説明

柱梁接合構造、及び柱梁接合方法

【課題】耐火性を有する木造の柱と梁との接合部に耐火性を付与することが可能な柱梁接合構造、及びこの柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法を提供する。
【解決手段】柱心材20と梁心材32とをつないで柱12に梁14を接合する連結板18を、第2燃え止まり層34によって取り囲むことにより、火災時及び火災終了後における連結板18の温度上昇を抑制することができる。これによって、柱12と梁14との接合部に耐火性を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性を有する木造の柱と梁との柱梁接合構造、及び柱梁接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木造の柱や梁として、燃え止まり機能を備えた耐火木造構造部材が提案されている。例えば、特許文献1には、木材からなる荷重支持層と、荷重支持層の外側に設けられる燃え止まり層と、燃え止まり層の外側に設けられる燃え代層とを有する複合木質構造材が開示されている。このような柱や梁により構築される木造建物においては、柱と梁との接合部にも、耐火木造構造部材と同等の耐火性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−2189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は係る事実を考慮し、耐火性を有する木造の柱と梁との接合部に耐火性を付与することが可能な柱梁接合構造、及びこの柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、荷重を支持する木製の柱心材と、前記柱心材の外周を取り囲む第1燃え止まり層と、前記第1燃え止まり層の外周を取り囲む木製の第1燃え代層と、前記第1燃え止まり層の側面から前記柱心材の中心軸へ向って形成された第1縦溝とを備えた柱と、荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の側面と下面とを取り囲む第2燃え止まり層と、前記第2燃え止まり層の側面と下面とを取り囲む木製の第2燃え代層と、前記梁心材の端面から前記梁心材の梁長方向へ形成された第2縦溝とを備えた梁と、前記第1縦溝と前記第2縦溝とに連結板を挿入し前記第1燃え止まり層の側面と前記第2燃え止まり層の端面とを対向させて前記第2燃え止まり層に前記連結板の側方と下方とを取り囲ませた状態で前記梁心材に前記連結板を連結する連結部材と、前記連結板の上端部に固定され前記柱心材に水平に支持される板状の抵抗部材と、を有する柱梁接合構造である。
【0006】
請求項1に記載の発明では、柱心材と梁心材とをつないで柱と梁とを接合する連結板が、第2燃え止まり層によって取り囲まれているので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における連結板の温度上昇を抑制することができる。これにより、柱と梁との接合部に耐火性を付与することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記梁心材の上面に設けられ、前記第2燃え止まり層とで前記連結板の周囲を囲むコンクリート製の床版を有する柱梁接合構造である。
【0008】
請求項2に記載の発明では、柱心材と梁心材とをつないで柱と梁とを接合する連結板が、第2燃え止まり層と床版とによって取り囲まれているので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における連結板の温度上昇を抑制することができる。これにより、柱と梁との接合部に耐火性を付与することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法において、前記柱の接合面と前記梁の端面とが対向するように前記梁を配置する梁配置工程と、前記第1縦溝及び前記第2縦溝に前記連結板を挿入し、前記連結部材により前記連結板を前記梁心材に連結する梁接合工程と、を有する柱梁接合方法である。
【0010】
請求項3に記載の発明では、梁配置工程と梁接合工程とによって、柱と梁との接合部に耐火性を付与することが可能な柱梁接合構造を構築することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記構成としたので、耐火性を有する木造の柱と梁との接合部に耐火性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る柱梁接合構造を示す平断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る柱梁接合方法を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る梁の変形例を示す横断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る主筋の変形例を示す側断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る柱梁架構を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る柱梁接合構造について説明する。
【0014】
図1の平断面図に示すように、柱梁接合構造10は、柱12、梁14、及び連結板18を有している。柱12には4つの梁14が接合されており、これらの梁14は、平面視にて各梁14の材軸が柱12の中心軸で交差するように略配置されている。
【0015】
柱12は、荷重を支持する木製の柱心材20と、柱心材20の外周を取り囲む第1燃え止まり層22と、第1燃え止まり層22の外周を取り囲む木製の第1燃え代層24と、第1燃え止まり層22の側面から柱心材20の中心軸へ向って形成された第1縦溝16とを備えている。第1縦溝16は、柱心材20の上面から下方へ形成されており、第1縦溝16には、連結板18が挿入されている。
【0016】
図1のA−A断面図である図2に示すように、下階の柱12(柱心材20)の上には、上階の柱12(柱心材20)が載置されている(図4(e)を参照のこと)。以下、説明の都合上、下階の柱12を柱12Aとし、上階の柱12を柱12Bとする。
【0017】
柱12Aと柱12Bとは、柱12Aの柱心材20と柱12Bの柱心材20とを主筋30によって連結することにより、接合されている。柱12Aの柱心材20の上面には、鉛直挿入孔42が形成され、柱12Bの柱心材20の下面には、鉛直挿入孔44が形成されている。そして、接着剤により、鉛直挿入孔42に主筋30の下端部を挿入して定着し、鉛直挿入孔44に主筋30の上端部を挿入して定着する。このような構成により、柱12Aと柱12Bとの間において、鉛直荷重は、柱12Aの柱心材20の上面と、柱12Bの柱心材20の下面との支圧により伝達され、曲げ荷重は、主筋30を介して伝達される。
【0018】
図1のB−B断面図である図3に示すように、梁14は、荷重を支持する木製の梁心材32と、梁心材32の側面と下面とを取り囲む第2燃え止まり層34と、第2燃え止まり層34の側面と下面とを取り囲む木製の第2燃え代層36と、梁心材32の端部に形成された第2縦溝38とを備えている。
【0019】
第2縦溝38は、梁心材32の梁長方向に沿って梁心材32の一方(柱12側)の端面から他方の端面(不図示)へ向って形成されている。また、第2縦溝38は、梁心材32の上面から下方へ形成されており、第2縦溝38には、連結板18が挿入されている。
【0020】
連結板18は、鋼板によって形成されている。図1に示すように、連結板18は、平面視にて略直交して4つ配置されており、各連結板18の端部同士は接合されている。また、連結板18の上端部には、板状に形成された鋼製の抵抗部材26が略水平に固定されている。また、抵抗部材26には、主筋30が貫通する貫通孔40が形成されている。そして、一体化された4つの連結板18と抵抗部材26とよって連結構造体28が構成されている。
【0021】
図1、2に示すように、梁14は、第1縦溝16と第2縦溝38とに連結板18が挿入された状態で、梁心材32に形成された連結孔50と、連結板18に形成された貫通孔52とに、連結部材としてのドリフトピン48を貫通させて、梁心材32に連結板18を連結することにより、柱12に接合されている。この状態で、抵抗部材26は、柱心材20の上面に略水平に支持され、下階の柱12Aを構成する第1燃え止まり層22の内側に配置されている。また、抵抗部材26は、柱12Aの柱心材20の上面と、柱12Bの柱心材20の下面とに挟まれることによって、柱12Aの柱心材20に固定されている。すなわち、連結構造体28(連結板18)は、柱12Aの柱心材20に固定されている。なお、抵抗部材26は、梁14が柱12に接合された状態で、上階の柱12Bを構成する第1燃え止まり層22の内側に配置されるようにしてもよい。
【0022】
ドリフトピン48は、第2燃え代層36と第2燃え止まり層34とに形成され連結孔50と連通する挿入孔56から挿入する。そして、ドリフトピン48を連結孔50と貫通孔52とに貫通させた後に、閉塞材や閉塞部材によって挿入孔56を塞ぐ。第2燃え代層36に形成されている挿入孔56は、第2燃え代層36を形成する材料によって塞ぎ、第2燃え止まり層34に形成されている挿入孔56は、第2燃え止まり層34を形成する材料によって塞ぐのが好ましい。
【0023】
図2に示すように、梁14の端部は、柱12の側面に形成された切欠部54に挿入されており、これによって、柱12に梁14を接合した状態で、第1燃え止まり層22の側面と第2燃え止まり層34の端面とは接触している。
【0024】
図3に示すように、梁14の上面には、鉄筋コンクリート製の床版66が設けられている。すなわち、梁心材32、第2燃え止まり層34、及び第2燃え代層36の上面に、床版66が設けられている。これにより、連結板18の側方と下方とは、第2燃え止まり層34によって取り囲まれ、連結板18の上方は床版66によって取り囲まれている。すなわち、連結板18は、第2燃え止まり層34と床版66とによって外周を取り囲まれている。
【0025】
なお、柱心材20、梁心材32、第1燃え代層24、及び第2燃え代層36は、木材によって形成されていればよい。例えば、柱心材20、梁心材32、第1燃え代層24、及び第2燃え代層36は、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築に用いられる柱材や梁材(以下、「一般木材」とする)によって形成してもよいし、これらの一般木材を角柱状の単材に加工し、この単材を複数集成し単材同士を接着剤により接着して一体化することによって形成してもよい。
【0026】
また、第1燃え止まり層22、及び第2燃え止まり層34は、熱の吸収が可能な層であればよい。例えば、第1燃え止まり層22、及び第2燃え止まり層34は、一般木材よりも熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料によって形成してもよいし、これらの材料と一般木材とを組み合わせて形成してもよい。
【0027】
一般木材よりも熱容量が大きな材料としては、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント等の無機質材料、各種の金属材料などが挙げられる。一般木材よりも断熱性が高い材料としては、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウールなどが挙げられる。一般木材よりも熱慣性が高い材料としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等の木材が挙げられる。
【0028】
また、第2燃え代層36に形成されている挿入孔56は、第2燃え代層36を形成する材料によって塞ぎ、第2燃え止まり層34に形成されている挿入孔56は、第2燃え止まり層34を形成する材料によって塞ぐのが好ましいが、熱の吸収が可能な閉塞材又は閉塞部材で塞ぐのがより好ましい。また、第2燃え止まり層34の挿入孔56が形成されていない部分が熱を吸収するので、熱の吸収が期待できないような閉塞材又は閉塞部材で挿入孔56を塞いでもよい。
【0029】
次に、本発明の実施形態に係る柱梁接合方法について説明する。
【0030】
ここでは、図4(a)〜(h)により、柱梁接合方法を用いて建物を構築する手順の一例について説明する。建物は、柱設置工程、梁配置工程、連結板挿入工程、梁接合工程、柱接合工程、及び打設工程によって構築される。また、柱梁接合方法は、梁配置工程、及び梁接合工程によって構成されている。
【0031】
まず、柱設置工程では、図4(a)に示すように、建物の基礎70の上に柱12Aを設置し、柱12Aの鉛直挿入孔42に主筋30の下端部を挿入して定着する。
【0032】
次に、梁配置工程では、図4(b)に示すように、梁14を上方から下方へ移動させて、柱12の接合面と梁14の端面とが対向するように梁14を配置する。
【0033】
次に、連結板挿入工程では、図4(c)に示すように、連結構造体28を上方から下方へ移動させて、柱12Aの第1縦溝16と梁14の第2縦溝38とに連結板18を挿入する。
【0034】
次に、梁接合工程では、図4(d)に示すように、ドリフトピン48により、連結板18を梁14の梁心材32に連結して、梁14の両端部を左右の柱12にそれぞれ接合する。連結板18を梁14の梁心材32に連結した後に、挿入孔56を閉塞材又は閉塞部材によって塞ぐ。
【0035】
次に、柱接合工程では、図4(e)に示すように、柱12Aに定着された主筋30の上端部を柱12Bの鉛直挿入孔44に挿入しながら、柱12Aの上に柱12Bを載置する。そして、主筋30の上端部を柱12Bの鉛直挿入孔44に定着することにより、柱12Aに柱12Bを接合する。
【0036】
次に、打設工程では、図4(f)に示すように、梁14上にコンクリートを打設し、鉄筋コンクリート製の床版66を形成する。
【0037】
次に、図4(g)に示すように、柱12Bの鉛直挿入孔42に主筋30の下端部を挿入して定着する。
【0038】
次に、図4(h)に示すように、3階を構成する梁14を上方から下方へ移動させて、柱12の接合面と梁14の端面とが対向するように梁14を配置し、後は、必要とする階数に達するまで、これまで説明した工程を繰り返して建物を構築する。
【0039】
次に、本発明の実施形態に係る柱梁接合構造及び柱梁接合方法の作用と効果について説明する。
【0040】
本発明の実施形態の柱梁接合構造10では、図1、2に示すように、柱心材20に支持され固定された連結板18をドリフトピン48により梁心材32に連結することによって、梁14に作用する荷重を、梁心材32、ドリフトピン48、連結板18の順に伝えて柱心材20に伝達することができ、また、柱12に作用する荷重を、柱心材20、連結板18、ドリフトピン48の順に伝えて梁心材32に伝達することができるので、柱12に梁14を接合することができる。
【0041】
また、柱12においては、図1に示すように、火災が発生したときに火炎が第1燃え代層24に着火し、第1燃え代層24が燃焼する。そして、燃焼した第1燃え代層24は炭化する。よって、柱12の外部から柱心材20への熱伝達と酸素供給とを炭化した第1燃え代層24が遮断し、第1燃え止まり層22が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における柱心材20の温度上昇を抑制することができる。
【0042】
また、梁14においては、図3に示すように、火災が発生したときに火炎が第2燃え代層36に着火し、第2燃え代層36が燃焼する。そして、燃焼した第2燃え代層36は炭化する。よって、梁14の外部から梁心材32への熱伝達と酸素供給とを炭化した第2燃え代層36が遮断し、第2燃え止まり層34が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における梁心材32の温度上昇を抑制することができる。
【0043】
また、第1燃え止まり層22の側面と第2燃え止まり層34の端面とは接触しているので、柱12と梁14との接合部から熱が進入して、柱心材20及び梁心材32の温度が上昇するのを抑制することができる。
【0044】
よって、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、柱心材20及び梁心材32を着火温度未満に抑え、柱心材20及び梁心材32を燃焼させずに燃え止まらせて、構造体として機能させることができる。
【0045】
また、図1〜3に示すように、連結板18は、周囲を第2燃え止まり層34と床版66とによって取り囲まれているので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における連結板18の温度上昇を抑制することができる。これにより、柱12と梁14との接合部に耐火性を付与することができる。
【0046】
また、抵抗部材26により、鉛直荷重を受けた連結板18が柱心材20内に沈み込むのを抑制することができる。
【0047】
また、柱接合工程では、1階分の長さの柱12同士を接合するので、柱12を短い長さの構造部材とすることができる。これにより、柱12の搬送、揚重、移動、配置等の作業が行い易くなる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0049】
なお、本発明の実施形態では、図3に示すように、第2燃え止まり層34が、梁心材32の側面と下面とを取り囲み、第2燃え代層36が、第2燃え止まり層34の側面と下面とを取り囲む例を示したが、図5の横断面図に示すように、第2燃え止まり層34が、梁心材32の外周を取り囲み、第2燃え代層36が、第2燃え止まり層34の外周を取り囲むようにしてもよい。この場合には、第1縦溝38に連結板18を挿入した際に残る、第1縦溝38上部の隙間に充填材Mを充填して塞ぐ。
【0050】
充填材Mは、隙間への充填が可能な材料であればよい。充填材Mは、一般木材よりも熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料などの熱の吸収が可能な材料によって形成されていることが好ましいが、第2燃え止まり層34から熱は吸収されるので、熱の吸収が期待できないような材料を充填材Mとして用いてもよい。充填材Mとしては、モルタル、繊維補強セメントなどが挙げられる。
【0051】
また、本発明の実施形態では、梁14の端部を挿入する切欠部54を柱12の側面に形成した例を示したが、この切欠部54は、図2に示すように、柱12に梁14が接合され梁14の上面に床版66が設けられた状態で、床版66の上面と、第2燃え燃え代層36の下面に10〜20mm程度の隙間を有するように形成してもよい(以下、床版66の上面に形成される隙間を「上目地」、第2燃え燃え代層36の下面に形成される隙間を「下目地」とする)。このようにすれば、切欠部54の開口面積が大きくなるので、プレキャスト床版を設置することにより床版66を形成する場合に、プレキャスト床版が設置し易くなる。また、上目地及び下目地に、先に述べた充填材Mを充填して耐火処理を施すことによって、上目地及び下目地から熱が進入することを防ぐことができる。また、上目地及び下目地に、耐火性を有する可撓性材料を充填することにより、第1燃え代層24が乾燥等により上下方向へ収縮した場合においても、上目地及び下目地が閉塞された状態を維持することができる。
【0052】
また、本発明の実施形態では、連結板18によって、柱12に梁14を接合した例を示したが、1つの梁心材32内に連結板18を複数対向させて配置するようにしてもよい。このようにすれば、連結板18と梁心材32の広い範囲とで力を伝達することができる。この場合、対向して配置された複数の連結板18の全てにドリフトピン48を貫通させてもよいが、対向して配置された複数の連結板18毎にドリフトピン48を設けて(貫通させて)、それぞれのドリフトピン48を離して配置するのが好ましい。これにより、連結板18に対して連結板18の面方向に梁心材32が移動したときにドリフトピン48が曲がり、ドリフトピン48の降伏によるエネルギー吸収効果が得られる。
【0053】
また、本発明の実施形態では、第1燃え止まり層22の側面と第2燃え止まり層34の端面とを接触させた例を示したが、第1燃え止まり層22の側面と第2燃え止まり層34の端面とは、対向していればよい。すなわち、第1燃え止まり層22の側面と第2燃え止まり層34の端面とは、接触していてもよいし、隙間を有していてもよい。隙間を有する場合には、第1燃え止まり層22の側面と第2燃え止まり層34の端面との間からの熱の進入を防ぐために、先に述べた充填材Mを充填してこの隙間を塞ぐ。
【0054】
また、本発明の実施形態では、柱12に4つの梁14を接合した例を示したが、柱12に接合する梁14はいくつでもよい。例えば、1つの梁14のみを柱12に接合してもよいし、平面視にて一直線状、L字状又はT字状に配置されるように2つ又は3つの梁14を柱12に接合してもよい。
【0055】
また、本発明の実施形態では、柱12に梁14を接合する柱梁接合構造10について説明したが、この柱梁接合構造10を梁同士(例えば、大梁と小梁)の接合に適用してもよい。
【0056】
また、本発明の実施形態では、抵抗部材26の貫通孔40を貫通する主筋30によって、柱12Aと柱12Bとを接合する例を示したが、図6の側断面図に示すように、主筋30に鍔部72を設けておいて、抵抗部材26を鍔部72とで上下に挟み込むように、溶接部74を形成するようにしてもよい。このようにすれば、柱心材20に対する抵抗部材26(連結板18)の固定度が上がり、また、柱12の鉛直応力を梁14へ確実に伝達することができる。
【0057】
また、図7の側断面図に示すように、本発明の実施形態で示した柱梁接合構造10を用いて柱梁架構76を構成し、この柱梁架構76に架構ブレース78を設けてもよい。架構ブレース78を設けることにより、地震時に柱梁架構76に生じるせん断力を架構ブレース78の軸力(引張力又は圧縮力)として負担し、柱梁架構76のせん断抵抗を高めることができる。架構ブレース78は、鋼製、鉄筋コンクリート製、木製等のさまざまな構成のものを用いることができる。
【0058】
また、これらの架構ブレース78及び架構ブレース78の接合部に耐火性を付与させることにより、架構ブレース78を設けることによって柱梁架構76の耐火性能が低下するのを防ぐことができる。
【0059】
図7には、柱梁架構76に木製の架構ブレース78が設けられている例が示されている。鋼製の連結板80が仕口部下方に位置する柱心材20に固定され、柱梁架構76に配置された鋼製の接合プレート82が、ボルト84によって連結板80と連結板18とに接合されている。そして、ドリフトピン86により、この接合プレート82に架構ブレース78が接合されている。このように、連結板18と、連結板80と、接合プレート82とを別の部材によって構成することにより、架構ブレース78を柱梁架構76に取り付ける直前に、柱梁架構76に接合プレート82を取り付けることができる。
【0060】
架構ブレース78は、軸力を負担するブレース心材88と、このブレース心材88の外周を取り囲む燃え止まり層90と、燃え止まり層90の外周を取り囲む燃え代層92とを備えている。また、接合プレート82は、燃え止まり層94により取り囲まれており、この燃え止まり層94が木製の燃え代層96により取り囲まれている。ブレース心材88は、柱心材20と、燃え止まり層90、94は、第1燃え止まり層22と、燃え代層92、96は、第1燃え代層24と同様の材料によって形成されている。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
10 柱梁接合構造
12 柱
14 梁
16 第1縦溝
18 連結板
20 柱心材
22 第1燃え止まり層
24 第1燃え代層
26 抵抗部材
32 梁心材
34 第2燃え止まり層
36 第2燃え代層
38 第2縦溝
48 ドリフトピン(連結部材)
66 床版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を支持する木製の柱心材と、前記柱心材の外周を取り囲む第1燃え止まり層と、前記第1燃え止まり層の外周を取り囲む木製の第1燃え代層と、前記第1燃え止まり層の側面から前記柱心材の中心軸へ向って形成された第1縦溝とを備えた柱と、
荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の側面と下面とを取り囲む第2燃え止まり層と、前記第2燃え止まり層の側面と下面とを取り囲む木製の第2燃え代層と、前記梁心材の端面から前記梁心材の梁長方向へ形成された第2縦溝とを備えた梁と、
前記第1縦溝と前記第2縦溝とに連結板を挿入し前記第1燃え止まり層の側面と前記第2燃え止まり層の端面とを対向させて前記第2燃え止まり層に前記連結板の側方と下方とを取り囲ませた状態で前記梁心材に前記連結板を連結する連結部材と、
前記連結板の上端部に固定され前記柱心材に水平に支持される板状の抵抗部材と、
を有する柱梁接合構造。
【請求項2】
前記梁心材の上面に設けられ、前記第2燃え止まり層とで前記連結板の周囲を囲むコンクリート製の床版を有する請求項1に記載の柱梁接合構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の柱梁接合構造を構築する柱梁接合方法において、
前記柱の接合面と前記梁の端面とが対向するように前記梁を配置する梁配置工程と、
前記第1縦溝及び前記第2縦溝に前記連結板を挿入し、前記連結部材により前記連結板を前記梁心材に連結する梁接合工程と、
を有する柱梁接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−219560(P2012−219560A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88364(P2011−88364)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】