説明

柱接合構造

【課題】上柱から下柱へ鉛直荷重を確実に伝達することができる柱接合構造を提供する。
【解決手段】上柱心材26の下面から下柱心材20の上面へ軸力が伝達されるように、接合部材16により下柱心材20と上柱心材26とをつなぐことによって、上柱14の鉛直荷重を下柱12へ確実に伝達することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造の下柱と上柱とを接合する柱接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、木材からなる荷重支持層と、荷重支持層の外側に設けられる燃え止まり層と、燃え止まり層の外側に設けられる燃え代層と、を有する複合木質構造材が開示されている。このような3層構造の複合木質構造材を下柱及び上柱とし、下柱の上に上柱を載置して接合する場合、荷重支持層を介して上柱から下柱へ鉛直荷重が伝達されるように接合しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−2189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は係る事実を考慮し、上柱から下柱へ鉛直荷重を確実に伝達することができる柱接合構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、荷重を支持する木製の下柱心材と、前記下柱心材の外周を取り囲む第1燃え止まり層と、前記第1燃え止まり層の外周を取り囲む木製の第1燃え代層と、を備えた下柱と、荷重を支持する木製の上柱心材と、前記上柱心材の外周を取り囲む第2燃え止まり層と、前記第2燃え止まり層の外周を取り囲む木製の第2燃え代層と、を備え、前記下柱の上に載置された上柱と、前記上柱心材の下面から前記下柱心材の上面へ軸力が伝達されるように、前記下柱心材と前記上柱心材とをつなぐ接合部材と、を有する柱接合構造である。
【0006】
請求項1に記載の発明では、上柱心材の下面から下柱心材の上面へ軸力が伝達されるように、接合部材により下柱心材と上柱心材とをつなぐことによって、上柱の鉛直荷重を下柱へ確実に伝達することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記接合部材は、前記第1燃え止まり層の上面から上方へ突出する前記下柱心材が下部へ挿入され、前記第2燃え止まり層の下面から下方へ突出する前記上柱心材が上部へ挿入されて、前記下柱心材と前記上柱心材とをつなぐ筒状部材である。
【0008】
請求項2に記載の発明では、筒状部材により下柱心材と上柱心材とをつないで下柱と上柱とを接合した状態から、下柱心材に対して上柱心材が横方向へずれるのを防止することができる。また、下柱心材及び上柱心材に断面欠損を生じさせずに、下柱と上柱とを接合できる。すなわち、下柱と上柱との接合強度を向上させることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、木製の第3燃え代層と、前記第3燃え代層の内側に設けられた第3燃え止まり層と、を備え、前記筒状部材の外周を取り囲むように配置されるブロック体を有する柱接合構造である。
【0010】
請求項3に記載の発明では、筒状部材が第3燃え止まり層と第3燃え代層とによって取り囲まれるので、下柱と上柱との接合部における下柱心材及び上柱心材の火災時における温度上昇を抑制でき、下柱と上柱との接合部の耐火性を確保することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記接合部材は、前記下柱心材の上面に形成された第1挿入部に下部が挿入され、前記上柱心材の下面に形成された第2挿入部に上部が挿入されて、前記下柱心材と前記上柱心材との軸回りの相対回転を抑えるように前記下柱心材と前記上柱心材とをつなぐ挿入部材である。
【0012】
請求項4に記載の発明では、下柱心材と上柱心材とをつないで下柱と上柱とを接合した状態から、下柱心材に対して上柱心材が横方向へずれるのを防止することができる。また、下柱心材と上柱心材とをつないで下柱と上柱とを接合した状態で、第1燃え代層によって外周を取り囲まれた第1燃え止まり層と、第2燃え代層によって外周を取り囲まれた第2燃え止まり層と、によって挿入部材は外周を取り囲まれるので、下柱と上柱との接合部の耐火性を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記構成としたので、上柱から下柱へ鉛直荷重を確実に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る柱接合構造の組み立て手順を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る柱接合構造の組み立て手順を示す斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る柱接合構造の組み立て手順を示す説明図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図3のB−B断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る挿入部材を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る柱接合構造の変形例を示す正面断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る柱接合構造の変形例を示す正面断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る接合部材の変形例を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態に係る柱接合構造の変形例の組み立て手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の第1の実施形態に係る柱接合構造について説明する。
【0016】
図1(c)の正面断面図に示すように、柱接合構造10は、下柱12、上柱14、接合部材としての鋼製の筒状部材16、及びブロック体18を有している。
【0017】
下柱12は、荷重を支持する木製の下柱心材20と、下柱心材20の外周を取り囲む第1燃え止まり層22と、第1燃え止まり層22の外周を取り囲む木製の第1燃え代層24と、を備えている。上柱14は、荷重を支持する木製の上柱心材26と、上柱心材26の外周を取り囲む第2燃え止まり層28と、第2燃え止まり層28の外周を取り囲む木製の第2燃え代層30と、を備えている。また、上柱14は、下柱12の上に載置されている。
【0018】
図1(c)、及び図2(a)の斜視図に示すように、筒状部材16は、角筒形状の部材であり、第1燃え止まり層22の上面から上方へ突出する下柱心材20の下柱突出部32が下部へ挿入され、第2燃え止まり層28の下面から下方へ突出する上柱心材26の上柱突出部34が上部へ挿入されて、上柱心材26の下面から下柱心材20の上面へ軸力が伝達されるように、下柱心材20(下柱突出部32)と上柱心材26(上柱突出部34)とをつなぐ。すなわち、筒状部材16の材軸方向(上下方向)の長さは、下柱突出部32と上柱突出部34との材軸方向(上下方向)の長さを合計した長さと略等しくなっている。
【0019】
図2(b)の斜視図に示すように、ブロック体18は、平断面がL字状の木製の第3燃え代層36と、第3燃え代層36の内側に設けられた第3燃え止まり層38とを備えている。そして、筒状部材16の外側の角部と、ブロック体18(第3燃え止まり層38)の内側の角部とを合わせるようにして4つのブロック体18を配置し、図2(c)の斜視図に示すように、配置した4つのブロック体18により筒状部材16の外周を取り囲む。
【0020】
この状態において、図1(c)に示すように、第1燃え代層24の上面と、第3燃え代層36の下面とは略一致して接触し、第2燃え代層30の下面と、第3燃え代層36の上面とは略一致して接触する。また、第1燃え止まり層22の上面と、第3燃え止まり層38の下面と筒状部材16の下面とを合わせた下端面と、は略一致して接触し、第2燃え止まり層28の下面と、第3燃え止まり層38の上面と筒状部材16の上面とを合わせた上端面と、は略一致して接触する。
【0021】
なお、第1燃え代層24の上面と第3燃え代層36の下面、第2燃え代層30の下面と第3燃え代層36の上面、第1燃え止まり層22の上面と第3燃え止まり層38の下面、第1燃え止まり層22の上面と筒状部材16の下面、第2燃え止まり層28の下面と第3燃え止まり層38の上面、及び第2燃え止まり層28の下面と筒状部材16の上面とは、対向していればよい。すなわち、これらの面同士は、接触していてもよいし、隙間を有していてもよい。隙間を有する場合には、この隙間からの熱の進入を防ぐために、第1燃え止まり層22、第2燃え止まり層28、及び第3燃え止まり層38と同質の材料でこの隙間を塞ぐのが好ましいが、第1燃え止まり層22、第2燃え止まり層28、及び第3燃え止まり層38から熱は吸収されるので、熱の吸収が期待できないような材料でこの隙間を充填してもよい。
【0022】
次に、本発明の第1の実施形態に係る柱接合構造の組み立て方法について説明する。
【0023】
まず、筒状部材設置工程では、図1(a)の正面断面図、及び図2(a)に示すように、下柱突出部32を筒状部材16下部の開口部40へ挿入して嵌合し、下柱突出部32に筒状部材16を設置する。
【0024】
次に、柱接合工程では、図1(b)の正面断面図、及び図2(b)に示すように、上柱突出部34を筒状部材16上部の開口部42へ挿入して嵌合し、下柱心材20の上面に上柱心材26の下面を載置し、下柱12と上柱14とを接合する。
【0025】
次に、筒状部材保護工程では、図1(c)及び図2(c)に示すように、筒状部材16の外側の角部と、ブロック体18(第3燃え止まり層38)の内側の角部とを合わせるようにして4つのブロック体18を配置し、筒状部材16の外周を取り囲む。これにより、柱接合構造10が構築される。
【0026】
次に、本発明の第1の実施形態に係る柱接合構造の作用と効果について説明する。
【0027】
本発明の第1の実施形態の柱接合構造10では、図1(c)に示すように、火災が発生したときに火炎が第1燃え代層24、第2燃え代層30、及び第3燃え代層36に着火し、第1燃え代層24、第2燃え代層30、及び第3燃え代層36が燃焼する。そして、燃焼した第1燃え代層24、第2燃え代層30、及び第3燃え代層36は炭化する。よって、下柱12及び上柱14の外部から下柱心材20、筒状部材16、及び上柱心材26への熱伝達と酸素供給とを、炭化した1燃え代層24、第2燃え代層30、及び第3燃え代層36が遮断し、第1燃え止まり層22、第2燃え止まり層28、及び第3燃え止まり層38が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における下柱心材20、筒状部材16、及び上柱心材26の温度上昇を抑制することができる。
【0028】
また、第1燃え止まり層22の上面と第3燃え止まり層38の下面、及び第2燃え止まり層28の下面と第3燃え止まり層38の上面とは接触しているので、これらの面同士の間から熱が進入して、下柱心材20及び上柱心材26の温度が上昇するのを抑制することができる。
【0029】
よって、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、下柱心材20及び上柱心材26を着火温度未満に抑え、下柱心材20及び上柱心材26を燃焼させずに燃え止まらせて、構造体として機能させることができる。また、筒状部材16の温度上昇を抑制することにより、下柱12と上柱14との接合部の耐火性を確保することができる。
【0030】
また、柱接合構造10では、上柱心材26の下面から下柱心材20の上面へ軸力が伝達されるように、筒状部材16により下柱心材20と上柱心材26とをつなぐことによって、上柱14の鉛直荷重を下柱12へ確実に伝達することができる。
【0031】
また、柱接合構造10では、筒状部材16により下柱心材20と上柱心材26とをつないで下柱12と上柱14とを接合した状態から、下柱心材20に対して上柱心材26が横方向へずれるのを防止することができる。また、下柱心材20及び上柱心材26に断面欠損を生じさせずに、下柱12と上柱14とを接合できる。すなわち、下柱12と上柱14との接合強度を向上させることができる。
【0032】
また、柱接合工程では、1階分の長さの柱(下柱12と上柱14)同士を接合するので、柱を短い長さの構造部材とすることができる。これにより、柱の搬送、揚重、移動、配置等の作業が行い易くなる。
【0033】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
【0034】
なお、本発明の第1の実施形態では、筒状部材16を角筒形状の部材とした例を示したが、筒状部材は、上柱心材26の下面から下柱心材20の上面へ軸力が伝達されるように、下柱心材20と上柱心材26とをつなぐことができれば、どのような形状でもよいし、どのような材料によって形成してもよい。例えば、筒状部材の平断面形状を円形、多角形にしてもよい。また、例えば、第1燃え止まり層22、第2燃え止まり層28、及び第3燃え止まり層38と同質の材料によって筒状部材を形成してもよい。この場合には、ブロック体18に第3燃え止まり層38を設けなくてもよい。
【0035】
また、筒状の上部材(以下、「上筒部材」とする)と、筒状の下部材(以下、「下筒部材」とする)とを上下に接合して筒状部材16を構成するようにしてもよい。このような構成にすれば、工場等で、上筒部材を上柱14に取り付け、下筒部材を下柱12に取り付けておいて、現場で上筒部材と下筒部材とを接合することにより、下柱12と上柱14とを接合することができる。
【0036】
また、本発明の第1の実施形態では、筒状部材設置工程において、下柱突出部32を筒状部材16下部の開口部40へ挿入して嵌合し、柱接合工程において、上柱突出部34を筒状部材16上部の開口部42へ挿入して嵌合する例を示したが、接着剤を用いて、下柱突出部32を筒状部材16下部の開口部40へ定着し、上柱突出部34を筒状部材16上部の開口部42へ定着してもよい。
【0037】
また、本発明の第1の実施形態では、4つのブロック体18により筒状部材16の外周を取り囲む例を示したが、筒状部材16の外周を取り囲むブロック体の数は、いくつでもよい。
【0038】
次に、本発明の第2の実施形態に係る柱接合構造について説明する。
【0039】
第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。第2の実施形態の柱接合構造44は、図3(b)の正面断面図に示すように、下柱46、上柱48、及び接合部材としての鋼製の挿入部材50を有している。
【0040】
図3(a)の正面断面図に示すように、下柱46は、下柱心材20、第1燃え止まり層22、及び第1燃え代層24を備え、上柱48は、上柱心材26、第2燃え止まり層28、及び第2燃え代層30を備えている。また、上柱48は、下柱46の上に載置されている。
【0041】
図3(a)のA−A断面図である図4に示すように、下柱心材20の上面には、平面視にて十字状の溝52が第1挿入部として形成されている。また、図3(a)のB−B断面図である図5に示すように、上柱心材26の下面には、平面視にて十字状の溝54が第2挿入部として形成されている。
【0042】
図6(a)の斜視図に示すように、挿入部材50は、平面視にて略十字状に配置された鋼板により形成されている。そして、図3(a)に示すように、挿入部材50の下部が溝52に挿入され、挿入部材50の上部が溝54に挿入されて、図3(b)に示すように、下柱46の上に上柱48を載置した状態において、上柱心材26の下面から下柱心材20の上面へ軸力が伝達されるとともに、下柱心材20と上柱心材26との軸回りの相対回転を抑えるように、下柱心材20と上柱心材26とがつながれている。
【0043】
この状態で、図3(b)に示すように、第1燃え代層24の上面と第2燃え代層30の下面とは、略一致して接触し、第1燃え止まり層22の上面と第2燃え止まり層28の下面とは、略一致して接触する。
【0044】
なお、第1燃え代層24の上面と第2燃え代層30の下面、及び第1燃え止まり層22の上面と第2燃え止まり層28の下面とは、対向していればよい。すなわち、これらの面同士は、接触していてもよいし、隙間を有していてもよい。隙間を有する場合には、この隙間からの熱の進入を防ぐために、第1燃え止まり層22及び第2燃え止まり層28と同質の材料でこの隙間を塞ぐのが好ましいが、第1燃え止まり層22及び第2燃え止まり層28から熱は吸収されるので、熱の吸収が期待できないような材料でこの隙間を充填してもよい。
【0045】
次に、本発明の第2の実施形態に係る柱接合構造の組み立て方法について説明する。
【0046】
まず、挿入部材設置工程では、図3(a)に示すように、挿入部材50の下部を下柱心材20の上面に形成された溝52へ挿入して嵌合し、下柱心材20の上面に挿入部材50を設置する。
【0047】
次に、柱接合工程では、図3(b)に示すように、挿入部材50の上部を上柱心材26の下面に形成された溝54へ挿入して嵌合し、下柱46(下柱心材20)の上面に上柱48(上柱心材26)の下面を載置し、下柱46と上柱48とを接合する。これにより、柱接合構造44が構築される。
【0048】
溝52は下柱心材20内に形成され、溝54は上柱心材26内に形成されているので、図3(b)の状態で、挿入部材50は、第1燃え止まり層22及び第2燃え止まり層28に外周を取り囲まれている。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態に係る柱接合構造の作用と効果について説明する。
【0050】
本発明の第2の実施形態の柱接合構造44では、火災が発生したときに、下柱46及び上柱48の外部から、下柱心材20、挿入部材50、及び上柱心材26への熱伝達と酸素供給とを、炭化した燃え代層24及び第2燃え代層30が遮断し、第1燃え止まり層22及び第2燃え止まり層28が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における下柱心材20、挿入部材50、及び上柱心材26の温度上昇を抑制することができる。
【0051】
また、第1燃え止まり層22の上面と第2燃え止まり層28の下面とは接触しているので、これらの面同士の間から熱が進入して、下柱心材20及び上柱心材26の温度が上昇するのを抑制することができる。
【0052】
よって、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、下柱心材20及び上柱心材26を着火温度未満に抑え、下柱心材20及び上柱心材26を燃焼させずに燃え止まらせて、構造体として機能させることができる。
【0053】
また、挿入部材50の温度上昇を抑制することにより、下柱46と上柱48との接合部の耐火性を確保することができる。すなわち、柱接合構造44では、下柱心材20と上柱心材26とをつないで下柱46と上柱48とを接合した状態で、挿入部材50は、第1燃え代層24によって外周を取り囲まれた第1燃え止まり層22と、第2燃え代層30によって外周を取り囲まれた第2燃え止まり層28とによって外周を取り囲まれるので、下柱46と上柱48との接合部の耐火性を確保することができる。
【0054】
また、柱接合構造44では、上柱心材26の下面から下柱心材20の上面へ軸力が伝達されるように、挿入部材50により下柱心材20と上柱心材26とをつなぐことによって、上柱48の鉛直荷重を下柱46へ確実に伝達することができる。
【0055】
また、柱接合構造44では、挿入部材50により下柱心材20と上柱心材26とをつないで下柱46と上柱48とを接合した状態から、下柱心材20に対して上柱心材26が横方向へずれるのを防止することができる。
【0056】
また、柱接合工程では、1階分の長さの柱(下柱46と上柱48)同士を接合するので、柱を短い長さの構造部材とすることができる。これにより、柱の搬送、揚重、移動、配置等の作業が行い易くなる。
【0057】
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
【0058】
なお、本発明の第2の実施形態では、挿入部材50を、平面視にて略十字状に配置された鋼板とした例を示したが、挿入部材は、上柱心材26の下面から下柱心材20の上面へ軸力が伝達されるように、下柱心材20と上柱心材26とをつなぐことができれば、どのような形状でもよいし、どのような材料によって形成してもよい。
【0059】
例えば、図6(b)〜(d)の斜視図に示すような形状にしてもよい。図6(b)には、略平行に配置した対向する平板により構成された挿入部材56が示され、図6(c)には、正方形の四隅に位置する4つの棒状部材により構成された挿入部材58が示され、図6(d)には、略正方形の平断面を有する筒状部材により構成された挿入部材60が示されている。挿入部材50、56、58、60の上下方向の長さを長くすれば、下柱46と上柱48との間において、挿入部材50、56、58、60を介して曲げ荷重を伝達することができる。
【0060】
また、本発明の第2の実施形態では、挿入部材設置工程において、挿入部材50の下部を下柱心材20の上面に形成された溝52へ挿入して嵌合し、柱接合工程において、挿入部材50の上部を上柱心材26の下面に形成された溝54へ挿入して嵌合する例を示したが、接着剤を用いて、挿入部材50の下部を溝52へ定着し、挿入部材50の上部を溝54へ定着してもよい。
【0061】
以上、本発明の第1及び第2実施形態について説明した。
【0062】
なお、本発明の第1及び第2実施形態で示した、下柱心材20、第1燃え代層24、第2燃え代層30、及び第3燃え代層36は、木材によって形成されていればよい。例えば、下柱心材20、第1燃え代層24、第2燃え代層30、及び第3燃え代層36は、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築に用いられる柱材(以下、「一般木材」とする)によって形成してもよいし、これらの一般木材を角柱状の単材に加工し、この単材を複数集成し単材同士を接着剤により接着して一体化することによって形成してもよい。
【0063】
また、第1燃え止まり層22、第2燃え止まり層28、及び第3燃え止まり層38は、熱の吸収が可能な層であればよい。例えば、第1燃え止まり層22、第2燃え止まり層28、及び第3燃え止まり層38は、一般木材よりも熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料によって形成してもよいし、これらの材料と一般木材とを組み合わせて形成してもよい。
【0064】
一般木材よりも熱容量が大きな材料としては、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント等の無機質材料、各種の金属材料などが挙げられる。一般木材よりも断熱性が高い材料としては、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウールなどが挙げられる。一般木材よりも熱慣性が高い材料としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等の木材が挙げられる。
【0065】
また、本発明の第1及び第2実施形態では、下柱心材20の上面に直接上柱心材26を載置した例を示したが、下柱心材20の上面と上柱心材26の下面との間に鉄板を設けてもよい。図6(e)〜(h)の斜視図には、図6(a)〜(d)の挿入部材50、56、58、60と、下柱心材20の上面と上柱心材26の下面との間に設ける鉄板62と、が一体化された挿入部材64、66、68、70が示されている。
【0066】
また、下柱心材20の上面と上柱心材26の下面との間に10〜20mm程度の隙間を有するようにして、下柱12、46の上に上柱14、48を配置し、この隙間に充填材を充填するようにしてもよい。
【0067】
下柱心材20の上面と上柱心材26の下面との間に、鉄板を設けたり、充填材を充填したりすることによって、下柱12、46の上面に均一に上柱14、48の鉛直荷重を伝達することができる。充填材は、隙間への充填が可能な材料であり、荷重を確実に伝達できるものであればよい。充填材としては、モルタル、繊維補強セメントなどが挙げられる。
【0068】
また、下柱心材20の上面と上柱心材26の下面との間に鉄板を設けて、下柱心材20の上面と鉄板の下面との間、及び上柱心材26の下面と鉄板の上面との間に充填材を充填するようにしてもよい。図7の正面断面図に示す柱接合構造76には、下柱心材20と上柱心材26とを図6(e)の挿入部材64によってつないだ例が示され、図8の正面断面図に示す柱接合構造78には、下柱心材20と上柱心材26とを図6(f)の挿入部材66によってつなぎ、下柱心材20の上面と鉄板62の下面との間、及び上柱心材26の下面と鉄板62の上面との間に充填材Mを充填した例が示されている。
【0069】
また、本発明の第1の実施形態では接合部材を筒状部材16とし、本発明の第2の実施形態では接合部材を挿入部材50とした例を示したが、接合部材の上部及び下部の一方を筒状部材とし、他方を挿入部材としてもよい。
【0070】
例えば、図9の斜視図に示す接合部材72のように、上部を挿入部材50の上部と同じ形状(図6(a)を参照のこと)とし、下部を筒状部材16の下部と同じ形状(図2(a)を参照のこと)としてもよい。この場合には、図10(a)〜(c)の組み立て手順により柱接合構造74が構築される。
【0071】
また、第1及び第2の実施形態では、下柱心材20、上柱心材26、第1燃え止まり層22、第2燃え止まり層28、第1燃え代層24、及び第2燃え代層30を備えている柱(下柱12、46、上柱14、48)を用いた例を示したが、第1及び第2の実施形態は、一般的な木造の梁に対しても適用可能である。
【0072】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1及び第2の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
10、44、74、76、78 柱接合構造
12、46 下柱
14、48 上柱
16 筒状部材(接合部材)
18 ブロック体
20 下柱心材
22 第1燃え止まり層
24 第1燃え代層
26 上柱心材
28 第2燃え止まり層
30 第2燃え代層
36 第3燃え代層
38 第3燃え止まり層
50、56、58、60、64、66、68、70 挿入部材(接合部材)
52 溝(第1挿入部)
54 溝(第2挿入部)
72 接合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を支持する木製の下柱心材と、前記下柱心材の外周を取り囲む第1燃え止まり層と、前記第1燃え止まり層の外周を取り囲む木製の第1燃え代層と、を備えた下柱と、
荷重を支持する木製の上柱心材と、前記上柱心材の外周を取り囲む第2燃え止まり層と、前記第2燃え止まり層の外周を取り囲む木製の第2燃え代層と、を備え、前記下柱の上に載置された上柱と、
前記上柱心材の下面から前記下柱心材の上面へ軸力が伝達されるように、前記下柱心材と前記上柱心材とをつなぐ接合部材と、
を有する柱接合構造。
【請求項2】
前記接合部材は、前記第1燃え止まり層の上面から上方へ突出する前記下柱心材が下部へ挿入され、前記第2燃え止まり層の下面から下方へ突出する前記上柱心材が上部へ挿入されて、前記下柱心材と前記上柱心材とをつなぐ筒状部材である請求項1に記載の柱接合構造。
【請求項3】
木製の第3燃え代層と、前記第3燃え代層の内側に設けられた第3燃え止まり層と、を備え、前記筒状部材の外周を取り囲むように配置されるブロック体を有する請求項2に記載の柱接合構造。
【請求項4】
前記接合部材は、前記下柱心材の上面に形成された第1挿入部に下部が挿入され、前記上柱心材の下面に形成された第2挿入部に上部が挿入されて、前記下柱心材と前記上柱心材との軸回りの相対回転を抑えるように前記下柱心材と前記上柱心材とをつなぐ挿入部材である請求項1に記載の柱接合構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−246609(P2012−246609A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116694(P2011−116694)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】