説明

架橋性ポリエチレン組成物、それを含んでいる電気ケーブル、および該組成物の調製方法

架橋性シラン含有ポリエチレン組成物、絶縁電気ケーブル、および該組成物の調製方法が記載される。該架橋性シラン含有ポリエチレン組成物は、少なくとも0.65の分岐パラメータ(g’)値を有することを特徴とし、かつ、シラン含有量約0.1〜10重量%および少なくとも1のシラノール縮合触媒を有する。該電気ケーブルの絶縁物は、該組成物をポリマーとして含んでいる。該方法は、高くても260℃のピーク温度における高圧重合法であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン含有量約0.1〜10重量%および少なくとも1のシラノール縮合触媒を有する架橋性シラン含有ポリエチレン組成物に関する。本発明はさらに、該組成物を含んでいる絶縁電気ケーブル、および該組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々のポリマーを添加剤によって架橋することは知られている。ポリマーの機械的強度および耐熱性のようなポリマーの特性を、架橋は改良する。熱可塑性物であり、架橋性ではないと通常考えられているポリマーも、該ポリマー中に架橋性基を導入することによって架橋されることができる。その例は、ポリオレフィン、たとえばポリエチレンの架橋である。たとえば調製されたポリオレフィン上にシラン化合物をグラフトすることによって、またはオレフィンとシラン化合物との共重合によって、シラン化合物が架橋性基として導入されることができる。この技術は以前から知られており、さらなる詳細は米国特許第4413066号、第4297310号、第4351876号、第4397981号、第4446283号および第4456704号の各明細書から得られることができる。
【0003】
加水分解性シラン基を有するポリマーの架橋は、いわゆる水分硬化によって実施される。第一段階で、シラン基は水の存在下に加水分解されて、アルコールの分離およびシラノール基の生成をもたらす。第二段階で、水を分離する縮合反応によって、シラノール基が架橋される。両段階で、いわゆるシラノール縮合触媒が触媒として使用される。
【0004】
慣用のシラノール縮合触媒は、金属、たとえばスズ、亜鉛、鉄、鉛およびコバルトのカルボン酸塩;有機塩基;無機酸;並びに有機酸を包含する。
【0005】
具体的な例として、ジラウリン酸ジブチルスズ(DBTDL)、ジ酢酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズ、酢酸第一スズ、カプリン酸第一スズ、ナフテン酸鉛、カプリン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン、無機酸、たとえば硫酸および塩化水素酸、並びに有機酸、たとえばトルエンスルホン酸、酢酸、ステアリン酸およびマレイン酸が挙げられることができる。特に、カルボン酸スズがしばしば触媒として使用される。
【0006】
架橋性シラン含有ポリエチレン組成物は各種の目的に使用され、電気ケーブル用絶縁物として具体的に使用される。しかし、従来技術の架橋性シラン含有ポリエチレン組成物は、いわゆる「凍結層」の問題を示す。すなわち該ポリマーをケーブルの導体上に押出すときに、導体に近接した該ポリマー組成物の分子が冷たい導体と接触すると、該分子が緩和する可能性を持たず、導体に近接した、高度に配向した分子の薄い層の形成を、これはもたらす。この配向は次なる結果として、損なわれた機械的特性をもたらす。特に、少なくとも12.5MPaの所望の引張破断強さおよび少なくとも200%の破断伸びを、絶縁層が達成することが困難または不可能である。導体を予熱することによってこの問題を軽減することは可能であるけれども、これは予熱機への投資を要求し、これはコストを増加する。他の解決策は、ダイにおいて管を使用することによってダイ圧力を低減することである。しかし、この解決策は濡れ特性の悪化をもたらし、これは次なる結果として導体と絶縁層との間の接着特性の低減を意味する。
【0007】
従来技術のこれらの不都合から考えて、予熱機またはダイにおける管のような手段を使用することなく、上述の所望の機械的特性を得る架橋性シラン含有ポリエチレン組成物を達成することは重要な技術上の改良となるだろう。
【特許文献1】米国特許第4413066号公報
【特許文献2】米国特許第4297310号公報
【特許文献3】米国特許第4351876号公報
【特許文献4】米国特許第4397981号公報
【特許文献5】米国特許第4446283号公報
【特許文献6】米国特許第4456704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術の上記の不都合を除きまたは少なくとも軽減し、架橋されると、ISO 527に従って測定された少なくとも12.5MPaの引張破断強さ、およびISO 527に従って測定された少なくとも200%の破断伸びを有する架橋性シラン含有ポリエチレン組成物を得ることが、本発明の目的である。
【0009】
電気ケーブルの導体の周りの絶縁物として組成物を押出すときに、ケーブル導体の何らの予熱もダイにおける管の使用も必要としないような組成物を得ることが、さらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
該ポリマー組成物の長鎖分岐を限定することによって、上記の目的が達成されることができることが本発明において発見された。より特には、少なくとも0.65の、分岐パラメータg’によって定義された長鎖分岐を、該ポリマー組成物は有さなければならない。
【0011】
高くても260℃のピーク温度において高圧重合を実施することによって、架橋性シラン含有ポリエチレン組成物が得られることができることも、本発明において発見された。
【発明の効果】
【0012】
したがって、少なくとも0.65の分岐パラメータ(g’)値を有することを特徴とし、かつ、シラン含有量約0.1〜10重量%および少なくとも1のシラノール縮合触媒を有する架橋性シラン含有ポリエチレン組成物を、本発明は提供する。
【0013】
本発明はさらに絶縁電気ケーブルを提供し、その絶縁物は、少なくとも0.65の分岐パラメータ(g’)値を有することを特徴とし、かつ、シラン含有量約0.1〜10重量%および少なくとも1のシラノール縮合触媒を有する架橋性シラン含有ポリエチレン組成物から誘導される。
【0014】
またさらに、高くても260℃のピーク温度における高圧重合であることを特徴とする、上で定義された架橋性シラン含有ポリエチレン組成物の調製方法を、本発明は提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付された特許請求の範囲および以下の記載から明らかになるだろう。
【0016】
本発明に従う架橋性ポリマー組成物は、全般的に前述の加水分解性シラン基を含有する架橋性エチレンポリマーに関し、より正確には加水分解性シラン基を含有し、水および少なくとも1のシラノール縮合触媒の影響下に架橋されたオレフィンコポリマーまたはグラフトポリマーに関する。具体的には、該架橋性ポリマーは、共重合かあるいはグラフト重合によって導入された架橋性シラン基を含有するエチレンホモポリマーまたはコポリマーである。
【0017】
グラフト重合に関しては、米国特許第3646155号および第4117195号が参照される。
【0018】
好ましくは、シラン含有ポリマーは、エチレンと不飽和シラン化合物との共重合によって得られる。したがって、以下において、本発明はこのようなエチレンと不飽和シラン化合物との共重合に特に関連して記載されるだろう。
【0019】
不飽和シラン化合物は式(I)によって表される。

ここで、
は、エチレン性不飽和ヒドロカルビル、エチレン性不飽和ヒドロカルビルオキシまたは(メタ)アクリルオキシヒドロカルビル基であり、
R’は、脂肪族飽和ヒドロカルビル基であり、
Yは、加水分解性有機基であり、同じでも異なっていてもよく、および
nは、0、1または2である。
1より多いY基があるならば、これらは同一である必要はない。
【0020】
不飽和シラン化合物の具体的な例は、Rがビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニル、またはガンマ−(メタ)アクリルオキシプロピルであり;Yがメトキシ、エトキシ、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロピオニルオキシまたはアルキル−若しくはアリール−アミノ基であり;およびR’が、それが存在するならば、メチル、エチル、プロピル、デシルまたはフェニル基であるようなものである。
【0021】
好まれる不飽和シラン化合物は、式(II)によって表される。

ここで、Aは、1〜8炭素原子、好ましくは1〜4炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
【0022】
最も好まれる化合物は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルビスメトキシエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ガンマ−(メタ)アクリルオキシトリメトキシシラン、ガンマ−(メタ)アクリルオキシトリエトキシシラン、ガンマ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、およびビニルトリアセトキシシランである。
【0023】
エチレンと不飽和シラン化合物との共重合は、これら2のモノマーの共重合をもたらす適当な条件下に実施される。しかし、得られるポリマー組成物が少なくとも0.65の分岐パラメータ(g’)値を有するような条件下に、該重合は実施されなければならない。
【0024】
本発明に従うポリマー組成物は、好ましくは高圧重合法によって作られた低密度ポリマーである。シラン成分に追加して、該ポリマーは、他のコモノマー、たとえばアルファ−オレフィンコモノマーおよびアクリレートコモノマーを含有してもよい。特に好まれるのは、ヒドロキシ含有コモノマー、たとえば2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)であり、これは該ポリマーの接着を改良する。
【0025】
分岐パラメータ、g’は、長鎖分岐(LCB)の量の目安である。g’=1の分岐パラメータ値は、ポリマー組成物が長鎖分岐を含有しないことを意味し、一方、g’<1の分岐パラメータ値は、ポリマー組成物が長鎖分岐を含有することを意味する(LCBが多くなるにつれて、g’値は小さくなる)。したがって一般に、高圧重合によって調製され、多くのLCBを含んでいる低密度ポリエチレンは低g’値を有し、一方、低圧重合によって調製され、LCBを含有しない直鎖高密度ポリエチレンはg’値1を有する。
【0026】
本明細書で使用される「長鎖分岐」または「LCB」の表現は、ポリマー骨格上の少なくとも12炭素原子を有する分岐を意味する。
【0027】
分岐パラメータg’は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定され、式

から計算され、ここで、[η]分岐は当の分岐ポリマーの固有粘度であり、[η]直鎖は直鎖(分岐のない)標準ポリマーの固有粘度である。
【0028】
分岐パラメータg’を測定する手順は、実施例に関連して以下に、より広範に記載されるだろう。
【0029】
本発明において、高圧共重合によって架橋性シラン含有ポリエチレン組成物を調製するときに、重合温度を調節することによって、少なくとも0.65の所要のg’値が得られることが発見された。より特には、重合反応器中の最大温度またはピーク温度は、高くても260℃でなければならない。260℃を超えるピーク温度は、多過ぎる長鎖分岐および0.65より低いg’を与える。好ましくは、ピーク重合温度は250〜260℃の範囲にある。重合温度は180℃未満であってはならない。というのは、その場合、重合反応が停止しまたは非常に低い速度で進行するからである。
【0030】
上述のように、本発明におけるg’値は少なくとも0.65である。g’値の理論的上限はg’=1(長鎖分岐なし)であるが、この値は実際に達成するのが、不可能ではないとしても非常に困難である。何故ならば、重合温度があまりにも大きく下げられると、重合反応は非常に遅くなるかまたは停止するからである。実際にはg’値はほとんどの場合0.65〜0.85の範囲にある。
【0031】
重合反応の圧力は、重合組成物のg’値に何らかの有意の効果を有するようには思われない。一般に、重合反応の圧力は少なくとも120MPa、好ましくは230〜260MPaまたはそれ以上である。
【0032】
前述のように、本発明の架橋性シラン含有ポリエチレン組成物は、該組成物当たりシラン含有量約0.1〜10重量%を有する。好ましくは、シラン化合物は該組成物当たり0.1〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%を構成する。
【0033】
前述のように、本発明の架橋性シラン含有ポリエチレン組成物は、少なくとも1のシラノール縮合触媒を含んでいる。該シラノール縮合触媒は、本明細書で前述された慣用のシラノール縮合触媒のいずれか1つ、またはそれらの混合物であることができる。しかし、好ましくは、シラノール縮合触媒は一般式(III)
ArSOH (III)
の化合物のようなスルホン酸またはその加水分解性前駆体であり、ここでArは置換アリール基であり、該化合物は全部で14〜28炭素原子を含有する。好ましくは、Arはアルキルで置換されたベンゼン環またはナフタレン環であり、該アルキル置換基は、ベンゼンの場合に8〜12炭素原子を、ナフタレンの場合に4〜18炭素原子を含有する。好ましくは、式(III)の触媒はドデシルベンゼンスルホン酸またはテトラプロピルベンゼンスルホン酸である。式(III)の触媒に関するもっと詳細については、国際特許出願公開第95/17463号が参照される。
【0034】
架橋性シラン含有ポリエチレン組成物中に存在するシラノール縮合触媒の量は、一般に該組成物中のシラノール基含有ポリマーの量当たり約0.0001〜3重量%、好ましくは約0.001〜2重量%、最も好ましくは約0.005〜1重量%台である。
【0035】
ポリマー組成物について普通そうであるように、該架橋性シラン含有ポリエチレン組成物は、各種の添加剤、たとえば酸化防止剤、安定剤、潤滑剤、フィラー、および着色剤を含有してもよい。
【0036】
本発明をこのように説明し終わったので、これからいくつかの非限定的な実施例および比較例によって本発明はさらに例証されるだろう。
【0037】
実施例において、以下の手順がg’を測定するために使用された。本発明に従う分岐パラメータg’を測定する際には、この手順が守られなければならない。
【0038】
分子量(M)、分子量分布(M/M)、固有粘度[η]および長鎖分岐の含有量(LCB/g’)の測定に、ゲル浸透クロマトグラフィーが使用される。
【0039】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)としても知られ、分子がそのサイズに従って分離される分析手法である。大きい分子が最初に、より小さい分子が後から溶出する。
【0040】
減少する流体力学的体積Vhに従って、分子は溶出する。分子の分子量(M)とその固有粘度[η]との積として、流体力学的体積Vhは表されることができる。
【0041】
その条件においてポリマーサンプルが(吸着および他の効果がない)純粋なサイズ機構によって分離されるところの溶媒および温度の条件の所定の組について、ポリマーの溶出体積(または溶出時間)の関数としてのポリマー分子の流体力学的体積の対数は、全てのポリマーについて、それが直鎖型であれ分岐型であれ、同一であると、GPCにおける汎用較正の原理は述べている。式
Vh=[η]×MまたはlogVh=log([η]×M)
を見よ。
【0042】
流体力学的体積は、固有粘度[η]と分子量Mとの積として定義される。
【0043】
ポリマーのタイプおよび分岐があり得るポリマーかに、汎用較正は依存しない。
【0044】
保持時間と分子量との関係を見出すために、一連の少量の標準物が使用される。保持時間に対するlogVhのプロットは、図1に概略的に示された汎用較正グラフを与える。
【0045】
Mark−Houwink−Sakuradaの式は、ポリマーの固有粘度をその粘度平均分子量Mに関係付ける。
[η]=K×M
ここで、[η]は固有粘度である。
は粘度平均分子量である。
KおよびaはMark−Houwink定数である。これらの定数はポリマーのタイプ、溶液および温度に依存する。
【0046】
該式の両辺の対数をとることによって、
log[η]=logK+a×logM
が得られる。
【0047】
(狭い標準物の)log[η]対log[M]のプロットは、傾きaおよび切片Kを与える。これは、図2に概略的に示された粘度法プロットである。
【0048】
Kおよびaが、標準物およびサンプルの両者について既知であれば、それらの夫々の定数との関係によって、分子量が決定されることができる。
【0049】
分子量分布の定量的な評価のための汎用較正を、GPCは使用している。
【0050】
該較正は狭い標準物に基づいて、汎用較正曲線を計算する。各標準物の保持時間(RIのピーク)が計算される。これらの値が、付随する分子量とともに、汎用較正曲線を作成するために使用される。
【0051】
RI検出器および粘度検出器の両者について、ソフトウェアは粘度の対数対分子量の対数のプロットを作り出す能力がある。ポリマーのクロマトグラムの範囲内の各画分について、夫々の検出器は汎用較正を作り出す。
【0052】
汎用較正は、真の分子量の結果を与える。
【0053】
ソフトウェアは、標準物についてKおよびaを決定することができる。
【0054】
以下の値が使用されることが推奨される。
PS: K=9.54×10−5、a=0.725
PE: K=3.92×10−4、a=0.725
【0055】
使用された装置は、示差屈折率(dRI)検出器および単一の毛細管粘度計検出器、並びにWaters社からの3個のHT6E Styragel(多孔性スチレン−ジビニルベンゼン)カラムを有するWaters 150CVプラス ゲル浸透クロマトグラフ 番号W−4412であった(Waters 150CVプラス 粘度計付属型と比較せよ)。種々の分子量を有する狭い分子量分布のポリスチレン標準物(a1116_05002)を用いて、較正は行われた。移動相は、酸化防止剤としてBHT、すなわち2,6−ジ−第三級ブチル−4−メチルフェノール0.25g/lが添加された1,2,4−トリクロロベンゼン(98.5%純度)であった。Waters社からのソフトウェアMillennium32バージョン4がg’(LCB)の計算に使用された。
【0056】
長鎖分岐を有さず、したがって直鎖(分岐のない)ポリマーを表すポリスチレン標準物について、および本発明の分岐ポリエチレン組成物について、粘度法プロットが測定される。分岐パラメータがその後、式:

から計算される。ここで、[η]分岐は当の分岐ポリマーの固有粘度であり、[η]直鎖は直鎖(分岐のない)標準ポリマーの固有粘度である。
【0057】
上記が図3に示され、これは直鎖および分岐ポリマーの粘度法プロットが組み合わされたグラフ並びにg’のグラフを概略的に示す。
【0058】
実施例において、機械的特性がケーブルサンプルについて試験された。試験されたケーブルサンプルは以下の様式で製造された。すなわち、8mmの成形アルミニウム導体および0.7mmの絶縁物厚さからなるケーブルが、Nokia−Mailefer 60mm押出機で75m/分のライン速度において製造された。
ダイ:圧力(ワイヤガイド3.1mm、ダイ4.4mm)
導体温度:20℃(予熱されない導体)
冷却浴温度:23℃
スクリュー:Elise
温度プロフィール:170−180−190−190−190−190−190−190℃
【0059】
押出前のポリマー中にシラノール縮合触媒マスターバッチ(CMB−1)5%がドライブレンドされた。CMB−1は、エチレン−ブチルアクリレートコポリマー中へと混合されたドデシルベンゼンスルホン酸架橋触媒1.7%、乾燥剤(HDTMS、ヘキサドデシルトリメトキシシラン)および酸化防止剤(p−クレゾールとジシクロペンタジエンとのブチル化された反応生成物)からなる。ブチルアクリレート含有量:17重量%、MFR2.16=4.5g/10分。
【0060】
実施例1、2および比較例1〜4
【0061】
ISO 527に従う引張破断強さおよびISO 527に従う破断伸びに関する試験が、種々のポリマー組成物から製造されたケーブル絶縁物を有するケーブルについて実施された。実施例および比較例のポリマー組成物の詳細は以下の通りであった。
【実施例1】
【0062】
ポリマーA:g’=0.68、MFR2.16=1.0g/10分およびVTMS含有量1.3重量%を有する、高圧で製造されたエチレン−ビニルトリメトキシシラン(VTMS)コポリマー。250MPaおよび255℃における管型反応器中で製造された。
【実施例2】
【0063】
ポリマーB:g’=0.73、MFR2.16=1.8g/10分およびVTMS含有量1.8重量%を有する、高圧で製造されたエチレン−ビニルトリメトキシシランコポリマー。255MPaおよび252℃における管型反応器中で製造された。
【0064】
[比較例1]
ポリマーC:g’=0.45、MFR2.16=0.9g/10分およびVTMS含有量1.3重量%を有する、高圧で製造されたエチレン−ビニルトリメトキシシランコポリマー。230MPaおよび310℃における管型反応器中で製造された。
【0065】
[比較例2]
ポリマーD:g’=0.58、MFR2.16=1.2g/10分およびVTMS含有量1.3重量%を有する、高圧で製造されたエチレン−ビニルトリメトキシシランコポリマー。260MPaおよび275℃における管型反応器中で製造された。
【0066】
[比較例3]
ポリマーE:g’=0.60、MFR2.16=2.8g/10分およびVTMS含有量1.3重量%を有する、高圧で製造されたエチレン−ビニルトリメトキシシランコポリマー。260MPaおよび275℃の最大温度における管型反応器中で製造された。
【0067】
[比較例4]
ポリマーF:g’=0.62、MFR2.16=1.0g/10分およびVTMS含有量1.3重量%を有する、高圧で製造されたエチレン−ビニルトリメトキシシランコポリマー。240MPaおよび280℃の最大温度における管型反応器中で製造された。
【0068】
結果が表1に示される。
【表1】

【0069】
本発明に従う少なくとも0.65のg’を有する組成物を用意することによって、導体の予熱またはダイにおける管の使用を何ら必要としないで、少なくとも12.5MPaの引張破断強さ並びに少なくとも200%の破断伸びの、たとえばVDE 0276−603(「VDE、ドイツ国電気技術者連合」)に従う機械的要件を満たす電気ケーブル用の絶縁物を得ることが可能であることが、表1から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、汎用較正グラフを概略的に示す。
【図2】図2は、粘度法プロットを概略的に示す。
【図3】図3は、直鎖および分岐ポリマーの粘度法プロットが組み合わされたグラフ並びにg’のグラフを概略的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン含有量約0.1〜10重量%および少なくとも1のシラノール縮合触媒を有する架橋性シラン含有ポリエチレン組成物において、少なくとも0.65の分岐パラメータ(g’)値を有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
ISO 527に従って測定された破断伸びが少なくとも200%である、請求項1に従う組成物。
【請求項3】
ISO 527に従って測定された引張破断強さが少なくとも12.5MPaである、請求項1または2に従う組成物。
【請求項4】
0.65〜0.85の分岐パラメータ(g’)値を有する、請求項1〜3のいずれか1項に従う組成物。
【請求項5】
シラン含有ポリエチレン組成物がエチレン−シランコポリマー樹脂である、請求項1〜4のいずれか1項に従う組成物。
【請求項6】
エチレン−シランコポリマー樹脂が、エチレン−ビニルトリメトキシシランコポリマー、エチレン−ビスメトキシエトキシシランコポリマー、エチレン−ビニルトリエトキシシランコポリマー、エチレン−ガンマ−トリメトキシシランコポリマー、エチレン−ガンマ−(メタ)アクリルオキシトリエトキシシランコポリマー、エチレン−ガンマ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランコポリマー、エチレン−ガンマ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシランコポリマー、またはエチレン−トリアセトキシシランコポリマー樹脂である、請求項5に従う組成物。
【請求項7】
シラノール縮合触媒がスルホン酸を含んでいる、請求項1〜6のいずれか1項に従う組成物。
【請求項8】
シラノール縮合触媒が式(III)
ArSOH (III)
の化合物(Arは置換アリール基であり、該化合物は全部で14〜28炭素原子を含有する。)またはその加水分解性前駆体を含んでいる、請求項7に従う組成物。
【請求項9】
シラン含有量約0.1〜10重量%および少なくとも1のシラノール縮合触媒を有する架橋性シラン含有ポリエチレン組成物から、その絶縁物が誘導されているところの絶縁電気ケーブルにおいて、少なくとも0.65の分岐パラメータ(g’)値を有することを特徴とするケーブル。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に従う架橋性シラン含有ポリエチレン組成物の調製方法において、260℃以下のピーク温度における高圧重合であることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−520761(P2008−520761A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541128(P2007−541128)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001664
【国際公開番号】WO2006/054926
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(500224380)ボレアリス テクノロジー オイ (39)
【Fターム(参考)】