説明

架橋可能なポリエチレン組成物、その製造方法及びそれから製造された物品

本発明は、架橋可能なポリエチレン組成物、架橋可能なポリエチレン組成物の製造方法、及び、架橋可能なポリエチレン組成物から製造される物品である。本発明による架橋可能なポリエチレン組成物は、ポリエチレン成分と、架橋剤と、架橋助剤とを含む。架橋剤は有機ペルオキシドであり、架橋助剤は、少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物である。架橋可能なポリエチレン組成物は場合によりさらに、スコーチ阻害剤、硬化増強剤、安定なフリーラジカル、1つ又はそれ以上の通常の添加剤、それらのブレンド、及び/又は、それらの組合せを含むことができる。本発明による架橋可能なポリエチレン組成物の製造方法は、(1)ポリエチレン成分を提供する工程;(2)有機ペルオキシドである架橋剤を提供する工程;(3)少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物である架橋助剤を提供する工程;(4)ポリエチレン成分、架橋剤及び架橋助剤を、架橋剤の分解温度よりも低い範囲の温度で溶融混合する工程;及び(5)それにより、架橋可能なポリエチレン組成物を形成する工程を含む。本発明による物品は、ポリエチレン成分と、有機ペルオキシドである架橋剤と、少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物である架橋助剤との架橋された生成物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に関する相互参照
本出願は、2007年2月5日に出願された米国仮特許出願第60/899,485号(発明の名称「架橋可能なポリエチレン組成物、その製造方法及びそれから製造された物品」、その教示は、以下、本明細書においてすべてが再現されるかのように本明細書に参照により組み込まれる)からの優先権を主張する非仮出願である。
【0002】
本発明は、架橋可能なポリエチレン組成物、架橋可能なポリエチレン組成物の製造方法、及び、架橋可能なポリエチレン組成物から製造される物品に関する。
【背景技術】
【0003】
架橋可能なポリマー組成物を、様々な物品(例えば、ケーブル、パイプ、履き物及びフォーム(foams)など)を製造するために使用することが一般に、周知である。架橋可能なポリマー組成物は一般に、ポリマー、架橋剤(例えば、有機ペルオキシドなど)、酸化防止剤、及び、場合によっては様々な他の添加剤(例えば、スコーチ(scorch)阻害剤及び架橋増強剤など)を含む。架橋は、様々な機械的要求及び物理的要求(例えば、改善された高温特性など)を満たすことにおいてポリマーを助ける。
【0004】
ポリマーをフリーラジカル開始剤(例えば、有機ペルオキシドなど)により架橋することもまた一般に、周知である。一般的には、有機ペルオキシドが、ペルオキシドが著しく分解する開始温度よりも低い温度で、ロールミル、二軸スクリュー混練押出し機、あるいは、Banbury(商標)ミキサー又はBarbender(商標)ミキサーにおいて溶融混合することによってポリマーに配合される。様々なペルオキシドが、非特許文献1(Plastic Additives Handbook(Gachterら, 1985, 646頁〜649頁))に記載されるように、それらの半減期温度に基づいて分解について判断される。
【0005】
ポリマー化合物への有機ペルオキシド配合のための代替方法の1つが、液状ペルオキシドと、ポリマーのペレットとを、有機ペルオキシドの凍結点よりも高く、かつ、有機ペルオキシドの分解温度及びポリマーの溶融温度よりも低い温度で維持されるブレンド配合デバイス(例えば、Henschel(商標)ミキサーなど)又は浸漬デバイス(例えば、単純なドラムタンブラーなど)において混合することである。有機ペルオキシド配合後、ポリマー/有機ペルオキシドのブレンドは、その後、例えば、ケーブルを形成するために、ブレンドが有機ペルオキシドの分解温度よりも低い温度で電気伝導体の周りに押し出される押出し機に導入される。その後、ケーブルは、有機ペルオキシドが分解してフリーラジカルをもたらし、このフリーラジカルによりポリマーが架橋される、より高い温度にさらされる。
【0006】
ペルオキシドを含有するポリマーはスコーチ(押出しプロセス中に生じる早まった架橋)を受けやすい。スコーチは樹脂における変色したゲル様粒子を形成し、また、押出し中における押出し機の圧力の望ましくない増加を引き起こす。さらに、高い架橋密度を達成するために、多くの場合、高レベルの有機ペルオキシドが使用されている。しかしながら、高レベルの有機ペルオキシドは、押出しプロセス及び最終製品に対する負の影響を有する、スウェットアウト(sweat-out)として公知である1つの問題を引き起こす。スウェットアウトダストは、爆発の可能性がある危険物であり、フィルターを詰まらせることがあり、また、押出しプロセスにおける滑り及び不安定性の原因となり得る。従って、高い架橋密度を維持しながら、有機ペルオキシドの量を減らすことが望まれる。
【0007】
特許文献1(米国特許第6,143,822号)は、(a)ポリエチレン、(b)スコーチ阻害剤として、置換又は非置換の1,1−ジフェニルエチレン、(c)場合によって、硬化増強剤、及び、(d)有機ペルオキシドを含む、ポリエチレンの架橋可能な組成物を開示する。
【0008】
特許文献2(米国特許第6,187,847号は、(a)ポリエチレン、(b)スコーチ阻害剤として、[1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン]、及び、(c)有機ペルオキシドを含む、ポリエチレンの架橋可能な組成物を開示する。
【0009】
特許文献3(米国特許第6,228,917号は、(a)ポリエチレン、(b)スコーチ阻害剤として、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)又はこれらの混合物、(c)場合によって、硬化増強剤、及び、(d)有機ペルオキシドを含む、ポリエチレンの架橋可能な組成物を開示する。
【0010】
特許文献4(米国特許第6,656,986号は、(a)ポリエチレン、(b)スコーチ阻害剤として、[1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン]、(c)チオエステル、(d)ヒンダードアミン安定剤、及び、(e)有機ペルオキシドを含む、ポリエチレンの架橋可能な組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,143,822号
【特許文献2】米国特許第6,187,847号
【特許文献3】米国特許第6,228,917号
【特許文献4】米国特許第6,656,986号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Plastic Additives Handbook(Gachterら, 1985, 646頁〜649頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
架橋可能なポリエチレン組成物を開発することにおける研究努力にもかかわらず、最小限のスコーチを伴って高い温度及び大きい速度で押出しすることができ、それにもかかわらず、長期間の熱老化(heat aging)安定性を犠牲にすることなく、高い架橋密度に速い硬化速度で架橋することができる改善された架橋可能なポリエチレン組成物が依然として求められている。さらには、そのような改善された架橋可能なポリエチレン組成物の製造方法が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、架橋可能なポリエチレン組成物、架橋可能なポリエチレン組成物の製造方法、及び、架橋可能なポリエチレン組成物から製造される物品である。本発明による架橋可能なポリエチレン組成物は、ポリエチレン成分と、架橋剤と、架橋助剤とを含む。架橋剤は有機ペルオキシドであり、架橋助剤は、少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物である。架橋可能なポリエチレン組成物は場合によりさらに、スコーチ阻害剤、硬化増強剤、安定なフリーラジカル、1つ又はそれ以上の通常の(conventional)添加剤、それらのブレンド、及び/又は、それらの組合せを含むことができる。本発明による架橋可能なポリエチレン組成物の製造方法は、(1)ポリエチレン成分を提供する工程;(2)有機ペルオキシドである架橋剤を提供する工程;(3)少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物である架橋助剤を提供する工程;(4)ポリエチレン成分、架橋剤及び架橋助剤を、架橋剤の分解温度よりも低い範囲の温度で溶融混合する工程;及び(5)それにより、架橋可能なポリエチレン組成物を形成する工程を含む。本発明による物品は、ポリエチレン成分と、有機ペルオキシドである架橋剤と、少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物である架橋助剤との架橋された生成物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、架橋可能なポリエチレン組成物、架橋可能なポリエチレン組成物の製造方法、及び、架橋可能なポリエチレン組成物から製造される物品である。
【0016】
本発明による架橋可能なポリエチレン組成物は、ポリエチレン成分と、架橋剤と、架橋助剤とを含む。架橋可能なポリエチレン組成物は場合によりさらに、スコーチ阻害剤、硬化増強剤、安定なフリーラジカル、1つ又はそれ以上の通常の添加剤、それらのブレンド、及び/又は、それらの組合せを含むことができる。
【0017】
用語「ポリエチレン」は、本明細書中で使用される場合、エチレンのホモポリマー、あるいは、エチレンと、少ない割合の、最大でも20個の炭素原子を有する1つ又はそれ以上のα−オレフィンコモノマーと、場合により、ジエンとのコポリマー、あるいは、そのようなホモポリマー及びコポリマーの混合物又はブレンドを示す。混合物は機械的なブレンド又はin situブレンドであることが可能である。α−オレフィンコモノマーは20個未満の炭素原子を有することができる;例えば、α−オレフィンコモノマーは3個〜12個の炭素原子を有することができる;又は、代替において、α−オレフィンコモノマーは3個〜8個の炭素原子を有することができる。例示的なα−オレフィンコモノマーには、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン及び4−メチル−1−ペンテンが含まれるが、これらに限定されない。ポリエチレン成分は、エチレンと、不飽和エステル(例えば、ビニルエステル(例えば、ビニルアセタート)又はアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルなど)とのコポリマーであることもまた可能である。
【0018】
ポリエチレン成分は均一又は不均一であることが可能である。均一ポリエチレンは通常、多分散度(Mw/Mn)が約1.5〜約3.5の範囲にあり、本質的に一様なコモノマー分布を有し、1つだけの比較的低いDSC融点によって特徴づけられる。他方で、不均一ポリエチレンは、3.5を超える多分散度(Mw/Mn)を有し、一様なコモノマー分布を有しない。Mwは、本明細書中で使用される場合、重量平均分子量を示し、Mnは、本明細書中で使用される場合、数平均分子量を示す。ポリエチレン成分は密度を0.855g/cm3〜0.950g/cm3の範囲に有することができる。0.855g/cm3から0.950g/cm3までのすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、また、本明細書に開示される;例えば、ポリエチレン成分は密度を0.870g/cm3〜0.940g/cm3の範囲に有することができる;又は、代替において、ポリエチレン成分は密度を0.875g/cm3〜0.940g/cm3の範囲に有することができる。ポリエチレン成分はさらに、メルトインデックス(I2)を、例えば、0.1g/10分〜3500g/10分の範囲に有することができる。0.1g/10分から3500g/10分までのすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、また、本明細書に開示される;例えば、ポリエチレン成分はメルトインデックス(I2)を0.5g/10分〜1000g/10分の範囲に有することができる;又は、代替において、ポリエチレン成分はメルトインデックス(I2)を0.7g/10分〜1000g/10分の範囲に有することができる。ポリエチレン成分は任意の量の1つ又はそれ以上のα−オレフィンコポリマーを含むことができる;例えば、ポリエチレン成分は、ポリエチレン成分の重量に基づいて、49重量パーセント未満の1つ又はそれ以上のα−オレフィンコポリマーを含むことができる。49重量パーセント未満のすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、また、本明細書に開示される;例えば、ポリエチレン成分は、ポリエチレン成分の重量に基づいて、10重量パーセント未満の1つ又はそれ以上のα−オレフィンコポリマーを含むことができる;又は、代替において、ポリエチレン成分は、ポリエチレン成分の重量に基づいて、5重量パーセント未満の1つ又はそれ以上のα−オレフィンコポリマーを含むことができる。ポリエチレン成分は任意の量のエチレンを含むことができる;例えば、ポリエチレン成分は、ポリエチレン成分の重量に基づいて、少なくとも約51重量パーセントのエチレンを含むことができる。51重量パーセントを超えるすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、また、本明細書に開示される;例えば、ポリエチレン成分は、ポリエチレン成分の重量に基づいて、少なくとも約90重量パーセントのエチレンを含むことができる;又は、代替において、ポリエチレン成分は、ポリエチレン成分の重量に基づいて、少なくとも約95重量パーセントのエチレンを含むことができる。架橋可能なポリエチレン組成物は、例えば、架橋可能なポリエチレン組成物の総重量に基づいて、少なくとも85重量パーセントのポリエチレン成分を含むことができる。85重量パーセントを超えるすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、また、本明細書に開示される;例えば、架橋可能なポリエチレン組成物は、架橋可能なポリエチレン組成物の重量に基づいて、少なくとも約90重量パーセントのポリエチレン成分を含むことができる;代替において、架橋可能なポリエチレン組成物は、架橋可能なポリエチレン組成物の重量に基づいて、少なくとも約95重量パーセントのポリエチレン成分を含むことができる。
【0019】
ポリエチレン成分は、任意の方法によって、例えば、低圧法又は高圧法によって製造することができる。ポリエチレン成分は気相で製造することができる;又は、代替において、ポリエチレン成分は通常の技術によって溶液又はスラリーでの液相で製造することができる。低圧法は典型的には、1000psi未満の圧力で行われ、これに対して、高圧法は典型的には、15,000psiを超える圧力で行われる。
【0020】
これらのポリエチレンを調製するために使用することができる典型的な触媒システムには、米国特許第4,302,565号(不均一ポリエチレン)に記載される触媒システムによって例示され得るマグネシウム/チタン系の触媒システム;バナジウム系の触媒システム、例えば、米国特許第4,508,842号(不均一ポリエチレン)、ならびに、米国特許第5,332,793号、同第5,342,907号及び同第5,410,003号(均一ポリエチレン)に記載される触媒システムなど;クロム系の触媒システム、例えば、米国特許第4,101,445号に記載される触媒システムなど;メタロセン触媒システム、例えば、米国特許第4,937,299号、同第5,272,236号、同第5,278,272号及び同第5,317,036号(均一ポリエチレン)に記載される触媒システムなど;又は他の遷移金属触媒システムがある。これらの触媒システムの多くが多くの場合、チーグラー・ナッタ触媒システム又はフィリップス触媒システムと呼ばれる。酸化クロム又は酸化モリブデンをシリカ−アルミナ担体において使用する触媒システムがここに含まれ得る。そのような様々なポリエチレンを調製するための典型的な方法もまた、上記特許に記載される。典型的なin situポリエチレンブレンド、ならびに、in situポリエチレンブレンドを提供するための方法及び触媒システムが、米国特許第5,371,145号及び同第5,405,901号に記載される。これらの様々なポリエチレンには、高圧法によって製造されるエチレンの低密度ホモポリマー(HP−LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、0.940g/cm3を超える密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)、及び、0.860g/cm3〜0.950g/cm3に及ぶより低い密度を有するメタロセンコポリマーが含まれ得る。後者の5つのポリエチレンは一般に低圧法によって製造される。通常の高圧法は、Introduction to Polymer Chemistry, Stille, Wiley and Sons, New York, 1962, 149頁〜151頁に記載される。高圧法は典型的には、管状リアクター又は撹拌型オートクレーブにおいて行われるフリーラジカル開始の重合である。撹拌型オートクレーブでは、圧力が約10,000psi〜30,000psiの範囲であり、温度が約175℃〜約250℃の範囲であり、管状リアクターでは、圧力が約25,000psi〜約45,000psiの範囲であり、温度が約200℃〜約350℃の範囲である。
【0021】
エチレン及び不飽和エステルから構成される様々なコポリマーが周知であり、上記で記載される通常の高圧技術によって調製され得る。不飽和エステルは、アルキルアクリラート、アルキルメタクリラート及びビニルカルボキシラートが可能である。アルキル基は1個〜8個の炭素原子を有することができ、好ましくは1個〜4個の炭素原子を有する。カルボキシラート基は2個〜8個の炭素原子を有することができ、好ましくは2個〜5個の炭素原子を有する。エステルコモノマーに起因するコポリマーの部分は、コポリマーの重量に基づいて、約5重量パーセント〜約50重量パーセントの範囲にあることが可能であり、好ましくは約15重量パーセント〜約40重量パーセントの範囲にある。アクリラート類及びメタクリラート類の例には、エチルアクリラート、メチルアクリラート、メチルメタクリラート、t−ブチルアクリラート、n−ブチルアクリラート、n−ブチルメタクリラート及び2−エチルヘキシルアクリラートがある。ビニルカルボキシラートの例には、ビニルアセタート、ビニルプロピオナート及びビニルブタノアートがある。エチレン/不飽和エステルコポリマーのメルトインデックスは約0.5g/10分〜約50g/10分の範囲にあることが可能であり、好ましくは約2g/10分〜約25g/10分の範囲にある。エチレン及び不飽和エステルのコポリマーを調製するための1つの方法が米国特許第3,334,081号に記載される。
【0022】
VLDPEは、エチレンと、3個〜12個の炭素原子(好ましくは、3個〜8個の炭素原子)を有する1つ又はそれ以上のα−オレフィンとのコポリマーであり得る。そのようなVLDPEの密度は0.870g/cm3〜0.915g/cm3の範囲にあることが可能である。そのようなVLDPEは、例えば、(i)クロム及びチタンを含有する触媒、(ii)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与体を含有する触媒、又は、(iii)バナジウム、電子供与体、アルキルアルミニウムハリド改質剤及びハロカーボン促進剤を含有する触媒の存在下で製造することができる。そのようなVLDPEを製造するための触媒及び方法が、米国特許第4,101,445号、同第4,302,565号及び同第4,508,842号にそれぞれ記載される。そのようなVLDPEのメルトインデックスは約0.1グラムg/10分〜約20グラムg/10分の範囲にあることが可能である;例えば、そのようなVLDPEのメルトインデックスは約0.3g/10分〜約5g/10分の範囲にある。エチレン以外のコモノマー(1つ又は複数)に起因するVLDPEの部分は、コポリマーの重量に基づいて、約1重量パーセント〜約49重量パーセントの範囲にあることが可能である;例えば、エチレン以外のコモノマーに起因するVLDPEの部分は約15重量パーセント〜約40重量パーセントの範囲にある。第3のコモノマーを含むことができ、例えば、別のα−オレフィン又はジエン、例えば、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン又はジシクロペンタジエンなどを含むことができる。エチレン/プロピレンコポリマー及びエチレン/プロピレン/ジエンターポリマーは一般にはEPRと呼ばれ、また、そのようなターポリマーは一般にはEPDMと呼ばれる。第3のコモノマーは、コポリマーの重量に基づいて約1重量パーセント〜15重量パーセントの量で存在することができ、好ましくは、約1重量パーセント〜約10重量パーセントの量で存在する。コポリマーが、エチレンを含み2つ又は3つのコモノマーを含有することが好ましい。
【0023】
LLDPEには、同様に線状であり、しかし、一般には密度を0.916g/cm3〜0.925g/cm3の範囲に有するVLDPE及びMDPEが含まれ得る。LLDPEは、エチレンと、3個〜20個の炭素原子(好ましくは、3個〜8個の炭素原子)を有する1つ又はそれ以上のα−オレフィンとのコポリマーである。メルトインデックスは約1g/10分〜約20g/10分の範囲にあることが可能であり、好ましくは約3g/10分〜約8g/10分の範囲にある。α−オレフィンは、上記で述べられたα−オレフィンと同じであることが可能であり、触媒及び方法もまた、所望される密度及びメルトインデックスを得るために必要な変化を受ける対象である。
【0024】
上記で記されたように、ポリエチレンの定義には、通常の高圧法によって製造されるエチレンのホモポリマーが含まれる。そのようなホモポリマーは、例えば、密度を0.910g/cm3〜0.930g/cm3の範囲に有することができる。そのようなホモポリマーはまた、メルトインデックス(I2)を約0.5g/10分〜約5g/10分の範囲に有することができ、好ましくはメルトインデックスを約0.75g/10分〜約3g/10分の範囲に有する。
【0025】
代替において、実質的に線状のオレフィンポリマー、例えば、米国特許第5,278,272号及び同第5,272,236号(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に記載される実質的に線状のオレフィンポリマーなどを、ポリエチレン成分として使用することができる。
【0026】
そのような実質的に線状のオレフィンポリマーは以下のエチレン/α−オレフィンインターポリマーであり得る。
(a)密度が約0.85g/cm3〜約0.97g/cm3であるエチレン/α−オレフィンインターポリマー;又は
(b)メルトインデックス(I2)が約0.01g/10分〜約1000g/10分であるエチレン/α−オレフィンインターポリマー;又は
(c)分子量分布が5未満であるエチレン/α−オレフィンインターポリマー;又は
(d)実質的に線状のポリマーが、ポリマー骨格が非置換であるか、又は、1000個の炭素あたり3つまでの長い分枝により置換されるかのいずれかであり、かつ、長鎖の分枝、それを超える鎖長が、13C核磁気分光法を使用して識別することができない少なくとも6個の炭素の鎖長が示されるエチレン/α−オレフィンインターポリマー;又は
(e)均一に分枝するエチレン/α−オレフィンインターポリマー(この場合、均一に分枝するとは、α−オレフィンコモノマーが所与のポリマー分子の内部にランダムに分布し、かつ、分子の実質的にすべてが同じエチレン対コモノマー比を有するエチレン/α−オレフィンインターポリマーを示す)。
【0027】
そのような実質的に線状のオレフィンポリマーの市販されている例には、Engage(商標)ポリマー及びAffinity(商標)ポリマーが含まれ、これらはともに、The Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0028】
代替において、オレフィンブロックコポリマー、例えば、エチレンマルチブロックコポリマー、例えば、国際公開第2005/090427号及び米国特許出願第11/376,835号(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるエチレンマルチブロックコポリマーなどを、ポリエチレン成分として使用することができる。
【0029】
そのようなオレフィンブロックコポリマーは以下のエチレン/α−オレフィンインターポリマーであり得る。
(a)約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点(Tm、℃)及び所定の密度(d、g/cm3)を有し、Tm及びdの数値が、以下の関係、
Tm > −2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
に対応する、エチレン/α−オレフィンインターポリマー;又は
(b)約1.7〜約3.5のMw/Mnを有し、かつ、所定の融解熱(ΔH、J/g)、及び、最も高いDSCピークと、最も高いCRYSTAFピークとの温度差として定義されるデルタ量(ΔT、℃)によって特徴づけられ、ΔT及びΔHの数値が、以下の関係、
ΔT > −0.1299(ΔH)+62.81 (ΔHが0よりも大きく、130J/gまでである場合)、
ΔT≧48℃ (ΔHが130J/gよりも大きい場合)
(ただし、CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して求められ、ポリマーの5パーセント未満が特定可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度は30℃である)
を有する、エチレン/α−オレフィンインターポリマー;又は
(c)エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムを用いて測定される所定の弾性回復率(Re、300パーセントのひずみ及び1サイクルでのパーセント)によって特徴づけられ、かつ、所定の密度(d、g/cm3)を有し、Re及びdの数値が、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含まないとき、以下の関係、
Re > 1481−1629(d)
を満たす、エチレン/α−オレフィンインターポリマー;又は
(d)TREFを使用して分画化されるとき、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画物で、同じ温度の間で溶出する比較可能なランダムエチレンインターポリマー分画物のモルコモノマー含有量よりも少なくとも5パーセント大きいモルコモノマー含有量を有することにおいて特徴づけられる分子分画物を有する、エチレン/α−オレフィンインターポリマー(ただし、前記比較可能なランダムエチレンインターポリマーは同じコモノマー(1つ又は複数)を有し、かつ、エチレン/α−オレフィンインターポリマーのメルトインデックス、密度及びモルコモノマー含有量(ポリマー全体に基づく)の10パーセント以内であるメルトインデックス、密度及びモルコモノマー含有量(ポリマー全体に基づく)を有する);又は
(e)25℃での貯蔵弾性率(G'(25℃))及び100℃での貯蔵弾性率(G'(100℃))を有し、ただし、G'(25℃)対G'(100℃)の比率が約1:1〜約9:1の範囲にある、エチレン/α−オレフィンインターポリマー。
【0030】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーはまた、以下のエチレン/α−オレフィンインターポリマーであり得る。
(a)TREFを使用して分画化されるとき、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画物で、少なくとも0.5であって、約1までであるブロックインデックス、及び、約1.3を超える分子量分布(Mw/Mn)を有することにおいて特徴づけられる分子分画物をもまた有する、エチレン/α−オレフィンインターポリマー;又は
(b)ゼロよりも大きく、約1.0までである平均ブロックインデックス、及び、約1.3を超える分子量分布(Mw/Mn)をもまた有する、エチレン/α−オレフィンインターポリマー。
【0031】
架橋剤は、例えば、有機ペルオキシドであり得る。有機ペルオキシドは分解温度を10分の半減期について100℃〜220℃の範囲に有することができる。10分の半減期について100℃〜220℃の範囲におけるすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、また、本明細書に開示される;例えば、有機ペルオキシドは分解温度を10分の半減期について110℃〜210℃の範囲に有することができる;又は、代替において、有機ペルオキシドは分解温度を10分の半減期について110℃〜200℃の範囲に有することができる。例示的な有機ペルオキシドには、コハク酸ペルオキシド(10分の半減期について110℃の分解温度)、ベンゾイルペルオキシド(10分の半減期について110℃の分解温度)、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート(10分の半減期について113℃の分解温度)、p−クロロベンゾイルペルオキシド(10分の半減期について115℃の分解温度)、t−ブチルペルオキシイソブチラート(10分の半減期について115℃の分解温度)、t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート(10分の半減期について135℃の分解温度)、t−ブチルペルオキシラウラート(10分の半減期について140℃の分解温度)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン(10分の半減期について140℃の分解温度)、t−ブチルペルオキシアセタート(10分の半減期について140℃の分解温度)、ジ−t−ブチルジペルオキシフタラート(10分の半減期について140℃の分解温度)、t−ブチルペルオキシマレイン酸(10分の半減期について140℃の分解温度)、シクロヘキサノンペルオキシド(10分の半減期について145℃の分解温度)、t−ブチルペルオキシベンゾアート(10分の半減期について145℃の分解温度)、ジクミルペルオキシド(10分の半減期について150℃の分解温度)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(10分の半減期について155℃の分解温度)、t−ブチルクミルペルオキシド(10分の半減期について155℃の分解温度)、t−ブチルヒドロペルオキシド(10分の半減期について158℃の分解温度)、ジ−t−ブチルペルオキシド(10分の半減期について160℃の分解温度)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン−3(10分の半減期について170℃の分解温度)、α,α’−ビス−t−ブチルペルオキシ−1,4−ジイソプロピルベンゼン(10分の半減期について160℃の分解温度)、及び、α,α’−ビス−t−ブチルペルオキシ−1,3−ジイソプロピルベンゼンが含まれるが、これらに限定されない。架橋可能なポリエチレン組成物は、例えば、架橋可能なポリエチレン組成物の総重量に基づいて、10重量パーセント未満の架橋剤を含むことができる。10重量パーセント未満のすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、また、本明細書に開示される;例えば、架橋可能なポリエチレン組成物は、架橋可能なポリエチレン組成物の重量に基づいて、8重量パーセント未満の架橋剤を含むことができる;又は、代替において、架橋可能なポリエチレン組成物は、架橋可能なポリエチレン組成物の重量に基づいて、5重量パーセント未満の架橋剤を含むことができる。
【0032】
架橋助剤は、例えば、少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物であり得る。少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含む例示的なアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物には、1,9−デカジエン、1,7−オクタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ペンタジエン、1,3−ブタジエン、3,5−ヘキサトリエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが含まれるが、これらに限定されない。架橋可能なポリエチレン組成物は、例えば、架橋可能なポリエチレン組成物の総重量に基づいて、5重量パーセント未満の架橋助剤を含むことができる。5重量パーセント未満のすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、また、本明細書に開示される;例えば、架橋可能なポリエチレン組成物は、架橋可能なポリエチレン組成物の重量に基づいて、3重量パーセント未満の架橋助剤を含むことができる;又は、代替において、架橋可能なポリエチレン組成物は、架橋可能なポリエチレン組成物の重量に基づいて、1重量パーセント未満の架橋剤を含むことができる。例えば、架橋可能なポリエチレン組成物は、架橋可能なポリエチレン組成物の重量に基づいて、0.2重量パーセント〜1重量パーセントの架橋剤を含むことができる。架橋助剤、すなわち、少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラジエン化合物はポリマー骨格にグラフト化されず、又は、ポリマー骨格に取り込まれず、それにより、スコーチの傾向を軽減する。さらには、架橋助剤の使用は、同じ架橋度を達成するために必要な有機ペルオキシドの量を減らし、それにより、スコーチ及びペルオキシド分解産物を減らす。高レベルの有機ペルオキシドはより大きいスウェットアウトを引き起こし得るので、有機ペルオキシドの削減は非常に望ましい。
【0033】
架橋可能なポリエチレン組成物はさらに、スコーチ阻害剤を含むことができる。そのようなスコーチ阻害剤には、(置換又は非置換の)1,1−ジフェニルエチレン;4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−チオビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール);4,4’−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール);1,4−ヒドロキノン;2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン;[1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン];4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−チオビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール);それらのブレンド;又はそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。架橋可能なポリエチレン組成物は、例えば、架橋可能なポリエチレン組成物の総重量に基づいて、3重量パーセント未満のスコーチ阻害剤を含むことができる。3重量パーセント未満のすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、また、本明細書に開示される;例えば、架橋可能なポリエチレン組成物は、架橋可能なポリエチレン組成物の重量に基づいて、1重量パーセント未満のスコーチ阻害剤を含むことができる。
【0034】
架橋可能なポリエチレン組成物は場合によってはさらに、硬化増強剤を含むことができる。任意に使用される硬化増強剤は、増強剤の広範囲の選択のいずれか1つ又は混合物であり得る。例えば、任意に使用される硬化増強剤は、少なくとも2つ(好ましくは3つ)の不飽和基を含有するエステル、エーテル又はケトン(例えば、シアヌラート、イソシアヌラート、ホスファート、オルトホルマート、脂肪族エーテルもしくは芳香族エーテル、又は、ベンゼントリカルボン酸のアリルエステルなど)であり得る。そのようなエステル、エーテル又はケトンにおける炭素原子の数は9〜40又はそれ以上の範囲であってもよく、好ましくは9〜20である。例示的なエステル類、エーテル類及びケトン類は、貯蔵温度において本質的に不揮発性であり、不飽和基は好ましくはアリル基である。具体的な例には、トリアリルシアヌラート(TAC);トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(これはまた、トリアリルイソシアヌラート(TAIC)として公知である);トリアリルホスファート;トリアリルオルトホルマート;テトラアリルオキシ−エタン;トリアリルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシラート;ジアリルフタラート;ジンクジメタクリラート;エトキシル化ビスフェノールAジメタクリラート;平均鎖長がC14又はC15であるメタクリラート末端モノマー;ペンタエリトリトールテトラアクリラート;ジペンタエリトリトールペンタアクリラート;ペンタエリトリトールトリアクリラート;ジメチロールプロパンテトラアクリラート;エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート;トリメチロールプロパントリアクリラート;2,4,6−トリアリル−1,3,5−トリオン;トリアリルトリメリタート(TATM);及び3,9−ジビニル−2,4,8,9−テトラ−オキサスピロ[5.5]ウンデカン(DVS)が含まれるが、これらに限定されない。架橋可能なポリエチレン組成物は、例えば、架橋可能なポリエチレン組成物の総重量に基づいて、3重量パーセント未満の硬化増強剤を含むことができる。3重量パーセント未満のすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、また、本明細書に開示される;例えば、架橋可能なポリエチレン組成物は、架橋可能なポリエチレン組成物の重量に基づいて、1重量パーセント未満の硬化増強剤を含むことができる。
【0035】
架橋可能なポリエチレン組成物は、例えば、さらに、安定な有機フリーラジカルをスコーチ阻害剤及び/又は架橋(硬化)増強剤として含むことができる。例示的な安定な有機フリーラジカルには、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)及びその誘導体が含まれるが、これらに限定されない。架橋可能なポリエチレン組成物は、例えば、架橋可能なポリエチレン組成物の総重量に基づいて、5重量パーセント未満の安定な有機フリーラジカルを含むことができる。5重量パーセント未満のすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、また、本明細書に開示される;例えば、架橋可能なポリエチレン組成物は、架橋可能なポリエチレン組成物の重量に基づいて、3重量パーセント未満の安定な有機フリーラジカルを含むことができる;又は、代替において、架橋可能なポリエチレン組成物は、架橋可能なポリエチレン組成物の重量に基づいて、1重量パーセント未満の安定な有機フリーラジカルを含むことができる。例えば、架橋可能なポリエチレン組成物は、架橋可能なポリエチレン組成物の重量に基づいて、0.2重量パーセント〜1重量パーセントの安定な有機フリーラジカルを含むことができる。
【0036】
架橋可能なポリエチレン組成物はさらに、1つ又はそれ以上の通常の添加剤を含むことができる。そのような通常の添加剤には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、静電防止剤、顔料、カーボンブラック、色素、フィラー、スリップ剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、安定剤、煙阻害剤、ハロゲン捕捉剤、流動助剤、滑剤、粘度抑制剤、それらのブレンド、及び、それらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。架橋可能なポリエチレン組成物は、架橋可能なポリエチレン組成物の重量に基づいて、0.01重量パーセント〜15重量パーセントのそのような添加剤を含むことができる。0.01重量パーセントから15重量パーセントまでのすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、また、本明細書に開示される;例えば、架橋可能なポリエチレン組成物は、架橋可能なポリエチレン組成物の重量に基づいて、0.01重量パーセント〜10重量パーセントの添加剤を含むことができる。
【0037】
例示的な酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、例えば、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート)]メタン、ビス[(β−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−メチルカルボキシエチル)]スルフィド、及び、チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート)など;ホスフィト及びホスホニト、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィト及びジ−tert−ブチルフェニル−ホスホニトなど;チオ化合物、例えば、ジラウリルチオジプロピオナート、ジミリスチルチオジプロピオナート及びジステアリルチオジプロピオナート(DSTDP)など;様々なシロキサン;及び様々なアミン、例えば、重合された2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン及びアルキル化ジフェニルアミンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
製造において、架橋可能なポリエチレン組成物は様々なタイプの押出し機(例えば、単軸スクリュータイプ又は二軸スクリュータイプ)で加工することができる。典型的な押出し機はホッパーをその上流側端部に有し、ダイ(die)をその下流側端部に有する。ホッパーにより、スクリューを含有する胴部(barrel)への供給が行われる。下流側端部において、スクリューの端部と、ダイとの間に、スクリーンパック及びブレーカープレートがある。押出し機のスクリュー部分は、3つの区画(供給区画、圧縮区画及び計量区画)及び2つの帯域(後方加熱域及び前方加熱域)(これらの区画及び帯域は上流側から下流側まで続く)に分割されると見なされる。代替において、多数の加熱域(3つを超える)を上流から下流に向かう軸に沿って存在させることができる。押出し機が2つ以上の胴部を有する場合、これらの胴部は連続してつながれる。それぞれの胴部の長さ対直径比率は、例えば、約15:1〜約30:1の範囲であり得る。本明細書の目的のために、用語「押出し機」は、通常の押出し機に加えて、材料のさらなる形成を達成することができる、押出し機、クロスヘッド、ダイ、及び、加熱域又は冷却域の組合せを含むことが理解される。加熱又は冷却がダイの後に続き、加熱又は冷却は、例えば、オーブンであり得る。例えば、材料が押出し後に架橋されるワイヤコーティングでは、クロスヘッドのダイにより、加熱域への直接の供給が行われ、この帯域は約130℃〜約260℃の範囲での温度で維持することができ、好ましくは、約170℃〜約220℃の範囲での温度で維持することができる。その後、押出し物は、有機ペルオキシドの分解温度を超える温度に押出し物をさらすことによって架橋される。用いられるペルオキシドは、例えば、4またはそれ以上の半減期により分解される。架橋を、例えば、蒸気環境又は乾燥窒素環境のもとで維持されるオーブン又は連続加硫可能(CV)チューブにおいて達成することができる。蒸気CV設備に関しては、圧力一定の加硫チューブが、ポリマー溶融物がクロスヘッド/ダイアセンブリーを出て、押出し機に対して直交する加硫チューブに入るように押出し機のクロスヘッドに機械的につながれる。典型的なCV操作において、ペルオキシドを取り込む組成物は、押出し機における早まった架橋を避けるために低い溶融押出し温度で絶縁材及びケーブル外皮に押出し製造される。製造された溶融形状物は状化ダイを出て、押出し後のペルオキシド開始の架橋が生じる蒸気加硫チューブに入る。蒸気チューブは、ポリオレフィン溶融物を、架橋に必要とされる高い温度に加熱し続ける飽和蒸気で満たされる。CVチューブのほとんどが、架橋が生じるための滞留時間を最大にするために飽和蒸気で満たされる。チューブを出る前の最後の長さが、このときに架橋された絶縁材/外皮を冷却するために水で満たされる。CVチューブの端部において、絶縁されたワイヤ又はケーブルは、冷却水の漏れを最小限に抑えるぴったり合うガスケットを組み込む末端シールを通過する。スチーム調節器、水ポンプ及び弁調節により、蒸気CVチューブの内部における蒸気及び水の平衡、ならびに、それぞれの充填長さが維持される。代替において、高温の窒素ガスCVチューブを、ケーブル構成物を硬化させるために使用することができる。
【0039】
本発明による架橋可能なポリエチレン組成物の製造方法は、(1)ポリエチレン成分を提供する工程;(2)有機ペルオキシドである架橋剤を提供する工程;(3)少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物である架橋助剤を提供する工程;(4)ポリエチレン成分、架橋剤及び架橋剤を溶融混合する工程;及び(5)それにより、架橋可能なポリエチレン組成物を形成する工程を含む。溶融混合工程は、ブレンドの温度を、架橋重量の分解温度よりも低い範囲の温度に上げるための充分な温度及び圧力で行われる。
【0040】
本発明による物品は、ポリエチレン成分と、有機ペルオキシドである架橋剤と、少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物である架橋助剤との架橋された生成物を含む。本発明による物品はさらに、スコーチ阻害剤、硬化増強剤、安定な有機フリーラジカル、1つ又はそれ以上の通常の添加剤、それらのブレンド、及び、それらの組合せを含むことができる。
【0041】
本発明による物品の製造方法は以下の工程を含む:(1)ポリエチレン成分を提供する工程;(2)有機ペルオキシドである架橋剤を提供する工程;(3)少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物である架橋助剤を提供する工程;(4)ポリエチレン成分、架橋剤及び架橋剤を溶融混合する工程;(5)それにより、架橋可能なポリエチレン組成物を形成する工程;(6)架橋可能なポリエチレン組成物を、架橋剤の分解温度よりも高い範囲の温度でさらなる加工をする工程;及び(7)それにより、物品を形成する工程。溶融混合工程は、ブレンドの温度を、架橋重量の分解温度よりも低い範囲の温度に上げるための充分な温度及び圧力で行われる。
【0042】
本発明に従って製造される物品は、例えば、ケーブル、ワイヤ外皮、パイプ、フォーム及び履き物として使用することができる。
【0043】
本明細書において述べられる特許、特許出願及び刊行物は参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
本発明は、その精神及び本質的属性から逸脱することなく、他の形態で具体化することができるので、本発明の範囲を示すものとして、前記明細書ではなく、むしろ、添付された請求項を参照しなければならない。
【0045】
試験方法
試験方法には、以下が含まれる。
密度は、ASTM D 792−03(方法B)に従ってイソプロパノール中で測定される。
メルトインデックス(I2)は、ASTM D 1238−03に従って2.16kgの負荷のもと、190℃で測定される。
メルトインデックス(I21)は、ASTM D 1238−03に従って21.6kgの負荷のもと、190℃で測定される。
【0046】
ブレンドの架橋速度論は、100サイクル/分及び0.5度の弧(arc)で設定される、Alpha−Technologiesから得られるMonsanto Moving Die Rheometer(Model MDR 2000)を使用して評価される。トルクデータは硬化時間の関数として架橋度に相関する。最小トルク(ML)は溶融状態での未硬化化合物の粘度の測定値である。この測定値は、2つのサンプルの間での粘度における差を示すことができる。最大トルク(MH)は、完全な架橋の後、又は、試験が完了した後での材料の剪断弾性率又は剛性の測定値である。最小トルクと、最大トルクとの差(MH−ML)は、試験が完了した時の、架橋度の良い見当を提供する。この研究では、MDRチャンバ内の温度が140℃又は182℃の温度に設定される。約6グラムのサンプルが(Mylarフィルム間で)ディスクに置かれ、試験が開始されて、特定の長さの時間の後で終了するようにプログラムされる。試験が終了した後、架橋された生成物が取り出される。182℃でのMDR実験から得られる架橋された生成物はデカリン抽出分のために供される(これは、架橋ポリエチレンにおけるゲルの量を測定するために使用される方法である)。この方法(ASTM D−2765、方法A)では、デカリン(190℃の沸点)に6時間かけて可溶性であるサンプルの割合が求められる。不溶性であるために、120メッシュのふるいでろ過されないものが、その材料の架橋された部分である(ゲル含有量として報告される)。
【0047】
早まった架橋(「スコーチ」)が望ましくない溶融加工条件をシミュレートするために、MDRが140℃で120分間操作され、ts1(トルクが最小トルク値を1 lb−inだけ上回るための分単位での時間)が、t開始(トルクが最小トルクから増大し始めるための分単位での時間)が得られるのと同様に得られる。迅速かつ効果的な架橋が望ましい加硫条件をシミュレートするために、装置が(ペルオキシドの完全な分解及び架橋を保証するために)182℃で12分間又はそれ以上操作され、最大トルク(MH)と、最小トルク(ML)との差(すなわち、MH−ML)が、ts1及びts2(トルクが最小トルク値を2lb−inだけ上回るための分単位での時間)と同様に得られる。
【0048】
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)が、以下、本明細書に記載されるように、通常のGPCを使用して当分野では公知である方法に従って求められる。
【0049】
標準的CRYSTAF方法
分枝分布が、PolymerChar(Valencia、スペイン)から市販されているCRYSTAF 200装置を使用して結晶化分析分画化(CRYSTAF)によって求められる。サンプルが1,2,4−トリクロロベンゼンに160℃で1時間溶解され(0.66mg/mL)、95℃で45分間安定化される。サンプリング温度範囲は0.2℃/分の冷却速度で95℃から30℃までである。赤外検出器が、ポリマー溶液の濃度を測定するために使用される。累積可溶物濃度が、温度が低下している間にポリマーが結晶化するに従って測定される。累積プロフィルの解析的導関数がポリマーの短鎖分枝分布を反映する。
【0050】
CRYSTAFでのピーク温度及びピーク面積が、CRYSTAF Software(バージョン2001.b、PolymerChar、Valencia、スペイン)に含まれるピーク分析モジュールによって特定される。CRYSTAFピーク発見ルーチンはピーク温度をdW/dT曲線における最大値として特定し、面積を微分曲線における特定されたピークの両側での最大の正の変曲点の間で特定する。CRYSTAF曲線を計算するために、好ましい処理パラメーターは、70℃の温度限界を用いてであり、また、0.1の温度限界よりも大きく、0.3の温度限界よりも小さい平滑化パラメーターを用いてである。
【0051】
曲げ(Flexural)/割線弾性率(Secant Modulus)/貯蔵弾性率(Storage Modulus)
サンプルが、ASTM D 1928を使用して圧縮成形される。曲げ弾性率及び2パーセント割線弾性率がASTM D−790に従って測定される。貯蔵弾性率がASTM D 5026−01又は同等技術に従って測定される。
【0052】
DSC標準方法
示差走査熱量測定法による結果が、RCS冷却アクセサリー及びアートサンプラーを備えるTAIモデルQ1000 DSCを使用して求められる。50ml/分の窒素パージガス流量が使用される。サンプルが薄いフィルムにプレスされ、プレス機において約175℃で融解され、その後、室温(25℃)に空冷される。その後、3mg〜10mgの材料が直径6mmのディスクに切断され、正確に重量測定され、軽いアルミニウム皿(約50mg)に入れられ、その後、クランプにより閉じられる。サンプルの熱挙動が以下の温度プロフィルにより調べられる。サンプルは、何らかの以前の熱履歴を除くために180℃に急速加熱され、等温状態で3分間保たれる。その後、サンプルは−40℃に10℃/分の冷却速度で冷却され、−40℃で3分間保たれる。その後、サンプルは150℃に10℃/分の加熱速度で加熱される。冷却時及び2回目の加熱時の曲線が記録される。
【0053】
DSC融解ピークが、−30℃と、融解終了との間で引かれた直線ベースラインに関して熱流量(W/g)における最大値として測定される。融解熱が、直線のベースラインを使用して、−30℃と、融解終了との間における融解曲線下の面積として測定される。
【0054】
DSCの較正が以下のように行われる。最初に、サンプルをアルミニウムのDSC皿に何も入れずに、ベースラインが、DSCを−90℃から操作することによって得られる。その後、7ミリグラムの新鮮なインジウムサンプルが、サンプルを180℃に加熱すること、サンプルを140℃に10℃/分の冷却速度で冷却すること、その後、サンプルを140℃において等温状態で1分間保つこと、その後、サンプルを140℃から180℃に10℃/分の加熱速度で加熱することによって分析される。インジウムサンプルの融解熱及び融解の開始が求められ、融解の開始については156.6℃から0.5℃以内であること、融解熱については28.71J/gから0.5J/g以内であることが確認される。その後、脱イオン水が、新鮮なサンプルの小さい1滴をDSC皿において25℃から−30℃に10℃/分の冷却速度で冷却することによって分析される。サンプルが−30℃において等温状態で2分間保たれ、その後、30℃に10℃/分の加熱速度で加熱される。融解の開始が求められ、0℃から0.5℃以内であることが確認される。
【0055】
GPC方法
ゲル浸透クロマトグラフィーシステムは、Polymer Laboratories Model PL−210装置又はPolymer Laboratories Model PL−220装置のいずれかからなる。カラム区画及びカルーセル区画が140℃で操作される。Polymer Laboratories社の3本の10ミクロンMixed−Bカラムが使用される。溶媒は1,2,4−トリクロロベンゼンである。サンプルが、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する50ミリリットルの溶媒において0.1グラムのポリマーの濃度で調製される。サンプルは、160℃で2時間、軽く撹拌することによって調製される。使用される注入容積は100マイクロリットルであり、流量は1.0ml/分である。
【0056】
GPCカラムセットの較正が、個々の分子量の間に少なくとも10倍の間隔がある6つの「カクテル」混合物で配置される、分子量が580から8,400,000に及ぶ21個の狭い分子量分布のポリスチレン標準物を用いて行われる。これらの標準物は、Polymer Laboratories(Shropshire、UK)から購入される。ポリスチレン標準物は、1,000,000以上の分子量については50ミリリットルの溶媒において0.025グラムで調製され、1,000,000未満の分子量については50ミリリットルの溶媒において0.05グラムで調製される。ポリスチレン標準物は、穏やかな撹拌とともに80℃で30分間溶解される。分解を最小限に抑えるために、狭い標準物混合物が最初に、そして、最大分子量成分が小さくなる順で流される。ポリスチレン標準物のピーク分子量は、(Williams and Ward, J. Polym. Sci., Polym. Let., 6, 621 (1968)に記載されるような)以下の式を使用してポリエチレン分子量に変換される:
Mホ゜リエチレン=0.431(Mホ゜リスチレン)。
【0057】
ポリエチレン等価分子量が、Viscotek TriSECソフトウェアのVersion3.0を使用して計算される。
【0058】
ATREF
分析的昇温溶出分画化(ATREF)分析が、米国特許第4,798,081号、及び、Wilde, L.; Ryle, T.R.; Knobeloch, D.C.; Peat, I.R.; Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymers, J. Polym. Sci., 20, 441-455 (1982)(これらはその全体において参照により本明細書に組み込まれる)に記載される方法に従って行われる。分析される組成物はトリクロロベンゼンに溶解され、温度を20℃に0.1℃/分の冷却速度でゆっくり下げることによって不活性な担体(ステンレススチールショット)を含有するカラムにおいて結晶化される。カラムは赤外検出器を備える。ATREFクロマトグラム曲線が、その後、結晶化されたポリマーサンプルを、溶出溶媒(トリクロロベンゼン)の温度を1.5℃/分の速度で20℃から120℃にゆっくり上げることによりカラムから溶出されて、作成される。
【0059】
13C NMR分析
サンプルが、テトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物のおよそ3gを10mmのNMRチューブにおいて0.4gのサンプルに加えることによって調製される。サンプルは、チューブ及びその内容物を150℃に加熱することによって溶解され、均質化される。データが、JEOL Eclipse(商標)400MHz分光計又はVarian Unity Plus(商標)400MHz分光計を使用して集められる(これらは100.5MHzの13C共鳴周波数に対応する)。データが、6秒のパルス反復遅延によりデータファイルあたり4000個の過渡シグナルを使用して取得される。定量的分析でのシグナル対ノイズを最小にするために、多数のデータファイルが1つにまとめられる。スペクトル幅は25,000Hzであり、最小のファイルサイズが32Kのデータポイントからなる。サンプルは10mmの広帯域プローブで130℃で分析される。コモノマー取り込みが、ランダールのトリアッド法(Randall, J.C.; JMS-Rev. Macromol. Chem. Phys., C29, 201-317 (1989);これはその全体において参照により本明細書に組み込まれる)を使用して求められる。
【0060】
機械的特性(Mechanical Properties)−引張り(Tensile)、ヒステリシス(Hysteresis)及び引裂き(Tear)
一軸引張りでの応力−ひずみ挙動が、ASTM D 1708の微小引張り試料片を使用して測定される。サンプルが21℃において500%min-1でInstronにより伸ばされる。引張り強さ及び破断点伸びが5個の試料片の平均から報告される。
【0061】
100%及び300%のヒステリシスが、Instron(商標)装置により、ASTM D 1708の微小引張り試料片を使用して100%及び300%のひずみに対する周期的負荷から求められる。サンプルには、267%min-1での負荷の付加及び解放が21℃で3サイクルにわたって繰り返される。300%及び80℃での周期的実験が、環境チャンバを使用して行われる。80℃の実験では、サンプルが、試験前に、試験温度で45分間、平衡化される。21℃での300%ひずみの周期的実験では、最初の負荷解放サイクルからの150%ひずみでの収縮応力が記録される。すべての実験についてのパーセント回復率が、負荷がベースラインに戻ったひずみを使用して最初の負荷解放サイクルから計算される。パーセント回復率(%Recovery)は以下のように定義される。
【数1】

式中、εfは、周期的負荷を与えるために選ばれたひずみであり、εSは、負荷が1回目の負荷解放サイクル中にベースラインに戻るひずみである。
【0062】
ブロックインデックス(Block Index)
エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、ゼロよりも大きく、約1.0までである平均ブロックインデックス(Average Block Index)(ABI)、及び、約1.3を超える分子量分布(Mw/Mn)によって特徴づけられる。平均ブロックインデックス(ABI)は、5℃の刻み(但し、他の温度刻み(例えば、1℃、2℃、10℃など)もまた使用することができる)を用いて20℃から110℃までの調製的TREF(すなわち、昇温溶出分画化によるポリマーの分画化)において得られるポリマー分画物のそれぞれについてのブロックインデックス(「BI」)の重量平均である。
【数2】

式中、BIiは、調製的TREFにおいて得られる本発明のエチレン/α−オレフィンインターポリマーのi番目の分画物についてのブロックインデックスであり、wiはi番目の分画物の重量百分率である。同様に、平均付近での二次モーメントの平方根(これは以下本明細書では二次モーメント重量平均ブロックインデックスとして示される)を以下のように定義することができる。
【数3】

式中、Nは、BIiがゼロよりも大きい分画物の数として定義される。BIは2つの以下の式(これらはともに、同じBI値を与える)の1つによって定義される。
【数4】

式中、TXはi番目の分画物についてのATREF(すなわち、分析的TREF)溶出温度(好ましくはケルビン単位で表される)であり、PXはi番目の分画物についてのエチレンモル分率であり、エチレンモル分率は、以下で記載されるようにNMR又はIRによって測定することができる。PABは(分画化前の)エチレン/α−オレフィンインターポリマー全体のエチレンモル分率であり、このエチレンモル分率もまた、NMR又はIRによって測定することができる。TA及びPAは純粋な「ハードセグメント(hard segments)」(これはインターポリマーの結晶性セグメントを示す)についてのATREF溶出温度及びエチレンモル分率である。近似として、又は、「ハードセグメント」の組成が不明であるポリマーについては、TA及びPAの値は高密度ポリエチレンホモポリマーについての値に設定される。
【0063】
ABは、オレフィンブロックコポリマーと同じ組成(PABのエチレンモル分率を有する)及び分子量のランダムコポリマーについてのATREF溶出温度である。TABを、以下の式を使用して、(NMRによって測定される)エチレンのモル分率から計算することができる。
LnPAB=α/TAB+β
式中、α及びβは、多数の、広い組成のランダムコポリマーの十分に特徴づけられた調製的TREF分画物、及び/又は、狭い組成を有する十分に特徴づけられたランダムエチレンコポリマーを使用する較正によって求めることができる2つの定数である。α及びβは装置毎に変化し得ることに留意しなければならない。そのうえ、適切な検量線を、検量線を製造するために使用される調製的TREF分画物及び/又はランダムコポリマーについての適切な分子量範囲及びコモノマータイプを使用して、目的とするポリマー組成に関して作成する必要がある。分子量によるわずかな影響が認められる。検量線が類似の分子量範囲から得られる場合、そのような影響は本質的には無視することができる。いくつかの実施形態において、ランダムエチレンコポリマー、及び/又は、ランダムコポリマーの調製的TREF分画物は以下の関係を満たす。
LnP=−237.87/TATREF+0.639。
上記較正式は、エチレンのモル分率(P)を、狭い組成のランダムコポリマーについての分析的TREF溶出温度(TATREF)、及び/又は、広い組成のランダムコポリマーの調製的TREF分画物についての分析的TREF溶出温度(TATREF)に関係づける。TXOは、同じ組成(すなわち、同じコモノマータイプ及びコモノマー含有量)及び同じ分子量の、Pxのエチレンモル分率を有するランダムコポリマーについてのATREF温度である。TXOを、測定されたPXモル分率から、LnPX=α/TXO+βによって計算することができる。逆に、PXOは、同じ組成(すなわち、同じコモノマータイプ及びコモノマー含有量)及び同じ分子量の、TXのATREF温度を有するランダムコポリマーについてのエチレンモル分率であり、これを、TXの測定された値を使用して、LnPXO=α/TX+βによって計算することができる。
それぞれの調製的TREF分画物についてのブロックインデックス(BI)が得られると、ポリマー全体についての重量平均ブロックインデックス(ABI)を計算することができる。
【実施例】
【0064】
以下の実施例は本発明を例示するが、本発明の範囲を限定するためには意図されない。これらの実施例は、本発明が、ペルオキシドに基づくポリオレフィン硬化システムの変更させ、それにより、サイクル時間を低減し、スコーチを低下させ、また、脱ガスを促進させることを明らかにする。使用された架橋剤はジクミルペルオキシド(DiCup R)であった(Geo Specialty Chemicalsの製品)。使用された架橋助剤は1,9−デカジエンであった(CAS番号:1647−16−1;Acros Organics N.V.の製品)。表IIに列記される樹脂特性を有するLDPE1及びLDPE2を、2つの異なる規格のポリエチレンとして使用した。
【0065】
実施例1を以下の手順に従って調製した。表I〜表IIIに示されるようなポリエチレン成分及び架橋助剤を、それらが混合され、125℃で3分間配合され、それにより、ポリエチレン−架橋助剤のブレンドが形成されるBarbender(商標)ミキサーに導入した。続いて、表I〜表IIIに示されるような架橋剤を、架橋剤がポリエチレン−架橋助剤ブレンドに混合され、その後、それらが125℃でさらに4分間配合され、それにより、本発明の架橋可能なポリエチレン組成物が形成されるBarbender(商標)ミキサーに導入した。この架橋可能なポリエチレン組成物の架橋速度論を、(スコーチが望ましくない混合/押出し条件をシミュレートするために)140℃で、また、(迅速かつ効果的な架橋が望ましい加硫条件をシミュレートするために)182℃でMDRを使用して求めた。それらの結果が表IV及び表Vにそれぞれ示される。
【0066】
実施例2を以下の手順に従って調製した。表I〜表IIIに示されるようなポリエチレン成分、安定な有機フリーラジカル及び架橋助剤を、それらが混合され、125℃で3分間配合され、それにより、ポリエチレン−安定な有機フリーラジカル−架橋助剤のブレンドが形成されるBarbender(商標)ミキサーに導入した。続いて、表I〜表IIIに示されるような架橋剤を、架橋剤がポリエチレン−安定な有機フリーラジカル−架橋助剤ブレンドに混合され、その後、それらが125℃でさらに4分間配合され、それにより、本発明の架橋可能なポリエチレン組成物が形成されるBarbender(商標)ミキサーに導入した。この架橋可能なポリエチレン組成物の架橋速度論を、(スコーチが望ましくない混合/押出し条件をシミュレートするために)140℃で、また、(迅速かつ効果的な架橋が望ましい加硫条件をシミュレートするために)182℃でMDRを使用して求めた。それらの結果が表IV及び表Vにそれぞれ示される。
【0067】
実施例3〜実施例5を以下の手順に従って調製した。表I〜表IIIに示されるようなポリエチレン成分及び架橋助剤を、それらが混合され、125℃で3分間配合され、それにより、ポリエチレン−架橋助剤のブレンドが形成されるBarbender(商標)ミキサーに導入した。続いて、表I〜表IIIに示されるような架橋剤を、架橋剤がポリエチレン−架橋助剤ブレンドに混合され、その後、それらが125℃でさらに4分間配合され、それにより、本発明の架橋可能な組成物が形成されるBarbender(商標)ミキサーに導入した。この架橋可能なポリエチレン組成物の架橋速度論を、(スコーチが望ましくない混合/押出し条件をシミュレートするために)140℃で、また、(迅速かつ効果的な架橋が望ましい加硫条件をシミュレートするために)182℃でMDRを使用して求めた。それらの結果が表IV及び表Vにそれぞれ示される。
【0068】
比較例1を以下の手順に従って調製した。表I〜表IIIに示されるようなポリエチレン成分を、ポリエチレンを融解するために125℃で3分間、Barbender(商標)ミキサーに導入した。続いて、表I〜表IIIに示されるような架橋剤を、架橋剤がポリエチレンに混合され、その後、それらが125℃でさらに4分間配合され、それにより、比較用の架橋可能なポリエチレン組成物が形成されるBarbender(商標)ミキサーに導入した。この比較用の架橋可能なポリエチレン組成物の架橋速度論を、(スコーチが望ましくない混合/押出し条件をシミュレートするために)140℃で、また、(迅速かつ効果的な架橋が望ましい加硫条件をシミュレートするために)182℃でMDRを使用して求めた。それらの結果が表IV及び表Vにそれぞれ示される。
【0069】
比較例2を以下の手順に従って調製した。表I〜表IIIに示されるようなポリエチレン成分及び安定な有機フリーラジカルを、それらが混合され、125℃で3分間配合され、それにより、ポリエチレン−安定な有機フリーラジカルのブレンドが形成されるBarbender(商標)ミキサーに導入した。続いて、表I〜表IIIに示されるような架橋剤を、架橋剤がポリエチレン−安定な有機フリーラジカルブレンドに混合され、その後、それらが125℃でさらに4分間配合され、それにより、比較用の架橋可能なポリエチレン組成物が形成されるBarbender(商標)ミキサーに導入した。この比較用の架橋可能なポリエチレン組成物の架橋速度論を、(スコーチが望ましくない混合/押出し条件をシミュレートするために)140℃で、また、(迅速かつ効果的な架橋が望ましい加硫条件をシミュレートするために)182℃でMDRを使用して求めた。それらの結果が表IV及び表Vにそれぞれ示される。
【0070】
比較例3を以下の手順に従って調製した。表I〜表IIIに示されるようなポリエチレン成分を、ポリエチレンを融解するために125℃で3分間、Barbender(商標)ミキサーに導入した。続いて、表I〜表IIIに示されるような架橋剤を、架橋剤がポリエチレンに混合され、その後、それらが125℃でさらに4分間配合され、それにより、比較用の架橋可能な組成物が形成されるBarbender(商標)ミキサーに導入した。この比較用の架橋可能なポリエチレン組成物の架橋速度論を、(スコーチが望ましくない混合/押出し条件をシミュレートするために)140℃で、また、(迅速かつ効果的な架橋が望ましい加硫条件をシミュレートするために)180℃でMDRを使用して求めた。それらの結果が表IV及び表Vにそれぞれ示される。
【0071】
140℃の温度では、1,9−デカジエンの添加はスコーチ時間(ts1)を増大させたか、又は、ts1に対する影響を有しなかったかのいずれかであった。より高い温度(182℃)では、1,9−デカジエンの添加は一般に、(ts1及びts2の両方で反映されるように)架橋速度を増大させ、また、(ゲル含有量及びMH−MLの両方で反映されるように)最終的な架橋度を増大させた。1,9−デカジエンの量を増大することにより、一定の架橋度を182℃で達成するために要求されるペルオキシドの量を少なくすることもまた可能であるにちがいない。このことは結果的には、140℃でのスコーチ傾向を低下させ、また、ペルオキシド分解生成物のより速い「脱ガス」を可能にすると考えられる。1,9−デカジエンを4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−ヒドロキシTEMPO)と組み合わせることは、182℃での架橋を高めるという点で特に効果的であり、その一方で、140℃での約15分間の架橋を「停止させる」ことに留意すること(実施例2対比較例2)。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン成分;
有機ペルオキシドである架橋剤;及び
少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物である架橋助剤
を含む架橋可能なポリエチレン組成物。
【請求項2】
前記架橋助剤が、アルカジエン、アルカトリジエン、アルカテトラジエン、それらのブレンド、それらの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の架橋可能なポリエチレン組成物。
【請求項3】
前記架橋助剤が、1,9−デカジエン、1,7−オクタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ペンタジエン、1,3−ブタジエン、3,5−ヘキサトリエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンからなる群より選択される、請求項1に記載の架橋可能なポリエチレン組成物。
【請求項4】
安定な有機フリーラジカルをさらに含む、請求項1に記載の架橋可能なポリエチレン組成物。
【請求項5】
前記安定な有機フリーラジカルが、2,2,6,6−テトラメチルピペルジン−1−オキシル及びその誘導体からなる群より選択される、請求項4に記載の架橋可能なポリエチレン組成物。
【請求項6】
添加剤をさらに含む、請求項1に記載の架橋可能なポリエチレン組成物。
【請求項7】
ポリエチレン成分を提供する工程;
有機ペルオキシドである架橋剤を提供する工程;
少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物である架橋助剤を提供する工程;
前記ポリエチレン成分、前記架橋剤及び前記架橋剤を溶融混合する工程;
それにより、架橋可能なポリエチレン組成物を形成する工程
を含む、架橋可能なポリエチレン組成物の製造方法。
【請求項8】
ポリエチレン成分を提供する工程;
有機ペルオキシドである架橋剤を提供する工程;
少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物である架橋助剤を提供する工程;
前記ポリエチレン成分、前記架橋剤及び前記架橋剤を溶融混合する工程;
それにより、架橋可能なポリエチレン組成物を形成する工程;
前記架橋可能なポリエチレン組成物を加熱し、それにより、前記架橋可能なポリエチレン組成物の温度を、前記架橋剤の分解温度を超える範囲の温度に上げる工程;
それにより、前記架橋可能なポリエチレン組成物を架橋する工程
を含む、架橋可能なポリエチレン組成物の架橋方法。
【請求項9】
ポリエチレン成分;
有機ペルオキシドである架橋剤;及び
少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物である架橋助剤
の架橋された生成物から形成される少なくとも1つの成分を含む物品。
【請求項10】
ポリエチレン成分を提供する工程;
有機ペルオキシドである架橋剤を提供する工程;
少なくとも2つの末端炭素−炭素二重結合を含むアルカジエン化合物、アルカトリエン化合物又はアルカテトラエン化合物である架橋助剤を提供する工程;
前記ポリエチレン成分、前記架橋剤及び前記架橋剤を溶融混合する工程;
それにより、架橋可能なポリエチレン組成物を形成する工程;
前記架橋可能なポリエチレン組成物を形状化する工程;
前記形状化された架橋可能なポリエチレン組成物を加熱に供し、それにより、前記形状化された架橋可能なポリエチレン組成物の温度を、前記架橋剤の分解温度を超える範囲の温度に上げる工程;
それにより、前記形状化された架橋可能なポリエチレン組成物を架橋する工程;
それにより、物品を形成する工程
を含む、物品の製造方法。

【公表番号】特表2010−518197(P2010−518197A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548365(P2009−548365)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/051991
【国際公開番号】WO2008/097732
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】