説明

柱状体を有する位相差制御板

【課題】棒状の重合性液晶を用いて位相差制御層を構成しながらも、対向基板等との所定の間隔を実現し得る位相差制御板を提供する。
【解決手段】基板上に液晶性高分子からなる位相差制御層が積層されており、前記位相差制御層上に電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された柱状体が配列されて積層されており、前記液晶性高分子が棒状液晶性高分子からなり、光軸が前記位相差制御層に水平である、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射性防止や視野角向上が可能な位相差制御層を備え、かつ、対向基板と組み合わせてディスプレイを構成する際の対向基板等との間隔を、他の手段を講じなくても一定に保つことが可能な位相差制御板に関するものである。本発明の位相差制御板は、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンスディスプレイ等の各種ディスプレイに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
種々のタイプのディスプレイが実用化されているが、これらのディスプレイには、反射防止性の向上、または/および視野角の拡大の目的で、位相差板が組み合わせられていることが多い。位相差板としては、光軸が基板に垂直で、負の複屈折異方性を有する位相差フィルム(負のCプレート)、もしくは光軸が基板に水平で、正の複屈折異方性を有する位相差フィルム(正のAプレート)等が単独または組み合わせて使用されている。(例えば、特許文献1)。
【0003】
位相差板(本発明では位相差制御板と言う)としては、ポリカーボネートフィルム等を延伸したもの、もしくは複屈折異方性を有する液晶材料をトリアセチルセルロースフィルム等に塗布して得た位相差制御フィルムが用いられるが、直線偏光板と貼り合わせて積層する際や、積層されたものをさらに積層ディスプレイに貼り付ける際に用いる粘着剤層が光の反射を起こすことがあり、また、位相差制御板の厚みも無視できない。そこで、重合性液晶材料をディスプレイを構成する一方の基板上に積層して位相差制御層を形成することが考えられるが、例えば、基板どうしを合わせて液晶ディスプレイを構成する際には、対向基板との間隔を一定に保つ必要があるため、通常、両基板に対し、シリカ等のスペーサ粒子を散布した後、貼りあわせを行なっている。(例えば、特許文献2)。
【0004】
しかし、重合性液晶を用いて構成された位相差制御層は、必ずも剛度が十分とは言えず、しかも、位相差制御層を内側にするときは、位相差制御層にスペーサ粒子が点接触するために、圧力がかかると、位相差制御層が変形してスペーサ粒子がめり込みやすく、従って、一定の粒径のスペーサ粒子を用いても両基板の間隔が必ずしもスペーサ粒子の直径の通りにならず、例えば、ディスプレイの中央部における間隔が所定の値よりも狭くなりやすい欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−153802号公報
【特許文献2】特開平6−148654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、重合性液晶を用いて位相差制御層を構成しながらも、対向基板等との所定の間隔を実現し得る位相差制御板を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者の検討により、重合性液晶を用いて位相差制御層を構成した上に、紫外線硬化性樹脂の硬化物で構成された柱状体を配列して形成した基板を用いることにより、従来技術における欠点を解消できることが判明し、本発明に到達することができた。
【0008】
第1の発明は、基板上に液晶性高分子からなる位相差制御層が積層されており、前記位相差制御層上に電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された柱状体が配列されて積層されており、
前記液晶性高分子が棒状液晶性高分子からなり、光軸が前記位相差制御層に水平である、ことを特徴とするものである。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記柱状体の断面積が25μm〜2500μmであり、高さが0.5μm〜10.0μmであることを特徴とする位相差制御板に関するものである。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、画素1〜27個に対して1個の前記柱状体が積層されていることを特徴とする位相差制御板に関するものである。
【0011】
第4の発明は、第1〜第3いずれかの発明において、前記位相差制御層が画素毎に積層されていることを特徴とする位相差制御板に関するものである。
【0012】
第5の発明は、第1〜第4いずれかの発明において、前記基板と前記位相差制御層との間、もしくは前記位相差制御層の前記基板側とは反対側にカラーフィルタ層が積層されていることを特徴とする位相差制御板に関するものである。
【0013】
第6の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、前記位相差制御層が積層されている側の上に前記位相差制御層側より透明電極層および配向膜が順に積層されていることを特徴とする位相差制御板に関するものである。
【0014】
第7の発明は、第1〜第6いずれかの発明の位相差制御板が観察側に配置されたことを特徴とするディスプレイに関するものである。
【0015】
第8の発明は、第1〜第6いずれかの発明の位相差制御板が観察側に配置されたことを特徴とするエレクトロルミネッセンスディスプレイに関するものである。
【0016】
第9の発明は、第1〜第6いずれかの発明の位相差制御板が観察側に配置されたことを特徴とする液晶ディスプレイに関するものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、対向基板との間隔を規制するために、位相差制御層上に配列されて積層された、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された柱状体を利用するので、従来技術におけるスペーサ粒子のように位相差制御層に潜り込むことがなく、対向基板との間隔を予定した所定の値に設定することが容易で、バラツキを少なくすることが可能な位相差制御基板を提供することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、柱状体の断面積および高さを規定したので、ディスプレイに適用した際に強度があり、画像の視認性を確保することが可能な位相差制御基板を提供することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、請求項1または請求項2の発明の効果に加え、柱状体の密度を画素の個数に関して規定したので、画像の視認性および対向する基板との間隔のバラツキを抑制することが可能な位相差制御基板を提供することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、請求項1〜請求項3いずれかの発明の効果に加え、位相差制御層が画素毎に積層されているので、画素毎に異なる位相差量を付与するのに適している。
【0021】
請求項5の発明によれば、請求項1〜請求項4いずれかの発明の効果に加え、カラーフィルタ層が積層されたことにより色補正の可能な位相差制御板を提供することができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、位相差制御層上に透明電極層、および配向膜が順に積層されているので、対向基板との間にそのまま液晶層を積層することが可能な位相差制御板を提供することができる。
【0023】
請求項7の発明によれば、請求項1〜請求項6いずれかの発明の位相差制御板が有する効果を発揮し得るディスプレイを提供することができる。
【0024】
請求項8の発明によれば、請求項1〜請求項6いずれかの発明の位相差制御板が有する効果を発揮し得るエレクトロルミネッセンスディスプレイを提供することができる。
【0025】
請求項9の発明によれば、請求項1〜請求項6いずれかの発明の位相差制御板が有する効果を発揮し得る液晶ディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】柱状体を有する位相差制御板を示す図である。
【図2】さらにカラーフィルタ等を伴った位相差制御板を示す図である。
【図3】液晶ディスプレイへの第1の適用例を示す図である。
【図4】液晶ディスプレイへの第2の適用例を示す図である。
【図5】液晶ディスプレイへの第3の適用例を示す図である。
【図6】液晶ディスプレイへの第4の適用例を示す図である。
【図7】液晶ディスプレイへの第5の適用例を示す図である。
【図8】液晶ディスプレイへの第6の適用例を示す図である。
【図9】実施例におけるセルギャップの測定位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の位相差制御板の基本的な構造を示すもので、図1(a)に例示するように、位相差制御板1は、好ましくは透明な基板2上に、液晶性高分子からなる位相差制御層3が積層され、位相差制御層3上に、柱状体4が配列されて積層された積層構造からなるものである。
【0028】
本明細書において、液晶性高分子とは、液晶状態が室温において固定化されたものを指し、例えば、分子構造中に重合性基を有する液晶性モノマーを架橋させて、架橋前の光学的異方性を保持したまま硬化させたもの、もしくはガラス転移温度を有し、該ガラス転移温度以上に加熱すると液晶層を示し、その後、該ガラス転移温度以下に冷却することにより、液晶組織を凍結することができる高分子型液晶を指す。
【0029】
柱状体4の形状は、例えば、断面が四角形である四角柱状(図1(b))であっても、あるいは断面が円形である円柱状(図1(c))であってもよく、そのほかの多角形や楕円形、あるいは、別の断面形状を持つものであってもよい。また、いずれの断面形状を持つにせよ、下方(基板2側)の直径と上方の直径とが同じものであっても、異なるものであってもよい。下方の直径と上方の直径とは柱状体4の高さ方向に連続的に変化するものであっても、段階的に変化するものであってもよく、例えば階段状であってもよい。さらにこれらの断面形状を基本的に持ちながらも、角が丸みを帯びた形状や、柱状体の図中の上部が丸みを帯びた形状であってもよい。
【0030】
柱状体4は、高さが0.5μm〜10.0μm程度であることが好ましい。また、この柱状体4は、断面積が25μm2〜2500μm2であることが好ましく、断面積が好ましい範囲の下限未満であると柱状体4の強度、および柱状体4と下層との密着強度が不十分となりやすく、また、この範囲の上限を超えると、柱状体4の断面積のディスプレイの画素に対する相対的な大きさが増すため、該当する画素の視認性を損ない、ひいては、画像の視認性を損なう恐れがあるからである。なお、柱状体4の下方の断面積と上方の断面積とが異なる場合には、大きな方の断面積、通常は、図1で言えば下方の断面積をもって、柱状体4の断面積とみなす。ここで、画素とは、フルカラー表示の場合であれば、赤色、緑色、もしくは青色の各色の分色画像を構成する最小単位を指す。因みに、三色の各々の画素1つずつをもって絵素と称する。
【0031】
柱状体4の配列は、基本的にはランダムでも規則的でもよいが、配列する際の密度としては、最も密な場合でも1個の画素あたりに1本程度、疎な場合で、27個の画素あたりに1本程度であることが好ましい。この範囲よりも柱状体4が密であると、ディスプレイに適用した際に、画像の視認性が低下し、また、柱状体4がこの範囲よりも疎であると、位相差制御板1と対向する基板との間隔がバラつく原因となるからである。
【0032】
図2に示すように、本発明の位相差制御板1は、基板2上に液晶性高分子からなる位相差制御層3および柱状体4を有する以外に、通常、この分野でもちいられ得る種々の層を有していてもよい。例えば、基板2と位相差制御層3の間には、カラーフィルタ層6が積層されていてもよく、カラーフィルタ層6は、基板2との間にブラックマトリックス(図中、「BM」で示す。)5を伴なっていてもよい。なお、カラーフィルタ層6は、位相差制御層3の下層に積層されることに限定されず、位相差制御層の上層に積層されていてもよい。
【0033】
液晶性高分子からなる位相差制御層3は、図1に示すように一様均一に積層されていてもよいが、図2に示すように、カラーフィルタ層6を構成する各色パターン、即ち、赤色パターン(図中に「6R」で表示)、緑色パターン(図中に「6G」で表示)、および青色パターン(図中に「6B」で表示)の各々に対応して積層されていてもよい。勿論、各色パターンがなくてもよい。このように、個別に、一例として各色パターン毎に積層する際には、位相差制御層3の厚みも下層の色パターンに応じて、すなわち、画素に応じて変えることができるので、画素に応じた、実際には、各画素毎に位相差制御を行なうべき色の光の波長に応じて決まる位相差量を付与するのに適している。また、位相差制御層3は、一様均一か各色パターン毎であるかを問わず、図の上下方向に互いに接して積層された二層構成のものであってもよい。なお、位相差制御層3が二層からなる場合において、両者が基板2の互いに反対側に積層されていることもある。これらの多様な層構成については、以降に図面を引用して、対向基板等と共に液晶ディスプレイを構成した幾つかの例を示す。
【0034】
図3〜図5は、いずれも本発明の柱状体を有する位相差制御板1を適用した透過タイプの液晶ディスプレイの構成の一例を模式的に示す図である。
【0035】
図3に例示する液晶ディスプレイ10は、図の上側が観察側であって、観察側より、一方の偏光板(1)71、透明な一方の基板(1)21、カラーフィルタ層6、位相差制御層(A)3A、位相差制御層(C)3C、柱状体4、液晶層8、対向する基板(2)22、および他方の偏光板(2)が順に配列されて積層された構造を有しており、この液晶ディスプレイ10は、図の下面である背面側からの照明により視認可能な透過タイプである。図3に示す例では、各層のうち、透明な基板(1)21、カラーフィルタ層6、位相差制御層(A)3A、位相差制御層(C)3C、および柱状体4の5つの層がこの順に積層された積層体が、本発明の柱状体を有する位相差制御板1である。なお、図3〜図8は、各層の相対的な位置関係を示すものであって、従って、各層間は図示のように離れているものではなく、接しているものである。以降の説明も含め、位相差制御層(A)とは光軸が層に水平なものを、また、位相差制御層(C)とは、光軸が層に垂直なものを指すものとするが、本発明において適用される位相差制御層は、その光軸が層に対して斜めであったり、その角度が層に垂直な方向で変化しているハイブリッド配向であってもよい。
【0036】
このように、基板(1)21に、液晶性高分子からなる位相差制御層が積層されているタイプの位相差制御板においては、別体の位相差制御板を粘着剤層を介して基板に積層する場合にくらべて、接着界面における光の反射を防止でき、この効果は、特に断らない限り、図3〜図8に例示するもののいずれにも共通する効果である。また、カラーフィルタ層6上に位相差制御層が一面に積層されることにより、カラーフィルタ層6を構成する各色パターン間の厚みのバラツキが緩和されると共にカラーフィルタ層6からの不純物の図中の下面側への溶出を防止することが可能になる利点を有する。
【0037】
なお、図示はしないが、図3を引用して説明した本発明の位相差制御板1、および液晶ディスプレイ10においては、これらにおいて通常行なわれる、次のような加工が施されている。まず、偏光板71および72は、基板(1)21および基板(2)22に粘着剤層を介して貼り付けられていることが好ましい。基板(1)21および基板(2)22の各々の互いに向かい合う側には電極が形成されており、電極がカラーフィルタ層上や位相差制御層上に形成される場合には、透明な樹脂保護層もしくは無機質の透明保護層を介して積層されていることが好ましい。両基板(1)21および(2)22は、柱状体4で規制される狭い間隔を保持して周縁部でシールされており、シールされた内部には、封入された液晶からなる液晶層8が積層されている。さらに、液晶層8が直接接触する面、図3を引用して説明した例においては、位相差制御層(C)3Cと基板(2)22の各々の互いに向かい合う側であるが、通常は電極上に、好ましくは配向膜が形成されている。各位相差制御層は、形成される際の下層に配向膜を有することが好ましい。また、二層の位相差制御層が直接に積層される場合、二層目の位相差制御層の下層となる一層目の位相差制御層の二層目側には、一層目の位相差制御層側より透明な樹脂保護層、および配向膜が積層されていることが好ましい。
【0038】
図4に例示する液晶ディスプレイ10は、図3を引用して説明した液晶ディスプレイ10におけるカラーフィルタ層6と、二層の位相差制御層(A)3A、位相差制御層(C)3Cとを入れ替えたものに相当する。従って、各層のうち、透明な基板(1)21、位相差制御層(A)3A、位相差制御層(C)3C、カラーフィルタ層6、および柱状体4の5つの層がこの順に積層された積層体が、本発明の柱状体を有する位相差制御板1である。
【0039】
このように、基板(1)21上に直接に、液晶性高分子からなる位相差制御層が積層されているタイプの位相差制御板においては、位相差制御層の下層となる基板の平面性(通常、これらの用途の基板は平面性が優れている。)が寄与する結果、位相差制御層の厚みムラが少なく、従って、位相差制御機能のバラツキがごく少ない。また、位相差制御層をカラーフィルタ層6で被覆するので、カラーフィルタ層6を構成する素材を選ぶことにより、位相差制御層の表面の剛度の不足を補うことができる利点がある。
【0040】
図5に例示する液晶ディスプレイ10は、図4を引用して説明した液晶ディスプレイ10における基板(1)21側の位相差制御層(A)3Aを、基板(1)21の上面側に移して積層したものに相当する。従って、各層のうち、位相差制御層(A)3A、透明な基板(1)21、位相差制御層(C)3C、カラーフィルタ層6、および柱状体4の5つの層がこの順に積層された積層体が、本発明の柱状体を有する位相差制御板1(a)である。
【0041】
図3もしくは図4を引用して説明した液晶ディスプレイでは、位相差制御層(A)3Aおよび位相差制御層(C)3Cの二層の位相差制御層を直接積層すると、二層の間に透明な樹脂保護層および配向膜の積層を要するが、図5に例示する液晶ディスプレイ10の構造であれば、液晶性高分子からなるものとしては、位相差制御層(C)3Cのみを形成するに止め、位相差制御層(A)3Aを液晶性高分子で形成せず、替わりに、従来の位相差板を基板(1)21の観察側に粘着剤層を介して積層する別の積層構造を採ることもできる。この別の積層構造において、液晶性高分子からなる位相差制御層を有する意味では、透明な基板(1)21、位相差制御層(C)3C、カラーフィルタ層6、および柱状体4の4つの層がこの順に積層された積層体が、本発明の柱状体を有する位相差制御板1(b)である。
【0042】
図6〜図8は、いずれも本発明の柱状体を有する位相差制御板1を適用した反射タイプの液晶ディスプレイの構成の一例を模式的に示す図である。
【0043】
図6に例示する液晶ディスプレイ10は、図の上側が観察側であって、観察側より、偏光板(1)71、透明な一方の基板(1)21、カラーフィルタ層6、位相差制御層(A)3A、柱状体4、液晶層8、反射板9、および対向する基板(2)22が順に配列されて積層された構造を有しており、この液晶ディスプレイ10は、図中の上面である観察側からの照明により視認可能である。液晶層8が直接接触する下層側の面が、図6を引用して説明した例においては反射板9になるので、反射板9の図中、上面側に、好ましくは配向膜が形成されている。従って、透明な基板(1)21、カラーフィルタ層6、位相差制御層(A)3A、および柱状体4の4つの層がこの順に積層されたものが、本発明の柱状体を有する位相差制御板である。なお、カラーフィルタ層6および位相差制御層(A)3Aは、上記とは逆順に積層されているものであってもよい。この図6を引用して説明した位相差制御板が有する利点は、図3を引用して説明した例の位相差制御板が有する利点と同様である。
【0044】
図7に例示する液晶ディスプレイ10は、図6に例示する液晶ディスプレイ10の液晶層8の基板2とは反対側に、位相差制御層(A)3A’、および位相差制御層(A)3Aの二層の位相差制御層がこの順に液晶層8側より積層されたものである。従って、透明な基板(1)21、カラーフィルタ層6、位相差制御層(A)3A、位相差制御層(A)3A’、および柱状体4の5つの層がこの順に積層されたものが、本発明の柱状体を有する位相差制御板である。二層の位相差制御層を適切に選定することにより、波長、および視野角に依存して偏光状態が変化する点を緩和できる利点を有する。
【0045】
図8に例示する液晶ディスプレイ10は、図7に例示する液晶ディスプレイ10における一方の位相差制御層(A)3Aを、基板(1)21の図中の上面側に移して積層したものに相当する。従って、位相差制御層(A)3A、透明な基板(1)21、カラーフィルタ層6、位相差制御層(A)3A’、および柱状体4の5つの層がこの順に積層されたものが、本発明の柱状体を有する位相差制御板1(c)である。
【0046】
図7を引用して説明した液晶ディスプレイでは、位相差制御層(A)3Aおよび位相差制御層(A)3A’の二層の位相差制御層を直接積層すると、二層の間に透明な樹脂保護層および配向膜の積層を要するが、図8に例示する液晶ディスプレイ10の構造であれば、液晶性高分子からなるものとしては、位相差制御層(A)3A’のみを形成するに止め、位相差制御層(A)3Aを液晶性高分子で形成せず、替わりに、従来の位相差板を基板(1)21の観察側に粘着剤層を介して積層する別の積層構造を採ることもできる。この別の積層構造において、液晶性高分子からなる位相差制御層を有する意味では、透明な基板(1)21、カラーフィルタ層6、位相差制御層(A)3A’、および柱状体4の4つの層がこの順に積層された積層体が、本発明の柱状体を有する位相差制御板1(d)である。
【0047】
上記において、基板(21および22)としては、ガラス、シリコン、もしくは石英等の無機基材か、次に列挙するような有機基材からなる。即ち、有機基材としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、もしくはシンジオタクティック・ポリスチレン等、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、もしくはポリエーテルニトリル等、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリシクロヘキセン、もしくはポリノルボルネン系樹脂等、または、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、もしくは熱可塑性ポリイミド等からなるものを挙げることができるが、一般的なプラスチックからなるものも使用可能である。基板21および22の厚みには、特に限定は無いが、用途に応じ、例えば、5μm〜1mm程度のものが使用される。
【0048】
ブラックマトリックス5は、黒色着色剤を含有する塗料タイプの樹脂組成物を一面に適用して、一旦固化させた後、フォトレジストを適用して行なうか、もしくは、黒色着色剤を含有する塗料タイプの感光性樹脂組成物を用いて、塗布、露光および現像を行なうことにより形成することができ、従って、黒色着色剤を含有する樹脂組成物から構成することができる。
【0049】
あるいは、ブラックマトリックス5は、CrOx/Cr(xは任意の数、「/」は積層を表す。)の積層構造からなる2層クロムブラックマトリックス、あるいはさらに反射率を低減させたCrOx/CrNy/Cr(x,yは任意の数)の積層構造からなる3層クロムブラックマトリックス等を、蒸着、イオンプレーティング、もしくはスパッタリング等の各種の方法で必要に応じ金属、金属酸化物、もしくは金属窒化物等の薄膜を形成し、フォトリソグラフィー法を利用してパターン化する方法、無電界メッキ法、もしくは黒色のインキ組成物を用いた印刷法等を利用しても形成することができる。ブラックマトリックス5の厚みは、薄膜で形成する場合には、0.2μm〜0.4μm程度であり、印刷法によるときは0.5μm〜2μm程度である。
【0050】
カラーフィルタ層6の各色パターンは、ブラックマトリックス5の開孔部毎に設けたものであってもよいが、便宜的には、図2における手前側から奥側の方向に帯状に設けたものであってよい。カラーフィルタ層6は着色剤が溶解もしくは分散された、好ましくは微細顔料が分散された樹脂組成物から構成され、その形成には、所定の色に着色したインキ組成物を調製して、各色パターン毎に印刷することによって行なってもよいが、所定の色の着色剤を含有した塗料タイプの感光性樹脂組成物を用いて、フォトリソグラフィー法によって行なうのがより好ましい。カラーフィルタ層4の厚みは、1μm〜5μm程度である。
【0051】
なお、カラーフィルタ層6を構成する各色パターンは、通常、同じ厚みになるよう形成するが、各色パターンに対応して形成する位相差制御層に求められる厚みは、色によって異なるので、予め、カラーフィルタ層を構成する各色パターンの厚みを変えて形成し、それらの上に位相差制御層を形成するに当り、各色パターンの厚みと位相差制御層の厚みの合計が一定になるよう設け、位相差制御層の厚みが対応する各色パターンに対して最適な値となるよう形成してもよい。厚みを通常よりも厚くする場合には、着色剤の配合量割合を減らし、また、通常よりも厚みが薄い場合には、着色剤の配合量割合を増やすことが好ましい。塗布厚みの制御は、コーティング条件もしくは印刷条件を変更し、あるいは、使用する塗料組成物もしくはインキ組成物の粘度を変更する等により行なう。
【0052】
カラーフィルタ6上に位相差制御層3を形成するに先立って、必要に応じ、位相差制御層3用の配向膜を形成する。配向膜は、上層の位相差制御層3を構成するために用いる液晶性高分子を所定の方向に配列させるためのもので、ポリアミド樹脂もしくはポリイミド樹脂等の樹脂の被膜を、これらの樹脂を溶解した樹脂組成物を塗布し、乾燥させることにより、形成した後、布を巻き付けたローラ等により所定の方向に摩擦するラビングを施すことにより、形成することができる。なお、位相差制御層を二層重ねる際にも、一層目と二層目との間に配向膜を積層することが好ましい。基板2に直接に位相差制御層3を積層する際にも、配向膜を形成する。
【0053】
位相差制御層3は、重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物の硬化物で構成される。上記の説明における位相差制御層(A)、即ち、光軸が層に水平な位相差制御層を形成する場合には、重合性の液晶性モノマーを重合させることにより形成することができ、具体的には、そのようなモノマーに光重合開始剤を配合した光重合性液晶組成物を対象面に塗布し、塗布後、紫外線露光する等により形成することができる。また、位相差制御層(C)、即ち、光軸が層に垂直で負の屈折率異方性を有する位相差制御層を形成する場合には、さらに重合性のキラル剤を配合した光重合性液晶組成物を用いて、同様に形成することができる。
【0054】
重合性の液晶モノマーとしては、例えば特表平10−508882号に、また、重合性キラル剤としては、例えば特開平7−258638号に開示されているような公知のものを使用することができるが、より具体的には、重合性液晶モノマーとしては、下記式(1)〜式(11)に示すようなものが、また、重合性キラル剤としては、下記式(12)〜式(14)に示すようなものを例示することができる。
【0055】
【化1】


【0056】
【化2】

【0057】
上記各式の表記において、「式11」〜「式14」中のいずれもメチレン基の数(アルキレン基の鎖長)を示すa〜eはいずれも整数であって、まず、a、bが、各々個別に2〜12であり、より好ましくは4〜10、特に好ましくは6〜9であり、c、dはいずれも2〜12であり、より好ましくは4〜10であり、特に好ましくは6〜9であり、さらにeは2〜5である。また、「式12」および「式13」中のYは、「化15」および「化16」に示す「式i」〜「式xxiv」のいずれかであって、より好ましくは「式i」、「式ii」、「式iii」、「式v」、もしくは「式vii」のいずれかである。
【0058】
位相差制御層3を形成するには、上記のような光重合性液晶組成物を用い、必要に応じて溶剤で溶解もしくは希釈し、スピンコーティング法、ダイコーティング、スリットコーティング、もしくはその他の適宜な方法によりカラーフィルタ層4上に塗布を行ない、紫外線を照射して重合させることにより行なう。
【0059】
位相差制御層3は、カラーフィルタ層6を構成する各層の上にあればよいので、上記の露光の際に、必要箇所のみを残すようパターン露光することにより、カラーフィルタ層6およびブラックマトリックス5等のある、有効表示エリアのみに積層し、基板2の周縁部を残すことができる。このようにして、基板2の周縁部を残して位相差制御層3を積層することにより、本発明の柱状体を有する位相差制御板を液晶ディスプレイに適用する際に、シール材が適用されるべき部分の基板2を露出させ、シールを確実に行なえる利点が生じる。
【0060】
柱状体4は、種々の素材で構成できるが、強度の点で硬化性樹脂の硬化物で構成することが好ましく、また、所定の大きさで所定の位置に形成する際のプロセス上の利便性を考慮すると、感光性樹脂組成物の硬化物、広く言えば電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成されていることが好ましい。電離放射線硬化性の樹脂を、必要に応じ、溶剤、希釈剤、もしくはモノマー等、さらには、適宜な添加剤と共に混合して、柱状体形成用の塗料組成物もしくはインキ組成物を調製して用い、一様に塗布し、乾燥させた後、所定のパターン露光を行ない、その後に現像するプロセス(フォトリソグラフィー法である。)を行なうことによって柱状体4を形成できる。なお、インキ組成物を用いて、厚盛りに適したスクリーン印刷等の手法により、必要に応じて、重ね刷りすることによっても柱状体4を形成することもできる。なお、以降の記述では、専ら感光性樹脂組成物を扱うが、紫外線以外の電子線等による硬化によるものであってもよい。
【0061】
柱状体4を形成するには、対象面に感光性樹脂組成物を所定の厚みになるよう塗布し、必要により予備的に硬化させ、マスクを介する等により、所定のパターン状に露光し、露光後、現像することにより行なうことができる。このように有機質で形成した柱状体4は、他の層とのなじみがよく、また、感光性樹脂組成物としては、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂を含むものを使用するとよい。感光性樹脂組成物を用いると、形成時に形成対象にかかる熱が比較的少なくて済む。なお、柱状体4は、酸化ケイ素やケイ素等の無機質でも形成でき、形成時に必要な熱が大きいが、ガラス基板等の無機系の対象物とのなじみがよく、形成後の柱状体から、溶剤等が滲出することが無い利点もある。
【0062】
柱状体4を無機質で構成する場合には、蒸着もしくはスパッタリング等の気相成長法により成膜を行ない、フォトリソグラフィー法により、パターン化することによって形成すればよい。
【0063】
本発明の位相差制御板1が図2を引用して説明したようにカラーフィルタ層6を有する場合には、柱状体4を、そのための専用の材料を用いて形成する以外に、カラーフィルタ層6を構成する赤色、緑色、および青色の各色の着色区域を形成するために用いられる感光性樹脂組成物を用い、フォトリソグラフィー法によって行なうことができ、赤色、緑色、および青色の各色の着色区域形成用の感光性樹脂組成物のうちの任意の2種類以上、好ましくは3種類を用いて厚み方向に重ねることにより、所望の十分な高さを有する柱状体4の形成ができ、専用の材料を用いて形成する場合にくらべ、素材および工程を省ける利点も生じる。さらに、柱状体4をブラックマトリックス5上に形成すれば、より高い柱状体4とすることができる。
【0064】
以上の説明においては、本発明の柱状体を有する位相差制御板を液晶ディスプレイ、特に、カラー液晶ディスプレイに適用することを中心に説明したが、本発明の位相差制御板は、自発光型ディスプレイである有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、もしくはプラズマディレイ等にも適用可能である。
【実施例】
【0065】
基板上に形成するブラックマトリックスおよびカラーフィルタ層の各色パターンを形成するための各感光性樹脂組成物(以降においてフォトレジストと称する。)を調製した。各フォトレジストは、顔料、分散剤、および溶媒にビーズを加え、ペイントシェーカーを分散機として用い、3時間分散させた後、ビーズを取り除いて得られた分散液と、ポリマー、モノマー、添加剤、開示剤および溶剤からなるレジスト組成物とを混合することにより調製した。各フォトレジストの組成は下記に示す通りで、部数はいずれも質量基準である。
【0066】
(ブラックマトリックス形成用フォトレジスト)
・黒顔料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14.0部
(大日精化工業(株)製、TMブラック#9550)
・分散剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.2部
(ビックケミー(株)製、ディスパービック111)
・ポリマー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.8部
(昭和高分子(株)製、(メタ)アクリル系樹脂、品番;VR60)
・モノマー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.5部
(サートマー(株)製、多官能アクリレート、品番;SR399)
・添加剤(分散性改良剤)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.7部
(綜研化学(株)製、ケミトリーL−20)
・開始剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.6部
(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)
・開始剤(4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン)・・・・・・0.3部
・開始剤(2,4−ジエチルチオキサントン)・・・・・・・・・・0.1部
・溶剤(エチレングリコールモノブチルエーテル)・・・・・・・75.8部
【0067】
(赤色パターン形成用フォトレジスト)
・赤色顔料(C.I.PR254)・・・・・・・・・・・・・・・3.5部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)、クロモフタールDPP Red BP)
・黄色顔料(C.I.PY139)・・・・・・・・・・・・・・・0.6部
(BASF社製、パリオトールイエローD1819))
・分散剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.0部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)
・ポリマー1(下記)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.0部
・モノマー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4.0部
(サートマー(株)製、多官能アクリレート、品番;SR399)
・開始剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.4部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガキュア907)
・開始剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.6部
(2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・80.0部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
なお、ポリマー1は、ポリマー1は、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モル%に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル%付加したものであり、重量平均分子量は42500であり、以降においても同じである。
【0068】
(緑色パターン形成用フォトレジスト)
上記の赤色パターン形成用フォトレジストにおける赤色顔料および黄色顔料に替えて、顔料として下記のものを下記の配合量で用いた。
・緑色顔料(C.I.PG7)・・・・・・・・・・・・・・・・・3.7部
(大日精化製セイカファストグリーン5316P))
・黄色顔料(C.I.PY139)・・・・・・・・・・・・・・・2.3部
(BASF社製、パリオトールイエローD1819)
【0069】
(青色パターン形成用フォトレジスト)
上記の赤色パターン形成用フォトレジストにおける赤色顔料、黄色顔料、および分散剤に替えて、下記のものを下記の配合量で用いた。
・青色顔料(C.I.PB15:6)・・・・・・・・・・・・・・4.6部
(BASF社製ヘリオゲンブルーL6700F))
・紫色顔料(C.I.PV23)・・・・・・・・・・・・・・・・1.4部
(クラリアント社製、フォスタパームRL−NF)
・顔料誘導体・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.6部
(ゼネカ(株)製ソルスパース12000)
・分散剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.4部
(ゼネカ(株)製ソルスパース24000)
【0070】
基板として、厚みが0.7mmの溶融成形ホウケイ酸薄板ガラス(米国コーニング社製、品番;7059)を準備し、洗浄を行なった後、基板上にブラックマトリックス形成用フォトレジストを、スピンコート法により塗布し、塗布後、温度;90℃、および加熱時間;3分間の条件でプリベークを行ない、プリベーク後、所定のパターンを介し、照射線量が100mJ/cm2になるよう紫外線露光を行ない、露光後、0.05%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒間行なった後、温度;200℃、および加熱時間;30分間の条件でポストベークを行ない、画素に相当する開孔部を有する厚みが1.2μmのブラックマトリックスを形成した。
【0071】
次に、基板上にブラックマトリックスが形成された上に、赤色パターン形成用フォトレジストをスピンコート法により塗布し、温度;80℃、および加熱時間;5分間の条件でプリベークを行なった後、所定のパターンを介し、紫外線光源による照射線量が300mJ/cm2になるようアライメント露光を行ない、露光後、0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒間行なった後、温度;200℃、および加熱時間;60分間の条件でポストベークを行ない、ブラックマトリックスの所定の開孔部に相当する位置に、厚みが2.6μmの赤色パターンを形成した。
【0072】
続いて、上記の赤色パターンの形成工程と同様にして、緑色パターン形成用フォトレジストを用いて厚みが2.6μmの緑色パターンを、また、その後、青色パターン形成用フォトレジストを用いて厚みが2.6μmの青色パターンを、赤色、緑色、および青色の各色パターンをブラックマトリックスの異なる開孔部に相当する位置に配列するよう形成し、赤色、緑色、および青色の三色のパターンが配列したカラーフィルタ層を形成した。
【0073】
基板上にブラックマトリックスおよびカラーフィルタ層が形成された上に、ポリイミド樹脂系の配向膜形成用インキ組成物(JSR(株)製、品番;AL1254)をフレキソ印刷法により必要箇所にパターン状に印刷し、印刷後、乾燥させて溶剤を除去した後、温度;200℃、および加熱時間;1時間の条件で焼成を行ない、焼成後、表面にラビング処理を行なって、厚みが700Åの配向膜を形成した。
【0074】
位相差制御層(A)および(C)を形成するための感光性樹脂組成物(A)および(C)を調製した。感光性樹脂組成物(A)としては、中央部にメソゲン、および両端に重合可能なアクリレート基を有し、中央部のメソゲンと両端のアクリレート基との間にスペーサを有する液晶材を75部、光重合開始材(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガキュア184を使用。)を1部、および溶剤としてトルエン25部を混合し調製した。また、感光性樹脂組成物(C)としては、感光性樹脂組成物(A)と同様の組成に加えて、さらに、両末端に重合可能なアクリレート基を有するカイラル材を5部配合して混合し調製した。
【0075】
位相差制御層形成用の感光性樹脂組成物(A)を配向膜上にスピンコート法により塗布し、塗布後、基板ごとホットプレート上に載せ、温度;100℃、および加熱時間;5分間の条件で加熱して、溶剤を除去し、塗膜に液晶構造を発現させた。その後、波長;365nmの紫外線を用い、照射線量が10J/cm2になるよう、パターン露光を行ない、メタノールを現像液とする現像を行なって、カラーフィルタ層の緑色パターン上に、厚みが1.0μmの位相差制御層(A)を形成した。また、これらの工程を、パターン露光の際のマスクの開孔部の位置を変更して行ない、赤色パターン上に厚みが1.3μmの、また、青色パターン上に厚みが0.75μmのいずれも位相差制御層(A)を形成した。
【0076】
続いて、感光性樹脂組成物(C)を用い、位相差制御層(A)の形成と同様な手法により、カラーフィルタ層の緑色パターン上の位相差制御層(A)上に、厚みが2.5μmの位相差制御層(C)を形成した。また、これらの工程を、パターン露光の際のマスクの開孔部の位置を変更して行ない、赤色パターン上の位相差制御層(A)上に厚みが2.3μmの、また、青色パターン上の位相差制御層(A)上に厚みが2.7μmの、いずれも位相差制御層(C)を形成した。
【0077】
位相差制御層(A)および(C)が順に形成された区域上に、アクリル系樹脂をバインダ樹脂とする紫外線硬化型のオーバーコート層形成用塗料組成物を塗布し、ホットプレート上で乾燥して溶剤を除去した。続いて、フォトマスクを介してパターン露光を行ない、現像処理により未露光部を除去した。さらにポストベークを行ない、厚みが1.2μmのオーバーコート層を形成し、形成したオーバーコート層上に共通電極としてのITO(酸化インジウム錫)薄膜を、スパッタリング法により、厚みが2000Åになるよう形成した。
【0078】
形成されたITO薄膜上に紫外線硬化性の透明なネガ型レジストを塗布し、パターン露光および現像を行なって、高さ;4.5μm、ITO薄膜側の底面積が100μm2の柱状体を、240μm×240μmあたりに1個の割合で形成した。柱状体の形成後、ポリイミド樹脂系の配向剤(JSR(株)製、品名;JALS2021)をフレキソ印刷法により、位相差制御層(A)および(C)並びに柱状体が形成された区域にパターン状に適用し、適用後、温度;200℃で1時間焼成し、厚み;700Åの垂直配向膜を形成し、以上により、柱状体を有する位相差制御板を得た。
【0079】
上記の柱状体を有する位相差制御板を製造した際に用いたのと同様な素材、方法により、基板上に、ITO薄膜、および垂直配向膜を順次形成したものを製造して対向基板として用い、上記で得られた柱状体を有する位相差制御板と、垂直配向膜どうしが向き合うようにして重ね、周縁部を接着して、シールされた内部の寸法が10cm×10cmの正方形のセルを形成し、セル内に、負の誘電異方性を有する液晶(メルク社製、品番;MLC6608)を真空注入法を用いて封入し、封入後、温度;110℃で1時間加熱(アフターアニール)して流動方向をキャンセルし、液晶セルを得た。
【0080】
(比較例)
柱状体の形成を行なわずに製造した位相差制御板を用い、直径;4.5μmのスペーサービーズ(積水化学工業(株)製、商品名;ミクロパール)を配向膜上に散布したものを対向基板と重ねた以外は、実施例と同様に行ない、液晶セルを得た。
【0081】
上記のようにして得られた実施例および比較例の液晶セルについて、LCDセルギャップ測定システム(大塚電子(株)製、品番;MCPD2000)を用いて、セルギャップ(液晶層の厚み)を測定した。図9に示すように、セルの輪郭である正方形の対角線の交点、および交点から図中の上辺に対角線に沿って向かう方向の1.4cm毎にセルギャップを測定した値(単位;μm)を「表1」に示す。なお、「表1」中の丸で囲んだ数字の1〜9は、図9中の丸で囲んだ数字で示す位置に相当する。
【0082】
【表1】

【0083】
表1に示すように、実施例におけるセルギャップの最大値は4.220μm、最小値は4.202μmで、最大値と最小値の差は0.018μmと小さかったが、比較例におけるセルギャップの最大値は4.450μm、最小値は4.214μmで、最大値と最小値の差は、0.236μmと大きかった。
【符号の説明】
【0084】
1 柱状体を有する位相差制御板
2 基板
3 位相差制御層
4 柱状体
5 ブラックマトリックス(BM)
6 カラーフィルタ層
8 液晶層
9 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に液晶性高分子からなる位相差制御層が積層されており、前記位相差制御層上に電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された柱状体が配列されて積層されており、
前記液晶性高分子が棒状液晶性高分子からなり、光軸が前記位相差制御層に水平である、ことを特徴とする、位相差制御板。
【請求項2】
前記柱状体の断面積が25μm〜2500μmであり、高さが0.5μm〜10.0μmであることを特徴とする請求項1記載の位相差制御板。
【請求項3】
画素1〜27個に対して1個の前記柱状体が積層されている、請求項1または請求項2記載の位相差制御板。
【請求項4】
前記位相差制御層が画素毎に積層されている、請求項1〜請求項3いずれか記載の位相差制御板。
【請求項5】
前記基板と前記位相差制御層との間、または前記位相差制御層の前記基板側とは反対側にカラーフィルタ層が積層されている、請求項1〜請求項4いずれか記載の位相差制御板。
【請求項6】
前記位相差制御層が積層されている側の上に前記位相差制御層側より透明電極層および配向膜が順に積層されている、請求項1〜請求項5いずれか記載の位相差制御板。
【請求項7】
前記液晶高分子が、下記式(1)〜(11)の重合性液晶モノマーを重合させたものである、請求項1〜6のいずれか記載の位相差制御板。
【化1】


(式中、メチレン基の数を示すa、bはいずれも整数を表す。)
【請求項8】
請求項1〜請求項7いずれか記載の位相差制御板が観察側に配置されたことを特徴とするディスプレイ。
【請求項9】
請求項1〜請求項7いずれか記載の位相差制御板が観察側に配置されたことを特徴とするエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項10】
請求項1〜請求項7いずれか記載の位相差制御板が観察側に配置されたことを特徴とする液晶ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−117723(P2010−117723A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295467(P2009−295467)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【分割の表示】特願2003−164527(P2003−164527)の分割
【原出願日】平成15年6月10日(2003.6.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】