説明

染毛剤

【課題】
本発明は、主たる染毛成分として植物由来成分である車輪梅より抽出されたエキスを用いた安全性が高い染毛剤にても、染毛操作が簡単で、高い染色性のある染毛剤を提供する。
【解決手段】
これまで染毛成分として車輪梅を用いた染毛剤を検討してきたが、此れのみでは、とても満足出来る染毛効果が得られなかった。
更なる鋭意検討を行なった結果、今回ある特定の植物由来成分との併用により、これまでの車輪梅のみを用いた染毛剤からは、予想しきれない程の著しい染毛効果が得られ、此れにより植物及び植物由来成分を主体とした染毛操作が簡単で、染色性及び安全性が非常に高い染毛剤を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物および植物由来成分を染色の主体とし、安全性が高く簡単な染毛操作にて高い染色性を有する染毛剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
染毛剤は現在、パラフェニレンジアミンや塩酸トルエン−2,5−ジアミン等の酸化染料中間体と過酸化水素を主成分としたヘアダイと、酸性染料を主成分としたものが主流である。前者は色調が豊富で染色性、堅牢性が高い反面、毛髪を損傷させ、一部特異体質の人々にアレルギ−やかぶれを起こす欠点がある。また、後者は毛髪を損傷させることなく染毛することが可能であるが、染毛の際に頭皮や皮膚が染着される欠点があるほか、前者ほどではないが皮膚障害を起こす危険性がある。
また、それ以外に少数ながら、安全性の高さを特徴とした染毛剤もあるが、どれも酸化染料を用いたヘアダイや酸性染料を主成分としたものと比べ、とても満足できる染色性は得られないという問題点があった。
【0003】
【非特許文献1】市川典章ら、フレグランスジャーナル、(8)、11−15(2001)
【非特許文献2】三田康蔵ら、フレグランスジャーナル、(8)、16−27(2001)
【非特許文献3】川合正樹ら、フレグランスジャーナル、(10)、69−77(2004)
【非特許文献4】高瀬吉雄ら、皮膚と化粧品科学、213−215(1982 第1版発行)
【特許文献1】2001−128750号公報
【0004】
これらの問題点を解決すべく、織物などに「草木染め」の成分として使用されている、車輪梅を使用した染毛剤の検討を行った。
通常、「草木染め」の場合は、絹等の布を高温の染色液に浸漬したり、あるいは長時間浸漬させたりして染色性を高めている。
しかし、人の頭髪を染色する場合は、温和な条件でかつ短時間の施術が要求されるものであるが、このような染毛操作では、車輪梅を頭髪の染色に利用した場合、とても満足できる染色性は得られないという問題があった。
さらに鉄塩との併用においての検討も試みたが、染毛操作が複雑であるのみならず、染色性も満足できるものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決すべく、車輪梅より抽出されたエキスと、ある特定の植物由来成分を併用することにより、安全性が高く染毛操作が簡単で、尚且つ酸化染料を用いたヘアダイや酸性染料を主成分としたものと、同等以上の高い染色性を持った染毛剤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明による染毛剤は、車輪梅より抽出されたエキスと反応して発色を著しく高める植物由来成分としてラベンダー、メリッサ、サルビア、ローズマリー、大豆、シロツメクサ、イチジク、小麦、カラスムギのうち少なくとも1種を含有し、更にカチオン界面活性剤と液晶を形成する事により、上記の発色性をより高める効果のある有機化合物としては、飽和一価アルコールとしてミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、さらに不飽和一価アルコールとしてオレイルアルコール、なる群の中から選ばれた少なくとも1種以上含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明による染毛剤は、車輪梅より抽出されたエキスと、特定の植物由来成分を併用することにより、これまでの車輪梅のみを用いた染毛剤からは、予想しきれない程の著しい染毛効果が得られ、此れにより植物及び植物由来成分を主体とした安全性の高い染毛剤にても、簡単な染毛操作にて、十分満足できる染色効果を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
染色の主成分の一つとして車輪梅より抽出されたエキスを含有し、その配合量としては、0.01〜60.0重量%を含有する。
【0009】
尚、本発明で使用する車輪梅より抽出されたエキスとは、自然に自生しているバラ科シャリンバイ属シャリンバイ(Rhaphiolepis umbellate)よりチップを作り、抽出溶媒として、水、アルコール類(例えば、メタノール、無水エタノール、エタノールなどの低級アルコール、又はプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール)、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステルなどのエステル類、キシレン、ベンゼン、クロロホルムなどの有機溶媒を、単独又は2種類以上の混液を任意に組み合わせて使用し、製造方法は特に制限されるものはないが、常圧下での溶媒の沸点までの範囲であれば良く、抽出後は濾過・精製して溶液状、ペースト状、ゲル状、粉末状としたものである。
【0010】
上記、車輪梅より抽出されたエキスと反応し、著しく高い染色性を示す植物由来成分としては、シソ科・マメ科・クワ科・イネ科の中の、ある特定の植物にその効果がみられ、その中より選ばれた少なくとも1種以上を含む。
シソ科の中ではラベンダー、メリッサ、サルビア、ローズマリーが、またマメ科では大豆、シロツメクサ、クワ科ではイチジク、イネ科では小麦、カラスムギに、その効果が観られ、これらの植物群より抽出されたエキスの中から選ばれた少なくとも1種以上を含有する。
【0011】
尚、その抽出方法としては、植物体の各種部位(花、花穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、種子又は全草)をそのまま或いは粉砕後搾取したものを、抽出溶媒として、水、アルコール類(例えば、メタノール、無水エタノール、エタノールなどの低級アルコール、又はプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール)、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステルなどのエステル類、キシレン、ベンゼン、クロロホルムなどの有機溶媒を、単独又は2種類以上の混液を任意に組み合わせて使用し、製造方法は特に制限されるものはないが、常圧下での溶媒の沸点までの範囲であれば良く、抽出後は濾過・精製して溶液状、ペースト状、ゲル状、粉末状としたものである。
【0012】
また上記、車輪梅より抽出されたエキスと反応し染色性を示す成分としては、1種以上を任意に組み合わせて0.1〜60.0重量%を添加する。また、上記発色成分は任意に選択し、添加することが出来る。
【0013】
更に、液晶を形成し発色をよりいっそう高めるためのカチオン界面活性剤として、アミン塩・アルキル4級アンモニウム塩・環式4級アンモニウム塩、など挙げられるが、一般に化粧品に使用されるカチオン界面活性剤であれば、これに限定されるものではない。
【0014】
上記、カチオン界面活性剤との反応により液晶を形成し、より発色を高めるための有機化合物として、直鎖アルコールのうち CnH2n+1OH なる一般式で示される飽和一価アルコール、またはCnH2n-1OH なる一般式で示される不飽和一価アルコールの中から選ばれた少なくとも1種以上を含み、飽和一価アルコールが、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、不飽和一価アルコールがオレイルアルコール、なる群の中から選ばれた少なくとも一種以上の有機化合物であり、1種以上を任意に組み合わせて0.1〜40.0重量%を添加する。
【0015】
前項に加え、これにより作られた染毛剤は酸性を示す物であり、尚且つその酸性値は効果があるのが2.0〜6.0であるが、好ましくはpHが3.0〜5.0の範疇を示す。
【0016】
本発明による染毛剤においては、上記必須成分の他に、化粧品等に常用される成分や添加剤を配合することが出来る。すなわち、界面活性剤、油脂類、増粘剤、溶剤、防腐剤、pH調整剤、金属封鎖剤、保湿剤、香料、色素など本発明の効果を損なわない範囲で自由に組み合わせて適宜配合することが出来る。
【0017】
本発明の染毛剤は、上記成分を混合してクリ−ム状、液状、ゲル状、エアゾ−ル等の剤型にすることができるが、これらの剤型に限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
次に本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例として表1〜4、に示す組成の染毛剤を常法により調製した。そして、その染色性を以下の評価方法により評価し、その結果を表1〜4に併せて示す。
【0019】
評価方法1:JIS L0803の染色堅牢度試験用白布(5cm×5cm)にゲル状染毛剤3gを均一に塗布し、30℃で3時間放置する。水洗後、30%ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン水溶液で洗浄し、風乾する。この操作を3回繰り返す。そして、染色性を色差計(日本電色工業株式会社製、ND−503AA型)を用い、L、a、b値から下記の(1)式によって算出されるΔE値により判断した。ここで、ΔE値は、染色前の白布の色調と染色後の白布の色調の色差を示している。
【数1】

【0020】
なお、ΔL、Δa、Δbは、染色前の白布と、染色後の白布の測定差を示す。本発明者等の経験では、ΔE値が55.0以上の場合、濃く染まったと評価できる。
【0021】
評価方法2:ごま塩毛(長さ10cm、黒毛1g、白毛1g)に、ゲル状第1剤5gを均一に塗布し、30℃で20分間放置後、評価方法1記載のゲル状第2剤5gを均一に塗布し、30℃で10分間放置し、水洗後、30%ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液で洗浄し、風乾する。
【0022】
そして、ごま塩毛の染色性を、目視により評価した。評価結果を次の4つの段階に分類して示した。
( ◎:白毛が全く目立たない、○:白毛がほとんど目立たない、△:白毛がやや目立つ、
×:白毛がほとんど染まっていない。 )
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0023】
表1〜4の結果から明らかな通り、車輪梅より抽出されたエキスに、ある特定の植物由来成分を併用することにより著しく高い染色性を示す。
更に、ある特定の飽和一価アルコールまたは不飽和一価アルコールの添加により、カチオン界面活性剤と液晶を形成し、よりいっそう発色の効果を高める。
【0024】
表4の結果から明らかな通り、上記の染色効果は、特定のpH域において有効である。
【0025】
安全性評価方法:20〜50歳の健常人50人の前腕部内側に表5に示す染毛剤を1日1回、7日間連続塗布し、かゆみ、痛み、発赤、浮腫が生じているか否かを目視により観察した。そして、その評価を次の5段階に分類し、結果を表5に併せて示す。なお、表5中、−:異常なし±:わずかにかゆみを感じた+:かゆみ、痛み等の異常を感じた++:発赤+++:浮腫を示す。なお、参考例 1として生理食塩水を同様に塗布し、実施例23〜24と同様の安全性評価方法により評価し、その結果を表5に併せて示す。
【表5】

【0026】
表5の結果から、実施例23〜24の染毛剤は安全性が高いものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
植物及び植物由来成分を主体とした安全性の高い染毛剤にても、簡単な染毛操作にて高い染色効果を持たせることが出来る。これにより、これまで皮膚トラブルを起こすために、染色の高い染毛が行えなかった人々にも安心して満足のいく染毛が行える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪梅より抽出されたエキスを、主たる染毛成分として含有することを特徴とする染毛剤。
【請求項2】
車輪梅より抽出されたエキス及び、これと反応し著しく高い染色性を示す植物由来成分として、ラベンダー、メリッサ、サルビア、ローズマリー、大豆、シロツメクサ、イチジク、小麦、カラスムギの植物群より抽出されたエキスのうち、少なくとも一種以上を含有し、それぞれの配合量が、車輪梅より抽出されたエキスにおいては0.01〜60.0重量%、これと反応し染色性を示す植物由来成分としては、1種以上を任意に組み合わせたその合計が0.1〜60.0重量%の範囲内にあることを特徴とする染毛剤。
【請求項3】
前項に加え、カチオン界面活性剤と液晶を形成することにより、請求項1に挙げた植物エキスによる発色効果を、よりいっそう高める有機化合物として、飽和一価アルコールまたは不飽和一価アルコールの中から選ばれた少なくとも1種以上を含み、飽和一価アルコールが、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、不飽和一価アルコールがオレイルアルコール、なる群の中から選ばれた少なくとも一種以上の有機化合物を含有し、その配合量がそれぞれ0.1〜40.0重量%の範囲内にあることを特徴とする染毛剤。
【請求項4】
前項に加え、これにより作られた染毛剤は酸性を示す物であり、その酸性値はpHが2.0〜6.0の範疇にあることを特徴とする染毛剤。

【公開番号】特開2008−260719(P2008−260719A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105003(P2007−105003)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(399091120)株式会社ピカソ美化学研究所 (29)
【Fターム(参考)】