である)。
【0013】
また、本発明のゴム組成物には、白金系触媒を含むことが好ましい。
無機フィラーを、前記共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜10,000重量部含むことが好ましい。
【0014】
本発明の架橋ゴム成形体は、本発明の架橋可能なゴム組成物をヒドロシリル化反応により架橋させてなる。
本発明のゴム組成物は、ポッティング材、シーリング剤、粘着剤、バインダー、塗料、振動制御材、高反発材料、歯科用印象材料、ホース、ロール、光制御材料、サニタリー用品またはパッキンに用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐水(耐透湿)性、耐熱性、耐極性溶剤性、ゴム弾性、充填性、粘着(接着)性、作業性(低粘度)に優れる、常温においても架橋可能なゴム組成物を得ることができる。さらに、該ゴム組成物は、液状であるため、たとえば、フィラーや触媒との混合に用いられる希釈溶媒を大幅に削減できる。そのため、環境負荷への低減を大きく図ることができ、かつ、成形性も改善できるため生産性を向上できる。
【0016】
また、本発明のゴム組成物をヒドロシリル化反応により架橋させてなる架橋ゴム成形体は、耐熱性、粘着性、柔軟性、成型品の外観、強度に優れる。
したがって、本発明のゴム組成物は、ポッティング材(封止材)、シーリング剤、粘着剤、バインダー、塗料、振動制御材(応力吸収材)、高反発材料、歯科用印象材料、ホース、ロール、光制御材料、サニタリー用品またはパッキン(ガスケット)などの用途に、幅広く用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る架橋可能なゴム組成物およびその用途について具体的に説明する。
<架橋可能なゴム組成物>
本発明に係る架橋可能なゴム組成物は、常温で液状であり、常温においても架橋が可能である。
【0018】
ゴム組成物の粘度は、通常、0.001〜1,000(Pa・s)、好ましくは0.01〜100(Pa・s)、より好ましくは0.01〜10(Pa・s)、さらに好ましくは、塗工のムラ・ボイド削減や、対象充填部の細部にまで樹脂が行き渡るようにするといった理由から、0.01〜3.0(Pa・s)である。粘度が上記範囲内にあると、一般的なディスペンス装置、塗工装置などが使用可能となるため、好ましい。粘度は、たとえば、JIS K7117−1(B型粘度)、又はJIS K7117−2(E型粘度)に準拠して、測定できる。
【0019】
〔(A)エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体〕
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(A)(本発明では、共重合体(A)と称すこともある)は、要件(a)〜(c)を満たし、かつ、エチレンから導かれる構成単位〔i〕と、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位〔ii〕と、一般式[I]および[II]から選ばれる少なくとも一種の非共役ポリエンから導かれる構成単位〔iii〕を含む。
共重合体(A)は、本発明の効果を奏する限り、トランス体やシス体など、構造異性体に何ら限定されない。
【0020】
(α−オレフィン)
炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチル-1- デセン、11- メチル-1-ドデセン、12-エチル-1- テトラデセンなどが挙げられる。中でも、炭素原子数3〜10のα−オレフィンが好ましく、特に好ましくは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどである。
これらのα−オレフィンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。
【0021】
(非共役ポリエン)
非共役ポリエンは、末端ビニル基含有ノルボルネン化合物であり、上記一般式[I]および[II]から選ばれる少なくとも1種である。
【0022】
一般式[I]において、nは0〜10の整数、好ましくは0〜5の整数である。R1は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、アルキル基の具体的としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。R1としては、水素原子、メチル基またはエチル基が好ましい。R2は水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基であり、アルキル基の具体例としては、上記R1の具体例のうち、炭素原子数1〜5のアルキル基が挙げられる。R2としては、水素原子、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0023】
一般式[II]において、R3は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、アルキル基の具体例としては、上記R1と同じアルキル基が挙げられる。
一般式[I]または[II]で表わされるノルボルネン化合物としては、たとえば、5-メチレン-2- ノルボルネン、5-ビニル-2- ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2- ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2- ノルボルネン、5-(1-メチル-2- プロペニル)-2- ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2- ノルボルネン、5-(1-メチル-3- ブテニル)-2- ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2- ノルボルネン、5-(5-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4- ペンテニル)-2- ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3- ブテニル)-2- ノルボルネン、5-(2-エチル-3- ブテニル)-2- ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2- ノルボルネン、5-(3-メチル-5- ヘキセニル)-2- ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4- ペンテニル)-2- ノルボルネン、5-(3-エチル-4- ペンテニル)-2- ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2- ノルボルネン、5-(2-メチル-6- ヘプテニル)-2- ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5- ヘキセシル)-2- ノルボルネン、5-(5-エチル-5- ヘキセニル)-2- ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4- ペンテニル)-2- ノルボルネンなど挙げられる。このなかでも、5-ビニル-2- ノルボルネン、5-メチレン-2- ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2- ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2- ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2- ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2- ノルボルネン、5-(5-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネンが好ましい。
【0024】
これらの非共役ポリエンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明では、非共役ポリエンとして、本発明の目的とする物性を損なわない範囲で、上記ノルボルネン化合物の他に、以下に示す非共役ポリエンを併用することもできる。
【0025】
このような非共役ポリエンとしては、たとえば、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4- ヘキサジエン、4-メチル-1,4- ヘキサジエン、5-メチル-1,4- ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4- ヘキサジエン、7-メチル-1,6- オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2- ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2- ノルボルネン、5-ビニリデン-2- ノルボルネン、6-クロロメチル-5- イソプロペニル-2- ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5- ノルボルネン、2-エチリデン-3- イソプロピリデン-5- ノルボルネン、2-プロペニル-2,2- ノルボルナジエン等のトリエンなどが挙げられる。
【0026】
上記の任意成分である非共役ポリエンは、本発明で用いられるノルボルネン化合物を含む非共役ポリエン100モル%に対して、通常50モル%以下、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下である。
【0027】
(要件a)
エチレンから導かれる構成単位〔i〕と、α−オレフィンから導かれる構成単位〔ii〕とのモル比(〔i〕/〔ii〕)は、通常、35/65〜95/5、好ましくは40/60〜90/10、より好ましくは45/55〜85/15である。モル比が上記範囲内にあると、粘着性、柔軟性、耐熱老化性、強度特性およびゴム弾性に優れるとともに、耐寒性および加工性に優れた架橋ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られる。
また、共重合体の組成は、たとえば、13C−NMRを用いて測定できる。
【0028】
(要件b)
ヨウ素価は、通常、0.5〜50(g/100g)、好ましくは1〜40(g/100g)、より好ましくは5〜30(g/100g)である。ヨウ素価が上記範囲内にあると、架橋効率の高いゴム組成物が得られ、柔軟性、耐熱性および耐圧縮永久歪み性に優れるとともに、耐環境劣化性(耐熱老化性)に優れた架橋ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られる。また、ヨウ素価が50を超えると、コスト的に不利になるので好ましくない。
【0029】
本発明では、一般式[I]で表されるノルボルネン化合物として、例えば、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、一般式[II]で表されるノルボルネン化合物として、例えば、5-メチレン-2-ノルボルネンが好適であり、これらのノルボルネン化合物から選ばれる少なくとも1種の非共役ポリエンを構成成分とする共重合体(A)を使用する場合は、ヨウ素価が、通常0.5〜50(g/100g)、好ましくは1〜40(g/100g)、より好ましくは5〜30(g/100g)の範囲にある。このような共重合体(A)を用いることで、耐熱老化性、耐圧縮永久歪み性および耐屈曲疲労性に優れ、また、強度特性および耐磨耗性にも優れるゴム組成物を得ることができる。
【0030】
(要件c)
135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、0.01〜5.0(dl/g)、好ましくは0.01〜2.0(dl/g)、より好ましくは0.03〜1.0(dl/g)である。
【0031】
極限粘度[η]が上記範囲内にあると、流動性および粘着性に優れ、強度特性および耐圧縮永久歪み性に優れるとともに、加工性に優れた架橋ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られる。また、上記極限粘度[η]の範囲を外れた場合には、たとえば液状にするような場合には、可塑剤や溶剤を多量に添加する必要があり、ブリードの発生により周辺部品に可塑剤が移行することや、接着剤が悪化する場合もある。また溶媒が揮発して、部品がやせ細る場合もある。本発明にかかる共重合体(A)は、液状であることが好ましい一つの態様である。
【0032】
なお、共重合体(A)の非共役ポリエンの含量は、上記ヨウ素価を満たしていれば、特に制限されないが、好ましくは、共重合体(A)100モル%中、0.05〜8モル%、より好ましくは0.1〜6モル%、さらに好ましくは0.5〜5モル%である。
【0033】
本発明に係る共重合体(A)は、要件(a)〜(c)に加えて、下記要件(d)または(e)を満たすことが好ましく、要件(a)〜(e)の全てを満たすことがより好ましい。
【0034】
(要件d)
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量(Mn)は、特に限定されないが、好ましくは100〜10,000、より好ましくは500〜5,000である。また分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1〜200、より好ましくは1.5〜150である。分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内にあると、加工性に優れるとともに、強度特性に優れた架橋ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られるので好ましい。
【0035】
(要件e)
粘度は、特に限定されないが、好ましくは0.01〜2,000(Pa・s)、より好ましくは0.01〜1,000(Pa・s)である。粘度が上記範囲内にあると、作業性、充填性がよく、均一なコンパウンドが得られるため、好ましい。なお、粘度は、本発明に係る架橋可能なゴム組成物と同様の方法で測定できる。
【0036】
(共重合体の製造方法)
共重合体(A)は、「ポリマー製造プロセス((株)工業調査会、発行p.309〜330)、もしくは特開平9−71617号公報、特開平9−71618号公報、特開平9−208615号公報、特開平10−67823号公報、特開平10―67824号公報、特開平10―110054号公報などに記載されているような従来公知の方法により調製することができ、特に限定されないが、本発明の共重合体は、たとえば、以下の製法により製造することがより好ましい。
【0037】
共重合体(A)は、下記化合物(III)および(IV)を主成分として含有する触媒の存在下に、重合温度30〜60℃、特に好ましくは30〜59℃、重合圧力4〜12kgf/cm2、特に好ましくは5〜8kgf/cm2、非共役ポリエンとエチレンとの供給量のモル比(非共役ポリエン/エチレン)0.01〜0.2の条件で、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンと、非共役ポリエンとをランダム共重合することにより得られる。共重合は、炭化水素媒体中で行なうのが好ましい。
【0038】
(III)VO(OR)n3-n(式中、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、nは0または1〜3の整数である)で表わされる可溶性バナジウム化合物、またはVX4 (Xはハロゲン原子である)で表わされるバナジウム化合物。
【0039】
可溶性バナジウム化合物(III)は、重合反応系の炭化水素媒体に可溶性の成分であり、具体的には、一般式 VO(OR)abまたはV(OR)cd(式中、Rは炭化水素基であり、0≦a≦3、0≦b≦3、2≦a+b≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦c+d≦4)で表わされるバナジウム化合物、あるいはこれらの電子供与体付加物を代表例として挙げることができる。
【0040】
より具体的には、VOCl3、VO(OC25)Cl2、VO(OC252Cl、VO(O−iso-C37)Cl2、VO(O−n-C49)Cl2、VO(OC253、VOBr3、VCl4、VOCl3、VO(O−n-C493、VCl3・2OC612OHなどを例示することができる。
【0041】
(IV)R'mAlX'3-m (R'は炭化水素基であり、X'はハロゲン原子であり、mは1〜3である)で表わされる有機アルミニウム化合物。
有機アルミニウム化合物(IV)としては、具体的には、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシド等のアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;R10.5Al(OR10.5などで表わされる平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド等のジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミド等のアルキルアルミニウムセスキハライド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミド等のアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリド等のジアルキルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリド等のアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0042】
本発明において、上記化合物(III)のうち、VOCl3で表わされる可溶性バナジウム化合物と、上記化合物(IV)のうち、Al(OC252Cl/Al2(OC253Cl3のブレンド物(ブレンド比は1/5以上)を触媒成分として使用すると、ソックスレー抽出(溶媒:沸騰キシレン、抽出時間:3時間、メッシュ:325)後の不溶解分が1%以下である共重合体(A)が得られるので好ましい。
【0043】
また、上記共重合の際に使用する触媒として、いわゆるメタロセン触媒、たとえば特開平9−40586号公報に記載されているメタロセン触媒を用いても差し支えない。
また、本発明に係る共重合体(A)は、極性モノマー、たとえば不飽和カルボン酸またはその誘導体(たとえば酸無水物、エステル)でグラフト変性されていてもよい。
【0044】
このような不飽和カルボン酸としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ビシクロ(2,2,1)ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸などが挙げられる。不飽和カルボンの酸無水物としては、具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、ビシクロ(2,2,1)ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、無水マレイン酸が好ましい。
【0045】
不飽和カルボン酸エステルとしては、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ(2,2,1)ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸ジメチルなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
【0046】
上記の不飽和カルボン酸等のグラフト変性剤(グラフトモノマー)は、それぞれ単独または2種以上の組み合わせで使用されるが、何れの場合も前述したグラフト変性前の共重合体(A)100g当たり、0.1モル以下のグラフト量にするのがよい。グラフト量が上記範囲にあると、耐寒性に優れた架橋ゴム成形体を提供でき、流動性(成形加工性)に優れたゴム組成物が得られる。
【0047】
グラフト変性した共重合体(A)は、前述した未変性の共重合体(A)と不飽和カルボン酸またはその誘導体とを、ラジカル開始剤の存在下に反応させることにより得ることができる。このグラフト反応は溶液にして行なうこともできるし、溶融状態で行なってもよい。溶融状態でグラフト反応を行なう場合には、押出機の中で連続的に行なうことが最も効率的であり、好ましい。
【0048】
グラフト反応に使用されるラジカル開始剤としては、具体的には、ジクミルパーオキサイド、ジ-t- ブチルパーオキサイド、ジ-t- ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t- アミルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5- ジ(t-ブチルパーオキシン)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5- ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5- ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α'- ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類;t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t- ブチルパーオキシフタレート等のパーオキシエステル類;ジシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;およびこれらの混合物などが挙げられる。中でも半減期1分を与える温度が130〜200℃の範囲にある有機過酸化物が好ましく、特に、ジクミルパーオキサイド、ジ-t- ブチルパーオキサイド、ジ-t- ブチルパーオキシ-3,3,5- トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t- アミルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が好ましい。
【0049】
また、不飽和カルボン酸またはその誘導体(たとえば酸無水物、エステル)以外の極性モノマーとしては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、ビニルエステル化合物、塩化ビニルなどが挙げられる。
【0050】
〔(B)ヒドロシリル基含有化合物〕
本発明で用いられるヒドロシリル基含有化合物(B)(本発明では、化合物(B)またはSiH基含有化合物と称すこともある)は、共重合体(A)と反応する、架橋剤として作用する。この化合物(B)は、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上のケイ素原子に直結した水素原子、すなわちSiH基を含んでいれば、その分子構造に特に制限はなく、従来製造されている、例えば線状、環状、分岐状構造あるいは三次元網目状構造の樹脂状物などいずれも使用できる。
【0051】
化合物(B)は、共重合体(A)100重量部に対して、通常0.1〜100重量部、好ましくは0.1〜75重量部、より好ましくは0.1〜50重量部、さらに好ましくは0.2〜30重量部、特に好ましくは0.2〜20重量部の割合で用いられる。上記範囲内であると、耐圧縮永久歪み性に優れるとともに、架橋密度が適度で強度特性および伸び特性に優れた架橋ゴム成形体を形成できるゴム組成物が得られる。100重量部を超える割合で化合物(B)を用いると、コスト的に不利になるため、好ましくない。
【0052】
化合物(B)としては、通常、下記一般組成式[V]
4bcSiO(4-b-c)/2・・・[V]
で表わされる化合物を使用することができる。
【0053】
組成式(V)において、R4 は、脂肪族不飽和結合を除く、炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜8の置換または非置換の1価炭化水素基であり、たとえば、前記R1 に例示したアルキル基の他に、フェニル基、ハロゲン置換のアルキル基、たとえばトリフロロプロピル基を例示することができる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基が好ましく、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0054】
また、bは、0≦b<3、好ましくは0.6<b<2.2、特に好ましくは1.5≦b≦2であり、cは、0<c≦3、好ましくは0.002≦c<2、特に好ましくは0.01≦c≦1であり、かつ、b+cは、0<b+c≦3、好ましくは1.5<b+c≦2.7である。
【0055】
化合物(B)は、1分子中のケイ素原子数が、好ましくは2〜1000個、特に好ましくは2〜300個、最も好ましくは2〜200個のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、たとえば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8-ペンタメチルペンタシクロシロキサン等のシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、R42(H)SiO1/2 単位とSiO4/2 単位とからなり、任意にR43SiO1/2 単位、R42SiO2/2 単位、R4(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2またはR4SiO3/2単位を含み得るシリコーンレジンなどを挙げることができる。
【0056】
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、たとえば、下式(VI)で示される化合物、さらには、式[VI]においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0057】
(CH3)3SiO-(-SiH(CH3)-O-)d-Si(CH3)3・・・[VI]
なお、式(VI)中のdは2以上の整数である。
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、下式[VII]で示される化合物、さらには式(VII)においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0058】
(CH3)3SiO-(-Si(CH3)2-O-)e-(-SiH(CH3)-O-)f-Si(CH3)3・・・[VII]
なお、式[VII]中のeは1以上の整数であり、fは2以上の整数である。
【0059】
分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、たとえば下式[VIII]で示される化合物、さらには式[VIII]においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0060】
HOSi(CH3)2O-(-SiH(CH3)-O-)2-Si(CH3)2OH・・・[VIII]
分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、たとえば、下式[IX]で示される化合物、さらには下式[IX]においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0061】
HOSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)e-(-SiH(CH3)-O-)f-Si(CH3)2OH・・・[IX]
なお、式[IX]中のeは1以上の整数であり、fは2以上の整数である。
【0062】
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンとしては、たとえば、下式[X]で示される化合物、さらには下式[X]においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0063】
HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)e-Si(CH3)2H・・・[X]
なお、式[X]中のeは1以上の整数である。
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、たとえば下式[XI]で示される化合物、さらには下式[XI]においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0064】
HSi(CH3)2O-(-SiH(CH3)-O-)e-Si(CH3)2H・・・[XI]
なお、式[XI]中のeは1以上の整数である。
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、たとえば下式[XII]で示される化合物、さらには下式[XII]においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0065】
HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)e-(-SiH(CH3)-O-)h-Si(CH3)2H・・・[XII]
なお、式[XII]中のeおよびhは、それぞれ1以上の整数である。
【0066】
このような化合物は、公知の方法により製造することができ、たとえば、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはテトラメチルシクロテトラシロキサンと、末端基となり得るヘキサメチルジシロキサンあるいは1,3-ジハイドロ-1,1,3,3- テトラメチルジシロキサンなどの、トリオルガノシリル基あるいはジオルガノハイドロジェンシロキシ基を含む化合物とを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に、−10℃〜+40℃程度の温度で平衡化させることによって容易に得ることができる。
これらの化合物(B)は、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0067】
〔(C)α−オレフィン、ジオレフィン、テルペン系樹脂〕
本発明に係る共重合体(A)と相溶性があり、分子鎖の片末端に二重結合を有する、炭素原子数6〜3000のα−オレフィン(c1)、共重合体(A)と相溶性があり、分子鎖の両末端に二重結合を有する、炭素数6〜3000のジオレフィン(c2)および共重合体(A)と相溶性があり、分子鎖の内部または末端に二重結合を有する炭素数7以上であり、かつ数平均分子量が2000以下であるテルペン系樹脂(c3)から選ばれる少なくとも1種の樹脂(C)(本発明では、樹脂(C)とも称する)は、共重合体(A)と相溶性を有し、共重合体(A)の分散性を助け、同時にゴムの潤滑剤として作用し、組成物の加工性を高めるものである。また、本発明では、樹脂(C)を特定量用いることで、耐水(耐透湿)性、耐熱性、耐極性溶剤性、ゴム弾性、充填性、粘着(接着)性を向上させることができ、常温においても架橋可能な液状の組成物を得ることができる。なお、本発明において「相溶性」とは、モルフォロジーが相分離や海島構造を形成しないことを意味する。
【0068】
樹脂(C)は、共重合体(A)100重量部に対して、通常0.1〜100重量部、好ましくは0.1〜75重量部、より好ましくは0.1〜50重量部、さらに好ましくは0.2〜30重量部、特に好ましくは0.2〜20重量部、より特により好ましくは0.5〜10重量部であり、特に、粘着(接着性)性により優れるという理由から、最も好ましくは0.5〜9重量部、より最も好ましくは2〜5重量部の割合で用いられる。上記範囲内であると、柔軟性、粘接着性などに優れるとともに、架橋密度が適度で強度特性および伸び特性に優れた架橋ゴム成形体を形成できるゴム組成物が得られる。100重量部を超える割合で用いると、コスト的に不利になるため、好ましくない。
【0069】
また、本発明では、共重合体(A)との相溶性、及び架橋物の耐極性溶媒性、粘着(接着)性などの理由から、α−オレフィン(c1)を用いることが好ましく、この場合、共重合体(A)100重量部に対して、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.2〜30重量部、より好ましくは0.2〜20重量部、特に、粘着(接着性)性により優れるという理由から、最も好ましくは0.5〜9重量部、より最も好ましくは2〜5重量部である。
【0070】
(分子鎖の片末端に二重結合を有するα−オレフィン)
α−オレフィン(c1)としては、前記共重合体(A)と相溶性があり、炭素原子数6〜3000、好ましくは炭素原子数6〜100、より好ましくは炭素原子数8〜50、さらに好ましくは炭素原子数8〜30である。また、該α−オレフィンは、分子鎖の片末端にビニル、またはビニリデン型の二重結合を含む。また、α−オレフィン(c1)は、直鎖でも、分岐を有していてもよいし、また、本発明の効果を奏する限り、トランス体やシス体など、構造異性体に何ら限定されない。また、本発明の効果を損なわない範囲で、ハロゲン、酸素原子、窒素原子などを有する置換基を有していてもよい。
【0071】
α−オレフィン(c1)は、公知の方法で重合でき、製法に特に限定されないが、たとえば、特開平7-133234号公報、特開2003-261602号公報、特開2005-105286号公報などに従って、重合できる。
【0072】
α−オレフィン(c1)としては、たとえば、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、2−メチル−1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−イコセン、1−ヘンイコセン、1−ドコセン、1−トリコセン、1−テトラコセン、1−ペンタコセン、1−ヘキサコセン、1−ヘプタコセン、1−オクタコセン、1−ノナコセン、1−トリアコセン(1−トリアコンテン)、1−テトラコセン(1−テトラコンテン)、1−ペンタコンテン、1−ヘクテンなどを挙げることができ、直鎖のα−オレフィンが好ましく、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−イコセンがより好ましい。
【0073】
(分子鎖の両末端に二重結合を有するジオレフィン)
ジオレフィン(c2)としては、前記共重合体(A)と相溶性があり、炭素原子数6〜3000、好ましくは炭素原子数6〜100、より好ましくは炭素原子数8〜50、さらに好ましくは炭素原子数8〜30である。また、該ジオレフィンは、分子鎖の両末端にビニル、またはビニリデン型の二重結合を含む。また、ジオレフィン(c2)は、直鎖でも、分岐を有していてもよいし、また、本発明の効果を奏する限り、トランス体やシス体など、構造異性体に何ら限定されない。また、本発明の効果を損なわない範囲で、ハロゲン、酸素原子、窒素原子などを有する置換基を有していてもよい。なお、両末端とは、ジオレフィン(c2)中、主鎖の両方にある末端をいう。
【0074】
ジオレフィン(c2)は、公知の方法で重合でき、製法に特に限定されないが、たとえば、特開平9−87312号公報、国際公開公報WO2005/030681に従って、重合できる。
【0075】
ジオレフィン(c2)としては、たとえば、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、3−メチル−1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、3−メチル−1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、2−メチル−1−デカジエン、1,10−ウンデカジエン、1,11−ドデカジエン、1,12−トリデカジエン、1,13−テトラデカジエン、1,14−ペンタデカジエン、1,15−ヘキサデカジエン、1,16−ヘプタデカジエン、1,17−オクタデカジエン、1,18−ノナデカジエン、1,19−エイコジエン(1,19−イコセジエン)、1,20−ヘンイコセジエン、1,21−ドコセジエン、1,22−トリコセジエン、1,23−テトラコセジエン、1,24−ペンタコセジエン、1,25−ヘキサコセジエン、1,26−ヘプタコセジエン、1,27−オクタコセジエン、1,28−ノナコセジエン、1,29−トリアコンテジエン、1,39−テトラコンテジエン、1,49−ペンタコンテジエン、1,99−ヘクテジエンなどを挙げることができ、直鎖のジオレフィンが好ましく、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエンがより好ましい。
【0076】
(分子鎖の内部または末端に二重結合を有するテルペン系樹脂)
本発明においては、樹脂(C)にテルペン系樹脂が含まれると、より強固な粘接着性を得られるため、好ましい。この場合、特に限定されないが、テルペン系樹脂として組成物中に、共重合体(A)100重量部に対して、1〜300重量部含まれることが好ましく、より好ましくは10〜200重量部である。
【0077】
テルペン系樹脂(c3)としては、前記共重合体(A)と相溶性があり、炭素数7以上、より好ましくは炭素数8〜100であり、かつ数平均分子量が2000以下、好ましくは100〜1800である。なお、テルペン系樹脂(c3)の数平均分子量は、公知のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定でき、たとえば、液体クロマトグラフなど公知の分析機器を用いて測定し、得られたクロマトグラムを、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析することで得ることができる。
【0078】
また、該テルペン系樹脂は、分子鎖の内部に炭素−炭素二重結合、および/または、片末端および両末端のいずれか1つ以上に、ビニルまたはビニリデン型の二重結合を含む。分子鎖の内部にある二重結合は、シクロヘキセンなどのシクロアルケンまたはシクロオレフィンであってもよく、本発明の効果を奏する限り、芳香族化合物であってもよい。テルペン系樹脂には、本発明の効果を奏する限り、トランス体やシス体などの構造異性体を含んでいてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、ハロゲン、酸素原子、窒素原子などを有する置換基を有していてもよい。なお、両末端とは、テルペン系樹脂(c3)中、主鎖の両方にある末端をいう。
【0079】
テルペン系樹脂(c3)としては、たとえば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、d−リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノーレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、サビネン、パラメンタジエン類、カレン類などのモノテルペンから導かれる構造を含む樹脂、ロンギフォーレンなどのセスキテルペンから導かれる構造を含む樹脂、ロジン、カロチン、イソプレンゴム、天然ゴム、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂などが例示される。なお、リモネンとは、オレンジ油、レモン油、ミカン油、ショウノウ白油、ウッドテレピン油の分留により得られ、C1016の化学式で表されるものであり、d−、l−、dl−の異性体が存在するが、特に限定されるものではない。また、東京化成工業(株)、和光純薬工業(株)、ヤスハラケミカル(株)、荒川化学工業(株)などからも入手できる。
【0080】
これらのテルペン系樹脂のうち、好ましくはリモネンから導かれる構造を含むテルペン系樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂であり、より好ましくは、入手のし易さなどの理由から、リモネンから導かれる構造を含むテルペン系樹脂である。
【0081】
なお、本発明において、本発明の効果を奏する限り、テルペン系樹脂(c3)と共に、ロジン類、ロジン誘導体、石油系樹脂およびそれらの水素添加物など、粘着性を付与できる公知の樹脂を用いることができる。
【0082】
これらの樹脂(C)は、単独で、または、2種以上組み合わせて、あるいは、α−オレフィン、ジオレフィンおよびテルペン系樹脂はそれぞれ2種以上混合して用いることができ、好ましくは、単独で、または、2種以上組み合わせて用いることである。
【0083】
〔ヒドロシリル化反応に用いられる触媒〕
本発明の任意成分として用いられる触媒は、付加反応触媒であり、共重合体(A)中のアルケニル基と、化合物(B)のSiH基との付加反応(アルケンのヒドロシリル化反応)を促進するものであれば特に制限はなく、たとえば、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族元素よりなる付加反応触媒(周期律表8族金属、8族金属錯体、8族金属化合物等の8族金属系触媒)を挙げることができる。また、本発明では、周期律表8族元素金属と、ビニル基および/またはカルボニル基を含む化合物との錯体を用いることが望ましい。周期律表8族元素金属としては、白金が特に好ましい。
【0084】
白金系触媒は、通常、付加硬化型の硬化に使用される公知のものでよく、たとえば米国特許第2,970,150号明細書に記載の微粉末金属白金触媒、米国特許第2,823,218号明細書に記載の塩化白金酸触媒、米国特許第3,159,601号公報明細書および米国特許第159,662号明細書に記載の白金と炭化水素との錯化合物、米国特許第3,516,946号明細書に記載の塩化白金酸とオレフィンとの錯化合物、米国特許第3,775,452号明細書および米国特許第3,814,780号明細書に記載の白金とビニルシロキサンとの錯化合物などが挙げられる。より具体的には、白金の単体(白金黒)、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、あるいはアルミナ、シリカ等の担体に白金の担体を担持させたものなどが挙げられる。
【0085】
ビニル基を含む化合物としては、ビニル基含有オルガノシロキサンが好ましい。これらと白金との錯体としては、具体的には、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラエチルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラプロピルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラブチルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラフェニルジシロキサン錯体が挙げられる。
【0086】
カルボニル基を含む化合物としては、カルボニル、オクタナル等が好ましい。これらと白金との錯体としては、具体的には、白金−カルボニル錯体、白金−オクタナル錯体、白金−カルボニルブチル環状シロキサン錯体、白金−カルボニルフェニル環状シロキサン錯体などが挙げられる。
【0087】
ビニル基含有オルガノシロキサンの中でも、ビニル基含有環状オルガノシロキサンが好ましい。これらと白金との錯体としては、白金−ビニルメチル環状シロキサン錯体、白金−ビニルエチル環状シロキサン錯体、白金−ビニルプロピル環状シロキサン錯体が挙げられる。ビニル基含有オルガノシロキサンは、それ自体を金属に対する配位子としてもよいが、他の配位子を配位させる際の溶媒として用いてもよい。ビニル基含有オルガノシロキサンを溶媒として用い、前述のカルボニル基を含む化合物を配位子とする錯体は、本発明のヒドロシリル化反応に用いられる触媒として、特に好ましい。
【0088】
このような錯体としては、具体的には、白金−カルボニル錯体のビニルメチル環状シロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のビニルエチル環状シロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のビニルプロピル環状シロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のジビニルテトラメチルジシロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のジビニルテトラエチルジシロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のジビニルテトラプロピルジシロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のジビニルテトラブチルジシロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のジビニルテトラフェニルジシロキサン溶液が挙げられる。
【0089】
これらの錯体からなる触媒は、ビニル基および/またはカルボニル基を含む化合物以外の成分を更に含んでいてもよい。たとえばビニル基および/またはカルボニル基を含む化合物以外の溶媒を含んでいてもよい。これらの溶媒としては、各種アルコールや、キシレン等を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【0090】
アルコールとしては、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert- ブチルアルコール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール等の脂肪族飽和アルコール類;アリルアルコール、クロチルアルコール等の脂肪族不飽和アルコール類;シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の脂環式アルコール類;ベンジルアルコール、シンナミルアルコール等の芳香族アルコール類;フルフリルアルコール等の複素環式アルコール類などが挙げられる。
【0091】
アルコールを溶媒として用いた例として、白金−オクタナル/オクタノール錯体が挙げられる。これらの溶媒を含むことにより、触媒の取扱いや、ゴム組成物への混合が容易になる等の利点が生ずる。以上に挙げた各種触媒のうちで、白金−カルボニル錯体のビニルメチル環状シロキサン溶液(中でも下記化学式1で示される錯体が好ましい)、白金−ビニルメチル環状シロキサン錯体(中でも化学式2で示される錯体が好ましい)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(中でも化学式3で示される錯体が好ましい)、白金−オクタナル/オクタノール錯体等が実用上好ましく、その中でも、白金−カルボニル
ビニルメチル環状シロキサン錯体が特に好ましい。
【0092】
化学式1: Pt0・CO・(CH2=CH(Me)SiO)4
化学式2: Pt0・(CH2=CH(Me)SiO)4
化学式3: Pt0-1.5[(CH2=CH(Me)2Si)2O]
パラジウム系触媒は、パラジウム、パラジウム化合物、塩化パラジウム酸等からなり、また、ロジウム系触媒は、ロジウム、ロジウム化合物、塩化ロジウム酸等からなる。
【0093】
上記以外の触媒としては、ルイス酸、コバルトカルボニルなどが挙げられる。
これらの触媒は、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
これらの触媒に含まれる周期律表8族元素金属(好ましくは白金)の割合は、通常0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、さらに好ましくは2〜4重量%ある。
【0094】
触媒は、共重合体(A)100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部の割合で用いられる。この範囲内で用いると、架橋密度が適度で強度特性および伸び特性に優れる架橋ゴム成形体を形成できる。10重量部を超える割合で用いると、コスト的に不利になるので好ましくない。
【0095】
なお、本発明においては、触媒を含まないゴム組成物の未架橋ゴム成形体に、光、γ線、電子線等を照射して架橋ゴム成形体を得ることもできる。
【0096】
〔反応抑制剤〕
本発明では、任意成分として、本発明の目的を損なわない範囲で公知の反応抑制剤を用いてもよい。
【0097】
抑制剤としては、特に限定されないが、たとえば、ベンゾトリアゾール、エチニル基含有アルコール(たとえば、1−エチニル−2−エチル−1−ヘキサノール、エチニルシクロヘキサノール)、アクリロニトリル、アミド化合物(たとえば、N,N-ジアリルアセトアミド、N,N-ジアリルベンズアミド、N,N,N',N'-テトラアリル-o-フタル酸ジアミド、N,N,N',N'-テトラアリル-m-フタル酸ジアミド、N,N,N',N'-テトラアリル-p-フタル酸ジアミドなど)、イオウ、リン、窒素、アミン化合物、イオウ化合物、リン化合物、スズ、スズ化合物、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0098】
これらの反応抑制剤は、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
反応抑制剤は、特に限定されないが、共重合体(A)100重量部に対して、通常0〜50重量部、好ましくは0.0001〜50重量部、より好ましくは0.0001〜30重量部、さらに好ましくは0.0001〜20重量部、特に好ましくは0.0001〜10重量部、最も好ましくは0.0001〜5重量部の割合で用いられる。50重量部以下の割合で用いると、架橋スピードが速く、架橋ゴム成形体の生産性に優れたゴム組成物が得られる。50重量部を超えると、コスト的に不利になるので、好ましくない。
【0099】
〔シランカップリング剤〕
本発明では、任意成分として、本発明の目的を損なわない範囲で公知のシランカップリング剤を用いてもよい。
【0100】
シランカップリング剤は、通常、さらに自己接着性を向上させる目的として用いられる。シランカップリング剤としては、アクリル(メタクリル)官能性シランカップリング剤、エポキシ官能性シランカップリング剤、アミノ(イミノ)官能性シランカップリング剤などが挙げられる。
【0101】
アクリル(メタクリル)官能性シランカップリング剤の具体例としては、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0102】
エポキシ官能性シランカップリング剤の具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0103】
アミノ(イミノ)官能性シランカップリング剤の具体例としては、H2NCH2CH2CH2Si(OCH33、H2NCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(OCH33、H2NCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(CH3)(OCH32、(C25O)3Si(CH2)3NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OC25)3等のアミノ基および(または)イミノ基含有アルコキシシラン;前記アミノ基および(または)イミノ基含有アルコキシシランと、
【0104】
【化3】

のようなエポキシシラン化合物との反応生成物;前記アミノ基および(または)イミノ基含有アルコキシシランと、CH2=C(CH3)COOCH2CH2CH2Si(OCH3)3 、CH2=C(CH3)COOCH2CH2CH2Si(OCH2CH2OCH3)3のようなメタクリルオキシシラン化合物との反応生成物などが挙げられる。
【0105】
シランカップリング剤は、特に限定されないが、共重合体(A)と化合物(B)との合計量100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
これらのシランカップリング剤は、目的に応じて、適宜、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0106】
〔可塑剤〕
本発明では、任意成分として、本発明の目的を損なわない範囲で、公知の可塑剤を用いてもよい。
【0107】
具体的には、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、エチレンとα−オレフィンのコオリゴマー、パラフィンワックス、流動パラフィン、ホワイトオイル、ペトロラタム、潤滑油、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;トール油;石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;フタル酸誘導体、イソフタル酸誘導体、テトラヒドロフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、アゼライン酸誘導体、セバシン酸誘導体、ドデカン-2- 酸誘導体、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体、トリメリット酸誘導体、ピロメリット酸誘導体、クエン酸誘導体、イタコン酸誘導体、オレイン酸誘導体、リシノール酸誘導体、ステアリン酸誘導体、リン酸誘導体、スルホン酸誘導体、グリセリン誘導体、グルタル酸誘導体、エポキシ誘導体、グリコール誘導体、パラフィン誘導体、シリコーンオイルなどを挙げることができる。
【0108】
中でも、シリレーション(シリル化)反応を阻害しないエチレンとα−オレフィンのコオリゴマー、プロセスオイル、パラフィン誘導体が好ましく用いられ、特にパラフィン系プロセスオイル、エチレンとα−オレフィンとのコオリゴマーが好ましく用いられる。特に、ヒドロシリル化反応を阻害しない可塑剤が好ましく、具体的には、硫黄化合物、チッソ化合物、アミン化合物、燐化合物の含有量が100ppm以下である可塑剤が好ましい。
【0109】
可塑剤は、特に限定されないが、共重合体(A)100重量部に対して、通常0〜1000重量部、好ましくは1〜1000重量部、より好ましくは5〜800重量部、さらに好ましくは10〜700重量部、特に好ましくは20〜500重量部、最も好ましくは30〜300重量部の割合で用いられる。上記割合で用いると、流動性が向上し成形性が向上する。また、1000重量部を超える割合で用いると、強度特性が悪化するおそれがあり、好ましくない。
これらの可塑剤は、目的に応じて、適宜、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0110】
〔無機フィラー〕
本発明では、任意成分として、本発明の目的を損なわない範囲で、ゴム補強剤や無機充填剤などの公知の無機フィラーを用いてもよい。
【0111】
ゴム補強剤は、架橋ゴムの引張強度、引き裂き強度、耐摩耗性などの機械的性質を高める効果がある。このようなゴム補強剤としては、特に限定されないが、たとえば、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラック、グラファイト、シランカップリング剤などにより表面処理が施されているこれらのカーボンブラック、微粉ケイ酸、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化カルシウムなどの酸化物系フィラー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物系フィラー、珪藻土、石灰岩などの堆積岩系フィラー、カオリナイト、モンモリオナイトなどの粘土鉱物系フィラー、フェライト、鉄、コバルトなどの磁性系フィラー、銀、金、銅、合金などの導電性フィラーなどが挙げられる。
【0112】
シリカとしては、煙霧質シリカ、沈降性シリカなどが挙げられる。これらのシリカは、ヘキサメチルジシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の反応性シランあるいは低分子量のシロキサン等で表面処理されていてもよい。また、シリカの比表面積(BET法)は、特に限定されないが、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは100〜400m2/gである。
【0113】
ゴム補強剤の種類および配合量は、その用途により適宜選択できるが、通常、共重合体(A)100重量部に対して、最大で300重量部、好ましくは200重量部以下である。
【0114】
また、無機充填剤としては、特に限定されないが、たとえば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーなどが挙げられる。
無機充填剤の種類および配合量は、その用途により適宜選択できるが、通常、共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜10,000重量部である。
これらの無機フィラーは、目的に応じて、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0115】
〔その他の成分〕
本発明では、ゴム組成物中に、本発明の目的を損なわない範囲で、意図する架橋物の用途等に応じて、従来公知の軟化剤、老化防止剤、加工助剤、有機過酸化物、架橋助剤、架橋助剤、発泡剤、発泡助剤、着色剤、分散剤、難燃剤、水分補足剤などの添加剤を配合することができる。これらの添加剤は、目的に応じて、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0116】
軟化剤としては、通常ゴムに使用される軟化剤を用いることができる。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;トール油;サブ;蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸および脂肪酸塩;石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質を挙げることができる。中でも石油系軟化剤が好ましく用いられ、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。
【0117】
軟化剤の配合量は、架橋物の用途により適宜選択される。
老化防止剤としては、たとえば、アミン系、ヒンダードフェノール系、またはイオウ系老化防止剤などが挙げられる。
【0118】
アミン系老化防止剤としては、たとえば、p- (p- トルエン・スルホニルアミド)-ジフェニルアミン、4,4'- (α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4'-ジオクチル・ジフェニルアミン、ジフェニルアミンとアセトンとの高温反応生成物、ジフェニルアミンとアセトンとの低温反応生成物、ジフェニルアミンとアニリンとアセトンとの低温反応物、ジフェニルアミンとジイソブチレンとの反応生成物、オクチル化ジフェニルアミン、ジオクチル化ジフェニルアミン、p,p'- ジオクチル・ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミンなどのジフェニルアミン類、
N,N'- ジフェニル-p-フェニレンジアミン、n- イソプロピル-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N'- ジ-2- ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N'-(3-メタクリロイルオキシ-2- ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、N,N'- ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、N,N'- ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N'- ビス(1-エチル-3- メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、フェニルヘキシル-p-フェニレンジアミン、フェニルオクチル-p-フェニレンジアミン等のp- フェニレンジアミン類などのフェニレンジアミン類が挙げられる。
【0119】
これらの中でも、特に4,4'- (α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N'- ジ-2- ナフチル-p-フェニレンジアミンが好ましい。
ヒンダードフェノール系老化防止剤としては、たとえば、(1)1,1,3-トリス- (2-メチル-4- ヒドロキシ-5-t- ブチルフェニルブタン、(2)4,4'- ブチリデンビス- (3-メチル-6-t- ブチルフェノール)、(3)2,2-チオビス(4-メチル-6-t- ブチルフェノール)、(4)7-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'- ジ-t- ブチルフェニル)プロピオネート、(5)テトラキス- [メチレン-3-(3',5'- ジ-t- ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、(6)ペンタエリスリトール- テトラキス[3-(3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、(7)トリエチレングリコール- ビス[3-(3-t-ブチル-5- メチル-4- ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、(8)1,6-ヘキサンジオール- ビス[3-(3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、(9)2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6- (4-ヒドロキシ-3,5- ジ-t- ブチルアニリノ)-1,3,5- トリアジン、(10)トリス- (3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシベンジル)- イソシアヌレート、(11)2,2-チオ- ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、(12)N,N'- ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシ)- ヒドロシンナアミド、(13)2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]- o-クレゾール、(14)3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシベンジル- ホスホネート- ジエチルエステル、(15)テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシヒドロシンナメイト)]メタン、(16)オクタデシル-3- (3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル、(17)3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4- ヒドロキシ-5- メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1- ジメチルエチル]-2,4-8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどを挙げることができる。中でも、特に(5)、(17)のフェノール化合物が好ましい。
【0120】
イオウ系老化防止剤としては、通常ゴムに使用される公知のイオウ系老化防止剤が挙げられ、たとえば、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾール、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾールの亜鉛塩、2-メルカプトメチルイミダゾールの亜鉛塩等のイミダゾール系老化防止剤;ジミリスチルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール- テトラキス- (β- ラウリル- チオプロピオネート)等の脂肪族チオエーテル系老化防止剤などを挙げることができる。これらの中でも、特に2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾール、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ペンタエリスリトール- テトラキス- (β- ラウリル- チオプロピオネート)が好ましい。
【0121】
加工助剤としては、通常のゴムの加工に使用される公知の化合物が挙げられ、たとえば、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸の塩;リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸のエステル類などが挙げられる。加工助剤は、通常、共重合体(A)100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは5重量部以下の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0122】
本発明では、意図する架橋物の用途等に応じて、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒の他に、有機過酸化物を使用して、付加架橋とラジカル架橋の両方を行なってもよい。
有機過酸化物は、共重合体(A)100重量部に対し、通常0.1〜10重量部程度の割合で用いられる。有機過酸化物としては、ゴムの架橋の際に通常使用されている従来公知の有機過酸化物を使用することができる。
【0123】
有機過酸化物を使用するときは、架橋助剤を併用することが好ましい。架橋助剤としては、たとえば、イオウ;p- キノンジオキシム等のキノンジオキシム系化合物;ポリエチレングリコールジメタクリレート等のメタクリレート系化合物;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等のアリル系化合物;マレイミド系化合物;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。架橋助剤は、有機過酸化物1モルに対して、通常0.5〜2モル、好ましくは、およそ等モルの量で用いられる。
【0124】
発泡剤としては、特に限定されないが、たとえば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'- ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'- オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホルニルアジド等のアジド化合物;二酸化炭素、窒素、酸素、フロンガス等のガスなどが挙げられる。これらの発泡剤は、共重合体(A)100重量部に対して、通常0.5〜30重量部、好ましくは1〜20重量部の割合で用いられる。上記割合で用いると、見かけ比重0.03〜0.8g/cm3の発泡体を製造することができるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0125】
また、必要に応じて、発泡剤と併用して、発泡助剤を使用してもよい。発泡助剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの作用をする。このような発泡助剤としては、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、シュウ酸等の有機酸、尿素またはその誘導体などが挙げられる。これらの発泡助剤は、共重合体(A)100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0126】
水分補足剤(水結合剤)としては、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリブチル等のオルトギ酸トリアルキル類;オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト酢酸トリブチル等のオルト酢酸トリアルキル類、フェニルイソシアネ−ト、p−クロロフェニルイソシアネ−ト、p−トルエンスルフォニルイソシアネ−ト等のモノイソシアネ−ト化合物、テトラエチルシリケート((C25O−)4Si)、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、シリカゲルなどが挙げられる。
【0127】
また、本発明のゴム組成物中には、本発明の目的を損なわない範囲で、公知の他のゴムをブレンドしてもよい。
他のゴムとしては、たとえば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などのイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などの共役ジエン系ゴムを挙げることができる。
【0128】
さらに、共重合体(A)と異なる、従来公知のエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムを用いることもできる。このようなゴムは、たとえば、エチレン・プロピレンランダム共重合体(EPR)、エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体(たとえば、EPDM)を挙げることができる。
【0129】
また、本発明では、本発明の目的を損なわない範囲で、ヒドロシリル基を1分子中に1個持つヒドロシリル基含有化合物を含んでいてもよい。
<ゴム組成物および架橋ゴム成形体の調製方法>
本発明に係る架橋可能なゴム組成物は、未架橋のままでも用いることもできるが、架橋ゴム成形体あるいは架橋ゴム発泡成形体のような架橋物として用いた場合に最もその特性を発揮することができる。
【0130】
本発明のゴム組成物から架橋物を製造するには、通常一般の室温架橋ゴム(RTVゴム)と同様に、共重合体(A)、化合物(B)、樹脂(C)と、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒と、意図する架橋物の用途等に応じて、反応抑制剤、シランカップリング剤、可塑剤、無機フィラーや、その他の添加剤を混ぜ合わせ、次いで、この配合ゴムを意図する形状に成形(隙間に充填したり、物体と物体の間に塗り込んだり、物体にコーティングしたり、物体をポッティングしたり)した後に、室温で放置し、架橋(加硫)を行なえばよい。本発明のゴム組成物は、架橋性に優れるため、室温、好ましくは20〜100℃においても、十分に架橋できる。また、架橋反応を促進するために加温してもよい。また、RIM(反応射出法)、LIM(液状射出法)により成形してもよく、RIM、LIM成形の場合に特に効果を発揮する。
【0131】
すなわち、ゴム組成物は、プラネタリーミキサー、ニーダー等の公知の混練装置を用いて、共重合体(A)、化合物(B)、樹脂(C)と、触媒と、意図する架橋物の用途等に応じて、反応抑制剤、シランカップリング剤、可塑剤、無機フィラーや、その他の添加剤を混ぜ合わせることにより、調製することができる。
【0132】
本発明においては、共重合体(A)とゴム補強剤、無機充填剤等などの無機フィラーは、高温で混練りすることができるが、化合物(B)、樹脂(C)、触媒は同時に高温で混練りすると、架橋(スコーチ)してしまうことがあるため、化合物(B)、樹脂(C)、触媒を同時に添加する場合は、80℃以下で混練りすることが好ましい。化合物(B)、樹脂(C)、触媒のうち、どれか一成分を添加する場合は、80℃を超える高温でも混練りすることができる。なお、混練りによる発熱に対して、冷却水を使用することも場合によっては好ましい。
【0133】
上記のようにして調製されたゴム組成物は、隙間に充填したり、物体と物体の間に塗り込んだり、物体にコーティングしたり、物体をポッティングしたり、また、押出成形機、カレンダーロール、プレス、インジェクション成形機、トランスファー成形機、RIM(反応射出)成形、LIM(液状射出)成形などを用いる種々の成形法より、意図する形状に成形され、その後、室温で放置することで架橋反応が進行し目的とする架橋物を得ることができる。また、架橋反応を促進するために加温してもよい。
【0134】
<用途>
本発明のゴム組成物は、電気・電子部品、粘着剤、バインダー、塗料、振動制御材(応力吸収材)、高反発材料、歯科用印象材料、ホース、ロール、光制御材料、サニタリー用品またはパッキン(ガスケット)、輸送機、土木・建築、医療、レジャーまたはホースなどの様々な用途に、幅広く用いることができる。
【0135】
電気・電子部品の用途としては、具体的には、重電部品、弱電部品、電気・電気機器の回路や基板のシーリング材、ポッティング材、コーティング材、もしくは接着剤;電線被覆の補修材;電線ジョイント部品の絶縁シール材;OA機器用ロール;振動吸収剤;ゲルもしくはコンデンサの封入材などが挙げられる。
【0136】
シーリング材は、たとえば冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、ガスメーター、電子レンジ、スチームアイロン、防水携帯機器、漏電ブレーカー用のシール材として好適に用いられる。
現状の防水携帯機器のシール剤には、液状シリコーンが用いられる場合があるが、シリコーンの加水分解起因などで耐水性が不足するといった問題がある。また、携帯機器筐体への粘接着性も悪いため、容易に剥がれてしまい、水が浸入するといった問題がある。本発明のゴム組成物を用いれば、加水分解の防止と界面の粘接着性向上により、耐水性が改善できる。
【0137】
ポッティング材は、たとえばトランス高圧回路、プリント基板、可変抵抗部付き高電圧用トランス、電気絶縁部品、半導電部品、導電部品、太陽電池、テレビ用フライバックトランスをポッティングするために好適に用いられる。
【0138】
コーティング材(封止材)は、たとえば高電圧用厚膜抵抗器もしくはハイブリッドIC等の各種回路素子;HIC、電気絶縁部品;半導電部品;導電部品;モジュール;印刷回路;セラミック基板;ダイオード、トランジスタもしくはボンディングワイヤーなどのバッファー材;半導電体素子;光通信用オプティカルファイバーをコーティングするために好適に用いられる。
【0139】
また、たとえば、現状の太陽電池セルの表面封止材は、一般的にEVAシートを150℃程度の真空加熱ラミネーターにて積層封止して得られるが、本発明のゴム組成物を用いれば、常温で架橋することができ、工程負荷が減る。また、塗布により成形されるので、真空状態としなくとも泡(ボイド)のかみこみが無くなり封止性が上げられる。さらに耐水性も向上し、屋外での長期信頼性向上が期待できる。
【0140】
周縁部封止材は、現在、液状のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ブチルゴムなどをガラス基板上に直接塗布・硬化して形成するか、またはアルミフレームなどの枠内に前記液状樹脂を注入・硬化して形成するなどの手法が用いられる。フッ素樹脂は耐熱、耐水(耐透湿)性などに優れるが、接着性に劣り、かつコストが高いとの問題がある。シリコーン樹脂は、接着性、充填性が優れるが、耐水(耐透湿)性が劣る上、低分子シロキサン揮発の問題が指摘されている。アクリル樹脂は、接着性は良好だが、ゴム弾性が劣るため、周縁部に長期間使用された場合のヘタリ(圧縮歪み)によりシール性が劣る問題がある。ブチルゴムは、耐水(耐透湿)性、ゴム弾性に優れるが接着性や耐紫外線性、耐熱性に劣り、一般的に架橋(硬化)には高温が必要といった問題がある。しかしながら、本発明のゴム組成物を用いれば、常温で封止することが可能な上、耐水(耐透湿)性、ゴム弾性、充填性、粘着(接着)性に優れ、従来以上の封止性能を得ることが可能となる。
【0141】
有機薄膜太陽電池のセル内は、空洞と水分補足剤(BaOなど)で構成されている。このような構成では筐体と基板との強度が得にくいうえ、水分の浸入を防ぎにくい。また、そのような問題を解決するために、ホットメルト封止材に水分補足剤を分散させたもので封止する方法が提案されているが、この手法では通常60〜100℃の温度が必要となり、有機薄膜素子にダメージを与える問題がある。しかしながら、本発明のゴム組成物及びそれに水分補足剤を含有したゴム組成物を用いれば、封止性を改善できる上に常温架橋が可能であるため、有機薄膜素子にダメージを与えることも無い。
【0142】
筐体シール部には、UV硬化型エポキシシール材などが使用されているが、UV硬化工程が新たに必要なため工程ロスが多い。しかしながら、本発明のゴム組成物を用いれば、先ほどの筐体内封止と一括した工程で筐体シールも可能となり、工程ロスが減らせられる。
【0143】
現状の色素増感型太陽電池の封止部には、EVA、シリコーン、エポキシ樹脂などが用いられる場合があるが、EVAでは高温熱処理による接着が必要であり、シリコーンでは耐水(耐透湿)性不足し、エポキシ樹脂も同様に架橋に高温が必要であり、低温プロセスが適用できない問題がある。しかしながら、本発明のゴム組成物を用いれば常温架橋が可能な上、耐水性も向上できる。
【0144】
現状の電線止水材には、シリコーングリース、液状シリコーン、液状ウレタン、液状エポキシなどが用いられる場合があるが、シリコーングリースでは電線被覆材との接着性が不十分なためシール性に問題があり、液状シリコーンとウレタンでは耐水(耐透湿)性不足し、液状エポキシでは高温で長時間架橋する必要があり、周辺部材への熱負荷の問題やプロセス時間の問題がある。しかしながら、本発明のゴム組成物を用いれば、常温架橋が可能な上、耐水性も向上できる。
【0145】
現状の電子部品封止材には、液状シリコーン、液状ウレタン、液状エポキシなどが用いられる場合があるが、液状シリコーンとウレタンでは耐水(耐透湿)性不足し、液状エポキシでは高温で長時間架橋する必要があり、周辺部材への熱負荷の問題やプロセス時間の問題がある。しかしながら、本発明のゴム組成物を用いれば、常温架橋が可能な上、耐水性も向上できる。
【0146】
建築外壁材や複層ガラスのシーリング剤には、液状シリコーン、液状ウレタンなどが用いられる場合があるが、液状シリコーンとウレタンでは耐水(耐透湿)性不足の問題がある。しかしながら、本発明のゴム組成物を用いれば、耐水性を向上できる。
【0147】
接着剤は、たとえばブラウン管ウェッジ、ネック、電気絶縁部品、半導電部品または導電部品を接着するために好適に用いられる。
電子部品、自動車などのマスキングテープ、包装資材固定用テープ、加飾フィルム、プリント配線板などの表面保護テープ、電子部品の絶縁用テープ、半導体工程用テープなど、各種テープやフィルムの粘着層には、シリコーン、ウレタン、アクリル、SBR、ブチルゴムなどが用いられる。しかしながら、シリコーンとウレタンでは耐水(耐透湿)性不足の問題がある。アクリルでは一般的に溶剤や水分散系が使われるため、環境負荷が大きい問題がある。SBR、ブチルゴムでは耐熱性が不足する問題がある。しかしながら、本発明のゴム組成物を用いれば、耐水性を向上できる。
【0148】
バインダーとしては、たとえば、リチウムイオン電池バインダー、コピー機などのトナーバインダーなどが挙げられる。
電子部品の冷却用には、TIM(Thermal Interface Material)として放熱フィラーと樹脂バインダーで構成された放熱材が用いられる。また、電子部品や回路を外部ノイズから保護するために導電性、または磁性を有したフィラーと樹脂バインダーで構成された電磁波シールド材が用いられる。また、電子部品などの製造工程中での静電防止を目的とし、酸化物系無機微粒子と樹脂バインダーで構成された静電防止材(塗料)が塗布された基材が用いられる。また、回路端子間の接続などに導電性フィラーと樹脂バインダーで構成された導電材(ペーストなど)が用いられる。さらに、セラミックコンデンサーを製造する工程ではセラミック粒子同士の結着用にバインダー(焼成バインダー)が用いられる。これら樹脂バインダーには様々な樹脂が用いられるが、共通して次の問題がある。シリコーンとウレタンでは耐水(耐透湿)性不足の問題がある。アクリルでは、一般的に溶剤や水分散系が使われるため、環境負荷が大きい問題がある。エポキシ樹脂は、高温処理で硬化する必要があり、プロセス制限や周辺部材への熱負荷の問題がある。ブチラール樹脂は、一般的に溶剤に溶かされた状態でバインダーとして用いるので、作業者への健康被害の問題がある。しかしながら、本発明のゴム組成物を用いれば、常温架橋、溶剤レス、耐水性向上が可能となり前記問題を解決できる。
【0149】
塗料としては、たとえば、船底塗料、鋼板塗料などが挙げられる。
自動車、船底、容器、産業資材、携帯機器など各種用途の防錆、防汚、防水、意匠性付与などを目的に塗料が用いられ、そのバインダーには各種樹脂が使用される。しかしながら、シリコーンおよびウレタンでは耐水(耐透湿)性不足の問題がある。アクリルおよびポリブテンでは一般的に溶剤や水分散系が使われるため、環境負荷が大きい問題がある。エポキシは高温処理で硬化する必要があり、プロセス制限や周辺部材への熱負荷の問題がある。不飽和ポリエステルは触媒(促進剤)としてオクテン酸コバルトなどを多量に含有させる必要があり、環境負荷の問題がある。フッ素樹脂は一般的に溶剤希釈系が使われる
上、樹脂自体が高価であるといった問題がある。しかしながら、本発明のゴム組成物を用いれば、常温架橋、溶剤レス、耐水性向上が可能となり前記問題を解決できる。
【0150】
振動制御材(応力吸収材)としては、たとえば、家電防振材、住宅防振材などが挙げられる。
従来、船舶、車両、自動車部品、家庭電化製品、各種機械、建築材料、音響材料、スポーツ用品などの構造部材の制振用に各種樹脂(非晶質ポリオレフィン、各種ゴム、アスファルト、合成樹脂エマルジョンなど)が適用されている。しかしながら、非晶質ポリオレフィン(エチレンプロピレン共重合体、プロピレンブテン共重合体など)、各種ゴム、アスファルトなどは一般的に常温で固形状なので、所望の場所に簡便に塗布して制振性を付与するなどといったことはできなかった。また、合成樹脂エマルジョンなどは一般的に水分散系で用いられるため、乾燥工程が必要といった問題があった。しかしながら、本発明のゴム組成物を用いれば、その場で加工および/または塗布ができ、常温架橋、溶剤レスが可能となり前記問題を解決できる。
【0151】
高反発材料としては、たとえば、卓球ラケット用ラバー、卓球ラケット用部材、各種シューズ用クッションなどが挙げられる。
従来、靴底、パッキン、各種グリップ、自動車内装材、スポーツ用品などには、高反発材料(ポリ塩化ビニル、アクリロニロリルブタジエンゴム、ポリウレタンなど)が適用されている。しかしながら、ポリ塩化ビニルは通常溶液形状ではないため加工の利便性が少ない上、環境負荷の問題がある。アクリロニトリルブタジエンゴムは、機械強度に課題がある。ポリウレタンは、耐水(耐透湿)性不足の問題がある。しかしながら、本発明のゴム組成物を用いれば、その場で加工および/または塗布ができ、常温架橋、溶剤レス、且つ耐水性向上が可能となり前記問題を解決できる。
【0152】
本発明にかかるゴム組成物は、歯科用印象材料としても好適である。従来、歯科用印象材料には、付加硬化型シリコーン樹脂が主に用いられている。しかしながら、付加硬化型シリコーン樹脂は一般的に弾性歪みが小さく、且つ歯や石膏との接着性により、例えば口内からの印象撤去が困難であり患者に痛みを与えたりする場合がある。しかしながら、本発明のゴム組成物を用いれば、弾性歪が大きく、且つ粘着性コントロールにより易離型性も得られるため印象撤去が容易となり、前記問題を解決できる。
【0153】
ホースは、自動車用水系ホース、自動車用ブレーキ系ホースの自動車用ホースと、スチーム用ホース、水系ホース、空気用等の工業用ホースとに大別される。特に自動車用水系ホースでは、体積固有抵抗値(23℃)が104 Ω・cm以上のホースが適している。この体積固有抵抗は、たとえばカーボンブラックの種類と配合量によって調整される。
【0154】
ロールとしては、たとえば、プリンタロール、工程搬送用ロール、ゴミ取りロールなどが挙げられる。
現状のゴムロールには、固形のEPDMが用いられているが、成形性を改善して生産性を向上させたい要望がある。本発明のゴム組成物を用いる事で成形性を改善し高い生産性を発揮できる。
【0155】
光制御材料としては、たとえば、液晶画面用透明封止材、タッチパネル用透明封止材、OCAテープなどが挙げられる。
本発明では、衛生関連の用途に用いられる用品全般に適宜用いることもでき、このようなサニタリー用品としては、たとえば、ゴミ箱用シール部材、包装用シール材、サニタリーパッキン、サニタリーガスケットなどが挙げられる。
【0156】
また、本発明では、サニタリー用品以外のパッキンやガスケットにも用いることができ、このようなパッキンやガスケットとしては、たとえば、燃料電池ガスケット、産業機器用パッキン、携帯機器用パッキンなどが挙げられる。
【0157】
従来、自動車や産業機器、電子機器、配管、水周り、建設資材など多様な用途のシーリング用に、各種ゴムを用いたガスケットやゴムパッキンが適用されている。しかしながら天然ゴムと合成天然ゴムは、耐熱性が低い問題がある。SBRは低温性が悪い問題がある。ブタジエンゴムは、機械強度が落ちる問題がある。クロロプレンゴム、ニトリルゴムは、耐薬品性が悪い問題がある。ブチルゴムは、耐熱性や耐侯性が落ちる問題がある。アクリルゴム、シリコーンゴムは、耐水性が悪い問題がある。フッ素ゴムは、コスト高といった問題がある。しかしながら、本発明のゴム組成物を用いれば、耐熱性、耐寒性、耐侯性を改善する上、常温架橋、溶剤レス、耐水性向上が可能となり前記問題を解決できる。
【0158】
現状の樹脂レンズの材料としては、ポリメチルアクリレート、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネートなどが用いられる場合があるが、良成形性と寸法安定性を両立する事が難しい。しかしながら、本発明のゴム組成物を用いれば問題を解決する事ができる。
【0159】
自動車の用途としては、たとえば、自動車エンジンのガスケット、電装部品もしくはオイルフィルターのシーリング材;イグナイタHICもしくは自動車用ハイブリッドICのポッティング材;自動車ボディ、自動車用窓ガラス、エンジンコントロール基板のコーティング材;またはオイルパン、タイミングベルトカバー等のガスケット、モール、ヘッドランプレンズ、サンルーフシール、ミラー用の接着剤などが挙げられる。
【0160】
船舶の用途としては、たとえば、配線接続分岐箱、電気系統部品もしくは電線のシーリング材;電線もしくはガラス用の接着剤などが挙げられる。
土木・建築の用途としては、たとえば商業用ビルのガラススクリーン工法の付き合わせ目地、サッシとの間のガラス周り目地、トイレ、洗面所もしくはショーケース等における内装目地、バスタブ周り目地、プレハブ住宅用の外壁伸縮目地、サイジングボード用目地に使用される建材シーラント;複層ガラス用シーリング材;道路の補修に用いられる土木用シーラント;金属、ガラス、石材、スレート、コンクリートもしくは瓦の塗料・接着剤;または粘着シート、防水シートもしくは防振シートなどが挙げられる。
【0161】
医療の用途としては、たとえば医薬用ゴム栓、シリンジガスケット、減圧血管用ゴム栓などが挙げられる。
レジャーの用途としては、たとえばスイミングキャップ、ダイビングマスク、耳栓等のスイミング部材;スポーツシューズ、野球グローブ等のゲル緩衝部材などが挙げられる。
【0162】
この内でも、たとえば、ポッティング材(封止材)、シーリング剤、粘着剤、バインダー、塗料、振動制御材(応力吸収材料)、高反発材料、歯科用印象材料、ホース、ロール、光制御材料、サニタリー用品またはパッキン(ガスケット)などの用途に好ましい。
【実施例】
【0163】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、本発明において各物性は以下のようにして評価した。
【0164】
〔各種測定条件〕
〔1〕粘度(mPa・s)
東機産業(株)社製E型粘度計(RE−105U)を用いて、コーンプレート(角度:1度×R24mm、若しくは3度×R14mm)、回転数:0.1〜100rpm、試料量:0.6〜1.0gの条件にて測定し、30秒以上同じ値を示した数値を粘度とした。
粘度が、3,000mPa・s以下のものを○とし、それを超えるものを×とした。
【0165】
〔2〕粘着性評価(1)
架橋物が塗布された基材を10cm□(四角)サイズに切り出し、該基材と、硫黄加硫により作製された約2mm厚のEPDMラバーシート(10cm□(四角)、三井化学(株)製(硫黄架橋))とを、該基材の架橋物層側から貼り合わせた。
【0166】
架橋物層とPETフィルムを端部から1cm程度剥がし、端部を垂直方向に持ち上げるようにしたときに、ラバーシートが架橋物側から剥がれないものを○とし、剥がれてしまうものを×とした。
【0167】
〔3〕粘着性評価(2)
架橋物が塗布された基材を幅2cm、長さ10cmの短冊状に切り出し、該基材の幅2cm、長さ5cm部分に、幅2cm×長さ10cmの短冊形状のPETフィルム(厚み50μm、東レ(株)社製ルミラー)をゴムロールで押し付けて貼り合わせた。
得られた基材に対して、ストログラフ(東洋精機(株)社製)を用いて引張試験を行い、貼り合わせた部分の粘着性に対して、最大ピーク強度を測定した。
【0168】
〔4〕汚染性評価
市販セロハンテープ(住友スリーエム(株)社製)の粘着層側を、架橋物が塗布された基材の架橋物層側に貼り付けた。その後、セロハンテープを勢い良く180度方向に引き剥がした。
【0169】
セロハンテープ側への架橋物の移行性(汚染性)について評価した。セロハンテープ側に架橋物がほぼ移行する場合を×とし、一部移行する場合を△、全く移行しない場合を○とした。
【0170】
〔実施例1〕
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(A)(エチレン単位〔i〕/α−オレフィン単位〔ii〕のモル比(〔i〕/〔ii〕):60〜66mol%/30〜36mol%、ヨウ素価:7〜30(g/100g)、極限粘度[η](135℃のデカリン溶液中):0.07〜0.1(dl/g)、Mn:900〜1,000、粘度:8,000〜12,000mPa・s、三井化学(株)社製PX068)を100重量部、下記式(XIII)のヒドロシリル基含有化合物(B)(信越化学工業(株)社製X93−916)を11.4重量部、1−オクタデセン(C)(出光興産(株)社製出光リニアレン18)を3重量部、下記式(XIV)の反応抑制剤(信越化学工業(株)社製X93−1036)を0.4重量部混合した。その後、撹拌機((株)THINKY社製あわとり錬太郎 AR−250)を用いて、常温下で、300秒以上撹拌した。冷却後、撹拌機に、白金系触媒(信越化学工業(株)社製X93−1410)を0.4重量部添加し、さらに10秒以上攪拌した後、卓上塗工機(三井電気精機(株)社製)により、PETフィルム(東レ(株)社製ルミラー、厚み50μm)に混錬物を200〜300μmの厚みとなるように塗布して、100℃で、10分間架橋を行った。
得られた架橋物について、評価を行った。結果を表1に示す。
【0171】
【化4】

【0172】
【化5】

【0173】
〔実施例2〜4および比較例1〜3〕
原料および配合量を表1に従って変更した以外は、実施例1と同様にして、架橋物を得た。なお、比較例2および3では、α−オレフィンまたはジオレフィン(C)の代わりに、パラフィン系可塑剤(出光興産(株)社製PW32)を用いた。得られた架橋物について、それぞれ評価を行い、結果を表1に示した。
【0174】
【表1】

【0175】
〔実施例5〕
原料および配合量を表2に従って変更した以外は、実施例1と同様にして、架橋物を得た。なお、テルペン系樹脂は、ヤスハラケミカル社製ダイマロン(数平均分子量:300、炭素数10〜30)を用いた。また、該テルペン系樹脂の主骨格を下記式(XV)に示した。得られた架橋物について、評価を行い、結果を表2に示した。
【0176】
【化6】

【0177】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)下記要件(a)〜(c)を満たし、かつ、エチレンから導かれる構成単位〔i〕と、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位〔ii〕と、下記一般式[I]および[II]から選ばれる少なくとも一種の非共役ポリエンから導かれる構成単位〔iii〕を含むエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体と、
(a)エチレン単位〔i〕/α−オレフィン単位〔ii〕のモル比(〔i〕/〔ii〕)が、35/65〜95/5であり、
(b)ヨウ素価が0.5〜50の範囲にあり、
(c)135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が0.01〜5.0(dl/g)の範囲である;
(B)ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物を、前記共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜100重量部と、
(C)前記共重合体(A)と相溶性があり、分子鎖の片末端に二重結合を有する、炭素原子数6〜3000のα−オレフィン(c1)、前記共重合体(A)と相溶性があり、分子鎖の両末端に二重結合を有する、炭素数6〜3000のジオレフィン(c2)および前記共重合体(A)と相溶性があり、分子鎖の内部または末端に二重結合を有する炭素数7以上かつ数平均分子量が2000以下であるテルペン系樹脂(c3)から選ばれる少なくとも1種の樹脂を、前記共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜100重量部含む組成物であり、
該組成物の25℃での粘度が0.001〜1000Pa・sであること特徴とする架橋可能なゴム組成物。
【化1】

(式[I]中、nは0ないし10の整数であり、R1は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R2は水素原子または炭素原子1〜5のアルキル基である)。
【化2】

(式[II]中、R3は水素原子または炭素原子1〜10のアルキル基である)。
【請求項2】
白金系触媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の架橋可能なゴム組成物。
【請求項3】
無機フィラーを、前記共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜10,000重量部含むことを特徴とする請求項1または2に記載の架橋可能なゴム組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の架橋可能なゴム組成物をヒドロシリル化反応により架橋させてなる架橋ゴム成形体。
【請求項5】
ポッティング材、シーリング剤、粘着剤、バインダー、塗料、振動制御材、高反発材料、歯科用印象材料、ホース、ロール、光制御材料、サニタリー用品またはパッキンに用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の架橋可能なゴム組成物。

【公開番号】特開2013−14738(P2013−14738A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268909(P2011−268909)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】