説明

染毛用組成物及びそれを用いた染毛方法

【課題】本発明は、染色性植物粉末を用いた染毛において、短時間で充分な濃さの発色を可能とする染毛用組成物及び染毛方法を提供することを目的とする。
【解決手段】染色性植物粉末100質量部に対し、5W/mK以上の熱伝導率を有する熱伝導性無機粒子0.5〜100質量部を含有することを特徴とする染毛用組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘナやインディゴ等の染色性植物粉末を用いた染毛剤組成物及びそれを用いた染毛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、染毛用組成物の染料成分しては、合成染料であるp−フェニレンジアミン系やアミノフェノール系の酸化染料が広く用いられている。このような酸化染料は、染毛力に優れるとともに、多彩な色調を表現できるために多様な要求に応じることができるためである。
【0003】
しかしながら、酸化染料は、皮膚障害を引き起こすことが知られている。また、生態系に悪影響を及ぼす環境ホルモンであるという指摘や、さらに、発がん性や発アレルギー性等の疑いがあるとの指摘もある。このことから、酸化染料を用いた染毛は、欧州等においては一部規制の対象となっている。
【0004】
このような観点から、染毛用組成物の染料成分として、酸化染料よりも安全性が高いとされている、HC染料や塩基性染料等の直接染料も用いられている。直接染料を用いた染毛剤は、通常の酸化染毛剤と異なり、中性域での染毛が可能であることから、アルカリによる毛髪の損傷がなく、また、過酸化水素などの酸化剤が不要であるため、皮膚刺激や目に入ることによって引き起こされる事故のおそれがなく、比較的安全性の高い染毛剤とされている。例えば、HC染料は、分子径が小さい染料であるために毛髪内部の比較的内層部で水素結合や分子間引力によって染着する。また、塩基性染料は分子径が大きく分子構造内にプラスの電荷を持つために、毛髪表面のケラチンタンパクのマイナス部分とイオン結合することによって染着する。これらの直接染料は、化学反応することなく、毛髪に染着するために繰り返し染毛してもダメージがすくない。しかしながら、その染色効果の持続性に乏しく、シャンプーを繰り返すことなどにより色落ちしやすくいという欠点があった。
【0005】
一方、近年、ヘナ染料等の植物性染料を含有する染色性植物粉末が着目されている。ヘナ染料は、インド、イランその他熱帯地方に産するミソハギ科の潅木であるLawsoniainermisの葉を乾燥、粉砕して得られるオレンジからブラウン系の天然染料である。ヘナ染料は、有効成分として2-ヒドロキシ-1, 4-ナフトキノン(ローソン(Lawsone)とも呼ばれる)を含み、ローソンは主に葉に集中して存在している。
【0006】
例えば、下記特許文献1には、粉末状ヘナからなる染毛剤用増粘剤が開示されており、また、粉末状ヘナに直接染料を配合した染毛用組成物が開示されている。
【特許文献1】特開2002−284654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
染色性植物粉末は、上述したように天然染料であるために合成染料に比べて安全性が高いとされており、また、直接染料に比べて比較的色持ちがよいとされている。しかしながら、染色性植物粉末を用いた染毛は、充分に発色するまで時間がかかるという問題があった。例えば、ヘナ粉末を主成分とする染毛用組成物を用いて染毛する場合には、通常、ヘナ粉末を溶いたペーストを毛髪に塗布した後、加熱装置により、人体に負担を与えない30〜35℃程度の温度で10〜30分間程度放置した後、シャンプー及び乾燥仕上げをして施術を終える。従来のヘナ粉末を主成分とする染毛用組成物を用いた場合にはこの施術直後においては充分な発色が得られない。従って、通常、施術の後、数日後に仕上がり色が得られたことが確認できることになる。そのために、例えば、美容室において染毛した場合には、施術直後に、仕上がり色を確認することができず、また、被施術者は充分に毛髪の色が発色していないままで美容室を後にするために施術による充分な満足感が得られなかった。
【0008】
本発明は、ヘナ染料を用いた染毛において、施術直後に充分な仕上がり色の発色を可能とする染毛用組成物及び、該組成物を用いた染毛方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の染毛用組成物は、染色性植物粉末100質量部に対し、5W/mK以上の熱伝導率を有する熱伝導性無機粒子0.5〜10質量部を含有するものである。この構成によれば、熱伝導性無機粒子が蓄熱する作用を有するために、施術における加熱段階において、染毛用組成物のペーストが塗布された毛髪を効果的に温めることができる。それにより、短時間で発色が進行して仕上がり色に近い色が得られる。なお、このメカニズムは現時点においては、明らかではない。しかし、積み重ねた実験結果から、発明者は次のように考えている。すなわち、染色性植物粉末を用いて染毛した場合には、染色性植物粉末が毛髪の内部に浸透した後、染色性植物粉末に含まれる色素成分であるポリフェノール類が毛髪に結合して毛髪から抜けにくくなるとともに、化学反応の進行により充分に発色すると思われる。ここで、染色性植物粉末に熱伝導性無機粒子を配合することにより、加熱段階において熱が拡散せず、毛髪が効率的に温められることにより短時間で化学反応が進行すると考えている。
【0010】
また、前記熱伝導性無機粒子としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、アパタイト類、及び、炭化珪素からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の粒子であることが好ましい。これらの無機粒子は、熱伝導性が高いために発色を促進する効果が高い。
【0011】
また、前記染色性植物粉末100質量部に対し、直接染料0.1〜10質量部をさらに含有することが好ましい。直接染料は、共有結合を介さずに毛髪に吸着されるために定着性に乏しくシャンプー等により色落ちしやすいという欠点がある、しかしながら、本発明によれば、直接染料が色落ちしにくくなる。これは、染色性植物粉末中のポリフェノールが、直接染料を固定化するためのなんらかの作用をしていると考えている。
【0012】
また、本発明の染毛方法は、上記何れかに記載の染毛用組成物に水を加えてペーストを調製する工程、前記ペーストを毛髪に塗布する工程、毛髪表面温度を30〜40℃になるように加熱維持しながら10〜30分間放置する工程、洗毛により毛髪に付着した余分なペーストを洗い流す工程、前記毛髪を乾燥する工程、とを備えることを特徴とする。この構成によれば、熱伝導性無機粒子により、加熱処理時に毛髪が効率的に温められるために、比較的短時間で仕上がり色に近い発色が得られる。
【0013】
また、前記乾燥後の毛髪に表面温度150〜200℃に制御したアイロンプレスによりプレス処理する工程をさらに備えることが好ましい。このような工程によれば、アイロンプレスにより、高温及び高圧で処理するために染色性植物粉末中の染料成分の化学反応をほぼ終結させることができる。従って、例えば、施術の直後に仕上がり色を確認することができる。また、施術直後に化学反応をほぼ終結させることができるために、施術の数時間後にシャンプーした場合でも、染料の抜けが少なくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、染色性植物粉末を用いた染毛において、染毛の施術直後に充分な仕上がり色の発色が可能となる染毛用組成物、及び染毛方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の染毛用組成物は、染色性植物粉末100質量部に対し、5W/mK以上の熱伝導率を有する熱伝導性無機粒子0.5〜100質量部を含有するものである。以下、本発明について詳しく説明する。
【0016】
本発明で用いられる染色性植物粉末としては、ヘナ粉末や、天然インディゴ、ウコン、クルミ殻粒、茶葉、バラ、柿葉、コーヒー種子、レモン果皮等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
なお、例えば、ヘナ粉末は、Lawsonia inermis、Lawsonia alba Lam.、Lawsonia Spinosa等の学名で知られるミソハギ科の灌木であるヘナの葉や幹を乾燥した後、粉砕して粉末にすることにより得られる。ヘナ粉末は、2-ヒドロキシ-1, 4-ナフトキノン(ローソン)やポリフェノール類を含む。また、天然インディゴは発色バランスに優れる点から好ましい。
【0018】
本発明の染毛用組成物は、熱伝導性無機粒子を含有する。このために、染毛工程における加熱処理時において、染毛用組成物のペーストが塗布された毛髪を効果的に温めることができる。それにより、染色の仕上がり色が比較的短時間で得られる。これは、染色性植物粉末を用いて染毛した場合には、植物性染料に含まれる色素成分であるポリフェノール成分の化学反応が熱伝導性無機粒子の蓄熱により短時間で進行するためであると考えている。
【0019】
このような熱伝導性無機粒子としては、5W/mK以上の熱伝導率を有する熱伝導性に優れた無機粒子であれば特に限定なく用いられる。その具体例としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、アパタイト類、及び、炭化珪素等が挙げられる。熱伝導性無機粒子の粒子径としては、平均粒子径(D50)0.5〜50μm、さらには、1〜30μm、とくには1〜10μmのものが好ましく用いられる。
【0020】
熱伝導性無機粒子の配合量としては、染色性植物粉末100質量部に対し、0.5〜100質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。前記熱伝導性無機粒子の配合割合が染色性植物粉末100質量部に対し、0.5質量部未満の場合には充分な発色促進効果が得られず、また、100質量部を超える場合には、染毛作業性が悪くなる。
【0021】
本発明においては、染料成分として、色調を調整するために、本発明の効果を損なわない範囲で、直接染料、塩基性染料、HC染料、等のその他の染料を配合してもよい。なお、本発明によれば、ヘナ染料と併せて用いられるその他の染料の色落ちも抑制することができる。これは、ヘナ染料中のポリフェノールが、比較的速い段階で重合して架橋するために、その他の染料が固定化されて施術後のシャンプーにより落ちにくくなるためと考えている。
【0022】
その他の染料の具体例としては、例えば、2,2’-ビス(2,3-ジヒドロ-3-オキソインドリリデン)、インディゴチン、ニトロ−p−フェニレンジアミン、p−ニトロ−o−フェニレンジアミン、p−ニトロ−m−フェニレンジアミン、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノール、ピクラミン酸、N1,N4,N4−トリス(2−ヒドロキシエチル)−2−ニトロ−p−フェニレンジアミン、4−〔(2−ニトロフェニル)アミノ〕フェノール、N1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ニトロ−p−フェニレンジアミン、2,2'−〔(4−アミノ−3−ニトロフェニル)イミノ〕ビスエタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ニトロアニリン、2−〔〔2−(2−ヒドロキシエトキシ)−4−ニトロフェニル〕アミノ〕エタノール、N1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロ−o−フェニレンジアミン及びそれらの塩、1,4−ジアミノアントラキノン、「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令」(昭和41年告示、厚生省)により定められた染料(以下、法定色素と略す)、すなわち法定色素赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色201号、赤色218号、赤色225号、赤色227号、赤色230号の(1)、赤色230号の(2)、赤色231号、赤色232号、赤色401号、赤色501号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色505号、赤色506号、だいだい色201号、だいだい色205号、だいだい色207号、だいだい色402号、だいだい色403号、黄色4号、黄色5号、黄色201号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、黄色204号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色404号、黄色405号、黄色406号、黄色407号、青色1号、青色2号、青色201号、青色202号、青色203号、青色205号、青色403号、緑色3号、緑色201号、緑色202号、緑色205号、緑色401号、緑色402号Aかっ色201号、紫色201号、紫色401号及び黒色401号、さらには、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook Eighth Edition(米国CTFA発行)に収載されている、Basic Blue 3、Basic Blue 7、BasicBlue 9、Basic Blue 26、Basic Blue 47、Basic Blue 99、Basic Brown 4、Basic Brown 16、Basic Brown 17、Basic Green 1、Basic Green 4、Basic Orange 1、Basic Orange 2、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 22、Basic Red 46、Basic Red 76、Basic Red 118、Basic Violet 1、Basic Violet 3、Basic Violet 4、Basic Violet 10、Basic Violet 11: 1、Basic Violet 14、Basic Violet16、Basic Yellow 28、Basic Yellow 57、Direct Black 51、Direct Red 23、Direct Red 80、Direct Red 81、Direct Violet 48、Direct Yellow 12、DisperseBlack 9、Disperse Blue 1、Disperse Blue 3、Disperse Blue 7、Disperse Brown 1、Disperse Orange 3、Disperse Red 11、Disperse Red 15、Disperse Red17、Disperse Violet 1、Disperse Violet 4、Disperse Violet 15、HC Blue No.2、HC Blue No.4、HC Blue No.5、HC Blue No.6、HC Blue No.7、HC Blue No.8、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Blue No.14、HC Brown No.1、HC Brown No.2、HC Green No.1、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Orange No.5、HC Red No.1、HCRed No.3、HC Red No.7、HC Red No.8、HC Red No.9、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.7、HC Yellow No.8、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15、SolventBlack 3、Solvent Black 5、Solvent Blue 35、Solvent Yellow 172等が挙げられる。これらの中では、特に、上記「HC」を接頭辞として有する染料として具体例を挙げた、HC染料は、毛髪の内部に浸透して、より深みのある発色を付与する点から好ましい。また、塩基性染料は染色性の安定性に優れる点から好ましい。さらに、塩基性染料、HC染料の組合せは、酸化型色素重合を行う点から特に好ましい。
【0023】
HC染料や塩基性染料を配合する場合には、それぞれ染色性植物粉末100質量部に対し、0.5〜5質量部、さらには1〜2質量部配合することが好ましい。このような割合で配合することにより、色落ちを充分に抑制することができる。
【0024】
次に、上述した染毛用組成物を用いて毛髪を染色する方法について、詳しく説明する。
【0025】
毛髪の染色においては、はじめに、染毛用組成物に水を加えてペーストを調整する。染毛用組成物に配合する水の量は、毛髪に塗布したときに垂れすぎないような粘度のペーストが得られる量であれば特に限定されない。具体的には、例えば、染毛用組成物全量に対し、0.8〜5倍量、さらには、1〜3倍量程度であることが好ましい。そして、調製されたペーストを毛髪に塗布し、樹脂フィルム等で毛髪をラップする。そして、遠赤外線加温器等で毛髪表面温度が30〜40℃程度になるように加温して、そのまま10〜30分間維持する。そして、カラーチェックした後に、毛髪に付着した余分なペーストを洗い流す。このような工程により、染色性植物粉末中の染料の化学反応を短時間で進行させることができる。従って、例えば、施術直後に、従来よりも短時間でより仕上がり色に近い発色が得られる。また、熱伝導性無機粒子が化学反応の進行を促進するために、施術後のシャンプー等による色落ちが少なくなる。
【0026】
なお、本発明の染毛方法においては、さらに、染色及び乾燥した後の毛髪に、表面温度
150〜200℃、好ましくは160〜180℃の範囲のヘアアイロンプレスによりプレス処理する工程をさらに備えることが好ましい。このような工程によれば、アイロンプレスの高温及び高圧で処理するためにヘナ粉末の化学反応をほぼ終結させることができる。従って、例えば、施術の直後に仕上がり色を確認することができる。また、施術直後に化学反応をほぼ終結させることができるために、施術の数時間後にシャンプーした場合でも、染料の抜けが少なくなる。
【0027】
なお、染色性植物粉末に含有されるポリフェノール類は光が照射される条件下で容易に変性し、反応活性が低下することが知られている。従って、例えば、美容室により染毛施術を受けた直後においては、反応が充分に進行していないために、外部環境からの光により未反応のポリフェノール類の反応活性が低下する。そして、未反応の変性したポリフェノール類は、被施術者の洗髪により流されてしまうおそれがある。本発明によれば、施術直後に化学反応をほぼ終結させることが可能であるために、施術数時間後に被施術者自ら洗髪したとしても、染色性植物粉末中の染料の有効成分であるポリフェノール類が洗い流されることも抑制される。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。なお、本発明の範囲は、本実施例により何ら限定されるものではない。
【0029】
染色性植物粉末(Kirpal(株)製のヘナ粉末及び天然インディゴ粉末)と、塩基性染料(Basic Brown No.17)と、HC染料(HC Yellow No.2、HC Red No.1)と、熱伝導性無機充填材(酸化アルミニウム又は酸化チタン)とを表1に示す量で混合して染毛用組成物を調整し、さらに水を配合することによりペーストを調製した。
【0030】
次に、一端で結束された総重量10gの人毛からなる毛髪束に調製された各ペーストを塗布した。なお、毛髪束を構成する人毛の全ては白髪であった。
【0031】
そして、ペーストが塗布された毛髪束をラップした後、遠赤外線加温器を40℃に設定して約30分間維持した。このとき人毛表面の温度は約40℃であった。そして、毛髪束に付着したペーストを水で洗い流し、さらに、市販のシャンプー剤で洗毛した。そして、タオルで水分をよく拭き取った後、水分がなくなる程度にドライヤーで乾燥した。そして乾燥直後の色調を目視で評価した。
【0032】
そして、さらに、乾燥後の毛髪束を180℃に設定したヘアアイロンプレスを用いて、約5秒程度熱プレスした。そして熱プレス後の色調を目視で評価した。
【0033】
なお、上記色調評価は、以下の判定基準に基づき、JIS慣用色名に基づき判定した。
【0034】
結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
ヘナ粉末、天然インディゴ粉末、塩基性染料を染料とし、熱伝導性無機粒子を配合した実施例1〜4の染料で染色された毛髪束は、ドライヤーで乾燥した直後に濃い黄茶色の色調を示した。そして、ドライヤーで乾燥した後、さらにアイロンプレスした場合には、アイロンプレス直後の時点で、濃い黒茶色の発色を示した。なお、アイロンプレス後の発色は、同じサンプルを乾燥後、アイロンプレスせずに1週間放置したときの発色と同等であった。一方、無機充填材を含有しないペーストを用いて染色した比較例1及び2で得られた染色された毛髪束は、ドライヤーで乾燥した直後は薄い黄色の色調を示した。そして、経時的に徐々に濃さが増して、1週間経過したときには色が安定した。しかしながら、そのときの発色は、茶色であり、実施例1〜4の黒茶色の濃さには及ばなかった。
【0038】
また、塩基性染料を用いず、ヘナ粉末及び天然インディゴ粉末のみを染料とし、熱伝導性無機粒子を配合した実施例5〜7の染料で染色された毛髪束は、ドライヤーで乾燥した直後に黄色の色調を示した。そして、ドライヤーで乾燥した後、さらにアイロンプレスした場合には、アイロンプレス直後の時点で、濃い茶色の発色を示した。なお、アイロンプレス後の発色は、同じサンプルを乾燥後、アイロンプレスせずに1週間放置したときの発色と同等であった。一方、同じ染色系で無機充填材を含有しないペーストを用いて染色した比較例3及び4で得られた染色された毛髪束は、ドライヤーで乾燥した直後は黄色の色調を示した。そして、経時的に徐々に濃さが増して、1週間経過したときには色が安定した。しかしながら、そのときの発色は、赤茶色であり、実施例5〜6の茶色の濃さには及ばなかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る染毛用組成物を用いて染毛した場合には、短時間で、目的とする仕上げ色が得られる。従って、例えば、美容室で染毛施術した場合に、被施術者に満足感を与えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色性植物粉末100質量部に対し、5W/mK以上の熱伝導率を有する熱伝導性無機粒子0.5〜100質量部を含有することを特徴とする染毛用組成物。
【請求項2】
前記熱伝導性無機粒子が、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、アパタイト類、及び、炭化珪素からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の粒子である請求項1に記載の染毛用組成物。
【請求項3】
前記染色性植物粉末100質量部に対し、直接染料0.1〜10質量部をさらに含有する請求項1または2に記載の染毛用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の染毛用組成物に水を加えてペーストを調製する工程、前記ペーストを毛髪に塗布する工程、毛髪表面温度を30〜40℃になるように加熱維持しながら10〜30分間放置する工程、洗毛により毛髪に付着した余分なペーストを洗い流す工程、前記毛髪を乾燥する工程、とを備えることを特徴とする染毛方法。
【請求項5】
前記乾燥後の毛髪に表面温度150〜200℃に制御したアイロンプレスによりプレス処理する工程をさらに備える請求項4に記載の染毛方法。

【公開番号】特開2010−132596(P2010−132596A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309597(P2008−309597)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(504331875)有限会社M&SMART (2)
【Fターム(参考)】