説明

柱梁接合構造、及び柱梁接合方法

【課題】耐火性を有する木造の柱と梁との接合部に耐火性を付与することが可能な柱梁接合構造、及びこの柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法を提供する。
【解決手段】柱心材20と梁心材32とをつないで柱12に梁14を接合する連結板18を、第2燃え止まり層34によって取り囲むことにより、火災時及び火災終了後における連結板18の温度上昇を抑制することができる。これによって、柱12と梁14との接合部に耐火性を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性を有する木造の柱と梁との柱梁接合構造、及び柱梁接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木造の柱や梁として、燃え止まり機能を備えた耐火木造構造部材が提案されている。例えば、特許文献1には、木材からなる荷重支持層と、荷重支持層の外側に設けられる燃え止まり層と、燃え止まり層の外側に設けられる燃え代層とを有する複合木質構造材が開示されている。このような柱や梁により構築される木造建物においては、柱と梁との接合部にも、耐火木造構造部材と同等の耐火性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−2189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は係る事実を考慮し、耐火性を有する木造の柱と梁との接合部に耐火性を付与することが可能な柱梁接合構造、及びこの柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、荷重を支持する木製の柱心材と、前記柱心材の外周を取り囲む第1燃え止まり層と、前記第1燃え止まり層の外周を取り囲む木製の第1燃え代層とを備えた柱と、前記柱心材に固定され前記第1燃え止まり層から外側へ張り出す連結板と、荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の側面と下面とを取り囲む第2燃え止まり層と、前記第2燃え止まり層の側面と下面とを取り囲む木製の第2燃え代層と、前記梁心材の端面から前記梁心材の梁長方向へ形成され前記連結板が挿入される第1縦溝とを備えた梁と、前記第1縦溝に前記連結板を挿入し前記第1燃え止まり層の側面と前記第2燃え止まり層の端面とを対向させて前記第2燃え止まり層に前記連結板の側方と下方とを取り囲ませた状態で前記梁心材に前記連結板を連結する第1連結部材と、を有する柱梁接合構造である。
【0006】
請求項1に記載の発明では、柱心材と梁心材とをつないで柱と梁とを接合する連結板が、第2燃え止まり層によって取り囲まれているので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における連結板の温度上昇を抑制することができる。これにより、柱と梁との接合部に耐火性を付与することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記梁心材の上面に設けられ、前記第2燃え止まり層とで前記連結板の周囲を囲むコンクリート製の床版を有する柱梁接合構造である。
【0008】
請求項2に記載の発明では、柱心材と梁心材とをつないで柱と梁とを接合する連結板が、第2燃え止まり層と床版とによって取り囲まれているので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における連結板の温度上昇を抑制することができる。これにより、柱と梁との接合部に耐火性を付与することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、荷重を支持する木製の繋ぎ梁心材と、前記繋ぎ梁心材の側面と下面とを取り囲む第3燃え止まり層と、前記第3燃え止まり層の側面と下面とを取り囲む木製の第3燃え代層と、前記繋ぎ梁心材の端面から前記繋ぎ梁心材の梁長方向へ形成され前記連結板が挿入される第2縦溝とを備え前記梁に接合される繋ぎ梁と、前記第2縦溝に前記連結板を挿入し前記第2燃え止まり層の端面と前記第3燃え止まり層の端面とを対向させ前記第3燃え止まり層に前記連結板の側方と下方とを取り囲ませた状態で前記繋ぎ梁心材に前記連結板を連結する第2連結部材と、を有する柱梁接合構造である。
【0010】
請求項3に記載の発明では、柱に梁を接合した後に、繋ぎ梁を上下移動させて梁に接合することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法において、前記第1縦溝に前記連結板が挿入されるように前記梁を移動して、前記柱の接合面と前記梁の端面とが対向するように配置する梁配置工程と、前記第1連結部材により前記連結板を前記梁心材に連結する梁接合工程と、前記第2縦溝に前記連結板が挿入されるように前記繋ぎ梁を上下方向へ移動して、前記梁の端面と前記繋ぎ梁の端面とが対向するように配置する繋ぎ梁配置工程と、前記第2連結部材により前記連結板を前記繋ぎ梁心材に連結する繋ぎ梁接合工程と、を有する柱梁接合方法である。
【0012】
請求項4に記載の発明では、梁配置工程と梁接合工程とによって柱に梁を接合した後に、繋ぎ梁配置工程と繋ぎ梁接合工程とによって繋ぎ梁を上下移動させて梁に接合することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記構成としたので、耐火性を有する木造の柱と梁との接合部に耐火性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る柱梁接合構造を示す平断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る柱梁接合方法を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る梁の変形例を示す横断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る梁の変形例を示す横断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る連結板の変形例を示す平断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る連結板の固定方法の変形例を示す側断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る柱梁架構を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る柱梁接合構造について説明する。
【0016】
図1の平断面図に示すように、柱梁接合構造10は、柱12、梁14、繋ぎ梁16、及び連結板18を有している。梁14の梁長は、柱12に梁14を接合する際において梁14のハンドリングが容易となる程度に短くなっており、繋ぎ梁16の梁長は、梁14の梁長よりも長くなっている。
【0017】
柱12は、荷重を支持する木製の柱心材20と、柱心材20の外周を取り囲む第1燃え止まり層22と、第1燃え止まり層22の外周を取り囲む木製の第1燃え代層24とを備えている。
【0018】
図1、及び図1のA−A断面図である図2に示すように、連結板18は、鋼板により形成されている。また、連結板18は、連結板18の端部に設けられたフランジ部26と柱心材20とを貫通するアンカーボルト28の端部に、ナット30を捩じ込み締め付けることによって柱心材20に固定されている。また、連結板18は、第1燃え止まり層22から外側へ(繋ぎ梁16側へ)張り出している。
【0019】
図1のB−B断面図である図3に示すように、梁14は、荷重を支持する木製の梁心材32と、梁心材32の側面と下面とを取り囲む第2燃え止まり層34と、第2燃え止まり層34の側面と下面とを取り囲む木製の第2燃え代層36と、梁心材32の梁長方向に沿って梁心材32の一方(柱12側)の端面から他方(繋ぎ梁16側)の端面へ形成された第1縦溝38とを備えている。第1縦溝38は、梁心材32の上面から下方へ形成されており、第1縦溝38には、連結板18が挿入されている。
【0020】
繋ぎ梁16は、図1に示すように、荷重を支持する木製の繋ぎ梁心材40と、繋ぎ梁心材40の側面と下面とを取り囲む第3燃え止まり層42と、第3燃え止まり層42の側面と下面とを取り囲む木製の第3燃え代層44と、繋ぎ梁心材40の端部に形成された第2縦溝46とを備えている。
【0021】
第2縦溝46は、繋ぎ梁心材40の梁長方向に沿って繋ぎ梁心材40の端面から形成されており、第2縦溝46には、連結板18が挿入される。第2縦溝46は、繋ぎ梁心材40の上面から下方へ形成されており、第2縦溝40には、連結板18が挿入されている。
【0022】
梁14の梁心材32、第2燃え止まり層34、第2燃え代層36と、繋ぎ梁16の繋ぎ梁心材40、第3燃え止まり層42、第3燃え代層44との断面配置は略同じであり、梁14に繋ぎ梁16が接合された図1、2の状態で、梁心材32と繋ぎ梁心材40、第2燃え止まり層34と第3燃え止まり層42、第2燃え代層36と第3燃え代層44の端面同士は、それぞれ対向し略一致している。
【0023】
図1、2に示すように、梁14は、第1縦溝38に連結板18が挿入された状態で、梁心材32に形成された連結孔50と、連結板18に形成された貫通孔52とに、第1連結部材としてのドリフトピン48を貫通させて、梁心材32に連結板18を連結することにより、柱12に接合されている。
【0024】
ドリフトピン48は、第2燃え代層36と第2燃え止まり層34とに形成され連結孔50と連通する挿入孔56から挿入する。そして、ドリフトピン48を連結孔50と貫通孔52とに貫通させた後に、閉塞材や閉塞部材によって挿入孔56を塞ぐ。第2燃え代層36に形成されている挿入孔56は、第2燃え代層36を形成する材料によって塞ぎ、第2燃え止まり層34に形成されている挿入孔56は、第2燃え止まり層34を形成する材料によって塞ぐのが好ましい。
【0025】
図2に示すように、梁14の端部は、柱12の側面に形成された切欠部54に挿入されており、これによって、柱12に梁14を接合した状態で、第1燃え止まり層22の側面と第2燃え止まり層34の端面とは接触している。
【0026】
繋ぎ梁16は、第2縦溝46に連結板18が挿入された状態で、繋ぎ梁心材40に形成された連結孔60と、連結板18に形成された貫通孔62とに、第2連結部材としてのドリフトピン58を貫通させて、繋ぎ梁心材40に連結板18を連結することにより、柱12と梁14とに接合されている。
【0027】
ドリフトピン58は、第3燃え代層44と第3燃え止まり層42とに形成され連結孔60と連通する挿入孔64から挿入する。そして、ドリフトピン58を連結孔60と貫通孔62とに貫通させた後に、閉塞材や閉塞部材によって挿入孔64を塞ぐ。第3燃え代層44に形成されている挿入孔64は、第3燃え代層44を形成する材料によって塞ぎ、第3燃え止まり層42に形成されている挿入孔64は、第3燃え止まり層42を形成する材料によって塞ぐのが好ましい。
【0028】
柱12と梁14とに繋ぎ梁16を接合した状態で、第2燃え止まり層34の端面と第3燃え止まり層42の端面とは10〜20mm程度の隙間を有するようにして対向している。また、この隙間には充填材Mが充填されている。
【0029】
図3に示すように、梁14の上面には、鉄筋コンクリート製の床版66が設けられている。すなわち、梁心材32、第2燃え止まり層34、及び第2燃え代層36の上面に、床版66が設けられている。これにより、連結板18の側方と下方とは、第2燃え止まり層34及び第3燃え止まり層42によって取り囲まれ、連結板18の上方は床版66によって取り囲まれている。すなわち、連結板18は、第2燃え止まり層34と床版66、及び第3燃え止まり層42と床版66とによって外周を取り囲まれている。
【0030】
なお、柱心材20、梁心材32、繋ぎ梁心材40、第1燃え代層24、第2燃え代層36、及び第3燃え代層44は、木材によって形成されていればよい。例えば、柱心材20、梁心材32、繋ぎ梁心材40、第1燃え代層24、第2燃え代層36、及び第3燃え代層44は、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築に用いられる柱材や梁材(以下、「一般木材」とする)によって形成してもよいし、これらの一般木材を角柱状の単材に加工し、この単材を複数集成し単材同士を接着剤により接着して一体化することによって形成してもよい。
【0031】
また、第1燃え止まり層22、第2燃え止まり層34、及び第3燃え止まり層42は、熱の吸収が可能な層であればよい。例えば、第1燃え止まり層22、第2燃え止まり層34、及び第3燃え止まり層42は、一般木材よりも熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料によって形成してもよいし、これらの材料と一般木材とを組み合わせて形成してもよい。
【0032】
一般木材よりも熱容量が大きな材料としては、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント等の無機質材料、各種の金属材料などが挙げられる。一般木材よりも断熱性が高い材料としては、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウールなどが挙げられる。一般木材よりも熱慣性が高い材料としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等の木材が挙げられる。
【0033】
また、充填材Mは、隙間への充填が可能であり、且つ梁14の端面と繋ぎ梁16の端面との間で力を伝達できる材料であればよい。充填材Mは、一般木材よりも熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料などの熱の吸収が可能な材料によって形成されていることが好ましいが、第2燃え止まり層34の端面と第3燃え止まり層42の端面から熱は吸収されるので、熱の吸収が期待できないような材料を充填材Mとして用いてもよい。充填材Mとしては、モルタル、繊維補強セメントなどが挙げられる。
【0034】
また、第2燃え止まり層34に形成されている挿入孔56は、第2燃え止まり層34を形成する材料によって塞ぎ、第3燃え止まり層42に形成されている挿入孔64は、第3燃え止まり層42を形成する材料によって塞ぐのが好ましいが、熱の吸収が可能な閉塞材又は閉塞部材で塞ぐのがより好ましい。また、第2燃え止まり層34及び第3燃え止まり層42の挿入孔56、64が形成されていない部分が熱を吸収するので、熱の吸収が期待できないような閉塞材又は閉塞部材で挿入孔56、64を塞いでもよい。
【0035】
次に、本発明の実施形態に係る柱梁接合方法について説明する。
【0036】
ここでは、図4(a)〜(e)により、柱梁接合方法を用いて建物を構築する手順の一例について説明する。建物は、連結板固定工程、梁配置工程、梁接合工程、柱搬送工程、柱設置工程、繋ぎ梁配置工程、及び繋ぎ梁接合工程によって構築される。また、柱梁接合方法は、梁配置工程、梁接合工程、繋ぎ梁配置工程、及び繋ぎ梁接合工程によって構成されている。
【0037】
まず、連結板固定工程では、工場や現場仮設ヤード等にて、アンカーボルト28及びナット30により、連結板18のフランジ部26を柱心材20に固定して、柱12に連結板18を固定する。図4(e)に示すように、柱12は、構築する建物の1階の柱の上半分と、2階の柱と、3階の柱の下半分とが1つにつながれている部材である。
【0038】
次に、梁配置工程では、図4(a)に示すように、工場の床や現場仮設ヤードの地面等の基盤68上に柱12を立てる。そして、柱12に固定された連結板18が、梁14の第1縦溝38に挿入されるように梁14を移動して、柱12の接合面と梁14の端面とが対向するように配置する。第1縦溝38は、梁心材32の上面から下方へ形成されているので、梁14を横移動させて第1縦溝38に連結板18を挿入してもよいし、連結板18の下方に配置した梁14を上方へ移動させて第1縦溝38に連結板18を挿入した後に、この梁14を横移動させてもよい。
【0039】
次に、梁接合工程では、ドリフトピン48により、柱12に固定された連結板18を梁14の梁心材32に連結して、建物の2、3階を構成する梁14を柱12に接合する。挿入孔56は、連結板18を梁14の梁心材32に連結した後に、閉塞材や閉塞部材によって塞ぐ。
【0040】
次に、柱搬送工程では、梁14が固定された柱12を、建物を構築する施工ヤードへ搬送する。
【0041】
次に、柱設置工程では、図4(b)に示すように、施工ヤードへ搬送された柱12を、施工ヤードの基礎70上に設置された柱72上に載置し、柱72に柱12を接合する。
【0042】
柱72は、柱12と同様の構成になっている。すなわち、柱72は、荷重を支持する木製の柱心材と、柱心材の外周を取り囲む第1燃え止まり層と、第1燃え止まり層の外周を取り囲む木製の第1燃え代層とを備えている。
【0043】
次に、繋ぎ梁配置工程では、図4(c)に示すように、繋ぎ梁16の第2縦溝46に、柱12に固定された連結板18が挿入されるように繋ぎ梁16を下方から上方へ移動して、梁14の端面と繋ぎ梁16の端面とが10〜20mm程度の隙間を有して対向するように配置する。
【0044】
第2縦溝46は、繋ぎ梁16の繋ぎ梁心材40の上面から下方へ形成されているので、繋ぎ梁16を下方から上方へ移動させることによって、梁14の端面と繋ぎ梁16の端面とが対向するように繋ぎ梁16を配置することができる。
【0045】
次に、繋ぎ梁接合工程では、図4(d)に示すように、ドリフトピン58により、柱12に固定された連結板18を繋ぎ梁16の繋ぎ梁心材40に連結して、建物の2階を構成する繋ぎ梁16の両端部を左右の柱12にそれぞれ接合する。連結板18を繋ぎ梁16の繋ぎ梁心材40に連結した後に、挿入孔64は、閉塞材又は閉塞部材によって塞ぎ、梁14の端面と繋ぎ梁16の端面との間の隙間は、充填材Mによって塞ぐ。
【0046】
次に、図4(e)に示すように、建物の2階を構成する全ての繋ぎ梁16を柱12に接合した後に、コンクリートを打設して床版66を形成する。次に、図4(c)〜(e)と同様の工程により、建物の3階を構築する。
【0047】
次に、図4(e)の柱12の上に、次の階を構成する柱12を載置して接合し、後は、必要とする階数に達するまで、これまで説明した工程を繰り返して建物を構築する。
【0048】
次に、本発明の実施形態に係る柱梁接合構造及び柱梁接合方法の作用と効果について説明する。
【0049】
本発明の実施形態の柱梁接合構造10では、図2に示すように、柱心材20に固定された連結板18をドリフトピン48により梁心材32に連結することによって、梁14に作用する荷重を、梁心材32、ドリフトピン48、連結板18の順に伝えて柱心材20に伝達することができ、また、柱12に作用する荷重を、柱心材20、連結板18、ドリフトピン48の順に伝えて梁心材32に伝達することができるので、柱12に梁14を接合することができる。
【0050】
また、柱心材20に固定された連結板18をドリフトピン58により繋ぎ梁心材40に連結することによって、繋ぎ梁16に作用する荷重を、繋ぎ梁心材40、ドリフトピン58、連結板18の順に伝えて柱心材20に伝達することができ、また、柱12に作用する荷重を、柱心材20、連結板18、ドリフトピン58の順に伝えて繋ぎ梁心材40に伝達することができるので、柱12に繋ぎ梁16を接合することができる。
【0051】
また、ドリフトピン48、58によって梁心材32と繋ぎ梁心材40とに連結板18を連結し、梁14の端面と繋ぎ梁16の端面との間の隙間に充填した充填材Mを介して梁心材32の端面と繋ぎ梁心材40の端面とを接続することによって、梁14と繋ぎ梁16とを接合することができる。
【0052】
また、柱12においては、図1に示すように、火災が発生したときに火炎が第1燃え代層24に着火し、第1燃え代層24が燃焼する。そして、燃焼した第1燃え代層24は炭化する。よって、柱12の外部から柱心材20への熱伝達と酸素供給とを炭化した第1燃え代層24が遮断し、第1燃え止まり層22が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における柱心材20の温度上昇を抑制することができる。
【0053】
また、梁14においては、図3に示すように、火災が発生したときに火炎が第2燃え代層36に着火し、第2燃え代層36が燃焼する。そして、燃焼した第2燃え代層36は炭化する。よって、梁14の外部から梁心材32への熱伝達と酸素供給とを炭化した第2燃え代層36が遮断し、第2燃え止まり層34が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における梁心材32の温度上昇を抑制することができる。
【0054】
また、繋ぎ梁16においては、図1、2に示すように、火災が発生したときに火炎が第3燃え代層44に着火し、第3燃え代層44が燃焼する。そして、燃焼した第3燃え代層44は炭化する。よって、繋ぎ梁16の外部から繋ぎ梁心材40への熱伝達と酸素供給とを炭化した第3燃え代層44が遮断し、第3燃え止まり層42が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における繋ぎ梁心材40の温度上昇を抑制することができる。
【0055】
また、第1燃え止まり層22の側面と第2燃え止まり層34の端面とは接触しており、第2燃え止まり層34の端面と第3燃え止まり層42の端面とは対向し、これらの間の隙間には充填材Mが充填されているので、柱12と梁14、及び梁14と繋ぎ梁16の接合部から熱が進入して、柱心材20、梁心材32及び繋ぎ梁心材40の温度が上昇するのを抑制することができる。
【0056】
よって、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、柱心材20、梁心材32及び繋ぎ梁心材40を着火温度未満に抑え、柱心材20、梁心材32及び繋ぎ梁心材40を燃焼させずに燃え止まらせて、構造体として機能させることができる。
【0057】
また、図1〜3に示すように、連結板18は、周囲を第2燃え止まり層34と床版66、及び第3燃え止まり層42と床版66とによって取り囲まれているので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における連結板18の温度上昇を抑制することができる。これにより、柱12と梁14、柱12と繋ぎ梁16、及び梁14と繋ぎ梁16の接合部に耐火性を付与することができる。
【0058】
また、実施形態の柱梁接合方法では、柱12に梁14を接合した後に、繋ぎ梁16を上下移動させて梁14に接合することができる。例えば、梁14を横移動させて柱12に接合する柱梁接合構造の場合、柱梁接合構造10のように、梁長の短い梁14と、梁長の長い繋ぎ梁16とを接合する構成しておけば、梁長が短く重量が軽いので取り扱いが容易な梁14を横移動させて柱12に接合し、梁長が長く重量が重いので取り扱いが面倒な繋ぎ梁16を上下移動させることによって梁14に接合することができる。
【0059】
また、柱12を複数階分の部材(構築する建物の1階の柱の上半分と、2階の柱と、3階の柱の下半分とが1つにつながれている部材)にすることにより、柱同士の接合作業の回数が減るので、施工効率を向上させることができる。
【0060】
また、梁14の端面と繋ぎ梁16の端面との間に10〜20mm程度の若干の隙間を有するようにして繋ぎ梁16を配置することにより、柱12、梁14及び繋ぎ梁16の製作誤差や、柱12及び梁14の施工(設置)誤差を吸収することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0062】
なお、本発明の実施形態では、第2燃え止まり層34が、梁心材32の側面と下面とを取り囲み、第2燃え代層36が、第2燃え止まり層34の側面と下面とを取り囲む例を示したが、図5の横断面図に示すように、第2燃え止まり層34が、梁心材32の外周を取り囲み、第2燃え代層36が、第2燃え止まり層34の外周を取り囲むようにしてもよい。この場合には、第1縦溝38に連結板18を挿入した際に残る、第1縦溝38上部の隙間に充填材Mを充填して塞ぐ。
【0063】
また、本発明の実施形態では、第3燃え止まり層42が、繋ぎ梁心材40の側面と下面とを取り囲み、第3燃え代層44が、第3燃え止まり層42の側面と下面とを取り囲む例を示したが、第3燃え止まり層42が、繋ぎ梁心材40の外周を取り囲み、第3燃え代層44が、第3燃え止まり層42の外周を取り囲むようにしてもよい。
【0064】
また、本発明の実施形態では、梁14の端部を挿入する切欠部54を柱12の側面に形成した例を示したが、この切欠部54は、図2に示すように、柱12に梁14が接合され梁14の上面に床版66が設けられた状態で、床版66の上面と、第2燃え燃え代層36の下面に10〜20mm程度の隙間を有するように形成してもよい(以下、床版66の上面に形成される隙間を「上目地」、第2燃え燃え代層36の下面に形成される隙間を「下目地」とする)。このようにすれば、切欠部54の開口面積が大きくなるので梁14を挿入し易くなる(例えば、下方から斜め上方へ梁14を移動させて切欠部54に挿入することも容易になる)。また、上目地及び下目地にモルタル等を充填して耐火処理を施すことによって、上目地及び下目地から熱が進入することを防ぐことができる。また、上目地及び下目地に、耐火性を有する可撓性材料を充填することにより、第1燃え代層24が乾燥等により上下方向へ収縮した場合においても、上目地及び下目地が閉塞された状態を維持することができる。
【0065】
また、本発明の実施形態では、柱12を複数階分の部材(構築する建物の1階の柱の上半分と、2階の柱と、3階の柱の下半分とが1つにつながれている部材)とした例を示したが、1つの柱12の高さは、どのような高さにしてもよい。例えば、柱12を、構築する建物の1階の柱の上半分と、2階の柱と、3階の柱と、4階の柱の下半分とが1つにつながれている部材としてもよいし、構築する建物の1階の柱の上半分と、2階の柱の下半分とが1つにつながれている部材としてもよい。また、例えば、図4(e)の柱12の上に、3階の柱の上半分の部材を載置し接合して、3階建ての建物を構築してもよい。
【0066】
また、本発明の実施形態では、第1縦溝38を梁心材32の上面から下方へ形成した例を示したが、第1縦溝38は、第2燃え代層36の下面から上方へ形成してもよい。また、第2縦溝46を繋ぎ梁心材40の上面から下方へ形成した例を示したが、第2縦溝46は、第3燃え代層44の下面から上方へ形成してもよい。図6の横断面図に示すように、第2縦溝46を第3燃え代層44の下面から上方へ形成することにより、繋ぎ梁16を上方から下方へ移動させることによって、梁14の端面と繋ぎ梁16の端面とが対向するように繋ぎ梁16を配置することができる。
【0067】
また、本発明の実施形態では、図4(d)に示すように、隣り合う柱12の間に、1つの繋ぎ梁16と、2つの梁14とを配置した例を示したが、隣り合う柱12の間にいくつの梁を配置するようにしてもよい。例えば、隣り合う柱12の間に1つの梁を配置するようにしてもよい。すなわち、1つの梁14の梁長を、図4(d)で示した1つの繋ぎ梁16と、2つの梁14との梁長を合計した長さ(隣り合う一方の柱12の梁接合面から、他方の柱12の梁接合面までの長さ)にして、この梁14の両端部を、図2で示した方法で(ドリフトピン48により、柱12に固定された連結板18を梁心材32に連結して)柱12にそれぞれ接合すればよい。
【0068】
また、本発明の実施形態では、連結板18により柱12に梁14と繋ぎ梁16とを接合した例を示したが、連結板18を複数配置するようにしてもよい。このようにすれば、連結板18と梁心材32及び繋ぎ梁心材40の広い範囲とで力を伝達することができる。この場合、ドリフトピン48、58を複数の連結板18に貫通させてもよいが、図7の平断面図に示すように、ドリフトピン48、58を連結板18毎に設けて、それぞれのドリフトピン48、58を離して配置するのが好ましい。これにより、連結板18に対して連結板18の面方向に梁心材32や繋ぎ梁心材40が移動したときにドリフトピン48、58が曲がり、ドリフトピン48、58の降伏によるエネルギー吸収効果が得られる。
【0069】
また、本発明の実施形態では、図1、2に示すように、連結板18をアンカーボルト28及びナット30により柱心材20に固定した例を示したが、図8の側断面図に示すように、アンカーボルト28の端部(雄ネジ部の根元付近)に鍔部74を形成し、この鍔部74とナット30とによって連結板18を挟み込むようにしてもよい。図1、2の場合において、梁14に作用した圧縮力は連結板18を介して柱心材20に伝達されるが、図8の場合において、梁14に作用した圧縮力は連結板18を介して柱心材20とアンカーボルト28とに伝達される。すなわち、図8では、柱心材20とアンカーボルト28との両方で圧縮応力が伝達されるので接合効率を上げることができる。なお、静的な長期荷重が梁14に作用する場合には、梁14端面の下方に圧縮力が発生するので、下方に配置されたアンカーボルト28の端部に鍔部74を形成するのが効果的となる。
【0070】
また、本発明の実施形態では、第1燃え止まり層22の側面と第2燃え止まり層34の端面とを接触させ、第2燃え止まり層34の端面と第3燃え止まり層42の端面とを対向させた例を示したが、第1燃え止まり層22の側面と第2燃え止まり層34の端面、及び第2燃え止まり層34の端面と第3燃え止まり層42の端面とは、対向していればよい。すなわち、第1燃え止まり層22の側面と第2燃え止まり層34の端面、及び第2燃え止まり層34の端面と第3燃え止まり層42の端面とは、接触していてもよいし、隙間を有していてもよい。隙間を有する場合には、第1燃え止まり層22の側面と第2燃え止まり層34の端面、及び第2燃え止まり層34の端面と第3燃え止まり層42の端面との間からの熱の進入を防ぐために、充填材Mを充填してこの隙間を塞ぐ。
【0071】
また、本発明の実施形態では、柱12に4つの梁14を接合した例を示したが、柱12に接合する梁14はいくつでもよい。例えば、1つの梁14のみを柱12に接合してもよいし、平面視にて一直線状、L字状又はT字状に配置されるように2つ又は3つの梁14を柱12に接合してもよい。
【0072】
また、本発明の実施形態では、図4(a)に示すように、工場や現場仮設ヤード等にて、柱心材20に連結板18及び梁14を固定した例を示したが、これらを現場の施工ヤードで行うようにしてもよい。すなわち、現場の施工ヤードの基礎70上に設置された柱72上に柱12を載置し接合した後に、連結板固定工程、梁配置工程、梁接合工程を行ってもよい。
【0073】
また、本発明の実施形態では、柱12に梁14を接合する柱梁接合構造10について説明したが、この柱梁接合構造10を梁同士(例えば、大梁と小梁)の接合に適用してもよい。
【0074】
また、図9の側断面図に示すように、本発明の実施形態で示した柱梁接合構造10を用いて柱梁架構76を構成し、この柱梁架構76に架構ブレース78を設けてもよい。架構ブレース78を設けることにより、地震時に柱梁架構76に生じるせん断力を架構ブレース78の軸力(引張力又は圧縮力)として負担し、柱梁架構76のせん断抵抗を高めることができる。架構ブレース78は、鋼製、鉄筋コンクリート製、木製等のさまざまな構成のものを用いることができる。
【0075】
また、これらの架構ブレース78及び架構ブレース78の接合部に耐火性を付与させることにより、架構ブレース78を設けることによって柱梁架構76の耐火性能が低下するのを防ぐことができる。
【0076】
図9には、柱梁架構76に木製の架構ブレース78が設けられている例が示されている。鋼製の連結板80が仕口部下方に位置する柱心材20に固定され、柱梁架構76に配置された鋼製の接合プレート82が、ボルト84によって連結板80と連結板18とに接合されている。そして、ドリフトピン86により、この接合プレート82に架構ブレース78が接合されている。このように、連結板18と、連結板80と、接合プレート82とを別の部材によって構成することにより、架構ブレース78を柱梁架構76に取り付ける直前に、柱梁架構76に接合プレート82を取り付けることができる。これにより、柱梁架構76に架構ブレース78を設ける構成においても、図4の手順により建物を構築することができる。
【0077】
架構ブレース78は、軸力を負担するブレース心材88と、このブレース心材88の外周を取り囲む燃え止まり層90と、燃え止まり層90の外周を取り囲む燃え代層92とを備えている。また、接合プレート82は、燃え止まり層94により取り囲まれており、この燃え止まり層94が木製の燃え代層96により取り囲まれている。ブレース心材88は、柱心材20と、燃え止まり層90、94は、第1燃え止まり層22と、燃え代層92、96は、第1燃え代層24と同様の材料によって形成されている。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0079】
10 柱梁接合構造
12 柱
14 梁
16 繋ぎ梁
18 連結板
20 柱心材
22 第1燃え止まり層
24 第1燃え代層
32 梁心材
34 第2燃え止まり層
36 第2燃え代層
38 第1縦溝
40 繋ぎ梁心材
42 第3燃え止まり層
44 第3燃え代層
46 第2縦溝
48 ドリフトピン(第1連結部材)
58 ドリフトピン(第2連結部材)
66 床版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を支持する木製の柱心材と、前記柱心材の外周を取り囲む第1燃え止まり層と、前記第1燃え止まり層の外周を取り囲む木製の第1燃え代層とを備えた柱と、
前記柱心材に固定され前記第1燃え止まり層から外側へ張り出す連結板と、
荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の側面と下面とを取り囲む第2燃え止まり層と、前記第2燃え止まり層の側面と下面とを取り囲む木製の第2燃え代層と、前記梁心材の端面から前記梁心材の梁長方向へ形成され前記連結板が挿入される第1縦溝とを備えた梁と、
前記第1縦溝に前記連結板を挿入し前記第1燃え止まり層の側面と前記第2燃え止まり層の端面とを対向させて前記第2燃え止まり層に前記連結板の側方と下方とを取り囲ませた状態で前記梁心材に前記連結板を連結する第1連結部材と、
を有する柱梁接合構造。
【請求項2】
前記梁心材の上面に設けられ、前記第2燃え止まり層とで前記連結板の周囲を囲むコンクリート製の床版を有する請求項1に記載の柱梁接合構造。
【請求項3】
荷重を支持する木製の繋ぎ梁心材と、前記繋ぎ梁心材の側面と下面とを取り囲む第3燃え止まり層と、前記第3燃え止まり層の側面と下面とを取り囲む木製の第3燃え代層と、前記繋ぎ梁心材の端面から前記繋ぎ梁心材の梁長方向へ形成され前記連結板が挿入される第2縦溝とを備え前記梁に接合される繋ぎ梁と、
前記第2縦溝に前記連結板を挿入し前記第2燃え止まり層の端面と前記第3燃え止まり層の端面とを対向させ前記第3燃え止まり層に前記連結板の側方と下方とを取り囲ませた状態で前記繋ぎ梁心材に前記連結板を連結する第2連結部材と、
を有する請求項1又は2に記載の柱梁接合構造。
【請求項4】
請求項3に記載の柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法において、
前記第1縦溝に前記連結板が挿入されるように前記梁を移動して、前記柱の接合面と前記梁の端面とが対向するように配置する梁配置工程と、
前記第1連結部材により前記連結板を前記梁心材に連結する梁接合工程と、
前記第2縦溝に前記連結板が挿入されるように前記繋ぎ梁を上下方向へ移動して、前記梁の端面と前記繋ぎ梁の端面とが対向するように配置する繋ぎ梁配置工程と、
前記第2連結部材により前記連結板を前記繋ぎ梁心材に連結する繋ぎ梁接合工程と、
を有する柱梁接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−219559(P2012−219559A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88363(P2011−88363)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】