説明

柱状物の昇降装置

【課題】径が変化する木又は径の異なる複数の木にも対応でき、作業者が自ら高所での作業を行う必要がなく、しかも装置構成が簡単で持ち運びも便利な柱状物の昇降装置を提供する。
【解決手段】柱状物11の同一高さ位置で、柱状物11の外表面12周方向に間隔を開けて配置され、柱状物11の外表面12を上下方向に走行可能な2台以上の駆動車を含む複数の走行台車13〜16と、隣り合う走行台車13〜16を連結し、伸縮力によって各走行台車13〜16を柱状物11の外表面12に押し付ける弾性部材17とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、上方へ向かって徐々に縮幅したり、また様々な幅を備えた複数の柱状物(例えば、果樹の幹、立木の幹、又は電柱のような建造物)を昇降可能な柱状物の昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、木になった実、例えば、椰子の実の収穫作業は、実を収穫できるように訓練した猿を使って行っている。
また、例えば、檜、ヒバ、杉、又は松のような立木の枝打ち作業は、作業者が木に昇り、なたを使用して行っている。なお、作業者は、その木の枝打ち作業が終了すればその木から降り、次の木に昇って同様の枝打ち作業を繰り返し行う。
このように、高所で作業を行う際には、手間と労力が非常にかかるため、例えば、特許文献1には、自走で昇降する昇降装置が提案され、また特許文献2には、作業者が自ら木に昇り降りするために使用する昇降装置が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−120084号公報
【特許文献2】特開2001−54326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された昇降装置は、木の径の変化に十分に対応できる構成となっていないため、例えば、上方へ向かって徐々に縮径したり、また様々な径を備えた複数の木に、同じ昇降装置を使用できない場合がある。なお、この昇降装置は、曲がった木を昇降することもできない。
また、特許文献2に記載された昇降装置は、作業者が自ら昇り降りしなければならず、高所で作業する必要があり危険を伴う恐れがある。
更に、いずれの昇降装置においても、大型でしかも構造が複雑であるため、持ち運びが不便で製造コストもかかる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、径が変化する木又は径の異なる複数の木にも対応でき、作業者が自ら高所での作業を行う必要がなく、しかも装置構成が簡単で持ち運びも便利な柱状物の昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る柱状物の昇降装置は、柱状物の同一高さ位置で、該柱状物の外表面周方向に間隔を開けて配置され、該柱状物の外表面を上下方向に走行可能な2台以上の駆動車を含む複数の走行台車と、
隣り合う前記走行台車を連結し、伸縮力によって前記各走行台車を前記柱状物の外表面に押し付ける弾性部材とを有する。
【0007】
本発明に係る柱状物の昇降装置において、前記弾性部材は、前記柱状物の外表面との間に隙間を有して配置されることが好ましい。
本発明に係る柱状物の昇降装置において、前記各走行台車は、前記柱状物の軸心を中心として、該柱状物の外表面周方向に実質的に等角度に配置されることが好ましい。
本発明に係る柱状物の昇降装置において、前記弾性部材は、使用にあっては前記柱状物の外側に巻き回される伸縮バンドであって、該伸縮バンドの内側に前記複数の走行台車がそれぞれ配置され、しかも前記各走行台車と前記伸縮バンドとの接触面側に、相互に係合可能な面状ファスナーが設けられていることが好ましい。
【0008】
本発明に係る柱状物の昇降装置において、前記柱状物は椰子の木の幹であって、前記走行台車及び前記弾性部材のいずれか一方又は双方には、前記椰子の木を撮像する小型カメラと、前記椰子の木になる椰子の実を採る収穫手段が設けられていることが好ましい。
本発明に係る柱状物の昇降装置において、前記柱状物は立木の幹であって、前記走行台車及び前記弾性部材のいずれか一方又は双方には、前記立木を撮像する小型カメラと、前記立木の枝打ちを行う切断手段が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1〜6記載の柱状物の昇降装置は、柱状物の外表面周方向に間隔を開けて配置される複数の走行台車が弾性部材で連結されているので、弾性部材の伸縮力により、柱状物の幅(外周長さ)に応じて隣り合う走行台車の間隔を自動的に調整できる。これにより、例えば、上方へ向かって徐々に縮幅したり、また様々な幅を備えた複数の柱状物に対しても、昇降装置が確実に昇降できる。
このように、柱状物の昇降装置を使用することで、例えば、人が登れない危険な高い木又は高い建造物も昇降でき、しかも装置構成が簡単で持ち運びも便利であるため、今後色々な分野での利用が期待でき、その経済的効果は非常に大きい。
【0010】
特に、請求項2記載の柱状物の昇降装置は、弾性部材が柱状物の外表面との間に隙間を有して配置されるので、弾性部材が柱状物と接触することを防止でき、走行台車の昇降動作をスムーズにできる。
請求項3記載の柱状物の昇降装置は、各走行台車を柱状物の軸心を中心として実質的に等角度に配置するので、隣り合う走行台車を連結する伸縮部材の伸縮力が略均等になり、各走行台車が柱状物の外表面に押し付けられる力も略同等になる。従って、柱状物に対する各走行台車の滑りを抑制、更には防止できる。
請求項4記載の柱状物の昇降装置は、各走行台車が面状ファスナーによって伸縮バンドに取付け取外し可能な構成となっているので、昇降装置の組み立て作業が簡単である。また、使用によって伸縮バンドが劣化した際にも、伸縮バンドを交換するのみで昇降装置を使用できるため、経済的である。
【0011】
請求項5記載の柱状物の昇降装置は、椰子の実を採る際に、従来のように、猿を使う必要がなくなるので、猿を訓練する必要がなくなり、椰子の実の収穫作業を簡単にできる。これにより、収穫作業の効率が上がり、収穫時間の短縮を図ることができる。
また、小型カメラにより、椰子の実を撮像しながら採ることで、出荷に適した状態まで成熟した椰子の実の収穫率を向上できる。
請求項6記載の柱状物の昇降装置は、小型カメラにより立木の枝を撮像しながら、切断手段により枝打ち作業を行うことにより、従来きこりが行っていた作業レベルと同程度の作業を、安全かつ容易に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る柱状物の昇降装置の使用状態の平面図、図2(A)、(B)はそれぞれ同柱状物の昇降装置の駆動車の裏面図、従動車の裏面図、図3は同柱状物の昇降装置の制御機構を示す説明図である。
【0013】
図1〜図3に示すように、本発明の一実施の形態に係る柱状物の昇降装置(以下、単に昇降装置ともいう)10は、椰子の木の幹(柱状物の一例)11の同一高さ位置で、幹11の外表面12周方向に間隔を開けて配置され、幹11の外表面12を上下方向に走行可能な複数の走行台車の一例である2台の駆動車13、14及び2台の従動車15、16と、隣り合う走行台車、即ち、駆動車13、従動車15、駆動車14及び従動車16をそれぞれ連結し、伸縮力によって各駆動車13、14及び従動車15、16を幹11の外表面12に押し付ける伸縮バンド(弾性部材の一例)17とを有する。以下、詳しく説明する。
【0014】
図1に示すように、駆動車13、従動車15、駆動車14及び従動車16は、幹11の軸心を中心として、幹11の外表面12周方向に実質的に等角度(ここでは、駆動車が2台、従動車が2台の合計4台であるため90度)に配置される。ここで、各駆動車13、14と各従動車15、16は、それぞれ幹11を中心として幹11の周方向に交互に配置されている。
なお、各駆動車と各従動車は、それぞれ幹11の軸心を中心として対向する位置に配置することが好ましいが、対向しない位置に配置してもよい。
【0015】
駆動車13、14は、図1、図2(A)に示すように、車体18の前後方向両端部に、駆動側回転軸19と従動側回転軸20が、それぞれ回転自在に取付けられている。
駆動側回転軸19の中央部には、直流モータ21からの出力が伝達されるギア(減速機構)22が設けられ、このギア22の両側に位置する駆動側回転軸19に、幹11の外表面12に接触する2個の駆動側ローラ23が取付けられている。これにより、直流モータ21の出力で駆動側ローラ23を回転できる。なお、軽量化のため、ギア22はプラスチック製であることが好ましい。また、駆動側ローラの個数は2個としたが、3個以上の複数個とすることも、また1個としてもよい。ここで、駆動側ローラの個数を1個とする場合は、駆動側ローラの片側又は両側に、直流モータからの出力が伝達されるギアを設け、駆動側ローラを回転させるとよい。
【0016】
また、従動側回転軸20の中央部には、幹11の外表面12に接触する幅広の1個の従動側ローラ24が取付けられている。なお、従動側ローラの個数は1個としたが、2個以上の複数個にしてもよい。
各ローラ23、24は、少なくともその表層部がゴム製又はプラスチック製となっており、しかもその表面には、各ローラ23、24の幅方向又は斜め方向に溝が形成されて滑り止め加工がなされている。なお、各ローラの表面に、例えば断面円形又は断面角形の多数の滑り止め突起を設けることで、各ローラの滑り止め効果を更に高めることもできる。また、幹11の外表面12に対する各ローラの接触面積を高めるため、例えば、各ローラの材質をクッション性を備える材質(例えば、ウレタン樹脂)で構成することもできる。
【0017】
2個の駆動側ローラ23、及び従動側ローラ24の両外側に位置する各回転軸19、20には、プーリ25、26がそれぞれ取付けられている。また、プーリ25とプーリ26の中間位置には、サスペンション(例えば、ばね)が設けられたプーリ26aが配置されている。このプーリの個数は、更に増やすこともできる。なお、プーリ25とプーリ26についても、それぞれサスペンション(例えば、ばね)を設けてよい。
駆動側回転軸19に取付けられた各プーリ25、従動側回転軸20に取付けられた各プーリ26、及びその中間位置に配置された各プーリ26aは、無端のベルト27でそれぞれ接続されている。これにより、直流モータ21の出力が、駆動側回転軸19及びベルト27を介して従動側回転軸20へ伝達され、従動側ローラ24を回転できる。ここで、ベルト27の緩みは、プーリ26aに設けられたサスペンションで調整できる。
なお、プーリの代わりにスプロケットを使用し、ベルトの代わりにチェーンを使用することもできる。
【0018】
従動車15、16は、図1、図2(B)に示すように、車体28の前後方向両端部に、回転軸29がそれぞれ回転自在に取付けられている。この各回転軸29の両側には、幹11の外表面12に接触するローラ30(車輪でもよい)が1個ずつ、合計4個取付けられている。なお、各ローラ30の材質等については、前記した駆動車のローラ23、24と実質的に同一である。
このように、従動車15、16は、前記した駆動車13、14のように直流モータが搭載されておらず、自力で走行する構成とはなっていない。
【0019】
図1、図3に示すように、伸縮バンド17は、使用にあっては幹11の外側に巻き回され、伸縮バンド17の内側に各駆動車13、14及び各従動車15、16がそれぞれ配置されるものである。
この伸縮バンド17は、帯状となっており、ゴムで構成される伸縮領域31と柔らかい材料(例えば布)で構成される取付領域32が、4カ所ずつ交互に配置されている。この取付領域32と各車体18、28の接触面側には、相互に係合可能な面状ファスナー33が設けられている。なお、伸縮バンド17の両端部34、35についても、相互に係合可能な面状ファスナー36が取付けられている。ここで、それぞれ使用した面状ファスナーの代わりに他の取付部材、例えばスナップ(凹凸が一対となった押しホック)を使用してもよい。
なお、伸縮領域31と取付領域32は、使用する駆動車及び従動車の台数に応じて、複数箇所に変更可能である。
また、伸縮バンドは、帯状となった1枚のバンドで構成してもよいが、伸縮領域及び取付領域が設けられた複数枚のバンド及びゴムバンドで構成することが好ましい。例えば、駆動車及び従動車の前後方向両側に、伸縮領域及び取付領域が設けられたバンドをそれぞれ配置し、この2本のバンドの中間位置に、各バンドよりも大きな伸縮性を備えたゴムバンドを配置する。これにより、ゴムバンドによって駆動車及び従動車を幹の外表面に更に強く押し付け、幹に対する駆動車及び従動車の各ローラの滑りを抑制、更には防止できる。
【0020】
この伸縮バンド17の伸縮領域31のゴムの役割は、昇降装置10が径の大きな幹11の下部と径の小さな幹11の上部との間を移動する際に、環状となった伸縮バンド17の内幅を幹11の径に応じて自動的にフレキシブルに変え、昇降を容易にすることにある。
なお、図1に示すように、昇降装置10を幹11の外表面12周囲に配置するに際しては、伸縮バンド17が幹11の外表面12に接触しないように、幹11の外表面12から外側に隙間を有して配置する。
ここで、伸縮バンド17が幹11の外表面12に接触しないように配置する方法としては、幹11の径に応じて、駆動車及び従動車のいずれか一方又は双方の台数を増やしたり、また、伸縮バンド17の幹に接触する部位にローラを設ける方法がある。
【0021】
図3に示すように、伸縮バンド17には、椰子の木を撮像するためのCCDカメラ(小型カメラの一例)37と、椰子の木になる椰子の実を採るための圧縮空気吹付器(収穫手段の一例)38が設けられている。このCCDカメラ37と圧縮空気吹付器38は、伸縮バンド17の外側表面に、図示しない取付部材(例えば、相互に係合可能な面状ファスナー又はスナップ)を介して取付けることができる。なお、CCDカメラ37と圧縮空気吹付器38は、各駆動車、各従動車、及び伸縮バンドのいずれか1又は2以上に取付けることができる。
このCCDカメラ37は、例えば、軽量となった画像送信機内蔵型のカメラであり、このCCDカメラ37で撮像された画像が、カメラ画像受信機39へ送信され、昇降装置10の使用者が画像を確認できる。
【0022】
また、圧縮空気吹付器38は、例えば、軽量となったチューブ型のものであり、この圧縮空気吹付器38が、圧縮空気チューブ40及び圧縮空気制御器41を介して、エアーコンプレッサー42に接続されている。なお、収穫手段として、圧縮空気吹付器の代わりにむちを使用することもでき、この場合、駆動車の進行方向前方に、回転軸が幹11と平行になるように電動モータを配置し、この回転軸にむちの一端部を接続して回転させる。
この圧縮空気制御器41及びエアーコンプレッサー42は、電源43(例えば、100W)に接続されて動作可能になっている。
これにより、エアーコンプレッサー42から送られる空気は、圧縮空気制御器41によりその噴出圧力及び噴出量が調整され、圧縮空気チューブ40を介して圧縮空気吹付器38へ送られる。
【0023】
なお、CCDカメラ37と圧縮空気吹付器38は、それぞれ1台又は複数台取付けることができ、1台取付ける場合は、旋回機構及び角度調整機構を設け、また複数台取付ける場合は、撮像対象又は吹き付け可能な領域をカバーできるように、その位置を調整し固定することが好ましい。
また、電源43には、ドライバー及びマイコンボード等を内蔵した操作ボックス44が接続されている。この操作ボックス44内に配置されたマイコンボードで、各駆動車13、14を自動的に昇降させるための制御信号を作り、その信号を操作ボックス44内のドライバーへ送り、電源ケーブル45を経由して駆動車13、14の直流モータ21の速度を変えることで、昇降装置10が自動的に幹11を昇降できる。
【0024】
続いて、本発明の一実施の形態に係る柱状物の昇降装置10を使用して、椰子の木から椰子の実(図示しない)を採る方法について説明する。なお、椰子の木の幹11は、上方へ向かって徐々に縮径している。
図1に示すように、伸縮バンド17に各駆動車13、14及び各従動車15、16を取付け、そのローラ23、24、30を幹11の外表面12に接触させながら、伸縮バンド17を幹11の外側に巻き回し、その両端部34、35を面状ファスナー36を介して接続する。このとき、各駆動車13、14及び各従動車15、16が、幹11の軸心を中心として、幹11の外表面12周方向に実質的に等角度になるように配置する。また、図1では、駆動車13、14の従動側ローラ24を、下側進行方向へ向けて配置、即ち、進行方向(上方向)に対して逆側(下側)に配置しているが、逆でもよい。
これにより、昇降装置10を、椰子の木の根元部分に配置できる。
【0025】
そして、伸縮バンド17の外側に、複数のCCDカメラ37と複数の圧縮空気吹付器38を取付ける。なお、圧縮空気吹付器38に圧縮空気チューブ40の一端部を接続し、その他端部を圧縮空気制御器41に接続し、更に圧縮空気制御器41をエアーコンプレッサー42に接続する。
また、各駆動車13、14に電源ケーブル45の一端部を接続し、その他端部を操作ボックス44に接続する。
そして、圧縮空気制御器41、エアーコンプレッサー42、及び操作ボックス44を、電源43に接続する。
【0026】
次に、電源43をオンにし、圧縮空気制御器41、エアコンプレッサー42、及び操作ボックス44に電力を供給する。そして、操作ボックス44のスイッチをオンにし、電源ケーブル45から供給された電力により、各駆動車13、14の駆動側ローラ23を正回転させる。
これにより、幹11の太さに合わせて伸縮バンド17を縮ませながら、昇降装置10は上へ登っていく。そして、昇降装置10を椰子の木の幹11の上部まで上昇させた後、椰子の葉の生えている部分の手前で止める。
【0027】
昇降装置10に取付けられたCCDカメラ37で椰子の実を撮像し、その画像をCCDカメラ37に内蔵された送信機からカメラ画像受信機39へ送信する。作業者は、この画像を確認することで、椰子の実の成熟状態(3種類:緑の若い実、黄色の実、及び茶色の実)を確認し、収穫する実を選択する。
そして、複数の圧縮空気吹付器38のうち、選択した椰子の実の付け根部分に圧縮空気を吹き付け可能な圧縮空気吹付器38を選択し、圧縮空気制御器41を作動させる。これにより、圧縮空気チューブ40を介して供給された圧縮空気を、圧縮空気吹付器38の空気吹出し口から実の付け根部分へ吹き付け、これを切断して椰子の実を落とすことができる。なお、むちを使用する場合は、電動モータを作動させてむちを振り回し、選択した椰子の実にむちを複数回たたきつけることで落とす。
【0028】
椰子の実を落とした後、操作ボックス44により、各駆動車13、14の駆動側ローラ23を逆回転させ、昇降装置10を椰子の木の根元まで降ろして停止させる。そして、伸縮バンド17からCCDカメラ37と圧縮空気吹付器38を取り外し、次に伸縮バンド17の両端部34、35の面状ファスナー36を取り外して、幹11から昇降装置10を取り、椰子の実落としの作業を終える。
このように、昇降装置10を使用することにより、従来不可能であった椰子の実等を機械で収穫することが可能になる。特に、椰子の実の色を画像により人の目で見分けるため、その成熟状態を判別しながら落とすことが可能になり、より効果的で効率的に、高所になっている木の実を落とすことができる。
【0029】
なお、昇降装置は、色々な形状の柱状物を、容易に昇降できる特殊な機構を備えるため、他の分野にも用途は広く、商品価値は非常に大きい。
例えば、収穫手段の代わりに、電動のこぎりのような切断手段を、駆動車、従動車、及び伸縮バンドのいずれか1又は2以上に設けることもできる。この場合は、檜、ヒバ、杉、又は松のような立木の幹(柱状物の一例)に沿って昇降装置を上昇させることで、幹から枝分かれした小枝をCCDカメラで撮像しながら、電動のこぎりで枝打ち作業を行うこともできる。
【0030】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の柱状物の昇降装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、昇降装置を昇降させる対象として、柱状物の一例である椰子の木の幹を使用した場合について説明したが、柱状物としては、例えば、果樹の幹、立木の幹、又は電柱のような建造物であってもよい。なお、柱状物の断面形状は、昇降装置の昇降に支障がなければ、例えば、円形、楕円形、卵形、又は角形でもよい。
【0031】
前記実施の形態においては、弾性部材として伸縮バンドを使用し、隣り合う駆動車と従動車を連結した場合について説明したが、他の弾性部材、例えば、引張コイルばねを使用して連結することもできる。なお、このとき、隣り合う走行台車を1本のばねで連結してもよいが、走行台車の長さに応じて、複数本のばねを使用することが好ましい。
そして、前記実施の形態においては、走行台車及び弾性部材のいずれか1又は2以上に、CCDカメラと圧縮空気吹付器を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、昇降装置の使用用途に応じて他の手段、例えば、照明手段、研磨手段、消火手段、塗装手段、又は燃焼手段を取付けることも、またセンサを取付けることもできる。
【0032】
更に、前記実施の形態においては、複数の走行台車を2台の駆動車と2台の従動車で構成した場合について説明したが、例えば、柱状物の幅(外周長さ)又は断面形状に応じて、各台数をそれぞれ増減させることもできる。なお、走行台車を2台とする場合には、走行台車は2台の駆動車で構成され、走行台車を3台以上にする場合は、2台又はそれ以上の駆動車を使用する。ここで、駆動車は柱状物の軸心を中心として実質的に等角度に配置するとよく、更に従動車を使用する場合は、隣り合う駆動車の間に従動車を配置するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態に係る柱状物の昇降装置の使用状態の平面図である。
【図2】(A)、(B)はそれぞれ同柱状物の昇降装置の駆動車の裏面図、従動車の裏面図である。
【図3】同柱状物の昇降装置の制御機構を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
10:柱状物の昇降装置、11:幹(柱状物)、12:外表面、13、14:駆動車(走行台車)、15、16:従動車(走行台車)、17:伸縮バンド(弾性部材)、18:車体、19、20:回転軸、21:直流モータ、22:ギア、23、24:ローラ、25、26、26a:プーリ、27:ベルト、28:車体、29:回転軸、30:ローラ、31:伸縮領域、32:取付領域、33:面状ファスナー、34、35:端部、36:面状ファスナー、37:CCDカメラ(小型カメラ)、38:圧縮空気吹付器(収穫手段)、39:カメラ画像受信機、40:圧縮空気チューブ、41:圧縮空気制御器、42:エアーコンプレッサー、43:電源、44:操作ボックス、45:電源ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状物の同一高さ位置で、該柱状物の外表面周方向に間隔を開けて配置され、該柱状物の外表面を上下方向に走行可能な2台以上の駆動車を含む複数の走行台車と、
隣り合う前記走行台車を連結し、伸縮力によって前記各走行台車を前記柱状物の外表面に押し付ける弾性部材とを有することを特徴とする柱状物の昇降装置。
【請求項2】
請求項1記載の柱状物の昇降装置において、前記弾性部材は、前記柱状物の外表面との間に隙間を有して配置されることを特徴とする柱状物の昇降装置。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の柱状物の昇降装置において、前記各走行台車は、前記柱状物の軸心を中心として、該柱状物の外表面周方向に実質的に等角度に配置されることを特徴とする柱状物の昇降装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の柱状物の昇降装置において、前記弾性部材は、使用にあっては前記柱状物の外側に巻き回される伸縮バンドであって、該伸縮バンドの内側に前記複数の走行台車がそれぞれ配置され、しかも前記各走行台車と前記伸縮バンドとの接触面側に、相互に係合可能な面状ファスナーが設けられていることを特徴とする柱状物の昇降装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の柱状物の昇降装置において、前記柱状物は椰子の木の幹であって、前記走行台車及び前記弾性部材のいずれか一方又は双方には、前記椰子の木を撮像する小型カメラと、前記椰子の木になる椰子の実を採る収穫手段が設けられていることを特徴とする柱状物の昇降装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の柱状物の昇降装置において、前記柱状物は立木の幹であって、前記走行台車及び前記弾性部材のいずれか一方又は双方には、前記立木を撮像する小型カメラと、前記立木の枝打ちを行う切断手段が設けられていることを特徴とする柱状物の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−159488(P2007−159488A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360719(P2005−360719)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(591140259)
【Fターム(参考)】